(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明によるパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図であり、
図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。また
図3は
図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。また、
図4は
図3に示すD−D線に沿った圧電振動子の断面図であり、
図5は圧電振動子の分解斜視図である。なお、
図1では、後述する保護膜を鎖線で示し、
図5では保護膜の図示を省略している。
図1〜
図5に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2aに設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0019】
パッケージ10は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板(第2基板)3が接合材23を介して積層され、互いに陽極接合されることで形成された積層体15と、積層体15の表面に形成された保護膜11と、を備えている。
【0020】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2bに向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0021】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の裏面3b側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の裏面3b側には、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとが形成されている。
【0022】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0023】
このように構成された圧電振動片5は、
図2、
図3,
図5に示すように、導電性接着剤や金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上に接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0024】
そして、ベース基板2の表面2b側(リッド基板3が接合される接合面側)には、Alからなる陽極接合用の接合材23が形成されている。この接合材23は、膜厚が例えば3000Å〜5000Å程度に形成され、リッド基板3の額縁領域3cに対向するようにベース基板2の外周部分に沿って形成されている。そして、接合材23とリッド基板3の額縁領域3cとが陽極接合されることで、キャビティCが真空封止されている。
【0025】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2a(ベース基板2における接合面とは反対側の面)における長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。なお外部電極6,7の側面(外周縁)は、ベース基板2の側面2cよりも内側に位置している。
【0026】
貫通電極8,9は、スルーホール21,22に対して一体的に固定された、導電性の金属材料からなる芯材部31によって形成されたものであり、スルーホール21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導電性の芯材部31を通して導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0027】
芯材部31は、径が小さく断面積の小さい略円形の一方の端部と径が大きく断面積の大きい略円形の他方の端部とが滑らかに略同軸状に接続された略円錐台状をなしている。芯材部31は、その径が小さい一方の端部をベース基板2の上面に露出させ、その径が大きい他方の端部をベース基板2の底面に露出させている。つまり、芯材部31の長さは、ベース基板2の厚さと同じとなっている。芯材部31は、ガラス材料からなるベース基板2に対して溶着によって固定されている。なお、芯材部31は、例えば、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)などの、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)導電性の金属材料により形成されている。
【0028】
ここで、上記ベース基板2とリッド基板3とを接合材23を介して積層して形成された積層体15では、この積層体15の側面15aに、接合材23とその両側のベース基板2およびリッド基板3に跨って、傾斜面18が形成されている。言い換えると、傾斜面18は、ベース基板2、接合材23およびリッド基板3に跨って形成されている。この傾斜面18は、ベース基板2の側面2cにおいて後述する積層方向の中間部2mからリッド基板3の表面3dとの境界部3mにかけて形成されている。つまり、リッド基板3においては、側面3eの全域が傾斜面18とされている。傾斜面18は、ベース基板2とリッド基板3の積層方向(
図1、
図3、
図4中、Z方向)に対して傾斜し、ベース基板2の中間部2mからリッド基板3の境界部3mに向けて、積層体15の内方に漸次向かうよう形成されている。これにより、傾斜面18には、ベース基板2とリッド基板3との間から接合材23が露出している。
また、積層体15の側面15aの一部を構成するベース基板2の側面2cには、中間部2mで傾斜面18に連続し、ベース基板2とリッド基板3との積層方向(Z方向)に沿う鉛直面19が形成されている。
なお、傾斜面18は、積層体15の側面15aの全周にわたって形成されていて、積層体15は、四角錐台状に形成されている。
【0029】
このような積層体15では、短手方向(
図1〜
図4中、X方向)の外寸を1.2〜2.5mm、長手方向(
図1〜
図4中、Y方向)の外寸を1.6〜3.2mm、高さ方向(
図1〜
図4中、Z方向)の厚さが0.4〜0.5mmとしてもよい。また、積層体15の内部に形成されたキャビティCを、その高さが160〜200μmとしてもよい。そして、リッド基板3の額縁領域3cの幅を100〜150μmとしてもよい。
また、上記の傾斜面18の傾斜角度(ベース基板2とリッド基板3の積層方向(Z方向)に対する傾斜角度)θを、例えば20〜30°としてもよい。
【0030】
図1、
図3、
図4に示すように、パッケージ10には、リッド基板3の表面3dから傾斜面18のみならず積層体15の側面15a全域を覆うように保護膜11が形成されている。保護膜11は、シリコン(Si)、クロム(Cr)またはチタン(Ti)等、接合材23よりも耐腐食性が高い(イオン化傾向が小さい)金属材料からなり、これら金属材料のうち、本実施形態ではSiまたはCrが好適に用いられている。これにより、保護膜11とベース基板2及びリッド基板3との密着性を向上させ、保護膜11と基板2,3との間に隙間ができたり、保護膜11が剥離したりするのを抑制できる。
【0031】
また、保護膜11は、積層体15の側面15aの傾斜面18において、ベース基板2及びリッド基板3の間から外部に露出している接合材23を覆うように形成されている。
そして、保護膜11の周縁端部11aは、ベース基板2の裏面2aと略面一に形成されている。すなわち、ベース基板2の裏面2aには保護膜11が形成されていない。この場合、上述したように外部電極6,7の側面は、ベース基板2の側面2cよりも内側に位置しているため、保護膜11の周縁端部と外部電極6,7との間は間隙部12を挟んで離間配置されている。これにより、保護膜11の材料に導電性材料を用いた場合であっても、外部電極6,7間が保護膜11によって架け渡されることがないので、外部電極6,7の短絡を防止できる。
【0032】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0033】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図7は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ(第1ウエハ)40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ(第2ウエハ)50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体(接合体)60を切断することにより複数の圧電振動子(接合片)1を同時に製造する方法について説明する。なお、
図7以下の各図に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0034】
初めに、
図6に示すように、圧電振動片作製工程を行って
図1〜
図5に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0035】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
次に、
図6,
図7に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。
具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(
図7における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。以上により、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0036】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハに一対の貫通電極8,9を配置するためのスルーホール21,22を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面40bから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール21,22を形成することができる。
【0037】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40b(
図7における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。
【0038】
次に、ベース基板用ウエハ40の表面40aに導電性材料をパターニングして、接合材23を形成する接合材形成工程を行う(S34)とともに、引き回し電極形成工程を行う(S35)。なお、接合材23はベース基板用ウエハ40におけるキャビティCの形成領域以外の領域、すなわちリッド基板用ウエハ50の裏面50aとの接合領域の全域に亘って形成する。このようにして、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0039】
次に、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)で作製されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作製工程(S10)で作製された圧電振動片5を、それぞれ導電性接着剤や金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作製工程で作製されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0040】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。この場合、本実施形態では接合材23に抵抗値が比較的低いAlを用いているため、接合材23の全面に対して均一に電圧を印加することができ、両ウエハ40,50の接合面同士が強固に陽極接合されたウエハ接合体60を簡単に形成することができる。また、陽極接合を比較的低電圧で行うことができるため、エネルギー消費量の低減を図り、製造コストを低減させることができる。
【0041】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
【0042】
図8〜
図12は個片化工程を説明するための工程図であり、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ接合体60を切断して個片化する個片化工程を行う(S90)。個片化工程(S90)では、
図8に示すように、まずUVテープ80及びリングフレーム81からなるマガジン82でウエハ接合体60を保持する。リングフレーム81は、その内径がウエハ接合体60の直径よりも大径に形成されたリング状の部材であり、厚さ(軸方向における長さ)がウエハ接合体60と同等に形成されている。また、UVテープ80はポリオレフィンからなるシート材に紫外線硬化樹脂、例えばアクリル系の粘着剤が塗布されたものである。
マガジン82は、リングフレーム81の一方の面81aから、貫通孔81bを塞ぐようにUVテープ80を貼り付けることで作成することができる。そして、リングフレーム81の中心軸とウエハ接合体60の中心軸とを一致させた状態で、UVテープ80の粘着面にウエハ接合体60を貼着する。具体的には、ベース基板用ウエハ40の裏面40b側(外部電極6,7側)を、UVテープ80の粘着面に貼着する。これにより、ウエハ接合体60がリングフレーム81の貫通孔81b内にセットされた状態となる。
【0043】
次に、
図9に示すように、円盤状の第一ダイシングソー90Aにより、上記傾斜面18の形成加工を行う。第一ダイシングソー90Aは、その外周部のブレード部90cが、第一ダイシングソー90Aの回転軸に沿った面で断面視したときに、外周側に行くにしたがい厚さが漸次薄くなるクサビ状をなしている。このクサビ状のブレード部90cの先端角度θ
2は、傾斜面18の傾斜角度θの2倍(θ
2=2×θ)に設定されている。
この第一ダイシングソー90Aは、不図示のダイシング装置によって、リッド基板用ウエハ50における表面50bに直交する面内に位置するよう支持されて、この第一ダイシングソー90Aの回転軸回りに、
図9において紙面に直交する面内で回転駆動される。この第一ダイシングソー90Aを、ウエハ接合体60を切断する位置に合わせし、ウエハ接合体60に押し当てながら、ウエハ接合体60の表面に沿った方向に相対移動させる。すると、ウエハ接合体60の表面には、第一ダイシングソー90Aのブレード部90cの先端角度θ
2に応じたV字状の溝200が形成される。この溝200の両面が、上記傾斜面18を形成する。
【0044】
次に、V字状の溝200が形成されたウエハ接合体60を、1つ1つの圧電振動子1に切断する切断工程を行う。切断工程では、
図10に示すように、円盤状の第二ダイシングソー90Bによりウエハ接合体60を切断する。第二ダイシングソー90Bは、第一ダイシングソー90Aよりもその板厚が大幅に薄く、外周部の刃先部90dも一定の板厚とされている。
この第二ダイシングソー90Bは、不図示のダイシング装置によって、リッド基板用ウエハ50における表面50bに直交する面内に位置するよう支持されて、この第二ダイシングソー90Bの回転軸回りに回転駆動される。この第二ダイシングソー90Bを、V字状の溝200に位置合わせし、ウエハ接合体60に押し当てながら、ウエハ接合体60の表面に沿った方向に相対移動させる。これにより、ウエハ接合体60は厚さ方向に切断される。
【0045】
上記のような第一ダイシングソー90Aによる溝200の形成と、第二ダイシングソー90Bによる切断とを、ウエハ接合体60の表面に沿って互いに直交する2方向で繰り返すことにより、
図11に示すように、ウエハ接合体60を複数の積層体15に分離することができる。そして、各積層体15の側面15aは、第一ダイシングソー90Aにより形成された傾斜面18と、第二ダイシングソー90Bにより形成された鉛直面19とにより形成される。
【0046】
次に、ウエハ接合体60をエクスパンド装置91内に搬送し、UVテープ80を引き延ばすエクスパンド工程を行う。
まずエクスパンド装置91について説明する。エクスパンド装置91は、リングフレーム81がセットされる円環状のベースリング92と、ベースリング92の内側に配置され、ウエハ接合体60よりも大径に形成された円板状のヒーターパネル93とを備えている。ヒーターパネル93は、ウエハ接合体60がセットされるベースプレート94に伝熱型のヒーター(不図示)が搭載されたものであり、ヒーターパネル93の中心軸がベースリング92の中心軸に一致するように配置されている。また、ヒーターパネル93は、図示しない駆動手段によって軸方向に沿って移動可能に構成されている。なお、図示しないがエクスパンド装置91は、ベースリング92上にセットされるリングフレーム81を、ベースリング92との間で挟持する押え部材も備えている。
【0047】
このような装置を用いてエクスパンド工程を行うには、まずウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする前に、後述するグリップリング85のうち、内側リング85aをヒーターパネル93の外側にセットする。この時、内側リング85aは、ヒーターパネル93に固定され、ヒーターパネル93の移動時にともに移動するようにセットされる。
なお、グリップリング85は、内径がヒーターパネル93の外径よりも大きく、リングフレーム81の貫通孔81bの内径よりも小さく形成された樹脂製のリングであり、内側リング85aと、内径が内側リング85aの外径と同等に形成された外側リング85b(
図12参照)とで構成されている。すなわち、内側リング85aは外側リング85bの内側に嵌まり込むようになっている。
【0048】
その後、マガジン82に固定されたウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする。この時、UVテープ80側(外部電極6,7側)をヒーターパネル93及びベースリング92に向けてウエハ接合体60をセットする。そして、図示しない押え部材によってリングフレーム81をベースリング92との間に挟持する。次に、ヒーターパネル93のヒーターによってUVテープ80を加熱して、UVテープ80を軟化させる。そして、
図12に示すように、UVテープ80を加熱した状態でヒーターパネル93を内側リング85aとともに上昇させる(
図12中矢印参照)。この時、リングフレーム81はベースリング92と押え部材との間で挟持されているので、UVテープ80がウエハ接合体60の径方向外側に向かって延伸する。これにより、UVテープ80に貼着されたパッケージ10同士が離間し、隣接するパッケージ10間のスペースが拡大する。そして、この状態で内側リング85aの外側に外側リング85bをセットする。具体的には、内側リング85aと外側リング85bとの間にUVテープ80を挟んだ状態で、両者を嵌め合わせる。
これにより、UVテープ80が延伸された状態でグリップリング85に保持される。そして、グリップリング85の外側のUVテープ80を切断し、リングフレーム81とグリップリング85とを分離する。
【0049】
図13は、保護膜形成工程を説明するための図であって、複数の圧電振動子がUVテープに貼り付けられた状態を示す断面図である。
次に、
図13に示すように、パッケージ10の積層体15を保護膜11によってコーティングする保護膜形成工程(S100)を行う。具体的には、まず複数の積層体15を、UVテープ80に貼り付けられた状態でスパッタリング装置のチャンバー内に搬送し、リッド基板3が保護膜11の成膜材料(ターゲット)に対向するようにセットする。この状態でスパッタリングを行うことで、リッド基板3の表面3d及び積層体15の側面15a上に成膜材料から前記積層方向に沿って飛び出した原子が付着する。これにより、リッド基板3の表面3dから積層体15の側面15aの全域に亘って、保護膜11が形成される。
【0050】
積層体15の側面15aには傾斜面18が形成され、この傾斜面18は、スパッタリング装置におけるスパッタリングにより成膜材料が飛んでくる方向(積層方向)に対して露出するよう設けられている。これにより、スパッタリングにより成膜材料から飛び出した原子が、鉛直面19に比較して大幅に付着しやすい。したがって、形成される保護膜11は、傾斜面18に沿った部分において十分な膜厚を確保することができる。
【0051】
この場合、接合材23は積層体15の側面15aに露出しているので、接合材23を覆うように保護膜11を形成するには、全てのパッケージ10において積層体15の側面15aが露出するように離間配置する必要がある。
そこで、本実施形態によれば、エクスパンド工程において複数のパッケージ10が分離した状態を利用して保護膜形成工程を行うので、全てのパッケージ10を改めて離間配置する必要がなく、製造効率を向上させることができる。すなわち、各パッケージ10間のスペースを確保した状態で保護膜11を形成できるので、各パッケージ10におけるベース基板2とリッド基板3との間から露出する接合材23に対して均一に保護膜11を形成できる。
また、エクスパンドされたUVテープ80上に複数のパッケージ10を貼り付けた状態でスパッタリングを行うことで、個片化された複数のパッケージ10に対して一括して保護膜11を形成できるので、パッケージ10に個別で保護膜11を形成する場合に比べて製造効率の向上を図ることができる。さらに、スパッタリング装置への搬送時や成膜時におけるパッケージ10の移動を抑制できる。
【0052】
また、ベース基板2の裏面2a側にUVテープ80が貼り付けられた状態で、リッド基板3側からスパッタリングを行うことで、ベース基板2の裏面2a側への成膜材料の回り込みを抑制できる。そのため、外部電極6,7への成膜材料の付着を抑制できるので、保護膜11によって各外部電極6,7間が架け渡されるのを抑制できる。これにより、保護膜11にCr等の導電性金属材料を用いた場合であっても、外部電極6,7間の短絡を抑制できる。また、本実施形態では、外部電極6,7の側面がベース基板2の側面2cよりも内側に位置しているため、保護膜11の周縁端部と外部電極6,7との間は間隙部12(
図2参照)を挟んで離間配置される。そのため、仮に成膜材料がベース基板2の裏面2a側に僅かに回り込んだとしても、保護膜11と外部電極6,7とが連続的に架け渡されるのを抑制できる。
【0053】
なお、本実施形態では、リッド基板3の表面3dに対向するように成膜材料が配置されるため、積層体15の側面15aに傾斜面18を形成したとは言え、それでも傾斜面18に比べれば、リッド基板3の表面3dの方が、成膜材料が付着し易い。成膜速度比を小さくするためには、グリップリング85(パッケージ10)を自転させながらスパッタリングを行うことが好ましい。
【0054】
次に、保護膜11が形成された圧電振動子1を取り出すためのピックアップ工程を行う。ピックアップ工程では、まずUVテープ80に対してUV照射し、UVテープ80の粘着力を低下させる。これにより、UVテープ80から圧電振動子1が剥離される。その後、画像認識等により各圧電振動子1の位置を把握して、ノズル等により吸引することで、UVテープ80から剥離された圧電振動子1を取り出していく。
なおピックアップ工程は、保護膜形成工程前に行ってもよい。この場合、例えば積層体15を別容器に移送した後、保護膜形成工程を行ってもよい。
【0055】
以上により、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片5が封止された、
図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0056】
その後、内部の電気特性検査を行う(S110)。すなわち、圧電振動片5の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
【0057】
電気特性検査及び外観検査が完了し、検査に合格した圧電振動子1に対して、最後にマーキングを施すこともできる(S120)。マーキングは、リッド基板3の表面3dに対して鉛直方向からレーザー光を照射して、リッド基板3の表面3d上の保護膜11を除去することで、製品の種類、製品番号及び製造年月日等を刻印する。
このように、保護膜11を除去してマーキングを施すことで、マーキングを施すためにめっき膜等を別途形成する必要がないので、製造効率を向上できる。
【0058】
なお、マーキング工程(S120)ではレーザー光の出力を、保護膜11のみを貫通する程度に調整することが好ましい。これにより、レーザー光がベース基板2を透過してキャビティC内に到達するのを抑制できる。つまり、レーザー光が圧電振動片5に照射されるのを抑制して、圧電振動片5へのダメージを抑制できるため、圧電振動片5の電気特性(周波数特性)に影響が及ぶのを抑制できる。
また、ベース基板2でのレーザー光の透過を確実に抑制するためには、ガラス材料での吸収率が高いレーザーを用いることが好ましく、このようなレーザーとしては、例えば波長が10.6μmのCO
2レーザーや、波長が266nmの第4高調波レーザー等を用いることが可能である。さらに、これらレーザーのうち、波長が比較的長いCO
2レーザーを用いることで、ベース基板2へのダメージをより確実に抑制できる。
【0059】
このように、本実施形態では、パッケージ10を構成する積層体15の側面15aにおいて、接合材23が露出する部分に傾斜面18を形成し、この傾斜面18に保護膜11を形成するよう構成とした。
この構成によれば、スパッタリングにより成膜材料から飛び出した原子が、傾斜面18に付着しやすく、したがって、形成される保護膜11は、傾斜面18に沿った部分においても十分な膜厚を確保することができる。これにより、スパッタリング工程に要する時間が長くなったり、消費する成膜材料の量が増大することなく、接合材23を覆う保護膜11を確実に付着させて接合材23の腐食を確実に抑制しつつ、低コスト化を図ることができる。
そして、キャビティC内の気密を長期に亘って安定した状態に維持でき、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0060】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、
図14を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、
図14に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0061】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0062】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、接合材23を覆う保護膜11を確実に付着させて接合材23の腐食を確実に抑制しつつ、低コスト化を図ることのできる圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を確実かつ低コストで提供できる。
【0063】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、
図15を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0064】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、
図15に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0065】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0066】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0067】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0068】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0069】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0070】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、接合材23を覆う保護膜11を確実に付着させて接合材23の腐食を確実に抑制しつつ、低コスト化を図ることのできる圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を確実かつ低コストで提供できる。
【0072】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、
図16を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、
図16に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0073】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0074】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0075】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0076】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、接合材23を覆う保護膜11を確実に付着させて接合材23の腐食を確実に抑制しつつ、低コスト化を図ることのできる圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を確実かつ低コストで提供できる
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0078】
例えば、上述した実施形態では、傾斜面18は、ベース基板2の中間部2mからリッド基板3の境界部3mにかけて形成したが、これに限るものではない。
例えば、
図17に示すように、ベース基板2の中間部2mからリッド基板3の中間部3sまでの領域に、上記と同様の傾斜面18を形成し、さらにこの傾斜面18の上方に、傾斜面18よりもさらに大きな傾斜角度を有した上部傾斜面18Sを形成してもよい。この上部傾斜面18Sの傾斜角度θ
3は、例えば60°程度とすることができる。
傾斜面18の上方に上部傾斜面18Sを形成するには、傾斜面18を形成するに先立ち、上部傾斜面18Sの傾斜角度θ
3の2倍の刃先角度を有した第三ブレードソー90Eによりウエハ接合体60を切削すれば良い。
【0079】
また、
図18に示すように、ベース基板2の中間部2mからリッド基板3の中間部3sまでの領域に、上記と同様の傾斜面18を形成し、さらにこの傾斜面18の上方に、リッド基板3の表面に平行な平面部98と、平面部98に直交して立ち上がる鉛直面部99と、を連続して設けるようにしてもよい。
これら平面部98および鉛直面部99を形成するには、傾斜面18を形成するに先立ち、刃先角度が90度の第四ブレードソー90Fによりウエハ接合体60を切削すれば良い。
【0080】
また、上述した実施形態では、ウエハ接合体60を、1つ1つの圧電振動子1に切断する切断工程において、円盤状の第二ダイシングソー90Bを用い、いわゆるダイシング加工を行うようにしたが、これに限るものではない。例えば、第二ダイシングソー90Bに代えて、ワイヤーソー等、他の切断具を用いるようにしてもよい。
これ以外にも、切断刃の刃先をウエハ接合体60に押し当てることによって、ウエハ接合体60に厚さ方向に沿ったクラックを発生させて、ウエハ接合体60を割断する方法等、適宜の手法を採用すればよい。
【0081】
さらに、上述した実施形態では、エクスパンド工程において複数の積層体15が分離した状態を利用して保護膜形成工程を行うようにしたが、積層体15の側面15aにおいて、傾斜面18にのみ十分な膜厚で保護膜11を形成し、鉛直面19に対しては、保護膜11の形成を要求しないのであれば、エクスパンド工程を行わずにスパッタリングにより保護膜形成をしても良い。
【0082】
例えば、上述した実施形態では、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23を形成したが、これとは逆にリッド基板用ウエハ50の裏面50aに接合材23を形成しても構わない。この場合、成膜後にパターニングすることで、リッド基板用ウエハ50の裏面50aにおけるベース基板用ウエハ40との接合面のみに形成する構成でも構わないが、接合材23を凹部3aの内面を含む裏面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
また、上述した実施形態では、リッド基板3の表面3dから積層体15の側面15aにかけて保護膜11を連続的に形成する構成について説明したが、これに限らず、積層体15の側面15aに露出している接合材23のみを少なくとも被覆するように形成しても構わない。
【0083】
さらに、上述した接合工程(S60)では、ベース基板用ウエハ40の裏面40bに陽極となる接合補助材を配置するとともに、リッド基板用ウエハ50の表面50bに陰極を配置する方式(いわゆる、対向電極方式)を採用してもよいし、接合材23を陽極に接続するとともに、リッド基板用ウエハ50の表面50bに陰極を配置し、接合材23に対して電圧を直接印加する方式(いわゆる直接電極方式)を採用しても構わない。
対向電極方式を採用することで、陽極接合時に接合補助材と陰極との間に電圧を印加することで、接合補助材とベース基板用ウエハ40の裏面40bとの間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材23とリッド基板用ウエハ50の裏面50aとの間が陽極接合される。これにより、接合材23の全面に対してより均一に電圧を印加することが可能になり、接合材23とリッド基板用ウエハ50の裏面50aとの間を確実に陽極接合することができる。
これに対して、直接電極方式を採用することで、対向電極方式で必要となる接合工程後の接合補助材の除去作業が不要になるので、製造工数を削減することができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0084】
また上述した実施形態では、リッド基板3の凹部3aは矩形状に形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、凹部3aの側面を傾斜面で形成してもよい。この場合、この傾斜面の傾斜角度を前記傾斜角度θと略同一にしてもよい。
【0085】
また上述した実施形態では、上述したパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【0086】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。