【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
まず、本実施例における各測定方法を以下に示す。
[重量平均分子量(Mw)]
重量平均分子量(Mw)は、Waters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(RI検出器:Waters社製2414、カラム:SHODEX社製LF−GおよびLF−804、カラム温度:40℃、流速:1mL/min、溶離液:クロロホルム)により、ポリスチレン標準サンプルにより作成した検量線との比較により重量平均分子量を算出した。
【0035】
[タクチシチー(立体規則性)の評価]
タクチシチーは重クロロホルムに溶解したポリマンデル酸の核磁気共鳴分析(日本電子製 核磁気共鳴装置 ECA500)により、
1H−NMRから算出する。ポリマンデル酸のタクチシチーに関するスペクトルデータによる評価方法はこれまで知られていない。
1H−NMRスペクトルにより得られるマンデル酸ユニットのメチンプロトンのピークに由来するシングレットは図に見られるように10本存在することから、ペンタドシーケンスまで読み取ることができる。マンデル酸の不斉炭素をDL標記し、DDやLLのようなメソダイアドを“m”、DLやLDのようなラセモダイアドを“r”とし、mおよびrをポリマンデル酸中に見出す存在確
率をそれぞれP
mおよびP
rとすると、ポリマンデル酸において出現するペンタッドがベルヌーイ統計に従うと仮定した場合、P
r=1―P
mであるから、P
r4=(1−P
m)
4である。ここで、全メチンプロトンが検出される5.91ppm〜6.08ppmの積分強度の総和をI
totalとした場合、[rrrr]が見出される6.08ppmの積分強度I
rrrrとすると、これらの関係式は(1)のように表記可能であり、以下の式(2)によりP
mの値を算出することができる。
(I
rrrr/I
total)×100=(1−P
m)
4・・・・式(1)
P
m = 1−{(I
rrrr/I
total)×100}
0.25・・・・式(2)
【0036】
[比旋光度]
全自動旋光計 AUTOPOL V (Rudolph Reserch Analytical)を用いた。試料を、試料濃度0.500g/dLとなるようクロロホルムに溶解し、波長589nm(タングステンハロゲンランプ、波長フィルター)、25℃、セル長100mmで測定した。旋光度αを5回測定し、その平均値を以下の式を用いて比旋光度の値とした。
比旋光度[α] = (100 × α)/(c × l)
c:試料濃度(g/dL)、l:セル長(100mm)
【0037】
[5%熱重量減少]
TG−DTA(島津製作所社製)により算出した。アルミパンに試料を約10mg秤量し、空気下において10℃/minの昇温速度で450℃まで昇温したときの重量減少温度を測定した。
【0038】
[ガラス転移温度]
DSC(島津製作所社製 D50)により算出した。アルミパンに試料を秤量しシールした。窒素下、10℃/minの昇温速度で260℃まで昇温した後、室温まで急冷し、再び10℃/minで280℃まで昇温したときのガラス転移の中間点の温度をガラス転移温度とした。
【0039】
[面内位相差(Re)および厚み方向の位相差(Rth)の測定]
大塚電子(株)製測定装置RETS−100を用いて、23℃、相対湿度50%にて波長550nmにおける位相差を測定した。
【0040】
[実施例1]
攪拌装置、冷却管および滴下ロートを備え付けた500mLのセパラブルフラスコに、DL−マンデル酸(和光純薬工業社製)43.7g(0.287mol)、ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製)とp−トルエンスルホン酸(和光純薬工業社製)との1:1混合物をトルエンにより共沸脱水して調整したジメチルアミノピリジン・p−トルエンスルホン酸塩18.6g(0.0632mol、22mol%)および脱水ジクロロメタン(和光純薬工業社製)100mLを装入した。窒素雰囲気下、混合した溶液を−5℃に冷却した後、ジイソプロピルカルボジイミド(東京化成工業社製)47.12g(0.3734mol、1.3当量)を滴下ロートから系内にゆっくり滴下した。滴下終了後、滴下ロート内を脱水ジクロロメタン30mLで洗浄した。滴下終了後、30分攪拌した時点で反応液の粘度が上昇したため脱水ジクロロメタン70mL追加添加した。反応開始4時間後、反応液をクロロホルム100mLで希釈した後、激しく攪拌したメタノール700mL中へ排出した。得られた白色沈殿をろ過、メタノール洗浄し、さらにメタノール中でホモミキサーにより攪拌することで福生成物を除去した後、ろ過し、減圧乾燥した。得られた白色粉末をジメチルホルムへ溶解し、ろ過した溶液を蒸留水中へ再沈殿させることでポリマーを精製した。
【0041】
得られたポリマンデル酸の収量は32g、収率は83%であった。得られたポリマンデル酸の
1H−NMRのスペクトルを
図1の(a)に示した。
1H−NMRのスペクトルから、P
m=0.5であり、アタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。クロロホルム中での比旋光度は0°、重量平均分子量は44.5万、ガラス転移温度は99℃、5%重量減少温度は299℃であった。
【0042】
[実施例2]
DL−マンデル酸の代わりにD−マンデル酸(和光純薬工業社製)24.7g(0.1624mol)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたポリマンデル酸の収量は19.0g、収率は87.2%であった。得られたポリマンデル酸の
1H−NMRのスペクトルを
図1の(c)に示した。
1H−NMRのスペクトルから、P
m=1.0であり、アイソタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。クロロホルム中での比旋光度は−142°、重量平均分子量は35.6万、ガラス転移温度は109℃、5%重量減少温度は299℃であった。
【0043】
[
参考例1]
実施例2と同様に反応を行った後、メタノール中におけるメタノリシスにより重量平均分子量を調節した。得られたポリマンデル酸の重量平均分子量は10.5万、ガラス転移温度は105℃、5%重量減少温度は299℃であった。
1H−NMRのスペクトルから、アイソタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。
【0044】
[実施例4]
DL−マンデル酸の代わりにL−マンデル酸(和光純薬工業社製)20.0g(0.13145mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたポリマンデル酸の収量は15.8g、収率は89.8%であった。得られたポリマンデル酸の
1H−NMRのスペクトルを
図1の(d)に示した。
1H−NMRのスペクトルから、P
m=1.0であり、アイソタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。クロロホルム中での比旋光度は+132°、重量平均分子量は27.4万、ガラス転移温度は106℃であった。
【0045】
[実施例5]
DL−マンデル酸の代わりにL−マンデル酸(和光純薬工業社製)15.0gおよびD−マンデル酸(和光純薬工業社製)5.0g(マンデル酸として0.13145mol)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたポリマンデル酸の収量は14.9g、収率は84.7%であった。得られたポリマンデル酸の
1H−NMRのスペクトルを
図1の(b)に示した。
1H−NMRのスペクトルから、P
m=0.7であり
アタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。重量平均分子量は27.4万、ガラス転移温度は97℃であった。
【0046】
[実施例6]
DL−マンデル酸の代わりにD−マンデル酸(和光純薬工業社製)17.97g(0.118mol)およびピューラック社製90%乳酸を減圧脱水した脱水L−乳酸1.18g(0.0131mol)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたL−乳酸ユニットが10モル%共重合されたポリマンデル酸の収量は14.99g、収率は89.3%であった。
1H−NMRスペクトルから、目的物が得られていることを確認した。重量平均分子量は28.8万、ガラス転移温度は105℃であった。
【0047】
[実施例7]
DL−マンデル酸の代わりにDL−マンデル酸(和光純薬工業社製)17.97g(0.118mol)および脱水DL−乳酸1.18g(0.0131mol)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたDL−乳酸ユニットが10モル%共重合されたポリマンデル酸の重量平均分子量は33.5万、ガラス転移温度は88℃であった。
【0048】
[実施例8]
実施例1で得られたアタクチックポリマンデル酸約3gを、厚み50μmのポリイミドフィルムを4枚重ねて作成した直径110mmの円形の型を用いてアルミニウム板に挟み、200℃で5分間予熱後、1分間2MPaで真空プレスした。室温で10MPaに急冷プレスし、厚み200μmの透明フィルムを得た。
得られたシートを50mm×100mmに切り出し、チャック幅10mm、チャック間距離30mm、幅100mmとなるように一軸延伸装置にセットし、130℃で5分間予熱後、10mm/分の延伸速度で5倍まで一軸延伸し、厚み50μmの一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムの位相差を上述した方法により分析したところ、Reは7nm、Rthは23nmであった。
【0049】
[実施例9]
実施例1で得られたアタクチックポリマンデル酸の代わりに実施例2で得られたアイソタクチックポリマンデル酸を用いた以外は実施例8と同様に厚み200μmの透明フィルムを調整した。さらに実施例8と同様に厚み50μmの一軸延伸フィルムを作成した。
得られた一軸延伸フィルムの位相差を上述した方法により分析したところ、Reは323nm、Rthは−163nmであった。
【0050】
[比較例1]
実施例1と同様に反応を行った後、メタノールによるメタノリシスにより重量平均分子量を調節した。得られたポリマンデル酸の重量平均分子量は13万、ガラス転移温度は100℃であった。
1H−NMRのスペクトルから、アタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。
得られたアタクチックポリマンデル酸約3gを、厚み50μmのポリイミドフィルムを4枚重ねて作成した直径110mmの円形の型を用いてアルミニウム板に挟み、200℃で5分間予熱後、1分間2MPaで真空プレスした。室温で10MPaに急冷プレスしたところ脆く、フィルム状にならなかった。
【0051】
[比較例2]
実施例1と同様に反応を行った後、メタノールによるメタノリシスにより重量平均分子量を調節した。得られたポリマンデル酸の重量平均分子量は2万であった。
1H−NMRスペクトルから、アタクチックポリマンデル酸が得られていることを確認した。
得られたアタクチックポリマンデル酸約3gを、厚み50μmのポリイミドフィルムを4枚重ねて作成した直径110mmの円形の型を用いてアルミニウム板に挟み、200℃で5分間予熱後、1分間2MPaで真空プレスした。室温で10MPaに急冷プレスしたところ、非常に脆くフィルム状にならなかった。