(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において用いられ、輸液管を接続するためのコネクタとして、メネジが設けられたオス側ロック部を有するオス側コネクタと、該メネジに対応するオネジが設けられたメス側ロック部を有するメス側コネクタとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなコネクタは、オス側ロック部とメス側ロック部とでロック機構を構成し、そのオネジとメネジを締結させることによりオス側コネクタとメス側コネクタとを固定するものであるため、必然的に硬質素材で構成される。
【0004】
一方、経鼻栄養チューブの固定方法として、チューブを鼻と頬にテープで固定し、耳の後ろにかけてぶら下げておく方法が広く一般に行われている。この場合、患者が移動したり、栄養セットと接続したりする際に、チューブのコネクタが患者の皮膚と接触することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経鼻栄養チューブ用の軟質素材によるコネクタは、皮膚と接触しても痛みを生じさせないが、ロック機構を付加することができない。したがって、この軟質素材によるコネクタは、ロック機構を有する硬質素材のコネクタに比べてオス側コネクタとメス側コネクタとの連結が解除され易いという欠点がある。
【0007】
一方、ロック機構を有する硬質素材のコネクタを、上述の固定方法による経鼻栄養チューブの接続に用いると、コネクタが皮膚と接触した場合に、患者に痛みを生じさせるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、連結が解除され難くかつ患者に痛みを与えないコネクタを実現するコネクタカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコネクタカバーは、輸液管に取り付けられた
ロック機構を有するコネクタの
少なくとも一方を被覆するためのコネクタカバーであって、前記輸液管に沿ってスライド可能な中空の筒状体を備え、
該筒状体は、前記輸液管側を後方、前記コネクタ側を前方としたときに、前記筒状体の後方部に該輸液管上を摺動するのに適した内径を有する支持部と、該支持部よりも前方に、前記一方のコネクタの後方から該コネクタの側面を被覆可能な被覆部とを有し
、前記コネクタよりも軟質な軟質素材により形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、輸液管に取り付けられた一方のコネクタをコネクタカバーで被覆する際には、輸液管上に予め配置されたコネクタカバーが該コネクタのところまで移動される。そして、該コネクタがその後方側からコネクタカバーの被覆部に嵌合される。これにより、該コネクタがコネクタカバーで被覆された状態とされる。
【0011】
したがって、コネクタを被覆しないときや、コネクタを連結するために一時的に被覆を解除するときには、コネクタカバーを輸液管上に退避させておき、コネクタを被覆するときには、直ちにコネクタカバーを用いることができる。このため、コネクタカバーを使い勝手良く用いることができる。
【0012】
また、輸液管が医療目的で使用され、コネクタの一方が患者の皮膚に触れ易い場合には、軟質素材で形成されたコネクタカバーで該一方のコネクタを被覆することにより、該コネクタが皮膚と接触して患者に痛みを与えるのを防止することができる。この場合、コネクタを軟質素材で形成する必要がないので、コネクタとして、ロック機構を有する硬質素材のもの、すなわち連結が解除され難いものを採用することができる。
【0013】
本発明において、前記一方のコネクタの先端部に嵌合させて該先端部を閉塞するためのキャップ部と、前記被覆部の外面から延出し、その延出した先端部において前記キャップ部に連結する可撓性の連結部とを有してもよい。
【0014】
これによれば、該一方のコネクタが他方のコネクタと連結していない場合には、支持部材を撓めてキャップ部を該一方のコネクタの先端部に嵌合させることにより該先端部を閉塞することができる。これより、輸液管が医療用に使用されている場合には、該コネクタの先端部からの感染等を防止することができる。
【0015】
輸液管に取り付けられたコネクタの一方を被覆するためのコネクタカバーであって、
本発明
のコネクタカバーは、前記輸液管に沿ってスライド可能な中空の筒状体を備え、前記輸液管側を後方、前記コネクタ側を前方としたときに、前記筒状体の後方部に該輸液管上を摺動するのに適した内径を有する支持部と、前記筒状体の前記支持部よりも前方に、前記一方のコネクタの後方から該コネクタの側面を被覆可能な被覆部とを有し、前記筒状体は、前記コネクタよりも軟質な軟質素材により形成され、前記被覆部は、前記一方のコネクタに連結される他方のコネクタの側面をも被覆できる大きさを有
することを特徴とする。
【0016】
これによれば、連結されたコネクタの全体を被覆できるので、一方及び他方のコネクタが互いに相手方に対して回転されるのを防止することができる。このため、誤ってコネクタの連結が解除される事態を回避することができる。また、コネクタ全体を被覆することにより、コネクタ部分が落下した場合や他の物に接触した場合の衝撃を、効果的に緩和することができる。
【0017】
また、本発明において、前記筒状体の後方部の外周に、該筒状体の軸線方向に沿って凸条又は凹溝が設けられていてもよい。これによれば、コネクタカバーでコネクタを被覆する際の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係るコネクタカバーの正面図、平面図、及び該平面図のA−A線断面図である。
【
図2】(a)及び(b)は、
図1のコネクタカバーをオス側コネクタに装着した様子を示す正面図及び断面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、
図1のコネクタカバーが装着されたオス側コネクタにメス側コネクタが連結された様子を示す正面図及び断面図である。
【
図4】(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態に係るコネクタカバーの正面図、側面図、該正面図のA−A線断面図、該側面図のB−B線断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、
図4のコネクタカバーをオス側コネクタに装着した様子を示す正面図及び断面図である。
【
図6】(a)〜(c)は、連結されたオス側コネクタ及びメス側コネクタに
図4のコネクタカバーが装着される様子を示す正面図、並びにこの装着がなされた後の様子を示す正面図及び断面図である。
【
図7】(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態に係るコネクタカバーの正面図、平面図、及び該平面図のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1(a)〜(c)は、それぞれ本発明の第1実施形態に係るコネクタカバーの正面図、平面図、及び該平面図のA−A線断面図である。
図2(a)及び(b)は、コネクタカバーをオス側コネクタに装着した様子を示す正面図及び断面図である。
図3(a)及び(b)は、コネクタカバーが装着されたオス側コネクタにメス側コネクタが連結された様子を示す正面図及び断面図である。
【0020】
図1〜
図3に示すように、コネクタカバー1は、医療用の輸液管2に取り付けられた一方のコネクタであるオス側コネクタ3を被覆するために用いられる。コネクタカバー1は、その内側に挿入される輸液管2に沿ってスライドさせることが可能な中空の筒状体4を備える。
【0021】
また、輸液管2側を後方、オス側コネクタ3側を前方とすると、コネクタカバー1は、筒状体4の後方部に輸液管2上を摺動するのに適した内径を有する支持部6と、筒状体4の支持部6よりも前方に、オス側コネクタ3の後方からオス側コネクタ3の側面を被覆可能な被覆部5とを有する。筒状体4は、オス側コネクタ3よりも軟質な軟質素材により形成される。
【0022】
支持部6の内径は、輸液管2の外径よりもやや大きく、支持部6の内側に配置される輸液管2に沿って摺動するのに適している。被覆部5の内径は、オス側コネクタ3が被覆部5内に嵌合し得るように、支持部6の内径より大きい。支持部6の外周には、被覆部5によりオス側コネクタ3を被覆する際の操作に役立つ凸条又は凹溝7が支持部6の軸線方向に沿って設けられる。
【0023】
また、コネクタカバー1は、オス側コネクタ3の先端部に嵌合させて該先端部を閉塞するためのキャップ部8と、被覆部5の外面から延出し、その延出した先端部においてキャップ部8に連結する可撓性の連結部9とを有する。キャップ部8は、一方の側が開放された円筒状の部材により構成される。キャップ部8には、キャップ部8をオス側コネクタ3の先端部に嵌合させるときに操作される摘み部10が設けられる。
【0024】
オス側コネクタ3は、基端側が輸液管2に接続され、先端側が、先端にかけて径が漸減する円錐外面を有するオス側連結管11と、円筒状で該円錐外面の外周に保持され、内周面にメネジを有するオス側ロック部12とを備える。
【0025】
被覆部5は、オス側コネクタ3におけるオス側連結管11のオス側ロック部12よりも基端側の側面を被覆し得る大きさを有する。また、キャップ部8を構成する円筒状の部材は、オス側連結管11の先端部とオス側ロック部12との間に嵌合して該先端部を閉塞するのに適した寸法を有する。
【0026】
メス側コネクタ13は、輸液管2に接続される別の輸液管14に基端側が接続され、先端側が、オス側連結管11の円錐外面に対応する円錐内面を有するメス側連結管15と、オス側ロック部12のメネジに対応するオネジを有するメス側ロック部16とを備える。
【0027】
輸液管2に取り付けられたオス側コネクタ3をコネクタカバー1で被覆する場合には、オス側コネクタ3が取り付けられた輸液管2が、予めコネクタカバー1に挿入される。コネクタカバー1に輸液管2を挿入した後でオス側コネクタ3を輸液管2に取り付けるようにしてもよい。これにより、コネクタカバー1は、支持部6を介して輸液管2によりスライド自在に支持された状態となる。
【0028】
この状態において、被覆部5に対しその先端側からオス側コネクタ3が嵌合されるように、コネクタカバー1がオス側コネクタ3の方へ移動される。これにより、コネクタカバー1にオス側コネクタ3が装着され、オス側コネクタ3が被覆される。
【0029】
ただし、本実施形態では、オス側コネクタ3におけるオス側ロック部12よりも基端側の側面が被覆される。このため、オス側コネクタ3にコネクタカバー1を装着したまま、オス側コネクタ3にメス側コネクタ13を容易に連結させることができる。なお、コネクタカバー1による被覆を解除する場合には、コネクタカバー1をオス側コネクタ3とは反対側の方へ移動させ、被覆部5に対するオス側コネクタ3の嵌合を解除すればよい。
【0030】
コネクタカバー1がオス側コネクタ3を被覆していないときには、コネクタカバー1は輸液管2上に退避され、被覆が必要な場合には直ちに輸液管2上のコネクタカバー1が用いられる。
【0031】
コネクタカバー1によりオス側コネクタ3を被覆している状態においてオス側コネクタ3がメス側コネクタ13と連結していない場合には、
図2に示すように、連結部9を撓めてキャップ部8をオス側コネクタ3の先端部に嵌合させることにより、該先端部が閉塞される。これより、オス側コネクタ3の先端部からの感染等が防止される。
【0032】
コネクタカバー1によりオス側コネクタ3を被覆している状態においてオス側コネクタ3にメス側コネクタ13を連結させる場合には、
図3に示すように、キャップ部8は、オス側コネクタ3の先端部を閉塞していない状態とされる。このとき、連結部9は、被覆部5の径方向外方に延びた状態でキャップ部8を支持する。
【0033】
これにより、キャップ部8は、オス側コネクタ3とメス側コネクタ13との連結に支障のない退避位置に配置される。この状態で、オス側コネクタ3にメス側コネクタ13が連結される。
【0034】
本実施形態によれば、コネクタカバー1を、不要の場合には輸液管2上に退避させておき、必要な場合には輸液管2上から直ちに移動させて用いることができるので、使い勝手良く用いることができる。
【0035】
また、輸液管2が経鼻栄養チューブであり、その固定方法として、チューブを鼻と頬にテープで固定し、耳の後ろにかけてぶら下げておく方法が用いられる場合には、患者が移動したり、栄養セットと接続したりする際に、オス側コネクタ3の基端側が患者の皮膚と接触することがある。
【0036】
この場合、上述のように、軟質素材で形成されているコネクタカバー1でオス側コネクタ3を被覆することによって、オス側コネクタ3と皮膚との接触により患者に痛みが生じるのを防止することができる。このため、オス側コネクタ3を軟質素材で形成する必要がないので、オス側ロック部12を有する硬質素材のオス側コネクタ3を、支障なく用いることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、支持部6の外周に、凸条又は凹溝7が設けられているので、コネクタカバー1でオス側コネクタ3を被覆する際の操作性を向上させることができる。
【0038】
図4(a)〜(d)は、それぞれ本発明の第2実施形態に係るコネクタカバーの正面図、側面図、該正面図のA−A線断面図、該側面図のB−B線断面図である。
図5(a)及び(b)は、それぞれ
図4のコネクタカバーをオス側コネクタに装着した様子を示す正面図及び断面図である。
図6(a)〜(c)は、それぞれ連結されたオス側コネクタ及びメス側コネクタに
図4のコネクタカバーが装着される様子を示す正面図、並びにこの装着がなされた後の様子を示す正面図及び断面図である。
【0039】
図4〜
図6において、第1実施形態における各要素に対応する要素には、第1実施形態における各要素の符号に対し「b」を付加した符号を付している。本実施形態における各要素は、特に言及しない点については、第1実施例における対応要素と同じ機能を有する。
【0040】
本実施形態のコネクタカバー1bは、第1実施形態のコネクタカバー1と次の点で異なる。すなわち、支持部6bは、筒状体4bの後方部における後端部に位置する。被覆部5bは、筒状体4bにおける支持部6bよりも前方に位置する。そして、被覆部5bは、オス側コネクタ3に連結された他方のコネクタとしてのメス側コネクタ13の側面をも被覆できる大きさを有する。
【0041】
被覆部5bは、連結されたオス側コネクタ3及びメス側コネクタ13の側面全体を被覆するのに適した形状を有する。すなわち、被覆部5bは、先端側の大径部17と、後端側の小径部18とで構成される。
図6(c)で示されるように、大径部17は、連結されたオス側コネクタ3及びメス側コネクタ13におけるメス側ロック部16よりも基端側の部分と、オス側ロック部12とを併せた部分の外径及び長さに適合した内径及び長さを有する。小径部18は、オス側コネクタ3におけるオス側ロック部12よりも基端側の部分の外径及び長さに適合した内径及び長さを有する。
【0042】
また、凸条又は凹溝7bは、被覆部5bの小径部18の外周に設けられる。凸条又は凹溝7bは、4つの凸条又は凹溝により構成され、第1実施形態の凸条又は凹溝7の場合よりも、凸条又は凹溝の数が少ない。
【0043】
また、キャップ部8bは、第1実施形態のキャップ部8における円筒状の部材に加え、その外側において、オス側コネクタ3のオス側ロック部12に外嵌するもう1つの円筒状の部材を有する(
図5(b)参照)。これにより、キャップ部8bによるオス側コネクタ3の密閉がより効果的に行われる。
【0044】
コネクタカバー1bによるオス側コネクタ3の被覆は、第1実施形態におけるコネクタカバー1の場合と同様にして行われる。ただし、
図5に示されるように、コネクタカバー1bをオス側コネクタ3に装着した状態では、オス側コネクタ3におけるオス側ロック部12よりも基端側の部分が被覆部5bの大径部17内に多少の隙間を有して被覆された状況において、キャップ部8bがオス側ロック部12の先端部に嵌合される。
【0045】
また、
図6に示されるように、連結されたオス側コネクタ3及びメス側コネクタ13の被覆は、その連結が行われた後で、コネクタカバー1bをメス側コネクタ13の方へ移動させ(
図6(a))、オス側コネクタ3及びメス側コネクタ13に外嵌することにより行われる(
図6(b)、(c))。
【0046】
オス側コネクタ3及びメス側コネクタ13が被覆された状態では、
図6(c)のように、被覆部5bの小径部18により、オス側コネクタ3におけるオス側ロック部12よりも基端側の部分が被覆される。また、大径部17により、オス側コネクタ3のオス側ロック部12と、メス側コネクタ13におけるメス側ロック部16よりも基端側の部分とが被覆される。
【0047】
本実施形態によれば、上述の第1実施形態の効果に加え、さらに次の効果を得ることができる。すなわち、オス側コネクタ3及びメス側コネクタ13かなるコネクタ全体を被覆できるので、相互に連結されたオス側コネクタ3及びメス側コネクタ13が互いに相手方に対して回転されるのを防止することができる。このため、誤ってコネクタの連結が解除される事態を回避することができる。また、コネクタ全体を被覆することにより、コネクタ部分が落下した場合や他の物に接触した場合の衝撃を、効果的に緩和することができる。
【0048】
図7(a)〜(c)は、それぞれ本発明の第3の実施形態に係るコネクタカバーの正面図、平面図、及び該平面図のA−A線断面図である。このコネクタカバー1cは、第1実施形態のコネクタカバー1において、連結部9及びキャップ部8を省略した形態を有する。したがって、キャップ部8による効果以外については、第1実施形態のコネクタカバー1の場合と同様の効果が得られる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1実施形態ではオス側コネクタ3を被覆しているが、オス側コネクタ3に代えてメス側コネクタ13を被覆してもよい。また、第2実施形態では、コネクタカバー1bによりオス側コネクタ3側からコネクタ全体を被覆しているが、これに代えて、メス側コネクタ13側から被覆するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,1b…コネクタカバー、2…輸液管、3…オス側コネクタ(一方のコネクタ)、4,4b…筒状体、5,5b…被覆部、6,6b…支持部、7,7b…凸条又は凹溝、8,8b…キャップ部、9,9b…連結部、13…メス側コネクタ(他方のコネクタ)。