特許第6164498号(P6164498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164498
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】塗膜転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20170710BHJP
   B43M 11/06 20060101ALI20170710BHJP
   B65H 35/07 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B43L19/00 H
   B43M11/06
   B65H35/07 D
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-518669(P2014-518669)
(86)(22)【出願日】2013年5月28日
(86)【国際出願番号】JP2013064719
(87)【国際公開番号】WO2013180102
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-124575(P2012-124575)
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一也
(72)【発明者】
【氏名】金田 富夫
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−59354(JP,U)
【文献】 特開2000−37991(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3017252(JP,U)
【文献】 特表2004−535999(JP,A)
【文献】 特開2005−67153(JP,A)
【文献】 特開平10−236081(JP,A)
【文献】 米国特許第2569140(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B43K 8/00
B43M 11/00−11/08
B65H 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材テープに塗膜を設けた転写テープの前記塗膜を被転写体に転写するための塗膜転写具であって、
前記転写テープを繰り出す繰り出し部と、
前記繰り出し部から繰り出された前記転写テープを前記被転写体に押圧して前記塗膜を前記被転写体に転写する板状転写ヘッドと、
転写後の前記基材テープを巻き取る巻き取り部と、
前記板状転写ヘッドよりも前記基材テープの搬送方向に沿って下流側に配置され、転写後の前記基材テープを前記被転写体に押圧する搬送ローラと
を備え、
前記板状転写ヘッドが前方方向へ押し出されることで、前記塗膜が前記被転写体に転写されるように構成されている、
塗膜転写具。
【請求項2】
少なくとも前記繰り出し部及び前記巻き取り部を収容するカセットと、
前記カセットの外部に突出しており、塗膜転写時に前記被転写体に接する位置に設けられている凸部と
をさらに備える、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項3】
前記凸部が、回転ローラである、
請求項2に記載の塗膜転写具。
【請求項4】
前記搬送ローラを回転可能に支持する、弾性変形可能な支持体
をさらに備える、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項5】
前記搬送ローラを回転可能に支持する、弾性変形可能な支持体
をさらに備える、
請求項2に記載の塗膜転写具。
【請求項6】
前記搬送ローラを回転可能に支持する、弾性変形可能な支持体
をさらに備える、
請求項3に記載の塗膜転写具。
【請求項7】
前記支持体は、塗膜転写時に変形させられて、前記搬送ローラを前記被転写体に対して押圧する押圧力を生じるように弾性変形する、
請求項4に記載の塗膜転写具。
【請求項8】
前記支持体は、塗膜転写時に変形させられて、前記搬送ローラを前記被転写体に対して押圧する押圧力を生じるように弾性変形する、
請求項5に記載の塗膜転写具。
【請求項9】
前記支持体は、塗膜転写時に変形させられて、前記搬送ローラを前記被転写体に対して押圧する押圧力を生じるように弾性変形する、
請求項6に記載の塗膜転写具。
【請求項10】
前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項11】
前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える、
請求項2に記載の塗膜転写具。
【請求項12】
前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える、
請求項3に記載の塗膜転写具。
【請求項13】
前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える、
請求項4に記載の塗膜転写具。
【請求項14】
前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える、
請求項5に記載の塗膜転写具。
【請求項15】
前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える、
請求項6に記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材テープに修正用塗膜、接着用粘着剤、装飾用塗膜等を設けた転写テープの塗膜を被転写体に転写するために用いる塗膜転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カセット内に転写テープが繰り出し可能に収納され、転写テープに設けられた塗膜を被転写体に転写する転写ヘッドが設けられており、転写済みの転写テープを巻き取り可能に構成された塗膜転写具が知られている。また、このような塗膜転写具の一つとして、転写ヘッドの前方方向へ塗膜転写具を押し出して、塗膜を転写する転写ヘッドを転写ローラで構成した塗膜転写具が提案されている。(特許文献1参照)これにより、塗膜転写具を手前に引いて塗膜を転写する場合と比較して、転写位置が転写ヘッドの影にならず、転写位置に対する転写塗膜の過不足防止効果を得ることが可能となっている。また、板状転写ヘッドと比較して、塗膜を転写する際に転写テープに必要以上の押圧力をかけることなく転写操作を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−12000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の押し転写式の塗膜転写具では、転写ヘッドに転写ローラを使用しているため、転写ローラの影になり塗膜転写の開始位置および終点位置が確認しづらいといった不具合があった。なお、本明細書では、特許文献1のように塗膜転写具を前方(塗膜転写具を把持しているユーザの身体から離れる方向)へ押し出して塗膜を転写することを「押し転写」、塗膜転写具を後方(塗膜転写具を把持しているユーザの身体に近づく方向)に引いて塗膜を転写することを「引き転写」と呼ぶこととする。
【0005】
本発明は、このような従来例の欠点に着目してなされたものであり、板状転写ヘッドを使用することで、塗膜転写の開始位置および終点位置の確認を容易としつつも、塗膜転写の際に強い押圧力が必要とされない押し転写式の塗膜転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
A1観点に係る塗膜転写具は、基材テープに塗膜を設けた転写テープの前記塗膜を被転写体に転写するための塗膜転写具であって、前記転写テープを繰り出す繰り出し部と、前記繰り出し部から繰り出された前記転写テープを前記被転写体に押圧して前記塗膜を前記被転写体に転写する板状転写ヘッドと、転写後の前記基材テープを巻き取る巻き取り部と、前記板状転写ヘッドよりも前記基材テープの搬送方向に沿って下流側に配置され、転写後の前記基材テープを前記被転写体に押圧する搬送ローラとを備える。前記板状転写ヘッドが前方方向へ押し出されることで、前記塗膜が前記被転写体に転写されるように構成されている。
【0007】
A2観点に係る塗膜転写具は、A1観点に係る塗膜転写具であって、少なくとも前記繰り出し部及び前記巻き取り部を収容するカセットと、前記カセットの外部に突出しており、塗膜転写時に前記被転写体に接する位置に設けられている凸部とをさらに備える。
A3観点に係る塗膜転写具は、A2観点に係る塗膜転写具であって、前記凸部が、回転ローラである。
【0008】
A4観点に係る塗膜転写具は、A1観点からA3観点のいずれかに係る塗膜転写具であって、前記搬送ローラを回転可能に支持する、弾性変形可能な支持体をさらに備える。
【0009】
A5観点に係る塗膜転写具は、A4観点に係る塗膜転写具であって、前記支持体は、塗膜転写時に変形させられて、前記搬送ローラを前記被転写体に対して押圧する押圧力を生じるように弾性変形する。
【0010】
A6観点に係る塗膜転写具は、A1観点からA5観点のいずれかに係る塗膜転写具であって、前記搬送ローラは、前記基材テープの幅よりも広い幅を有し、塗膜転写時に前記被転写体と接し、これにより、塗膜転写時に前記被転写体から回転力を受け取り、前記基材テープに巻き取り方向の送り力を与える。
【0011】
B1観点に係る塗膜転写具は、少なくとも、基材テープに塗膜を設けた転写テープを繰り出す繰り出し部、前記繰り出し部から繰り出された転写テープを被転写体に押圧して塗膜を被転写体に転写する板状転写ヘッド、転写後の基材テープを巻き取る巻き取り部、塗膜転写時に被転写体と接して回転することにより転写テープ巻き取り部の方向に送り力を与える搬送ローラ、及び塗膜転写具の外部に突出している凸部を備え、前記板状転写ヘッドの前方方向へ塗膜転写具を押し出して塗膜を被転写体に転写する塗膜転写具であって、前記搬送ローラの幅の長さは、転写テープ幅より広く、搬送ローラは弾性変形可能な支持体によって回転可能に支持され、前記凸部は、塗膜転写時に被転写体に接する位置に設けたものであることを特徴とする塗膜転写具である。
B2観点に係る塗膜転写具は、前記凸部が、回転ローラであることを特徴とするB1観点に係る塗膜転写具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の押し転写式の塗膜転写具によれば、転写テープを被転写体に押圧して塗膜を被転写体に転写する転写ヘッドとしては、ローラではなく、板状の部材が用いられる。そのため、転写ヘッドを前方方向へ押し出して塗膜を転写する際、被転写体から鋭く立ち上がる板状転写ヘッドの効果により、特許文献1の押し転写式の塗膜転写具ではローラの影となっていた塗膜転写の開始位置及び終点位置の確認が容易となる。さらに、この板状転写ヘッドと別に設けられた搬送ローラの効果により、板状転写ヘッドを使用しても、塗膜転写の際に強い押圧力をかけることなく、円滑な転写操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態のカバーを外した状態の塗膜転写具の側面図、被転写体側から見た塗膜転写具の底面図、および転写ヘッド部の詳細図。
図2】転写ヘッドと凸部により被転写体に押圧力を掛けたときの状態図。
図3】本発明の第一実施形態の搬送ローラの保持形態の一例。
図4】本発明の第二実施形態のカバーを外した状態の塗膜転写具の側面図、および被転写体側から見た塗膜転写具の底面図。
【符号の説明】
【0014】
1 ケース
1a、2a 凸部
2 カバー
3 繰出しコア
4 板状転写ヘッド
4a 支持体
4b 軸受け部
5 巻取りコア
6 Oリング
7 搬送ローラ
A 塗膜転写具
T1 転写テープ
T2 基材テープ
11 ケース
11a、22a 支持体
22 カバー
8 回転体
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第一実施形態のカバーを外した状態の塗膜転写具の側面図と、被転写体側から見た塗膜転写具の底面図と、転写ヘッド部の詳細図である。塗膜転写具Aは、カセットを形成するケース1及びカバー2、基材テープT2に塗膜を塗布した転写テープT1を巻き回した繰出しコア3、塗膜を被転写体に転写する板状転写ヘッド4、転写後の基材テープT2を巻き取る巻取りコア5、繰出しコア3の回転を巻取りコア5に伝えるOリング6、及び転写テープT1に巻き取り方向の送り力を与える搬送ローラ7から構成される。繰出しコア3、巻取りコア5及びOリング6は、カセット内に収容されている。また、ケース1には、カセットの外部に突出している凸部1aが形成されており、カバー2には、同じく外部に突出している凸部2aが形成されている。これらの2つの凸部1a,2aは、いずれもカセットの底面側の、塗膜転写時に被転写体に接する位置であって、互いにカセットの幅方向に対向する位置にある。また、弾性変形可能な支持体4aが、転写ヘッド4に形成されており、支持体4aには、搬送ローラ7の軸を受け取り、これを支持する軸受け部4bが設けられている。なお、繰出しコア3の回転を巻取りコア5に伝えるための方法としては、本実施形態ではOリング6が使用されているが、ギヤ等による伝達も可能であり、特に制限はない。
【0016】
搬送ローラ7は、基材テープT2の搬送方向に沿って板状転写ヘッド4よりも下流側であって、巻取りコア5よりも上流側に配置され、転写後の基材テープT2を被転写体に押圧する。搬送ローラ7は、成型用樹脂や金属等からなる軸と、弾性材料でできた外周部とからなる。搬送ローラ7の外周部は、被転写体との摩擦力を得るため、摩擦力の高い弾性材料で形成される。弾性材料としては、ポリウレタンエラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、ナイロン12系エラストマー、ポリエステルエラストマー等のエラストマーや、アクリルゴム、NBR、イソプレンゴム、SBR、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等の各種ゴム材料が挙げられる。
【0017】
搬送ローラ7の幅は、基材テープT2の幅より広い。そのため、塗膜転写時に搬送ローラ7と被転写体とが接触し、これらの間に摩擦力が発生することになり、この摩擦力で搬送ローラ7の回転力が発生する。そして、この搬送ローラ7の回転力が基材テープT2の送り力となって、基材テープT2を円滑に巻き取ることができる。すなわち、この板状転写ヘッド4と別に設けられた搬送ローラ7の効果により、板状転写ヘッド4を使用しても、塗膜転写の際に強い押圧力をかけることなく、円滑な転写操作を行うことが可能となる。特に、転写テープT1の終期の走行においては、基材テープT2の巻き取り力が低下するが、搬送ローラ7はこの低下を補う働きをする。すなわち、転写テープT1の終期の走行においても、搬送ローラ7が巻き取り方向へ送り力を与えるため、円滑な転写操作を行うことが可能となる。また、搬送ローラ7の幅を基材テープT2の幅より広くすることで、塗膜転写具Aの直進性を高めることができ、塗膜転写具Aの蛇行を防止できる。
【0018】
また、搬送ローラ7の幅は、カセットの幅よりも狭いことが好ましく、数値で表すと、基材テープT2の幅よりも2〜10mm広いものとすることが好ましい。なぜならば、搬送ローラ7の幅から基材テープT2の幅を引いた長さが2mm未満だと、塗膜転写時に搬送ローラ7と被転写体との間の摩擦力が得られにくくなり、基材テープT2の巻き取り不良の恐れが出てくる。また、一般的には、搬送ローラ7の幅が10mmを超えると、搬送ローラ7がカセットの幅からはみ出すようになり、搬送ローラ7の破損の恐れが出てくるからである。
【0019】
搬送ローラ7は弾性変形可能な支持体4aによって、回転可能に支持される。図1では、支持体4aを樹脂成型で図1の形状にすることで、弾性変形可能としている。なお、ここでいう「弾性変形可能」とは、外力が与えられていない状態では図1の形状であるが、塗膜転写時に搬送ローラ7に被転写体側からカセットのより内部へと押す外力が加えられたときに図2に示すような形状に変形し、塗膜転写後に当該外力が取り除かれると図1の形状に戻る性質をいう。支持体4aを弾性変形可能にする方法は特に限定されず、例えば、他の形状の樹脂成型であってもよいし、コイルスプリング等の押しばねを利用してもよい。支持体4aは、この弾性変形可能な性質により、転写テープT1を転写する際に搬送ローラ7を被転写体に押さえつける働きをする。よって、本実施形態の塗膜転写具Aを使用する場合は、少なくとも転写ヘッド4と搬送ローラ7を被転写体に押し当てて、塗膜転写具Aを転写ヘッド4の前方方向へ押し出して使用するものである。
【0020】
ケース1、カバー2のそれぞれの凸部1a,2aは、カセットの底面側からカセットの外部に突出しており、塗膜転写時に被転写体に接する位置に設けたものである。塗膜転写具Aの転写ヘッド4及び搬送ローラ7を被転写体に押さえつけて転写ヘッド4を前方方向に動かしながら、転写テープT1を転写する際に、凸部1a,2aを同時に被転写体に接するように使用すると、被転写体への搬送ローラ7の押圧力が最大となる。よって、搬送ローラ7による基材テープT2の送り力は大きくなるので、基材テープT2の搬送性が安定する。また、塗膜転写具Aの直進性も増すので、さらに塗膜転写具Aの蛇行を防止できる。
【0021】
図2は、塗膜転写具Aの転写ヘッド4と凸部1a,2aから被転写体に押圧力を掛けたときの状態である。搬送ローラ7は、転写ヘッド4に形成された弾性変形可能な支持体4aの変形により生じる反発力により、転写後の基材テープT2を適切な押圧力で被転写体に押し付けるように構成されている。
【0022】
図3は、搬送ローラ7の保持形態の他の形態であり、ケース11及びカバー22と支持体11a,22aとを一体に成型して、搬送ローラ7を回転可能に支持したものである。この場合も、支持体11a,22aは、弾性変形可能であり、外力が与えられていない状態では図3の形状であるが、塗膜転写時に搬送ローラ7に外力が加えられたときに被転写体側からカセットのより内部へと押し込まれるように変形し、塗膜転写後に当該外力が取り除かれると図3の形状に戻る。
【0023】
図4は、本発明の第二実施形態のカバーを外した状態の塗膜転写具の側面図と、被転写体側から見た塗膜転写具の底面図である。ここでは、凸部1a,2aに代えて、凸部1a,2aと同様の役割を果たす筒状の回転体8が設けられている。ここでは、ケース1に軸を設け、カバー2に軸受けの凹部を設けており、この軸に筒状の回転体8が挿入されている。回転体8の材質は、ABS、POM、PE、PS、PP等で形成することが好ましく、回転摺動性の良いPOM(ポリアセタール)が最も好ましい。なお、凸部を回転体とすることで、塗膜転写具を転写ヘッド4の前方方向へ押し出す際の力が軽くなると共に、塗膜転写具の直進性が増して蛇行を防止する効果が生じる。又、回転体8表面に搬送ローラ7の弾性材料に使用されるエラストマーや各種ゴム材料の皮膜を設けることで、被転写体との摩擦係数が高くなり、より一層塗膜転写具の直進性が増して蛇行を防止する効果が生じる。
【0024】
第一及び第二実施形態の塗膜転写具では、転写ヘッドに板状の部材が用いられているため、これにローラが用いられる特許文献1に記載の塗膜転写具と異なり、塗膜転写の開始位置および終点位置を容易に確認することができる。さらに、特許文献1では、塗膜転写具を走行させた際に転写ローラの押圧力が軽いため、被転写体に対して転写ヘッドの接触が不安定となり、塗膜転写具が蛇行するといった不具合を生じる場合がある。しかしながら、第1及び第2実施形態の塗膜転写具では、転写ヘッドに板状の部材が用いられているため、転写ヘッドの押圧力が軽くなりすぎるという問題は生じない。一方で、この板状の転写ヘッドと別に設けられた搬送ローラの効果により、板状転写ヘッドを使用しても、塗膜転写の際に強い押圧力をかけることなく、円滑な転写操作を行うことが可能となる。また、第1及び第2実施形態の塗膜転写具では、転写ヘッドと搬送ローラに加え、塗膜転写具のカセットの外部に突出している凸部(凸部1a,2a、回転体8)が、被転写体に同時に接した状態で転写操作が行われることで、塗膜転写具の蛇行を防止できる。
【0025】
なお、上記実施形態では、搬送ローラ7を支持する支持体4aが弾性変形可能であり、塗膜転写時にこの支持体4aが弾性変形することにより、搬送ローラ7と板状転写ヘッド4との間に段差がなくなり、被転写体に対し面が揃うように構成されていた。しかしながら、支持体4aが弾性変形可能でなくてもよい。この場合には、塗膜転写時に搬送ローラ7自身が被転写体に押されて弾性変形することで、上記段差がなくなり、被転写体に対し搬送ローラ7と板状転写ヘッド4の面が揃うように構成することが好ましい。あるいは、搬送ローラ7を被転写体側から押す外力が加えられる前から、搬送ローラ7と板状転写ヘッド4との間に段差がなく、被転写体に対し面が揃うように構成されていてもよい。
【0026】
上記実施形態では、搬送ローラ7の幅が基材テープT2の幅より広いものとしたが、両者の幅を同じとしても、搬送ローラ7の幅が基材テープT2の幅より狭いものとしてもよい。この場合、搬送ローラ7は、塗膜転写時に被転写体と直接接触せず、離型処理の施されている基材テープT2にのみ直接接触することになり得るため、搬送ローラ7を回転させるような上述の摩擦力は必ずしも発生しない。しかしながら、搬送ローラ7が存在することで、板状転写ヘッド4の部分に加え、搬送ローラ7の部分でも、基材テープT2と被転写体とが接触することになり、基材テープT2と被転写体との接触面積が増加する。したがって、同じ押圧力でも、基材テープT2が引き出され易くなり、ひいては、基材テープT2を円滑に巻き取ることができるようになる。すなわち、板状転写ヘッド4と別に設けられた搬送ローラ7の効果により、塗膜転写の際に強い押圧力をかけることなく、円滑な転写操作を行うことが可能となる。
図1
図2
図3
図4