(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
竪型射出成形機の固定プラテンに取付固定される固定側母型と、前記固定プラテンに対向配置されている可動プラテンに取付固定される可動側母型と、前記固定側母型に装填される固定側カセット金型と、前記可動側母型に装填される可動側カセット金型と、を備えたカセット式金型装置において、少なくとも前記固定側母型または前記可動側母型のパーティング面に形成されるサブランナと、少なくとも前記固定側カセット金型または前記可動側カセット金型に設けられ前記サブランナからキャビティ空間に溶融樹脂を注入するゲートと、前記サブランナに直交するように先端を前記サブランナに合わせて型開閉方向に対して平行になるように前記固定側母型に設けられるホットランナと、を有し、キャビティとコアを位置合わせした状態で前記固定側カセット金型に前記可動側カセット金型を重積して一体的に金型全体の側面方向から装填する構造のカセット式金型装置。
前記固定側カセット金型を支持する固定側ウェアプレートと、前記可動側カセット金型を支持する可動側ウェアプレートと、前記固定側母型と前記可動側母型のそれぞれに設けられ水平方向に往復移動する一対の楔形ブロックと、前記一対の楔形ブロックをそれぞれ前記固定側ウェアプレートと前記可動側ウェアプレートの方向に移動させる複数のエアシリンダと、を含んでなり、前記楔形ブロックを前記固定側ウェアプレートと前記可動側ウェアプレートの各両縁に嵌め込んで前記固定側母型に前記固定側カセット金型を固定するとともに前記可動側母型に前記可動側カセット金型を固定する構成を有する請求項1に記載のカセット式金型装置。
前記固定側母型と前記固定側カセット金型とが接合する接合面および前記可動側母型と前記可動側カセット金型とが接合する接合面において、それぞれ温調配管の1以上の開口が設けられ、前記固定側母型および前記可動側母型における前記各開口に円環形状の弾性シールを設けて前記楔形ブロックによる接合力によって前記開口を液封する構成を有する請求項3に記載のカセット式金型装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホットランナ方式の金型は、使用する成形材料の量を削減することができるとともに、成形品の品質を高くすることができる利点を有するが、金型装置の構成が複雑化し維持管理が難しくなる不利な点を有する。カセット式金型装置は、少量生産の成形品に向いているところから、ホットランナ方式の金型は、カセット式金型装置に適している。ホットランナ方式の金型においては、樹脂の流出と逆流を阻止するための手段が必要であるが、特段の事情がない限り、溶融樹脂の圧力が安定し、成形サイクルが短縮でき、金型の構造に対する制約がより小さいバルブゲートを設けることが有利である。
【0006】
ホットランナ方式でバルブゲートを設ける場合は、ホットランナの先端が先細り形状であってパーティング面に対して突出する構成であるので、ホットランナを金型に組み付けるときには、ホットランナの先端をパーティング面に対して垂直に合わせる必要がある。そのため、ホットランナ方式のバルブゲートを設けたカセット式金型は、直交型構造にならざるを得ない。
【0007】
本発明は、ホットランナ方式のバルブゲートを備えたカセット式金型装置であって、平行型構造のカセット式金型装置を提供することを主たる目的とする。また、本発明は、カセット金型をスライドして母型に装填するだけで、実質的に樹脂流路と温調配管を導通させることができるカセット式金型装置を提供することを目的とする。本発明において達成されるいくつかの有利な点は、発明の実施の形態において、その都度具体的に示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカセット式金型装置は、上記課題を解決するために、竪型射出成形機の固定プラテン(2)に取付固定される固定側母型(10A)と、固定プラテン(2)に対向配置されている可動プラテン(3)に取付固定される可動側母型(10B)と、固定側母型(10A)に装填される固定側カセット金型(20A)と、可動側母型(10B)に装填される可動側カセット金型(20B)と、を備えたカセット式金型装置(1)において、少なくとも固定側母型(10A)または可動側母型(10B)のパーティング面に形成されるサブランナ(11)と、少なくとも固定側カセット金型(20A)または可動側カセット金型(20B)に設けられサブランナ(11)からキャビティ空間に溶融樹脂を注入するゲート(12)と、サブランナ(11)に直交するように先端をサブランナ(11)に合わせて型開閉方向に対して平行になるように固定側母型(10A)に設けられるホットランナ(13)と、を有し、キャビティとコアを位置合わせした状態で固定側カセット金型(20A)に可動側カセット金型(20B)を重積して一体的に金型全体の側面方向から装填する構造にする。
【0009】
特に、本発明のカセット式金型装置は、固定側母型(10A)の上面に回転自在に設けられる複数の転がり案内、例えば、フリーボールベアリング(16)を設ける。また、本発明のカセット式金型装置は、固定側カセット金型(20A)を支持する固定側ウェアプレート(40)と、可動側カセット金型(20B)を支持する可動側ウェアプレート(50)と、固定側母型(10A)と可動側母型(10B)のそれぞれに設けられ水平方向に往復移動する一対の楔形ブロック(17)と、一対の楔形ブロック(17)をそれぞれ固定側ウェアプレート(40)と可動側ウェアプレート(50)の方向に移動させる複数のエアシリンダ(30)と、を含んでなり、楔形ブロック(17)を固定側ウェアプレート(40)と可動側ウェアプレート(50)の各両縁に嵌め込んで固定側母型(10A)に固定側カセット金型(20A)を固定するとともに可動側母型(10B)に可動側カセット金型(20B)を固定する構成を有する。
【0010】
望ましくは、固定側母型(10A)と固定側カセット金型(20A)とが接合する接合面および可動側母型(10B)と可動側カセット金型(20B)とが接合する接合面において、それぞれ温調配管(18)の1以上の開口が設けられ、固定側母型(10A)および可動側母型(10B)における各開口に円環形状の弾性シール(19)を設けて楔形ブロック(17)による接合力によって開口を液封する構成を有するようにする。
【0011】
また、本発明のカセット式金型装置は、可動側カセット金型(20B)を貫通してキャビティ空間に突出する1以上のエジェクタピン(60A)を立設したエジェクタプレート(60)を可動側カセット金型(20B)の上に配設して固定側カセット金型(20A)および可動側カセット金型(20B)と共に一体的に金型全体の側面の方向から装填する構造にする。
【0012】
括弧内の符号は、図面に記入されている符号と一致する。ただし、括弧内の符号は、説明の便宜上設けられたものであり、本発明を図面に示されている具体的な実施の形態のカセット式金型装置に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、パーティング面にサブランナとゲートを形成し、サブランナを通して溶融樹脂をキャビティに供給する構成であるので、サブランナに直交するようにホットランナの先端を合わせるようにすることによって、型開閉方向に平行になるように固定側母型にホットランナを設けることができる。そのため、
ホットランナ方式のカセット金型装置において、カセット金型を金型全体の側面の方向から装填することができる。その結果、作業者の負担を軽減することができるとともに、カセット金型の交換時間を短縮することができる。
【0014】
本発明が固定側母型の上面に回転自在に設けられるフリーボールベアリングのような転がり案内を設ける構成である場合は、質量が比較的大きいカセット金型をより容易に母型に装填させることができる。その結果、作業者の負担をより軽減することができるとともに、カセット金型の交換時間をより短縮することができる。
【0015】
特に、ウェアプレートの両縁に楔形ブロックを嵌め込んでカセット金型を母型に押し付けて固定する構成である場合は、エアシリンダによって比較的強力にカセット金型を固定することができる。その結果、作業者の負担をより軽減することができるとともに、カセット金型の交換時間をより短縮することができる。また、金型装置の構成を比較的簡単にし、サイズをより小さくして、取扱いをより容易にすることができる。加えて、十分な力でカセット金型を母型に接合するので、樹脂流路と温調配管とを手作業なしに接続するようにすることができる。
【0016】
また、本発明が1以上のエジェクタピンを立設したエジェクタプレートを可動側カセット金型の上側に配設してカセット金型と一体的に母型に装填する構成である場合は、キャビティ空間の形状に合わせて適切にエジェクタピンを配設したエジェクタプレートを準備して取り付けるだけでエジェクタをセットすることができる。その結果、作業者の負担をより軽減することができるとともに、カセット金型の交換時間をより短縮することができる。また、キャビティ空間に対する制約がより小さく、利便性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明のカセット式金型装置の代表的な実施の形態を示す。
図1は、中心で左右に分断して右側面の方向から見たときのカセット式金型装置の断面を示す。また、
図2および
図3は、それぞれ
図1に示される切断線A−Aと切断線B−Bに沿って中心で前後に分断して前面の方向から見たときのカセット式金型装置の断面を示す。
図1に示されるカセット式金型装置は、
図4に示される竪型射出成形機の正面からカセット金型が母型に装填される構成であり、カセット式金型装置の前面の位置が射出成形機の正面の位置と一致する。
【0019】
竪型射出成形機は、例えば、
図4に示されるように、カセット式金型装置1を取り付けることができる固定プラテン2と可動プラテン3とを有する。固定プラテン2は、チャンバ4によって形成される金型5を収容する成形空間4Aの下側に配置されている。可動プラテン3は、成形空間4Aの中の固定プラテン2の上側に配置されている。作業者が操作パネル6を操作することによって、射出成形機の制御装置を通してカセット式金型装置1をチャンバ4の外側で動作させることができる。
【0020】
金型5は、カセット式金型装置1から組立部品を取り除いた1個以上の金属製のブロックでなる型の本体だけを示す。金型5は、
図1に示されるように、固定金型5Aと可動金型5Bとでなる。金型5は、具体的には、カセット式金型装置1の母型10である固定側母型10Aおよび可動側母型10Bと、カセット金型20である固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bとでなる。固定側母型10Aは、固定プラテン2に取付固定され、可動側母型10Bは、可動プラテン3に取付固定される。
【0021】
カセット式金型装置1は、
図1および
図2に示されるように、母型10と、カセット金型20と、エアシリンダ30と、固定側ウェアプレート40と、可動側ウェアプレート50と、エジェクタプレート60とを含んでなる。また、カセット式金型装置1は、金型5の中に設けられる、サブランナ11と、ゲート12と、ホットランナ13と、バルブゲート14と、スプル15と、フリーボールベアリング16と、楔形ブロック17と、温調配管18とを含んでなる。ただし、成形材料を加熱して溶解し溶融樹脂を保温するとともに断熱する構成については、図示および説明を省略する。
【0022】
カセット式金型装置1は、キャビティとコアを位置合わせした状態で固定側カセット金型20Aに可動側カセット金型20Bを重積して一体的に一対の金型5の全体の側面の方向から母型10に装填する平行型構造である。以下、一体化して母型10に装填されるカセット金型20の集合体をカセットユニットという。実施の形態のカセット式金型装置1におけるカセットユニットは、下から順番に、固定側ウェアプレート40と、固定側カセット金型20Aと、可動側カセット金型20Bと、可動側ウェアプレート50と、エジェクタプレート60とを積層してなる。
【0023】
サブランナ11は、ゲート12とホットランナ13の先端との間の固定側母型10Aまたは可動側母型10B、あるいはその両方のパーティング面に形成される。サブランナ11は、ホットランナ13から流入する溶融樹脂を水平方向にゲート12に供給する。サブランナ11は、より具体的には、固定金型5Aと可動金型5Bとが接合したときに、固定側母型10Aと可動側母型10Bとの間で溝と対向するパーティング面または溝同士が合体してできる。型締時の型締力によってサブランナ11から溶融樹脂が漏出することが防がれる。
【0024】
ゲート12は、サブランナ11に接続するように固定側カセット金型20Aまたは可動側カセット金型20Bに細穴放電加工によってゲート形状の貫通孔を形成することによって設けられる。ゲート12は、サブランナ12と連通しサブランナ12から供給される溶融樹脂をキャビティ空間に水平方向に注入する。固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bの両方に半割のゲート形状の穴を形成して、固定金型5Aと可動金型5Bが接合したときに穴同士が合体してゲート12ができるようにすることができる。このときは、型締時の型締力によってゲート12から溶融樹脂が漏出することが防がれる。
【0025】
ホットランナ13は、サブランナ11に直交するように先端をサブランナ11に合わせて型開閉方向に平行になるように固定側母型10Aに設けられる。ホットランナ13は、キャビティ空間に溶融樹脂を供給するときにだけバルブゲート14を開放して溶融樹脂をサブランナ11に流入させる。
【0026】
バルブゲート14は、ホットランナ13の溶融樹脂の流路の開閉を行なう。バルブゲート14は、ホットランナ13の溶融樹脂の流路中に同軸にバルブピン14Aを設けている。溶融樹脂の流路の開閉を直接行なうバルブピン14Aは、固定側母型10Aの固定側プラテン2側に設けられている駆動装置14Bによって作動する。
【0027】
スプル15は、固定側母型10Aに水平に設けられる。スプル15は、金型5における図示しない射出ノズルが接続する溶融樹脂の導入口からホットランナ13の溶融樹脂の導入路まで溶融樹脂を案内する。そのため、金型5の側面に射出ノズルを接続するように射出シリンダを水平に設置し、金型5の上側にエジェクタの駆動装置を設けるようにすることができる。したがって、スプル15は、平行型構造のホットランナ方式のカセット式金型装置の実現を助ける。スプル15は、図示しないヒータによって溶融樹脂を所定温度に加熱して保温することができ、ホットランナ13と共に、成形中に樹脂を溶融状態にしている。
【0028】
フリーボールベアリング16は、カセット金型20を含むカセットユニットをスライドさせて母型10にセットするときに発生する摩擦力を低減する転がり案内の1つである。複数のフリーボールベアリング16は、カセットユニットをスライドさせる方向に沿って固定側母型10Aの上面のカセット金型20Aを母型10に案内する案内面上に1列以上に直線上に配列され、それぞれ回転自在に設けられる。フリーボールベアリング16によってカセットユニットが固定側母型10Aから数mm浮上した状態でスライドする。フリーボールベアリング16は、カセット金型20を母型10に装填する作業の負担を軽減する。
【0029】
楔形ブロック17は、固定側母型10Aと可動側母型10Bのそれぞれに設けられ、母型10を形成するいくつかの金属ブロックと一緒に水平方向に移動する。複数の楔形ブロック17を固定側ウェアプレート40の両縁と可動側ウェアプレート50の両縁に同時にはめ込むことによって、固定側母型10Aに固定側カセット金型10Bを固定するとともに、可動側母型10Bに可動側カセット金型20Bを固定する。
【0030】
楔形ブロック17は、エアシリンダ30に圧縮空気を送給したときに固定側ウェアプレート40または可動側ウェアプレート50の方向に移動し、エアシリンダ30の空気を抜いたときに固定側ウェアプレート40または可動側ウェアプレート50から離れる方向に移動する。例えば、一対の楔形ブロック17A,17Bがエアシリンダ30A,30Bによって固定側ウェアプレート40の両縁の方向に移動し、一対の楔形ブロック17C,17Dがエアシリンダ30C,30Dによって可動側ウェアプレート50の両縁の方向に移動して、その結果、4つの楔形ブロックが同時に移動する。
【0031】
複数の楔形ブロック17によって、比較的小さい力でより大きいクランプ力を発生させるとともに、比較的容易にロックを解除させることができるので、カセット式金型装置1の大きさをコンパクトにすることができる利点がある。また、手作業でカセット金型20を母型10にクランプする必要がないので、作業性が向上する。しかも、カセット金型20を半自動的に装填することができる点で優位である。
【0032】
温調配管18は、
図1および
図3に示されるように、第1の経路18Aと、第2の経路18Bと、第3の経路18Cとの3系統設けられる。温調配管18は、固定金型5Aと可動金型5Bにそれぞれ設けられる。第1の経路19Aは、固定側母型10Aと可動側母型10Bに設けられ、母型10の温度を調整する。第2の経路18Bは、固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bに設けられ、カセット金型20の温度を調整する。第3の経路18Cは、固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bのキャビティまたはコアの近くまで設けられ、キャビティとコアの温度を局所的に調整する。
【0033】
固定側母型10Aと固定側カセット金型20Aとが接合する接合面および可動側母型10Bと可動側カセット金型20Bとが接合する接合面において、それぞれ温調配管18の1以上の開口が設けられる。実施の形態のカセット式金型装置1においては、温調配管18の第2の経路18Bと第3の経路18Cの温調媒体を供給する側の開口と温度媒体を排出する側の開口が設けらる。
【0034】
固定側母型10Aおよび可動側母型10Bにおける温調配管18の各開口には、
図3に例示されるように、例えば、樹脂製のOリングのような円環形状の弾性シール19が固定して設けられている。母型10にカセット金型20を固定するときに、複数の楔形ブロック17によってカセット金型20がクランプされるときに発生する接合力によって弾性シール19が圧縮されて開口が液封される。そのため、カセット金型20を母型10に装填し固定するだけで配管を接続することができ、作業性が向上する。
【0035】
エジェクタプレート60は、1以上のエジェクタピン60Aを有する。エジェクタピン60Aは、不特定のキャビティ空間の形状に合わせて上側カセット金型20Bを貫通してキャビティ空間に突出するように任意に取り付けられる。エジェクタプレート60は、母型10に装填された後にエジェクタピン60Aを動作させるため、複数の支柱60Bによって間隔をおいて可動側カセット金型20Bの上に配設される。エジェクタプレート60は、可動プラテン3の上側に設置される駆動機構によって作動する。スプリング60Cは、作動後のエジェクタプレート60を元の位置に戻すために設けられている。
【0036】
実施の形態のカセット式金型装置1は、図示しない射出シリンダが水平に設けられているので、可動プラテン3の上側にエジェクタピン60Aの駆動機構を設置することができる。そのため、エジェクタプレート60を可動側カセット金型20Bの上に配設することができる。その結果、エジェクタプレート60をカセットユニットの中に含ませて固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bと共に一体的に金型全体の側面の方面から装填される。
【0037】
次に、カセット式金型装置1のカセット金型を交換する方法について説明する。固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bは、それぞれ予め固定側ウェアプレート40または可動側ウェアプレート50に固定されている。固定側ウェアプレート40と固定側カセット金型20A、および可動側ウェアプレート50と可動側カセット金型20Bの外形は、キャビティ空間の形状の違いに関わらず、母型10の中のカセットユニットの取付空間に整合するように形成されている。
【0038】
所望の成形品の形状にキャビティ空間が形成されるようにキャビティとコアとを位置決めして固定側カセット金型20Aの上に可動側カセット金型20Bを重積する。一般に、カセット金型20を製作するときに、嵌合穴のような固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bとを正確に位置決めするための部位が形成されているので、比較的大きいキャビティ空間を有する金型5の場合であっても、固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型20Bとの位置合わせは、それほど困難な作業ではない。
【0039】
また、エジェクタプレート60をカセット金型20に取り付ける。母型10において、エジェクタピン60Aを動作させる駆動機構が設けられる側にエジェクタプレート60が設けられるので、固定側カセット金型20Aまたは可動側カセット金型20Bのどちらに設けても構わない。しかしながら、カセットユニットで一体的に金型全体の側面の方向から母型10に装填するためには、基本的には、可動側カセット金型20Bの上にエジェクタプレート60を取り付けることが望ましい。
【0040】
実施の形態のカセット式金型装置1の場合は、1以上のエジェクタピン60Aをキャビティ空間の形状に合わせて可動側カセット金型20Bに設けられているエジェクタピン穴に位置合わせをし、エジェクタピン60Aが可動側カセット金型20Bを貫通してキャビティ空間に突出するようにしながら、支柱60Bによってエジェクタプレート60を可動側カセット金型20Bの上に取り付ける。
【0041】
次に、カセットユニットを固定側母型10Aの上面に設けられている複数のフリーボールベアリング16の上に載せる。このとき、可動プラテン3が型閉位置から5mmないし6mm程度上側に位置されていて、固定側母型20Aと可動側母型70のパーティング面が開いている。そのため、カセットユニットが複数のフリーボールベアリング16によって数mm浮上している状態であるが、カセットユニットをそのまま母型10に押し込むことによって、フリーボールベアリング16によって案内されて母型10の取付空間内に収容される。
【0042】
カセットユニットが母型の取付空間に収容されている状態で可動プラテン3を型閉位置まで下降させて固定金型5Aと可動金型5Bのパーティング面を合わせる。そして、複数のエアシリンダ30を同時に作動させて固定金型5Aと可動金型5Bにおける各一対の楔形ブロック17を固定側ウェアプレート40と可動側ウェアプレート50の各両縁に嵌め入れることによって、カセット金型20を母型10にクランプする。
【0043】
このとき、楔原理に従って楔形ブロック17を押し入れた方向に直交する方向に力が増大して作用して母型10とカセット金型20とがより強く接合し、弾性シール19が押し潰されながら温調配管18の開口を封止する。そのため、比較的簡単な構成でより確実に開口を液封することによって、作業者の手を介さずに半自動的に母型10にカセット金型20をセットすることができ、作業性が向上するとともに、カセット金型を交換する時間を短縮することができる。
【0044】
また、成形作業中における型閉時は、型締力によって固定側カセット金型20Aと可動側カセット金型10Bとがパーティング面において強力に接合するため、パーティング面に形成されているサブランナ11とゲート12が完全に封止され、溶融樹脂が漏出するおそれがない。そのため、作業者の手を介さず半自動的に母型10にカセット金型20をせっとすることができ、作業性が向上するとともに、カセット金型を交換する時間を短縮できる利点がある。
【0045】
カセット金型20を母型10から取り外すときは、可動プラテン3を型閉位置に移動させて、一旦固定側母型10Aと可動側母型10Bとのパーティング面を合わせる。そして、いわゆるエアパージによって固定側カセット金型10Aと可動側カセット金型10Bとの両方のカセット金型10の中の温調配管18に残っている温調媒体、例えば、水をカセット金型20の外に排出する。続いて、全ての複数のエアシリンダ30を同時に作動させて複数の楔形ブロック17をカセットユニットから離れる方向に移動させて、カセット金型20をアンクランプする。
【0046】
続いて、可動プラテン3を5mmないし6mm程度上昇させて、固定側母型10Aと可動側母型10Bとの間のパーティング面を開離する。このとき、母型10とカセット金型20との間のクランプが解除されているので、可動側カセット金型10Bとエジェクタプレート60は、固定側カセット金型20Aの上に載っている状態になる。この状態で、作業者がカセットユニットを手前に引き出すと、カセットユニットが複数のフリーボールベアリング16の上に乗って案内され、作業者がそれほど大きな力を加えることなく、カセットユニットを母型10の外に移動させることができる。
【0047】
母型10とカセット金型20との接合面における温調配管の開口は、円環形状の弾性シール19とクランプによる接合力だけで封止しているので、また、サブランナ11とゲート12もすでに型締力が開放されてクランプ力のみで形成されている状態であるので、人手を介さずにそのまま開放される。そのため、作業性が向上するとともに、カセット金型の交換時間が短縮される利点がある。
【0048】
本発明は、実施の形態のカセット式金型装置に限定されるべきものではなく、すでにいくつかの具体的な例が示されているが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、変形して実施することができる。また、本発明は、作用効果を得ることができる範囲で、他の発明と組み合わせて実施したり、ある部材を別の部材に置き換えて実施することができる。例えば、転がり案内として、実施の形態のカセット式金型装置におけるフリーボールベアリングに代えてガイドローラを使用することができる。
【解決手段】カセット式金型装置1は、固定側母型10Aまたは可動側母型10Bのパーティング面に形成されるサブランナ11と、固定側カセット金型20Aまたは可動側カセット金型20Bに設けられサブランナ11からキャビティ空間に溶融樹脂を注入するゲート12と、サブランナ11に直交するように先端をサブランナ11に合わせて型開閉方向に対して平行になるように固定側母型10Aに設けられるホットランナ13と、を有する。カセット式金型装置1は、キャビティとコアを位置合わせした状態で固定側カセット金型10Aに可動側カセット金型10Bを重積して一体的に金型全体の側面の方向から装填することができる。