(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プローブは、前記貫通穴を介して前記センサ気体室と連接され、前記センサ気体室との間で前記気体を流出入させる基部側気体室を備えることを特徴とする請求項1に記載の弾力計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置によってサンプル表面の弾力を測定する場合には、サンプル表面を押した際の反発力の大きさに対応したバネ構造が必要である。つまり、従来の弾力計によると、サンプルが人体の皮膚や豆腐などの極めて柔らかい固体の場合、サンプル表面からの反発力が十分小さいため、サンプルに応じた反発力の違いを検出するためには極めて微小な反発力を高感度且つ高精度で検出できる必要があった。ところが、従来の弾力計に備わるバネ構造では、その感度と精度を実現することが難しい、という課題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に考慮してなされたもので、その目的は、柔らかい材質の固体表面の弾力を高感度且つ高精度で測定できる弾力計及び弾力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る弾力計は、サンプル表面にプローブを押し込むことで前記サンプル表面の弾力を測定する弾力計において、前記プローブは、気体が充填され先端面が可撓材から成り、前記サンプル表面に押し込められた際に変形して内部圧力が変化するセンサ気体室と、前記センサ気体室に充填された気体を当該センサ気体室の内外に流出入させる貫通穴の一部を覆うように一端が固定されたカンチレバーと、前記センサ気体室の内部圧力の変化による前記カンチレバーのたわみを検出する検出部と、を備える。
本発明に係る弾力計によれば、きわめて柔らかい材質のサンプルの表面の弾力を測定環境に影響されることなく高精度に測定することができる。
【0007】
本発明に係る弾力計は、プローブは、貫通穴を介してセンサ気体室と連接され、センサ気体室との間で気体を流出入させる基部側気体室を備えることを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、基部側気体室の形状や容積を設計パラメータにすることで、所望の感度や応答速度の弾力計を設計することができる。
【0008】
本発明に係る弾力計は、一端がプローブの先端面と対向する側の面に接続され、プローブを長手方向に沿って移動させる接続部と、接続部の他端と接続され、プローブを収容可能でありプローブの先端面側が開口したフレームと、を備えることを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、プローブがサンプルに接触した状態でプローブとサンプルが熱平衡状態になるまで保持した後にプローブをサンプルに押し付けることで、環境温度の影響を受けずにサンプルの弾力を測定することができる。
【0009】
本発明に係る弾力計は、接続部が弾性体であることを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、プローブとサンプルの相対位置が弾性体の平衡位置によって決まり、それからのずれ量を制御することによってプローブとサンプルにかかる力を容易に制御することができる。
【0010】
本発明に係る弾力計は、接続部がネジ機構からなることを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、プローブとサンプルの相対位置をネジの回転角度によって制御できるため、プローブとサンプルにかかる力を容易に制御することができる。
【0011】
本発明に係る弾力計は、基部側気体室は外気と連通する開口を持つことを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、外気の気圧が変動してもそれによって基部側気体室が連動して変動するため、プローブ先端面に力がかかることがなく、外気圧の変動の影響を受けない弾力計とすることができる。
【0012】
本発明に係る弾力計は、センサ気体室の先端面は、弾力を測定する前の状態にて、フレームの先端面よりも突出することを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、センサ気体室先端面がサンプル表面に接するまで押し込むことで、プローブがサンプル表面にかける力を一定にすることができる。
【0013】
本発明に係る弾力計は、カンチレバーは、内部あるいは表面で金属配線と接続され、検出部は、カンチレバーのたわみによる金属配線の電気抵抗の変化を検出するものであることを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、極めてわずかなたわみを検出することができ、極めて柔らかい材質のサンプルの弾力を測定することができる。
【0014】
本発明に係る弾力計は、カンチレバーと同一構成からなる第2のカンチレバーを備え、第2のカンチレバーは、カンチレバーの近傍に配設され、当該第2のカンチレバーのたわみ変形を規制する規制部に固定されることを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、周辺の温度変化によって発生するセンサ出力へのノイズを第2のカンチレバーの出力によってキャンセルすることができ、高感度の弾力測定をすることができる。
【0015】
本発明に係る弾力計は、センサ気体室の先端面は、
サンプル表面と接触したことを検知できるプローブ接触センサを持つことを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、センサ気体室先端面がサンプルにわずかに接触した瞬間にプローブの移動を止めたあとで、熱平衡状態になるまで待つことができ、より高精度な弾力測定をすることができる。
【0016】
本発明に係る弾力計は、フレームの先端面は、
サンプル表面と接触したことを検知できるフレーム接触センサを持つことを特徴とする。
本発明に係る弾力計によれば、フレーム先端面がサンプルに接触した瞬間に弾力測定することで、より正確な弾力測定をすることができる。
【0017】
本発明に係る弾力測定装置は、本発明の弾力計と、報知部と、検出部と接続され、カンチレバーのたわみに関する信号を処理する信号処理部と、プローブ接触センサと接続され、サンプル表面と前記プローブとが接触したことを検出するプローブ接触検出部と、フレーム接触センサと接続され、サンプル表面とフレームとが接触したことを検出するフレーム接触検出部と、プローブ接触検出部及びフレーム接触検出部の検出結果と、信号処理部の信号と、に基づいて弾力計に対する操作指示情報を生成し、報知部を介してユーザに当該操作指示情報を報知させる制御部と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る弾力測定装置によれば、弾力測定を行いたいユーザは出力部に表示された指示に従って弾力計を操作することで、簡便に高精度な弾力測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る弾力計及び弾力測定装置によれば、極めて柔らかい固体表面の弾力を高精度で測定することができ、また、測定環境の温度による影響も小さく抑えた状態で測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る弾力計の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
「弾力計の各部構成」
図1は第1の実施形態に係る弾力計1の断面図である。
図1(a)はサンプル13の非測定時、
図1(b)はサンプル13の弾力測定時の断面を示す。ここで、本実施形態に係る弾力計1の測定対象としてのサンプル13は、例えば、生体の肌や、食品表面、ゴム製品表面等のように、柔らかい材質からなる固体表面を有するものである。
【0021】
弾力計1は、
図1に示すように、弾力計1の枠体としてのフレーム2と、サンプル13の測定時において当該サンプル13に押し当てるためのプローブ3と、フレーム2とプローブ3とを接続するバネ4と、を備える。フレーム2は、例えば、側面視にて、フレーム先端部12側が開口した有底中空筒状からなる枠体である。当該フレーム2は、
図1(a)に示すように、弾力計1の非測定状態でプローブ3の先端の一部がフレーム先端部12より突出するように、プローブ3を内部に収容する。
【0022】
プローブ3は、例えば、フレーム2よりも小さな中空棒状の基体の一端に、当該基体よりも細径からなる先端が連接された構造からなる。また、プローブ3は、基体の他端側がバネ4を介してフレーム2の内周面と接続されることで、フレーム2内に水平に支持される。当該プローブ3は、上記基体の他端側に相当する基部側気体室5と、基体の一端側に相当するセンサ気体室6と、基部側気体室5とセンサ気体室6との間に設けられた隔壁9及びカンチレバー10と、で構成される。
【0023】
基部側気体室5は、内部に気体が封止された構造からなる。ここで、基部側気体室5とセンサ気体室6とは、外気から隔離されているが、内部の気体通しは隔壁9の隙間(貫通穴)によって流通する。
隔壁9は、基部側気体室5とセンサ気体室6との間に配設された壁部である。隔壁9は、基部側気体室5とセンサ気体室6とを隔離するが、一部に上記隙間を有し、当該隙間をふさぐようにカンチレバー10が配置される。
【0024】
カンチレバー10は、薄い板状の部材であり、一端が隔壁9に固定され、他端が自由端からなる片持ち梁である。ここで、カンチレバー10の自由端と当該自由端に対向する隔壁9との間は極めて微小なギャップが形成される。そのため、基部側気体室5とセンサ気体室6との内部に封止された気体は、当該ギャップを介してのみ流通する。
【0025】
また、カンチレバー10は、隔壁9に固定された固定端付近に図示を略した電気配線と接続され、当該電気配線を介して検出部(図示省略)と接続される。検出部は、上記電気配線に接続されたブリッジ回路によって電気抵抗をモニタできる構成を備える。また、検出部は、上記電気抵抗を検出し、図示を略した制御部に送信する。制御部は、検出部と信号の送受信を行い、検出部の出力信号に基いてサンプル13の弾力を求める。そして、カンチレバー10は、基部側気体室5とセンサ気体室6のそれぞれの内部圧力に差が発生すると、カンチレバー10の表裏面に差圧が生じるため、その差圧による力によってたわむ。そのため、制御部は、上記内部圧力の差によってカンチレバー10がたわみ、たわみ量に応じて電気抵抗が変化する(ピエゾ効果)ので、その電気抵抗の変化量を検出することで、サンプル13の弾力を測定できる。
【0026】
なお、カンチレバー10の厚みは、典型的には1ミクロン以下であり、100ナノメートル以下が高感度のために尚望ましい。また、ギャップは数ミクロン以下であり、数百ナノメートル以下が高感度のためには尚望ましい。また、本実施形態における基部側気体室5とセンサ気体室6の内部に封入される気体は、空気であるが、測定環境や条件に応じて、窒素や酸素、不活性ガズなど別の種類の気体を用いてもよい。
【0027】
センサ気体室6は、基部側気体室5と同じ径を持つセンサ気体室ベース部7と、センサ気体室ベース部7に接続されたセンサ気体室先端部8と、からなる。センサ気体室ベース部7は、隔壁9を介して基部側気体室5と接続されたプローブ3の先端側のベース材である。センサ気体室先端部8は、センサ気体室ベース部7よりも小径からなる部材であり、先端にサンプル13の表面に接触する接触面であるサンプル接触部11を備える。
【0028】
サンプル接触部11は、例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニリデン等から成る十ミクロン前後の厚さを持つ薄いフィルム材から成り、例えばポリスチレンやアクリロニトリルから成る数百ミクロン厚のプローブ3の他の部分よりも柔らかい構造となっている。サンプル接触部11は、非測定状態において、フレーム2の先端であるフレーム先端部12よりも距離dだけ突出する。当該距離dは、非測定状態におけるバネ4の長さ(つまり、非測定状態におけるフレーム2の内側面とプローブ3の基端との距離)よりも短い。
【0029】
「弾力計による測定動作」
次いで、弾力計1によるサンプル13の測定動作の概要について説明する。ここで、
図1(b)は、弾力計1を用いてサンプル13の弾力を測定している際の断面図を示す。
図1(b)に示すように、バネ4は、センサ接触部11がサンプル13表面によって押し込められることで収縮する。センサ接触部11は、フレーム先端部12がサンプル13に接触するまで押し込められることで、センサ接触部11とフレーム先端部12が略同一平面上に位置する。サンプル接触部11は、上述のように極めてやわらかい構造物であるので、サンプル13表面に押しつけられて変形することで、センサ気体室6の容積が減少する。その結果、センサ気体室6内部の圧力が一時的に基部側気体室5よりも高くなる。そのため、カンチレバー10は、表面側と裏面側とにおいて差圧が発生してたわむ。ここで、サンプル13の硬さに応じてサンプル接触部11の変形量が定まるため、両気体室間の差圧も当該変形量に応じて決まる。つまり、カンチレバー10のたわみ量は、サンプル13の硬さに応じて決まる。したがって、検出部は、カンチレバー10上の電気配線の電気抵抗を検出することにより、サンプル13の弾力を測定できる。
【0030】
次いで、弾力計1によるサンプル13の弾力測定の詳細過程について、
図2、
図3、
図4を用いて以下に説明する。
図2は、測定過程のステップ毎の弾力計1の断面図を示す。
図3は、測定過程のステップ毎の検出部の出力の時間経過を示す。
図4は測定過程の駆動アルゴリズムを示すフローチャートである。
図2(a)〜(e)、
図3、
図4のs1〜s5はそれぞれ同じステップに対応する。
【0031】
まずステップs1は、ユーザが測定を開始する前の状態を表し、
図2(a)に示すように、サンプル接触部11がフレーム先端部12よりも距離dだけ突出する。つまり、本ステップs1において、センサ気体室6と基部側気体室5の内部圧力が同一であり、カンチレバー10が平らな状態であるため、
図3に示すように、検出部の出力は無い。なお、本ステップs1は、
図4に示す「start」に対応する。
【0032】
次に、ステップs2は、ユーザがサンプル接触部11をサンプル13表面に接触させた状態を表す。ここで、通常弾力計1とサンプル13は必ずしも同一温度ではないため、サンプル接触部11がサンプル13表面に接触した瞬間にサンプル接触部11の温度がわずかに変化する。その結果、センサ気体室6内の圧力が変化することで両気体室間に差圧が発生するので、カンチレバー10は当該差圧に応じてたわむ。つまり、
図3におけるステップS2でのSignalは、上記接触時の温度変化に基づく検出部の出力を示す。
【0033】
次いで、ステップs3は、ステップs2における、接触時の温度変化に基づく検出部の出力がゼロに至ったか否かを制御部が判断するステップである。つまり、ステップs3は、カンチレバー10と隔壁9との間に形成されるギャップを介して、両気体室間の気体が移動するとともに熱移動も起きて、やがて両気体室間の圧力差と温度差が消滅することに基づき、当該圧力差と温度差が消滅したか否かを判断するステップである。そして、制御部は、ステップs3にて検出部の出力がゼロでないと判断した場合(ステップs3;No)、所定時間待機させて(ステップs4)、ステップs3以降の処理を繰り返す。
【0034】
一方で、制御部は、ステップs2にて検出部の出力がゼロであると判断した場合(ステップs3;Yes)、フレーム先端部12がサンプル表面に接触するまでプローブ3をサンプル13表面に向けて押し込む(ステップs5)。
【0035】
ここで、バネ4は、サンプル接触部11がフレーム先端部12から所定距離dだけ突出したステップs1にて平衡状態である一方、ステップs5ではこの所定距離dだけ圧縮される。そして、バネ4のバネ定数は既定値であるので、当該バネ定数と所定距離dとの積は、弾力計1がサンプル13を押す力となる。つまり、弾力計1がサンプル13を押す力の大きさは、あらかじめ設計時に決めておくことができる。また、センサ接触部11の変形量は、センサ接触部11とサンプル13の硬さの大小関係に依存する。結局、サンプル13の硬さによってセンサ接触部11の変形量が決定されると、その変形量によって両気体室間の差圧が決定されるので、カンチレバー10のたわみ量が決定される。したがって、ステップs6にて検出部が取得するセンサ出力は、サンプル13の弾力に対応したものとなる。
【0036】
次いで、ステップs7は、s5の状態を維持することでギャップを通じて気体が移動し、両気体室間の差圧が解消されるため、カンチレバー10のたわみが無くなり、検出部の取得するセンサ出力がゼロになった状態を表す。
【0037】
以上のような構造を持つ弾力計1は、上述した手順で駆動させることにより、極めて柔らかい物質の弾力を環境温度の影響を受けずに高精度で測定することができる。また、基部側気体室5の形状や容積は、カンチレバー10のたわみ量や、たわみが解消される速度に影響を与えることから、弾力計1は、これらを設計パラメータとして所望の感度や応答速度に設計することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態に係る弾力計1aについて説明する。ここで、
図5は第2の実施形態に係る弾力計のセンサ気体室21の断面図である。本実施形態に係る弾力計1aは、第1の実施形態に係る弾力計1とセンサ気体室の構成以外同一であるので、センサ気体室21以外の部分の説明は省略する。
【0039】
弾力計1aに係るセンサ気体室21において、カンチレバー10は、センサ気体室先端部22の中に配置される。ここで、検出部は、第1の実施形態で説明したようにサンプル接触部11がサンプル13に接触してその接触部分の弾力を測定する。つまり、検出部による測定の空間分解能は、サンプル接触部11のサンプル13に接触する部分の面積で決まる。そのため、サンプル表面が複数の材質から成る場合や、同一材質であっても経時変化によって部分的に変質している場合などであっても、検出部がサンプル表面の弾力を高い空間分解能で測定するために、サンプル接触部11はサンプル表面の微小構造(サンプル表面において同一材質から成る部分が種々のサイズで分布している場合に、その種々のサイズのうち最小サイズ)よりも径が小さい構造になっている。そのため、センサ気体室先端部21はサンプル表面の微小構造よりも径の小さい形状からなるので、通常そのセンサ気体室先端部21の内部に機能部品を作りこむことは難しい。ただし、本実施形態に係るカンチレバー10は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術を用いて作製されることで、全体のサイズを1ミリメートル以内の微細構造にすることができ、センサ気体室先端部21の内部に上記機能部品を作りこむことが可能となる。ここで、カンチレバー10がサンプル接触部11に1ミリメートル以内程度の距離まで近接して配置されるため、検出部は、サンプル接触部11のほんのわずかな変形によってもカンチレバー10が反応して、サンプル表面の弾力を測定することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
次いで、第3の実施形態に係る弾力計31について説明する。ここで、
図6は第3の実施形態に係る弾力計31の断面図である。なお、本実施形態に係る弾力計31の構成のうち、第1の実施形態と同一構成については説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係る弾力計31は、基部側気体室32に外気に開放される外気連通口33を備える。ここで、センサ接触部11の変形によって生じるセンサ気体室6と基部側気体室32の一時的な差圧によってカンチレバー10が変形し、それをセンサ出力とすることで、サンプル表面の弾力を測定する、という弾力計31の機能/動作は、基本的に弾力計1と同一である。ただし、本実施形態に係る弾力計31では、基部側気体室32が外気に連通しているため、基部側気体室32内部に空気以外の気体を封入することができない一方で、外気の気圧が変化したときでも、それによってセンサ接触部11が変形することはなく、安定した測定が実現できる。
【0042】
(第4の実施形態)
次いで、第4の実施形態に係る弾力計41について説明する。ここで、
図7は第4の実施形態に係る弾力計41の断面図である。なお、本実施形態に係る弾力計41の構成のうち、第1の実施形態に係る弾力計1と同一構成については説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る弾力計41は、
図7に示すように、フレーム2とプローブ3とを第1実施形態に係るバネ4に替えてネジ42で固定する。ここで、
図7(a)は、弾力計41がサンプル13表面に接触した瞬間の断面図である。また、
図7(b)は、この状態からネジ42をあらかじめ決めた角度だけ回転させることで、フレーム2に対してプローブ3をサンプル43表面に向けて押し込んだときの断面図である。
【0044】
なお、この実施形態において、サンプル43は、第1の実施形態におけるサンプル13よりも更にやわらかい材質、例えば豆腐やプリンなどの食品の表面からなる場合を示している。そのため、
図7(b)におけるサンプル接触部11は、サンプル43表面に食い込んでいるため、フレーム先端部12よりも突出する。したがって、サンプル43を所定の力で押し込んでも内部の気圧差は大きくならないことから、検出部は、サンプル43の弾力を求めることができる。もちろん、このような構造の弾力計41でもサンプル43の硬さによっては
図1のように、センサ接触部11がフレーム先端部12と同一平面を成すこともある。このように、サンプル43の弾力に応じて内部の2つの気体室の圧力差が決まり、それによるカンチレバー10の変形を検出することによって、極めて柔らかい材質から成るサンプル43の弾力を高精度に測定することができる。
【0045】
(第5の実施形態)
次いで、第5の実施形態に係る弾力計1bについて説明する。ここで、
図8は第5の実施形態に係る弾力計1bのセンサ気体室51の断面図である。なお、本実施形態に係る弾力計1bの構成のうち、第1の実施形態に係る弾力計1と同一構成については説明を省略する。
【0046】
本実施形態に係るセンサ気体室51は、カンチレバー10と同一プロセスを用いて作製した参照カンチレバー52を備える。参照カンチレバー52は、センサ出力に使われるカンチレバー10の近傍に配設され、底面が下地層53に固定されているためにたわみ変形が規制される。ここで、カンチレバー10の近傍とは、参照カンチレバー52がカンチレバー10と実質的に同一温度であるとみなせる程度に近接した位置範囲を示唆するものとする。
【0047】
当該カンチレバー52は、センサ気体室51の温度変化に基づくカンチレバー10の電気抵抗変化の検出に用いられる。つまり、センサ気体室51の温度変化によってカンチレバー10の電気抵抗が変化するが、参照カンチレバー52の電気抵抗も同様に変化するため、検出部は、カンチレバー10の出力から参照カンチレバー52の出力を差し引くことによって、測定環境の温度変化がセンサ出力に与える影響を解消することができる。つまり、弾力計1bは、このような構成にすることにより、測定環境の温度が急激に変化しても、安定してサンプルの弾力測定が可能になる。
【0048】
(第6の実施形態)
次いで、第6の実施形態に係る弾力測定装置62について説明する。ここで、
図9は、弾力計61を組み込んだ弾力測定装置62のブロック図である。本実施形態に係る弾力計61は、第1〜第5の実施形態にて説明した弾力計の何れかと同一の構造を備える。さらに、本実施形態に係る弾力計61は、サンプル接触部63とフレーム先端部64各々に、図示を略した接触センサ(プローブ接触センサ、フレーム接触センサ)が配置されており、サンプル表面に接触したことを検出できる構造からなる。なお、接触センサは、電極から成るスイッチのようなものでも良いし、圧電体であっても良い。
【0049】
弾力測定装置62は、
図9に示すように、サンプル接触部63上の接触センサからの信号を受信するプローブ接触検出部65と、フレーム先端部64上の接触センサからの信号を受信するフレーム接触検出部66と、カンチレバー10からの弾力測定結果の信号(センサ出力)を受信する信号処理部67と、表示用のモニタ等で構成される出力部68と、弾力測定装置62全体の動作を統括的に制御する制御部69と、を備えて構成される。ここで、ユーザは、この弾力測定装置62の出力部68に表示される指示に従って弾力計61をサンプル表面に押し付ける動作を行うものとする。なお、上記第1〜第5の実施形態において、「検出部」と記載した構成は、本実施形態に係る弾力測定装置62の弾力計61と、信号処理部67との間に配置された構成とする。
【0050】
このような構成の弾力測定装置62を用いて第1の実施形態で説明した弾力計61による測定動作の実行手順を、
図3と
図9を使って以下に説明する。まず
図3の(a)はサンプル接触部63がサンプル13に接触していない状態を表し、信号処理部67は、受信するセンサ出力がゼロであるので、当該センサ出力に係る信号を破棄する。次にサンプル接触部63がサンプル表面に接触すると、プローブ接触検出部65は、接触センサから取得した接触情報を制御部69に送る。すると、制御部69は、信号処理部67に信号処理を命令する信号を送り、信号処理部67にセンサ出力を記憶部(図示省略)へ記録させる。このときのセンサ出力が
図3(b)である。次に制御部69は、信号処理部67からの信号がゼロになるのを待って(
図3(c))、出力部68にフレーム先端部64をサンプル表面に向けて押し込む旨のユーザへの指示(操作指示情報)を表示するよう命令を送る。ユーザは、その指示を見てフレーム先端部64をサンプル表面に押し込み、フレーム先端部64がサンプル表面に接触したことを接触センサが検知すると、フレーム接触検出部65が接触情報を制御部69に送る。制御部69は、出力部68にフレーム先端部64の移動を停止する旨のユーザへの指示(操作指示情報)を表示するよう命令を送る。ユーザは、その指示を見てフレーム先端部64の移動を停止する。このとき信号処理部の受信する信号が
図3(d)であり、この信号が弾力計61の検出するサンプル弾力を示す。その後弾力計61内部の気体室のあいだの差圧が解消されることで出力もゼロになる(
図3(e))。なお、本実施形態では、弾力計61をサンプルに向けて移動する動作をユーザ自身が行うとしたが、アクチュエータに接続することで自動的に行うようにすることも可能である。
【0051】
なお、以上の実施形態における記述は、本発明に係る好適な弾力計及び弾力測定装置の一例であり、これに限定されるものではない。また、以上の実施形態における弾力計及び弾力測定装置の各部の細部構成に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。具体的には、第1実施形態において、貫通穴(隔壁9の隙間)及びカンチレバー10を配置する位置は、基部側気体室5とセンサ気体室6との境界位置としたが、基部側気体室5及びセンサ気体室6のうちセンサ気体室先端部8を除く位置であれば何れに設けてもよい。つまり、貫通穴とカンチレバー10の配置は、センサ接触部11のサンプル13表面への押し込み動作に応じて、カンチレバー10の一面側と当該一面側と対向する他面側との間に差圧の形成が可能な位置であれば足りる。