(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者は、バックフラッシュニードルをはじめとする従来構成の眼科手術器具では、硝子体手術での使用に際して、以下に述べるような難点が生じてしまうことに気が付いた。
【0007】
例えばバックフラッシュニードルを硝子体手術で使用する際には、眼球の強膜に装着されるトロカールカニューレが有する孔部を通して、そのバックフラッシュニードルの眼内挿入部を眼内に挿入する。このとき、狭い孔部に細い眼内挿入部を挿入することになるため、眼内挿入部の先端をトロカールカニューレの孔部に挿入し難かったり、挿入の際に眼内挿入部先端のブラシを変形させたりする可能性が生じてしまい、結果としてバックフラッシュニードルの操作性が悪化してしまうという難点がある。
【0008】
本発明は、以上に述べた難点を解消し、術者にとっての操作性向上を図ることができる眼科手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的達成のために、本願発明者は、先ず、操作性悪化の要因について検討した結果、それは術者のバックフラッシュニードルのハンドル部を持つ手指によって、術者の視界が一時的に遮られることに起因することに気が付いた。このように術者の視界が一時的に遮られてしまうのは、眼内挿入部がハンドル部から真っ直ぐに延びており、眼内挿入部とハンドル部の各中心軸が同軸となるような状態にあるためと考えられる。このことから、本願発明者は、眼内挿入部とハンドル部の各中心軸が非同軸となる状態にあれば良いのではないかとの着想を得た。
ただし、単に各中心軸を非同軸となる状態にするだけでは、必ずしも操作性向上が図れるとは限らない。例えば、眼内挿入部とハンドル部との間に単に一つの屈曲部を介在させて接続した場合には、各中心軸が非同軸とはなるが、眼内挿入部の眼内への挿入方向または挿入後の移動方向とハンドル部を持つ術者の手指の操作方向とが懸け離れてしまい、結果として術者が操作時に違和感を覚えてしまうおそれがある。
この点につき、本願発明者は、さらに鋭意検討を重ね、眼内挿入部とハンドル部とを略クランク状に接続すれば、各中心軸が非同軸となる状態にしつつ、眼内挿入部の挿入方向または挿入後の移動方向とハンドル部の操作方向とが懸け離れてしまうのを抑制することができ、術者にとっての操作性を向上させ得るのではないかとの新たな着想に至った。ここでいう「略クランク状」については、その詳細を後述する。
このような新たな着想に基づき、本願発明者は、以下に述べる課題解決手段に想到した。この新たな着想に基づいてなされた本発明の態様は、以下のとおりである。
【0010】
本発明の第1の態様は、眼科で行われる手術に用いられる眼科手術器具であって、眼内に挿入される針状の眼内挿入部と、術者が手指で持つために外形が棒状に形成されたハンドル部と、前記眼内挿入部と前記ハンドル部の各中心軸が非同軸となるように各々を複数箇所の屈曲部を有した略クランク状に接続する接続部と、を備えることを特徴とする眼科手術器具である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記接続部は、前記眼内挿入部と前記ハンドル部の各中心軸を平行にオフセットさせた状態で接続するものであることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の発明において、前記接続部は、前記眼内挿入部と前記ハンドル部のオフセット量が、前記ハンドル部を持つ指の大きさを考慮して決定された所定値に設定されていることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか1態様に記載の発明において、前記ハンドル部および前記接続部には、前記眼内挿入部を通じて流体を吸引または排出するための流体通路が内蔵されており、前記ハンドル部には、当該ハンドル部を持つ指で前記流体の吸引圧または排出圧を調整するための調整弁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、眼科手術の際の術者にとっての操作性向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明に係る眼科手術器具について説明する。
本実施形態では、眼科手術器具としてバックフラッシュニードルを例に挙げて、以下の順序で項分けをして説明を行う。
1.本実施形態のバックフラッシュニードルの構成例
2.眼科手術の概要
3.眼科手術でのバックフラッシュニードルの使用手順
4.本実施形態の効果
5.変形例等
【0014】
<1.本実施形態のバックフラッシュニードルの構成例>
図1は、本発明が適用されたバックフラッシュニードルの一構成例を示す説明図である。
図例のように、本実施形態で説明するバックフラッシュニードル1は、大別すると、眼内挿入部2と、ハンドル部3と、連結部4と、接続部5と、を備えて構成されている。
【0015】
(眼内挿入部)
眼内挿入部2は、硝子体手術の際に眼内に挿入される部分である。そして、眼内に挿入された状態で灌流液の排出や眼内物質の吸引等を行い得るように、眼内挿入部2は、真っ直ぐに延びる金属製の20〜25ゲージ(G)程度の針状に形成されている。また、眼内挿入部2の先端部分には、樹脂製のブラシ2aが取り付けられている。
【0016】
(ハンドル部)
ハンドル部3は、硝子体手術を行う術者が手指で持つための柄となる部分であり、その外形が真っ直ぐに延びる棒状に形成されている。また、ハンドル部3は、棒状部分が中空構造を有しており、眼内挿入部2を通じて流体を吸引または排出するための流体通路3aを内蔵している。つまり、ハンドル部3は、術者が持ち易い外形形状の筒状(例えば円筒状)に形成されており、その筒内に流体通路3aを内蔵している。流体通路3aは、例えば樹脂製チューブによって形成することが考えられる。
【0017】
ハンドル部3の構成筒には、その一部分に、内蔵する流体通路3aを露出させるための窓部3bが設けられている。窓部3bからは、流体通路3aが外方に膨出するように露出している。そして、窓部3bによる流体通路3aの露出部分には、ハンドル部3を持つ術者の指で流体の吸引圧または排出圧を調整するための調整弁3cが設けられている。調整弁3cは、流体通路3aの内外を連通させる開孔を有しており、その開孔を術者の指で塞いだ状態で流体通路3aを潰す方向に押圧したり、あるいはその開孔を開放したりすることで、流体通路3a内の流体の吸引圧または排出圧の調整を可能にするように構成されている。
【0018】
なお、ハンドル部3には、術者が手指で持つことを考慮した外形加工(例えば手指が滑り難くするための加工)が施されていてもよい。
【0019】
(連結部)
連結部4は、眼内挿入部2とは反対側のハンドル部3の端縁から延びるように形成されたものであり、ハンドル部3が内蔵する流体通路3aと灌流吸引装置等の外部装置またはシリンジ等の外部器具(ただし、いずれも不図示)との間を連結するためのものである。なお、連結部4は、流体通路3aと外部装置または外部器具との連結が不要である場合には設けられていなくてもよい。
【0020】
(接続部)
接続部5は、眼内挿入部2とハンドル部3を接続する部分である。この接続部5の介在によって、眼内挿入部2とハンドル部3は、一体に形成された一つのバックフラッシュニードル1を構成することになる。また、接続部5は、流体を吸引または排出するための流体通路5aを内蔵している。この流体通路5aは、一端が眼内挿入部2に連通しており、他端がハンドル部3の流体通路3aに連通している。したがって、バックフラッシュニードル1は、眼内挿入部2、流体通路3a,5aおよび連結部4を通じて、灌流液の排出や眼内物質の吸引等を行い得るのである。
【0021】
ただし、接続部5は、針状に形成された眼内挿入部2の中心軸A2と、筒状(外形棒状)に形成されたハンドル部3の中心軸A3とが、互いに非同軸となるように、眼内挿入部2とハンドル部3を接続する。ここで「非同軸」とは、各中心軸A2,A3が一致しないこと(すなわち同軸ではないこと)をいう。
【0022】
さらに、接続部5は、眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続する。ここで「略クランク状」とは、複数箇所の屈曲部を有し、かつ、屈曲方向が互いに反する方向である屈曲部を含む形状のことをいう。したがって、ここでいう「略クランク状」は、直角に曲がる屈曲部が二つ交互に繋がるクランク形状に限られることはなく、当該クランク形状の他に、例えば直角以外の角度で曲がる屈曲部を有するもの、反する方向に曲がる各屈曲部における屈曲角度が互いに相違するもの、三つ以上の屈曲部を有するもの等についても含まれるものとする。
【0023】
以上のように、接続部5は、各中心軸A2,A3が非同軸となるように眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続する。したがって、「略クランク状」に該当すれば眼内挿入部2とハンドル部3は様々な態様によって接続され得るが、本実施形態で例に挙げる接続部5は、眼内挿入部2の中心軸A2とハンドル部3の中心軸A3とを平行にオフセットさせた状態で接続しているものとする。ここでいう「平行」は、各中心軸A2,A3をどこまで延長しても交わらない状態、または技術常識的にこれと同等に扱える状態のことである。また、ここでいう「オフセット」は、ある距離を介在させた状態で一方の中心軸と他方の中心軸とが互いに離れて配置されていることを意味する。
【0024】
また、接続部5は、ハンドル部3の中心軸A3に対する眼内挿入部2の中心軸A2のオフセット方向が、当該ハンドル部3における調整弁3cの膨出方向と同方向となるように、各中心軸A2,A3を平行にオフセットさせている。
【0025】
そして、各中心軸A2,A3のオフセット量(図中におけるL1参照)については、ハンドル部3を持つ術者の指の大きさを考慮して決定された所定値に設定されているものとする。さらに詳しくは、ハンドル部3を持つ術者の指のうち、眼内挿入部2のオフセット方向に位置することになる指、具体的には調整弁3cを操作する指となる人差し指(第二指、示指)の大きさ(厚さ)を考慮して、これと同程度の大きさの値を所定値として決定し、その決定した所定値の分だけ眼内挿入部2とハンドル部3とがオフセットするように、それぞれの各中心軸A2,A3のオフセット量L1が設定されているものとする。例えば、成人の人差し指の厚さは10〜15mm程度なので、各中心軸A2,A3のオフセット量L1は、10mm以上15mm以下の範囲内、好ましくは11.5mm±0.5mmの範囲内に属するように設定することが考えられる。
【0026】
なお、各中心軸A2,A3に沿った方向における眼内挿入部2やハンドル部3等の具体的な大きさ(サイズ)等については、特に限定されるものではなく、適宜設定されたものであればよい。
【0027】
<2.眼科手術の概要>
次に、本実施形態のバックフラッシュニードル1を用いて行う眼科手術の概要を簡単に説明する。ここでは、眼科で行われる硝子体手術を例に挙げる。
【0028】
硝子体手術を行う場合に、その硝子体手術の術者は、患者に対する麻酔を行った後、その患者の眼球の強膜の複数箇所に穴を開け、それぞれの穴にトロカールカニューレを装着する。各トロカールカニューレは、バックフラッシュニードル1をはじめとする各種の眼科手術器具等を、眼球内に挿入するためのものである。
【0029】
また、硝子体手術では、患者の眼球における眼底を観察するために、広角観察システムを使用する。具体的には、広角観察システムの構成部品である前置レンズを、患者の眼球の角膜と対峙する位置に配置して、その眼球における眼底の観察を可能にする。
【0030】
このような状況下で、硝子体手術の術者は、一つのトロカールカニューレの孔部に眼科手術器具を挿入して、眼球内の硝子体を取り出す(吸い出す)とともに、眼球の形態を保つための灌流液(人工の透明な液体)を眼球内に注入する。この灌流液は、硝子体の液状成分の代わりとなるものである。
【0031】
そして、硝子体手術の術者は、他の一つのトロカールカニューレの孔部に光ファイバー器具を挿入して眼球内を照らしつつ、さらに他のトロカールカニューレの孔部にバックフラッシュニードル1を挿入して、例えば残存硝子体の吸引や網膜に癒着した血液の除去吸引等の処理を行う。
【0032】
硝子体手術は、以上のような手順を経て行われる。
【0033】
<3.眼科手術でのバックフラッシュニードルの使用手順>
次に、以上のような手順の硝子体手術において、本実施形態のバックフラッシュニードル1を使用する際の手順を、さらに詳しく説明する。
【0034】
図2は、バックフラッシュニードルの使用態様の一例を示す説明図である。
硝子体手術において、バックフラッシュニードル1を使用する際には、眼内挿入部2を眼内に挿入すべく、その眼内挿入部2の先端側をトロカールカニューレの孔部に通す必要がある。
【0035】
その場合に、従来構成のバックフラッシュニードルでは、
図2(b)に示すように、ハンドル部13を持つ術者の人差し指Fによって当該術者の視線Eが遮られ、眼内挿入部12の先端付近の視認性が悪くなってしまう。つまり、自分の人差し指Fに邪魔されて眼内挿入部12の先端付近が見え難い状態になってしまい、その結果としてトロカールカニューレの孔部に通す際の操作性悪化を招いてしまい得る。
【0036】
この点、本実施形態のバックフラッシュニードル1では、
図2(a)に示すように、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続しており、眼内挿入部2の中心軸A2とハンドル部3の中心軸A3とがオフセットしているので、そのオフセット部分に術者の人差し指(調整弁3cを操作する指)Fが入り込んで収納されたような状態になる。そのため、術者の人差し指Fによって当該術者の視線Eが遮られてしまうことがなく、眼内挿入部2の先端付近の視認性が悪くなってしまうこともない。つまり、術者は、眼内挿入部2の先端付近を目視しながら、その眼内挿入部2の先端側をトロカールカニューレの孔部に通すことができるようになる。
【0037】
しかも、本実施形態のバックフラッシュニードル1は、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3を平行にオフセットさせているため、眼内挿入部2を眼内に挿入する際の当該眼内挿入部2の移動方向と、その際におけるハンドル部3の移動方向とが、いずれも同方向となる。つまり、術者は、眼内挿入部2の眼内への挿入方向と同方向にハンドル部3を移動させながら、その眼内挿入部2の先端側をトロカールカニューレの孔部に通すことができるようになる。また、眼内挿入部2の眼内への挿入後においても、眼内挿入部2とハンドル部3は、同方向に向けて動くことになる。
【0038】
図3は、バックフラッシュニードルの他の使用態様の一例を示す説明図である。
硝子体手術において、バックフラッシュニードル1を眼内に挿入した後は、例えば眼内物質の吸引等のために、眼内挿入部2の先端におけるブラシ2aを眼底に沿って移動させる必要が生じることがある。
【0039】
その場合に、従来構成のバックフラッシュニードルでは、
図3(b)に示すように、ハンドル部13またはハンドル部13を持つ術者の手指(ただし不図示)が、広角観察システムの構成部品である前置レンズCと干渉し、眼内挿入部12の先端のブラシ12aが移動し得る範囲(すなわちバックフラッシュニードルの可動範囲)が制限されてしまう。具体的には、前置レンズCとの干渉によって、特に眼内挿入部12を挿入したトロカールカニューレに近い側への移動が物理的に制限されてしまう。そのため、眼内挿入部12の先端の移動は図中θ2の範囲内に制限されてしまい、その結果として眼内物質の吸引等を行う際の操作性悪化を招いてしまい得る。
【0040】
この点、本実施形態のバックフラッシュニードル1では、
図3(a)に示すように、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続しており、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3がオフセットしているので、そのオフセット量の分だけ広角観察システムの前置レンズCとの干渉が生じ難くなる。そのため、眼内挿入部2の先端のブラシ2aの移動可能範囲は、上述した従来構成の場合に比べると、特に眼内挿入部2を挿入したトロカールカニューレに近い側の部分が拡がる。つまり、眼内挿入部2の先端のブラシ2aの移動可能範囲が図中θ1の範囲まで拡がるので、術者は、その広がった移動可能範囲の全域について眼内物質の吸引等の処理を行うことができるようになる。
【0041】
バックフラッシュニードル1を使用して眼内物質の吸引処理を行う場合、術者は、先ず、バックフラッシュニードル1のハンドル部3を手指で持ち、そのハンドル部3における調整弁3cの開孔を人差し指で塞いだ状態で流体通路3aを潰す方向に当該調整弁3cを押圧し、その状態で眼内挿入部2の先端側をトロカールカニューレの孔部に通して当該眼内挿入部2を眼内に挿入する。そして、眼内挿入部2の先端のブラシ2aを眼底の所望位置まで移動させた後、調整弁3cの押圧力を弱めて、潰れていた流体通路3aを元に戻す。これにより流体通路3a内には負圧が生じるので、眼内挿入部2の先端位置付近に存在する眼内物質は、眼内挿入部2を通して流体通路3a内に吸引されることになる。なお、連結部4にシリンジ等の外部器具が連結している場合には、その外部器具が発揮する吸引力を利用して眼内物質の吸引を行うことも考えられる。
【0042】
また、バックフラッシュニードル1を使用して眼内への流体供給(例えば灌流液の排出)を行う場合、術者は、上述した吸引処理とは逆の手順で処理を行う。具体的には、先ず、予めハンドル部3の流体通路3a内に灌流液等の球体を保持している状態で、眼内挿入部2の先端側をトロカールカニューレの孔部に通して当該眼内挿入部2を眼内に挿入する。そして、眼内挿入部2の先端を眼内の所望位置まで移動させた後、調整弁3cの開孔を開放し、あるいは調整弁3cに押圧力を加える。これにより流体通路3a内には正圧が生じるので、流体通路3a内に保持していた流体は、眼内挿入部2を通して眼内に排出されることになる。なお、連結部4にシリンジ等の外部器具が連結している場合には、その外部器具が発揮する加圧力を利用して眼内への流体供給を行うことも考えられる。
【0043】
以上のような手順でバックフラッシュニードル1を使用しつつ、術者は、患者に対する硝子体手術を行うのである。なお、以上の説明で挙げなかった事項については、公知の硝子体手術で用いられる器具や手順と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0044】
<4.本実施形態の効果>
本実施形態で説明したバックフラッシュニードル1によれば、以下のような効果が得られる。
【0045】
本実施形態のバックフラッシュニードル1は、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3が非同軸となるように、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続している。そのため、略クランク状のオフセット部分に術者の指が入り込んで収納されたような状態になるので、眼内挿入部2の先端付近の視認性が悪くなってしまうことがなく、術者がその先端付近を目視しながら眼内挿入部2の先端側をトロカールカニューレの孔部に通すことができる。つまり、術者にとっては眼内挿入部2の先端をトロカールカニューレの孔部に挿入し易くなり、また挿入の際に眼内挿入部2の先端のブラシ2aを変形させてしまう可能性が非常に低くなる。
【0046】
また、眼内挿入部2を眼内に挿入した後においても、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続しており、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3がオフセットしているので、そのオフセット量の分だけ広角観察システムの前置レンズC等との干渉が生じ難くなる。そのため、従来構成の場合に比べると眼内挿入部2の先端のブラシ2aの移動可能範囲が拡がるので、術者は、その広がった移動可能範囲の全域について眼内物質の吸引等の処理を行うことができるようになる。
【0047】
しかも、接続部5は、単に一つの屈曲部を介在させるのではなく、眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続することで、これらの各中心軸A2,A3を非同軸にしている。そのため、眼内挿入部2の眼内への挿入方向または挿入後の移動方向とハンドル部3を持つ術者の手指の操作方向とが懸け離れてしまうことがなく、術者が操作時に違和感を覚えてしまうのを抑制することができる。
【0048】
これらのことから、本実施形態のバックフラッシュニードル1によれば、従来構成の場合に比べると、術者にとっての操作性向上を図ることができる。
【0049】
特に、本実施形態のバックフラッシュニードル1は、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3を平行にオフセットさせている。つまり、眼内挿入部2の移動方向等とハンドル部3の操作方向とが単に懸け離れないようにするだけではなく、それぞれが同方向となるようにしている。したがって、術者が操作時に違和感を覚えてしまうのを確実に抑制することができ、より一層の操作性向上を図ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態のバックフラッシュニードル1は、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3のオフセット量L1について、術者の指の大きさを考慮して決定された所定値に設定されており、より詳しくは調整弁3cを操作する人差し指Fと同程度の大きさの値を所定値としている。つまり、術者の人差し指Fが入り込んで収納されたような状態になるオフセット量を確保しつつ、眼内挿入部2の中心軸A2がハンドル部3の中心軸A3から極力離れ過ぎないようにしている。このように、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3を平行にオフセットさせつつ、そのオフセット量L1を術者の指Fの大きさを基準にして設定することは、術者にとっての操作性向上を図る上で最も好適な態様であると言える。
【0051】
また、本実施形態のバックフラッシュニードル1は、術者が指Fで操作する調整弁3cが形成されている場合に、その調整弁3cが形成されている方向とハンドル部3からの眼内挿入部2のオフセット方向とが一致している。そのため、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3をオフセットさせる場合であっても、術者にとって極めて自然な操作感を実現することができ、この点でも術者にとっての操作性向上を図ることができる。
【0052】
<5.変形例等>
以上に本発明の実施形態を説明したが、上述した開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。すなわち、本発明の技術的範囲は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではない。
以下に、上述した実施形態以外の変形例について説明する。
【0053】
(バックフラッシュニードルの変形例)
図4は、本発明が適用されたバックフラッシュニードルの他の構成例を示す説明図である。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3のオフセット量L1が術者の指の大きさを基準にして設定されている場合を例に挙げたが、オフセット量の大きさがこれに限定されることはなく、少なくとも術者の人差し指Fが入り込んで収納されたような状態になる大きさを確保したものであればよい。したがって、例えば
図4(a)に示すように、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3のオフセット量L2は、成人の人差し指の厚さ(例えば10〜15mm程度)を超える大きさ(例えば17.5mm±0.5mmの範囲内に属する量)に設定されていてもよく、このような構成例の場合であっても従来構成に比べると術者にとっての操作性向上を図ることができる。
【0055】
また、上述した実施形態では、接続部5が眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3を平行にオフセットさせている場合を例に挙げたが、各中心軸A2,A3は必ずしも平行である必要はない。つまり、接続部5は、眼内挿入部2とハンドル部3を略クランク状に接続するものであればよく、ここでいう略クランク状には眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3が平行でない場合も含む。したがって、例えば
図4(b)に示すように、接続部5は、略クランク状を構成するための二つの屈曲部における屈曲角度が互いに相違しており、眼内挿入部2とハンドル部3の各中心軸A2,A3を平行ではない状態に接続するものであってもよい。このような構成例の場合であっても、略クランク状のオフセット部分に指が入り込んで収納されたような状態になり、しかも単に一つの屈曲部を介在させた場合とは異なり眼内挿入部2の先端方向と術者の操作方向とが懸け離れてしまうことがないので、術者にとっての操作性向上を図ることができる。
【0056】
(眼科手術器具の変形例)
上述した実施形態では、本発明が適用される眼科手術器具の一つとしてバックフラッシュニードル1を例に挙げているが、硝子体手術で使用するために眼内に挿入される針状の眼内挿入部と術者が手指で持つ棒状のハンドル部とを備えて構成されたものであれば、バックフラッシュニードル1以外にも本発明を適用することが可能である。
【0057】
本発明を適用可能なバックフラッシュニードル1以外の眼科手術器具としては、例えば、眼内挿入部の先端部分に鉗子が取り付けられたマイクロ鉗子、眼内挿入部の先端部分に剪刀が取り付けられたマイクロ剪刀、眼内挿入部の先端部分に異物掃き取り用の接触子が取り付けられたダイヤモンドスイーパー、眼内挿入部の先端部分に鉤爪が取り付けられたメンブレンピック等が挙げられる。これらの眼科手術器具についても、眼内挿入部とハンドル部の各中心軸が非同軸となるように各々を略クランク状に接続すれば、術者にとっての操作性向上を図ることができる。
【0058】
つまり、本発明を適用可能な眼科手術器具は、針状の眼内挿入部と棒状のハンドル部とを備えたものであればよい。その場合に、眼内挿入部は、針状のものであれば、中空針状であってもよいし、中実針状であってもよい。ハンドル部についても、棒状のものであれば丸棒状や角棒状等のように外形形状が特に限定されるものではなく、また筒状(中空状)であってもよいし、中実状であってもよい。