特許第6164769号(P6164769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164769
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】還元剤供給装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170710BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   B01D53/94 400
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-45018(P2013-45018)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-173460(P2014-173460A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】澤木 敏喜
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174786(JP,A)
【文献】 特開平11−210532(JP,A)
【文献】 特開2000−303887(JP,A)
【文献】 特開2003−293735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
F02D 41/00−45/00
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体還元剤を用いて排気中の窒素酸化物を浄化する排気浄化装置に備えられる還元剤供給装置であって、貯蔵タンク内の液体還元剤を圧送するポンプと、圧送される液体還元剤を内燃機関の排気管内に噴射するための電磁噴射弁と、目標噴射量に応じて前記電磁噴射弁を制御する電磁噴射弁制御手段と、を備えた還元剤供給装置において、
前記電磁噴射弁は電磁式のオンオフ弁であり、
前記電磁噴射弁の通電開始から弁体が最大リフト位置に到達するまでの時間と前記電磁噴射弁への供給電流値とに基づいて前記液体還元剤の供給圧力を推定する圧力推定制御手段と、
前記推定された供給圧力を用いて前記電磁噴射弁を制御する電磁噴射弁制御手段と、
を備えることを特徴とする還元剤供給装置。
【請求項2】
前記液体還元剤の供給圧力を検出するための圧力センサと、前記供給圧力が所定値に維持されるように前記ポンプの出力を制御するポンプ制御手段と、前記圧力センサのセンサ値の異常を検出するためのセンサ異常検出手段と、を備え、前記圧力推定制御手段は、前記圧力センサのセンサ値の異常時に前記供給圧力の推定を行うことを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記窒素酸化物の浄化率を推定する浄化率推定手段と、前記浄化率に応じて前記推定された供給圧力を補正する推定圧力補正手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記推定される供給圧力と、前記ポンプの出力と、に基づいて前記推定される供給圧力の信頼性を診断する圧力推定診断手段を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記電磁噴射弁制御手段は、前記供給圧力の推定時において、前記弁体が最大リフト位置に到達したときに速やかに通電を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の還元剤供給装置。
【請求項6】
前記ポンプ制御手段は、前記圧力センサのセンサ値の異常検出時に、前記ポンプの出力をその時点の出力、又は、あらかじめ定めた規定値に固定することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の還元剤供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に液体還元剤を噴射するための還元剤供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されたディーゼルエンジン等の内燃機関の排気には窒素酸化物(NOX)が含まれている。このNOXを浄化する排気浄化装置の一つとして、内燃機関の排気通路中に配置される還元触媒と、還元触媒の上流側で尿素水溶液等の液体還元剤を噴射するための還元剤供給装置とを備えた排気浄化装置が知られている。この排気浄化装置は、還元触媒中で、排気中のNOXとアンモニアとを効率的に還元反応させ、NOXを窒素や水等に分解するものとなっている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置の一態様として、ポンプ及び電磁噴射弁を備え、貯蔵タンク内の液体還元剤をポンプによって圧送するとともに、排気管に固定された電磁噴射弁を介して液体還元剤を排気管内に供給する直接噴射式の還元剤供給装置がある。
【0004】
このような還元剤供給装置では、液体還元剤を過不足なく噴射できるように、電磁噴射弁に供給される液体還元剤の供給圧力を圧力センサによって検出するとともに、この検出圧力が所定の値に維持されるようにポンプの出力を制御し、排気中のNOX量等に基づいて算出される目標噴射量に応じて電磁噴射弁の開弁時間を制御することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−007617号公報(段落[0037]、[0047]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような還元剤供給装置では、圧力センサが故障した場合に、液体還元剤の供給圧力を制御することができなくなり、その結果、適切な噴射量を維持することができないおそれがある。そのため、従来の還元剤供給装置においては、圧力センサの故障時には装置の作動を停止していた。したがって、圧力センサの故障時には、NOXの浄化制御ができないものとなっていた。
【0007】
したがって、本発明は、圧力センサの故障時においても、供給圧力を推定することによってNOX浄化制御を継続することができる還元剤供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、液体還元剤を用いて排気中の窒素酸化物を浄化する排気浄化装置に備えられる還元剤供給装置であって、貯蔵タンク内の液体還元剤を圧送するポンプと、圧送される液体還元剤を内燃機関の排気管内に噴射するための電磁噴射弁と、目標噴射量に応じて前記電磁噴射弁を制御する電磁噴射弁制御手段と、を備えた還元剤供給装置において、前記電磁噴射弁の開弁開始から開弁終了までの時間と前記電磁噴射弁への供給電流値とに基づいて前記液体還元剤の供給圧力を推定する圧力推定制御手段と、前記推定された供給圧力を用いて前記電磁噴射弁を制御する電磁噴射弁制御手段と、を備えることを特徴とする還元剤供給装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明の還元剤供給装置によれば、供給圧力を推定する圧力推定制御手段と、推定された供給圧力に基づいて電磁噴射弁を制御する電磁噴射弁制御手段とを備えることとしているために、圧力センサが利用できない場合であっても、液体還元剤の噴射量を許容範囲に制御することができるようになる。したがって、圧力センサが利用可能な状態に無い場合であってもNOX浄化制御を継続することができる。
【0010】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記圧力推定制御手段は、前記電磁噴射弁への供給電流値と、通電開始から弁体が最大リフト位置に到達するまでの時間と、に基づいて前記供給圧力を推定することが好ましい。このように供給圧力を推定することにより、追加の部品等を用いることなく、供給圧力を推定することが可能になる。
【0011】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記液体還元剤の供給圧力を検出するための圧力センサと、前記供給圧力が所定値に維持されるように前記ポンプの出力を制御するポンプ制御手段と、前記圧力センサのセンサ値の異常を検出するためのセンサ異常検出手段と、を備え、前記圧力推定制御手段は、前記圧力センサのセンサ値の異常時に前記供給圧力の推定を行うことが好ましい。このように、圧力センサのセンサ値の異常時に供給圧力の推定を行うことにより、センサ値の異常時のみに、推定した供給圧力によって液体還元剤の噴射量の制御が行われることになり、圧力センサのセンサ値を利用可能な状態においては液体還元剤の噴射量の精度を高く維持することができる一方、圧力センサのセンサ値の異常時においても、液体還元剤の噴射制御を適切に継続することができる。
【0012】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記窒素酸化物の浄化率を推定する浄化率推定手段と、前記浄化率に応じて前記推定された供給圧力を補正する推定圧力補正手段と、を備えることが好ましい。このように窒素酸化物の浄化率に応じて推定された供給圧力を補正する手段を備えることにより、電磁噴射弁の制御量の計算に用いられる、推定される供給圧力の精度を高めることができ、適切な量の液体還元剤を噴射することができる。
【0013】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記推定される供給圧力と、前記ポンプの出力と、に基づいて前記推定される供給圧力の信頼性を診断する圧力推定診断手段を備えることが好ましい。このように、推定された供給圧力の信頼性を診断することにより、圧力センサの故障以外に、ポンプ等からの還元剤の漏れや、ポンプ自体の故障などの異常の有無を診断することが可能となって、異常時に、装置を速やかに停止させることができる。
【0014】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記電磁噴射弁制御手段は、前記供給圧力の推定時において、前記弁体が最大リフト位置に到達したときに速やかに通電を停止することが好ましい。このように、供給圧力の推定時に速やかに電磁噴射弁を閉じることにより、最小限の噴射量での供給圧力の推定が可能となって、液体還元剤の浪費や、漏れを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記ポンプ制御手段は、前記圧力センサの故障検出時に、前記ポンプの出力をその時点の出力、又は、あらかじめ定めた規定値に固定することが好ましい。このように、圧力センサの故障時にポンプの出力を固定することにより、その後に推定された供給圧力とポンプの出力との関係を把握しやすくなって、液体還元剤の噴射制御を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】還元剤供給装置が備えられた排気浄化装置の一例を示す全体図である。
図2】第1の実施の形態にかかる還元剤供給装置に備えられた制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】弁体の最大リフト位置を検出する方法を説明するための図である。
図4】通電時間と供給電流値と推定供給圧力との関係を示す図である。
図5】第1の実施の形態にかかる制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6】圧力センサのセンサ値の正常時における噴射制御のフローチャートである。
図7】第1の実施の形態にかかる圧力センサのセンサ値の異常時における噴射制御のフローチャートである。
図8】第2の実施の形態にかかる還元剤供給装置に備えられた制御装置の構成例を示すブロック図である。
図9】NOX浄化率と補正係数αとの関係を示す図である。
図10】第2の実施の形態にかかる制御方法の一例を示すフローチャートである。
図11】第2の実施の形態にかかる圧力センサのセンサ値の異常時における噴射制御のフローチャートである。
図12】第3の実施の形態にかかる還元剤供給装置に備えられた制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照して、本発明の還元剤供給装置に関する実施の形態について具体的に説明する。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0018】
[第1の実施の形態]
1.排気浄化装置の全体構成
図1は、第1の実施の形態にかかる還元剤供給装置20が備えられた排気浄化装置10の全体構成の一例を説明するために示す図である。
この排気浄化装置10は、排気中のNOXを浄化するための装置であり、ディーゼルエンジン等の内燃機関1の排気通路11に備えられている。排気浄化装置10は、排気通路11の途中に介装された還元触媒13と、還元触媒13よりも上流側の排気通路11内に液体還元剤を供給するための還元剤供給装置20とを備えている。
【0019】
還元触媒13は、排気中のNOXの還元を促進する機能を有する触媒であり、液体還元剤から生成される還元成分を吸着するとともに、触媒に流れ込む排気中のNOXを還元成分によって選択的に還元する触媒である。還元剤供給装置20は、液体還元剤として尿素水溶液が用いられるものであり、尿素水溶液が排気通路11中で分解されることにより還元成分としてのアンモニアが生成されるようになっている。また、還元触媒13の上流側には、内燃機関1から排出される排気中のNOX濃度Nuを検出するためのNOXセンサ15が設けられている。
【0020】
2.還元剤供給装置
(1)基本的構成
図1において、還元剤供給装置20は、液体還元剤が収容される貯蔵タンク21と、液体還元剤を圧送するためのポンプユニット22と、液体還元剤を排気通路11内に噴射するための電磁噴射弁25とを備えている。ポンプユニット22は、ポンプ23及び流路切換弁24を備えている。電磁噴射弁25、ポンプ23、及び、流路切換弁24は、電子制御装置(Control Unit)40によって駆動制御が行われるものとなっている。
【0021】
ポンプ23と貯蔵タンク21とは第1の供給通路31によって接続され、ポンプ23と電磁噴射弁25とは第2の供給通路33によって接続されている。このうち、第2の供給通路33には、第2の供給通路33内の圧力、すなわち、電磁噴射弁25に供給される液体還元剤の圧力を検出(以下、単に「供給圧力Pu」と称する。)するための圧力センサ27が設けられている。ポンプ23と、第1の供給通路31及び第2の供給通路33とは、流路切換弁24を介して接続されている。第1の供給通路31の貯蔵タンク21側の端部は、液体還元剤の吸い上げを可能にするために、貯蔵タンク21の底面近傍に位置している。
【0022】
流路切換弁24は、ポンプ23によって圧送される液体還元剤が流れる方向を、貯蔵タンク21側から電磁噴射弁25側に流れる方向(以下「正方向」という。)と、電磁噴射弁25側から貯蔵タンク21側に流れる方向(以下「逆方向」という。)とに切換える機能を有している。すなわち、液体還元剤の噴射制御を行う際には、液体還元剤を電磁噴射弁25側に供給するために、流路切換弁24への通電は行われない。このとき、液体還元剤は正方向に流れる。一方、内燃機関1の停止時において、還元剤供給装置20内の液体還元剤を貯蔵タンク21に回収する場合には、流路切換弁24に対して通電される。このとき、液体還元剤は逆方向に流れる。
【0023】
なお、液体還元剤を貯蔵タンク21に回収可能とする構成は、流路切換弁24を設ける例に限られない。例えば、逆回転可能なポンプ23を用いることによって液体還元剤を回収可能に構成することもできる。
【0024】
また、第2の供給通路33の途中には、他端が貯蔵タンク21に接続されたリターン通路35が分岐して設けられている。リターン通路35の貯蔵タンク21側の端部は、液体還元剤の逆流を防ぐために、貯蔵タンク21内の気相部分に接続されている。リターン通路35が分岐する位置は、第2の供給通路33の途中ではなく、ポンプ23の出口側23bとなっていてもよい。
【0025】
リターン通路35の途中には、流路面積が小さくされた絞り部38が設けられ、第2の供給通路33内の圧力を保持できるようになっている。また、絞り部38よりも貯蔵タンク21側のリターン通路35には、液体還元剤が貯蔵タンク21側から第2の供給通路33側に流れないようにするための一方向弁37が設けられている。一方向弁37は省略されていても構わない。
【0026】
なお、図1に示す還元剤供給装置20においてはポンプユニット22内に圧力センサ27が設けられているが、第2の供給通路33内の圧力を検出できる位置であれば、どの位置に設けられていても構わない。
【0027】
ポンプ23は、ECU40による通電制御によって流量(出力)が制御されて、液体還元剤を圧送する。図1の還元剤供給装置20において、ポンプ23は電磁式ポンプが用いられており、駆動デューティ比が大きいほどポンプ23の出力が大きくなるものとなっている。ECU40は、圧力センサ27によって検出される圧力Pu_detが目標圧力Pu_tgtで維持されるようにポンプ23の出力をフィードバック制御する。つまり、圧力センサ27の故障等によってセンサ値の信頼性が失われた場合には、基本的には、電磁噴射弁25への供給圧力Puを制御することが困難となる。また、このポンプ23が、液体還元剤を貯蔵タンク21に回収するための手段としての機能も有する。
【0028】
電磁噴射弁25は、内燃機関1の運転状態において、ECU40による通電制御によって開閉制御が行われ、所定量の液体還元剤を排気通路11内に噴射する。電磁噴射弁25は、非通電状態で閉弁し、通電状態で開弁する、電磁式のオンオフ弁が用いられている。ECU40は、所定の演算式に基づいて目標噴射量Qu_tgtを求めるとともに、圧力センサ27のセンサ値が正常である場合においては、電磁噴射弁25への供給圧力Puが目標圧力Pu_tgtとなっていることを前提として、あらかじめ定められた噴射サイクルごとに、目標噴射量Qu_tgtに応じた駆動デューティ比を決定して、電磁噴射弁25の通電制御を行う。電磁噴射弁25の駆動デューティ比とは、一噴射サイクル中の通電時間の割合を意味する。
【0029】
一方、電磁噴射弁25は、内燃機関1の停止時において、液体還元剤を回収する際には、電磁噴射弁25を開弁した状態で保持される。これにより、電磁噴射弁25の噴孔を介して空気(排ガス)が第2の供給通路33に導入され、液体還元剤が貯蔵タンク21内に回収されやすくなる。
【0030】
3.電子制御装置(ECU)
(1)電子制御装置の構成
図2は、ECU40のうち、圧力センサ27のセンサ値が異常となった場合における液体還元剤の噴射制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
このECU40は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、ポンプ制御手段41と、電磁噴射弁制御手段43と、目標噴射量演算手段45と、センサ異常検出手段47と、圧力推定制御手段49とにより構成されている。具体的に、これらの各手段はマイクロコンピュータによるプラグラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0031】
この他、ECU40には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の図示しない記憶素子やタイマカウンタ、さらにポンプ23又は電磁噴射弁25への通電制御を行うための駆動回路等が備えられている。また、ECU40には、圧力センサ27やNOXセンサ15のセンサ信号が入力されるようになっている。
【0032】
このうち、ポンプ制御手段41は、基本的に、内燃機関1の運転中において、圧力センサ27のセンサ値が正常である場合に、圧力センサ27による検出圧力Pu_detが所定の目標圧力Pu_tgtとなるように、ポンプ23の出力をフィードバック制御する。
【0033】
目標噴射量演算手段45は、内燃機関1の運転中において、還元触媒13におけるアンモニアの吸着可能量や、排気中のNOX濃度Nuなどに基づいて、液体還元剤の目標噴射量Qu_tgtを算出する。本実施の形態の還元剤供給装置20の場合、排気中のNOX濃度Nu及び排気流量に基づいて算出されるアンモニア量(正の値)と、そのときの還元触媒13のアンモニアの最大吸着量に対する実際の吸着量の割合を目標吸着割合にするために必要なアンモニア量(正又は負の値)とを加算したアンモニア量を生成可能な液体還元剤の量が算出されるようになっている。
【0034】
電磁噴射弁制御手段47は、基本的に、内燃機関1の運転中において、液体還元剤の目標噴射量Qu_tgtに応じて電磁噴射弁25の通電時間を制御する。具体的には、目標噴射量に応じて電磁噴射弁25の駆動デューティ比を求めて、電磁噴射弁25の通電制御を行う。
【0035】
センサ異常検出手段47は、圧力センサ27のセンサ値の異常を検出する。例えば、圧力センサ27の故障を示す信号を検出したり、圧力センサ27のセンサ値が継続的に過度に高いあるいは低い状態となっていたりする場合などに、圧力センサ27のセンサ値の異常を検出するように構成することができる。ただし、センサ異常検出手段47による具体的な検出方法は特に限定されるものではない。
【0036】
センサ異常検出手段47によって圧力センサ27のセンサ値の異常が検出されると、圧力推定制御手段49による電磁噴射弁25への供給圧力Puの推定を行いつつ、ポンプ制御手段41及び電磁噴射弁43は、推定される供給圧力(以下、この圧力を「推定供給圧力Pu_est」と称する。)に応じた制御に切り換えられる。
【0037】
圧力推定制御手段49は、圧力センサ27のセンサ値の異常が検出されると、ポンプ制御手段41に対してポンプ23の出力の固定を指示する。このときのポンプ23の出力は、直前の駆動デューティ比としてもよいし、あらかじめ定められた規定値としてもよい。
また、圧力推定制御手段49は、電磁噴射弁制御手段43に対して電磁噴射弁25の開弁を指示し、電磁噴射弁25を一回開弁させる。
【0038】
また、圧力推定制御手段49は、バッテリ等の電源から電磁噴射弁25へ供給される電流値(以下、この電流値を「供給電流値Ib」と称する。)のモニタリングが可能となっている。さらに、圧力推定制御手段49は、実際に電磁噴射弁25に流れる電流値(以下、この電流値を「通電電流値Ic」と称する。)をモニタリングし、その波形から、電磁噴射弁25の弁体が磁極に当接する最大リフト位置に到達したことを検出したときに、電磁噴射弁25の通電停止を指示する。
【0039】
図3は、電磁噴射弁25を開弁させたときの電流波形を示している。電磁噴射弁25への通電を開始した後、弁体が移動し始めるP1の時点で通電電流値Icが一旦小さく低下し、さらに弁体が磁極に当接したP2の時点で通電電流値Icが大きく低下している。したがって、圧力推定制御手段49は、電流波形をモニタリングし、通電電流値Icが大きく低下したときに電磁噴射弁25の通電停止を指示するようになっている。点線で示す電流波形が、通電電流値Icが大きく低下したときに通電を停止した場合の波形を示している。
【0040】
そして、圧力推定制御手段49は、電磁噴射弁25の通電を開始したときから通電を停止したときまでの時間と、バッテリ等から電磁噴射弁25に供給される供給電流値Ibとに基づいて、推定供給圧力Pu_estを求める。この推定供給圧力Pu_estは、例えば、通電開始から通電停止までの時間ΔT_openと供給電流値Ibと供給圧力Puの関係を示すマップをあらかじめ格納しておき、このマップを参照することによって求めることができる。
【0041】
図4にマップの一例を示す。通電時間ΔT_openが同じであれば、供給電流値Ibが大きいほど供給圧力Puはより高いと推定され、また、供給電流値Ibが同じであれば、通電時間ΔT_openが長いほど供給圧力Puはより高いと推定される。あらかじめシミュレーション等によってこのようなマップを作成しておき、検出された通電開始から通電停止までの時間ΔT_openと供給電流値Ibとに基づいて、このマップを用いて現在の推定供給圧力Pu_estを求めることができる。
【0042】
圧力推定制御手段49によって推定供給圧力Pu_estが求められると、電磁噴射弁制御手段43は、目標噴射量演算手段45で求められた目標噴射量Qu_tgtと推定供給圧力Pu_estとに基づいて電磁噴射弁25の開弁時間を求め、電磁噴射弁25の通電制御を実行する。これにより、圧力センサ27のセンサ値に異常が生じた場合であっても、適切な量の液体還元剤を噴射することが可能となる。
【0043】
以降、ポンプ制御手段41は、推定供給圧力Pu_estの増減に応じて、ポンプ23の駆動デューティ比をフィードバック制御する。ポンプ23の駆動デューティ比は、推定供給圧力Pu_estに基づいてマップを参照して求めることができる。
【0044】
(2)フローチャート
次に、ECU40によって実行される本実施の形態の還元剤供給装置20の制御方法の具体例について、図5図7のフローチャート図に基づいて説明する。以下のフローチャートに示される還元剤供給装置の制御方法は、内燃機関1の運転状態において常時実行されるものとなっている。
【0045】
まず、図5のステップS11において、ECU40は圧力センサ27のセンサ値の異常があるか否かを判別する。センサ値が正常であれば(No判定)、図6に示す液体還元剤の噴射制御を実行する。この場合は、圧力センサ27のセンサ値に基づいて電磁噴射弁25への供給圧力Puが目標圧力Pu_tgtとなるようにポンプ23のフィードバック制御がされているため、供給圧力Pu=目標圧力Pu_tgtとなっていることを前提とした液体還元剤の噴射制御が実行される。すなわち、ECU40は、ステップS31において、排気中のNOX流量や、還元触媒13中のアンモニアの吸着可能量等に基づいて液体還元剤の目標噴射量Qu_tgtを求めた後、ステップS32において、目標噴射量Qu_tgtと目標圧力Pu_tgtとに基づき、基本噴射マップを参照して、電磁噴射弁25の駆動デューティ比を求め、ステップS33において、電磁噴射弁25への通電制御を実行した後にスタートに戻る。
【0046】
一方、図5のステップS11において、圧力センサ27の故障や、継続的に異常なセンサ値を示している等、センサ値が異常である場合(Yes判定)には、ステップS12に進み、ECU40はポンプ23の出力を固定する。具体的には、ポンプ23の駆動デューティ比を、直前の値、又は、あらかじめ設定した値に固定する。
【0047】
次いで、ECU40は、ステップS13に進み、バッテリ等の電源から電磁噴射弁25に供給されている供給電流値Ibを検出した後、ステップS14に進み、電磁噴射弁25に通電を開始する。次いで、ECU40は、電磁噴射弁25への通電電流値Icをモニタリングし、ステップS15において、通電電流値Icの波形に基づいて、弁体が最大リフト位置に到達したことを検出する。このとき、電磁噴射弁25への通電を開始してから、弁体が最大リフト位置に到達するまでの時間ΔT_openを、タイマなどを用いて計測する。
【0048】
その後、弁体が最大リフト位置に到達したことが検出された後、速やかに、電磁噴射弁25への通電を停止することが好ましい。このように電磁噴射弁25への通電を停止することにより、推定供給圧力Pu_estを求めるために、液体還元剤が浪費されることを抑えることができる。
【0049】
次いで、ECU40は、ステップS16に進み、電磁噴射弁25への通電開始から弁体が最大リフト位置に到達するまでの時間ΔT_openと、電磁噴射弁25への供給電流値Ibとに基づき、マップを参照して、推定供給圧力Pu_estを求める。現在の推定供給圧力Pu_estが求められると、ECU40は、図7に示す推定供給圧力Pu_estを用いた液体還元剤の噴射制御に進む。この場合、電磁噴射弁25への供給圧力Puは必ずしも目標圧力Pu_tgtとなっているわけではないので、ECU40は、推定供給圧力Pu_estを用いた液体還元剤の噴射制御を実行する。
【0050】
すなわち、ECU40は、ステップS21で、排気中のNOX流量や還元触媒13へのアンモニアの吸着可能量等に基づいて液体還元剤の目標噴射量Qu_tgtを求めた後、ステップS22において、推定供給圧力Pu_estと目標噴射量Qu_tgtとに基づき、推定圧力噴射マップを参照して、電磁噴射弁25の駆動デューティ比を求める。あるいは、推定供給圧力Pu_estと目標圧力Pu_tgtとの比や差分に応じて、基本噴射量マップにより得られる駆動デューティ比に対する補正係数を求めて、駆動デューティ比の補正をするようにしてもよい。駆動デューティ比を求めた後は、ステップS23において、ECU40は、電磁噴射弁25への通電制御を実行した後、スタートに戻る。
【0051】
4.効果
以上説明した本発明の還元剤供給装置20によれば、推定供給圧力Pu_estを求める圧力推定制御手段49と、推定供給圧力Pu_estに基づいて電磁噴射弁25を制御する電磁噴射弁制御手段43とを備えることとしているために、圧力センサ27が利用できない場合であっても、液体還元剤の噴射量を許容範囲に制御することができるようになる。したがって、圧力センサ27が利用可能な状態に無い場合であってもNOX浄化制御を継続することができる。
【0052】
また、本実施の形態の還元剤供給装置20において、圧力推定制御手段49が、電磁噴射弁25への供給電流値Ibと、通電開始から弁体が最大リフト位置に到達するまでの時間ΔT_openとに基づいて推定供給圧力Pu_estを求めることとしているために、追加の部品等を用いることなく、供給圧力Puを推定することが可能になる。
【0053】
また、本実施の形態の還元剤供給装置20において、圧力センサ27によって検出される供給圧力Pu_detが目標圧力Pu_tgtに維持されるようにポンプ23の出力を制御するポンプ制御手段41を備える一方、センサ異常検出手段47によって圧力センサ27のセンサ値の異常が検出された時に、推定供給圧力Pu_estを求めることとしている。したがって、圧力センサ27のセンサ値を利用可能な状態においては液体還元剤の噴射量の精度を高く維持することができる一方、圧力センサ27のセンサ値の異常時においても、液体還元剤の噴射制御を適切に継続することができる。
【0054】
また、本実施の形態の還元剤供給装置20において、電磁噴射弁制御手段43が、推定供給圧力Pu_estを求める際に、弁体が最大リフト位置に到達したときに速やかに通電を停止することとしている。したがって、最小限の噴射量での供給圧力Puの推定が可能となって、液体還元剤の浪費や漏れを防ぐことができる。
【0055】
また、本実施の形態の還元剤供給装置20において、ポンプ制御手段41は、圧力センサ27のセンサ値の異常検出時に、ポンプ23の出力をその時点の出力、又は、あらかじめ定めた規定値に固定することとしている。したがって、その後に推定された推定供給圧力Pu_estとポンプ23の出力との関係を把握しやすくなって、液体還元剤の噴射制御を容易にすることができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる還元剤供給装置20について説明する。
本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の全体的構成は第1の実施の形態の還元剤供給装置20と同様のものとなっており、圧力センサ27のセンサ値の異常時における制御が異なるものとなっている。以下、ECU40の構成及び制御方法について、第1の実施の形態の還元剤供給装置20の場合と異なる点を中心に説明する。
【0057】
1.電子制御装置(ECU)
図8は、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20に備えられた電子制御装置40のうち、圧力センサ27のセンサ値が異常となった場合における液体還元剤の噴射制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
本実施の形態のECU40においても、第1の実施の形態のECU40の場合と同様に、ポンプ制御手段41、電磁噴射弁制御手段43、目標噴射量演算手段45、センサ異常検出手段47、圧力推定制御手段49が備えられている。さらに、本実施の形態にかかるECU40は、浄化率推定手段51及び推定圧力補正手段53を備えている。すなわち、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20では、第1の実施の形態の還元剤供給装置20における制御方法を基本として、求められた推定供給圧力Pu_estの補正及び推定供給圧力Pu_estに基づく噴射制御の適否の判定を実行可能になっている。
【0058】
浄化率推定手段51は、還元触媒13中でのNOX浄化率ηを推定するものであり、典型的には、還元触媒13の上流側のNOX濃度Nuと下流側のNOX濃度Ndに基づいてNOX浄化率ηを算出する。それぞれの位置でのNOX濃度は、NOXセンサによって直接検出することもできるし、あるいは、内燃機関1の運転状態等に基づいて演算によって推定することもできる。NOX濃度の代わりに、NOXの質量流量等の値を用いてNOX浄化率ηを求めることもできる。
【0059】
このとき、求められたNOX浄化率ηが著しく低い場合には、供給圧力Puを適切に推定できておらず、液体還元剤の噴射量が適切でない状態にあるおそれがあるために、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20のECU40の浄化率推定手段51は、還元剤供給装置20の作動を停止するよう指令を出すようになっている。例えば、NOX浄化率ηの下限値(図9を参照。)を設けておき、求められたNOX浄化率ηが下限閾値を下回る場合には、還元剤供給装置20の作動を停止するように構成することができる。
【0060】
推定圧力補正手段53は、NOX浄化率ηに応じて、圧力推定制御手段49で求められた推定供給圧力Pu_estを補正する。例えば、求められたNOX浄化率ηを複数段階に切り分け、それぞれの段階に応じた補正係数αを設定する。このとき、図9に示すように、NOX浄化率ηが低いほど補正係数αが1未満の小さい値となるように設定する。これにより、推定供給圧力Pu_estが小さくなるように補正が行われるため、同量の液体還元剤を噴射するための駆動デューティ比が大きくされる。その結果として、液体還元剤の噴射量が増加するため、NOX浄化率ηが高められる。
【0061】
2.フローチャート
次に、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の制御方法の具体例について、図10及び図11のフローチャート図に基づいて説明する。第1の実施の形態の場合と同様、以下のフローチャートに示される還元剤供給装置20の制御方法は、内燃機関1の運転状態において常時実行されるものとなっている。
【0062】
まず、図10に示すフローチャートにおいて、図5のステップS11〜ステップS16と同様の手順で、ステップS41〜ステップS46の各工程を実行する。本実施の形態においては、ステップS46で推定供給圧力Pu_estを求めた後、ステップS47において、現在設定されている補正係数αを用いて推定供給圧力Pu_estを補正する。すなわち、前回以前のルーチンにおいて、後述するステップS56で設定された補正係数αが存在する場合に、このステップS47で推定供給圧力Pu_estの補正が実行される。
【0063】
推定供給圧力Pu_estの補正がされた後、図11のステップS51に進み、図7のステップS31〜ステップS33と同様の手順により、ステップS51〜ステップS53を実行する。さらに、本実施の形態においては、液体還元剤の噴射を実行した後、ステップS54に進み、ECU40は還元触媒13の上流側及び下流側のNOX濃度等に基づき、NOX浄化率ηを求めた後、ステップS55に進み、NOX浄化率ηに基づいて電磁噴射弁25から噴射した液体還元剤の噴射量が適切であるか否かを判定する。噴射量が適切でないと判定された場合(No判定)には、供給圧力Puの推定が適切に行われていないことから、ステップS57に進み、これ以上の噴射制御は継続せずに還元剤供給装置20の作動を停止する。
【0064】
一方で、ステップS55において、噴射量が適切であると判断された場合(Yes判定)には、ECU40は、ステップS56に進み、図9に示すマップ等に基づいて、NOX浄化率ηに応じた補正係数αを設定し、次回の供給圧力Puの推定時に用いられるようにしてスタートに戻る。すなわち、NOX浄化率ηが低い場合には、推定供給圧力Pu_estが実際の供給圧力Puよりも低く液体還元剤の噴射量が目標噴射量Qu_tgtに対して不足していると推定されることから、求められる推定供給圧力Pu_estが小さくなるように補正係数αが設定される。
【0065】
3.効果
以上説明したように、本実施の形態にかかる還元剤供給装置によれば、第1の実施の形態にかかる還元剤供給装置20の場合と同様の効果が得られることと併せて、さらに、NOX浄化率ηに基づいて求められる補正係数αによって推定供給圧力Pu_estの補正が行われるため、電磁噴射弁の制御量の計算に用いられる、推定供給圧力Pu_estの精度を高めることができ、適切な量の液体還元剤を噴射することができる。
【0066】
また、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20においては、NOX浄化率ηが著しく低い場合に還元剤供給装置20を速やかに停止させることとしている。すなわち、液体還元剤の不良や、電磁噴射弁25やポンプ23等の故障等に起因して、推定供給圧力Pu_estに基づく液体還元剤の噴射制御が適切でないと推定される場合に、還元剤供給装置20の作動を停止させることができる。
【0067】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる還元剤供給装置20について説明する。
本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の全体的構成は、第1及び第2の実施の形態の還元剤供給装置20と同様のものとなっており、圧力センサ27のセンサ値の異常時における制御において、供給圧力の推定が正しく行えているか否かを診断する工程を含んでいる点で、第1及び第2の実施の形態の制御と異なるものとなっている。以下、ECU40の構成及び制御方法について、第1及び第2の実施の形態の還元剤供給装置20の場合と異なる点を中心に説明する。
【0068】
図12は、本実施の形態にかかるECU40のうち、推定供給圧力Pu_tgtの推定の診断を行う部分に関連する部分のみを機能的に表したブロック図である。これらの各機能部は、いずれもプログラムの実行により実現されるものとなっている。
圧力推定診断手段55は、図2に示す第1の実施の形態のECU40や、図8に示す第2の実施の形態のECU40の圧力推定制御手段49及びポンプ制御手段41で求められる推定供給圧力Pu_tgt及びポンプ23の出力(駆動デューティ比)を受け取り、これらに基づいて推定供給圧力Pu_estの推定が正しいか否かを診断する。
【0069】
具体的には、ポンプ23の出力と供給圧力Puとの関係は、あらかじめ求められるものであるため、これらをマップ化しておき、ECU40に格納しておく。そして、求められた推定供給圧力Pu_tgtとポンプ23の出力との関係が、マップ化された関係から大きく離れていないかを判定することによって推定供給圧力Pu_tgtの推定の適否を判定することができる。
【0070】
推定供給圧力Pu_tgtの推定が正しく行われていないと判断される場合には、ポンプ23からの液体還元剤の漏れや、ポンプ23自体の故障のおそれもあることから、例えば、還元剤供給装置20の作動を停止するなどの処理を行う。
【0071】
本実施の形態にかかる還元剤供給装置20によれば、圧力センサ27のセンサ値に異常が発生し、推定供給圧力Pu_estの演算を開始したものの当該演算が適切でない場合には、ポンプ23等の他の異常が原因であることを把握することができる。したがって、還元剤供給装置20の作動を停止することとすれば、液体還元剤の漏れや液体還元剤の噴射制御の誤動作を防ぐことができる。
【0072】
[他の実施の形態]
【0073】
なお、これまでに説明した実施の形態は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
特に、言うまでもなく、第1〜第3の実施の形態の還元剤供給装置20の各構成を互いに組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1:内燃機関、10:排気浄化装置、11:排気通路、13:還元触媒、15:NOXセンサ、20:還元剤供給装置、21:貯蔵タンク、22:ポンプユニット、23:ポンプ、24:流路切換弁、25:電磁噴射弁、27:圧力センサ、31:第1の供給通路、33:第2の供給通路、35:リターン通路、37:一方向弁、38:絞り部、40:ECU(電子制御装置)、41:ポンプ制御手段、43:電磁噴射弁制御手段、45:目標噴射量演算手段、47:センサ異常検出手段、49:圧力推定制御手段、51:浄化率推定手段、53:推定圧力補正手段、55:圧力推定診断手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12