(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流電源からFETを介して負荷に電力を供給する電力供給回路と、前記FETを制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記FETをオフすることによって前記電力供給回路を過電流から保護する過電流保護電源装置であって、
前記FETにドレイン電流が流れることによってドレイン・ソース間に発生するドレイン・ソース間電圧を検出するドレイン・ソース間電圧検出回路と、
前記FETをオンさせるときに、前記ドレイン・ソース間電圧検出回路によるドレイン・ソース間電圧の検出動作を、前記FETが、ドレイン電流の増大に応じてドレイン・ソース間電圧が増大する状態になってから開始させるドレイン・ソース間電圧検出開始回路と、
前記ドレイン・ソース間電圧に基づいて第1過電流保護信号を出力する第1過電流保護信号生成回路と、
前記ドレイン・ソース間電圧の増加率に基づいて第2過電流保護信号を出力する第2過電流保護信号生成回路を備え、
前記制御回路は、前記第1過電流保護信号生成回路から前記第1過電流保護信号が出力されたことによりあるいは前記第2過電流保護信号生成回路から前記第2過電流保護信号が出力されたことにより前記FETをオフするように構成されていることを特徴とする過電流保護電源装置。
直流電源からFETを介して負荷に電力を供給する電力供給回路と、前記FETを制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記FETをオフすることによって前記電力供給回路を過電流から保護する過電流保護電源装置であって、
前記FETにドレイン電流が流れることによってドレイン・ソース間に発生するドレイン・ソース間電圧を検出するドレイン・ソース間電圧検出回路と、
前記FETをオンさせるときに、前記ドレイン・ソース間電圧検出回路によるドレイン・ソース間電圧の検出動作を、前記FETが、ドレイン電流の増大に応じてドレイン・ソース間電圧が増大する状態になってから開始させるドレイン・ソース間電圧検出開始回路と、
前記ドレイン・ソース間電圧に基づいて第1過電流保護信号を出力する第1過電流保護信号生成回路を備え、
前記制御回路は、前記第1過電流保護信号生成回路から前記第1過電流保護信号が出力されたことにより前記FETをオフするように構成されており、
前記ドレイン・ソース間電圧検出回路は、閾値を用いた大きさ判定によって前記ドレイン・ソース間電圧を検出するように構成されており、前記閾値を前記FETの直流電源側の電極の電位に連動させ、前記閾値と前記FETの直流電源側の電極の電位との連動関係を、前記FETと接地間の抵抗値が、過電流として判別される電流値範囲に対応する抵抗値範囲のうちの上限の抵抗値である場合における電流の飽和時に、ドレイン・ソース間電圧が前記閾値に等しくなり、前記上限の抵抗値以下の抵抗値である場合における電流の飽和時に、ドレイン・ソース間電圧が前記閾値より大きくなるように設定することを特徴とする過電流保護装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の過電流保護電源装置の基本概念を説明する。
本発明の過電流保護電源装置は、パワースイッチング素子として用いられているFETを流れる電流を、FETのドレイン電流(I
D)とFETの抵抗値(R
ON)により定まるFETのドレイン・ソース間電圧V
DS(V
DS=I
D×R
ON)より検出し、検出したドレイン・ソース間電圧V
DSが閾値より大きくなった時に、FETをオフして過電流保護を行う。
一方、接地事故(デッドショート)が発生した時には、電流(接地電流)は、極めて大きい電流値(到達電流値)に到達する。このため、FETのドレイン・ソース間電圧V
DSが閾値より大きくなってから保護動作を開始したのでは、充分に過電流保護を行うことができない可能性がある。
ここで、接地事故が発生した時には、電流(接地電流)が大きくなる前に、FETのドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率(増加勾配)が大きくなるという現象があることが分かった。すなわち、FETのドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率が大きくなったことを検出して保護動作を行うことによって、速やかに過電流保護を行うことができる。
したがって、本発明の過電流保護電源装置は、パワースイッチング素子として用いられているFETのドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率(増加勾配)が閾値より大きくなった時にも、FETをオフして過電流保護を行う。
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下で説明する第1〜第4の実施形態は、本発明の第1類型の過電流保護電源装置に属し、第5の実施形態は、本発明の第2類型の過電流保護電源装置に属する。
第1類型の過電流保護電源装置は、ドレイン・ソース間電圧V
DSに基づいて、ドレイン・ソース間電圧V
DSが大きくなったこと、あるいは、ドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率に基づいて、ドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率が大きくなったことを検出することによって過電流保護を行うものである。
また、第2類型の過電流保護電源装置は、ドレイン・ソース間電圧V
DSのみに基づいて、ドレイン・ソース間電圧V
DSが大きくなったことあるいはドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率が大きくなったことを検出することによって過電流保護を行うものである。
また、「電圧」、「電流」という記載は、特に断りがない限り、それぞれ「電圧の大きさ(値)」、「電流の大きさ(値)」を意味するものとして用いている。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の過電流保護電源装置の第1の実施形態を示す図である。第1の実施形態の過電流保護電源装置1は、ドレイン・ソース間電圧検出回路2、ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4、電力供給回路6、第1過電流保護信号生成回路7、第2過電流保護信号生成回路8、スイッチ部10、チャージポンプ回路13、駆動回路14、制御回路16、OR回路17等により構成されている。
【0022】
(1)電力供給回路6について
電力供給回路6は、負荷66に電力を供給する回路であり、直流電源63、パワースイッチング素子であるN型MOSFET60(以下、「FET60」という)を有している。抵抗61、インダクタンス62、64、65は、配線の抵抗やインダクタンスである。
なお、FET60と負荷66を接続する配線の途中の点Pは、接地事故(デッドショート)が発生した箇所を例示したものである。接地事故が発生すると、直流電源63からFET60、接地抵抗67を介してアースへ電流(接地電流)が流れる。接地抵抗67の抵抗値が小さいため、接地電流は大電流となる。
【0023】
スイッチ部10は、電圧V
CCと接地(アース)間に直列に接続されているスイッチ11と抵抗12を有している。
駆動回路14は、ドレイン同士が接続されたP型MOSFET141(以下、「FET141」という)とN型MOSFET142(以下、「FET142」という)を有している。FET141のソースには、チャージポンプ回路13からの電圧が印加される。FET141のドレインは、抵抗15を有する配線を介して電力供給回路6のFET60のゲートに接続される。FET60のゲートに接続される配線を「V
Gライン」という。また、FET142のソースは、FET60のソースに接続される。FET60のソースに接続される配線を「V
2ライン」という。
【0024】
スイッチ11がオン操作されると、スイッチ11と抵抗12との接続点の電圧(V
CC)が、負荷66への電力供給の開始(電源の投入)を指示する信号として制御回路16に入力される。制御回路16は、スイッチ11がオン操作されると、駆動回路14のFET141をオンするとともにFET142をオフし、チャージポンプ回路13からの電圧を抵抗15を介してFET60のゲート・ソース間に供給する。これにより、FET60がオンし、直流電源63から負荷66への電力供給が開始される。
【0025】
(2)ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4について
FET60のオン抵抗(オン抵抗値)をR
ON、ドレイン・ソース間電圧をV
DSとすると、FET60がオーミック領域で動作している時には、(1)式が成り立つ。
I
D×R
ON=V
DS (1)式
R
ONが一定である動作領域ではI
DはV
DSと比例するから、I
Dは、V
DSを検出することによって検出することができ、また、I
Dの増加率はV
DSの増加率を検出することによって検出することができる。
FET60がオン状態で安定している時は、R
ONは一定である。したがって、この状態では、V
DSの増加率からI
Dの増加率を検出することによって接地事故が発生したことを検出することができる。
【0026】
しかしながら、スイッチ11がオン操作されて、FET60がオフ状態からオン状態に移行する過渡期間(約1μs)では、FET60はピンチオフ領域で動作する。このため、この動作領域では、前記(1)式は成立しない。すなわち、V
DSの増加率の検出結果に基づいてI
Dの増加率を正確に検出することができない。この動作領域において、V
DSの増加率の検出結果に基づいてFET60をオフするように構成すると、正常時に誤動作する可能性がある。
なお、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSは、FET60がオフ状態からオン状態に移行した時、最初は急速に減少し、その後増加に転じる。
【0027】
一方、このような誤動作を防止するために、FET60をオンさせる時におけるV
DS検出の開始時期を遅らせすぎると、FET60がオンする前に接地事故が発生していた場合には、充分に過電流保護を行うことができない。例えば、500Vの直流電源63を使用している状態で接地事故が発生した場合には、電流(接地電流)の増加率は150A/μsに達する。
従って、確実に過電流保護を行うには、上記(1)式が成立しない過渡期間を考慮しつつ、できるだけ早くV
DSの検出を開始する必要がある。
【0028】
ここで、V
1、V
G、V
2を以下のように定義する。
V
1…FET60の主電極のうち直流電源63(直流電源63の正極)に接続されている主電極(
図1では、ドレイン)の電圧(以下、「ドレイン電圧V
1」という)
V
G…FET60のゲート電圧(以下、「ゲート電圧V
G」という)
V
2…FET60の主電極のうち負荷66(負荷66を介して直流電源63の負極)に接続されている主電極(
図1では、ソース)の電圧(以下、「ソース電圧V
2」という)
なお、[V
DS=V
1−V
2]である。
また、本実施形態では、チャージポンプ回路13の電圧が[V
1+15V]に設定されている。
FET60がオフの状態では、V
1≫V
G(=V
2)となっている。そして、スイッチ11がオン操作されると、チャージポンプ回路13からの電圧がFET60のゲートに印加され、V
Gが上昇する。すなわち、電源投入時には、FET60のゲート電圧V
Gは、ドレイン電圧V
1より低い値から上昇してゆき、ドレイン電圧V
1を越え、最終的には[V
1+15V]となる。
【0029】
FET60のゲート電圧V
Gがドレイン電圧V
1より大きくなるタイミング([V
G>V
1]となるタイミング)では、FET60のオン抵抗R
ON、ドレイン電流I
D、ドレイン・ソース間電圧V
DSは、以下のような状態にある。
【0030】
(R
ONの状態)
[V
G>V
1]となった直後のタイミングでは、FET60のゲート・ソース間電圧(V
G−V
2)は、FET60のスレッショルド電圧(3〜4V)を若干上回っている。しかしながら、この時点では、オン抵抗R
ON(抵抗値)は、飽和値に向かって減少している過程にあり、まだ安定した値になっていない。オン抵抗R
ONが飽和値に達するには、(V
G−V
2)が10V以上となる必要がある。オン抵抗R
ONの減少率は、約−36%/μsである。
なお、オン抵抗R
ONが安定した値になっていないため、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSは、ドレイン電流I
Dに比例していない。
【0031】
(I
Dの状態)
[V
G>V
1]となった直後のタイミングでは、FET60のドレイン電流I
Dは、増加過程にあり、まだ最終到達値に達していない。増加率は、約+166%/μsである。I
Dの増加率は、[V
G>V
1]となった直後に最大となる。
【0032】
(V
DSの状態)
ゲート・ソース間電圧V
DSは、[V
DS=R
ON×I
D]で表される。前述したように、[V
G>V
1]となった直後のタイミングでは、R
ONは、減少過程にあり、I
Dは、R
ONの減少率より大きな増加率での増加過程にある。この場合、I
Dの増加率によってR
ONの減少率が打ち消されるため、それらの積であるV
DSは、増加過程にある。
【0033】
以上のように、[V
G>V
1]となるタイミング以降では、ドレイン・ソース間電圧V
DSは確実に増加状態を示す。
そこで、本実施形態では、ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4を設け、FET60をオンさせる時に、FET60のゲート電圧V
Gがドレイン電圧V
1より大きくなる([V
G>V
1])タイミング)でドレイン・ソース間電圧V
DSの検出を開始するように構成している。そして、V
DSの増加率が閾値より大きくなった時に過電流保護動作を行う。なお、この閾値は、過電流(遮断すべき電流)が流れた場合のV
DSの増加率より小さく、正常電流が流れた場合のV
DSの増加率より大きくなるように設定される。
これにより、FET60がオフ状態からオン状態に移行する過渡期間において、過電流の検出開始(V
DSの検出開始)までの時間を短くすることができ、確実に過電流保護を行うことができる。
【0034】
ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4の回路構成を説明する。
P型MOSFET40(以下、「FET40」という)のドレインは、ドレイン・ソース間電圧検出回路2のd点に接続され、ソースは、FET60の主電極のうち直流電源63の正極に接続される電極(ドレイン)に配線を介して接続される。FET40のソースに接続される配線を「V
1ライン」という。FET40のゲートは、抵抗41とツェナーダイオード42の並列回路を介してFET40のソースに接続されているとともに、抵抗43とN型MOSFET44(以下、「FET44」という)のドレイン、ソースを介して接地されている。ツェナーダイオード42は、アノードがFET40のゲートに接続されている。
ダイオード45のアノードは、V
Gラインに接続され、カソードは、P型MOSFET48(以下、「FET48」という)のゲートに接続されているとともに、抵抗49を介して接地されている。ダイオード46のアノードは、V
1ラインに接続され、カソードは、FET48のソースに接続されている。ダイオード45と46のカソード間には、抵抗47が接続されている。
FET48のドレインは、抵抗50および抵抗51とツェナーダイオード52との並列回路を介して接地されているとともに、抵抗50を介してコンパレータ53の反転入力端子に接続されている。コンパレータ53の非反転入力端子には、直流電源54が接続されている。コンパレータ53の出力端子は、FET44のゲートに接続されているとともに、第1過電流保護信号生成回路7及び第2過電流保護信号生成回路8に接続されている。
【0035】
次に、ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4の動作を説明する。
(V
G<V
1の状態)
この時、ダイオード45はオフであり、ダイオード46から抵抗47および抵抗49に電流が流れる。これにより、FET48がオンとなり、ツェナーダイオード52の両端に発生するツェナー電圧がコンパレータ53の反転入力端子に入力される。直流電源54の電圧がこのツェナー電圧より小さく設定されているため、コンパレータ53の出力はLレベル(以下、単に「L」という)となる。コンパレータ53の出力がLであるため、FET44及び40はオフである。
【0036】
(V
G>V
1の状態)
この時、ダイオード45がオンとなり、FET48のゲートにV
Gラインから電圧(V
G)が印加されるので、FET48はオフとなる。FET48がオフとなると、ツェナーダイオード52の両端電圧がゼロとなり、コンパレータ53の出力がHレベル(以下、単に「H」という)となる。
コンパレータ53の出力がHになると、FET44及び40がオンとなる。FET40のオンにより、V
1ラインの電圧(V
1)がドレイン・ソース間電圧検出回路2のd点に印加される。これにより、ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4が動作を開始する。
【0037】
(3)ドレイン・ソース間電圧検出回路2について
ドレイン・ソース間電圧検出回路2は、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSが閾値以上であるか否かを検出する。すなわち、V
DSと閾値との比較結果を出力する。
【0038】
ドレイン・ソース間電圧検出回路2の回路構成を説明する。
V
1ラインは、抵抗23、P型MOSFET26(以下、「FET26」という)のソース、ドレイン及び抵抗29を介して接地されている。抵抗23とFET26との接続点cは、検出電圧引下回路120を介して接地されている。
検出電圧引下回路120は、定電流I
5の定電流源21(定電流回路)とN型MOSFET22(以下、「FET22」という)との直列回路に定電流I
4の定電流源20(定電流回路)が並列に接続されて構成されている。FET22のゲートは、第1過電流保護信号生成回路7に接続されている。
FET26を流れる電流I
3によって抵抗29の両端に電圧V
Yが発生する。電圧V
Yは、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSに応じて変化する。ドレイン・ソース間電圧V
DSはドレイン電流I
Dに応じて変化するため、電圧V
Yは、ドレイン電流I
Dに応じて変化する。この電圧V
Yは、ドレイン・ソース間電圧V
DSに対応する検出電圧として用いられる。
本実施形態では、FET60のドレインが、本発明の「FETの直流電源側の電極」に対応する。また、検出電圧V
Yが、本発明の「ドレイン・ソース間電圧に対応する検出信号(検出電圧)」に対応する。また、抵抗23、FET26、抵抗29によって、「第2のソースフォロア回路」が形成されている。この第2のソースフォロア回路と検出電圧引下回路120によって、本発明の「ドレイン・ソース間電圧に対応する検出信号を発生する検出信号発生回路」が形成されている。
【0039】
V
2ラインは、抵抗24、P型MOSFET27(以下、「FET27」という)のソース、ドレイン、定電流I
1の定電流源30を介して接地されている。FET27のゲートは、FET27のドレインに接続されている。
また、V
2ラインは、抵抗25、P型MOSFET28(以下、「FET28」という)のソース、ドレイン、抵抗31、抵抗32を介して接地されている。FET28を流れる電流I
2によって抵抗31と32との直列回路の両端に発生する電圧V
X、抵抗32の両端に発生する電圧V
X1は、電圧V
Yと比較する基準電圧として用いられる。
本実施形態では、FET60のソースが、本発明の「FETの負荷側の電極」に対応する。基準電圧V
X、V
X1が、本発明の「基準信号(基準電圧)」に対応する。また、抵抗25、FET28、抵抗31、32によって、「第1のソースフォロア回路」が形成されている。この第1のソースフォロア回路が、本発明の「基準信号を発生する基準信号発生回路」に対応する。
【0040】
FET26、27、28は、同じ特性のP型MOSFETが用いられており、それぞれのゲートは、共通の接続点Eに接続されている。
抵抗29の抵抗値R
29,抵抗31の抵抗値R
31,抵抗32の抵抗値R
32は、[R
29=R
31+R
32]を満足するように設定されている。
また、抵抗23の抵抗値R
23、抵抗24の抵抗値R
24、抵抗25の抵抗値R
25は、同じ値に設定されている(R
23=R
24=R
25)。
【0041】
接続点cから定電流源20、21側へ電流を引き出していない(I
4=0、I
5=0)状態で、[V
Y=V
X]である場合には、[R
29=R
31+R
32]であるから[I
2=I
3]である。また、FET26、28は同じ特性でゲート電位V
Eが等しく、[R
23=R
25]であるから、[V
1=V
2]となる。すなわち、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSは、ゼロである(V
DS=0)。
接続点cから定電流源20、21側へ電流を引き出している(I
4≠0、I
5≠0)状態で、[V
Y=V
X]である場合には、[V
1>V
2]となる。すなわち、V
DSは、ゼロでなく、プラスの値である。
検出電圧引下回路120により引き出す電流を増大させると、電流I
3が減少し、検出電圧V
Yも小さくなる。すなわち、検出電圧V
Yは、引き出し電流を増大させることにより引き下げられる。逆に言えば、基準電圧V
X,V
X1が、相対的に引き上げられる。
【0042】
コンパレータ33は、検出電圧V
Yと基準電圧(基準信号)V
Xを比較するものであり、反転入力端子にV
Xが入力され、非反転入力端子にV
Yが入力される。コンパレータ33の出力端子は、第1過電流保護信号生成回路7(AND回路74)に接続されている。コンパレータ33の出力は、[V
Y<V
X]である場合にL、[V
Y>V
X]である場合にHとなる。
コンパレータ34は、検出電圧V
Yと基準電圧(基準信号)V
X1を比較するものであり、反転入力端子にV
Y、非反転入力端子にV
X1が入力される。コンパレータ34の出力端子は、第2過電流保護信号生成回路8(AND回路84)に接続されている。コンパレータ34の出力は、[V
Y<V
X1]である場合にH、[V
Y>V
X1]である場合にLとなる。
【0043】
ドレイン・ソース間電圧検出回路2の動作を説明する。
([V
G<V
1]の時:FET40オフ)
FET60オンによりソース電圧V
2が上昇し、V
2ラインに接続されている第1のソースフォロア回路に電流I
2が流れる。これにより、基準電圧V
X、V
X1が正の値となる。
一方、FET40はオフであるため、第2のソースフォロア回路にドレイン電圧V
1が印加されず、電流I
3はゼロである。これにより、検出電圧V
Yはゼロである。
従って、[V
X>V
Y]であり、コンパレータ33の出力はLである。
【0044】
([V
G>V
1]となった時:FET40オン)
ゲート電圧V
Gが増大して[V
G>V
1]となると、コンパレータ53の出力がHとなり、FET44及び40がオンする。これにより、V
1ラインから第2のソースフォロア回路にドレイン電圧V
1が印加され、電流I
3が流れる。電流I
4を適切に設定しておくことにより、V
DSが小さい間はV
Yも小さく、[V
X>V
Y]である。これにより、V
DSが小さい間は、コンパレータ33の出力はLである。コンパレータ33の出力がLであると、後述するように、FET22はオフである。
【0045】
(ドレイン電流I
Dが正常範囲で定常的に流れている時:FET22オフ)
FET60のドレイン電流I
Dが正常範囲で定常的に流れているときは、コンパレータ33の出力はLである。コンパレータ33の出力がLである間、FET22はオフである。
【0046】
(FET22がオフの状態でコンパレータ33の出力がHになる時)
FET22がオフの状態で、V
Y(V
DS)が増大して[V
Y>V
X]となると、コンパレータ33の出力がHとなる。コンパレータ33の出力がHとなる時のV
DSの値V
DSAは、以下のようにして求めることができる。なお、V
a、V
b、V
cは、それぞれ
図1のa点、b点、c点の電圧である。
I
2は、(2)式で表される。
I
2=(V
2−V
b)/R
25 (2)式
[R
23(I
3+I
4)=V
1−V
C]および[V
1=V
2+V
DS]であるから、I
3は、(3)式で表される。
I
3=(V
2+V
DS−R
23・I
4−V
c)/R
23 (3)式
V
Xは、(4)式で表される。
V
X=(R
31+R
32)・I
2=(R
31+R
32)(V
2−V
b)/R
25
(4)式
V
Yは、(5)式で表される。
V
Y=R
29・I
3=R
29(V
2+V
DS−R
23・I
4−V
c)/R
23
(5)式
【0047】
[V
Y=V
X]となった時のV
DSが、コンパレータ33の出力がLからHに変化する時のV
DSの値V
DSAであるから、V
DSAは、V
Xを表す(4)式とV
Yを表す(5)式から得た(6)式により表される。
V
DSA=R
23・I
4 (6)式
なお、(4)式から、V
Xは、V
DSによって変化しない電圧であることが分かる。
(5)式から、V
Yは、V
DSに応じて変化する電圧であることが分かる。すなわち、V
DSが小さいときはV
Yも小さく、[V
Y<V
X]である。そして、V
DSが増大するとともにV
Yも増大し、[V
Y=V
X]となった後、[V
Y>V
X]となる。[V
Y>V
X]となると、コンパレータ33の出力がHとなる。
(6)式から、FET22がオフである状態において、コンパレータ33の出力がHになる時のV
DSの値V
DSAは、定電流源20の電流I
4を調整することによって任意に設定することができることがわかる。定電流源20の電流I
4は正確に一定に設定可能であるから、V
DSAは、正確に一定に設定可能である。
詳しくは後述するが、コンパレータ33の出力がHになると、FET22はオンとなる。
【0048】
(FET22がオンの時)
FET22がオンとなると、電流I
5が流れるため、点cから分流する電流は(I
4+I
5)となる。FET22がオンとなっている状態で、コンパレータ33の出力がHとなるときのV
DSの値をV
DSBとすると、V
DSBは(6)式のI
4を(I
4+I
5)に置換した(7)式によって表される。
V
DSB=R
23×(I
4+I
5) (7)式
(I
4+I
5)は正確に一定に設定可能であるから、V
DSBは、正確に一定に設定可能である。
【0049】
また、FET22がオンとなっている状態で、コンパレータ34の出力がLとなるV
DSの値をV
DSCとすると、V
DSCは、以下のようにして求めることができる。
V
X1は、(8)式で表される。
V
X1=R
32×I
2=R
32(V
2−V
b)/R
25 (8)式
V
Yは、(9)式で表される。
V
Y=R
29・I
3
=R
29(V
2+V
DSC−R
23(I
4+I
5)−V
c)/R
23
(9)式
[V
X1=V
Y]となった時のV
DSが、コンパレータ33の出力がHからL変化する時のV
DSの値V
DSCであるから、V
DSCは、V
X1を表す(8)式とV
Yを表す(9)式から得た(10)式で表される。
V
DSC={(R
32−R
29)(V
2−V
b)/R
29}
+R
23(I
4+I
5)+(V
c−V
b) (10)式
【0050】
FET26、28のスレッショルド電圧をV
th、オン抵抗をR
ON1とすると、(V
c−V
b)は、(11)式で表される。
(V
c−V
b)=
R
ON1{V
DSC−R
23(I
4+I
5)}/(R
ON1+R
25)
(11)式
(11)式を(10)式に代入すると、(12)式が得られる。
V
DSC={(R
32−R
29)/R
29}{1+(R
ON1/R
25)}(V
2−V
b)
+R
23(I
4+I
5) (12)式
【0051】
前述したように、[R
31+R
32=R
29]を満足するように構成されているため、[R
32<R
29]である。このため、(12)式の第1項は負となる。(12)式の第2項は、(7)式と同じであるからV
DSBである。即ち、V
DSCは、(R
32−R
29)を調整することによって任意に設定することができる。
V
DSCは、第1項の分だけV
DSBより小であるから、[V
DSC<V
DSB]である。しかし、[V
DSC<V
DSB]であることは、回路構成から直観的に知ることもできる。即ち、回路構成より、[V
X1<V
X]であることが直ちに理解される。そして、V
YがV
X1を超える時のV
DSがV
DSCであり、V
YがV
Xを超える時のV
DSがV
DSBであるから、[V
DSC<V
DSB]であることが直ちに理解される。
なお、(12)式は、正確に一定になるとは言えないR
ON1を含んでいるため、V
DSCを正確に一定に設定することができない。
【0052】
V
DSA,V
DSB,V
DSCをまとめると、次の通りである。
大きさは、[V
DSA<V
DSC<V
DSB]の関係にある。
V
DSA…FET22がオフの状態で、コンパレータ33の出力がHとなるV
DSの値である。
V
DSB…FET22がオンの状態で、コンパレータ33の出力がHとなるV
DSの値である。
V
DSC…FET22がオンの状態で、コンパレータ34の出力がLとなるV
DSの値である。
なお、V
DSA,V
DSB,V
DSCは、本発明の「閾値」に対応する。
【0053】
(4)第1過電流保護信号生成回路7について
第1過電流保護信号生成回路7は、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSが閾値より大きくなった時(検出電圧が基準電圧より大きくなった時)に過電流保護信号(第1過電流保護信号)を生成するものである。
AND回路74には、コンパレータ53の出力とコンパレータ33の出力が入力される。AND回路74の出力は、タイマー73とAND回路72に入力されると共に、第2過電流保護信号生成回路8のDフリップフロップ80に入力される。
タイマー73の出力は、AND回路72とカウンタ部70に入力されると共に、ドレイン・ソース間電圧検出回路2のFET22のゲートおよび第2過電流保護信号生成回路8のAND回路86に入力される。
カウンタ部70のQ出力は、OR回路17に入力される。AND回路72の出力は、ディジタルフィルター71を経てOR回路17に入力される。
【0054】
第1過電流保護信号生成回路7は、以下のように動作する。
(I
Dが正常である時)
FET60がオンし、[V
G>V
1]となると、コンパレータ53の出力がHとなり、FET44及び40がオンとなる。FET40がオンとなると、d点にドレイン電圧V
1が現われ、I
3が流れてV
Yが発生する。
正常な電流が流れている時は、FET60のV
DSは小さく、また、V
YはV
Xより小さい[V
X>V
Y]。これにより、コンパレータ33の出力はLである。したがって、AND回路74の出力及びタイマー73の出力はLであり、FET22はオフのままである。この状態を「Iモード」という。
【0055】
(過電流が流れる時)
I
D(V
DS)が増大して[V
X<V
Y]となると、コンパレータ33の出力がHとなる。これにより、AND回路74の両入力(コンパレータ33、53の出力)がHとなり、AND回路74の出力がHとなる。
AND回路74の出力がHとなると、タイマー設定時間T
Sの間タイマー74の出力がHとなる。なお、タイマー設定時間T
S内にAND回路74の出力がHとならない場合には、タイマー73の出力はLに戻る。
タイマー73の出力がHとなると、FET22がオンし、I
5が流れ始める。この状態を「Tモード」という。
I
5が流れ始めると、接続点cからの引き出し電流が増大し、その分だけI
3が減少し、検出電圧V
Yが引き下げられる(低下する)。言い換えれば、基準電圧V
Xが引き上げられる(増大する)。これにより、[V
X>V
Y]となり、コンパレータ33の出力がLに戻る。
【0056】
(小過電流の場合)
過電流が流れてTモードになると、I
3が減少してV
Yが引き下げられ、[V
Y<V
X]となる。その後、[V
Y>V
X]となるまでV
Yが増大することがない過電流、すなわち、小過電流が流れる場合には、Tモード(V
Yが低下)となった後、[V
X>V
Y]の状態がタイマー設定時間T
S維持される。その後、タイマー73の出力が「L」に戻り、FET22がオフする。FET22がオフすると、I
5がゼロとなり、検出電圧V
Yの引き下げ(基準電圧V
Xの引き上げ)が停止される。すなわち、「Iモード」となる。
「Iモード」の状態で[V
X<V
Y]となると、再び「Tモード」となる。小過電流が流れる続ける間、「Iモード」と「Tモード」の切り替えが繰り返される。
小過電流が流れる期間が短い(例えば、1回あるいは2回繰り返すのみ)場合には過電流保護動作を行う必要はないが、多い場合には過電流保護動作を行う必要がある。このために、カウンタ部70が設けられている。
カウンタ部70は、タイマー73の出力がHとなる毎(Tモードになる毎)にカウント値をカウントアップする。
カウンタ部70のカウント値(カウント数)が設定値(設定回数)Nに達すると、カウンタ部70の出力端子QがHとなる。カウンタ部70の出力端子Qの出力Hは、OR回路17を介して制御回路16に入力される。制御回路16は、OR回路17の出力がHとなると、FET60をオフして過電流保護動作を行う。なお、カウンタ部70は、一定時間内のカウント値(カウント数)が設定値(設定回数)Nに達した時に出力端子QをHとする。
カウンタ部70の出力端子Qの出力Hが、本発明の「第1過電流保護信号」に対応する。
なお、小過電流の検出が、タイマー設定時間T
Sの間隔で連続してN回発生する場合には、期間[T
S×N]経過後にFET60がオフとなる。この期間[T
S×N]は、1秒以下とするのが望ましい。
このように、小過電流が検出される回数が設定回数に達すると、FET60をオフして過電流保護動作を行う。
【0057】
(大過電流の場合)
大過電流が流れる場合には、Tモードになった後もV
DSが増大し続けるため、引き下げられた検出電圧V
Yは直ぐに増大する。そして、タイマー設定時間T
Sが経過する前にV
DS(引き下げられたV
DS)がV
DSBまで上昇し、[V
X<V
Y]となってコンパレータ33の出力がHとなる。これにより、AND回路74の出力がHとなる。AND回路74の出力がHとなった時、タイマー設定時間T
S内であり、タイマー73の出力がHに維持されているため、AND回路72の出力がHとなる。
AND回路72の出力Hは、ディジタルフィルター71に入力される。AND回路72の出力Hが所定時間維持されると、ディジタルフィルター71の出力がHとなる。ディジタルフィルター71の出力Hは、OR回路17を介して制御回路16に入力される。制御回路16は、OR回路17の出力がHとなると、FET60をオフして過電流保護動作を行う。
なお、ディジタルフィルター71は、ノイズ等によってAND回路72の出力が短時間だけHになった時にFET60がオフされるのを防止する、すなわち、ノイズによるFET60の誤遮断を防止するためのものである。
【0058】
(5)第2過電流保護信号生成回路8について
第2過電流保護信号生成回路8は、FET60のドレイン・ソース間電圧V
DSの増加率が閾値より大きくなった時に過電流保護信号(第2過電流保護信号)を生成するものである。
【0059】
AND回路86には、ドレイン・ソース間電圧検出開始回路4のコンパレータ53の出力と第1過電流保護信号形成回路7のタイマー73の出力が入力される。タイマー73の出力がL(「Iモード」)である時には、AND回路86の出力はLであり、時計回路85、カウンタ部82、83がリセットされる。すなわち、第2過電流保護信号生成回路8は、タイマー73の出力がH(「Tモード」)の時に動作する。
AND回路84の入力には、コンパレータ34、AND回路86及び時計回路85の出力が入力される。AND回路84の出力は、カウンタ部83のカウント入力端子に入力される。時計回路85の出力は、カウンタ部82のカウント入力端子にも入力される。
カウンタ部83の出力は、カウンタ部82のセット入力端子に入力される。カウンタ部82のQバー出力端子は、Dフリップフロップ80のリセット端子Rバーに接続されている。Dフリップフロップ80のQ出力端子からの出力は、OR回路17に入力される。
【0060】
カウンタ部83は、AND回路84からのクロック入力をカウントし、クロック入力が停止すると、その時までのカウント値N
83(以下、「第1カウント値」という)をカウンタ部82に出力する。
カウンタ部82は、カウンタ部82から入力された第1カウント値N
83を用いて、(13)式により時間T
82を算出し、算出したT
82を増加率検出時間として設定する。
T
82=K・N
83・T
C+α (13)式
なお、Kは定数、T
Cは時計回路85のクロック周期、αは定数、(N
83・T
C)はN
83をカウントする迄に要した時間(T
83)である。
増加率検出時間T
82が、本発明の「基準時間」に対応する。
カウンタ部82のQバー出力端子は、カウンタ部82がカウントを開始してから増加率検出時間T
82経過するまでHとなり、増加率検出時間T
82経過した後はLとなる。
【0061】
Dフリップフロップ80のリセット端子RバーにHが入力されている間(増加率検出時間T
82内)に、クロック端子CLKへの入力がLからHに立ち上がると、Q出力端子はHとなる。フリップフロップ80のQ出力端子のHは、OR回路17を介して制御回路16に入力される。
Dフリップフロップ80のリセット端子Rバーへの入力がLとなった後(増加率検出時間T
82経過後)は、クロック端子CLKがLからHに立ち上がってもQ出力端子はHとならない。
【0062】
先ず、V
DSの増加率について説明する。
過電流Iは、(14)式に示す指数関数波形で表される。
I=(V
B/R){1−exp(−R・t/L)} (14)式
なお、V
Bは電源電圧、Rは経路抵抗(過電流が流れる経路全体の抵抗)、Lは経路インダクタンス(過電流が流れて経路全体のインダクタンス)、(L/R)は時定数、(V
B/R)は過電流の到達電流値、tは時間である。
【0063】
過電流が
図1の電力供給回路6に流れた時のFET60の周囲温度が上限温度125℃であり、その時のFET60のオン抵抗をR
ON125とすると、V
DSは、(15)式で表される。
V
DS=R
ON125(V
B/R){1−exp(−R・t/L)}
(15)式
【0064】
図6は、V
DS波形曲線を示す図である。なお、
図6の横軸は時間tを示し、縦軸はV
DSを示している。
図6中の1、2、3は、V
DSの3つの波形を表わしている。波形1〜3は、経路は同じであるが接地抵抗の値が異なる場合の過電流IにFET60のオン抵抗R
ON125を乗じてV
DSに変換したものである。
波形1は、接地抵抗が最も小さい場合のものであり、波形3は、接地抵抗が最も大きい場合のものである。
図6から、接地抵抗が小さいほど急激に増大していることが分かる。
【0065】
t
C(t
C1、t
C2、t
C3)、t
B(t
B1、t
B2、t
B3)は、波形1〜3が閾値V
DSC、V
DSBに達するまでの時間である。
ここで、[t=t
C]、[V
DS=V
DSC]の場合の(15)式は(16)式で表される。
V
DSC=R
ON125(V
B/R){1−exp(−R・t
C/L)}
(16)式
(16)式から、tcは(17)式で表わされる。
t
C=−(L/R)ln{1−R・V
DSC/(R
ON125・V
B)}
(17)式
同様に、[V
DS=V
DSB]となる時のt
Bは、(18)式で表される。
t
B=−(L/R)ln{1−R・V
DSB/(R
ON125・V
B)}
(18)式
そして、(17)式と(18)式から、(t
B/t
C)は(19)式で表される。(t
B/t
C)は、V
DSが閾値V
DSB、V
DSCに到達するまでの時間t
B、t
Cの比であるから、「V
DS閾値到達時間比」という。
(t
B/t
C)=ln{1−R・V
DSB/(R
ON125・V
B)}/
ln{1−R・V
DSC/(R
ON125・V
B)}
(19)式
【0066】
電力供給回路6の直流電源63の電圧V
BやFET60のR
ON125は定まっており、V
DSCとV
DSBは任意に定めた閾値である。したがって、(19)式から、(t
B/t
C)は、経路抵抗Rのみの関数であり、経路インダクタンスLに依存しないことが分かる。
経路抵抗Rは、
図1の接地箇所Pまでの回路抵抗と接地抵抗R
67との合計である。接地個所が同じ場合には、接地個所までの回路抵抗は同じである。したがって、(t
B/t
C)は、接地抵抗R
67のみの関数である。
【0067】
図7は、V
DS閾値到達時間比曲線を示す図である。なお、
図7の横軸は接地抵抗R
67を示し、縦軸はV
DS閾値到達時間比(t
B/t
C)を示している。V
DS閾値到達時間比曲線C上の点P
1、P
2、P
3は、
図6の波形1、2、3それぞれにおけるV
DS閾値到達時間比(t
B/t
C)を示している。例えば、点P
1のV
DS閾値到達時間比(t
B/t
C)は、(t
B1/t
C1)である。
図7から、(t
B/t
C)は、接地抵抗R
67が小さいほど小さくなることが分かる。一方、
図6から、接地抵抗が小さいほど過電流の到達値(電流到達値)が大きくなり、過電流の増加率が大きくなることが分かる。すなわち、同一経路を過電流が流れる場合、接地抵抗R
67が小さいほどあるいはV
DSの増加率が大きいほど(t
B/t
C)が小さくなる。したがって、V
DS閾値到達時間比(t
B/t
C)によって、過電流の程度(電流到達値および増加率)を判別することができることが分かる。
【0068】
一方、FET60がオンする時には、経路に突入電流が流れる。この突入電流も指数関数波形となる。しかしながら、このような突入電流が流れた時には、FET60をオフ(遮断)しないように構成する必要がある。そこで、突入電流が流れた場合の電流到達値より大きい電流到達値を選定し、選定した電流到達値に到達する過電流が流れた時の(t
B/t
C)を、過電流保護の閾値(t
B0/t
C0)として設定する。これにより、突入電流が流れた時にFET60が誤遮断されるのを防止することができる。
【0069】
閾値(t
B0/t
C0)を設定する時の経路抵抗RをR
0(接地抵抗R
670)、t
Bをt
B0、t
Cをt
C0とすると、閾値(t
B0/t
C0)は、(20)式で表される。
(t
B0/t
C0)=ln{1−R
0・V
DSB/(R
ON125・V
B)}/
ln{1−R
0・V
DSC/(R
ON125・V
B)}
(20)式
図7では、点P
2、すなわち、
図6の波形2の(t
B2/t
C2)を閾値(t
B0/t
C0)として設定している。
この場合、例えば、点P
1のように、(t
B/t
C)が(t
B0/t
C0)より小さい場合[(t
B/t
C)<(t
B0/t
C0)]には、過電流保護を行い、例えば、点P
3のように、(t
B/t
C)が(t
B0/t
C0)より大きい場合には過電流保護を行わない。
【0070】
以上では、FET60が、周囲温度の上限温度125℃で動作することを前提とした。しかしながら、上限温度125℃より低い周囲温度でFET60が動作する時には、その周囲温度におけるFET60のオン抵抗R
ONは、R
ON125より小さくなる。この場合、R
0が同じであれば、(20)式のR
ON125をR
ONに代えて用いることによって求めた閾値(t
B0/t
C0)が、R
ON125を用いて求めた閾値より大きくなる。このため、動作温度が変わると、(20)式を用いて求めた閾値をそのまま使用することができない。
【0071】
ここで、任意の周囲温度における経路抵抗RとFET60のオン抵抗R
ONとの比(R/R
ON)が、(R
O/R
ON125)と同じ値であれば、(t
B0/t
C0)は、周囲温度に依存しない一定値になる。周囲温度が上限の125℃より低い任意の温度におけるオン抵抗R
ONに対しては、R/R
ON=R
O/R
ON125を満足する、すなわち、[R=R
O・R
ON/R
ON125]を満足する経路抵抗Rの過電流を選定し、選定した過電流にR
ONに乗じたV
DSの波形から(20)式を導出すればよいことになる。
【0072】
これは、閾値に対応する過電流の電流到達値を周囲温度により変えることであり、V
DSの増加率に基づいて保護することできる過電流の下限値が、FET60の周囲温度が上限値125℃である時に最小となり、125℃より低下するにしたがって大きくなることである。この条件を満足すれば、(t
B0/t
C0)は、周囲温度に依存しない固定値となり、V
DSの増加率を検出する閾値として使用することができる。
通常、N型MOSFETのR
ONの温度係数は5000ppm程度であるから、例えば、周囲温度が25℃の時のR
ONは、R
ON125の(1/1.5)となる。従って、周囲温度が25℃の場合に、V
DSの増加率を検出することによって保護することができる過電流の下限値は、125℃の場合の1.5倍の大きさ(電流到達値)となる
V
DSの増加率の検出によって保護することができない過電流は、V
DS(大きさ)を検出することによって保護することになる。このため、周囲温度が低下するにしたがって、V
DS(大きさ)を検出することによって保護する過電流の最大値が大となり、FET60をオフ(遮断)した時のFET60の温度上昇量(=FET60のチャンネル温度−周囲温度)が増大する。しかしながら、このFET60の温度上昇量の増大は、周囲温度の低下により相殺される。このため、周囲温度の上限値125℃において、V
DSの大きさを検出することによってFET60を遮断した時のFET60のチャンネル温度の到達値を超えることがないように、閾値(t
B0/t
C0)を設定することができる。
【0073】
V
DS閾値到達時間比(t
B/t
C)のt
B、t
Cは、電流が流れ始める(電流が上昇し始める)時点を原点(t=0)として計測した時間である。本実施形態では、(t=0)の時点として、[V
G>V
1]となる時点を用いている。
従って、V
DSの増加率によって過電流か否かを検出する際には、先ず、小さい方の閾値V
DSCに達するまでの時間t
Cを計測し、計測したt
cを基に、(21)式により時間T
82を設定する。
T
82=K・t
C+α (21)式
なお、Kは、定数(=t
B0/t
C0)である、αは、[V
G>V
1]となった時点(t
B、t
Cの計測開始時点)で、過電流が、ゼロでない有限な値となった場合に、それを補正するための定数である。
前述した(13)式の[T
82=K・N
83・T
C+α]は、(21)式と同じことを表している。すなわち、(N
83・T
C)は時間t
Cに対応する。
【0074】
時間T
82は、カウンタ部82内に設定される。なお、時間t
Cは、カウンタ部83で計測されて、カウンタ部82に出力される。時間T
82の間にV
DSがV
DSBに達したか否かが、Dフリップフロップ80及びカウンタ部82で判定される。
なお、(21)式によりT
82をその都度求める代わりに、t
Cに対応するT
82を予め計算して対応表に書き込んでおき、対応表より読みだすようにしてもよい。
経路インダクタンスLは、約1μH/mで、配線長に比例する。配線長が長くなると、配線抵抗が大きくなり、その分(19)式のRが大きくなる。即ち、Rが一定という条件は、Lが変化すると完全には成立せず、(21)式のKが厳密には定数とならない。そのズレが問題となるような場合には、ズレを修正する必要がある。例えば、ズレを考慮した対応表を作成しておき、この対応表を用いることによって、適切なT
82を設定することができる。
【0075】
第2過電流保護信号生成回路8の動作を説明する。
([V
DS≦V
DSC]の時)
スイッチ11をオン操作した後(FET60をオンさせる時)、[V
G>V
1]となると、コンパレータ53の出力がHとなる。この時点をt
0とし、検出動作に関する時間の計測の起点とする。
コンパレータ53の出力及びタイマー73の出力がH(「Tモード」)となると、AND回路86の出力Hが時計回路85、カウンタ部83、82にリセット解除信号として入力される。これにより、時計回路85はクロックを出力し、カウンタ部82はそのクロックをカウントする。
[V
G=V
1]となる時点を時刻t
0としているが、t
0におけるドレイン・ソース間電圧V
DSの値をV
DSt0とし、FET60のスレッショルド電圧をV
thとすると、[V
G−V
2≒V
th]となる。時刻t
0では[V
G=V
1]であるから、[V
DSt0=V
1−V
2≒V
th]となる。V
thの大きさは3〜4Vであるから、V
DSt0は3〜4Vとなる。
【0076】
一方、「Iモード」においてコンパレータ33の出力がHになるV
DSAは、たかだか100mVであるから、[V
DSt0>V
DSA]となる。従って、時刻t
0直後にコンパレータ33の出力がHとなり、タイマー73の出力がHとなる。つまり、「Iモード」から「Tモード」に移行する。
時刻t
0を過ぎるとV
DSは急速に縮小し、且つ「Tモード」になって電流I
5が流れ始めるため、V
Yが引き下げられ(低下し)、コンパレータ33の出力はLに復帰する。
時刻t
0以降で、[V
DS≦V
DSC]である間は、コンパレータ34の出力がHとなり、AND回路84の出力は、時計回路85からのクロックに応じたクロック出力となる。この出力はカウンタ部83へ入力されてカウントされる。
なお、[V
X1>V
Y]であるから、[V
X>V
Y]である。このため、コンパレータ33の出力はLであり、AND回路74の出力はLである。
【0077】
([V
DS>V
DSC]となった時:t
C計測が終了する時)
この時点は、
図6の波形1〜3がV
DSCに達した時点である。この時点に到達するまでの時間t
Cは、波形の増加率により異なる。
図6から、V
DCの増加率が大きいほど、V
DSCに達するまでの時間t
Cが短いことが分かる(t
C1<t
C2<t
C3)。
【0078】
[V
DS>V
DSC]となると、コンパレータ34の出力がLとなる。これにより、AND回路84からクロックが出力されなくなり、カウンタ部83のカウントが停止される。
カウントが停止した時のカウント値が第1カウント値N
83である。各波形1、2、3のN
83をN
831、N
832、N
833、クロック周期をT
Cとすると、t
C1、t
C2、t
C3は、次のように表される。
t
C1=N
831・T
C
t
C2=N
832・T
C
t
C3=N
833・T
C
カウンタ部83は、カウントを停止するまでの時間t
C(=N
83・T
C)を、カウンタ部82に出力する。
【0079】
カウンタ部82は、時間t
Cを受け取ると、前記した(13)式により増加率検出時間[T
82=K・N
83・T
C+α]を求め、カウンタ部82内に設定する。各波形1、2、3のT
82をT
821、T
822、T
823とする。カウンタ部82はカウントを続行し、カウント時間がT
82に達するまでQバー出力端子をHとし、カウント時間がT
82達するとQバー出力端子をLとする。
【0080】
([V
DS>V
DSB]となった時:過電流の判定タイミング)
この時点は、
図6の波形1〜3がV
DSBに達した時点である。この時のカウンタ部82のカウント値(以下、「第2カウント値」という)を、波形1、2、3毎にN
B1、N
B2、N
B3とすると、各波形1、2、3がV
DSBに達した時刻t
B1、t
B2、t
B3は、次のように表される、
t
B1=N
B1・T
C (22)式
t
B2=N
B2・T
C (23)式
t
B3=N
B3・T
C (24)式
波形2は閾値(t
B0/t
C0)に対応する波形であるから、[T
822=t
B2]である。従って、[T
821>t
B1]、[T
823<t
B3]となる。
V
DSがV
DSBに達すると、コンパレータ33の出力がHとなるので、AND回路74の出力がLからHに立ち上がる。このHの出力は、Dフリップフロップ80のCLK端子へ入力される。
【0081】
Dフリップフロップ80のRバー端子にHが入力されている時(時間T
82内)に、CLK端子にHが入力されると、Dフリップフロップ80のQ出力端子はHとなる。これにより、制御回路16は,FET60をオフする。
図6の波形1は、カウンタ部82で設定された増加率検出時間T
821に達する前の時刻t
B1(=N
B1・T
C)に[V
DS>V
DSB]となっているため、この場合に該当する。
Dフリップフロップ80のRバー端子にLが入力されている時(時間T
82経過後)に、CLK端子にHが入力されても、Dフリップフロップ80のQ出力端子はLのままである。即ち、増加率が検出基準値より小さいため、過電流保護動作が行われない。
図6の波形3の場合は、増加率検出時間T
823経過後の時刻t
B3(=N
B3・T
C)に[V
DS>V
DSB]となっている。このため、その増加率は、閾値(t
B0/t
C0=T
821/t
C1=T
822/t
C2=T
823/t
C3)より小であり、この場合に該当する。
【0082】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の過電流保護電源装置の第2の実施形態を示す図である。
図1の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付している。
図1に示されている第1の実施形態との第1の相違点は、FET60としてP型MOSFETを用いている点である。
第2の相違点は、FET60のゲート・ソース間に、ツェナーダイオード150が接続されている点である。これにより、ゲート・ソース間電圧が、ツェナーダイオード150のツェナー電圧(例えば、15V)より大きくなるのが防止される。
第3の相違点は、コンパレータ53の入力端子の接続を入れ換えた点である。即ち、反転入力端子を直流電源54に接続し、非反転入力端子をツェナーダイオード52と抵抗50との接続点に接続している。
第4の相違点は、FET60としてP型MOSFETを用いたことに伴い、
図1のチャージポンプ回路13を削除した点である。
第5の相違点は、ダイオード46のアノードの接続先がV1ラインからV2ラインに変更されている点である。
その他は
図1と同じである。本実施形態では、V
1はFET60のソース電圧であり、V
2はドレイン電圧である。
また、FET60のソースが、本発明の「FETの直流電源側の端子」に対応し、FET60のドレインが、本発明の「FETの負荷側の端子」に対応する、
【0083】
駆動回路14のFET141がオン(FET142がオフ)している時には、FET60のゲート・ソース間が短絡され[V
G=V
1]、FET60はオフしている。
FET48のゲート電圧は、V
Gよりダイオード45の順方向電圧(0.6V)だけ低い電圧となる。一方、[V
G>V
2]であるから、ダイオード46が逆バイアスされて抵抗47に電位差が発生せず、FET48はオフしている。これにより、コンパレータ53の出力はLとなる。
駆動回路14のFET142がオン(141がオフ)すると、FET60のゲートが抵抗15を介して接地され、ゲート電圧V
Gは、ソース電圧V
1より低い電圧(例えば、15V低い電圧)に向かって低下して行く。(V
1−V
G)がFET60のスレッショルド電圧を超えたところでFET60がオンし、ドレイン電圧V
2が上昇する。
V
2が上昇してV
1に近づくと、[V
G<V
2]となり、FET48のゲートに、ドレイン電圧V
2を抵抗47、49で分圧した電圧が印加されるので、FET48はオンする。これにより、コンパレータ53の出力がHとなる。以後の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0084】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の過電流保護電源装置の第3の実施形態を示す図である。
図1の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付している。
第1の実施形態では、ドレイン・ソース間電圧検出回路2やドレイン・ソース間電圧検出開始回路4の正極端子及び負極端子は、電力供給回路6の正極端子及び負極端子に接続されている。このため、ドレイン・ソース間電圧検出回路2やドレイン・ソース間電圧検出開始回路4を構成するFETとして、耐圧(ドレイン・ソース間絶対最大定格電圧)が電力供給回路6の電源電圧より大きいものを用いる必要がある。例えば、直流電源63の電圧が500Vである場合には、耐圧が500V以上のFETを使用する必要がある。しかしながら、このようなFETは、大きい形状を有しているため、回路をIC化する際にチップ面積(チップサイズ)が大きくなる。この場合、FETの寄生容量が増大して応答性が低下すると共に、コストが高くなる。
第3の実施形態では、電力供給回路6の電源電圧より低い定電圧を供給する定電圧回路9を設けている。これにより、ドレイン・ソース間電圧検出回路2やドレイン・ソース間電圧検出開始回路4で使用するFETとして耐圧が小さいFETを使用することができる。
【0085】
図3では、定電圧回路9は、電力供給回路6とドレイン・ソース間電圧検出開始回路4との間に挿設されている。定電圧回路9は、カソードがFET60の電源側端子に接続されたツェナーダイオード90と、一端がツェナーダイオード90のアノードに接続され、他端が接地されている抵抗92と、ツェナーダイオード90の両端間に接続されているコンデンサ91とで構成されている。
そして、ツェナーダイオード90の両端間に生ずるツェナー電圧が、ドレイン・ソース間電圧検出回路2やドレイン・ソース間電圧検出開始回路4へ印加される。ドレイン・ソース間電圧検出回路2やドレイン・ソース間電圧検出開始回路4の負極端子ライン152は、ツェナーダイオード90と抵抗92との接続点に接続されている。
過電流保護動作は、第1および第2の実施形態と同様である。
【0086】
なお、ツェナーダイオード90に並列接続されたコンデンサ91は、V
1と接地間の電圧変動を吸収して定電圧に保持する機能を有する。また、外部から印加される高周波電圧振動(ノイズ)の影響を抑制する効果がある。
また、フォトカプラ151は、スイッチ部10と制御回路16とを電気的に切離すためのものであり、必要に応じて設けられる。
また、
図3では、FET60としてN型MOSFETを用いたが、P型MOSFETを用いた場合も同様に構成することができる。
【0087】
[第4の実施形態]
図4は、本発明の過電流保護電源装置の第4の実施形態を示す図である。
図3の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付している。
本実施の形態のドレイン・ソース間電圧検出回路2は、
図3に示した第3の実施の形態のものと以下の点で相違している。
(1)2つの抵抗31、32を廃し、1つの抵抗35を用いた。
(2)コンパレータ34を廃した。
(3)コンパレータ33の出力を処理するDフリップフロップ122、123を設けた。
(4)検出電圧引下回路120を構成する定電流回路の並列数を増やした。
【0088】
抵抗35は、FET28のドレインに接続されている。抵抗35の抵抗値は、FET26のドレインに接続される抵抗29と同じ抵抗値に設定される。抵抗35の両端に発生する電圧をV
Xとする。
コンパレータ33は、V
XとV
Yを比較するためのものであり、反転入力端子にV
Xが入力され、非反転入力端子にV
Yが入力される。コンパレータ33の出力端子は、Dフリップフロップ122、123のクロック端子CLKに接続されると共に、第1過電流保護信号生成回路7のAND回路75の入力端子と接続されている。
Dフリップフロップ122のD端子には、負極が負極端子ライン152に接続された直流電源121の正極が接続される。Dフリップフロップ122のQ出力端子は、Dフリップフロップ123のD端子に接続されると共に、FET38のゲートに接続されている。Dフリップフロップ123のQ出力端子は、FET39のゲートと接続されていると共に、AND回路76の入力端子に接続されている。
【0089】
また、本実施の形態の第1過電流保護信号生成回路7は、
図3に示した第3の実施形態のものと以下の点で相違している。
(1)AND回路74を廃し、2つのAND回路75,76を設けた。
(2)タイマー73の出力端子を、Dフリップフロップ122、123のリセット端子Rバーにも接続した。
【0090】
第1過電流保護信号生成回路7のAND回路75には、コンパレータ33の出力とコンパレータ53の出力が入力される。AND回路75の出力は、タイマー73に入力されると共に、AND回路72に入力される。
AND回路76には、Dフリップフロップ123のQ出力端子の出力とコンパレータ53の出力が入力される。AND回路76の出力は、Dフリップフロップ80のクロック端子CLKに入力される。
【0091】
本実施の形態の過電流保護電源装置は、以下のように動作する。
([V
G<V
1]である時)
FET60がオフのときや、オンしてもまだ[V
G<V
1]であるときは、コンパレータ53の出力はLである。これにより、タイマー73の出力がLであり、FET22がオフしている。また,Dフリップフロップ122、123がリセットされ、FET38、39がオフしている。また,I
1、I
2は流れているが、FET40がオフしているのでI
3〜I
7は流れていない。
【0092】
([V
G>V
1]となった時)
[V
G>V
1]となると、コンパレータ53の出力がHとなり、FET40がオンする。これにより、電流I
4が流れ、「Iモード」となる。
また、[V
G>V
1]となった直後のV
DSは、飽和前の大きな値となり、V
DSAより大きい。このため、[V
Y>V
X]となり、コンパレータ33の出力はHとなる。
コンパレータ53および33の出力がHとなることにより、AND回路75の出力,タイマー73の出力及びAND回路86の出力がHとなり、カウンタ部82、83及び時計回路85のリセットが解除される。これにより、時計回路85は、クロックをAND回路84とカウンタ部82に出力する。
また、タイマー73の出力がHとなることにより、「Tモード」となるとともに,Dフリップフロップ122及び123のリセットが解除される。「Tモード」になると、FET22がオンして電流I
5が流れ始める。これにより、電流I
1,I
4,I
5が流れ、電流I
6,I
7が流れないという状態になる。この状態により、Tモードの閾値V
DSCが設定される。
なお、電流I
5が流れ始めると、その分電流I
3が減少するため、V
Yが引き下げられる。これにより、[V
Y<V
X]となり、コンパレータ33の出力がLに戻る。
Dフリップフロップ122のQバー出力はHのままであるため、AND回路84は、時計回路85から入力されたクロックをカウンタ部83に出力し、カウンタ部83は、入力されるクロックをカウントする。
【0093】
(I
Dが増大し、V
DSがV
DSCに達した時)
I
D(V
DS)の増大によりV
Yが増大し、[V
Y>V
X]([V
DS>V
DSC])となると、コンパレータ33の出力がHとなる。これにより、Dフリップフロップ122のQバー出力がLとなり、Q出力がHとなる。
Dフリップフロップ122のQバー出力がLとなると、AND回路84の出力がLとなり、カウンタ部83のカウントが停止する。この時、カウンタ部83は、それまでのカウント値にクロックの周期T
Cを乗じた値をt
Cとし、カウンタ部82へ出力する。カウンタ部82は、受け取ったt
Cに基づいて変化率検出時間T
82を設定し、変化率検出時間T
82が経過するまでQバー出力をHとする。
【0094】
Dフリップフロップ122のQ出力がHとなると、FET38がオンし、電流I
1、I
4、I
5、I
6が流れ、電流I
7が流れない状態となる。この状態により、「Tモード」の閾値V
DSBが設定される。
なお、電流I
6が流れ始めると、その分電流I
3が減少するため、V
Yが引き下げられ、[V
Y<V
X]となってコンパレータ33の出力がLに戻る。
【0095】
(更にI
Dが増大し、V
DSがV
DSBに達した時)
I
D(V
DS)の増大によりV
Yが増大し、[V
Y>V
X]([V
DS>V
DSB])となると、コンパレータ33の出力がHとなる。これにより、Dフリップフロップ123のQバー出力がLとなり、Q出力がHとなる。
Dフリップフロップ123のQ出力がHとなると、AND回路76の出力がHとなると共に、FET39がオンする。
AND回路76の出力Hは、Dフリップフロップ80のクロック入力端子CLKに入力される。Dフリップフロップ80のリセット端子Rバーには、増加率検出時間T
82が経過するまでカウンタ部82からHが入力されている。この増加率検出時間T
82内にクロック入力端子CLKにHが入力された場合には、Dフリップフロップ80のQ出力端子がHとなる。この出力Hは、OR回路17を介して制御回路16に入力される。増加率検出時間T
82経過後にクロック入力端子CLKにHが入力された場合には、Dフリップフロップ80のQ出力端子はLのままである。
【0096】
また、FET39がオンすると、電流I
1、I
4、I
5、I
6、I
7が流れる状態となる。この状態により、「Tモード」の閾値V
DSDが設定される。
なお、電流I
7が流れ始めると、その分電流I
3が減少するため、V
Yが引き下げられ、[V
Y<V
X]となってコンパレータ33の出力がLに戻る。
【0097】
(更にI
Dが増大し、V
DSがV
DSDまで増加したとき
I
D(V
DS)の増大によりV
Yが増大し、[V
Y>V
X]([V
DS>V
DSD])となると、コンパレータ33の出力がHとなる。これにより、AND回路75の出力がHとなる。AND回路75の出力Hは、AND回路72の一方の入力端子に入力されると共に、タイマー73に入力される。この場合、V
Yの引き下げ(低減)のため引出電流の追加が行われないから、コンパレータ33の出力はHを維持し、AND回路75および72の出力はHの状態を維持する。
AND回路72の出力Hは、ディジタルフィルター71に入力される。そして、AND回路72の出力Hが所定時間維持されると、ディジタルフィルター71の出力がHとなり、制御回路16に過電流保護信号が入力される。
【0098】
本実施形態は、以下のように利点を有する。
本実施形態では、[V
Y=V
X]となってコンパレータ33の出力がHとなる時点の直前では、V
Y、V
Xを発生させるFET26、28の電流は等しくなっており、FET26、28のソース間に電位差はない。これにより、基準値を設定するに際し、(12)式中のR
ON1の影響を受けることがなくなるため、基準値の設定精度が良くなる。
図1〜3に示されている第1〜3の実施形態では、V
X、V
X1を、抵抗31、32を用いて設定したが、本実施形態では、接続点cから定電流を引き出す定電流回路を増やし、引き出し電流値を変えることによって設定している。このため、過電流保護電源装置をIC化する場合に、電流値をトリミングすることによって閾値を変更することができる。
ドレイン・ソース間電圧検出回路2の対称性が向上するため、高周波電磁波や高周波ノイズに対する耐性が向上する。
コンパレータの数を減少させ、減少した分をディジタル回路で補うようにしたので、チップ面積を小さくすることができる。
【0099】
[第5の実施形態]
図8は、本発明の過電流保護電源装置の第5の実施形態を示す図である。
図3、
図4の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付している。
なお、
図8では、FET60としてN型MOSFETを用いた場合を示しているが、P型MOSFETを用いることもできる。この場合、必要に応じて他のFETの型も変更することができる。
【0100】
本実施形態では、
図4に示されている第4の実施形態の第2過電流保護信号生成回路8を排し、それに伴って、ドレイン・ソース間電圧検出回路2の構成を変更した。
ドレイン・ソース間電圧検出回路2の構成の変更内容は、以下のとおりである。
図4のドレイン・ソース間電圧検出回路2から、直流電源121、Dフリップフロップ122、123を除去した。
検出電圧引下回路120の代わりに、ドレイン・ソース間電圧閾値設定回路124を用いた。
【0101】
ドレイン・ソース間電圧閾値設定回路124の1例について説明する。
d点と接地との間に、FET93のソース、ドレインと抵抗95が直列に接続されている。また、d点と負極端子ライン152との間に、FET93とカレントミラー接続されたFET94のソース、ドレインとFET96のドレイン、ソースが直列に接続されている。
FET97と98は、FET96とカレントミラー接続されている。FET97のドレインは、FET26のソース(c点)に接続され、ソースは、負極端子ライン152に接続されている。FET98のドレインは、FET26のソース(c点)に接続され、ソースは、FET39のドレインに接続されている。FET39のソースは、負極端子ライン152に接続されている。FET39のゲートは、タイマー73の出力端子に接続されている。
【0102】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
([V
G<V
1]である時]
FET60がオフの時や、オンしてもまだ[V
G<V
1]である時には、コンパレータ53の出力はLであり、FET40はオフとなっている。
また、コンパレータ53の出力がLであるため、AND回路75の出力及びタイマー73の出力がLであり、FET39はオフである(「Iモード」)。
【0103】
([V
G>V
1]となった時)
[V
G>V
1]となると、コンパレータ53の出力がHとなる。これにより、FET40がオンとなって、電流I
3、I
4およびI
8が流れ始める。この時、V
DSは飽和前の大きな値となっており、閾値V
DSAより大きい。このため、抵抗29を流れる電流I
3は、抵抗35を流れる電流I
2より大きい([I
3>I
2])。したがって、[V
Y>V
X]となり、コンパレータ33の出力がHとなる。これにより、コンパレータ33、53の出力が共にHとなるため、AND回路75の出力がHとなり、タイマー73の出力がHとなる。タイマー73の出力がHとなると、FET39がオンする(「Tモード」)。
FET39がオンすることによって電流I
7が流れ始めると、c点から引き出される電流は(I
4+I
7)となる。これにより、閾値[V
DSD=R
23(I
4+I
7)]が設定される。電流I
4、I
7は電流I
8に比例している。FET93のスレッショルド電圧をV
th、抵抗95の抵抗値をR
95とすると、[I
8=(V
1−V
th)/R
95]となる。[V
1≫V
th]であるから、I
8は、V
1にほぼ比例するといえる。すなわち、電流I
4、I
7は、電圧V
1に連動(ほぼ比例)して変わる。したがって、閾値V
DSDも、電圧V
1に連動(ほぼ比例)して変わる。
本明細書では、「連動する」という記載は、「比例する」あるいは「ほぼ比例する」ことを表している。
なお、電流I
7が流れ始めると、その分だけ電流I
3が減少するため、[I
3<I
2]となる。このため、[V
Y<V
X]となってコンパレータ33の出力がLに戻る。
【0104】
(過電流が流れる時)
I
Dが増大してV
DSが「Iモード」の閾値V
DSAより大きくなり、[V
X<V
Y]となると、コンパレータ33の出力がHとなって、AND回路75の出力がHとなる。これにより、タイマー設定時間T
Sの間タイマー73の出力がHとなり、FET39がオンする(「Tモード」)。
「Tモード」となって電流I
7が流れ始めることにより電流I
3(V
Y)が減少し、[V
X>V
Y]となってコンパレータ33の出力がLに戻る。タイマー73の出力Hは、タイマー設定時間T
Sの間維持される。
【0105】
(小過電流の場合)
小過電流が流れる場合には、V
Yが引き下げられたTモードとなった後、[V
X>V
Y]の状態がタイマー設定時間T
S維持される。このため、タイマー設定時間T
Sが経過した後、タイマー73の出力が「L」に戻り、FET39がオフしてV
Yの引き下げが停止される(「Iモード」)。カウンタ部70は、タイマー73の出力がHになる毎(「Tモード」になる毎)にカウント値をカウントアップする。
小電流が流れた場合の動作は、第1〜4の実施形態と同様である。
【0106】
(大過電流の場合)
大過電流が流れる場合には、Tモードになった後もV
DSが増大し続けるため、引き下げられた検出電圧V
Yは直ぐに増大する。そして、タイマー設定時間T
Sが経過する前に、V
DSがV
DSBまで上昇し、[V
X<V
Y]となってコンパレータ33の出力がHとなる。これにより、AND回路72の出力Hがディジタルフィルター71に入力される。
大電流が流れた場合の動作は、第1〜4の実施形態と同様である。
【0107】
図9は、第5の実施形態において、突入電流や接地電流が流れた時のドレイン・ソース間電圧V
DSと、その時の閾値V
DSDとの関係を示す図である。なお、
図9の横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。
図9(1)は、突入電流が流れた時のV
DSとV
DSDとの関係を示している。
図9(2)は、接地事故により過電流が流れた時のV
DSとV
DSDとの関係を示している。
【0108】
先ず、
図9(1)について説明する。曲線1は、突入電流が流れた時の過電流検出用の閾値V
DSDを示し、曲線2は、突入電流をV
DSに変換した値を示している。曲線2は、当初は急激に増大し、次第に緩やかとなり、やがてほぼ一定の値となる(飽和する)。これは、電力供給回路6に流れる電流I
Dは、流れ始めた当初は急激に増大するが、飽和値(到達値)に近づくとほぼ一定値になるということを表している。
通常、FET60がオンした時には、電力供給回路6に突入電流が流れる。従って、突入電流が流れた場合には過電流保護動作を行わないように構成する必要がある。言い換えれば、曲線1は、突入電流がゼロから飽和する迄の範囲内で曲線2を上回っている必要がある。曲線2が、どこかで曲線1と交差し、曲線1(閾値)を上回ると、そこで過電流であることが検出され、過電流保護動作が開始されてしまう。
【0109】
V
DSDやV
DSを求め、突入電流発生時に[V
DSD>V
DS]の関係にすることについて説明する。
閾値V
DSAまたはV
DSDは、c点から引出された電流により抵抗23(R
23)に発生する電圧降下として設定される。従って、引出し電流がI
4だけのときは[V
DSA=R
23・I
4]であり、引出し電流が(I
4+I
7)のときは(25)式で表される。
V
DSD=R
23(I
4+I
7) (25)式
【0110】
電流(I
4+I
7)は、電圧V
1に連動した値である。この場合、電流(I
4+I
7)は、電圧V
1にほぼ比例する値であるとみなすことができ、比例定数をK
1とすると、(26)式で表される。
(I
4+I
7)=K
1・V
1 (26)式
(25)式と(26)式より、(27)式を得ることができる。
V
DSD=R
23・K
1・V
1 (27)式
飽和時のV
DSDは、(27)式のV
1に飽和時のV
1を代入することによって得ることができる。飽和時のV
1は、FET60のオン抵抗R
ONを無視すると、電源電圧V
Bを回路内の抵抗成分R
61、R
66により分圧した一定値として求められる。この飽和時のV1は、[V
1=V
B・R
66/(R
61+R
66)]である。
従って、飽和時のV
DSDは、(28)式により表される。
V
DSD=R
23・K
1・V
B・R
66/(R
61+R
66) (28)式
【0111】
なお、突入電流I
Dが、まだ飽和せず増加状態にある時点では、電力供給回路6中のインダクタンスによる電圧降下(逆起電力)も発生するので、その時点のV
1は、飽和時の値より小さい。インダクタンスによる電圧降下は、突入電流I
Dの増加率が大きいほど大きいから、V
1は、突入電流I
Dの増加率が大きい時ほど小さくなる。
突入電流I
Dの増加率は、当初は大きく、次第に小さくなるというように単調に変化する。このため、V
1は、小さな値から次第に大きくなり、飽和時には一定値となるというように単調に増加する。従って、V
1に連動して設定されるV
DSDも、単調に増加する。
【0112】
一方、FET60のオン抵抗はR
ONであり、FET60に突入電流I
Dが流れた時のV
DSは、(29)式で表される。
V
DS=R
ON・I
D (29)式
突入電流I
Dの飽和値は、(30)式で表される。
I
D=V
B/(R
61+R
66) (30)式
従って、飽和時のV
DSは、(31)式で表される。
V
DS=R
ON・I
D
=R
ON・V
B/(R
61+R
66) (31)式
【0113】
突入電流I
Dは、単調に増加し、飽和時に最大値となる。
先ず、最大値となる飽和時において、[V
DSD>V
DS]となるように設定することを考える。
(28)式と(31)式を用いて[V
DSD>V
DS]の演算を行うと、(32)式が得られる。
R
23・K
1・R
66>R
ON (32)式。
(32)式を変形すると(33)式が得られる。
K
1>R
ON/(R
23・R
66) (33)式
すなわち、突入電流I
Dが飽和するとV
1も飽和し、突入電流I
Dに比例するV
DSも飽和し、V
1に比例するV
DSDも飽和する。この時に、V
DSの飽和値よりV
DSDの飽和値が大きくなるようにするには、K
1を、(33)式を満たす値に設定すればよいことが分かる。
【0114】
K
1を、(33)式を満たす値に設定すれば、R
ON、R
23、R66は固定値であり、突入電流I
Dがゼロから飽和に至るまでの間で変化することはないから、(32)式または(33)式は、ゼロから飽和に至るまでの間においても成立する。
【0115】
電力供給回路6に電流I
Dが流れているときは、電圧V
1は、負荷66(抵抗R
66)に発生する電圧降下とインダクタンス64および65に発生する逆起電力との和である。電流I
Dが単調に増加する場合には、インダクタンス64および65に発生する逆起電力の向きはFET60側がプラス、負荷66側がマイナスとなる。これにより、電圧V
1が、負荷66(R
66)の両端に生ずる電圧降下より大きいことは、回路構成から明らかである。
従って、(34)式が成り立つ。
V
1≧R
66・I
D (34)式
(27)式と(34)式とにより、(35)式が成り立つ。
V
DSD=R
23・K
1・V
1≧R
23・K
1・R
66・I
D (35)式
(32)式を考慮すると、(36)式を得ることができる。
V
DSD>R
ON・I
D (36)式
この時の電流I
Dは、突入電流のゼロから飽和値までを表し、右辺の値(R
ON・I
D)は、V
DSを表している。
従って、(36)式は、突入電流のゼロから飽和値に至るまで、[V
DSD>V
DS]であることを示している。それゆえ、K1を、(33)式を満たす値に設定すれば、突入電流が流れた場合には、過電流保護動作は行われない。
【0116】
突入電流I
DがFET60に流れる時のFET60のソースと接地(GND)との間の抵抗はR
66である。R
66に対して、(33)式を満足するK
1を設定し、そのK
1を用いた閾値V
DSDをV
DSDK1とする。V
DSDK1に対して、過電流I
DのV
DS変換値が飽和時に一致するような過電流I
Dが流れるときのFET60のソース〜接地間の抵抗をR
Xとすると、飽和時のV
DS、飽和時のV
DSDK1は、以下のように表わされる。
飽和時のV
DS=R
ON・I
D=R
ON・V
B/(R
61+R
X)
飽和時のV
DSDK1=R
23・K
1・V
1
=R
23・K
1・V
B・R
X/(R
61+R
X)
飽和時のV
DS=飽和時のV
DSDK1であるから、R
ON、R
Xは、(37)式で表される。
R
ON=R
23・K
1・R
X
R
X=R
ON/(R
23・K
1) (37)
【0117】
(33)式は、[R
66>R
ON/(R
23・K
1)]と表されるので、R
Xは、R
66より小さい。V
DSDがV
1に比例する時の比例定数(R
23・K
1)が決まると、V
DSDK1とV
DSが飽和時に等しくなるような過電流が流れる時のR
Xが(37)式により求まることがわかる。
FET60のソースと接地との間の抵抗値がR
Xより小さいときは、過電流が飽和したときに[V
DS>V
DSD]となり、FET60が遮断される。
一方、FET60のソースと接地との間の抵抗値がR
Xより大きいときは、過電流I
Dがゼロから飽和に至るまでの間で[V
DS<V
DSD]となり、小過電流保護のメカニズム(
図8のカウンタ部70の出力がHになる)が働くまでFET60は遮断されない。
【0118】
R
Xは、FET60のソースと接地間の抵抗であり、
図8の回路では負荷抵抗R
66と接地抵抗R
67との並列合成抵抗になるので、以下のように表される。
R
X=R
66・R
67/(R
66+R
67)
負荷66に突入電流I
Dが流れるときは、R
66は、小さな値となるが、負荷66に定常負荷電流が流れているときは、R
66は、R
67に比べて大きな値となり、R
X≒R
67となる。
ここで注目すべきは、K
1が決まるとそれに対応してR
Xが決まり、FET60のソースと接地との間の抵抗がR
Xより小さくなると、そのとき流れる過電流は、FET60のソースから接地抵抗67までの経路長および負荷までの経路長の如何に関わらず、飽和する前に全て遮断されることである。
【0119】
R
Xは、一個の抵抗で構成されても良いし、複数個の抵抗の並列合成で構成されても良い。また、FET60のソースと接地との間の抵抗がR
Xより大きくなると、[V
DS<V
DSD]となり、FET60を流れる電流は、閾値V
DSDによるレベル検出では遮断されない。即ち、K
1を設定すると、K
1に対して(37)式によりR
Xが決まり、そのR
Xと比較してFET60のソース〜接地間の抵抗値が小さいか否かで過電流の判定が行われることになる。
FET60のソースと接地間の抵抗値がR
Xとなる時のFET60のドレイン電流をV
DS変換した曲線は、
図9(1)において、曲線1と2との中間に位置することになり、飽和時にはV
DSDK1の曲線(図示せず)と一致することになる。
【0120】
以上の説明ではV
DSDを先に設定して、それに対応するR
Xを求めたが、実際の過電流検出ではR
Xを最初に設定し、それに対応する閾値V
DSDを求めることになる。以下にその方法を説明する。
(1)FET60を流れる電流はFET60と接地(GND)間の抵抗に依存する。
(2)各電流に対して、過電流と判定する電流範囲内の下限値を設定し、そのときのFET60〜接地間の抵抗値R
Xを求める。
(3)R
Xに対して、[K
1=R
ON/(R
23・R
X)]を満足するK
1を求める。そして、求めたK
1を用いて、V
DS(大きさ)を判定する閾値V
DSD[V
DSD=K
1・R
23・V
1]を設定する。すなわち、閾値V
DSDは、V
1に連動して変化する(この場合は、比例定数(K
1・R
23)に比例する)。
(4)このようにV
DSDを設定すると、FET60〜接地間の抵抗値に依存して流れる電流のうち、過電流と判定する電流範囲内の下限値となる過電流(このときのFET60〜接地間の抵抗値はR
Xである)が流れて飽和したときには、V
DSがV
DSDと一致[V
DS=V
DSD]する。一方、FET60〜接地間の抵抗値がR
Xより小さい場合の過電流(下限値を上回る値を有する過電流)が流れて飽和したときには、[V
DS>V
DSD]となる。従って、V
DSを閾値V
DSDと比較することによって、FET60〜接地間の抵抗値がR
Xまたはそれ以下となる過電流を検出することが出来る。
(5)過電流と判定する範囲が変わり、FET60〜接地間の抵抗値R
Xが変化する場合には、それに応じてK
1を変化させ、閾値(例えば、V
DSA、V
DSD等)を設定する。
(6)ここで、K
1は、R
Xを用いて、式[K
1=R
ON/(R
23・R
X)]((37)式参照)により決定される。この式は、R
ONを含んでいる。R
ONは、FET60のチャンネル温度に応じて変化する。このため、FET60のチャンネル温度が変化すると、R
ONが変化し、K
1は定数にならない。一方、K
1は、
図8の抵抗95の値R
95を用いて設定するため、R
ONの変化に追随できない。より確実に過電流保護を行うためには、FET60のチャンネル温度の変化を考慮する必要がある。
一つの対応策として、(R
ON/R
X)が一定になるようにR
Xを設定する方法が考えられる。例えば、FET60の動作周囲温度の上限温度(例えば、125℃)の時のオン抵抗R
ON125を用いてK
1を設定する。そして、FETの動作周囲温度が上限温度より低くなってR
ONがR
ON125より小さくなった場合は、R
Xも比例して小さくし、過電流と判定する電流範囲内の下限値をR
ONに反比例して大きくするように構成する。即ち、過電流と判定する電流範囲内の下限値よりR
ONの減少分に対応する値だけ大きい電流値を有する電流が流れた場合の飽和時に、V
DSがV
DSDと一致[V
DS=V
DSD]するように構成する。なお、K1を設定する際のFET60の動作周囲温度としては、FET60の動作が許容される温度範囲内の適宜の温度を選択することができる。
【0121】
なお、V
DSDとV
1との連動関係を、「FET60〜接地間の抵抗値に依存して流れる電流のうち、過電流と判定する電流範囲内の下限電流値を有する過電流(このときのFET60〜接地間の抵抗値はR
Xである)が流れて飽和したときには[V
DS=V
DSD]となり、FET60〜接地間の抵抗値がR
Xより小さい場合の過電流(下限値を上回る値を有する過電流)が流れて飽和したときには[V
DS>V
DSD]となるように設定することは、FETと接地間の抵抗値が、過電流として判別される電流値範囲に対応する抵抗値範囲のうちの上限の抵抗値である場合における電流の飽和時に、ドレイン・ソース間電圧が前記閾値に等しくなり、上限の抵抗値以下の抵抗値である場合における電流の飽和時に、ドレイン・ソース間電圧が前記閾値より大きくなるように設定することと等価である。
しかしながら、FET60〜接地間の抵抗の抵抗値が同じであっても、これらの抵抗を流れる電流は、直流電源の電圧、直流電源の内部抵抗、電源線の抵抗等の電源側の状態に依存して変化する。これに対して、過電流の発生原因となるFET60〜接地間の抵抗値は、電流のように電源側の状態によって変化することはない。従って、後者は、得られる結果は前者と等価であるが、過電流を検出する方法として、電流値を検出する方法ではなく、FET60〜接地間の抵抗値を検出する方法を用いているというのが適切である。
【0122】
次に
図9(2)について説明する。
図9(2)には、第1の接地事故(事故A)に関係した曲線(3A、4A)と、第2の接地事故(事故B)に関係した曲線(3B、4B)が示されている。事故Aおよび事故BにおけるFET60のソースと接地間の抵抗は、R
Xより小さい。
曲線3Aは、第1の接地事故により過電流が流れた時におけるFET60のドレイン・ソース間電圧V
DSを示している(電流I
Dが大きいと、FET60での電圧降下であるV
DSも大きい)。曲線4Aは、第1の接地事故により過電流が流れた時における閾値V
DSDを示している。
【0123】
曲線3Bは、第2の接地事故により過電流が流れた時におけるFET60のドレイン・ソース間電圧V
DSを示している。曲線4Bは、第2の接地事故により過電流が流れた時における閾値V
DSDを示している。
図8では、電力供給回路6内のP点で接地事故が発生したものとしているが、接地事故により流れる過電流の大きさ(到達電流値あるいは飽和値:これが大きいほど増加率も大きい)は、接地箇所や接地抵抗67の値等によって異なる。
【0124】
図9(2)では、第2の接地事故の過電流の到達電流値の方が、第1の接地事故の過電流の到達電流値より大きい(増加率が大きい)場合を示している。したがって、曲線3Bの方が曲線3Aより急激に増加し、上側に位置している。
また、既に述べたように、過電流の到達電流値が大きいほど電圧V
1の飽和値が小さくなり、V
1に連動するV
DSDも小さくなる。従って、過電流の到達電流値が大きい場合のV
DSD(曲線4B)の方が、過電流の到達電流値が小さい場合のV
DSD(曲線4A)より小さい(曲線4Bが曲線4Aの下側に位置している)。
【0125】
今、第1の接地事故の場合(曲線3A、4A)について考える。第1の接地事故、第2の接地事故とも、FET60のソースと接地間の抵抗はR
Xより小さいから、過電流I
DのV
DS値は、飽和時において閾値V
DSDより大きくなる。
過電流I
Dはゼロからスタートするから、V
DS(=R
ON・I
D)の初期値はゼロである。V
1の初期値は、FET60から接地箇所P点までの経路長がゼロという特殊な場合を除くと、経路長に付随するインダクタンスに増加状態の電流が流れて逆起電力が発生するので、ゼロではない。従って、V
1に連動して定められるV
DSDの初期値もゼロではない。
【0126】
従って、V
DSは、初期においてはV
DSDより小さな値から出発し、途中は単調に増加し、最後の飽和時にはV
DSDより大きくなる。すなわち、V
DSが飽和値に達する前に、V
DSがV
DSDと等しくなる時点がある。
その時点は、曲線3Aと曲線4Aとが交差する交点C
1の時点t
1である。この時、[V
DS=V
DSD]となるため、コンパレータ33の出力がHとなり、前記したような動作を経てディジタルフィルター71の出力がHとなる。これにより、FET60がオフされ、過電流保護が行われる。
【0127】
次に、第2の接地事故の場合(曲線3B、4B)について考える。この場合には、V
DSがV
DSDと等しくなる時点は、曲線3Bと曲線4Bとが交差する交点C
2の時点t
2である。従って、時点t
2で過電流保護が行われる。
時点t
1とt
2とを比べると、時点t
2の方が早い。その理由は、曲線3Bと曲線4Bとの交点C
2が、増加率が曲線3Aより大きい(3Aより上側に位置する)曲線3Bと、閾値V
DSDが曲線4Aより小さい(4Aより下側に位置する)曲線4Bとの交点であるため、曲線3Aと曲線4Aとの交点C
1より早い時点で発生する(交点C
1より左側に位置する)からである。
【0128】
このことは、到達電流値が大きいほど(増加率が大きいほど)、過電流保護が行われる時点が早められることを意味している。すなわち、第5の実施形態は、第1〜4の実施の形態のように、増加率を検出して過電流保護信号を生成する第2過電流保護信号生成回路8を備えていないが、到達電流値が大きい(増加率が大きい)ほど、早い時点で過電流保護動作を行っている。したがって、実質的に、第1〜4の実施形態と同様に、増加率を検出して過電流保護動作を行うという効果を奏している。
【0129】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
請求項には、電源投入時の誤動作を防止するためのドレイン・ソース間電圧検出開始回路を備える過電流保護電源装置を記載したが、本発明は、ドレイン・ソース間電圧検出開始回路を備えていない過電流保護電源装置として構成することもできる。
パワースイッチング素子としては、MOSFETに限定されず、種々の構成のFETを用いることができる。
[V
DSが閾値(例えば、V
DSA、V
DSB、V
DSC、V
DSD)より大きくなった場合]([V
DS>閾値])という条件としては、[V
DSが閾値以上となった場合]([V
DS≧閾値])という条件を用いることもできる。
本発明の過電流保護電源装置は、高電圧の直流電源から負荷に電力を供給する際に好適に用いられるが、種々の電圧の直流電源から負荷に供給する際に用いることができる。
電力供給回路、ドレイン・ソース間電圧検出回路、ドレイン・ソース電圧検出開始回路、第1過電流保護信号生成回路、第2過電流保護信号生成回路としては、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の構成のものを用いることができる。
実施の形態では、ドレイン・ソース間電圧に対する異なる閾値を設定するために、検出電圧(検出信号)の大きさを引き下げる(低下させる)引下回路を投入/切り離し可能に設けたが、基準電圧(基準信号)の大きさ(基準値)を引き上げる(増加させる)引上回路を投入/切り離し可能に設けることもできる。
実施の形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
【0130】
本発明は、
「直流電源からFETを介して負荷に電力を供給する電力供給回路と、前記FETを制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記FETをオフすることによって前記電力供給回路を過電流から保護する過電流保護電源装置であって、
前記FETにドレイン電流が流れることによってドレイン・ソース間に発生するドレイン・ソース間電圧を検出するドレイン・ソース間電圧検出回路と、
前記FETをオンさせるときに、前記ドレイン・ソース間電圧検出回路によるドレイン・ソース間電圧の検出動作を、前記FETが、ドレイン電流の増大に応じてドレイン・ソース間電圧が増大する状態になってから開始させるドレイン・ソース間電圧検出開始回路と、
前記ドレイン・ソース間電圧に基づいて第1過電流保護信号を出力する第1過電流保護信号生成回路を備え、
前記制御回路は、前記第1過電流保護信号生成回路から前記第1過電流保護信号が出力されたことにより前記FETをオフするように構成されており、
前記ドレイン・ソース間電圧検出回路は、閾値を用いた大きさ判定によって前記ドレイン・ソース間電圧を検出するように構成されており、前記閾値を前記FETの直流電源側の電極の電位に連動させ、前記閾値と前記FETの直流電源側の電極の電位との連動関係を、前記FETと接地間の抵抗値が、過電流として判別される電流値範囲に対応する抵抗値範囲のうちの上限の抵抗値である場合における電流の飽和時に、ドレイン・ソース間電圧が前記FETの動作周囲温度が所定温度である場合の前記FETのオン抵抗のときに前記閾値に等しくなり、前記上限の抵抗値以下の抵抗値である場合における電流の飽和時に、ドレイン・ソース間電圧が前記閾値より大きくなるように設定し、前記FETの動作周囲温度が前記所定温度より低下して前記オン抵抗が減少したときには、過電流として判別される電流値範囲に対応する抵抗値範囲のうちの上限の抵抗値を前記オン抵抗の減少分だけ下回る抵抗値に電流が流れた場合の飽和時におけるドレイン・ソース間電圧が前記閾値と等しくなり、前記FETの動作周囲温度が前記所定温度より上昇して前記オン抵抗が増加したときには、過電流として判別される電流値範囲に対応する抵抗値範囲のうちの上限の抵抗値を前記オン抵抗の増加分だけ上回る抵抗値に電流が流れた場合の飽和時におけるドレイン・ソース間電圧が前記閾値と等しくなるように設定したことを特徴とする過電流保護装置。」として構成することができる。
「所定温度」としては、例えば、FETの許容動作周囲温度の上限温度、上限温度と下限温度の範囲内の任意の温度等を設定することができる。