(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164861
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】銅または銅合金用エッチング液およびこれを用いた銅または銅合金のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/18 20060101AFI20170710BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20170710BHJP
H05K 3/06 20060101ALN20170710BHJP
【FI】
C23F1/18
H01L21/308 F
!H05K3/06 N
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-27543(P2013-27543)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-156629(P2014-156629A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年9月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120386
【氏名又は名称】株式会社JCU
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 宣広
(72)【発明者】
【氏名】小田 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】文蔵 隆志
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−262374(JP,A)
【文献】
特開2002−266088(JP,A)
【文献】
特表2011−523790(JP,A)
【文献】
特開2005−330572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00−4/04
H01L 21/308
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素および硫酸を含有し、硫酸の含有量が0.1〜500g/Lであり、過酸化水素の含有量が0.1〜1g/Lであり、過酸化水素と硫酸の比率が、g/L単位で、1:2.5以上であることを特徴とする銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングし、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂またはカバーレイを強固に密着できる表面にするためのエッチング液。
【請求項2】
更に、銅イオンを含有するものである請求項1記載の銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングし、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂またはカバーレイを強固に密着できる表面にするためのエッチング液。
【請求項3】
更に、ハロゲンイオンを含有するものである請求項1または2記載の銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングし、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂またはカバーレイを強固に密着できる表面にするためのエッチング液。
【請求項4】
pHが4以下のものである請求項1〜3の何れかに記載の銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングし、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂またはカバーレイを強固に密着できる表面にするためのエッチング液。
【請求項5】
銅または銅合金の表面を、請求項1〜4の何れかに記載の銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングし、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂またはカバーレイを強固に密着できる表面にするためのエッチング液で処理することを特徴とする銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングし、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂またはカバーレイを強固に密着できる表面にする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅または銅合金の表面をナノメートルのオーダーでエッチングすることのできるエッチング液およびそれを用いた銅または銅合金のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板を製造する際には、銅張積層板の不要部分の銅を薬品で溶解除去し、回路を形成する工程(エッチング工程)を行っている。また、このエッチング工程に先立ち、感光性樹脂(ドライフィルムレジスト:DFR)を銅表面に張り付け、露光、現像し、銅表面にDFRによる回路のマスクを形成している。このDFRと銅表面とが強固に密着していないと、エッチング工程時にDFRが銅表面から浮き、回路が断線し、所望の回路が得られず不良となる。そのため、DFRと銅表面とを密着させる方法として、古くはバフ研磨、ブラシ研磨、スクラブ研磨あるいはベルトサンダー研磨のような機械的研磨によって銅表面を粗化する方法が採用されていた。
【0003】
しかしながら、プリント基板の高密度化、細線化、薄化が進み、特にフレキシブル回路基板に代表されるような薄物には、研磨機の構造上あるいは機械的な力を加えることによる基板の伸びによる寸法精度の低下が問題となり、機械的な研磨では対応できなくなった。そこで、機械的な研磨から薬品を使用した化学的研磨へと研磨方法が移行してきた。
【0004】
これまで化学的研磨の方法としては、例えば、特許文献1〜7に開示されているような酸と過酸化水素を含み、更に必要によりアゾール類等を含み、過酸化水素が数g〜数百g/L程度であるエッチング液が提案されている。そしてこれらのエッチング液はマイクロメートルオーダーでのエッチングを目的としている。
【0005】
また、近年のセミアディティブ工法に代表されるDFRをめっきレジストとして使用する場合、下地の銅シード層は1μm以下と非常に薄いため、同箇所に上記エッチング液を用いてナノメートルオーダーのエッチングをしようとすると、エッチング速度が速いため制御がし難く、また、仮にナノメートルオーダーのエッチングができたとしても粗化も不十分であるため実用できない。そのため、現状はエッチングの代わりに酸脱脂が用いられることが殆どであり、DFRの高密着が期待できない。
【0006】
また、より近年では銅シード層と結合している絶縁樹脂層は銅回路の表皮抵抗の懸念から、表面粗さ(Ra)も300nm以下であることが要求され、それに伴い絶縁樹脂表層の粗化に関しても低減対策が要求されている。更に、絶縁樹脂層の平滑化に伴い、シード層も平滑に仕上るため、DFRとのアンカー効果も低下してしまい、密着性の確保がより一層困難となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4280171号
【特許文献2】特許第3471610号
【特許文献3】特開平10−56263号公報
【特許文献4】特許第2740768号
【特許文献5】特許第4033611号
【特許文献6】特許第4881916号
【特許文献7】特開2011−80131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、ナノメートルオーダーでのエッチングにより、銅や銅合金を微細に粗化させ、DFR、絶縁樹脂等を強固に密着できる表面に仕上げることのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、意外にも過酸化水素および無機オキソ酸を含有するエッチング液において、過酸化水素の含有量を従来と比較してごく少量の範囲にすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は過酸化水素および無機オキソ酸を含有し、過酸化水素の含有量が0.1〜1g/Lであることを特徴とする銅または銅合金用エッチング液である。
【0011】
また、本発明は銅または銅合金を上記銅または銅合金用エッチング液で処理することを特徴とする銅または銅合金のエッチング方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅または銅合金を制御よくナノメートルオーダーで微細に粗化できるため、DFR、絶縁樹脂等を強固に密着できる表面に仕上げることができる。
【0013】
また、本発明に用いられるエッチング液は、従来のエッチング液における過酸化水素および無機オキソ酸の使用濃度に比べ、20分の1以下の濃度で使用することができるため、廃液する際の中和廃液の負荷低減も図れ、環境配慮にも優れたエッチング液である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は試験例1において実施例1のエッチング液を用いて銅張り積層板をエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図2】
図2は試験例1において実施例2のエッチング液を用いて銅張り積層板をエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図3】
図3は試験例1において実施例7のエッチング液を用いて銅張り積層板をエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図4】
図4は試験例1において比較例1のエッチング液を用いて銅張り積層板をエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図5】
図5は試験例2において実施例1のエッチング液を用いて銅張り積層板に銅皮膜を3μmの厚さで施したものをエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図6】
図6は試験例2において実施例2のエッチング液を用いて銅張り積層板に銅皮膜を3μmの厚さで施したものをエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図7】
図7は試験例2において実施例7のエッチング液を用いて銅張り積層板に銅皮膜を3μmの厚さで施したものをエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【
図8】
図8は試験例2において比較例1のエッチング液を用いて銅張り積層板に銅皮膜を3μmの厚さで施したものをエッチングした後の表面状態のSEM像(1万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の銅または銅合金用エッチング液(以下、「本発明のエッチング液」という)は、過酸化水素および無機オキソ酸を含有し、過酸化水素の含有量が0.1〜1g/L、好ましくは0.12〜0.9g/L、より好ましくは0.15〜0.8g/Lのものである。
【0016】
また、本発明のエッチング液に含有される無機オキソ酸の種類は、特に限定されず、例えば、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらの無機オキソ酸は1種または2種以上を用いることができる。本発明のエッチング液における無機オキソ酸の含有量も特に限定されないが、例えば、0.1〜500g/Lであり、好ましくは0.3〜200g/Lである。より具体的に無機オキソ酸として硫酸を用いる場合には、例えば、0.1〜200g/Lが好ましく、0.3〜100g/Lがより好ましく、0.4〜50g/Lが特に好ましい。なお、廃水処理を懸念する場合、硫酸の量は0.4〜5g/Lが適切である。
【0017】
なお、本発明のエッチング液における過酸化水素と無機オキソ酸の比率は特に限定されないが、例えば、過酸化水素と、無機オキソ酸として硫酸を用いる場合の比率は、g/L単位で、1:1.5、好ましくは1:2、より好ましくは1:2.5以上である。
【0018】
更に、本発明のエッチング液には、更に、Cu
2+等の銅イオンを含有させてもよい。本発明エッチング液における銅イオンの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜80g/Lが好ましく、0.5〜50g/Lがより好ましく、1〜40g/Lが特に好ましい。なお、銅イオン源としては、特に限定されないが、例えば、硫酸銅・5水和物等の水溶性の銅塩や、金属銅等が挙げられる。
【0019】
また更に、本発明のエッチング液には、更に、ハロゲンイオンを含有させてもよい。本発明エッチング液におけるハロゲンイオンの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.00001〜0.05g/Lであり、好ましくは0.00001〜0.02g/Lである。より具体的にハロゲンイオンとして塩素イオンを用いる場合には、例えば、0.05〜10mg/Lが好ましく、0.1〜5mg/Lがより好ましく、0.5〜3mg/Lが特に好ましい。なお、ハロゲンイオン源としては、特に限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩酸、塩化第二銅等が挙げられる。
【0020】
なお、本発明のエッチング液のpHは、特に限定されないが、例えば、4以下、好ましくは0.5〜2である。なお、廃水処理を懸念する場合には、pHは1.3〜2.3が好ましい。
【0021】
本発明のエッチング液は、必須成分である過酸化水素および無機オキソ酸と、必要により銅イオン源、ハロゲンイオン源を、水に溶解させることによって調製することができる。この時、過酸化水素は分解しやすい性質から、別途公知である過酸化水素の安定剤となる物質、例えば、プロパノール等のアルコール類やエチレングリコール等のグリコールエーテル類等を含有させてもよい
【0022】
なお、本発明のエッチング液の好ましい態様としては、以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)過酸化水素および無機オキソ酸を含有し、過酸化水素の含有量が0.1〜1g/Lであるエッチング液
(2)過酸化水素および無機オキソ酸のみを含有し、過酸化水素の含有量が0.1〜1g/Lであるエッチング液
(3)過酸化水素および無機オキソ酸と、銅イオンおよび/または塩素イオンのみを含有し、過酸化水素の含有量が0.1〜1g/Lであるエッチング液
【0023】
斯くして得られる本発明のエッチング液で、銅または銅合金を銅溶解量から算出したエッチング量としてナノメーターのオーダー、好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜300nmでエッチングすることができる。このエッチングにより表面粗さ(Ra)300nm以下の要求を満たすことができる。
【0024】
本発明のエッチング液で処理される銅または銅合金としては、純銅、黄銅、青銅、白銅、ベリリウム銅等が挙げられ、また、具体的な形態としては、エッチング対象となる被処理物の表面に銅または銅合金を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅張積層板の電解銅(銅合金)箔または圧延銅(銅合金)箔、銅張積層板上の電解銅(銅合金)めっき、樹脂上に形成された無電解銅(銅合金)等が挙げられる。
【0025】
本発明のエッチング液で銅または銅合金を処理するには、従来公知のエッチング液を用いた処理方法が利用でき、例えば、エッチング液を入れた処理槽内に、表面に銅または銅合金を有する被処理物を浸漬する方法、エッチング液を被処理物にスプレーする方法等が挙げられる。これらの方法の中でもスプレーする方法が均一に粗化できることから好ましい。また、浸漬する方法においては、被処理物の表面にエッチング液との液流を当てるようにすることが好ましい。
【0026】
また、上記処理における処理温度は、特に限定されないが、例えば、エッチング液の液温は10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。また、処理時間は、使用するエッチング液の組成、液温、エッチング対象物の銅層の状態(厚さや表面状態)、目的とするエッチング量等により適宜決定されるので特に限定されないが、例えば、3〜300秒、好ましくは10〜120秒である。
【0027】
上記のようにして本発明のエッチング液で銅または銅合金にエッチングを行った後は、銅または銅合金を十分に洗浄し、乾燥させ、次の工程に用いればよい。次の工程としては、特に限定されないが、例えば、DFR、ソルダーレジスト、層間絶縁樹脂、カバーレイ等の塗布・接着工程が挙げられる。
【0028】
なお、本発明のエッチング液で処理を行う好ましい態様としては、銅張積層板とDFRを用いたプリント配線基板の製造工程における以下の処理(1)〜(3)が挙げられる。
(1)銅張積層板の電解銅(銅合金)箔または圧延銅(銅合金)箔への表面処理
(2)銅張積層板上の電解銅(銅合金)めっきへの表面処理
(3)樹脂上に形成された無電解銅(銅合金)めっきへの表面処理
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
実 施 例 1
エッチング液の調製:
硫酸0.7g/L、過酸化水素0.3g/L、過酸化水素の安定剤としてプロパノール0.5g/Lを含む水溶液を調製し、これをエッチング液とした(pH:1.8)。
【0031】
実 施 例 2
エッチング液の調製:
硫酸0.7g/L、過酸化水素0.3g/L、硫酸銅・5水和物20g/L(銅イオンとして5g/L)、過酸化水素の安定剤としてプロパノール0.5g/Lを含む水溶液を調製し、これをエッチング液とした(pH:2.2)。
【0032】
実 施 例 3
エッチング液の調製:
硫酸を0.4g/L、過酸化水素を0.15g/Lに代えたこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を調製した(pH:2.0)。
【0033】
実 施 例 4
エッチング液の調製:
硫酸を2.5g/L、過酸化水素を0.8g/Lに代えたこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を調製した(pH:1.7)。
【0034】
実 施 例 5
エッチング液の調製:
硫酸を3.5g/L、過酸化水素を1.0g/Lに代えたこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を調製した(pH:1.4)。
【0035】
実 施 例 6
エッチング液の調製:
硫酸を0.7g/L、過酸化水素を0.3g/L、硫酸銅・5水和物を80g/L(銅イオンとして20g/L)に代えたこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を調製した(pH:2.1)。
【0036】
実 施 例 7
エッチング液の調製:
更に、塩化ナトリウムを3.3mg/L(塩素イオンとして2mg/L)を加えたこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を調製した(pH:2.2)。
【0037】
実 施 例 8
エッチング液の調製:
硫酸を90g/Lに代えたこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を調製した(pH:0.3)。
【0038】
比 較 例 1
エッチング液の調製:
硫酸90g/L、過酸化水素20g/L、硫酸銅・5水和物20g/L、過酸化水素の安定剤としてプロパノール0.5g/Lを含む水溶液を調製し、これをエッチング液とした(pH:0.3)。
【0039】
比 較 例 2
エッチング液の調製:
硫酸を45g/L、過酸化水素を10g/Lに代えたこと以外は、比較例1と同様にしてエッチング液を調製した(pH:0.5)。
【0040】
比 較 例 3
エッチング液の調製:
硫酸を1g/Lに代えたこと以外は、比較例1と同様にしてエッチング液を調製した(pH:1.7)。
【0041】
試 験 例 1
エッチング試験:
各実施例および比較例で調製したエッチング液を各々200mLガラスビーカに入れ、液温を30℃に保ち、その液中に市販の銅張積層板(日立化成工業社製、商品名:MCL−E67)の試験片(5cm×5cm)を浸漬し、エッチング量(銅溶解量から算出)が100nm程度となるよう処理時間を調整して処理を行った。この処理後に得られた試験片は十分に水洗し、乾燥させた。これらの試験片について、その表面状態を走査電子顕微鏡写真(SEM)観察(1万倍)を行い、以下の評価基準で表面仕上がり状態を判断した。また、表面処理後の銅張積層板の表面に粘着テープ(積水化学社製のポリエステルテープ、商品名:LITHOGRAPHIC)を圧着後、テープを剥離し、銅張り積層板の銅表面に残存するテープ糊の転着状態を目視で調べ、以下の評価基準で評価を行った。これらの結果を処理時間とエッチング量と共に表1に示した。また、実施例1、2、7および比較例1のエッチング液を用いて銅張り積層板をエッチングした後の表状態のSEM像(1万倍)を
図1〜4に示した。
【0042】
<仕上がり状態の評価基準>
(評価) (内容)
○ : 表面に微細な凹凸が形成されている。
× : 表面に微細な凹凸が形成されていない。
【0043】
<密着性の評価基準>
(評価) (内容)
○ : テープ糊の転着が一部でもある。
× : テープ糊の転着が全て欠損している。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1〜8のエッチング液を用いた場合は、エッチングの速度がエッチング量の目標である100nm程度とするのに都合がよく、更に微細な凹凸形状も形成されため仕上がり状態がよく、密着性もよかった。一方、比較例1〜3のエッチング液を用いた場合では、エッチングの速度が速く100nm程度に合わせることが困難な上、微細な凹凸形状も形成されなかったため密着性もよくなかった。また、実施例2〜8のエッチング液により、エッチング液に銅イオンや塩素イオンが存在しても性能に影響がなく、更に粗化状態がよいことが分かった。
【0046】
試 験 例 2
エッチング試験:
試験片を、市販の銅張積層板(日立化成工業社製、商品名:MCL−E67)に、硫酸銅めっき液(株式会社JCU製、商品名:キューブライトVFII)を用いて電気めっきを行い、銅皮膜を3μmの厚さで施したものに代えたこと以外は、試験例1と同様にしてエッチング試験を行った。また、試験例1と同様にして仕上がり状態および密着性を判断した。これらの結果を処理時間とエッチング量と共に表2に示した。また、実施例1、2、7および比較例1のエッチング液を用いて銅張り積層板に銅皮膜を3μmの厚さで施したものをエッチングした後の表状態のSEM像(1万倍)を
図5〜8に示した。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例1〜8のエッチング液を用いた場合は、エッチングの速度がエッチング量の目標である100nm程度とするのに都合がよく、更に微細な凹凸形状も形成されため仕上がり状態がよく、密着性もよかった。一方、比較例1〜3のエッチング液を用いた場合では、エッチングの速度が速く100nm程度に合わせることが困難な上、微細な凹凸形状も形成されなかったため密着性もよくなかった。また、実施例2〜8のエッチング液により、エッチング液に銅イオンや塩素イオンが存在しても性能に影響がなく、更に粗化状態がよいことが分かった。
【0049】
試 験 例 3
ピール強度の測定:
積層用樹脂の密着性の確認として、試験例2の実施例5または比較例1で使用した、エッチング処理後の硫酸銅めっき(株式会社JCU製、商品名:キューブライトVFII)基板表面に対して、市販のラミネートタイプ樹脂(味の素ファインテクノ製:ABF−GX−92)を真空ラミネート法の標準条件で積層した。積層後にピール強度を測定した(JIS:C6481に準拠)。その結果を表3に示した。
【0050】
【表3】
【0051】
ピール強度測定の結果、実施例5のエッチング液を用いた場合は、比較例1の従来のエッチング液を用いた場合と比較して2倍ものピール強度が得られた。これは実施例5のエッチング液により銅めっき表面に微細な凹凸が形成され、それによるアンカー効果によって密着性が向上したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のエッチング液は、銅または銅合金をナノメートルのオーダーでエッチングすることができるので、著しい薄化が進むプリント基板の製造プロセスにおける銅または銅合金表面の微細凹凸による高密着仕上げ処理としてきわめて有用な手段である。
以 上