特許第6164782号(P6164782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6164782細胞外マトリックス材料から生理活性ゲルを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164782
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】細胞外マトリックス材料から生理活性ゲルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/36 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   A61L27/36 130
【請求項の数】17
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-557083(P2015-557083)
(86)(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公表番号】特表2016-510240(P2016-510240A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】US2014015214
(87)【国際公開番号】WO2014124203
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/762,437
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514129774
【氏名又は名称】アセル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ケントナー,キンバリー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート,キャサリン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャニス,アブラム,ディー.
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/060377(WO,A1)
【文献】 特表2002−537075(JP,A)
【文献】 特表2010−505857(JP,A)
【文献】 特表2013−500065(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/109407(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリックス材料から生理活性ゲルを製造する方法であって、
a)哺乳動物組織に由来し、天然型の前記組織で見出される量で配置されている、細胞外マトリックス材料の生理活性成分を含む、細胞外マトリックス材料(ECM)を用意することであって、前記ECMが、小腸粘膜下組織(SIS)、膀胱粘膜下組織(UBS)、膀胱マトリックス(UBM)及び肝臓基底膜(LBM)からなる群から選択され、
b)a)の前記細胞外マトリックス材料を微粒子化することと、
c)b)の前記微粒子化された細胞外マトリックス材料を、アルカリ性溶液中で可溶化することであって、前記可溶化が、前記微粒子化された細胞外マトリックス材料ゲル状へ転換し、
d)酸により、工程c)で調製されたゲルを中和することと
を含む、方法。
【請求項2】
e)工程d)で調製された、前記中和されたゲルを凍結することと、
f)工程e)で調製された、前記凍結したゲルを凍結乾燥することと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凍結乾燥したゲルを水溶液中で戻すことを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)の後、4℃で最大48時間の滞留時間を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程c)の時間が、30分〜48時間、2時間〜24時間、2日間〜3日間、3日間〜4日間、2日間〜7日間、及び3日間〜7日間からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記微粒子化された細胞外マトリックス材料の粒子範囲サイズが、1μm〜約1000μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞外マトリックス材料が、モル濃度範囲約0.1M〜約1.0MのNaOH中に、微粒子化された細胞外マトリックス材料の濃度約0.5%〜11%w/vで可溶化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲルが、塩酸中で中和される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記塩酸が、0.1M〜1.0Mの濃度を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記生理活性成分が、線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2結合組織増殖因子(CTGF及び血管内皮増殖因子(VEGFからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞外マトリックスが2時間を超えて可溶化される際、前記可溶化された細胞外マトリックス材料中の前記線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2の濃度が、前記細胞外マトリックス材料が1.0MのNaOH中に可溶化される場合、100mMのNaOH中に可溶化される場合よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞外マトリックス材料が2時間を超えて可溶化される際、前記可溶化された細胞外マトリックス材料中の前記血管内皮増殖因子(VEGFの濃度が、前記細胞外マトリックス材料が1.0MのNaOH中に可溶化される場合、100mMのNaOH中に可溶化される場合よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記微粒子化された細胞外マトリックス材料がUBMを含み、前記UBMが、100mMのNaOH中に、微粒子化されたUBMの濃度7%で、4℃で可溶化される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)の前記微粒子化された材料が、200〜700ミクロンの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
微粒子化された細胞外マトリックス材料(ECM)を前記中和されたゲルに加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記膀胱マトリックス(UBM)の可溶化が、数分から数時間の範囲の時間にわたる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記範囲が、30分から12時間、12時間から24時間、24時間から36時間、36時間から48時間、2日間から7日間、及び3日間から7日間からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外マトリックス材料から生理活性ゲルを製造する方法及び患者の組織の復元のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックス材料(ECM: extracellular matrix material)から構成される生物学的足場は、下部尿路、食道、心筋及び筋腱組織を含む様々な組織の修復のために使用されており、これにより、瘢痕組織の形成が最小限、又は全く形成されない、組織特異的で有益な再形成が導かれることが多い。
【0003】
前臨床及び臨床組織工学並びに組織再建への再生医療アプローチのために、ECMを足場として使用することは非常に有望であるが、生理活性を保っている生理活性ゲルをECMから製造するプロセスには、課題が残っている。
【0004】
先行技術に記載されたECMから生理活性ゲルを製造する方法では、酵素の使用が必要であり、かつ過度の精製工程が必要であるため時間がかかる。これにより、ゲルの生理活性が低下することがあり、また上市に対する追加の規制障壁を生じさせることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、煩雑な調製及び精製工程を避けつつ、当初の材料の生理活性を保つゲルを生じる、ECMからの生理活性ゲルの製造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は全体として、積極的に組織修復の助けとなるように、十分な生理活性を保つ、ECMから生理活性ゲルを製造する改善された方法に関する。本発明は、本ゲル発明の上市の承認又は認可のための更なる規制負担を招かない試薬を利用する。よって、本発明は、ECMから生理活性ゲルを製造する方法であって、(a)小腸粘膜下組織(SIS: small intestine submucosa)、膀胱粘膜下組織(UBS: urinary bladder submucosa)、膀胱マトリックス(UBM: urinary bladder matrix)(上皮基底膜を含む)、ブタ真皮(PD: porcine dermis)、及び肝臓基底膜(LBM: liver basement membrane)からなるが、これらに限定されない群の中の1つ又は複数からECMを用意することと、(b)ECMを、約1μm〜約1000μmの範囲の粒子サイズに微粒子化することと、(c)0.1〜1.0Mの範囲の水酸化ナトリウム(NaOH)中で、濃度が約0.5〜11重量/体積(w/v)%の範囲の微粒子化された粉末を、約1時間〜約48時間の範囲の時間、4℃で可溶化することと、(d)工程(c)で調製された可溶化されたECMを、0.1〜1Mの範囲の塩酸(HCl)で、任意選択によりNaOHに対して等モルの塩酸で中和して、ゲルを形成することと、(e)任意選択により、工程(d)で調製された、可溶化され中和されたECMを凍結することと、任意選択により(f)工程(e)で調製された凍結したECMを凍結乾燥することと、任意選択により(f)凍結乾燥したゲルを水又は食塩水で戻すこととを含む、方法を示す。
【発明の効果】
【0007】
上記のように生理活性ゲルを製造する方法により提供される利点は、生理活性に有害であるか、実施するには冗長であるか、又は時間がかかり、かつ規制負担(例えばFDA承認)を増大させる、過度の精製工程が避けられることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による、NaOH中での様々な可溶化条件に従うゲルのFGF−2含有量(pg/mg)を示す図である。%w/vで示されていない全てのゲルは、NaOHに対して7.0%w/vのUBMで行った。図1の全てのゲルは、NaOHに対して7.0%w/vのUBMで行った。
図2】本発明の実施形態による、NaOH中での様々な可溶化条件に従うゲルのVEGF含有量(pg/mg)を示す図である。%w/vで示されていない全てのゲルは、NaOHに対して7.0%w/vのUBMで行った。図1の全てのゲルは、NaOHに対して7.0%w/vのUBMで行った。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ECMから生理活性ゲルを製造する方法を対象とする。すなわち、本発明による生理活性ゲルで処理されていない損傷組織と比較して、修復に必要な時間を減少させること、瘢痕組織の形成を減少させること、並びに損傷組織の損傷前の天然の構造及び機能への復元を改善することにより、積極的に組織修復の助けとなるように、十分な生理活性を保つゲルを製造する方法を対象とする。ゲルの発明及び本明細書に記載の作製方法は、前臨床及び臨床組織工学並びに組織再建への再生医療アプローチのための足場として働く。本発明によるECMゲル中の生理活性は、ゲルが由来した天然のECM中の1つ又は複数の生理活性分子の生理活性の約0〜100%、25〜75%、10〜25%、10%未満、5%未満又は1%未満の範囲にある。以下で詳細に記載されるように、これらの製造方法は、塩基性(pH7を超える)環境で微粒子化されたECMを可溶化することで、ECMからの生理活性ゲルを作製できるという新しい認識を利用しているが、その塩基性環境を酸で中和すると生理活性ゲルが得られる。
【0010】
本発明の方法によると、ECMは、粘膜下組織、真皮、上皮基底膜を含むがこれらに限定されない天然の哺乳動物組織の層、又は腱膜、筋膜、腱、靱帯、平滑筋及び骨格筋並びに治療部位特異的ECMなどの組織に由来し得る。天然の哺乳動物組織源は例えば、ブタ、ウシ、ヒツジ、同種、又は自家であってもよい。例えば、ECMは、米国特許第6,576,265号、米国特許第6,579,538号、米国特許第5,573,784号、米国特許第5,554,389号、米国特許第4,956,178号、及び米国特許第4,902,508号に記載されるSIS(小腸粘膜下組織)、UBS(膀胱粘膜下組織)若しくはUBM(膀胱マトリックス)又は肝臓基底膜(LBM)であってもよく、上記特許文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の一実施形態において、ECMは哺乳動物組織に由来し、天然型の組織のものと同様の量で同様に配置されている細胞外マトリックス材料の生理活性成分を含む。
【0011】
本発明の方法によると、上記組織源のいずれか1つに由来するECMは、微粒子化されている、すなわち、ECM粒子のサイズは、約1μm〜約1000μmの範囲にある。一実施形態において、ECMを塩基性環境下に置く前に、ECMを微粒子化することにより、ECMが均質になる、すなわち、個々の動物からのECMよりも均一な組成物が得られ、これによりドナー間の変動性の影響が減少する。別の実施形態において、ECMを微粒子化することで、体積に対する表面積の比率が増大し、マトリックスの塩基性環境下での可溶化が容易になる。
【0012】
微粒子のECM製品、例えば、微粒子化されたECMは、典型的に、ただし限定せずに、最初はシート状で提供されるECMに対して、摩砕/粉砕又はサイズを小さくする他のプロセスを行うことにより製造される。結果として得られる微粒子は、任意の所望の密度の範囲、例えば約0.1g/cm〜10g/cm、約0.10.1g/cm〜1g/cm又は約1g/cmの範囲、及び粒子サイズの範囲、例えば約1ミクロン〜1000ミクロン、約200〜700ミクロン、約300〜600ミクロン、又は約400ミクロンの範囲にすることができる。
【0013】
塩基性環境は、アルカリ性化合物の溶液により提供される。本発明に従って使用できるアルカリ性化合物は金属水酸化物であり、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、及びCsOHを含むが、これらに限定されない。本発明に従って使用できるアルカリ性化合物は弱塩基も含み、アンモニア(NH)、ピリジン(CN)、ヒドロキシルアミン(HNOH)、メチルアミン(NHCH)及びこれに類するものなどがあるが、これらに限定されない。アルカリ性化合物は通常、0.1モル〜1.0モルの範囲の濃度で使用されるが、0.1モルより低い濃度又は1.0モルより高い濃度も、本発明の実施形態で考慮される。
【0014】
微粒子化されたECMのNaOHに対する濃度(w/v)は、0.1%〜約20%、特に0.5%〜11%の範囲にあり、より具体的には、7%である。
【0015】
微粒子化されたECMの4℃での可溶化工程(すなわち、消化)は、数分〜数時間(例えば、30分〜48時間)又は数日間(例えば、3〜7日間)、30分〜12時間、12〜24時間、24〜36時間、36〜48時間、又は2〜7日間の範囲の時間にわたってもよい。本発明の実施形態において、消化工程に必要な時間は、微粒子化された細胞外マトリックス材料のサイズ及び/又は可溶化に使用される金属水酸化物の濃度によって決定されると考えられる。例えば、NaOHなどのアルカリ性化合物の濃度が低い場合、長時間の培養、すなわち、長時間の可溶化が必要であってもよい。塩基性溶液中での可溶化工程の後、可溶化されたECM(すなわち、ゲル状)を、モル濃度、例えば、可溶化されたECMがpH6.8〜7.4に達するのに十分な容量の等モルの濃度の酸を使用して、中性pHに中和する。ECMゲルの中和の助けとなる酸は、弱酸又は強酸から選択できる。中和工程のための酸の選択性は、中和中に酸が塩基性環境と反応する際に生成される塩に依存する。生じる塩は、生体適合性とすべきである。例えば、本発明の実施形態において、塩酸(HCl)は、塩基NaOHにより形成された塩基性環境を中和するために使用されるが、これは、生じる塩(すなわち、NaCl)が臨床上許容できるからである。
【0016】
変性した生理活性成分のリフォールディングを促進するために、中和の後、任意選択により、ゲルは、様々な滞留時間、1〜48時間、12〜36時間、又は36〜48時間に従うことができる。滞留時間は通常、ゲルを振とう若しくは撹拌して、又は振とう若しくは撹拌せずに、低温室(すなわち、約4℃の温度)で、又は室温で行われる。滞留時間は、ゲルの再構築を促進するために、48時間〜数日間、例えば、3〜7日間を超えてもよい。
【0017】
本発明の方法によると、一旦ゲルが中和されれば、中和されたゲルを粉末(中性pHを有する)に容易に転換するために、任意選択により1つ又は複数の凍結乾燥サイクルの工程を行ってもよい。粉末は、水などの液体、又はゲルの中性pHを維持する緩衝溶液と粉末を混合することにより、生理活性を変えずにゲルに戻すことができる。更に、ECMの生理活性は、凍結乾燥を通じて保存され得る。
【0018】
本発明に従う一実施形態において、凍結乾燥され、可溶化されたECMは、水及び2本の3mLシリンジを使用して、戻される。一方のシリンジは凍結乾燥したゲルを含有し、他方は水を含有し、これらを2本のシリンジの間のコネクタを通して混合する。混合を達成するため、混合物を、前後に数回注入する。2本のシリンジシステムを使用して、NaOH中の様々な濃度のECMの取扱い性(すなわち、注入性、粘着性、粘度)を試験することができ、適用可能性を決定できる。全てのゲルの最終粘稠度は泡状であり、それぞれが、適用される表面に付着しながら、粘稠度も維持するが、これは、無重力条件、例えば、宇宙において望ましいことがある。したがって、ゲルの発明は、宇宙探査中の組織修復に使用できる。
【0019】
一実施形態において、ゲルの粘度又は生理活性を増大するために、可溶化され、かつ中和されたECMゲルに対し、微粒子化されたECMが加えられる。例えば、サイズ範囲が約1ミクロン〜1000ミクロン、約200〜700ミクロン、約300〜600ミクロン、約100〜400ミクロン、約200ミクロン又は約400ミクロンのUBM粉末を、上記方法により調製されたUBMゲルに加えて、ゲルの粘度又は生理活性を向上する、すなわち、ゲルの取扱い性を良好にし、又はゲルがより高濃度の生理活性分子、例えば、FGFなどの成長因子、例えば、FGF−2、CTGF、若しくはVEGFを生成できるようにする。ECM粉末は、ゲルの中和前、中和中、又は中和後に加えることができる。
【0020】
特定の実施形態において、生理活性ゲルを製造するために、4℃で可溶化された、100mMのNaOHに対して7.0%のUBMが使用される。滞留時間は使用しても使用しなくてもよい。粘度及び/又は生理活性を増大するために、UBM粉末をゲルに加えてもよい。
【0021】
例証
下記の例証では、例えば分離された膀胱粘膜下組織、小腸粘膜下組織、真皮のうちの1つ又は複数などの、ただしこれらに限定されない任意の数のECM製品を使用できる。下記の例証では、膀胱から分離され、上皮基底膜を有するECMであるUBMが、代表的なECMとして使用される。しかし、本明細書で開示される発明はUBMに限定されず、任意の分離されたECMに適用可能である。
【0022】
例証において、様々な濃度のNaOH(0.1〜1.0M)中に可溶化された、様々な濃度の微粒子化されたUBM(0.5〜11%w/v)を使用して、ゲルを作製した。UBMを、様々な時間(1〜48時間)、UBM及びNaOHのそれぞれの濃度で、4℃で可溶化した。UBMが可溶化後に再構築できるか試験するために、中和後、様々な滞留時間(1〜48時間)も使用して、ゲルを作製した。
【0023】
上記のように作製したUBMゲルを、生理活性分子含有量について、in vitroで試験した。この研究において、成長因子(例えば、FGF-2、CTGF、VEGF)の含有量を分析した。各ゲル構造の可溶化後のFGF−2及びVEGF含有量のデータを、図1及び図2に示す。より低濃度のゲル(1〜6%)は示さないが、同様の結果であった。図1及び図2に示すように、これらの研究において、FGF−2及びVEGF、特にVEGFレベルが増大した。
【0024】
1つの研究において、様々な範囲のNaOHに対して、7.0%w/vのUBMを使用して、24時間、4℃で可溶化し、滞留時間を設けないことで、ゲル中のFGF−2及びVEGF含有量が著しく影響を受けることが見出された。FGF−2及びVEGF含有量は、標準ELISA法による値とした。
図1
図2