特許第6164449号(P6164449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6164449開閉体の挟み込み検知装置及び開閉体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164449
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】開閉体の挟み込み検知装置及び開閉体装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/41 20150101AFI20170710BHJP
   B60J 7/057 20060101ALI20170710BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20170710BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20170710BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   E05F15/41
   B60J7/057 Q
   B60J5/00 D
   B60J5/06 A
   B60J1/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-38551(P2013-38551)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167201(P2014-167201A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】別所 伸康
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 大祐
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−327279(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0124801(US,A1)
【文献】 米国特許第05585702(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより作動される開閉体の挟み込み検知装置であって、
所定時における前記開閉体の閉動作時のモータ回転速度及び環境温度に基づいて負荷データを演算し、該負荷データ及び該環境温度をそれぞれ基準負荷データ及び基準温度データとして記憶する基準データ記憶部と、
前記基準負荷データの記憶後における前記開閉体の閉動作時のモータ回転速度及び環境温度に基づいて駆動負荷データ及び駆動温度データを演算する駆動負荷演算部と、
前記基準負荷データと前記駆動負荷データとの差と、前記開閉体の挟み込みを判定するために設定された閾値との比較結果に基づいて挟み込み発生を判定するとともに、前記基準温度データと前記駆動温度データとの相対関係に基づいて、前記基準負荷データと前記駆動負荷データとの差と前記閾値との相対関係を補正するように構成された挟み込み判定部とを備えた挟み込み検知装置において、
前記基準温度データと前記駆動温度データとの差分が所定範囲内にない場合に、前記挟み込み判定部における比較処理が無効化されるとともに、前記モータによる前記開閉体の閉作動を禁止するように構成された挟み込み検知装置
【請求項2】
請求項1に記載の挟み込み検知装置において、前記所定時が、前記モータにおいて所定条件が成立した時である、挟み込み検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の挟み込み検知装置において、前記挟み込み判定部が、前記基準温度データと前記駆動温度データの相対関係に基づいて前記閾値を補正するように構成された挟み込み検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の挟み込み検知装置において、前記閾値の補正における補正量が、前記基準温度データから前記駆動温度データへの変化に対する正関数として規定された、挟み込み検知装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の挟み込み検知装置において、前記挟み込み判定部が、前記基準温度データと前記駆動温度データの相対関係に基づいて前記駆動負荷データを補正するように構成された挟み込み検知装置。
【請求項6】
請求項に記載の挟み込み検知装置において、前記駆動負荷データの補正における補正量が、前記基準温度データから前記駆動温度データへの変化に対する負関数として規定された、挟み込み検知装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の挟み込み検知装置において、前記基準データ記憶部が前記基準負荷データを所定のタイミングで更新するように構成された挟み込み検知装置。
【請求項8】
請求項に記載の挟み込み検知装置において、前記基準負荷データの記憶後における前記開閉体の閉動作において、挟み込みの発生が検知されずに該閉動作が終了しかつ所定条件が成立していた場合に、該閉動作において得られた前記駆動負荷データが新たな基準負荷データとして書き換えられるように構成された挟み込み検知装置。
【請求項9】
前記開閉体と、前記モータと、該モータの回転速度を検出する回転速度検出部と、請求項1からのいずれか一項に記載の挟み込み検知装置とを備えた開閉体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉体の挟み込み検知装置及びそれを用いた開閉体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉体には、その自動閉動作における物体等の挟みこみを検知するための装置が設けられる場合がある。例えば、特許文献1は、車両のサンルーフにおける挟み込み検知装置を開示する。同文献の装置では、まず所定条件成立時の閉動作中のモータの変動回転速度から基準負荷データが算出され、記憶される。記憶後の閉動作において、変動回転速度から算出される駆動データと、上記基準負荷データとの差が算出され、その差と閾値との比較に基づいて挟み込み検知が行われる。変動回転速度のデータから負荷変動のデータへの変換は、モータの回転速度と発生トルクについての既知の関数に基づいて行われる。
【0003】
また、特許文献2は、車両のウインドウ等における挟み込み検知を行うモータ制御装置を開示する。同文献の装置では、モータ温度及びモータ特性値と推定負荷との関係がマップ化される。開閉体の閉動作において、モータ温度及びモータ特性値から上記マップに従って求められた推定負荷に基づいて挟み込みの有無が判定される。より具体的には、モータ温度範囲区分(−30℃〜0℃、0℃〜40℃、40℃〜80℃)、複数の駆動電圧(8V、12V、16V)及びモータ回転速度に対してそれぞれモータ特性を表すマップが予め設定される。そして、検知されたモータ温度、駆動電圧及びモータ回転速度からマップを参照して、負荷推定の処理が行われる。ここで、モータ温度は、モータ付近に設けられた温度センサによって検知され、その検知温度に基づいて上記の負荷推定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3931732号公報
【特許文献2】特開2010−110171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、モータの回転速度と負荷との関係が環境温度によって変動することが考慮されていない。詳細を後述するように、モータの回転速度と負荷との関係は概ね負の一次関数となるが、環境温度に依存してその傾きが変化する。従って、基準負荷データ算出時の環境温度と駆動データ算出時の環境温度が異なる場合、基準負荷データと駆動データの差について、実際の差と計算上の差が一致しないことになる。そのため、同文献の装置においては、基準負荷データと駆動データの差と検知閾値との関係が温度によって変化してしまい、高精度な挟み込み検知が難しい。
【0006】
特許文献2の装置では、第1の問題として、モータの絶対温度(温度範囲)とモータ特性の関係を表すマップを使用するため、モータの温度を正確に検知する温度センサが必要となる。従って、高精度な温度センサをモータ付近に設置する必要があるため、導入にコストがかかる。第2に、モータ温度とモータ特性の関係はモータの経年劣化等により変化するため、当初の特性マップを用いた負荷推定がその後も有用なものとなるとは限らず、長年の使用において初期の検知精度が維持されないという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、開閉体の挟み込み検知装置及び開閉体装置において、モータ付近の温度の高精度な検知を不要とした簡素な構成で高精度な挟み込み検知を実現することを課題とする。また本発明は、モータの経年劣化等があっても高精度な挟み込み検知が実現される構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による、モータにより作動される開閉体の挟み込み検知装置は、所定時における開閉体の閉動作時のモータ回転速度及び環境温度に基づいて負荷データを演算し、負荷データ及び環境温度をそれぞれ基準負荷データ及び基準温度データとして記憶する基準データ記憶部と、基準負荷データの記憶後における開閉体の閉動作時のモータ回転速度及び環境温度に基づいて駆動負荷データを演算する駆動負荷演算部と、基準負荷データと駆動負荷データとの差と、開閉体の挟み込みを判定するために設定された閾値との比較結果に基づいて挟み込み発生を判定するとともに、基準温度と駆動温度との相対関係に基づいて基準負荷データと駆動負荷データとの差と閾値との相対関係を補正するように構成された挟み込み判定部とを備える。
【0009】
上記によると、基準負荷データと駆動負荷データとの差と閾値との相対関係の補正が、基準温度と駆動温度との相対関係に基づいて補正される構成としたので、モータの温度を正確に検知する構成が不要となる。従って、簡素な構成で高精度な挟み込み検知を実現することが可能となる。
【0010】
上記の挟み込み検知装置において、所定時は、モータにおいて所定条件が成立した時であることが好ましい。これにより、所定条件時に基準負荷データを算出及び記憶できるので、基準負荷データと駆動負荷データとの差をより正確に算出して高精度な挟み込み検知を行うことができる。
【0011】
上記の挟み込み検知装置において、挟み込み判定部は、基準温度と駆動温度の相対関係に基づいて閾値を補正するように構成され得る。これによると、基準温度と駆動温度との相対関係の算出及びそれに基づく閾値の補正量の算出だけ処理が構成されるので、少ない処理負荷で補正処理を行うことができる。
【0012】
また、上記の挟み込み検知装置において、閾値の補正における補正量が、基準温度から駆動温度への変化に対する正関数として規定されることが好ましい。これにより、一般的なモータの回転数と負荷との関係に基づいて適切な補正処理が実行され、装置の汎用性が確保される。
【0013】
またさらに、上記挟み込み検知装置において、基準温度と駆動温度との差が所定範囲内にない場合に、挟み込み判定部における比較処理が無効化されるように構成してもよい。これにより、基準温度と駆動温度との差が所定範囲内にあるときのみ挟みこみ検知が実行されるので、挟み込み検知の精度が確保される。
【0014】
また、上記挟み込み検知装置において、挟み込み判定部は、基準温度と駆動温度の相対関係に基づいて駆動負荷データを補正するように構成してもよい。これにより、基準温度と駆動温度との相対関係の算出及びそれに基づく駆動負荷データの補正量の算出だけ処理が構成されるので、少ない処理負荷で補正処理を行うことができる。
【0015】
また、上記挟み込み検知装置において、駆動負荷データの補正における補正量が、基準温度から駆動温度への変化に対する負関数として規定されることが好ましい。これにより、一般的なモータの回転数と負荷との関係に基づいて適切な補正処理が実行され、装置の汎用性が確保される。
【0016】
さらに、上記挟み込み検知装置において、基準データ記憶部が基準負荷データを所定のタイミングで更新するように構成されるようにしてもよい。これにより、モータの経年劣化等により環境温度、回転数及び負荷との関係が変化しても新たな基準負荷データが記憶されるので、長期間に亘って高精度な挟み込み検知が維持される。
【0017】
ここで、上記挟み込み検知装置において、基準負荷データの記憶後における開閉体の閉動作において、挟み込みの発生が検知されずに閉動作が終了しかつ所定条件が成立していた場合に、閉動作において得られた駆動負荷データが新たな基準負荷データとして書き換えられるように構成してもよい。これにより、基準負荷データが適時に自動で更新されるので、装置の利便性が高まる。
【0018】
本発明の開閉体装置は、開閉体と、モータと、モータの回転速度を検出する回転速度検出部と、上記いずれかの挟み込み検知装置とを備える。これにより、簡素な構成で高精度な挟み込み検知が行われ、あるいはモータの経年劣化等があっても高精度な挟み込み検知が維持される開閉体装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態による挟み込み検知装置を備えた開閉体装置のブロック図である。
図2】モータの温度、トルク及び回転速度の関係を説明する図である。
図3】本発明の第1の実施形態による挟み込み検知を説明する図である。
図4】本発明の第1の実施形態における温度差分と閾値補正量の関係を説明する図である。
図5】本発明の第1の実施形態による挟み込み検知制御のフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施形態の変形例による挟み込み検知制御のフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態による挟み込み検知装置を備えた開閉体装置のブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態による挟み込み検知制御のフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施形態の変形例による挟み込み検知制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態1.
図1は本発明の第1の実施形態による挟み込み検知装置を備えた開閉体装置のブロック図である。開閉体装置1は、開閉体2、モータ3、回転速度検出部4、及び挟み込み検知装置5を備える。本実施形態では、開閉体装置1は車両用の開閉体装置を想定している。開閉体2は、本実施形態ではサンルーフを想定しているが、後述する説明から分かるように、本発明はスライドドア、パワーウィンドウ等、他の開閉体における挟み込み検知構成にも適用できる。
【0021】
モータ3は開閉体2をルーフ開口部に対して摺動させる。モータ3はECU10からの閉信号又は開信号に応じて順方向又は逆方向に回転する。なお、以降の説明において、モータ3が開閉体2を閉方向に摺動させることを閉動作又はオート閉動作というものとする。また、挟み込みとは、開閉体2とルーフ開口部端部との間に物体又は人体が挟まれることをいうものとする。なお、ECU10は適宜電源供給されているものとする。
【0022】
回転速度検出部4はモータ3の回転速度を検出する。モータ3の回転速度は、モータ3の回転に同期するパルスを出力するセンサ(例えば、ホールIC)によって検出されてもよいし、モータ3の駆動信号における電流リップルを検出及び成形する回路によって検出されてもよい。
【0023】
温度センサ11が検出した環境温度はECU10に入力される。本実施形態では、温度センサ11として、車両に一般的に搭載されている温度センサ(例えば、インストゥルパネル上で温度表示を行うために温度を検出するセンサ)が用いられる。なお、温度センサ11はモータ3の温度を直接検出するセンサであっても実施可能である。
【0024】
挟み込み検知装置5は、CPU501、メモリ502、入出力部503、所定条件判定部504、基準データ記憶部510、駆動データ演算部520及び挟み込み判定部530を備え、これら及び後述する内部構成要素はバス505によって相互に接続されている。CPU501は各部間の信号のやりとりを制御するプロセッサであり、メモリ502はプログラム等を記憶するメモリである。入出力部503は挟み込み検知装置5とECU10との間の入出力インターフェイスとして機能する。
【0025】
所定条件判定部504は、開閉体2及びモータ3がおかれている状態が所定条件を満たすか否かを判定する。本実施形態では、振動、加速度等の外乱が開閉体2及びモータ3において発生していない状態、例えば、車両停車時でかつECU10の電源がオン状態の場合に所定条件が成立する。この場合、所定条件判定部504は、ECU10から車速(車速センサ12から取得)及び電源電圧のデータを取得し、車速が0であり、かつ電源電圧が所定値(例えば12V)であれば、所定条件が成立したものと判定する。また、この所定条件の成否判断の条件に、温度センサ11によって取得された環境温度が加えられてもよい。例えば、非常に低温(例えば、−20℃以下)又は非常に高温(例えば、50℃以上)の場合には、所定条件が成立しないものと判断されるようにしてもよい。
【0026】
基準データ記憶部510は基準負荷記憶部511及び基準温度記憶部512を備える。基準データ記憶部510には、所定条件成立時の閉動作において、回転速度検出部4によって検出された回転速度、及び温度センサ11からECU10を介して取得された温度データが入力される。基準負荷記憶部511は、所定条件成立時の閉動作において、入力された回転速度から、回転速度変動に対応する負荷変動を示す基準負荷データを算出し、記憶する。この基準負荷データの算出は、図2に示すようなトルク−回転速度の所定関数(以下、「所定関数」という)から導出される。基準負荷データの詳細については後述する。基準温度記憶部512は、入力された温度データを基準温度データとして記憶する。
【0027】
駆動負荷演算部520には、基準データ記憶部510による記憶動作後の閉動作において回転速度検出部4によって検出された回転速度及び温度センサ11からECU10を介して取得された温度データが入力される。駆動負荷演算部520は、入力された回転速度から回転速度変動に対応する負荷変動を示す駆動負荷データを算出する。この駆動負荷データの算出も所定関数から導出される。
【0028】
挟み込み判定部530は、負荷差分演算部531、温度差分演算部532、閾値記憶部533、閾値補正部534及び比較部535を備える。
【0029】
負荷差分演算部531は、駆動負荷演算部520によって演算された駆動負荷データから基準負荷記憶部511によって記憶された基準負荷データを減算して両者の差分(以下、「負荷差分」という)を出力する。温度差分演算部532は、駆動負荷演算部520によって取得された駆動温度データから基準温度記憶部512によって記憶された基準温度データを減算してその差分(以下、「温度差分」という)を出力する。なお、本実施形態では基準温度データと駆動温度データの相対関係を両者の差分で表しているが、両者の相対関係は比又は特定の関数によって規定されてもよい。
【0030】
閾値記憶部533は所定条件成立時における基準閾値を記憶する。ここで、図3を用いて、閉動作開始位置x1から閉動作終了位置x3までの回転速度変動、負荷変動、負荷差分及び閾値を説明する。線A1は所定条件成立時の回転速度変動を示し、線B1は線A1から所定関数によって変換された負荷変動を示す。線A2は所定条件成立時と同条件の下で、位置x2付近で挟み込みが発生した場合の回転速度変動を示し、線B2は線A2から所定関数によって変換された負荷変動を示す。線Cは線B2から線B1を減算した差分値、即ち、負荷差分に相当する。線Thは閾値であり、線Cが位置x2付近において線Thを超えることにより、後述する挟み込み判定部535が挟み込みの発生を判定できる。
【0031】
閾値補正部534は、基準閾値を温度差分に基づいて補正し、補正済み閾値を出力する。図2から分かるように、基準温度(例えば、関数Pに対応)よりも高い温度状態(関数Qに対応)において、ある検出回転数から関数Pで換算される負荷(トルク)は、同じ回転数から関数Qで換算される実際の負荷よりも高くなる。従って、駆動温度が基準温度よりも高い場合には、負荷の誤差を補償するために閾値Thを上方に補正する必要がある。一方、基準温度(例えば、関数Pに対応)よりも低い温度状態(関数Rに対応)において、ある検出回転数から関数Pで換算される負荷は、同じ回転数から関数Rで換算される実際の負荷よりも低くなる。従って、駆動温度が基準温度よりも低い場合には、負荷の誤差を補償するために閾値Thを下方に補正する必要がある。
【0032】
図4に、上記の補正動作を実行するための、温度差分に対する閾値補正量を示す。閾値の補正における補正量は、基準温度から駆動温度への変化に対する正関数として規定される。具体的には、図4に示すように、閾値補正量は、温度差分がゼロの場合を原点として、温度差分に対して単調増加するように設定される。なお、本実施形態では、温度差分と閾値補正量の関係を一次関数によって示しているが、他の関数が用いられてもよいし、所定の参照テーブルにおいて両者の関係が規定されるようにしてもよい。
【0033】
但し、例えば、所定条件成立時の基準温度が40℃であり、駆動温度が−20℃であるような場合(温度差分=−60℃)、閾値の補正量が非常に大きくなり、高精度な補正が保証されない可能性がある。そこで、閾値補正部534は、温度差分が所定範囲内(例えば、±50℃)にない場合には、検知無効信号を出力するようにしてもよい。CPU501は検知無効信号を受けると、挟み込み判定部530における検知処理を無効化するとともに、ECU10に停止信号を出力してモータ3のオート閉動作を禁止する。この場合、開閉体2はユーザのマニュアル動作によって開閉されることになる。
【0034】
比較部535は負荷差分を補正済み閾値と比較して挟み込み発生の有無を判定する。比較部535は、負荷差分が補正済み閾値以下の場合には、挟み込みの発生がないことを示す非検知信号を出力し、又は何も出力しない。一方、比較部535は、負荷差分が補正済み閾値を超える場合には、挟み込みの発生があることを示す検知信号を出力する。ECU10は、閉動作中に検知信号が入力されると、モータ3の駆動を反転して開閉体2を開動作させる。なお、閉動作中に検知信号が入力された場合に、ECU10が開閉体2の閉動作を停止させ、停止状態が維持されるようにしてもよい。
【0035】
図5は上記の挟み込み検知制御を示すフローチャートである。
ステップS100において、所定条件判定部504が、所定条件が成立しているか否かを判断する。所定条件が成立している場合(ステップS100、Yes)、処理はステップS101に進む。
【0036】
ステップS101において、CPU501が、開閉体2のオート閉動作が開始されたか否かを判断する。オート閉動作開始の検知は、ECU10からモータ3へ閉信号が出力されたこと、又は回転速度検出部4から基準負荷記憶部511に回転速度の入力があったことをCPU501が検知することにより行われるようにすればよい。閉動作が開始された場合(ステップS101、Yes)、処理はステップS102に進む。
【0037】
ステップS102において、基準負荷記憶部511が、回転速度検出部4によって検出された回転速度から回転速度変動に対応する負荷変動を示す基準負荷データを算出し、記憶する。また、ステップS103において、基準温度記憶部512は、温度センサ11からECU10を介して取得された温度を基準温度データとして記憶する。これにより、基準データ記憶部510の動作が終了する。
【0038】
その後、ステップS201において、CPU501が、開閉体2のオート閉動作が開始されたか否かをステップS101と同様に判断する。閉動作が開始された場合(ステップS201、Yes)、処理はステップS202に進む。
【0039】
ステップS202において、駆動負荷演算部520が、回転速度検出部4から回転速度を取得して負荷変動を示す駆動負荷データを算出する。また、ステップS203において、駆動負荷演算部520は、ECU10から温度データ(駆動温度データ)を取得する。
【0040】
ステップS204において、負荷差分演算部531が、ステップS202で算出された駆動負荷データからステップS102で記憶された基準負荷データを減算して負荷差分を演算する。
【0041】
ステップS205において、温度差分演算部532が、ステップS203で算出された駆動温度データからステップS103で記憶された基準温度データを減算して温度差分を演算する。
【0042】
ステップS205と、後述するステップS206の間に、挟みこみ検知の可否を決定するステップS211を設けてもよい。ステップS211において、閾値補正部534は、温度差分が所定の範囲内にあるか否かを判別する。温度差分が所定の範囲内にない場合(ステップS211、No)、ステップS212において、閾値補正部534が検知無効信号を出力し、検知無効信号を受けたCPU501は挟み込み検知部530の挟み込み検知処理を無効化するとともに、ECU10に開閉体2のオート閉動作を禁止させる。温度差分が所定の範囲内にある場合(ステップS211、Yes)、処理はステップS206に進む。
【0043】
ステップS206において、閾値補正部534は、基準閾値を温度差分に基づいて補正し、補正済み閾値を出力する。なお、温度差分がゼロの場合には、閾値補正部534は基準閾値を補正しないことになるが、説明の便宜上、この場合も閾値補正部534の出力を補正済み閾値というものとする。
【0044】
ステップS207において、比較部535が負荷差分を補正済み閾値と比較して挟み込み発生の有無を判定する。負荷差分が補正済み閾値以下の場合(ステップS207、Yes)、ステップS208において、モータ3の駆動(即ち、閉動作)が継続される。負荷差分が補正済み閾値を超える場合(ステップS207、No)、比較部535は検知信号を出力し、ステップS209において、CPU501がECU10にモータ3の駆動を反転させる。これにより開閉体2は開動作に反転される。
【0045】
ステップS210において、CPU501は、開閉体2の閉動作が完了したか否かを判断する。閉動作が完了しない場合(ステップS210、No)、閉動作が終了するまで上記のステップS202からS208が継続され、閉動作が終了すると(ステップS210、Yes)、処理は終了する。なお、1回の閉動作中において温度は実質的に一定であるという前提の下、ステップS203の駆動温度データの取得、ステップS205の温度差分の演算及びステップS211の挟み込み検知可否の判断は、2周目以降のフローにおいては省略されるようにしてもよい。この場合、最初にステップS205で演算された温度差分が維持される。
【0046】
以上のように、本実施形態によると、検知閾値が温度差分に基づいて補正されるので、所定条件成立時とその後の閉動作との間で温度差があった場合でも、温度に依存するモータ負荷を正確に判定して高精度な挟み込み検知を実現できる。また、上記実施形態では、各負荷取得時の絶対温度ではなく相対温度(温度差分)に基づいて閾値の補正が行われるので、モータ温度の直接の測定又は精密な測定は不要である。従って、本実施形態おける温度測定には車両に通常搭載される温度センサを利用することができ、導入容易で低コストな挟み込み検知装置が実現される。
【0047】
また、上記実施例において、上記の基準負荷データ及び基準温度データが所定のタイミングで更新されるようにしてもよい。例えば、所定の期間(例えば、半年、一年)が経過する毎にCPU501が基準データ更新信号を出力して、基準データ更新信号を受けたECU10がユーザに基準負荷データ及び基準温度データの更新を促すようにしてもよい。また、温度センサ11又は不図示の湿度センサによって検出される温度又は湿度から、ECU10が季節(例えば、夏季、冬季、雨季等)を認識し、季節が変わる毎にユーザに各基準データの更新を促すようにしてもよい。あるいは、ユーザが任意のタイミングで各基準データの更新を行うようにしてもよい。
【0048】
さらに、各基準データが閉動作毎に自動で更新されるようにしてもよい。図6は、本実施形態の変形例として、各基準データの自動更新の処理が付加された場合のフローチャートである。概略として、所定条件成立時にオート閉動作が行われた場合で、かつそのオート閉動作中に挟み込みが発生しなかった場合の負荷変動のデータが新たな基準負荷データとして書き換えられる。
【0049】
図6において、最初の基準負荷データ及び基準温度データの記憶工程(ステップS100〜S103)は既に実行済みであるものとする。なお、図5に示すフローチャートと同様のステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
ステップS210の直後のステップS250において、所定条件判定部504が、ステップS100と同様に、所定条件が成立しているか否かを判断する。所定条件が成立している場合(ステップS250、Yes)、処理はステップS251に進む。所定条件が成立していなかった場合(ステップS250、No)、処理は終了し、不図示のステップS102で記憶された基準負荷データ及び基準温度データが維持される。
【0051】
ステップS251において、基準負荷記憶部511は、ステップS202で演算された駆動負荷データを新たな基準負荷データとして記憶する。これと併せて、ステップS252において、基準温度記憶部512は、ステップS203で取得された駆動温度データを新たな基準温度データとして記憶する。これにより、閉動作において算出された駆動負荷データ及び駆動温度データが新たな基準負荷データ及び基準温度データとして書き換えられ、更新される。
【0052】
なお、更新前の基準負荷データと新たに演算された基準負荷データとを平均化したものが新たな基準負荷データとして更新されるようにしてもよい。またさらに、複数回の所定条件成立時にわたって演算された複数の基準負荷データの移動平均が新たな基準負荷データとして更新されるようにしてもよい。
【0053】
上記のように、基準負荷データ及び基準温度データが更新される構成によると、各基準データが使用とともに適宜更新されるので、装置の経年劣化や使用環境の変化にかかわらず高精度な挟み込み検知性能が維持される。しかも、図6のフローチャートに示した自動更新の構成によると、ユーザの手を煩わせることはなく各基準データが更新されるので利便性が向上する。
【0054】
実施形態2.
上記第1の実施形態では、基準温度データと駆動温度データの相対関係に基づいて検知閾値を補正する構成を示したが、本実施形態では、基準温度データと駆動温度データの相対関係に基づいて駆動負荷データを補正する構成を示す。図7は本発明の第2の実施形態による挟み込み検知装置を備えた開閉体装置のブロック図である。本実施形態は、挟み込み検知装置5以外の構成は第1の実施形態のものと同様であるのでその説明を省略する。
【0055】
挟み込み検知装置5は、CPU501、メモリ502、入出力部503、所定条件判定部504、基準データ記憶部510、駆動データ演算部520及び挟み込み判定部530を備え、これら及び後述する内部構成要素はバス505によって相互に接続されている。なお、CPU501、メモリ502、入出力部503、所定条件判定部504は第1の実施形態のものと同様であるのでその説明を省略する。
【0056】
基準データ記憶部510は基準負荷記憶部511及び基準温度記憶部512を備える。基準データ記憶部510には、所定条件成立時の閉動作において、回転速度検出部4によって検出された回転速度、及び温度センサ11からECU10を介して取得された温度データが入力される。基準負荷記憶部511は、所定条件成立時の閉動作において、入力された回転速度及び温度に基づいて基準負荷データを算出し、記憶する。この基準負荷データの算出は、図2に示すトルク−回転速度の関数のうち、取得温度に対応する関数(以下、「関数P2」という)から導出される。基準温度記憶部512は、上記所定条件成立時に、温度センサ11からECU10を介して取得された温度を基準温度データとして記憶する。
【0057】
駆動負荷演算部520には、基準データ記憶部510による記憶動作後の閉動作において回転速度検出部4によって検出された回転速度及び温度センサ11からECU10を介して取得された温度データが入力される。駆動負荷演算部520は、入力された回転速度から回転速度変動に対応する負荷変動を示す駆動負荷データを算出する。この駆動負荷データの算出において、まず、取得された回転速度と上記関数P2に基づいて仮の駆動負荷データが算出される。そして、入力された駆動温度と基準温度記憶部512に記憶された基準温度との相対関係(例えば、差分)に基づいて仮の駆動負荷データが最終的な駆動負荷データに補正される。
【0058】
例えば、所定条件成立時の温度よりも駆動温度が高い場合、低回転速度域でのトルクが減少するので、仮の駆動負荷データが下方に補正されて最終的な駆動負荷データが算出される。逆に、所定条件成立時の温度よりも駆動温度が低い場合、低回転速度域でのトルクが増加するので、仮の駆動負荷データが上方に補正されて最終的な駆動負荷データが算出される。即ち、駆動負荷データの補正における補正量は、基準温度から駆動温度への変化に対する負関数として規定される。基準温度と駆動温度の相対関係と駆動データの補正量の関係は、負の一次関数等で表されてもよいし、所定の参照テーブルにおいて規定されるようにしてもよい。
【0059】
挟み込み判定部530は、負荷差分演算部531、閾値記憶部533及び比較部535を備える。負荷差分演算部531は、第1の実施形態と同様に、駆動負荷演算部520によって演算された駆動負荷データから基準負荷記憶部511によって記憶された基準負荷データを減算して負荷差分を出力する。
【0060】
閾値記憶部533は閾値を記憶する。閾値は、第1の実施形態における基準閾値と同様にして決定される。本実施形態においては、駆動負荷データが基準温度データと駆動温度データの相対関係に応じて算出されるので、閾値は補正されない。
【0061】
比較部535は負荷差分を閾値と比較して挟み込み発生の有無を判定する。比較部535は、負荷差分が閾値以下の場合には挟み込みの発生がないことを示す非検知信号を出力し、又は何も出力しない。一方、比較部535は、負荷差分が閾値を超える場合には挟み込みの発生を示す検知信号を出力する。ECU10は、閉動作中に検知信号が入力されると、モータ3の駆動を反転して開閉体2を開動作させる。なお、閉動作中に検知信号が入力された場合に、ECU10が開閉体2の閉動作を停止させ、停止状態が維持されるようにしてもよい。
【0062】
図8は上記の挟み込み検知制御を示すフローチャートである。
ステップS300において、所定条件判定部504が、所定条件が成立しているか否かを判断する。所定条件が成立している場合(ステップS300、Yes)、処理はステップS301に進む。
【0063】
ステップS301において、CPU501が、第1の実施形態のステップS101と同様に、開閉体2のオート閉動作が開始されたか否かを判断する。閉動作が開始された場合(ステップS301、Yes)、処理はステップS302に進む。
【0064】
ステップS302において、基準負荷記憶部511が、回転速度検出部4によって検出された回転速度及びECU10から取得された温度から、回転速度変動に対応する負荷変動を示す基準負荷データを関数P2に従って算出し、記憶する。また、ステップS303において、基準温度記憶部512は、温度センサ11からECU10を介して取得された温度を基準温度データとして記憶する。これにより、基準データ記憶部510の動作が終了する。
【0065】
その後、ステップS401において、CPU501が、開閉体2のオート閉動作が開始されたか否かをステップS301と同様に判断する。閉動作が開始された場合(ステップS201、Yes)、処理はステップS402に進む。
【0066】
ステップS402において、駆動負荷演算部520が、回転速度検出部4から取得された回転速度から関数P2に従って仮の駆動負荷データを算出し、ECU10から取得された駆動温度データとステップS303で記憶された基準温度データとの相対関係に基づいて最終的な駆動負荷データを算出する。
【0067】
ステップS404において、負荷差分演算部531が、ステップS402で算出された駆動負荷データからステップS302で記憶された基準負荷データを減算して負荷差分を演算する。
【0068】
ステップS407において、比較部535が負荷差分を閾値と比較して挟み込み発生の有無を判定する。負荷差分が閾値以下の場合(ステップS407、Yes)、ステップS408において、モータ3の駆動が継続される(即ち、閉動作が継続される)。負荷差分が補正済み閾値を超える場合(ステップS407、No)、比較部535は検知信号を出力し、ステップS409において、CPU501がECU10にモータ3の駆動を反転させる。これにより開閉体2は開動作に反転される。
【0069】
ステップS410において、CPU501は、開閉体2の閉動作が完了したか否かを判断する。閉動作が完了しない場合(ステップS410、No)、閉動作が終了するまで上記のステップS402からS408が継続され、閉動作が終了すると(ステップS410、Yes)、処理は終了する。なお、1回の閉動作中において温度は一定であるという前提の下、ステップS403の駆動温度データの取得は、2周目以降のフローにおいては省略されるようにしてもよい。この場合、最初にステップS403で取得された温度データが維持される。
【0070】
以上のように、本実施形態によると、負荷差分が負荷差分算出時の温度データの相対関係を反映して算出されるので、所定条件成立時とその後の閉動作との間で温度差があった場合でも、温度に依存するモータ負荷を正確に判定して高精度な挟み込み検知を実現できる。また、本実施形態においても、負荷差分は各負荷取得時の絶対温度ではなく相対温度を反映して算出されるので、モータ温度の直接の測定又は精密な測定は不要である。従って、本実施形態おける温度測定には車両に通常搭載される温度センサを利用することができ、導入容易で低コストな挟み込み検知装置が実現される。
【0071】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基準負荷データが所定のタイミングで、ユーザ操作により、又は自動で更新されるようにしてもよい。図9は、本実施形態の変形例として、基準負荷データの自動更新の処理が付加された場合のフローチャートである。図9において、最初の基準負荷データの記憶工程(ステップS300〜S303)は既に実行済みであるものとする。なお、図8に示すフローチャートと同様のステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
ステップS410の直後のステップS450において、所定条件判定部504が、ステップS300と同様に、所定条件が成立しているか否かを判断する。所定条件が成立している場合(ステップS450、Yes)、処理はステップS451に進む。所定条件が成立していなかった場合(ステップS450、No)、処理は終了し、不図示のステップS302で記憶された基準負荷データが維持される。
【0073】
ステップS451において、基準負荷記憶部511は、ステップS402で演算された駆動負荷データを新たな基準負荷データとして記憶する。これにより、閉動作において算出された駆動負荷データが新たな基準負荷データとして書き換えられ、更新される。
【0074】
上記の構成によると、第1の実施形態の場合と同様に、基準負荷データが使用とともに適宜更新されるので、装置の経年劣化や使用環境の変化にかかわらず高精度な挟み込み検知性能が維持される。しかも、図9のフローチャートに示した自動更新の構成によると、ユーザの手を煩わせることはなく各基準データが更新されるので利便性が向上する。
【0075】
以上のように、各実施形態によると、挟み込み検知装置5は、所定条件成立時における閉動作に関して基準負荷データ及び基準温度データを記憶する基準データ記憶部510と、記憶後の閉動作に関する駆動負荷データを演算する駆動負荷演算部520とを備える。挟み込み検知装置5はさらに、基準負荷データと駆動負荷データとの負荷差分と、開閉体の挟み込みを判定するために設定された閾値との比較結果に基づいて挟み込み発生を判定する挟み込み判定部530を備える。挟み込み判定部530において、基準温度と駆動温度との相対関係に基づいて負荷差分と閾値との相対関係を補正する構成としたので、簡素な構成で高精度な挟み込み検知を可能とする挟み込み検知装置及びそれを用いた開閉体装置を実現することが可能となった。また、基準データ記憶部510が基準負荷データを所定のタイミングで更新できるので、各部材の特性における経年変化があっても長期間に亘って高精度な挟み込み検知が可能となる。
【0076】
なお、上記に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は種々の態様に変形可能である。例えば、基準負荷データ及び基準温度データの取得時は必ずしも所定条件成立時でなくてもよく、想定される駆動負荷データの取得時と同程度の条件がモータ3において成立していればよい。また、上記各実施形態においては、本発明の挟み込み検知装置及び開閉体装置が車両に適用されるものとして説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、自動開閉ドア、自動開閉シャッタ等、モータ駆動により開閉が行われるあらゆる開閉体の挟み込み検知に適用され得る。
【符号の説明】
【0077】
1 開閉体装置
2 開閉体
3 モータ
4 回転速度検出部
5 挟み込み検知装置
510 基準データ記憶部
520 駆動負荷演算部
530 挟み込み判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9