【実施例】
【0049】
実施例1:I−4604株によるスクロースからのツラノースの産生ならびにその同じ属および種の株との比較
スクロースからのツラノースの発酵を、本発明において同定されたI−4604株で、またその同じ属および種の他の株、具体的には、株:
セラチア・プリムシカ(Serratia plymuthica)ATCC 15928
セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)GRIMONT 4024、
セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)DSM 4569
で試験した。
【0050】
1− 結果
1.1− I−4604株で行った発酵
【0051】
【表1】
【0052】
2つのてん菜糖蜜ベースの発酵に基づく平均重量収率は37.9±0.2%である。その生産力は1.4±0.05g/L/時である。
【0053】
最も良好な3つのスクロースベースの発酵に基づいて得られた性能レベル(表1中の肉太体)は、
− 重量収率:48.2±1.5%
− ツラノースのタイター:99.3±3.5g/L(200g/Lのスクロースのベースに対して)
− 生産力:2.55±0.1g/L/時
である。
【0054】
39時間の発酵中にすべてのスクロースが消費された。I−4604株はグルコン酸を産生しないことに分析の間に分かった。
【0055】
pHを出発時に調整しない条件(そのpHは、14時間の発酵後に5まで下がる)下でI−4604株を培養する場合、重量収率はより大きいように見えた。
【0056】
1.2− 参照用のATCC 15928株で行った発酵
【0057】
【表2】
【0058】
この株は、I−4604と同じ条件下でツラノースを全く産生しない。他方で、文献中で示唆されているようにそれはイソマルツロースおよび少量のトレハルロースを産生する(Kawaguchi等、Food chemistry,2010,120,No.3)。
【0059】
1.3− 試験されたその他のセラチア・フィカリア(Serratia ficaria)株、GRIMONT 4024およびDSM 4569で行った発酵
これらは、S・プリムシカ(S.plymuthica)に似た成長を示したが、ツラノースもイソマルツロースも産生しなかった。
【0060】
2− 結論
これら株は、同一発酵条件下で3回試験された。得られた結果は次の通りである。
【0061】
【表3】
【0062】
I−4604株を数種類のセラチア(Serratia)株と比較した。すべてスクロース基質上の同一産生条件下で試験された。I−4604株のみがツラノースを産生する。
【0063】
3− 材料および方法
手順
試料の調製は3つのステップ、すなわち蘇生のステップ、前培養のステップ、および継代培養のステップを含んだ。蘇生は、寒天培地上での株の3回の連続する継代培養を含んだ。前培養は、前培養培地中で160rpmおよび30℃で16時間行った。継代培養は、継代培養培地中で160rpmおよび30℃で9時間行った。
【0064】
次に、発酵のステップを、1500mLの出発体積で、DASGIPバイオリアクター中で行った。発酵は、5N水酸化ナトリウムでpHを6に保ちながら1vvm(1分間当たり単位体積当たりの空気の体積)(90L/時)において300rpmで39時間続いた。
【0065】
培地の組成
寒天培地
スクロース:40g/L
Solulys(登録商標)048E:20g/L
ペプトン(Becton Dickinson):10g/L
寒天(Biokar Diagnostics):20g/L
浸透水:1000mL(適量)
NaOHで7に中和したpH
120℃で20分間の滅菌
【0066】
前培養培地
スクロース:100g/L
0.22μm上での濾過による滅菌
酵母抽出物:9.7g/L
7.0に中和したpH(NaOHによる)/120℃で20分間の滅菌
1滴の消泡剤
接種物:第三継代培養から出発する1つの10μLループ
【0067】
継代培養培地
同上の前培養培地
接種物:前培養物の10%(15mL)
【0068】
産生培地
1− スクロースベース
スクロース:200g/L
0.22μm上での濾過による滅菌
酵母抽出物:4.2g/L
7.0に中和したpH(NaOHによる)/120℃で20分間の滅菌
10滴の消泡剤
2− てん菜糖蜜ベース(84.1%のDP2で)
てん菜糖蜜:357g
0.22μm上での濾過による滅菌
酵母抽出物:4.2g/L
7.0に中和したpH(NaOHによる)/120℃で20分間の滅菌
10滴の消泡剤
接種物:継代培養物の6%(90mL)
【0069】
実施例2− I−4604株についてのスクロースベースのツラノース産生条件の最適化
産生のステップの間に数種類の撹拌、通気、およびpH条件を別々に試験した。前培養培地、継代培養培地、および産生培地は、実施例1の場合と同一であった。最適化は2L発酵装置中で行った。
【0070】
撹拌の影響
撹拌を300、500、および700rpmで試験した。その他のパラメータは30℃、1vvm、および6に調整したpHであった。結果は次の通りであった。
【0071】
【表4】
【0072】
通気の影響
通気を0.5、1、および1.5vvmで試験した。その他のパラメータは30℃、300rpm、および6に調整したpHであった。結果は次の通りであった。
【0073】
【表5】
【0074】
pHの影響
pHを5.5、6、および6.5で試験した。その他のパラメータは30℃、300rpm、および1vvmであった。結果は次の通りであった。
【0075】
【表6】
【0076】
最も適切な条件は、300rpmの撹拌、1vvmの通気、および6.0に調整されたpHと定められた。
【0077】
さらに発酵のステップの間に使用されるスクロースの量と、また使用される培地も最適化の対象であった。
【0078】
出発スクロース濃度の影響
2種類の出発濃度、すなわち100および200g/Lのスクロースを試験した。
【0079】
前培養は、120℃で別々に20分間滅菌した30g/Lのスクロースおよび30g/LのSolulys(登録商標)048Eと、1滴の消泡剤とを含むpH7の培地中で30℃、160rpmで23時間30分行った。産生は、120℃で別々に20分間滅菌した100または200g/Lのスクロースおよび30g/LのSolulys(登録商標)048Eと、10滴の消泡剤とを含むpH7の培地中で30℃、300rpm、1vvmで25時間行った。pHは、発酵の6時間において5.8であることに注意し、9時間からは5.5に調整する。
【0080】
【表7】
【0081】
200g/Lの出発スクロース濃度がより良好な結果をもたらす。
【0082】
培地の影響
3種類の培地グループを試験した。
【0083】
【表8】
【0084】
得られた結果は次の通りである。
【0085】
【表9】
【0086】
培地2は、それが時間の節約を可能にするので最も適切であるように思われる。
【0087】
実施例3:I−4604株を使用したツラノースの産生
I−4604株を使用して20L発酵装置中でツラノースの産生を行った。
【0088】
スクロースから、および糖蜜から出発する発酵を行った。プロトコルは次の通りであった。
【0089】
前培養
スクロース:100g/L
Solulys(登録商標)048E:15g/L
Erol 18:1滴
【0090】
混合物全体を120℃で20分間滅菌し、pH7に調整する。
【0091】
前培養は、3個の500mL三角フラスコ中で30℃および120rpmにおいて24時間行う。
【0092】
継代培養
スクロース:100g/L
Solulys(登録商標)048E:30g/L
Erol 18:0.5mL/L
【0093】
混合物全体を120℃で20分間滅菌し、pH7に調整する。
【0094】
継代培養は、容積15Lの発酵装置中で30℃、300rpm、および1vvmにおいて19時間行う。
【0095】
産生
スクロース:100g/L(120℃で10分間滅菌した)
Erol 18:0.5mL/L(同上)
Solulys(登録商標)048E:30g/L(120℃で20分間滅菌した)
【0096】
pHはpH6に調整される。培養は、容積15Lの発酵装置中で30℃、300rpm、および1vvmで行う。
【0097】
結果
【0098】
【表10】
【0099】
4回の試験に対する平均の結果は次の通りである。
− 収率(ツラノース/スクロース):53%
− 継続時間:45〜50時間
− 最終の糖組成は
・ツラノース:106g/L(すなわち糖の86%)
・トレハルロース:12g/L
・イソマルツロース:5g/L
【0100】
最初に提案した培地は単純かつ安価であったので、続いて温度、pH、酸素添加レベル、およびスクロース準備の方法の影響を検討した。
【0101】
下記の表は、実施したすべての試験の結果の要点を繰り返す。
【0102】
【表11】
【0103】
どの修正にも顕著な好ましい効果がなかったが、下記の結論を引き出すことができる。
− pHは6.0に保たれるべきである。
− 温度は30℃未満に保たれるべきである。さらにその最適条件は27℃に近いように思われる。
− 過度に高い酸素添加レベル(400または500rpmの撹拌)は、スクロースの消費の速度を落とし、2−ケトグルコン酸の強い産生を引き起こす。
− 第二の前培養のステップを加えることは、いかなる利益ももたらさない。
− 徐々にスクロースを導入すること(FB=フェッドバッチ)は、いかなる利益ももたらさない。
【0104】
実施例4:I−4604株発酵
液からのツラノースの精製
1− 発酵
液精製のステップ
12000gでの遠心分離によってバイオマスの分離を行った。その上清はまだ濁って
いた。この濁りを取り除くために粉末状黒色炭素(1%のSX+)による処理およびCofram EKS平面濾過器上での濾過を行った。得られた濾液はより透明であったが、脱色されなかった。
【0105】
脱塩を、強陽イオン(C150)および弱陰イオン(4228)上で行った。脱塩前の生成物の負荷量は170meq/Lであった。精製された生成物の抵抗率は、それが数種類の有機酸を含有するので5kΩ未満であった。有機酸の組成を下記の表に示す。
【0106】
結晶化の前に濃厚度(richness)を向上させるために1kDに対する限外濾過を行った。このステップは、天然の色および1kDを超える分子量を有する生成物を維持することを可能にした。
【0107】
2− 結晶化
100gの70bxの生成物および200mLの96%エタノールの混合物を沸騰させた後に周囲温度で結晶化を行った。混合物の低粘度を前提として結晶および母液の分離をブフナー漏斗上で行った。使用した2Lの発酵装置に対して、これらの条件下で70gの結晶(ツラノースの濃厚度98〜99%)、すなわち30%の重量収率が回収された。
【0108】
結晶は、下記の表によって例示される良好な濃厚の度合いを示した。
【0109】
【表12】
【0110】
これらの様々な精製のステップにより、良好な濃厚の度合いを有するツラノースを得ることが可能になった。