(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記充填部材が、側面同士が合わされて水平方向に配設されると共に、水平面同士が合わされるか、又は、充填部材の一方の水平面同士及び充填部材の他方の水平面から突き出す脚部の先端同士が合わされて、鉛直方向に配設されるものであり、充填部材には、水平方向に隣合わせの充填部材と連結するための水平方向連結用の連結部と、鉛直方向に重ね合わされる充填部材と連結するための鉛直方向連結用の連結部の少なくとも2つ以上の連結部が一体に設けられていて、充填部材を、水平方向の充填部材と鉛直方向の充填部材に同時に連結する際、水平方向連結用の連結部間の距離と鉛直方向連結用の連結部間の距離を異なるようにすることで、水平方向と鉛直方向の連結部の連結開始時期がずれて始まるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地下水槽用充填部材。
上記充填部材が、水平盤部と水平盤部の一方の水平面から突き出す脚部を備えたものであり、水平盤部の側面に、水平方向連結用の連結部が形成されていると共に、水平盤部の水平面及び脚部の先端面に、鉛直方向連結用の連結部がそれぞれ形成されていて、充填部材の水平盤部の水平面同士を合わせて連結する際は、水平方向の連結が鉛直方向の連結よりも先に始まり、充填部材の脚部の先端同士を合わせて連結する際は、水平方向の連結が鉛直方向の連結よりも遅れて始まるように、水平方向連結用の連結部と鉛直方向連結用の連結部を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の地下水槽用充填部材。
【背景技術】
【0002】
地下水槽の内部の空隙構造体を構成する充填体として、例えば、方形の枠体と中空状柱部を備え、枠体の側面にT字型溝が形成された充填体が知られている(特許文献1)。この特許文献1の充填体は、枠体側面のT字型溝にH駒を挿入することで、隣接する充填体と水平方向に連結するようにしたものである。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のように、水平方向に連結する際にH駒を用いるタイプの充填体は、地下水槽内部の空隙構造体を形成するには大量のH駒が必要となり、コストが掛かると共に施行も面倒で、また、H駒の挿入を忘れてしまう心配もあった。
【0004】
かかる事情に鑑みて、方形の枠体と中空状柱部を備え、枠体の側面に充填部材同士を水平方向に連結するためのT字型突起とT字型溝が一体に形成され、中空状柱部の下端に充填部材同士を鉛直方向に連結するための凸部が形成されると共に、中空状柱部の上端に該凸部を嵌入する凹部が形成された充填体が提案された(特許文献2)。
【0005】
上記充填体は、一方の充填体のT字型突起と他方の充填体のT字型溝を嵌合することで充填体が水平方向に配設されると共に、充填体の中空状柱部の凸部を下方に位置する充填体の凹部に嵌入することで充填体が鉛直方向に配設され、これを繰り返すことで地下水槽内部の空隙構造体を構成していくものであり、特許文献1のようなH駒を使わずに充填体同士を左右に連結できるので、上記問題は一応解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の充填体は、以下のような問題点があった。
即ち、上記特許文献1の充填体(ここでは充填体A′という。)と、水平方向に隣接する充填体B′と、その充填体B′の上方に位置する充填体C′が既に連結された状態において、新たに充填体D′を充填体A′の上方であって充填体C′の隣に連結しようとすると、充填体D′は充填体A′及び充填体C′と連結させる必要がある。このとき、充填体D′の枠体側面に形成されたT字型突起と充填体C′の枠体側面に形成されたT字型溝と、充填体D′の中空状柱部下端に形成された凸部と充填体A′の中空状柱部の上端に形成された凹部が同時に連結を始めるため、水平方向(縦横方向)の連結状態(充填体D′と充填体C′)と鉛直方向(上下方向)の連結状態(充填体D′と充填体A′)を確認しながら充填体同士を連結させる必要があり、施工性が良いとは言えないものであった。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、各連結部の連結がずれて始まるため、容易に地下水槽内部の空隙構造体を形成していくことができる施工性の良好な地下水槽用充填部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る地下水槽用充填部材は、水平方向及び鉛直方向に配設されて地下水槽の内部の空隙構造体を形成する充填部材であって、上記充填部材には、隣接する充填部材と連結するための、連結凸部又は/及び連結凹部からなる連結部が2つ以上一体に設けられていて、一つの充填部材を、
一つの充填部材の連結部と対応する連結部を設けた隣接する別の充填部材に連結する際、一つの充填部材と
、一つの充填部材の連結部と対応する連結部を設けた隣接する別の充填部材にそれぞれ
2つ以上設けられている連結部の
一つの充填部材と隣接する別の充填部材のそれぞれ対応する連結部間の距離を異なるようにすることで、各連結部の連結開始時期がずれて始まるように
し、
上記充填部材には、上記連結部として、水平方向に隣合わせの充填部材と連結するための水平方向連結用の連結部と、鉛直方向に重ね合わされる充填部材と連結するための鉛直方向連結用の連結部と、水平方向に隣合わせの充填部材の上又は下に重ねられる充填部材と連結するための斜め連結用の連結部と、が一体に設けられていて、該斜め連結用の連結部の連結開始時期が、水平方向連結用の連結部の連結開始時期及び鉛直方向連結用の連結部の連結開始時期とずれて始まるように、斜め連結用の連結部を形成したことを特徴とするものである。
尚、ここでいう「隣接する」とは、斜め上方及び斜め下方も含む概念である。
【0010】
本発明の地下水槽用充填部材においては、上記充填部材が、最初に連結が開始される連結部の形状を、その連結時に充填部材の少なくとも水平方向への移動が阻止される形状とし
、水平方向に隣合わせの充填部材と連結するための水平方向連結用の連結部である連結凸部と連結凹部を、充填部材の水平方向に連結する面において、それぞれ対応して少なくとも一つずつ設けることが好ましい。また、側面同士が合わされて水平方向に配設されると共に、水平面同士が合わされるか、又は、充填部材の一方の水平面同士及び充填部材の他方の水平面から突き出す脚部の先端同士が合わされて、鉛直方向に配設されるものであり、充填部材には、水平方向に隣合わせの充填部材と連結するための水平方向連結用の連結部と、鉛直方向に重ね合わされる充填部材と連結するための鉛直方向連結用の連結部の少なくとも2つ以上の連結部が一体に設けられていて、充填部材を、水平方向の充填部材と鉛直方向の充填部材に同時に連結する際、水平方向連結用の連結部間の距離と鉛直方向連結用の連結部間の距離を異なるようにすることで、水平方向と鉛直方向の連結部の連結開始時期がずれて始まるようにしたことが好ましく、上記充填部材が、水平盤部と水平盤部の一方の水平面から突き出す脚部を備えたものであり、水平盤部の側面に、水平方向連結用の連結部が形成されていると共に、水平盤部の水平面及び脚部の先端面に、鉛直方向連結用の連結部がそれぞれ形成されていて、充填部材の水平盤部の水平面同士を合わせて連結する際は、水平方向の連結が鉛直方向の連結よりも先に始まり、充填部材の脚部の先端同士を合わせて連結する際は、水平方向の連結が鉛直方向の連結よりも遅れて始まるように、水平方向連結用の連結部と鉛直方向連結用の連結部を形成することがより好ましい。また、上記充填部材の水平盤部の側面に、水平方向に隣合わせの充填部材の水平盤部の上又は下に重ねられる充填部材の水平盤部と連結するための斜め連結用の連結部が一体に設けられていて、該斜め連結用の連結部の連結開始時期が、水平方向連結用の連結部の連結開始時期及び鉛直方向連結用の連結部の連結開始時期とずれて始まるように、斜め連結用の連結部を形成することも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の地下水槽用充填部材は、充填部材同士を連結するための水平方向連結用の連結部と
、鉛直方向連結用の連結部と
、斜め連結用の連結部とが一体に設けられているので、充填部材同士を連結する際に別部材が不要となり、施工性が良好になると共にコストを抑えることができる。
また、隣接する充填部材同士を連結する連結部間の距離を異なるようにすることで、各連結部の連結開始時期がずれて始まるようになり、先に連結が開始された連結部の連結だけを注意して充填部材同士を連結することができる。そして、この最初に連結し始めた連結部がガイドの役割を果た
し、次の連結部同士の連結もスムーズに行うことができるので、容易に地下水槽内部の空隙構造体を形成することができる。
特に、斜め連結用の連結部の連結開始時期が、水平方向連結用の連結部の連結開始時期及び鉛直方向連結用の連結部の連結開始時期とずれて始まるように、斜め連結用の連結部を形成しているので、充填部材を水平方向、鉛直方向、及び、斜め方向にスムーズに連結して、強固な地下水槽内部の空隙構造体を容易に形成することができる。
【0012】
また、上記充填部材が、側面同士が合わされて水平方向に配設されると共に、水平面同士が合わされるか、又は、充填部材の一方の水平面同士及び充填部材の他方の水平面から突き出す脚部の先端同士が合わされて、鉛直方向に配設されるものであり、充填部材には、水平方向に隣合わせの充填部材と連結するための水平方向連結用の連結部と、鉛直方向に重ね合わされる充填部材と連結するための鉛直方向連結用の連結部の少なくとも2つ以上の連結部が一体に設けられていて、充填部材を、水平方向の充填部材と鉛直方向の充填部材に同時に連結する際、水平方向連結用の連結部間の距離と鉛直方向連結用の連結部間の距離を異なるようにすることで、水平方向と鉛直方向の連結部の連結開始時期がずれて始まるようにした地下水槽用充填部材は、充填部材の側面同士を合わせて水平方向に配設すると共に、充填部材の水平面同士を合わせるか、又は、充填部材の一方の水平面同士及び充填部材の他方の水平面から突き出す脚部の先端同士を合わせて鉛直方向に配設することで、充填部材同士が確実に連結されて、地下水槽の内部に、強固な空隙構造体を形成することができる。その際、水平方向と鉛直方向の連結部の連結開始時期がずれて始まるようにしてあるので、連結作業性も非常に良好である。
【0013】
更に、上記充填部材が、水平盤部と水平盤部の一方の水平面から突き出す脚部を備えたものであり、水平盤部の側面に、水平方向連結用の連結部が形成されていると共に、水平盤部の水平面及び脚部の先端面に、鉛直方向連結用の連結部がそれぞれ形成されていて、充填部材の
水平盤部の水平面同士を合わせて連結する際は、水平方向の連結が鉛直方向の連結よりも先に始まり、充填部材の脚部の先端同士を合わせて連結する際は、水平方向の連結が鉛直方向の連結よりも遅れて始まるように、水平方向連結用の連結部と鉛直方向連結用の連結部を形成した地下水槽用充填部材は、このような順番で連結部の連結が開始する
ので、より連結作業性が向上する。
【0014】
また、上記充填部材の水平盤部の側面に、水平方向に隣合わせの充填部材の水平盤部の上又は下に重ねられる充填部材の水平盤部と連結するための斜め連結用の連結部が一体に設けられていて、該斜め連結用の連結部の連結開始時期が、水平方向連結用の連結部の連結開始時期及び鉛直方向連結用の連結部の連結開始時期とずれて始まるように、斜め連結用の連結部を形成した地下水槽用充填部材は、水平方向に隣合わせの充填部材の水平盤部の上又は下に重ねられる充填部材の水平盤部と連結するための斜め連結用の連結部を設けることで、斜め方向の充填部材にも連結することができるようになるので、より強固な空隙構造体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0017】
図1に示す本発明の地下水槽用充填部材10は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂で射出成形されたものであって、正方形の水平盤部1と複数本の脚部2を備えたものである。この脚部2は、本実施形態では水平盤部1の四隅と中央に合計5本形成されているが、例えば中央の脚部2を省略して4本にしたり、水平盤部1の四辺のそれぞれの中間部に脚部を増設して合計9本とするなど、所望の本数を形成すればよい。
【0018】
上記水平盤部1は、
図1の(a),(b)に示すように、正方形の四周枠部1aの内側に縦横に交差する格子部1bを形成したもので、この格子部1bの開口を通じて水が上下に移動できるようになっている。そして、格子部1bの四隅と中央の開口は閉塞されており、それぞれの閉塞部1cには、下方へ突き出す脚部2が一体に形成されている。
【0019】
尚、水平盤部1の閉塞部1cに脚部2を一体に形成しないで、閉塞部1cに嵌合穴を形成し、別途制作した脚部2を閉塞部1cの嵌合穴に嵌合固定してもよく、中空の脚部2の基端(上端)と先端(下端)を開口させると共に、周壁に通水孔(不図示)を形成して、脚部2の内側と外側で水が自由に出入りできるようにしてもよい。また、水平盤部1は、正方形の平板に多数の通水孔を形成したものでもよい。
【0020】
この実施形態の地下水槽用充填部材10は、
図2〜
図5に示すように、水平盤部1の側面同士を合わせながら水平方向(縦横方向)に並べて配設すると共に、上下反転させた充填部材10と上下反転させない充填部材10を交互に積み重ねて、それぞれの水平盤部1の一方の水平面(上面)同士、及び、それぞれの水平盤部1の他方の水平面(下面)から突き出す脚部2の先端面同士を合わせながら鉛直方向(上下方向)に配設することによって、雨水貯溜槽や雨水浸透槽などの地下水槽の内部に空隙構造体を形成するものであり、それぞれの充填部材10には、後述する水平連結用(縦横連結用)の連結部3と、鉛直連結用(上下連結用)の連結部4,5によって、水平方向及び鉛直方向に連結されるため、強固な空隙構造体を構築できるものである。
【0021】
即ち、水平連結用の連結部3は、
図1に示すように、蟻ほぞ状の連結凸部3aと、これに対応した蟻溝状の連結凹部3bからなるもので、この連結凸部3aと連結凹部3bは、水平盤部1のコーナーを挟んだ両側の側面に1つずつ、水平盤部1の四周側面全体では合計4つずつ形成されている。後で詳述するが、この連結凸部3aは、
図2に示すように、上下反転させて配設された充填部材10(ここでは充填部材Aという。)と、その充填部材Aと水平方向に隣接する上下反転された充填部材10(ここでは充填部材Bという。)と、その充填部材Bの上方に位置する充填部材10(ここでは充填部材Cという。)が既に連結された状態において、新たに充填部材10(ここでは充填部材Dという。)を充填部材Aの上方であって充填部材Cの隣に連結する際に、水平連結用の連結部3,3と、鉛直連結用の連結部5,5が同時に連結を始めないよう、水平盤部1の厚みの約半分程度の厚みに形成されている。
【0022】
また、水平盤部1の表面(上面)に形成された鉛直連結用の連結部4は、円柱状の連結凸部4aと、これに対応した連結凹部4bからなるもので、水平盤部1の四隅の閉塞部1cに1つずつ、全体では合計4つずつ形成されている。
【0023】
更に、脚部2の先端面に形成された鉛直連結用の連結部5は、上記の連結凸部4aよりも直径の小さい円柱状の連結凸部5aと、これに対応した連結凹部5bからなり、水平盤部1の四隅から突き出す脚部2には1つずつ、中央の脚部2には2つずつ、全体では合計6つずつ形成されている。
【0024】
以上のような構成の地下水槽用充填部材10は、水平方向(縦横方向)及び鉛直方向(上下方向)に配設されて、地下水槽の内部の空隙構造体を構築するものであり、配設する際に、水平連結用の蟻ほぞ状の連結凸部3aを、縦横方向(水平方向)に隣り合う充填部材10の蟻溝状の連結凹部3bに嵌合するだけで、充填部材10の水平盤部1,1同士を縦横に連結できるようになっている。そして、上下連結用の円柱状の連結凸部4aと脚部2先端の円柱状の連結凸部5aを、上下方向に重ねて配設された充填部材10の上下連結用の円穴状の連結凹部4bと脚部2先端の円穴状の連結凹部5bにそれぞれ嵌め込むだけで、充填部材10,10の水平盤部1,1同士、及び、脚部2,2の先端同士を上下に連結できるようになっている。
【0025】
そして、本発明の地下水槽用充填部材10の最大の特徴は、上記のように、充填部材10を水平方向及び鉛直方向に配設する際に、水平方向の連結と鉛直方向の連結が同時に開始しないようにしたことにある。
【0026】
図2に示すように、上下反転させて配設された充填部材Aと、その充填部材Aと水平方向に隣接する上下反転させて配設された充填部材Bと、その充填部材Bの上方に位置する充填部材Cが既に連結された状態において、新たに充填部材Dを充填部材Aの上方であって充填部材Cの隣に連結する際(充填部材10,10の脚部2,2の先端同士を合わせて連結する際)に、鉛直方向の連結(充填部材Aと充填部材Dの連結)が、水平方向の連結(充填部材Cと充填部材Dの連結)よりも早く開始するようにしてある。これは、充填部材10,10の鉛直連結用の連結部5(5a),5(5b)間の距離D1と、充填部材10,10の水平連結用の連結部3(3a),3(3b)間の距離D2を異なるように形成することで、水平連結用の連結部3,3と鉛直連結用の連結部5,5の連結開始時期をずらしたもので、具体的には、水平連結用の連結部3,3間の距離D2よりも、鉛直連結用の連結部5,5間の距離D1を短くしている(D1<D2)。そのため、前述したように、水平連結用の連結凸部3aの厚みを水平盤部1の厚みの約半分にして、水平連結用の連結凸部3a,連結凹部3b間の距離D2を稼いでいる。
【0027】
このように、鉛直連結用の連結部5,5間の距離D1を水平連結用の連結部3,3間の距離D2よりも短くすることで、上記のように、充填部材A,B,Cが連結された状態において、新たな充填部材Dを充填部材Aの上方であって充填部材Cの隣に連結しようとすると、
図3に示すように、先に充填部材Dの鉛直連結用の連結凹部5b(又は連結凸部5a)と充填部材Aの連結凸部5a(又は連結凹部5b)の連結が開始する。充填部材Dと充填部材Aの鉛直連結用の連結凸部5aと連結凹部5bの連結が開始されると、次いで、充填部材Dの水平連結用の連結凸部3aと充填部材Cの水平連結用の連結凹部3bが連結を開始する。このように、水平連結用の連結部3,3と鉛直連結用の連結部5,5が同時に連結を始めないので、先ずは鉛直連結用の連結部5,5の連結状態を確認してから、次いで水平連結用の連結部3,3の連結作業を始められるので施工性がよく、また、先に連結を開始した連結凸部5aと連結凹部5bがガイドの役割を果たし、次の連結凸部3aと連結凹部3bの連結がスムーズに行われる。
しかも、最初に連結を開始する鉛直連結用の連結凸部5aと連結凹部5bは、前記のように円柱状と円穴状に形成され、その連結時に充填部材Dの水平方向への移動を阻止する形状となっているので、次の水平連結用の連結凸部3aと連結凹部3bの連結作業が容易になる。
尚、鉛直連結用の連結凸部5aの先端を、先窄まりのテーパー形状やアール形状にすることで、よりスムーズに連結することができるようになる。
【0028】
また、
図4に示すように、充填部材Aと、その充填部材Aと水平方向に隣接する充填部材Bと、その充填部材Bの上方に位置する充填部材Cが既に連結された状態において、新たに充填部材Dを充填部材Aの上方であって充填部材Cの隣に連結する際(充填部材10,10の水平盤部1,1の水平面同士を合わせて連結する際)は、鉛直方向の連結(充填部材Aと充填部材Dの連結)が、水平方向の連結(充填部材Cと充填部材Dの連結)よりも遅れて開始するようになっている。これも上記と同様に、充填部材10,10の水平連結用の連結部3(3a),3(3b)間の距離D3と、充填部材10,10の鉛直連結用の連結部4(4a),4(4b)間の距離D4を異なるように形成して、水平連結用の連結部3,3と鉛直連結用の連結部4,4の連結開始時期をずらしたもので、水平連結用の連結部3,3間の距離D3を、鉛直連結用の連結部4,4間の距離D4よりも短くしている(D3<D4)。
【0029】
このように、水平連結用の連結部3,3間の距離D3を鉛直連結用の連結部4,4間の距離D4よりも短くすることで、上記のように、充填部材A,B,Cが連結された状態において、新たな充填部材Dを充填部材Aの上方であって充填部材Cの隣に連結しようとすると、
図5に示すように、先に充填部材Dの水平連結用の連結凸部3aと充填部材Cの水平連結用の連結凸部が連結を開始する。充填部材Dの水平連結用の連結凸部3aと充填部材Cの水平連結用の連結凹部3bの連結が開始されると、次いで、鉛直連結用の連結凸部4aと連結凹部4bの連結が開始する。このように、水平連結用の連結部3,3と鉛直連結用の連結部4,4が同時に連結を始めないので、先ずは水平連結用の連結部3,3の連結状態を確認してから、次いで鉛直連結用の連結部4,4の連結作業を始められるので施工性がよく、また、先に連結を開始した連結凸部3aと連結凹部3bがガイドの役割を果たし、次の連結凸部4aと連結凹部4bの連結がスムーズに行われる。
しかも、最初に連結を開始する水平連結用の連結凸部3aと連結凹部3bは、前記のように蟻ほぞ状と蟻溝状に形成され、その連結時に充填部材Dの水平方向への移動を阻止する形状になっているので、次の鉛直連結用の連結凸部4aと連結凹部4bの連結作業が容易になる。
尚、この鉛直連結用の連結凸部4aの先端形状も、前述した鉛直連結用の連結凸部5aと同様に、先窄まりのテーパー形状やアール形状にすると、よりスムーズに連結できるようになるので好ましい。
【0030】
上記のように、本発明の地下水槽用充填部材10は、別部材の連結具を用いることなく水平方向(縦横方向)及び鉛直方向(上下方向)に配設するだけで、縦横方向及び上下方向に確実に連結される。そして、水平連結用の連結部3,3と鉛直連結用の連結部4,5の連結がずれて始まるため、強固な空隙構造体を地下水槽の内部に施工性良く構築することができる。
【0031】
図6は本発明の他の実施形態に係る地下水槽用充填部材を示す斜視図、
図7は同充填部材の部分斜視図で、
図8は同充填部材の水平面同士を合わせて連結する態様を示す説明図、
図9は同充填部材と斜め方向に隣接する充填部材との連結状態を示す部分側面図である。
【0032】
前述した実施形態の地下水槽用充填部材10が、縦横方向及び上下方向に連結することで地下水槽の内部に空隙構造体を構築するものであったが、この実施形態の地下水槽用充填部材11は、縦横方向及び上下方向のみならず隣接する斜め方向の充填部材11とも連結可能にすることで、より強固な空隙構造体を地下水槽内部に構築できるようにしたものである。
【0033】
即ち、この地下水槽用充填部材11は、
図6に示すように、水平盤部1の各コーナーを挟んだ両側の側面に、斜め方向に隣接する充填部材11の水平盤部1と連結するためのL字状の連結凸部6aと、斜め方向に隣接する際にL字状との干渉を避けるための凹部7が1つずつ、水平盤部1の四周側面全体では合計4つずつ形成されており、斜め方向に隣接する充填部材11の水平盤部1と連結するための連結凹部6bは、水平盤部1の上面(一方の水平面)、具体的には、水平盤部1の四周枠部1aにおける各連結凸部6aの直前部分の上面に1つずつ、合計4つ形成されている。
【0034】
斜め連結用の連結凸部6aは、
図6、
図7に示すように、水平盤部1の側面から水平方向に突き出して上方に屈曲するL字状に形成されており、その屈曲部60aの先端が水平盤部1の上方に出ている。そして、斜め連結用の連結凹部6bは、上記屈曲部60aが嵌まり込む長方形の開口を備えた角穴状に形成されている。
【0035】
上記充填部材11は、
図9に示すように、左下の充填部材11の水平盤部1の側面に形成された斜め連結用のL字状連結凸部6aを、水平方向に隣接する右下の充填部材11の水平盤部1に形成された干渉避けの凹部7に収容し、右下の充填部材11の上に上下反転して重ねた右上の充填部材11の水平盤部1に形成された斜め連結用の連結凹部6bに、左下の充填部材11のL字状連結凸部6aの屈曲部60aを下方から嵌め込んで係合させると共に、右上の充填部材11の水平盤部1の側面に形成された斜め連結用のL字状連結凸部6aを、左下の水平盤部1の上に上下反転して重ねた左上の充填部材11の水平盤部1に形成された干渉避けの凹部7に収容し、そのL字状連結凸部6aの屈曲部60aを、左下の充填部材11の水平盤部1に形成された斜め連結用の連結凹部6bに上方から嵌め込んで係合させるだけで、左下の充填部材11と斜め方向に隣接する右上の充填部材11を確実に連結できるようになっている。また、右下の充填部材11と左上の充填部材11も、上記と同様にして斜め方向に連結できるようになっている。
【0036】
そして、この充填部材11も、前述した実施形態の充填部材10と同様に、水平方向の連結と鉛直方向の連結と斜め方向の連結の連結開始時期がずれて始まるようにしている。
即ち、
図8に示すように、充填部材Aと、その充填部材Aと左右に隣接する充填部材B及び充填部材Eと、充填部材Bの上方に位置する充填部材Cが既に連結された状態において、新たに充填部材Dを充填部材Aの上方であって充填部材C及び充填部材Eに連結する際(充填部材11,11の水平盤部1,1の水平面同士を合わせて連結する際)において、水平連結用の連結凸部3aと連結凹部3b間の距離D3よりも、鉛直連結用の連結凸部4aと連結凹部4b間の距離D4を長くし、更にその鉛直連結用の連結凸部4aと連結凹部4b間の距離D4よりも、斜め連結用の連結凸部6aと連結凹部6b間の距離D5を長くしている(D3<D4<D5)。
【0037】
上記のように、各連結部間の距離D3,D4,D5を異なるようにすることで、まず、充填部材Dの水平連結用の連結凸部3aと充填部材Cの水平連結用の連結凹部3bの連結が開始される。充填部材Dの水平連結用の連結凸部3aと充填部材Cの水平連結用の連結凹部3bの連結が開始されると、次いで、充填部材Dの鉛直連結用の連結凸部4aと充填部材Aの鉛直連結用の連結凹部4bの連結が開始され、最後に充填部材Dの斜め連結用の連結凸部6aの屈曲部60aと充填部材Eの斜め連結用の連結凹部6bの連結が始まる。
この充填部材11のその他の構成は、前述した
図1〜
図5に示す充填部材10と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0038】
この実施形態の充填部材11も、各連結部(3,4,6)の連結開始時期がずれて始まるようになっているので、水平方向及び鉛直方向に配設するだけで、強固な空隙構造体を地下水槽内部に施工性良く構築することができ、また、斜め方向の充填部材11,11同士も連結されるので、より強固な空隙構造体を構築できるものである。
【0039】
図10は本発明の更に他の実施形態に係る地下水槽用充填部材を示す斜視図、
図11は同充填部材の部分斜視図、
図12は同充填部材の水平面同士を合わせて連結する態様を示す説明図である。
【0040】
この地下水槽用充填部材12は、
図10に示すように、水平盤部1のコーナーを挟んだ両側の側面に、前述した充填部材10の水平連結用の連結凸部3aに代えて水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aが形成されたものである。そして、水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aの直前に位置する水平盤部1の上面には、斜め連結用の連結凹部8bが形成されている。
【0041】
この水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aは、
図11に示すように、前述した充填部材11の斜め連結用のL字状連結凸部6aの先端部の幅を基端部の幅よりも広く形成して蟻ほぞ状としたものであり、斜め連結用の連結凹部8bは、この屈曲部80aが嵌まり込む長方形の開口を備えた角穴状に形成されている。
【0042】
上記充填部材12も、水平方向(縦横方向)及び鉛直方向(上下方向)に配設するだけで、水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aが、水平方向に隣り合う充填部材12の水平連結用の連結凹部3bに嵌合すると共に、斜め下に位置する充填部材12の斜め連結用の連結凹部8bに上記連結凸部8aの屈曲部80aが嵌まり込んで係合し、水平方向と斜め方向にそれぞれ隣接する充填部材12同士が連結される。
【0043】
この充填部材12も、前述した実施形態の充填部材11と同様に、水平方向の連結と鉛直方向の連結と斜め方向の連結の連結開始時期がずれて始まるようにしたものである。
図12に示すように、充填部材Aと、その充填部材Aと左右に隣接する充填部材B及び充填部材Eと、充填部材Bの上方に位置する充填部材Cが既に連結された状態において、新たに充填部材Dを充填部材Aの上方であって充填部材C及び充填部材Eに連結する際(充填部材12,12の水平盤部1,1の水平面同士を合わせて連結する際)において、水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aと水平連結用の連結凹部3b間の距離D6よりも、鉛直連結用の連結凸部4aと連結凹部4b間の距離D4を長くし、更にその鉛直連結用の連結凸部4aと連結凹部4b間の距離D4よりも、水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aと斜め連結用の開口部8b間の距離D7を長くしている(D6<D4<D7)。
【0044】
上記のように、各連結部間の距離D6,D4,D7を異なるようにすることで、まず、充填部材Dの水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aと充填部材Cの連結凹部3bの連結が開始される。充填部材Dの連結凸部8aと充填部材Cの連結凹部3bの連結が開始されると、次いで、充填部材Dの鉛直連結用の連結凸部4aと充填部材Aの鉛直連結用の連結凹部4bの連結が開始され、最後に充填部材Dの水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aの屈曲部80aと充填部材Eの斜め連結用の連結凹部8bの連結が始まる。
そして、最初に連結を開始する水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部8aと水平連結用の連結凹部3bが、前記のように蟻ほぞ状でL字状の連結凸部8aと蟻溝状の連結凹部3bに形成され、その連結時に充填部材Dの水平方向への移動を阻止する形状になっているので、その後に連結を開始する連結部の連結作業がし易い。
この充填部材11のその他の構成は、前述した
図1〜
図5に示す充填部材10と同様であるので、同一部材に同一符合を附して説明を省略する。
【0045】
この実施形態の充填部材12も、別部材の連結具を用いることなく、水平方向及び鉛直方向に配設するだけで、強固な空隙構造体を地下水槽内部に施工性良く構築することができる。また、斜め連結用の連結凸部や連結凹部が不要となり、水平盤部1の側面に形成される連結凹部の数を減らすことができるので、水平盤部1の強度低下を抑制することができ、嵌合させる連結凸部と連結凹部の数が減少する分だけ施工性も更に向上することになる。
【0046】
以上の実施形態に係る地下水槽用充填部材10,11,12はいずれも、同方向の連結部(例えば水平連結用の連結部3,3)と異方向の連結部(例えば鉛直連結用の連結部4,4又は連結部5,5)の連結開始時期をずらせたものであるが、同方向の連結部の連結開始時期をずらせたりしてもよい。
【0047】
即ち、前述した実施形態の充填部材10では、水平盤部1の側面に合計4つの水平連結用の連結凸部3aが形成されており、その厚みは水平盤部1の厚みの約半分になっているが、更にその厚みを薄くしたり、或いは水平盤部1の厚みと同じにしたりすることで、水平方向の連結開始時期をずらせることも可能である。
【0048】
同様に、水平盤部1に設けられた鉛直連結用の4つの連結凸部4aの突出長を別々の長さにしたり、脚部2の先端面に設けられた鉛直連結用の4つの連結凸部5aの長さを異なるようにすることで、鉛直方向の連結開始時期をずらせることもできる。
【0049】
上記のような同方向の連結部の連結開始時期をずらせた充填部材は、例えば、充填部材を水平方向に配設して、充填部材同士が既に平面視略コ字形に連結されている状態において、そのコ字形の空隙部に新たな充填部材を配設して平面視が長方形の空隙構造体を構築する際に、水平方向の連結開始時期をずらせることで水平方向の連結作業性が向上する。
【符号の説明】
【0050】
10,11,12 地下水槽用充填部材
1 水平盤部
1a 四周枠部
1b 格子部
1c 閉塞部
2 脚部
3 連結部(水平連結用)
3a 連結凸部
3b 連結凹部
4 連結部(鉛直連結用)
4a 連結凸部
4b 連結凹部
5 連結部(鉛直連結用)
5a 連結凸部
5b 連結凹部
6a 連結凸部(斜め連結用)
60a 屈曲部
6b 連結凹部
7 凹部
8a 連結凸部(水平連結兼用の斜め連結用)
8b 連結凹部
D1 脚部の先端に設けられた鉛直連結用の連結凸部と連結凹部間の距離
D2 水平盤部の側面に設けられた水平連結用の連結凸部と連結凹部間の距離
D3 水平盤部の側面に設けられた水平連結用の連結凸部と連結凹部間の距離
D4 水平盤部の上面に設けられた鉛直連結用の連結凸部と連結凹部間の距離
D5 水平盤部の側面に設けられた斜め連結用の連結凸部と連結凹部間の距離
D6 水平盤部の側面に設けられた水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部と水平連結用の連結凹部間の距離
D7 水平盤部の側面に設けられた水平連結兼用の斜め連結用の連結凸部と斜め連結用の連結凹部間の距離