前記金属アルコキシドは、Siアルコキシド、Tiアルコキシド、Uアルコキシド、Tnアルコキシド、Zrアルコキシド、Ceアルコキシド、Snアルコキシド、Cuアルコキシド、Snアルコキシド、Znアルコキシド、Alアルコキシド、Scアルコキシドの群から選ばれる1種以上からなる請求項8に記載の酸化物皮膜の製造方法。
【背景技術】
【0002】
車両用フロントガラスなどのガラス板の表面に凹凸形状を形成し、様々な機能を付与することが行われている。例えば、ガラス板の表面に撥水性材料を薄膜状に形成し、雨滴の除去や汚れを防止する技術が多く知られている。ガラス板の撥水性能は、付与した撥水材料の表面構造の影響を強く受ける。例えば、撥水材料の表面を蓮の葉のような凹凸構造を人工的に形成し、水滴と撥水性材料との間にエアーギャップを形成することで、水滴との接触角の増大や水の滑落性が向上することが知られている。この現象は、ロータス効果と言われている。
【0003】
撥水材料を基材上に薄膜状に付与する技術として、撥水性を有する樹脂材料を溶媒に溶解しコーティングする方法や、撥水性の官能基を有するシリコンアルコキシドをゾルゲル反応で加水分解及び重縮合させて皮膜を形成する方法がある。
【0004】
また、ロータス効果を狙って、撥水材の表面に凹凸構造を形成することが提案されている。例えば、非特許文献1に示されているように、2種類のシリコンアルコキシドを用いるゾルゲル法で、それぞれに触媒である塩酸を混合して重合を開始させてゾルを形成する。その後、これらを混合してガラス基板上にコーティングし乾燥し焼成して、表面に凹凸のあるシリカ薄膜を得る。
【0005】
しかしながら、性質の異なる2種類のシリコンアルコキシドの相分離を利用して凹凸構造を形成している。このため、薄膜材料の選択肢が少ない。また、薄膜材料の選択により、形成される凹凸構造が異なり、凹凸の構造の制御が難しいという問題がある。
【0006】
特許文献1に示されているように、水ガラスに熱分解可能な樹脂微粒子を混合した溶液を基板上に塗布し、これを焼成工程で表面の樹脂微粒子を熱分解させる。これにより、樹脂微粒子の存在していた部分を孔とし、表面に微細な孔をもつ皮膜を得る。
【0007】
特許文献2に示されているように、2種類以上の高分子の溶液を混ぜ合わせ、基板上に混合した高分子膜を形成させる。その後、少なくとも1種類の高分子を溶解させることで除去する。除去された高分子の存在していた部分には、微細孔が形成される。
【0008】
特許文献1、2では、最終的に目的とする皮膜材料の他に、表面凹凸構造を形成するための孔形成材を別途必要とする。また、この孔形成材料は、再使用が不可能である。更には、孔形成材を完全に除去することは困難であり、皮膜内に孔形成材が残ってしまうという問題がある。
【0009】
特許文献3に示されているように、ゾルゲル法で、フッ素が含まれた重合体と硬化剤を、反転した微細凹凸のあるモールド型内で硬化重合させて、表面に撥水性を有する表面凹凸をもつ構造体を形成する。
【0010】
特許文献4に示されているように、マスターと呼ばれる表面に凹凸のある膜を使ってレーザー光を回折させて、これを干渉させることにより、基板上に形成した自己組織化単分子膜を露光させ、基板表面に凹凸などのパターンを形成する。
【0011】
しかしながら、特許文献3、4に開示された技術では、表面の凹凸形状を形成するために、モールド型やマスターなどの特別な治具を別途準備する必要がある。成形機やレーザー装置などを必要とし、製造設備にコストがかかる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の酸化物皮膜の製造方法は、触媒存在下に、
アルコキシドのゾルゲル反応を進行させるにあたって、アルコキシドを含む原料溶液の表面に、触媒を不均一に供給することで、ゾルゲル反応を不均一に進行させていることを特徴としている。皮膜材料の他に特別な材料を用いずに、且つ、金型等の特別な治具を用いることなく、簡素に微小凸部を有する酸化物皮膜を形成することができる。
【0020】
酸化物皮膜がシリカからなる場合には、一般に、酸化物皮膜は、ゾルゲル法によりシリコンアルコキシドの加水分解及び重縮合により形成される。その反応は、一般に、以下のように進行する。
【0021】
まず、シリコンアルコキシドが加水分解される。式(1)中のRはアルキル基を示す。
【0022】
nSi(OR)
4 + nH
2O → nSi(OH)(OR)
3 + nROH・・・(1)
この加水分解反応は、酸又はアルカリなどの触媒の触媒作用で促進され、次式のようにSi(OH)
4が生成する。
【0023】
nSi(OR)
4 + 4nH
2O → nSi(OH)
4 + 4nROH・・・(2)
式(2)で生成した水酸化物Si(OH)
4間では、次式に示すように、水が脱離する重縮合反応が起こる。
【0024】
Si(OH)
4 + Si(OH)
4 → (OH)
3 Si-O-Si(OH)
3 + H
2O・・・(3)
最終的に、組成式SiO
2で表されるシリカが生成する。
【0025】
ゾルゲル反応を用いた酸化物皮膜の一般的な作成方法は、
アルコキシドを含む溶液中に、触媒である酸又はアルカリを添加し、原料溶液が十分にゲル化する前に基材上に展開し、基材上で重縮合反応を進行させることで、酸化物皮膜を形成する。一般には、ゾルゲル反応は、皮膜内で均一に進行するので、形成された皮膜の表面は平滑である。
【0026】
これに対して、本発明は、
図1の上図に示すように、
アルコキシド及び疎水性溶媒からなる原料溶液Aを薄膜状に表面に形成した基材3を、触媒を含む水蒸気Bの雰囲気に置くなどして、原料溶液Aの表面に、水蒸気Bを付着させる。
【0027】
図1の中図に示すように、水蒸気Bを冷やすことにより結露させて、水滴bを形成する。この際、水滴bに触媒が溶解し、触媒濃度が高まる。これにより、触媒を不均一にアルコキシドに供給する。このため、
図1の下図に示すように、基材3上で、水滴b内の触媒を核として、アルコキシドのゾルゲル反応が進行し、表面に複数の微小凸部2が分散した酸化物皮膜1が形成される。
【0028】
ここで、原料溶液の表面に水滴を形成することにより、水滴を起点として、原料溶液内のアルコキシドのゾルゲル反応が進行する。原料溶液は、
アルコキシドと疎水性溶媒とからなるため、水滴との親和性が低い。このため、水滴は、原料溶液に混合されにくく、原料溶液の表面に、ある程度の時間留まる。この間に、水滴内の触媒は、原料溶液内のアルコキシドと接触して、アルコキシドのゾルゲル反応を進行させる。水滴は、原料溶液の表面に、それぞれ独立して分散している。このため、原料溶液の表面には、触媒が水滴の存在箇所に分散して、不均一に存在することになる。
【0029】
原料溶液内のアルコキシドは、不均一に分散して存在する触媒に接して、上記式(1)〜(3)で例示されるゾルゲル反応が促進される。ゾルゲル反応は、原料溶液における水滴の存在箇所で優先して進行して、原料溶液が固体化する。
【0030】
このとき、理由は定かではないが、原料溶液における水滴の存在箇所には、微小凸部が形成される。おそらく、水滴の表面張力により水滴がその形状を保持しようとすることから、水滴の存在箇所が微小凸部として固体化するものと考えられる。また、水滴箇所での反応が進行すると、水滴の周囲からアルコキシドを含む原料溶液が次々に水滴に向けて集まり、水滴部分で集中的に反応が進行する。このことも、微小凸部の形成に影響していると考えられる。水滴の存在していない部分も、徐々にゾルゲル反応が進行し、原料溶液全体がゲル化して、薄い皮膜を形成する。
【0031】
さて、原料溶液の表面に水滴を供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0032】
図1の上図に示すように、原料溶液Aを薄膜状に供給した基材3を、水蒸気Bの雰囲気内に配置する。次に、
図1の中図に示すように、水蒸気Bを冷やして、原料溶液Aの表面に水滴bを形成する。触媒及び水蒸気が存在する雰囲気中で、温度変化により水蒸気を結露させることにより、前記触媒を含む前記水滴を形成することが好ましい。前記疎水性溶媒の蒸発によって冷却された前記原料溶液の冷却部で、前記水蒸気が結露することで、前記原料溶液の表面に前記水滴を形成することが好ましい。水蒸気を微細に結露させて、酸化物皮膜の微小凸部をより微細化する。酸化物皮膜が撥水性である場合には、微小凸部の微細化により撥水性を更に向上させることができる。酸化物皮膜が親水性である場合には、微小凸部の微細化により親水性を更に向上させることができる。また、原料溶液の攪拌後から塗布までの時間調整などで疎水性溶媒の分散性を調整することにより、酸化物皮膜の微小凸部の微細化レベルを自在に調整することができる。
【0033】
基材3近傍の水蒸気Bを冷やすためには、例えば、原料溶液Aの温度を低く変化させる。原料溶液Aの温度を低く変化させるには、例えば、原料溶液Aに含まれる疎水性溶媒として、揮発性の疎水性溶媒を用いる。この場合、疎水性溶媒は、基材上に供給されると、すぐに揮発し始める。揮発時の気化熱により、疎水性溶媒の温度は低く変化される。原料溶液表面に付着した水蒸気は、結露し凝集して、水滴が形成される。また、疎水性溶媒に揮発性の溶媒を用いなくても、原料溶液自体の温度を他の手段により冷却させることによっても、水蒸気を結露させて水滴を形成することができる。
【0034】
揮発性の疎水性溶媒の気化温度は、10〜80℃であることが好ましい。疎水性溶媒の気化熱により、原料溶液を冷却し、触媒を含む水蒸気を結露させることができる。疎水性溶媒の気化温度が10℃未満では、疎水性溶媒が揮発し易すぎ、取り扱いにくくなるおそれがある。疎水性溶媒の気化温度が80℃を超える場合には、疎水性溶媒が揮発しにくく、ゾルゲル反応中に水滴が蒸発してしまうおそれがある。
【0035】
雰囲気の温度を低温に変化させることで水蒸気を冷やすためには、例えば、雰囲気を冷却手段で冷却する。好ましくは、雰囲気を飽和水蒸気圧に近い程度まで、水蒸気で満たし、その状態から雰囲気を冷却手段により冷却させる。
【0036】
この場合、例えば、雰囲気の相対湿度(RH)は、飽和水蒸気に近い湿度であることがよく、たとえば、90%以上であることがよい。この場合には、温度を低く変化させることで、原料溶液に付着した水蒸気が結露されて、水滴が形成されやすい。雰囲気の相対湿度が過剰に低すぎる場合には、温度変化により水蒸気を結露させにくくなるおそれがある。
【0037】
また、原料溶液を表面に供給した基材を、冷却室に配置し、冷却室に水蒸気を導入して、水蒸気を冷却させてもよい。この場合の冷却室の温度は、導入前の水蒸気の温度よりも低く、例えば5〜20℃程度低いことが好ましい。
【0038】
なお、触媒を含む水を、スプレー、霧吹き器などで原料溶液の表面に噴霧させることによっても、原料溶液の表面に水滴を形成することが可能である。
【0039】
水滴が原料溶液の表面に供給されると、水滴内の触媒の作用により、水滴を起点として、原料溶液中のアルコキシドのゾルゲル反応が進行して、水滴の存在箇所に微小凸部が形成される。水滴の存在箇所に微小凸部が形成されるためには、水滴を、原料溶液の表面にある時間保持して、原料溶液の表面に触媒が不均一に配置されている状態を保持することが好ましい。水滴を、原料溶液の表面にある程度の時間保持するための好適な態様について説明する。
【0040】
水滴を原料溶液の表面にある時間保持するために、原料溶液の表面に供給される水滴の大きさは、100〜5000nmであるとよい。この大きさの水滴からは、微小凸部がより一層生成しやすくなる。水滴の大きさが過剰に小さい場合には、水蒸気濃度と温度の制御が難しくなったり、反応中に蒸発したりするおそれがある。水滴の大きさが大きすぎる場合には水滴同士が結合して微小凸部が形成されにくくなる場合がある。
【0041】
原料溶液は、
アルコキシドを、疎水性溶媒で溶解した溶液である。原料溶液の表面に供給された水滴は、原料溶液に溶解するのではなく、原料溶液と分離して、ある程度の時間、例えば数秒間、原料溶液の表面で水滴の形状を維持していることがよい。そのために、水滴と親和性の低い疎水性溶媒でアルコキシドを溶解させて原料溶液とすることが必要である。
【0042】
疎水性溶媒の比重は、水の比重よりも大きいことが好ましい。疎水性溶媒を含む原料溶液は、水滴よりも重く、水滴を原料溶液の表面に安定に保持することができる。水の比重はほぼ1であることから、疎水性溶媒の比重は1よりも大きいことがよい。
【0043】
水の比重よりも重い疎水性溶媒は、クロロホルム、
及びジクロロペンタフルオロプロパ
ンの群から選ばれる1種以上からなることが好ましい。この中、原料溶液の表面に水滴を供給するために、疎水性溶媒を気化熱により水蒸気を結露させる方法を採用する場合には、揮発性を有する疎水性溶媒として、クロロホルムなどを用いることが好ましい。
【0044】
その他、水滴が原料溶液の表面にある程度の時間保持されれば、水の比重と同程度か又はそれよりも低い比重をもつ疎水性溶媒も用いることも可能である。
【0045】
また、原料溶液の表面に水滴を保持させるために、原料溶液には両親媒性物質が含まれていることが好ましい。両親媒性物質は、親水性部分と疎水性部分とをもつ。両親媒性物質は、親水性部分を水滴の内側に向け、疎水性部分を水滴の外側に向けて、水滴の表面を覆う。水滴同士が接触し成長することを防止できる。このため、原料溶液の表面に、微細な水滴を分散させた状態を保持させることができる。
【0046】
両親媒性物質の具体例としては、レシチン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、リン酸エステル系界面活性剤などを挙げることができる。この中、レシチンがよい。
【0047】
原料溶液に含まれる両親媒性物質の濃度は、0.01モル/L以上0.3モル/L以下であることが好ましい。両親媒性物質の濃度が過剰に薄い場合には、両親媒性物質を原料溶液に含ませることの効果が薄れ、原料溶液の表面に水滴を安定に保持させることができないおそれがある。両親媒性物質の濃度が過剰に濃い場合には、酸化物皮膜中に残留するおそれがある。
【0048】
アルコキシドは、ゾルゲル法で無機酸化物重合体を合成できれば、特に限定しない。
アルコキシドは、無機
部分の他に、有機部分を含んでいても良い。
アルコキシドに有機部分が含まれている場合には、ゾルゲル反応で有機部分が無機酸化物重合体から脱離する。ゾルゲル反応完了後に、有機部分を溶媒で洗浄するとよい。
【0049】
アルコキシドは、
金属アルコキシドであるとよい。金属アルコキシドは、例えば、
シリコン(Si)アルコキシド、Tiアルコキシド、Uアルコキシド、Tnアルコキシド、Zrアルコキシド、Ceアルコキシド、Snアルコキシド、Cuアルコキシド、Snアルコキシド、Znアルコキシド、Alアルコキシド、
及びScアルコキシドの群から選ばれる1種以上からなる。このうち、用途の観点から、シリコンアルコキシドがよい。
【0050】
シリコンアルコキシドとしては、テトラエチルオルソシリケート、トリエトキシ1H、1H、2H、2H−トリデカフルオロオクチルシラン、トリエトキシオクチルシランの群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0051】
アルコキシドは、親水性と、撥水性のものがある。
アルコキシドが親水性である場合には、酸化物皮膜が親水性をもつ。
アルコキシドが撥水性である場合には、酸化物皮膜は撥水性をもつ。
アルコキシドが、例えば、親水性のシリコンアルコキシドである場合には、親水性のシリコンアルコキシドとしては、テトラエチルオルソシリケートなどが挙げられる。撥水性のシリコンアルコキシドとしては、トリエトキシ1H、1H、2H、2H−トリデカフルオロオクチルシランなどが挙げられる。
【0052】
原料溶液中の
アルコキシドの濃度は、0.5モル/L以上5モル/L以下であることがよく、更には、1モル/L以上2モル/L以下であることが好ましい。
アルコキシドの濃度の下限が過少の場合には、酸化物皮膜が生成しにくくなるおそれがある。
アルコキシドの濃度の上限が過大である場合には、疎水性溶媒に溶解しにくくなるおそれがある。
【0053】
原料溶液は、基材上に薄膜状に供給される。原料溶液を基材上に薄膜状に供給する方法としては、スピンコート法、ドクターブレード法、ディップ法などの手法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
基材上に供給された原料溶液の厚みは5μm以上50μm以下であることがよく、更には10μm以上30μm以下であることが好ましい。原料溶液の厚みが過小の場合には、連続した薄膜状の酸化物皮膜を形成しにくくなるおそれがある。原料溶液の厚みが過大である場合には、原料溶液中の基材表面に近い部分の
アルコキシドを硬化させにくくなる。
【0055】
原料溶液が供給される基材は、表面が平滑であるとよい。基材上に薄膜状に原料溶液を均一厚みに供給するためである。基材の材質は、特に限定されないが、例えば、ガラス基板であるとよい。
【0056】
水滴に含まれる触媒は、
アルコキシドのゾルゲル反応を促進させる。この触媒は、揮発性であり、また、水溶性であるとよい。この触媒は、酸又はアルカリからなることがよく、更には、気体状の酸又はアルカリであるとよい。触媒として用いられる酸は、例えば、塩化水素、硝酸、フッ化水素などを用いることができる。触媒としてのアルカリは、例えば、アンモニアなどを用いることができる。
【0057】
水蒸気を含む雰囲気中での触媒の濃度は0.1ppm以上5ppm以下であることがよく、更には0.5ppm以上1ppm以下であることが好ましい。触媒の濃度が過剰に薄すぎるとゾルゲル反応が遅く、酸化物皮膜が形成されないか、酸化物皮膜が生成しても微小凸部が形成されにくくなるおそれがある。触媒の濃度が過剰に濃すぎると、反応が速すぎて、微小凸部が形成されにくくなるおそれがある。
【0058】
ゾルゲル反応を進行させるときの雰囲気の温度は、10℃以上80℃以下であることが好ましい。雰囲気の温度が過剰に低すぎると、反応の進行速度が遅く、微小凸部が形成されにくくなるおそれがある。雰囲気の温度が過剰に高い場合には、反応の進行速度が速すぎて、微小凸部が形成されにくくなったり、水滴が蒸発したりするおそれがある。
【0059】
生成した酸化物皮膜の表面には、微小凸部が分散して形成される。微小凸部のサイズ、形状、ピッチ、アスペクト比等の構造は、水滴成長反応とゾルゲル反応とのバランス、速度などにより種々に変更することが可能である。例えば、雰囲気の温度、湿度、及びこれらの変化速度、水滴中の触媒の濃度、原料溶液中の
アルコキシドの濃度、水滴中の両親媒性物質の濃度、原料溶液の厚みなどを制御することにより、微小凸部の構造を種々に変化させることが可能である。これらの各種条件は、複雑に関係しあって、微小凸部のサイズ、ピッチなどの構造が変化する。このため、微小凸部の構造と各種条件との関係は、一概には言えないが、例えば、以下のようである。
【0060】
例えば、雰囲気の温度が高い場合には、ゾルゲル反応の速度が速まり、微小凸部のサイズが小さく、ピッチが密になる傾向がある。雰囲気の温度が低い場合には、ゾルゲル反応の速度が遅くなり、比較的大きく、ピッチが粗な微小凸部が形成される傾向にある。
【0061】
雰囲気の湿度が高い場合には、雰囲気内で触媒を含む水蒸気が多くなり、水滴が比較的大きく成長して、微小凸部のサイズが大きくなる傾向にある。湿度が低い場合には、雰囲気内で触媒を含む水蒸気が少なくなり、微小凸部のサイズが小さく且つピッチも大きくなる傾向にある。
【0062】
水滴中の触媒の濃度が高い場合には、微小凸部のサイズは大きくなる傾向にある。触媒の濃度が低い場合には、微小凸部のサイズは小さくなる傾向にある。
【0063】
原料溶液中の
アルコキシドの濃度が高い場合には、微小凸部のサイズは大きくなる傾向にある。原料溶液中の
アルコキシドの濃度が低い場合には、微小凸部のサイズは小さくなる傾向にある。
【0064】
原料溶液中の両親媒性物質の濃度が低い場合には、水滴が成長して、微小凸部のサイズは大きくなる傾向にある。
【0065】
基材上の原料溶液の厚みが厚い場合には、微小凸部のサイズは大きくなる傾向にある。原料溶液の厚みが薄い場合には、微小凸部のサイズは小さくなる傾向にある。
【0066】
また、微小凸部のピッチに対する微小凸部の高さの比(アスペクト比)を大きくするためには、原料溶液の粘度を下げ、水滴の寿命を延ばせば良く、例えば、1)アルコキシド濃度を低くする、2)両親媒物質濃度を高くする、又は/及び3)触媒濃度を高くすることがよい。
【0067】
上記の酸化物皮膜の製造方法は、例えば、
図2に示す成膜装置7を用いて行うことができる。成膜装置7は、内部空間70を有する収容器71と、収容器71に設けられ内部空間70に開口する原料導入管73、触媒導入管74及び排気管75とを有する。原料導入管73、触媒導入管74及び排気管75は、流量調整手段を設けており、各管内を流通する流体の流量を調整できるように構成されている。容器71内の底部には、基材3が配置されている。
【0068】
原料導入管73は、原料溶液Aを基材3上に供給する。触媒導入管74は、触媒を含む水蒸気Bを収容器71の内部空間70に供給する。排気管75は、内部空間70の気体を外部に排気する。
【0069】
収容器71は、内部空間70の湿気を調整できればよい。
図2に示された収容器71は、開口をもつ有底収容部71aと、開口を覆う蓋体71bとで囲まれた密閉空間を有しているが、開放空間であってもよい。基材3は、収容器71の内部に配置される。基材3の表面には、原料導入管73から原料溶液Aが供給される。
【0070】
原料溶液Aは、そのまま放置して基材3の表面に広がるのを待ってもよいが、例えば、スピンコート法、ドクターブレード法により薄膜状に広げても良い。スピンコータ法では、基材3を回転台76の上に固定しておき、原料溶液Aを原料導入管73から基材3上に供給するときに、回転台76を回転させる。基材3上の原料溶液Aは、回転による遠心力により薄膜状に広がる。また、基材3上の原料溶液Aは、ドクターブレード法により広げても良い。
【0071】
この中、スピンコート法がよい。スピンコート法は、基材3を回転させて基材3上の原料溶液Aを薄膜状に広げながら、原料溶液Aの表面に水滴を形成することができ、作業性がよいからである。
【0072】
収容器71の内部空間には、触媒導入管74を通じて、触媒を含む水蒸気Bが供給される。原料溶液Aを表面に供給された基材3は、その回転を停止した後に、水蒸気Bの供給を開始してもよい。また、基材3を回転させつつ、水蒸気Bを供給してもよい。基材3上に原料溶液Aが薄膜状に供給されると、その表面に水蒸気Bが付着する。原料溶液Aの温度を低温に変化させるために、原料溶液Aに含まれる疎水性溶媒として、気化温度が比較的低い揮発性溶媒を用いると、疎水性溶媒の気化熱により原料溶液Aが自ずと冷やされて低温に変化する。
【0073】
また、基材3を外部冷却手段により冷却してもよい。外部冷却手段は、収容器71の外部に設けられた冷却手段であり、例えば、冷媒、収容器71の周壁に設けた冷却装置などがあげられる。冷媒は、収容器71の外部で冷却された後に収容器71内に導入されて、基材を冷却する。
【0074】
また、成膜装置7には、触媒導入管74を通じて触媒を含む水蒸気Bが供給される。触媒を含む水蒸気Bを作製する手段は特に限定しないが、例えば、
図3に示すように、水蒸気をキャリアガスに含ませる加湿器5と、水蒸気を触媒に接触させる吸収器6を用いるとよい。
【0075】
加湿器5は、ムエンケ式であり、水51の入った吸収容器52と、吸収容器53上部に開口した排出口54と、キャリアガスを水51中に直接導入するように先端が水51中に開口した導入管56とで構成されている。キャリアガスとしては、例えば、空気、窒素などを用いるとよい。キャリアガスを水51の中に供給すると、キャリアガスは水分を含んで水蒸気Bが生成する。生成した水蒸気Bは、排出口54を通じて吸収容器52から排出され、次の吸収器6に供給される。
【0076】
吸収器6は、開口を有する有底筒状の吸収槽60と、吸収槽60の開口を塞ぐ蓋体62と、蓋体62に固定され、吸収槽60の内部空間に開口する導入管63、供給管64及び導出管65とを有する。導入管63は、加湿器5の排出口54と接続していて、加湿器5で生成した水蒸気Bを吸収槽60の内部空間に導入する。供給管64は、触媒を含む触媒溶液を吸収槽60の内部空間に供給し、内部空間に導入された水蒸気Bに触媒を含ませる。触媒を含ませた水蒸気Bは、導出管64を通じて吸収槽60から導出され、成膜装置7に供給される。
【0077】
また、水蒸気に触媒を含ませるために、触媒溶液を含ませたガラスガーゼを用いても良い。触媒溶液を含ませたガラスガーゼ66を、
図3に示す吸収器6の中に敷き詰めて、吸収器6の中に水蒸気を導入しても良い。
【0078】
本発明の酸化物皮膜の製造方法により製造された酸化物皮膜は、複数の微小凸部を有する。微小凸部は、酸化物皮膜の表面に分散している。微小凸部のサイズ、ピッチ、アスペクト比、形状などを種々に調整することで、種々の機能を発揮させることが可能である。
【0079】
例えば、酸化物皮膜が撥水性をもつ場合に、酸化物皮膜表面の微小凸部の撥水性能を高めるためには、微小凸部にロータス構造を形成するとよい。この場合、微小凸部のサイズは、水滴の皮膜表面への接触部のサイズよりも小さいことがよい。微小凸部のサイズは、水滴のサイズ以下であることが好ましい。ここで、微小凸部のサイズとは、酸化物皮膜を垂直方向から投影したときに微小凸部の投影面積の最大幅をいう。微小凸部のサイズが上記の範囲内にあるときには、ロータス効果をもち、撥水性能を発揮することができる。
【0080】
微小凸部の接触角は0°よりも大きければ、皮膜表面に種々の機能を付すことが可能である。例えば、酸化物皮膜が撥水性をもつ場合には、酸化物皮膜表面の微小凸部の接触角は、150°以上であることが好ましい。この場合には、撥水性の酸化物皮膜の撥水性能が更に向上する。
【0081】
微小凸部のアスペクト比(微小凸部のピッチ間隔に対する高さの比)は、0.5以上であることが好ましい。この場合には、酸化物皮膜の撥水性が高まる。
【0082】
また、酸化物皮膜は透明性を有していることが好ましい。透明性を有する酸化物皮膜で透明なガラス基板を覆うことにより、ガラス基板の透明性を損なうことなく、ガラス基板の表面に微小凸部を付すことができる。酸化物皮膜の透明性を確保するためには、微小凸部は、可視光の波長よりも小さいことがよい。具体的には、微小凸部のサイズは、500nm以下、更には400nm以下であることが好ましい。この場合には、微小凸部は、可視光の透過を妨げず、透明性を維持することができる。
【0083】
上記のように微小凸部のサイズなどを調整することで、酸化物皮膜に、撥水性、防汚性、耐摩耗性、透明性、紫外線反射性、抗菌性、消臭性、帯電防止性などの種々の機能を付することができる。
【0084】
本発明の酸化物皮膜は、無機酸化物重合体からなる皮膜であり、
アルコキシドについてゾルゲル反応を進行させることにより得られる酸化物からなる。酸化物皮膜は、例えば、SiO
2(シリカ)又は金属酸化物からなる。酸化物皮膜を構成する金属酸化物は、例えば、TiO
2、UO
2、TnO
2、ZrO
2、CeO
2、SnO
2、SiO
2、CuO、SnO
2、ZnO、Al
2O
3、Sc
2O
3、ZnTiO
3、SrTiO
3、BaZrO
3、CaSnO
3等からなることがよい。
【0085】
本発明の酸化物皮膜は、例えば、ガラス基板などの基材上に形成されて用いられる。酸化物皮膜を表面に形成したガラス基板は、例えば、車両用ガラス、住宅用又は建築用ガラス、カメラレンズとして用いられる。
【0086】
本発明の酸化物皮膜は、種々の用途がある。例えば、撥水性膜、防汚性膜、耐摩耗性膜、紫外線反射用コーティング膜、抗菌剤、消臭剤、色素増感太陽電池、導電性膜、帯電防止膜などとして、用いることが可能である。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
本実施例1においては、酸化物皮膜を以下の方法により製造した。
【0088】
容器内の疎水性溶媒としてのクロロホルムに、シリコンアルコキシドとしてのテトラエチルオルソシリケート(TEOS)及び両親媒性物質としてのレシチンを溶解させて、原料溶液Aを調製した。原料溶液AにおけるTEOSの濃度は、1.6モル/Lとし、レシチンの濃度は0.1モル/Lとした。
【0089】
加湿器とガラスガーゼと成膜装置とを準備した。
図3に示すように、加湿器5は、ムエンケ式であり、水51の入った吸収容器52と、吸収容器52上部に開口した排出口54と、キャリアガスを水51中に直接導入するように先端が水51中に開口した導入管56とで構成した。キャリアガスとしては、窒素ガスを用いた。500cc/分の流量でキャリアガスを水51の中に供給すると、キャリアガスは水分を含んで水蒸気Bが生成した。生成した水蒸気Bは、排出口54を通じて吸収容器52から排出され、次の吸収器6に供給された。
【0090】
吸収器6は、開口を有する有底筒状の吸収槽60と、吸収槽60の開口を塞ぐ蓋体62と、蓋体62に固定され、吸収槽60の内部空間67に開口する導入管63、供給管64及び導出管65と、吸収槽60の内部に敷き詰めたガラスガーゼ66で構成した。導入管63は、加湿器5の排出口54と接続していて、加湿器5で生成した水蒸気Bを吸収槽60の内部空間67に導入した。供給管64は、触媒を含む触媒溶液61を吸収槽60の内部空間67に供給しガラスガーゼ66に触媒を染み込ませた。内部空間67に導入された水蒸気Bは、触媒を染み込ませたガラスガーゼ66に接して触媒を含ませた。触媒を含んだ水蒸気Bは、導出管65を通じて吸収槽60から導出され、成膜装置に供給された。
【0091】
図2に示すように、成膜装置7は、内部空間70を有する収容器71と、収容器71に設けられ内部空間70に開口する原料導入管73、触媒導入管74及び排気管75とを有する。原料導入管73はメスピペットである。触媒導入管74及び排気管75は、図略の流量調整手段としてのマスフローを設けており、各管内を流通する流体の流量を調整できるように構成されている。
【0092】
原料導入管73は、原料溶液Aを基材3上に供給する。触媒導入管74は、触媒を含む水蒸気Bを収容器71の内部空間70に供給する。排気管75は、内部空間70の気体を外部に排気する。
【0093】
収容器71は、内部空間70の湿気を調整できればよい。.収容器71は、開口をもつ有底収容部71aと、開口を覆う蓋体71bとをもつ。有底収容部71aと蓋体71bとで囲まれた内部空間70は密閉空間を形成している。収容器71内の底部には、回転台76が配置されている。回転台76の上には、基材3が載置されている。基材3としては、表面が平坦なガラス基板を用いた。
【0094】
成膜装置7内の基材3に、触媒導入管74を通じて、触媒を含む水蒸気Bを供給した。成膜装置7内の雰囲気は、湿気100RH%、塩酸0.5ppm、温度25℃とした。この雰囲気下で、上記で調製した原料溶液Aを滴下した。原料溶液Aの滴下量は、2ml程度とした。原料溶液Aの滴下を停止した後に、回転台76を回転させて、基材3を回転させた。回転速度は500rpmとした。基材3の回転を300秒間維持した。その間に、基材3の上に、原料溶液Aが薄膜状に広がった。基材3の上は、厚み20μmの薄膜状の原料溶液Aで覆われた。
図1の上図に示すように、薄膜状の原料溶液Aの表面に、雰囲気中の水蒸気Bが付着した。原料溶液Aの揮発による気化熱により、原料溶液Aの温度が下がった。
図1の中図に示すように、原料溶液Aの表面には、水蒸気が結露し凝集して、水滴bが形成された。
図1の下図に示すように、水滴bが形成された後に、水滴bを起点として、水滴中の触媒の作用により原料溶液A中のアルコキシドがゾルゲル反応を起こし、原料溶液Aがゲル化し、シリカからなる酸化物皮膜1が形成された。酸化物皮膜1の表面には、微小凸部2が形成された。
【0095】
皮膜の表面を電子顕微鏡写真で撮影し、
図4に示した。
図4に示すように、多数の微小凸部(白いドット部分)が皮膜表面に独立して分散して形成されていた。微小凸部のサイズ(直径)は、約0.8μmから2μmであり、微小凸部のピッチ間隔は約1μmであった。微小凸部のアスペクト比(微小凸部のピッチ間隔に対する高さの比)は0.2であった。微小凸部の形成されていない部分の酸化物皮膜の厚みは2μmであった。
【0096】
(実施例2)
本実施例2においては、酸化物皮膜を以下の方法により製造した。
【0097】
容器内の疎水性溶媒としてのジクロロペンタフルオロプロパンに、両親媒性物質としてのポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)0.01モル/L、並びにシリコンアルコキシドとしてのテトラエチルオルソシリケート(TEOS)0.3モル/L及びトリエトキシ1H、1H、2H、2H−トリデカフルオロオクチルシラン(TETTS)0.1モル/Lを含む原料溶液Aを調製した。
【0098】
図2、
図3に示すように、実施例1と同様の加湿器5と吸収器6と成膜装置7とを準備した。加湿器5にて、流速500cc/分のキャリアガスを加湿器5に導入し、キャリアガスに水分を含ませて水蒸気Bを生成した。生成した水蒸気Bは、吸収器6に導出され、そこで、触媒を含ませた。本実施例では、触媒としてアンモニアを用いた。触媒を含ませた水蒸気Bは、成膜装置7に導出された。成膜装置7では、水蒸気Bを、成膜装置7の触媒導入管74を通じて収容器71の内部空間70に供給した。成膜装置7内の雰囲気は、湿気100RH%、アンモニア0.5ppm、温度25℃とした。この雰囲気下で、上記で調製した原料溶液Aを滴下した。原料溶液Aの滴下量は、2ml程度とした。
【0099】
原料溶液Aの滴下を停止した後に、回転台76を回転させて、基材3を回転させた。回転速度は1500rpmとした。基材3の回転を300秒間維持した。その間に、基材3の上は、厚み10μmの薄膜状の原料溶液Aで覆われた。実施例1と同様に、原料溶液Aの表面に、水滴が形成された。水滴が形成された後に、水滴を起点として、水滴中の触媒の作用により原料溶液A中のアルコキシドがゾルゲル反応を起こし、原料溶液Aがゲル化し、シリカからなる酸化物皮膜が形成された。酸化物皮膜の表面には、微小凸部が形成された。酸化物皮膜表面をアセトンで洗浄して皮膜表面及び内部に含まれている樹脂成分を除去した。
【0100】
酸化物皮膜の表面を電子顕微鏡写真で撮影した。
図5に示すように、多数の微小凸部が皮膜表面に独立して分散して形成されていた。微小凸部のサイズ(直径)は、約0.8μmであり、微小凸部のピッチ間隔は約3μmであった。微小凸部のアスペクト比(微小凸部のピッチ間隔に対する高さの比)は0.1であった。微小凸部の形成されていない部分の酸化物皮膜の厚みは1μmであった。
【0101】
(比較例1、2)
比較例1、2では、基材3上へ原料溶液Aを供給する直前に、原料溶液Aに、触媒としての塩酸を混合させた。比較例1、2では、塩酸を添加する前の原料溶液Aは、それぞれ実施例1、2と同様の組成をもつ。原料溶液の中の塩酸の濃度は、0.1モル/Lとした。その直後に,塩酸を含む原料溶液Aを、原料導入管73から基材3の上に供給し、基材3を回転させて、厚み0.5μmのシリカからなる酸化物皮膜を得た。電子顕微鏡写真での観察によると、比較例1、2のシリカ皮膜の表面は、平滑であり、微小凸部は認められなかった。
【0102】
<撥水性試験>
実施例1,2及び比較例1、2の皮膜について、撥水性試験を行った。撥水性試験の方法は、JIS R 3257に基づく。試験の結果を表1に示した。表1の中の接触角は、酸化物皮膜表面の面方向と水滴とのなす角度である。
表1に示すように、実施例1の酸化物皮膜は、接触角が小さく、親水性であった。実施例1の接触角は、比較例1よりも小さく、比較例1よりも皮膜表面が親水性であることがわかった。実施例2,比較例2の酸化物皮膜は、接触角が比較的大きく、撥水性であった。実施例2の酸化物皮膜は、比較例2よりも接触角度が高く、撥水性能が高かった。
【0103】
【表1】