特許第6164628号(P6164628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富田製薬株式会社の特許一覧

特許6164628無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法
<>
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000006
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000007
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000008
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000009
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000010
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000011
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000012
  • 特許6164628-無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6164628
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/32 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   C01B25/32 K
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-68089(P2017-68089)
(22)【出願日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年4月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237972
【氏名又は名称】富田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】南 翔太
(72)【発明者】
【氏名】板東 明人
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−29693(JP,A)
【文献】 特開2016−69243(JP,A)
【文献】 特開昭62−36010(JP,A)
【文献】 特開昭59−207818(JP,A)
【文献】 特開昭59−223204(JP,A)
【文献】 特開昭59−223206(JP,A)
【文献】 特開昭59−223208(JP,A)
【文献】 特表2015−502327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む無水リン酸水素カルシウムの製造方法:
(a)水酸化カルシウム及びカルシウムイオンを含み、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比が0.04〜0.16である水酸化カルシウム含有液を準備する第1工程、
(b)前記第1工程で得られた水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加し、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得る第2工程、及び
(c)前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物を添加する工程であって、アルカリ金属水酸化物の添加量を、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる量に設定し、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る第3工程。
【請求項2】
前記第1工程が、水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを、カルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.73〜1.91となる範囲で共存させることにより、水酸化カルシウム含有液を得る工程であり、且つ
前記第3工程が、前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液に、液中でのカルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.95〜2.5になるまで、アルカリ金属水酸化物を添加し、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る工程である、請求項1に記載の無水リン酸水素カルシウムの製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項1又は2に記載の無水リン酸水素カルシウムの製造方法。
【請求項4】
更に、前記第3工程で得られた第2のリン酸水素カルシウム含有液から固形分を回収し、乾燥処理に供する、請求項1〜3のいずれかに記載の無水リン酸水素カルシウムの製造方法。
【請求項5】
平均粒子径に対する、水銀ポロシメーターによって求められる細孔直径の最頻値の比が0.2〜0.34である、無水リン酸水素カルシウム粒子。
【請求項6】
平均粒子径が1μm以上10μm未満である、請求項5に記載の無水リン酸水素カルシウム粒子。
【請求項7】
静的嵩比容積が40mL/10g以下である請求項5又は6に記載の無水リン酸水素カルシウム粒子。
【請求項8】
食品添加物公定書第8版に基づいた条件で測定される無水リン酸水素カルシウムの含量が97%以上である、請求項5〜7のいずれかに記載の無水リン酸水素カルシウム粒子。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の無水リン酸水素カルシウム粒子が凝集してなる凝集粒子を含む、無水リン酸水素カルシウム粉体。
【請求項10】
安息角が45°以下である、請求項9に記載の無水リン酸水素カルシウム粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の流動性及び液体中での分散性が良好な無水リン酸水素カルシウム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年健康志向の高まりからビタミンやミネラル等の栄養成分を強化した飲食品が販売されている。特にミネラルは、生命の維持に不可欠な存在であるものの、人の体内で作ることはできないため、毎日の食事からとる必要がある。種々のミネラルの中でもカルシウムは、骨の成長に不可欠であるばかりでなく、神経刺激の伝達、筋肉の収縮、血液の凝固、及び多数の酵素や酵素系の調節などの生理作用に関与する重要なイオンである。しかしながら、飽食の時代と呼ばれる現代の食生活においてもカルシウムは不足しがちな栄養素の一つであり、比較的カルシウムに富んでいる発酵乳や乳酸菌飲料などの乳及び乳製品についても、カルシウム強化が行われているのが現状である。カルシウム強化に使用される添加剤として炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウムまたはグルコン酸カルシウムなどが知られているが、とりわけ無水リン酸水素カルシウムは吸湿性がなく、水懸濁液のpHが中性であり、不活性であることから医薬品、化粧品、食品等の賦形剤や添加剤として古くから利用されている。
【0003】
リン酸水素カルシウムは、板状の嵩比容積の低い粒子として生成することが知られているが、近年、多価有機酸等の媒晶剤を添加し、嵩比容積を高くすることによって、その粉体物性を向上させる試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、医薬品の直接打錠における賦形剤として好適な無水リン酸水素カルシウムを得るために、水中に含水リン酸水素カルシウムを懸濁して加熱分解する際に水酸化ナトリウムの添加を行う方法が提案されている。特許文献1のように、アルカリを添加して製造される無水リン酸水素カルシウムは、微結晶粒子であり、微粉末状になるため、圧縮成型に供すると強い結合力が得られる一方で、粉体の嵩比容積が高く、しかも粉体の流動性も低くなり、ハンドリング性が悪いという欠点がある。
【0005】
また、特許文献2では、医薬品等の賦形剤として好適に使用できる結合性が良好なリン酸水素カルシウムを得ることを目的として、リン酸とアルカリ性カルシウム化合物又はアルカリ金属塩とカルシウム化合物とを水媒体中において配位能を有した多価有機酸の存在下に反応させて柱状のリン酸水素カルシウムとし、次いでこの柱状のリン酸水素カルシウムを60℃以上で水熱処理する方法が提案されている。特許文献2の手法で得られるリン酸水素カルシウムは、結晶粒子が小さく、嵩比容積、表面積、吸油量のいずれも大きい賦形剤として有用であるものの、製造工程に多価有機酸を用いる点で、設備の制限や最終製品への不純物混入の懸念がある。特許文献2の手法で得られるリン酸水素カルシウムは、微粒子で且つ嵩比容積が高くなるため、粉末の流動性が悪いという欠点がある。このような流動性の低い粉体は、付着性や凝集性が高いため、移送ラインでの粉体の閉塞、ホッパーの排出口で粉体の粒子同士がアーチ構造を形成して閉塞し粉体が排出口から排出されなくなるブリッジ、粉体の排出層周囲で強固に固化し粉体が排出をストップするラットホール、等の現象を誘発し、粉体自体の製造やこれらの粉体を用いて食品や医薬品を製造する場合に製造効率の低下等の悪影響を引き起こすことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭51−31238号公報
【特許文献2】特開平7−118005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医薬品、化粧品、食品等の製造に供されるリン酸水素カルシウムは、粉体の流動性が高く、ハンドリング性が良好であることが重要になる。また、リン酸水素カルシウムは、最終製品や製造中間体において、液体に分散させた状態にすることもあるため、液体中での分散性が良好であることも求められる。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、粉体の流動性及び液体中での分散性が良好な無水リン酸水素カルシウムを提供することである。また、本発明の目的の一つは、前記無水リン酸水素カルシウムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、以下の知見を得た。先ず、下記第1工程〜第3工程を経て得られる無水リン酸水素カルシウム粒子は、水銀ポロシメーターによって求められる細孔直径の最頻値/平均粒子径の比が0.2〜0.34であり、従来報告されている無水リン酸水素カルシウム粒子とは異なる物性を有することを見出した。
(a)水酸化カルシウム及びカルシウムイオンを含み、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比が0.04〜0.16である水酸化カルシウム含有液を準備する第1工程、
(b)前記第1工程で得られた水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加し、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得る第2工程、及び
(c)前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物を添加する工程であって、アルカリ金属水酸化物の添加量を、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる量に設定し、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る第3工程。
【0010】
更に、本発明者等は、前記無水リン酸水素カルシウム粒子を凝集させた凝集粒子を含む無水リン酸水素カルシウム粉体は、粉体の流動性及び液体中での分散性が良好であることをも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 下記工程を含む無水リン酸水素カルシウムの製造方法:
(a)水酸化カルシウム及びカルシウムイオンを含み、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比が0.04〜0.16である水酸化カルシウム含有液を準備する第1工程、
(b)前記第1工程で得られた水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加し、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得る第2工程、及び
(c)前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物を添加する工程であって、アルカリ金属水酸化物の添加量を、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる量に設定し、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る第3工程。
項2. 前記第1工程が、水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを、カルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.73〜1.91となる範囲で共存させることにより、水酸化カルシウム含有液を得る工程であり、且つ
前記第3工程が、前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液に、液中でのカルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.95〜2.5になるまで、アルカリ金属水酸化物を添加し、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る工程である、項1に記載の無水リン酸水素カルシウムの製造方法。
項3. 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、項1又は2に記載の無水リン酸水素カルシウムの製造方法。
項4. 更に、前記第3工程で得られた第2のリン酸水素カルシウム含有液から固形分を回収し、乾燥処理に供する、項1〜3のいずれかに記載の無水リン酸水素カルシウムの製造方法。
項5. 平均粒子径に対する、水銀ポロシメーターによって求められる細孔直径の最頻値の比が0.2〜0.34である、無水リン酸水素カルシウム粒子。
項6. 平均粒子径が1μm以上10μm未満である、項5に記載の無水リン酸水素カルシウム粒子。
項7. 静的嵩比容積が40mL/10g以下である項5又は6に記載の無水リン酸水素カルシウム粒子。
項8. 食品添加物公定書第8版に基づいた条件で測定される無水リン酸水素カルシウムの含量が97%以上である、項5〜7のいずれかに記載の無水リン酸水素カルシウム粒子。
項9. 項5〜8のいずれかに記載の無水リン酸水素カルシウム粒子が凝集してなる凝集粒子を含む、無水リン酸水素カルシウム粉体。
項10. 安息角が45°以下である、項9に記載の無水リン酸水素カルシウム粉体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、優れた流動性を有しており、食品、化粧料、医薬等の各種添加剤や原料として使用する際にハンドリング性が良好になる。また、本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、凝集粒子によって構成されているにも拘わらず、凝集粒子の凝集力が弱く、水中での撹拌処理や超音波処理等によって容易に凝集状態が解けて、微小化された分散状態になるので、液体中での分散性が良好である。
【0013】
更に、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子及び無水リン酸水素カルシウム粉体は、リン酸水素カルシウム含量が高く、高純度の無水リン酸水素カルシウムとしての利用価値もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例3で得られた無水リン酸水素カルシウム粒子の形状を観察した結果を示す図である。
図2】実施例7で得られた無水リン酸水素カルシウム粒子の形状を観察した結果を示す図である。
図3】比較例1で得られた無水リン酸水素カルシウム粒子の形状を観察した結果を示す図である。
図4】実施例9で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の形状を観察した結果を示す図である。
図5】実施例11で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の形状を観察した結果を示す図である。
図6】比較例5で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の形状を観察した結果を示す図である。
図7】比較例6で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の形状を観察した結果を示す図である。
図8】実施例9、比較例5及び比較例6で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の水中での分散性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「無水リン酸水素カルシウム粒子」とは、無水リン酸水素カルシウムの単結晶(粉末X線回折装置にて測定された半値幅から計算される950Å程度の単結晶)の集合体により形成された粒子状の多結晶である。本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子を電界放出形走査電子顕微鏡で観察すると、例えば図2に示すような外観の粒子が認められる。一方、本発明において、「無水リン酸水素カルシウム粉体」とは、前記無水リン酸水素カルシウム粒子が凝集した凝集粒子によって形成されている粉体である。本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体を電界放出形走査電子顕微鏡で観察すると、例えば図4に示すような外観の凝集粒子が認められる。以下、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子及び無水リン酸水素カルシウム粉体について詳述する。
【0016】
1.無水リン酸水素カルシウム粒子
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子は、平均粒子径に対する、水銀ポロシメーターによって求められる細孔直径の最頻値の比が0.2〜0.34であることを特徴とする。本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子は、凝集して凝集粒子になることにより、良好な粉体の流動性及び液体中での分散性を有する無水リン酸水素カルシウム粉体を形成できる。以下、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子について詳述する。
【0017】
[物性]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子は、平均粒子径に対する細孔直径の最頻値の比が0.2〜0.34である。このような比を満たすことによって、凝集粒子を形成した際に、粉体の流動性を良好にすることができ、且つ凝集粒子であるにも拘わらず容易に崩壊し、液体中で良好な分散性を示すことが可能になる。粉体の流動性及び液体中での分散性がより一層良好になる凝集粒子を形成させるという観点から、平均粒子径に対する細孔直径の最頻値の比として、好ましくは0.2〜0.33、更に好ましくは0.2〜0.30、特に好ましくは0.23〜0.30が挙げられる。
【0018】
本発明において、無水リン酸水素カルシウム粒子の「平均粒子径」とは、レーザー回折法によって測定されるメジアン径である。無水リン酸水素カルシウム粒子の平均粒子径は、具体的には、測定サンプルを水に添加し超音波出力40Wで3分間超音波分散した後に、レーザー回折法を用いてメジアン径を測定することによって求めることができる。
【0019】
また、本発明において、無水リン酸水素カルシウム粒子の「細孔直径の最頻値」とは、水銀ポロシメーターによって求められる細孔分布において、最大ピークにおける細孔径(細孔直径)である。無水リン酸水素カルシウム粒子の細孔直径の最頻値は、具体的には、測定サンプル0.05gを正確に量り、測定セルに封入し、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を480dyn/cmとして、得られた吸着等温線から細孔分布を求め、当該細孔分布から最大ピークに該当する細孔径を特定することによって求められる。なお、無水リン酸水素カルシウム粒子の細孔径は、通常5〜5000nmの範囲内に分布しているので、本発明において、無水リン酸水素カルシウム粒子の細孔直径の最頻値は、細孔径5〜5000nmの範囲内の最大ピークとして求められる。
【0020】
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子の平均粒子径については、前記平均粒子径に対する細孔直径の最頻値の比を充足する範囲であることを限度として特に制限されないが、例えば、1μm以上10μm未満、好ましくは2〜9μm、更に好ましくは3〜8μmが挙げられる。
【0021】
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子の細孔直径の最頻値については、前記平均粒子径に対する細孔直径の最頻値の比を充足する範囲であることを限度として特に制限されないが、例えば、500〜2400nm、好ましくは700〜2200nm、更に好ましくは900〜2000nmが挙げられる。
【0022】
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子の静的嵩比容積については、特に制限されないが、例えば、40mL/10g以下、好ましくは20〜40mL/10g、更に好ましくは20〜35mL/10gが挙げられる。このような静的嵩比容積を満たすことによって、製造中の粉立ちの抑制や、包装を小さくすることが可能となり、輸送コストを抑制できるという利点が得られる。
【0023】
本発明において、無水リン酸水素カルシウム粒子の静的嵩比容積は、測定サンプル10.0gを量りとり、50mLメスシリンダー(内径2.0cm)にゆっくりと入れ、サンプルの容積(mL)を測定することによって求められる。なお、測定されたサンプルの容積が、静的嵩比容積(mL/10.0g)になる。
【0024】
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子の特徴の一つとして、リン酸水素カルシウム含量が高いことが挙げられる。本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子におけるリン酸水素カルシウム含量として、97%以上、好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0025】
本発明において、無水リン酸水素カルシウム粒子のリン酸水素カルシウム含量は、食品添加物公定書第8版に収載されているリン酸一水素カルシウムの分析方法に基づいて測定される値である。
【0026】
[形状]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子は、図1及び2に示すように、粒子表面に結晶の隆起物が多数付着している特徴的な形状を有している。このように、粒子表面に結晶の隆起物が多数付着していることによって、前述する平均粒子径に対する細孔直径の最頻値の比を充足することが可能になっている。また、このような特徴的な形状を有することによって、凝集すると例えば、球状の凝集粒子を形成することができ、当該凝集粒子に、優れた流動性と共に、凝集粒子によって構成されているにも拘わらず良好な液体中の分散性を備えさせることが可能になっている。
【0027】
[用途]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子は食品、化粧料、医薬等の各種添加剤や原料として使用される。本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子は、凝集させずにそのまま各種添加剤や原料として使用してもよく、また、後述するように、凝集させて凝集粒子にして各種添加剤や原料として使用してしてもよい。特に、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子を凝集させて凝集粒子にした粉体は、粉体状態での流動性及び液体中での分散性が良好であり、ハンドリングし易いという利点がある。
【0028】
[製造方法]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子の製造方法としては、特に制限されないが、具体的には、下記第1工程〜第3工程を含む方法が挙げられる。以下、工程毎に本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子を製造する方法について説明する。
(a)水酸化カルシウム及びカルシウムイオンを含み、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比が0.04〜0.16である水酸化カルシウム含有液を準備する第1工程、
(b)前記第1工程で得られた水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加し、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得る第2工程、及び
(c)前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物を添加する工程であって、アルカリ金属水酸化物の添加量を、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる量に設定し、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る第3工程。
【0029】
・第1工程
第1工程では、水酸化カルシウム及びカルシウムイオンを含み、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比0.04〜0.16である水酸化カルシウム含有液を準備する。
【0030】
第1工程で準備する水酸化カルシウム含有液において、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比については、好ましくは0.05〜0.15、更に好ましくは0.06〜0.14が挙げられる。
【0031】
第1工程で準備する水酸化カルシウム含有液における水酸化カルシウムの含有量については、特に制限されないが、例えば1〜20重量%、好ましくは3〜18重量%、更に好ましくは5〜15重量%が挙げられる。
【0032】
第1工程において、前記特定組成の水酸化カルシウム含有液を準備する方法については、特に制限されず、当該技術分野で公知の手法に従って行うことができるが、例えば、水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを特定のモル比で共存させる方法;水中に水酸化カルシウムを添加し、前記組成となるように水溶性カルシウム塩を添加する方法;酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを水に添加し、前記組成になるように所定量の酸性溶媒を添加する方法等が挙げられる。
【0033】
以下、第1工程を水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを特定のモル比で共存させることによって行う方法について詳述する。
【0034】
第1工程を水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを特定のモル比で共存させることによって前記特定組成の水酸化カルシウム含有液を得るには、具体的には、水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを、カルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.73〜1.91となる範囲で共存させればよい。水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを共存させて反応させると、可溶性カルシウムから水酸化カルシウムが形成される。例えば、可溶性カルシウム塩のカルシウム原子換算でXモルとアルカリ金属水酸化物のアルカリ金属原子換算でYモルとを水中で共存させると、Y/2モルの水酸化カルシウムが生成し、X−(Y/2)モルのカルシウムイオンが遊離した状態の水酸化カルシウム含有液が得られる。
【0035】
可溶性カルシウム塩としては、水又は酸性水溶液に溶解可能なカルシウム塩であることを限度として特に制限されないが、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機酸塩;酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム等の有機酸塩が挙げられる。また、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどの不溶性カルシウム塩を塩酸等の酸性溶媒に溶解し可溶性カルシウム塩としてもよい。これらの可溶性カルシウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの可溶性カルシウム塩の中でも、好ましくは塩化カルシウムが挙げられる。
【0036】
アルカリ金属水酸化物としては、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属水酸化物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのアルカリ金属水酸化物の中でも、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0037】
可溶性カルシウム塩の使用量については、特に制限されないが、例えば、反応開始時の水中での可溶性カルシウム塩の濃度が、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜30重量%となるように設定すればよい。
【0038】
また、アルカリ金属水酸化物の使用量については、使用する可溶性カルシウム塩を構成するカルシウム原子に対するモル比が1.73〜1.91となる範囲で設定すればよいが、好ましくは1.76〜1.88、更に好ましくは1.79〜1.85が挙げられる。このようなモル比となるように可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物を共存させることによって、水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子に対するカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子のモル比が前述する範囲を満たす水酸化カルシウム含有液を得ることができる。
【0039】
また、可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを共存させる際の温度については、添加する可溶性カルシウム塩の量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20〜60℃、好ましくは30〜50℃、更に好ましくは35〜45℃が挙げられる。
【0040】
第1工程では、水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物を溶解した状態で共存させればよいが、好適な例として、可溶性カルシウム塩の水溶液を調製し、当該水溶液にアルカリ金属水酸化物の水溶液を所定量滴下して撹拌する方法が挙げられる。
【0041】
また、可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを共存させることによって、水酸化カルシウムが生成するが、効率的に水酸化カルシウムを生成させるために、可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを共存させた後に、前記温度条件で熟成させることが望ましい。本発明において、熟成とは、静置又は撹拌下で一定時間置いておくことを指す。
【0042】
第1工程における熟成時間については、可溶性カルシウム塩の添加量、反応温度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10分間以上、好ましくは10〜120分間、更に好ましくは30〜90分間が挙げられる。ここで、「熟成時間」とは、可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物の全量が水中に共存した時点を0分として、静置又は撹拌下で置いておく時間を指し、例えば、可溶性カルシウム塩の水溶液にアルカリ金属水酸化物の水溶液を滴下する場合であれば、アルカリ金属水酸化物の水溶液の滴下終了時点を0分として算出される時間である。
【0043】
斯くして得られた水酸化カルシウム含有液は、そのまま第2工程に供することができるが、必要に応じて、第2工程に供する前に、水を添加して希釈したり、水を揮発させて濃縮したりしてもよい。
【0044】
・第2工程
第2工程では、前記第1工程で得られた水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加することにより、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得る。
【0045】
第2工程において、リン酸(H3PO4)は、そのまま添加してもよく、また水溶液の状態で添加してもよい。
【0046】
リン酸の添加量については、リン酸水素カルシウムが生成する範囲で適宜設定すればよいが、例えば、水酸化カルシウム含有液に含まれる総カルシウム原子に対するモル比が0.85〜1.05好ましくは0.90〜1.00、更に好ましくは0.93〜0.97となる範囲に設定すればよい。ここで、「水酸化カルシウム含有液に含まれる総カルシウム原子」とは、水酸化カルシウム含有液において、含有する水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子と、含有するカルシウムイオンを構成するカルシウム原子との総和である。
【0047】
また、水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加する際の温度については、水酸化カルシウム含有液の量、リン酸の添加量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20〜60℃、好ましくは30〜50℃、更に好ましくは35〜45℃が挙げられる。
【0048】
水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加する方法については、特に制限されないが、好適な例として、水酸化カルシウム含有液にリン酸を所定量滴下して撹拌する方法が挙げられる。
【0049】
水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加することによって、第1のリン酸水素カルシウムが生成するが、第1のリン酸水素カルシウムを効率的に生成させるために、水酸化カルシウム含有液にリン酸を添加した後に前記温度条件で熟成させることが望ましい。
【0050】
第2工程における熟成時間については、水酸化カルシウム含有液の量、リン酸の添加量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10分間以上、好ましくは10〜120分間、更に好ましくは30〜90分間が挙げられる。ここで、「熟成時間」とは、水酸化カルシウム含有液にリン酸の全量が添加された時点を0分として、静置又は撹拌下で置いておく時間を指し、例えば、水酸化カルシウム含有液にリン酸を滴下する場合であれば、リン酸の滴下終了時点を0分として算出される時間である。
【0051】
斯くして得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液は、リン酸水素カルシウムが懸濁された懸濁液の状態になっている。第2工程で得られたリン酸水素カルシウム含有液は、そのまま第3工程に供することができるが、必要に応じて、第3工程に供する前に水を添加して希釈したり、水を揮発させて濃縮したりしてもよい。
【0052】
・第3工程
第3工程は、前記第2工程で得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属水酸化物を含む水溶液を添加する工程であって、アルカリ金属水酸化物の添加量を、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる量に設定することにより、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得る工程である。
【0053】
第3工程で使用されるアルカリ金属水酸化物については、前記第1工程で例示したものと同様である。第3工程で使用されるアルカリ金属水酸化物として、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。第3工程において、アルカリ金属水酸化物は、そのまま添加してもよいが、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液の状態で添加することが好ましい。
【0054】
アルカリ金属水酸化物の添加量については、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる量に設定される。アルカリ金属水酸化物の添加量として、前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり、1.6〜10.0モルとなる量が好ましく、1.6〜5.0モルとなる量が更に好ましく、1.6〜3.0モルとなる量が特に好ましい。
【0055】
より具体的には、前記第1工程において、水中で可溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを、カルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.73〜1.91となる範囲で共存させて水酸化カルシウム含有液を準備した場合であれば、第3工程におけるアルカリ金属水酸化物の添加量については、液中でのカルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比が1.95〜2.5となる範囲に設定すればよい。ここで、「液中でのカルシウム原子に対するアルカリ金属原子のモル比」とは、第1工程で準備したカルシウム含有溶液に含まれるカルシウム原子の総モル数(含有する水酸化カルシウムを構成するカルシウム原子と、含有するカルシウムイオンを構成するカルシウム原子との総モル数)に対する、第1工程と第3工程で使用されたアルカリ金属水酸化物に由来するアルカリ金属原子の総モル数の比率である。このような場合におけるアルカリ金属水酸化物の添加量として、前記モル比が1.95〜2.5となる範囲であることが好ましく、前記モル比が1.98〜2.10となる範囲であることが更に好ましい。このようなモル比に設定することによって、アルカリ金属水酸化物の添加量を前記第1工程で準備した水酸化カルシウム含有液中のカルシウムイオンとして存在するカルシウム原子1モル当たり1.5〜13.0モルとなる範囲にすることができる。
【0056】
第3工程では、本発明の無水リン酸水素カルシウムの生成を妨げない範囲で、アルカリ金属水酸化物以外の他の物質が、第1のリン酸水素カルシウム含有液に添加されてもよい。
【0057】
また、第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物を添加する際の温度については、第1のリン酸水素カルシウム含有液の量、アルカリ金属水酸化物の添加量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20〜60℃、好ましくは30〜50℃、更に好ましくは35〜45℃が挙げられる。
【0058】
第1のリン酸水素カルシウム含有液に前記量のアルカリ金属水酸化物を添加することによって、目的の第2のリン酸水素カルシウムが懸濁状態で生じるが、効率的に無水リン酸水素カルシウムを得るために、適宜温度調節をして熟成させることが望ましく、当該熟成における温度条件としては、例えば、60〜100℃、好ましくは80〜100℃が挙げられる。
【0059】
第3工程における熟成時間については、目的の無水リン酸水素カルシウムが生成していることを確認して適宜設定すればよいが、例えば、60分間以上、好ましくは60〜240分間、更に好ましくは120〜180分間が挙げられる。ここで、「熟成時間」とは、第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物の全量が添加された時点を0分として、静置又は撹拌下で置いておく時間を指し、例えば、第1のリン酸水素カルシウム含有液にアルカリ金属水酸化物水溶液を滴下する場合であれば、アルカリ金属水酸化物水溶液の滴下終了時点を0分として算出される時間である。
【0060】
第1工程〜第3工程において、または第3工程の後に、別途、pH調節剤を添加してもよい。使用可能なpH調節剤としては、特に制限されないが、例えば、塩酸、乳酸、グルコン酸等の液状の酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルコノデルタラクトン等の固形状の酸、及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。また、アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0061】
斯くして得られた第2のリン酸水素カルシウム含有液には、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子が分散した状態で含まれる。
【0062】
第2のリン酸水素カルシウム含有液を濾過等の固液分離処理に供して固形分を回収し、必要に応じて水洗した後に乾燥処理に供することによって、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子が得られる。
【0063】
第2のリン酸水素カルシウム含有液から回収した固形分に対して行われる乾燥処理としては、棚段乾燥、熱風乾燥、スプレードライ、凍結乾燥、流動層乾燥等のいずれで行ってもよい。なお、第2のリン酸水素カルシウム含有液を乾燥処理に供すると、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子が凝集して凝集粒子を形成した状態で得られるので、本発明の無水リン酸水素カルシウム粒子(非凝集粒子の状態)を得る場合には、乾燥処理後に、凝集粒子を分散処理等に供して、凝集状態を崩壊させればよい。
【0064】
2.無水リン酸水素カルシウム粉体
本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、前記無水リン酸水素カルシウム粒子が凝集してなる凝集粒子を含むことを特徴とする。前記無水リン酸水素カルシウム粒子は、凝集すると、例えば球状の粒子を形成するが、その凝集力は弱く、水中での撹拌処理や超音波処理等によって容易に凝集状態が解けて、微小化された分散状態になる特性を有している。それ故、前記無水リン酸水素カルシウム粒子が凝集してなる凝集粒子によって形成されている本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、粉体状態での流動性が良好で、凝集粒子であるにも拘わらず水中において容易に無水リン酸水素カルシウム粒子に解けることで分散性も良好となり、リン酸水素カルシウムを使用する各種製品の製造において、ハンドリングし易いという利点が得られる。
【0065】
[物性]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体の好適な一例として安息角が45°以下、好ましくは25〜45°、更に好ましくは25〜40°が挙げられる。安息角は、粉体の流動性の指標であり、その値が小さい程、安息角が45°以下の粉体は、各種製品の製造時にハンドリングし易い流動性を有していることになる。
【0066】
本発明において、無水リン酸水素カルシウム粉体の安息角は、直径50mmの皿の上に高さ100mmの位置より測定サンプルを少量ずつ落下させ、皿の底部から無水リン酸水素カルシウム粉体の頂点部までの高さが安定した時点で、当該高さを計測し、次式により安息角を算出することにより求められる。
【数1】
【0067】
また、本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体を構成する凝集粒子の粒子径については、特に制限されないが、例えば10〜120μm、好ましくは20〜110μm、更に好ましくは30〜100μmが挙げられる。尚、凝集粒子の粒子径は顕微鏡により100個以上の凝集粒子を観察し、その直径の平均値を算出して求められる。
【0068】
[用途]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、食品、化粧料、医薬等の各種添加剤や原料として使用される。また、本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、必要に応じて、粉砕等の処理を施して提供又は使用することもできる。
【0069】
[製造方法]
本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体は、前記無水リン酸水素カルシウム粒子を凝集させて凝集粒子を形成させることによって製造することができる。前記無水リン酸水素カルシウム粒子による凝集粒子を形成させるには、例えば、前記無水リン酸水素カルシウム粒子を懸濁させた水溶液を乾燥処理に供すればよい。
【0070】
本発明の無水リン酸水素カルシウム粉体の製造方法としては、具体的には、前記無水リン酸水素カルシウム粒子を水に分散させてスプレードライ等の乾燥処理に供する方法;前記無水リン酸水素カルシウム粒子の製造方法における第3工程で得られた第2のリン酸水素カルシウム含有液から回収した固形分を懸濁液にした後に、棚段乾燥、熱風乾燥、スプレードライ、凍結乾燥、流動層乾燥等の乾燥処理に供する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0072】
試験例1:無水リン酸水素カルシウム粒子の製造及び物性評価
1.無水リン酸水素カルシウム粒子の製造
実施例1
(第1工程)
5Lの容器に1800mLの水を量りとり、粒状塩化カルシウム633gを添加して240rpmで撹拌し、塩化カルシウム溶液を調製した。その塩化カルシウム溶液を40℃に加温し、ナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.82となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を1時間で添加した後、40℃の温度条件を維持して30分間撹拌し、水酸化カルシウム含有液を得た。
【0073】
(第2工程)
85重量%のリン酸水溶液472gに水を加え733gとしたリン酸水溶液を、40℃に加温した前記水酸化カルシウム含有液に4時間で滴下し、40℃の温度条件を維持して滴下終了後1時間撹拌することによって、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得た。
【0074】
(第3工程)
得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液を40℃に加温した状態で、液中でのナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.98となるように、48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、更に90℃で3時間撹拌して熟成を行い、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得た。次いで、第2のリン酸水素カルシウム含有液を冷却後、ろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物(固形物)を棚段乾燥機に入れ、105℃で16時間乾燥し、乾燥物を卓上ミルにて解砕することにより、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0075】
実施例2
第3工程において、第1のリン酸水素カルシウム含有液に対して、液中でのナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.99となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0076】
実施例3
第3工程において、第1のリン酸水素カルシウム含有液に対して、液中でのナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が2.00となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0077】
実施例4
第3工程において、第1のリン酸水素カルシウム含有液に対して、液中でのナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が2.03となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0078】
実施例5
第3工程において、第1のリン酸水素カルシウム含有液に対して、液中のナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が2.05となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0079】
実施例6
第3工程において、第1のリン酸水素カルシウム含有液に対して、液中のナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が2.07となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0080】
実施例7
(第1工程)
7tの容器に2700Lの水を量りとり、粒状塩化カルシウム950kgを添加して撹拌し、塩化カルシウム溶液を調製した。その塩化カルシウム溶液を40℃に加温し、ナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.82となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を1時間で添加した後、40℃の温度条件を維持して30分間撹拌し、水酸化カルシウム含有液を得た。
【0081】
(第2工程)
85重量%リン酸水溶液708kgに水を加え1100kgとしたリン酸水溶液を、40℃に加温した前記水酸化カルシウム含有液に4時間で滴下し、40℃の温度条件を維持して1時間撹拌することによって、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得た。
【0082】
(第3工程)
得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液に40℃に加温した状態で、液中でのナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が2.00となるように、48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、更に90℃で3時間撹拌して熟成を行い、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得た。次いで、第2のリン酸水素カルシウム含有液を冷却後、ろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物(固形物)の一部を採取し、棚段乾燥機に入れ、105℃で16時間乾燥し、乾燥物を卓上ミルにて解砕することにより、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0083】
比較例1
(第1工程)
5Lの容器に1800mLの水を量りとり、粒状塩化カルシウム633gを添加して240rpmで撹拌し、塩化カルシウム溶液を調製した。その塩化カルシウム溶液を40℃に加温し、ナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.82となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を1時間で添加した後、40℃の温度条件を維持して30分間撹拌し、水酸化カルシウム含有液を得た。
【0084】
(第2工程)
85重量%リン酸水溶液472gに水を加え733gとしたリン酸水溶液を、40℃に加温した前記水酸化カルシウム含有液に4時間で滴下し、40℃の温度条件を維持して滴下終了後1時間撹拌し、更に90℃で3時間撹拌して熟成することによって、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得た。
【0085】
得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液を冷却後、ろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物(固形物)を棚段乾燥機に入れ、105℃で16時間乾燥し、乾燥物を卓上ミルにて解砕することにより、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0086】
比較例2
(第1工程及び第2工程)
前記比較例1と同様の条件で第1工程及び第2工程を行い、第1のリン酸水素カルシウム含有液を得た。
【0087】
(第3工程)
得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液を40℃に加温した状態で、ナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.89となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、更に90℃で3時間撹拌して熟成を行い、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得た。次いで、第2のリン酸水素カルシウム含有液を冷却後、ろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物(固形物)を棚段乾燥機に入れ、105℃で16時間乾燥し、乾燥物を卓上ミルにて解砕することにより、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0088】
比較例3
第3工程において、第1のリン酸水素カルシウム含有液にナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.91となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、比較例2と同様の操作を行い、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0089】
比較例4
(第1工程)
7tの容器に2700Lの水を量りとり、粒状塩化カルシウム950kgを添加して撹拌し、塩化カルシウム溶液を調製した。その塩化カルシウム溶液を40℃に加温し、ナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.82となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を1時間で添加した後、40℃の温度条件を維持して30分間撹拌し、水酸化カルシウム含有液を得た。
【0090】
(第2工程)
85重量%リン酸水溶液708kgに水を加え1100kgとしたリン酸水溶液を、前記水酸化カルシウム含有液に4時間で滴下し、40℃の温度条件を維持して滴下終了後1時間撹拌することによって第1のリン酸水素カルシウム含有液を得た。
【0091】
(第3工程)
得られた第1のリン酸水素カルシウム含有液に40℃に加温した状態で、液中でのナトリウム原子/カルシウム原子のモル比が1.91となるように48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、90℃で3時間撹拌して熟成を行い、第2のリン酸水素カルシウム含有液を得た。次いで、第2のリン酸水素カルシウム含有液を冷却後、ろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物(固形物)の一部を採取し、棚段乾燥機に入れ、105℃で16時間乾燥し、乾燥物を卓上ミルにて解砕することにより、無水リン酸水素カルシウム粒子を得た。
【0092】
2.物性の評価方法
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた無水リン酸水素カルシウム粒子について、細孔直径の最頻値、平均粒子径、静的嵩比容積、リン酸水素カルシウムの含量、及び形状を、それぞれ下記の方法で測定した。
【0093】
2−1.細孔直径の最頻値
水銀ポロシメーター(Quantachrome社製「PoreMaster 60GT」)を用いて、以下の条件で細孔直径の最頻値を求めた。
【0094】
無水リン酸水素カルシウム粒子0.05gを正確に量り、測定セルに封入し、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を480dyn/cmとして、水銀圧入下で水銀の吸着等温線を求めた。得られた吸着等温線から細孔分布を求め、当該細孔分布から最大ピークに該当する細孔径を細孔直径の最頻値として特定した。なお、細孔直径の最頻値は細孔径5〜5000nmの範囲内の最大ピークとして求めた。
【0095】
2−2.平均粒子径(D50)
無水リン酸水素カルシウム粒子を水中に添加し、3分間超音波分散(超音波出力40W)した後、Microtrac社製「MICROTRAC MT3300EXII」を用いて、レーザー回折法によりメジアン径を求めた。
【0096】
2−3.静的嵩比容積
無水リン酸水素カルシウム粒子10.0gを量りとり、50mLメスシリンダー(内径2.0cm)にゆっくりと入れ、サンプルの容積(mL)を測定し、静的嵩比容積(mL/10.0g)とした。
【0097】
2−4.リン酸水素カルシウムの含量
食品添加物公定書第8版に収載されているリン酸一水素カルシウムの分析方法に基づいて、リン酸水素カルシウム含量の測定を行った。具体的には、無水リン酸水素カルシウム粒子を200℃で3時間乾燥した後、その約0.4gを精密に量り、塩酸(1→4)12mLを加えて溶かし、更に水を加えて正確に200mLとし、検液とした。検液20mLを正確に量り、0.02mol/LのEDTA溶液25mLを正確に量って加え、次に水50mL及びアンモニア・塩化アンモニウム緩衝液(pH10.7)5mLを加えて約1分間放置した後、エリオクロムブラックT・塩化ナトリウム指示薬0.025gを加え、直ちに過量のEDTAを0.02mol/Lの酢酸亜鉛溶液で滴定した。終点は、液の青色が青紫色になった時点とし、別に空試験(無水リン酸水素カルシウム粒子を加えずに同様の試験)を行い下記式に従ってリン酸水素カルシウム含量を算出した。
【数2】
【0098】
2−5.形状
無水リン酸水素カルシウム粒子の粒子形状は、電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製「SU8200」)を用いて加速電圧1kV、エミッション電流10μAにて測定を行った。
【0099】
3.物性の評価結果
各無水リン酸水素カルシウム粒子の形状を観察した結果、実施例1〜7の場合では、粒子の表面に多数の結晶の析出物が付着した形状になっており、粒子表面が比較的平滑な比較例の場合とは、粒子形状が明らかに異なっていた。なお、参考のために、実施例3、実施例7、及び比較例1で得られた無水リン酸水素カルシウム粒子の形状を観察した結果を図1〜3に示す。図2では粒子表面のほぼ全体の像を示しており、図1及び3では粒子表面の一部の像を示している。
【0100】
また、細孔直径の最頻値、平均粒径、静的嵩比容積、及びリン酸水素カルシウム含量を測定した結果を表1に示す。実施例1〜7で得られた無水リン酸カルシウム粒子は、細孔直径の最頻値/平均粒子径の比が0.2〜0.34を満たしており、更にリン酸水素カルシウム含量が97%以上と高い値になっていた。
【0101】
【表1】
【0102】
試験例2:無水リン酸水素カルシウム粉体(凝集粒子)の製造及び物性評価
1.無水リン酸水素カルシウム粉体(凝集粒子)の製造
実施例8
前記実施例1の製造工程において得た第2のリン酸水素カルシウム含有液から、ろ過して脱水し、水洗することにより反応生成物(固形物)を回収した。回収した反応生成物(固形物)を固形分として30〜40重量%となるように水に懸濁し、リン酸水素カルシウムの懸濁液を調製した。得られたリン酸水素カルシウムの懸濁液をスプレードライヤー(株式会社坂本技研社製「R-2」)にて、乾燥条件を入口温度240℃、アトマイザ回転数15000rpm、送液量19mL/分として乾燥を行い、無水リン酸水素カルシウム粉体を得た。
【0103】
実施例9
前記実施例3の製造工程において得た第2のリン酸水素カルシウム含有液から回収した反応生成物(固形物)を用いたこと以外は、実施例8と同様の条件で無水リン酸水素カルシウム粉体を得た。
【0104】
実施例10
前記実施例4の製造工程において得た第2のリン酸水素カルシウム含有液から回収した反応生成物(固形物)を用いたこと以外は、実施例8と同様の条件で無水リン酸水素カルシウム粉体を得た。
【0105】
実施例11
前記実施例7の製造工程において得た第2のリン酸水素カルシウム含有液から回収した反応生成物(固形物)を用いたこと以外は、実施例8と同様の条件で無水リン酸水素カルシウム粉体を得た。
【0106】
比較例5
前記比較例1の製造工程において得た第1のリン酸水素カルシウム含有液から回収した反応生成物(固形物)を用いたこと以外は、実施例8と同様の条件で無水リン酸水素カルシウム粉体を得た。
【0107】
比較例6
前記比較例4の製造工程において得た第1のリン酸水素カルシウム含有液から回収した反応生成物(固形物)を用いたこと以外は、実施例8と同様の条件で無水リン酸水素カルシウム粉体を得た。
【0108】
2.物性の評価方法
実施例8〜11及び比較例5〜6で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体について、安息角を下記の方法で測定し、更に前記試験例1と同様の方法で粒子形状を測定した。また、実施例9、比較例5及び比較例6で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体については、下記の方法で水中の分散性を評価した。
【0109】
2−1.安息角
直径50mmの皿の上に高さ100mmの位置より無水リン酸水素カルシウム粉体を少量ずつ落下させ、皿の底部から無水リン酸水素カルシウム粉体の頂点部までの高さが安定した時点で、当該高さを計測し、前記式に従って安息角を算出した。
【0110】
2−2.水中での分散性
無水リン酸水素カルシウム粉体1gを100mLの超純水に添加し、超音波発振機(アズワン株式会社製ASUCLEANER)を用いて分散させた後、転倒混和後静置し、10分経過時の分散液の外観を確認した。
【0111】
3.物性の評価結果
実施例8〜11で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の粒子形状を観察した結果、いずれも粒子が凝集した球状の凝集粒子になっていることが確認された。一方、比較例5〜6で無水リン酸水素カルシウム粉体は、凝集粒子の存在が一部に認められたものの、殆どが凝集していない状態で存在していた。なお、参考のために、実施例9、実施例11、比較例5及び比較例6で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の粒子形状を観察した結果について図4〜7に示す。
【0112】
安息角の測定結果を表2に示し、水中での分散性を評価した結果を図8に示す。実施例8〜11で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体では、安息角が45°未満であった。更に、実施例9で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体は、凝集粒子で形成されているにも拘わらず、水中での分散性が良好であり、殆どが凝集粒子を形成していない比較例5及び6で得られた無水リン酸水素カルシウム粉体の水中での分散性と同程度であった。即ち、本結果から、細孔直径の最頻値/平均粒子径の比が0.2〜0.34である無水リン酸水素カルシウム粒子を凝集させて得られた無水リン酸水素カルシウム粉体は、優れた流動性と共に、優れた水中での分散性をも有していることが確認された。
【0113】
【表2】
【要約】
【課題】本発明の目的は、粉体の流動性及び水中での分散性が良好な無水リン酸水素カルシウムを提供することである。
【解決手段】細孔直径の最頻値/平均粒子径の比が0.2〜0.34である無水リン酸水素カルシウム粒子を凝集させた凝集粒子を含む無水リン酸水素カルシウム粉体は、粉体の流動性及び水中での分散性が良好である。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8