(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源供給システム1の構成例を示す図である。
図1に示す車両用電源供給システム1は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、水素燃料電池自動車等の電動車両に搭載されている。車両用電源供給システム1は、DC−DCコンバータ2と、スイッチ部3とを備える。車両用電源供給システム1は、車両を駆動するモーター61に電力を供給する電源4の電圧をDC−DCコンバータ2によって降圧してバッテリー5等に電力を供給するシステムである。バッテリー5は、電源4の定格電圧より低い定格電圧を有する蓄電装置であり、電装品等の電気負荷9にヒューズ8を介して接続されている。
【0012】
電源4は、直流電源であり、例えば、バッテリー5の定格電圧より高い定格電圧の高圧バッテリーである。電源4の正極はDC−DCコンバータ2の入力端子25に接続されていて、電源4の負極はDC−DCコンバータ2の入力端子26に接続されている。なお、電源4は、高圧バッテリーに限らず、例えば、キャパシタ、水素燃料電池、発電機等の電源や、それら複数種類の電源の組み合わせであってもよい。
図1に示す例では、電源4に対して制御装置6を介してモーター61が接続されている。モーター61は、電動機であって車両用電源供給システム1を搭載する車両の駆動源であり、電源4を電力源として制御装置6によって駆動制御される。モーター61は、複数であってもよく、また、車両に搭載されている図示していない内燃機関等のエンジンと協働して車両を駆動するものであってもよい。
【0013】
DC−DCコンバータ(直流−直流変換器)2は、入力端子25および入力端子26間に入力された電源4の直流電圧を降圧して出力端子27および出力端子28間から出力する。なお、
図1ではDC−DCコンバータ2内に設けられている電圧の検出部、一部の電流の検出部や、制御線等の図示を省略している。DC−DCコンバータ2は、インバータ回路21と、トランスTと、整流回路22と、DC−DCコンバータ制御部24と、コイルLと、コンデンサCoutとを備える。この例では、DC−DCコンバータ2は、トランスTを用いた絶縁型であり、また整流回路22の整流素子をトランジスタで構成する同期整流方式の構成を有する。
【0014】
インバータ回路21は、例えばnチャネルMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)からなる4個のトランジスタQ1〜Q4を備える。トランジスタQ1〜Q4はブリッジ接続されていて、DC−DCコンバータ制御部24によって制御され、入力端子25および入力端子26間から入力された直流電力を交流電力に変換してトランスTの一次コイル201へ出力する。この一次コイル201には変流器CTが直列接続されている。
【0015】
トランスTの二次コイルは、直列接続された二次コイル202と二次コイル203から構成されている。二次コイル202と二次コイル203の接続端はコイルLの一端に接続されている。二次コイル202の他端は整流回路22内の金属電極(ボンディングパッド)221に接続されている。二次コイル203の他端は整流回路22内の金属電極222に接続されている。
【0016】
整流回路22は、DC−DCコンバータ2がバッテリー5に供給する電力を直流に整流する回路であり、例えば絶縁金属基板等の基板上に構成されている。整流回路22は、例えばnチャネルMOSFETからなる2個のトランジスタQ5およびQ6を備える。トランジスタQ5およびQ6は、DC−DCコンバータ制御部24によって1次側のトランジスタQ1〜Q4のオン/オフ動作と同期してオン/オフ制御され、トランスTの2次側から出力された交流電力を直流電力に整流する。トランジスタQ5およびQ6が整流素子の一構成例である。
【0017】
トランジスタQ5およびトランジスタQ6は、モールド成形されていないベアチップであり、例えば整流回路22を構成する基板上に接着されている。トランジスタQ5およびトランジスタQ6を構成するチップ上の金属電極(ボンディングパッド)231〜236と、基板上の金属電極221〜224等とは、溶断部材であるボンディングワイヤー225〜228等によって、ボンディング接続されている。ボンディング接続された状態のトランジスタQ5およびトランジスタQ6は、シリコーンゲル等の封止材料によって気密封止されている。ボンディングワイヤー225〜228あるいはボンディングワイヤー225〜228のうちの一部は、所定の電流が所定の時間通電した場合に溶断するような溶断特性を有している。なお、ボンディングワイヤー225〜228は、一本の細線で構成されていてもよいし、複数本の細線で構成されていてもよい。また、溶断特性は、トランジスタQ5についてはボンディングワイヤー225とボンディングワイヤー226の両方で同一であってもよいし、異なっていてもよい。同様に、トランジスタQ6についてはボンディングワイヤー227とボンディングワイヤー228の溶断特性は、両方で同一であってもよいし、異なっていてもよい。この溶断特性については後述する。本実施形態の整流回路22は、DC−DCコンバータ2に設けられており、DC−DCコンバータ2がバッテリー5に供給する電力を直流に整流する回路であって、整流素子であるトランジスタQ5およびトランジスタQ6と整流回路22の外部との間の少なくとも一部が溶断部材であるボンディングワイヤー225〜228を介して接続されている。ここで整流回路22の外部とは、整流回路22の外部の回路、外部の素子あるいは外部の配線を意味する。
【0018】
トランジスタQ5のドレインに接続されているチップ上の金属電極231は、ボンディングワイヤー225を介して基板上の金属電極221に接続されている。トランジスタQ5のソースに接続されているチップ上の金属電極232は、ボンディングワイヤー226を介して基板上の金属電極223に接続されている。トランジスタQ5のゲートに接続されているチップ上の金属電極233は、図示していないボンディングワイヤーを介して図示していない基板上の金属電極に接続されている。
【0019】
トランジスタQ6のドレインに接続されているチップ上の金属電極234は、ボンディングワイヤー227を介して基板上の金属電極222に接続されている。トランジスタQ6のソースに接続されているチップ上の金属電極235は、ボンディングワイヤー228を介して基板上の金属電極224に接続されている。トランジスタQ6のゲートに接続されているチップ上の金属電極236は、図示していないボンディングワイヤーを介して図示していない基板上の金属電極に接続されている。
【0020】
一方、コイルLの他端はコンデンサCoutの一端と出力端子27に接続されている。コンデンサCoutの他端は、金属電極223および金属電極224に配線パターンP1およびP2を介して接続されるとともに、出力端子28に接続されている。コイルLとコンデンサCoutは平滑回路を構成する。
【0021】
一方、スイッチ部3は、スイッチ31と、ON/OFF回路32と、ダイオード33と、電流検出部34とを備える。スイッチ部3は、DC−DCコンバータ2内の整流回路22とバッテリー5との間に設けられており、バッテリー5からDC−DCコンバータ2へと流れる逆流電流Ioが検出された場合に、逆流電流Ioに応じて、バッテリー5と整流回路22との間に接続されたスイッチ31をオン状態からオフ状態にすることで逆流電流Ioを遮断する機能を有する。スイッチ部3の入力端子35はスイッチ31の一方の端子に接続され、スイッチ31の他方の端子はダイオード33のアノードに接続されるとともに、電流検出部34を通して(あるいは介して)スイッチ部3の出力端子37に接続されている。入力端子35はDC−DCコンバータ2の出力端子27に接続されていて、出力端子37はヒューズ7を介してバッテリー5の正極に接続されている。スイッチ31の入力端子36は、DC−DCコンバータ2の出力端子28、ON/OFF回路32の電源端子(負側電源端子)、スイッチ部3の出力端子38、およびバッテリー5の負極に接続されている。
【0022】
スイッチ31はメーク接点を有するリレーであり、当該リレーが有する図示していないコイルにダイオード33およびON/OFF回路32を介してバッテリー5から直流電流が通電された場合にスイッチ31はオン状態となる。スイッチ31を構成するリレーのコイルが通電していない場合はスイッチ31はオフ状態となる。この構成では、例えばバッテリー5が逆接された場合、ダイオード33が逆方向となるので、スイッチ31はオフ状態となる。バッテリー5が順方向で接続されている場合、スイッチ31は、電流検出部34の検出結果に応じてON/OFF回路32によってオン状態またはオフ状態に制御される。
【0023】
ON/OFF回路32は、電流検出部34の検出結果に応じてスイッチ31をオン状態またはオフ状態に制御する。
【0024】
ダイオード33はアノードを出力端子37に接続し、カソードをON/OFF回路32の電源端子(正側電源端子)に接続する。ダイオード33は、バッテリー5が順方向に接続されている場合、バッテリー5から供給された直流電力を、ON/OFF回路32に入力するとともに、ON/OFF回路32を介してスイッチ31のコイルに入力する。
【0025】
電流検出部34は、変流器、シャント抵抗等の電流検出器を有して構成されていて、出力端子37からスイッチ31方向へ流れる逆流電流Ioの発生を検出して、検出した結果をON/OFF回路32へ出力する。電流検出部34は、所定の(例えば数A程度以上の)逆流電流Ioが発生しているか否かを検出することができる性能を少なくとも有していればよい。ただし、電流検出部34は、例えば、電流の大きさに応じて出力信号を変化させる性能や、バッテリー5から短絡電流(大電流)が発生しているか否かを検出する性能を有していてもよい。
【0026】
ヒューズ7は、大容量の電流ヒューズであり、定格電流は例えば数十〜数百A程度である。ヒューズ7の定格電流は、例えばDC−DCコンバータ2の定格電流に応じて決定することができる。ヒューズ7は、例えばDC−DCコンバータ2の出力端子27および出力端子28間が故障等により短絡状態となってバッテリー5から短絡電流が出力されたとき等に溶断して配線等の部品を保護するために設けられている。
【0027】
他方、ヒューズ8は、小容量の電流ヒューズであり、定格電流は数A〜数十A程度である。ヒューズ8の定格電流は電気負荷9の定格電流等に応じて決定することができる。ヒューズ8は、例えば電気負荷9が故障等により短絡状態となってバッテリー5から短絡電流が発生したとき等に溶断して配線等を保護するために設けられている。なお、ヒューズ8は複数並列接続されたものであってもよく、各ヒューズ8に対して1または複数の電気負荷9が接続されていてもよい。
【0028】
次に、
図2を参照して、スイッチ部3の構成例について説明する。
図2において
図1に示すものと同一の構成には同一の符号を付けている。
【0029】
図2に示す構成例において、スイッチ31は、メーク接点311と、コイル312とを備える。メーク接点311は入力端子35と出力端子37の間をオン状態またはオフ状態に切り替える。メーク接点311はコイル312に所定の電流が通電している場合にオンし、通電していない場合にオフする。コイル312は駆動部326がオンした場合にダイオード33を通して
図1に示すバッテリー5からバッテリー5の出力電圧に応じた(あるいは駆動部326によって所定値に制御された)電流を通電する。
【0030】
図2に示す構成例では、ON/OFF回路32が、電源部321と、入力部322と、判定部323と、遅延部324と、遮断部325と、駆動部326を備える。電源部321は、ダイオード33を介して入力したバッテリー5から供給された直流電力をそのままで、あるいは電圧を変換して各部に電力を供給する。入力部322は、電流検出部34の出力信号を入力し、入力信号に対して、増幅、電流電圧変換、平滑等の信号処理を施した結果の信号を出力する。判定部323は、入力部322の出力信号に基づき、電流検出部34が所定の基準値以上の大きさの逆流電流Ioを検出しているか否かを判定し、判定結果を示す信号を出力する。遅延部324は、所定の基準値以上の大きさの逆流電流Ioが検出されていることを示す信号が判定部323から入力された場合に、その信号を所定時間遅延させて出力する。遮断部325は、遅延部324が所定の信号を出力した場合に駆動部326によるコイル312の通電を遮断する。すなわち、遮断部325は、遅延部324が所定の信号を出力した場合に駆動部326をオフ状態に制御する。
【0031】
駆動部326は、電源部321から電力が供給されるとオン状態となり、コイル312に所定の電流を通電する。また、駆動部326は、遮断部325からオフ状態を指示する制御信号が入力された場合、オフ状態となり、コイル312の通電を停止する。なお、一旦、駆動部326が遮断部325によってオフ状態とされた場合、オフ状態の制御は、遅延部324の信号出力の有無に関わらず継続する。このオフ状態は、例えば、図示していない所定の解除信号が入力されたり、電源部321からの電力の供給が停止されたりするまで継続される。駆動部326は、例えば、ダイオード33と直列となるようにコイル312のハイサイドまたはローサイドに設けられたトランジスタと、そのトランジスタの駆動回路、オフ状態を継続させるためのフリップフロップ回路等を有して構成されている。
【0032】
次に、
図3を参照して、溶断部材であるボンディングワイヤー225、227等の溶断特性と、スイッチ部3の動作特性の設定例について説明する。
図3は、横軸に
図1に示す逆流電流Ioの大きさをとり、単位は任意としている。縦軸は時間であり、単位は秒である。
【0033】
特性Bは部品の定格値を示す。ここで部品とは、整流素子、配線、ヒューズ等を含む逆流電流Ioが流れる構成要素を意味する。ある電流値において、その電流値に対応して特性Bが示す時間より逆流電流Ioの通電時間が短時間であれば部品は安全に動作することができる。
【0034】
一方、網掛けして示す領域Aは、スイッチ31がオフ状態となる電流の大きさおよび継続時間に対応する領域である。電流の大きさは、判定部323の判定の基準値によって設定される。継続時間は、遅延部324の遅延時間によって設定される。
図3に示す例では、判定部323による逆流電流Ioの大きさの判定基準値を変化させることで領域Aを矢印A1で示す左右方向に調整することができる。このスイッチ31をオン状態からオフ状態にする判定基準となる逆流電流Ioの値を第1基準値とする。
図3に示す例では、第1基準値以上の逆流電流Ioが1秒以上継続した場合にスイッチ31がオフ状態となる。また、遅延部324の遅延時間を変化させることで領域Aを矢印A2で示す上下方向に調整することができる。
図3に示す例では、遅延部324の遅延時間が1秒に設定されている。
【0035】
また、特性C1および特性C2は、ボンディングワイヤー225〜228の溶断特性である。特性C1は、例えば、ボンディングワイヤーの断面積(あるいは線径)が特性C2の場合と同じで本数が特性C2の場合より少ないか、ボンディングワイヤーの本数が特性C2と同じで断面積が特性C2より小さい場合の特性である。特性C2は、例えば、ボンディングワイヤーの断面積が特性C1と同じで本数が特性C1より多いか、ボンディングワイヤーの本数が特性C1と同じで断面積が特性C1より大きい場合の特性である。ボンディングワイヤーの溶断特性は、矢印Cのようにボンディングワイヤーの本数や断面積(あるいは線径)で調整することができる。なお、ボンディングワイヤーを複数本の細線とする場合、複数の細線の断面積は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、
図1に示すボンディングワイヤー225の構成(本数と断面積)とボンディングワイヤー226の構成(本数と断面積)を異ならせたり、ボンディングワイヤー227の構成(本数と断面積)とボンディングワイヤー228の構成(本数と断面積)を異ならせたりすることで、溶断特性を調整することもできる。
【0036】
例えば、ボンディングワイヤーの溶断特性を特性C1に設定した場合、逆流電流Ioの値が、特性C1の曲線が領域Aから外れる点の逆流電流Ioの値である第2基準値を超えたとき、遅延部324に設定された遅延時間(1秒)より短い時間でボンディングワイヤーが溶断し、逆流電流Ioが遮断することになる。この場合の溶断時間は、逆流電流Ioの大きさによって特性C1に応じて変化する。例えばバッテリー5の最大出力電流が破線で示す特性であるとすると、領域Aで示すスイッチ部3による逆流電流Ioの遮断と、特性C1で示すボンディングワイヤー(溶断部材)による逆流電流Ioの遮断とを組み合わせることで、特性Bで示される定格領域内で逆流電流Ioを遮断することができる。なお、ボンディングワイヤーの溶断特性を特性C2とした場合でも、特性C2は特性Bとバッテリーの最大出力電流との交点を通る曲線であるため、領域Aで示すスイッチ部3による逆流電流Ioの遮断と、特性C2で示すボンディングワイヤー(溶断部材)による逆流電流Ioの遮断とを組み合わせることで、特性Bで示される定格領域内で逆流電流Ioを遮断することができる。なお、ボンディングワイヤー(溶断部材)は、第2基準値に応じて本数と断面積を設定することができる。
【0037】
また、
図3に示すように、逆流電流Ioの大きさに応じて、逆流電流Ioが比較的大きい場合の部品の保護をボンディングワイヤーによる溶断で行い、逆流電流Ioが比較的小さい場合の部品の保護をスイッチ部3による遮断で行うことで、次の効果が得られる。すなわち、スイッチ部3による遮断を逆流電流Ioが比較的小さい場合に限定することでスイッチ31の遮断容量を小さくすることができる。すなわち、スイッチ31を遮断する際のアークの発生を抑制することができる。また、ボンディングワイヤーによる溶断特性は、電流の向きによらないため、例えば、順方向の大電流では溶断せず、比較的小さい逆流電流Ioでは溶断するというような特性とすることはできない。これに対し、本実施形態の構成では、溶断部材とスイッチ部3とを組み合わせることで、大電流の逆流電流Ioからの部品の保護と、小電流の逆流電流Ioからの部品の保護を容易に両立させることができる。
【0038】
図4は、
図1に示す車両用電源供給システム1の動作状態を場合分けして示す図である。
図4は、左から順に、バッテリー5の接続状態、DC−DCコンバータ2の整流素子(トランジスタQ5およびトランジスタQ6)の状態、電流の方向(スイッチ部3の通電電流の方向)、電流の大きさ(スイッチ部3の通電電流の大きさ)、スイッチ部3の状態、および溶断部材(ボンディングワイヤー225〜228)の状態を示す。なお、スイッチ部3の動作領域Aと溶断部材(ボンディングワイヤー225〜228)の溶断特性C1と部品の特性Bとバッテリー5の最大出力電流は
図3に示す通りであるとする。
【0039】
バッテリー5の接続状態が「順接続」(正常状態)の場合で、DC−DCコンバータ2の整流素子の状態が「正常」のとき、電流の方向は「順方向」であり、電流の大きさはDC−DCコンバータ2等の制御により「定格以下」である。また、スイッチ部3は「オン状態」であり、溶断部材の状態は「非溶断」である。参考に、
図3には、定格電流の大きさを破線で示している。
【0040】
バッテリー5の接続状態が「順接続」(正常状態)の場合で、DC−DCコンバータ2の整流素子の状態が「故障発生」のとき、電流の方向は「逆方向」である。ただし、「故障発生」の内容は、トランジスタQ5またはQ6のドレイン−ソース間が短絡した状態での故障、あるいは低抵抗で常時オンした状態での故障であるとする。このとき電流の大きさが
図3に示す第1基準値未満のとき、スイッチ部3の状態が「オン状態」であり、溶断部材の状態は
図3に鎖線で示す特性C1内なので「非溶断」状態である。また、電流の大きさが
図3に示す第1基準値以上(でかつ第2基準値以下)のとき、スイッチ部3の状態は遅延時間が経過した後「オフ状態」となり、溶断部材の状態は
図3に鎖線で示す特性C1内なので「非溶断」状態である。また、電流の大きさが
図3に示す第2基準値より大きいとき、スイッチ部3の状態は遅延時間が経過した後「オフ状態」となり、溶断部材の状態は
図3に鎖線で示す溶断特性C1に応じて所定の時間経過後に「溶断」状態になる。ただし、電流の大きさが
図3に示す第2基準値より大きいときには、溶断部材が「溶断」するのに要する時間は、スイッチ部3が「オフ状態」となる遅延時間より短いため、溶断部材が先に「溶断」するので、スイッチ部3が第2基準値より大きい逆流電流Ioを「オフ状態」とする動作は実際には行われない。
【0041】
また、バッテリー5の接続状態が「逆接続」(異常状態)の場合は、ON/OFF回路32に電源が供給されなくなるので、スイッチ部3は「オフ状態」であり、スイッチ31がオフするので整流回路22にはバッテリー5から電流が流れ込まないので溶断部材は「非溶断」状態である。
【0042】
以上のように、第1の実施形態は、車両を駆動するモーター61に電力を供給する電源4の電圧をDC−DCコンバータ2によって降圧してバッテリー5に電力を供給する車両用電源供給システム1において、次の構成の整流回路22とスイッチ部3を有する。すなわち、整流回路22は、DC−DCコンバータ2に設けられており、DC−DCコンバータ2がバッテリー5に供給する電力を直流に整流する回路であって、整流素子(トランジスタQ5およびQ6)と外部との間の少なくとも一部が溶断部材(ボンディングワイヤー225〜228)を介して接続されている。スイッチ部3は、整流回路22とバッテリー5との間に設けられており、バッテリー5からDC−DCコンバータ2へ流れる逆流電流Ioを検出し、逆流電流Ioに応じて、バッテリー5と整流回路22との間に接続されたスイッチ31をオン状態からオフ状態にする。すなわち、第1の実施形態は、整流素子と外部との間の少なくとも一部が溶断部材を介して接続される整流回路22と、DC−DCコンバータ2とバッテリー5との間に逆流電流検出による遮断機能を備えたスイッチ部3と、を備える。これにより、逆流電流Ioが生じた場合に、大電流については溶断部材が溶断し、小電流については、スイッチ部3をオフすることができるため、DC−DCコンバータ2を従来に比較して大きくせず、かつ安価なものとすることができる車両用電源供給システム1を提供することができる。
【0043】
また、
図3に示すように、第1の実施形態において、溶断部材は、スイッチ31をオン状態からオフ状態にする判定基準となる逆流電流Ioの値である第1基準値よりも大きな値である第2基準値を超えた場合に溶断する。この構成によれば、第2基準値を超えた場合に、スイッチ31をオフ状態とする前に溶断部材が溶断するように設定することで、スイッチ31をオン状態からオフ状態する際にスイッチ31でのアークの発生を防止することができる。そのため、第1の実施形態では、スイッチ部3は、逆流電流Ioが第1基準値を超えた状態が所定の遅延時間を継続した場合において、スイッチ31をオン状態からオフ状態にするようにしている。また、溶断部材は、その所定の遅延時間よりも短い時間で溶断するようにしている。
【0044】
また、第1の実施形態では、第1基準値と、所定の遅延時間と、溶断部材において、当該溶断部材を流れる電流値とその電流値が当該溶断部材を流れたときに当該溶断部材が溶断するまでの溶断時間とを示す溶断特性が、整流素子を含む、逆流電流Ioが流れる部品の部品定格に応じて決定されている。これによって、第1の実施形態によれば、整流素子を含む、逆流電流Ioが流れる部品を保護することができる。
【0045】
また、溶断部材は、第2基準値に応じて本数と断面積が設定することができる。この場合、スイッチ部3による保護と溶断部材による保護との協働を容易に設定することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、
図1を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて次の構成が異なる。すなわち、第1の実施形態では、整流素子(トランジスタQ5およびトランジスタQ6)を構成する半導体チップと半導体チップ外とを接続するボンディングワイヤー225〜228を溶断部材としている。これに対し、第2の実施形態では、整流回路22内の基板上の配線パターンP1およびP2に溶断部材を設けている。溶断部材は、配線パターンP1およびP2の全部あるいは一部の導体の厚さや幅を所定の溶断特性を有するように構成したパターン自体であってもよいし、配線パターンP1およびP2内にヒューズとして機能するチップ部品を直列に介在させる構成としてもよい。また、第2の実施形態においても第1の実施形態と同じくボンディングワイヤー225〜228に所定の溶断特性を持たせてもよい。
【0047】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、大電流または小電流の逆流電流Ioから保護しつつ、DC−DCコンバータ2を従来に比較して大きくせず、かつ安価なものとすることができる車両用電源供給システム1を提供することができる。
【0048】
なお、第1の実施形態および第2の実施形態は、例えば、次のように変形することができる。すなわち、上記各実施形態では、整流回路22を同期整流方式の構成としたが、トランジスタQ5とトランジスタQ6を例えばベアチップのダイオードに代えて非同期の整流方式の構成としてもよい。また、上記実施形態では、スイッチ部3が電流検出部34を備えているが、電流検出部34をスイッチ部3の外部に設けて逆流電流Ioの検出信号を入力部322が受信するようにしてもよい。また、スイッチ部3に対して外部のECU(電子制御装置)あるいはDC−DCコンバータ制御部24から制御信号を入力して、その制御信号に従ってスイッチ31をオンまたはオフする機能をスイッチ部3に付加してもよい。また、スイッチ部3とDC−DCコンバータ2を一体的に構成してもよい。また、
図1において大容量のヒューズ7を省略してもよい。
【0049】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
本実施形態の車両用電源供給システムは、車両を駆動するモーターに電力を供給する電源の電圧をDC−DCコンバータによって降圧してバッテリーに電力を供給する車両用電源供給システムにおいて、前記DC−DCコンバータに設けられており、前記DC−DCコンバータが前記バッテリーに供給する電力を直流に整流する回路であって、整流素子と外部との間の少なくとも一部が溶断部材を介して接続される整流回路と、前記整流回路と前記バッテリーとの間に設けられており、前記バッテリーから前記DC−DCコンバータへ流れる逆流電流を検出し、前記逆流電流に応じて、前記バッテリーと前記整流回路との間に接続されたスイッチをオン状態からオフ状態にするスイッチ部と、を備えることを特徴とする。