特許第6164893号(P6164893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164893
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170710BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170710BHJP
【FI】
   F21S8/10 371
   F21S8/10 352
   F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-74903(P2013-74903)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199763(P2014-199763A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 一仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳郎
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−251013(JP,A)
【文献】 特開2011−184030(JP,A)
【文献】 特開2013−026008(JP,A)
【文献】 特開2005−085580(JP,A)
【文献】 特開2011−044410(JP,A)
【文献】 特開2008−153076(JP,A)
【文献】 特開2006−181853(JP,A)
【文献】 実開昭63−055308(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としての半導体発光素子と、
前記半導体発光素子から出射された光が入射される入射部と、前記入射部に入射された光を導光させる導光部と、前記導光部で導光された光を出射させる出射部と、を有する導光体と、
を備え、
前記入射部は、前記半導体発光素子からの光を前記半導体発光素子の出射軸に対して平行寄りに屈折させる第1の光学要素と、前記出射軸上又はその近傍に配置される第2の光学要素と、を含み、
前記第2の光学要素は、前記半導体発光素子からの光の少なくとも一部を、当該光が前記第2の光学要素を通過する位置から前記出射軸までの距離より前記出射部を通過する位置から前記出射軸までの距離の方が大きくなるように屈折させ
前記導光体は第1の方向に延びる板状に形成されており、
前記導光体には、前記第1の方向に沿って、前記入射部と前記導光部と前記出射部とがそれぞれ複数形成され、
各前記入射部に対向する位置に、それぞれ前記半導体発光素子が配置され、
複数の前記入射部に設けられた複数の前記第2の光学要素のうち少なくとも1つは、前記出射軸に対して傾いた傾斜面を有し、
車両へ搭載した状態で、前記傾斜面は、前記半導体発光素子からの光を、前記車両の中央側に向けて屈折させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
光源としての半導体発光素子と、
前記半導体発光素子から出射された光が入射される入射部と、前記入射部に入射された光を導光させる導光部と、前記導光部で導光された光を出射させる出射部と、を有する導光体と、
を備え、
前記入射部は、前記半導体発光素子からの光を前記半導体発光素子の出射軸に対して平行寄りに屈折させる第1の光学要素と、前記出射軸上又はその近傍に配置される第2の光学要素と、を含み、
前記第2の光学要素は、前記半導体発光素子からの光の少なくとも一部を、当該光が前記第2の光学要素を通過する位置から前記出射軸までの距離より前記出射部を通過する位置から前記出射軸までの距離の方が大きくなるように屈折させ、
前記導光体は第1の方向に延びる板状に形成されており、
前記導光体には、前記第1の方向に沿って、前記入射部と前記導光部と前記出射部とがそれぞれ複数形成され、
各前記入射部に対向する位置に、それぞれ前記半導体発光素子が配置され、
各前記入射部は、前記第1の方向における前記第1の光学要素の両側にそれぞれ第3の光学要素を有し、
前記第1の方向における各前記入射部の間には、前記第3の光学要素を通過した光を前記出射軸に対して平行寄りに内面反射させる内面反射部が形成され、
複数の前記出射部が前記第1の方向に連結されて、前記第1の方向に延びる帯状の連続出射面が形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
数の前記入射部に設けられた複数の前記第2の光学要素のうち少なくとも1つは、前記出射軸に対して傾いた傾斜面を有し、
車両へ搭載した状態で、前記傾斜面は、前記半導体発光素子からの光を、前記車両の中央側に向けて屈折させることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光部は前記板状に形成されており、
前記出射軸の方向に沿って前記入射部から前記出射部に向かうに従い、前記導光部のうち前記入射部と隣接する隣接部分の厚さが前記入射部の厚さより大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記導光部は前記板状に形成されており、
前記導光部における前記入射部と前記出射部との間の側面と対向する位置に、前記半導体発光素子から出射されて前記入射部に入射されなかった光の一部を、車両に搭載した状態で前記車両の前方に向けて反射させる反射部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
記導光体には、前記出射軸及び前記第1の方向の両方と交差する第2の方向において、前記出射部より板状に延出する延出部が形成され、前記延出部には前記出射部から所定の長さ離れた位置に前記導光体を位置決めする位置決め要素が形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子を有する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新規なデザインの灯具を開発するために、LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子を用いた車両用灯具の開発が進められている。
【0003】
例えば、複数の発光ダイオードが列状に配置された発光ダイオード群と、発光ダイオード群の前側に配置された透明な板からなる導光板と、を備える車両用灯具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−141909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような構成の車両用灯具では、発光ダイオード群から発せられた光は、導光体の入射面に入射されて内部を通過した後に出射面から灯具前方に向けて出射される。このように光を出射した状態の車両用灯具を灯具前方から見た場合、導光体の出射面の一部が点光りして見えてしまう場合があった。
【0006】
本発明の目的は、半導体発光素子から発せられる光の点光りを抑制することが可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の車両用灯具は、
光源としての半導体発光素子と、
前記半導体発光素子から出射された光が入射される入射部と、前記入射部に入射された光を導光させる導光部と、前記導光部で導光された光を出射させる出射部と、を有する導光体と、
を備え、
前記入射部は、前記半導体発光素子からの光を前記半導体発光素子の出射軸に対して平行寄りに屈折させる第1の光学要素と、前記出射軸上又はその近傍に配置される第2の光学要素と、を含み、
前記第2の光学要素は、前記半導体発光素子からの光の少なくとも一部を、当該光が前記第2の光学要素を通過する位置から前記出射軸までの距離より前記出射部を通過する位置から前記出射軸までの距離の方が大きくなるように屈折させることを特徴とする。
【0008】
上記構成の車両用灯具によれば、比較的に出射強度の強い半導体発光素子の出射軸近傍の光を、出射部のうち出射軸から離れた部分から出射させることができる。その結果、灯具を外部から視認した際に、導光体の出射部の一部が点光りして見えることを抑制することができる。
【0009】
本発明の車両用灯具において、前記導光部は板状に形成されており、前記出射軸の方向に沿って前記入射部から前記出射部に向かうに従い、前記導光部のうち前記入射部と隣接する隣接部分の厚さが前記入射部の厚さより大きくなるように形成されていても良い。上記構成の車両用灯具によれば、金型に樹脂を流し込んで導光体を成形する際に、高い寸法精度で導光体を成形することができる。
【0010】
本発明の車両用灯具において、前記導光体は第1の方向に延びる板状に形成されており、前記導光体には、前記第1の方向に沿って、前記入射部と前記導光部と前記出射部とがそれぞれ複数形成され、各前記入射部に対向する位置に、それぞれ前記半導体発光素子が配置され、複数の前記入射部に設けられた複数の前記第2の光学要素のうち少なくとも1つは、前記出射軸に対して傾いた傾斜面を有し、車両へ搭載した状態で、前記傾斜面は、前記半導体発光素子からの光を、前記車両の中央側に向けて屈折させるものでも良い。上記構成の車両用灯具によれば、傾斜面を有する第2の光学要素で半導体発光素子からの光を、車両の中央側に向けて屈折させるので、半導体発光素子の出射軸近傍から出射された出射強度の高い光を、例えばポジショニングランプの光として照射することができる。
【0011】
本発明の車両用灯具において、前記導光体は第1の方向に延びる板状に形成されており、前記導光体には、前記第1の方向に沿って、前記入射部と前記導光部と前記出射部とがそれぞれ複数形成され、各前記入射部に対向する位置に、それぞれ前記半導体発光素子が配置され、各前記入射部は、前記第1の方向における前記第1の光学要素の両側にそれぞれ第3の光学要素を有し、前記第1の方向における各前記入射部の間には、前記第3の光学要素を通過した光を前記出射軸に対して平行寄りに内面反射させる内面反射部が形成され、複数の前記出射部が前記第1の方向に連結されて、前記第1の方向に延びる帯状の連続出射面が形成されていても良い。上記構成の車両用灯具によれば、第2の光学要素による点光りの抑制を図りつつ、第1の光学要素、第2の光学要素及び第3の光学要素によって、半導体発光素子の光をさらに満遍なく出射部へ導いて均一な光を連続出射面から出射させることができる。
【0012】
本発明の車両用灯具において、前記導光体は板状に形成されており、前記導光部における前記入射部と前記出射部との間の側面と対向する位置に、前記半導体発光素子から出射されて前記入射部に入射されなかった光の一部を、車両に搭載した状態で前記車両の前方に向けて反射させる反射部が設けられていても良い。上記構成の車両用灯具によれば、半導体発光素子の光の利用効率を上げることができる。
【0013】
本発明の車両用灯具において、前記導光体は第1の方向に延びる板状に形成されており、前記導光部には、前記出射軸及び前記第1の方向の両方と交差する第2の方向において、前記出射部より板状に延出する延出部が形成され、前記延出部には前記出射部から所定の長さ離れた位置に前記導光体を位置決めする位置決め要素が形成されていても良い。上記構成の車両用灯具によれば、位置決め要素によって導光体を容易に所定位置へ位置決めすることができる。また、位置決め要素は、延出部における出射部から所定の長さ離れた位置に設けられているため、半導体発光素子からの光が到達しづらくされている。このため、位置決め要素に半導体発光素子からの光が照射されて乱反射することによる点光りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体発光素子から発せられる光の点光りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用灯具の構成を説明するための図であり、図中の(a)は図1中のB−B線断面図であり、図中の(b)は導光体の部分拡大断面図である。
図3】光の経路の一例を説明するための灯具の部分拡大図である。
図4】光の経路の一例を説明するための灯具の部分拡大図である。
図5】光の経路の一例を説明するための灯具の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用灯具の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。また、図2は、車両用灯具の構成を説明するための図であり、(a)は図1中のB−B線断面図であり、(b)は導光体の部分拡大断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、灯具前方側(図2の(a)の左側)が開口された形状を有する樹脂製のランプボディ11と、ランプボディ11の開口部に取り付けられた透明樹脂性のアウターカバー12とを備えている。アウターカバー12は、ランプボディ11の開口部を前方から閉塞するように配置され、ランプボディ11との間に灯室Sを形成する。この車両用灯具10は、例えば、車両の昼夜点灯用ライト(DRL:Daylight Running Lamps)として用いられる。この車両用灯具10は、車両の前部における左右にそれぞれ搭載される。また、この車両用灯具10は車両に搭載された状態で、車両の中央側から車両の側方側へ向かって後方へ傾斜するように配置される。本実施形態の車両用灯具10は、図1における右側が車両の中央側に向けられて車両に搭載される。
【0018】
車両用灯具10は、ランプボディ11とアウターカバー12とで形成された灯室S内に、灯具ユニット20を備えている。灯具ユニット20の一部は、ランプボディ11に固定された樹脂製のフレーム53に支持されている。
【0019】
灯具ユニット20は、光源としての半導体発光素子21と、導光体30とを備えている。導光体30は、透光性を有する樹脂を射出成形することで形成されたものである。この導光体30は、半導体発光素子21から出射された光が入射される入射部31と、この入射部31に入射された光を導光させる導光部32と、導光部32で導光された光を出射させる出射部33とを有している。
【0020】
導光体30は、図1中矢印Aで示す左右方向(第1の方向の一例)に延びる板状に形成されており、この導光体30には、入射部31、導光部32及び出射部33が、左右方向に沿って、それぞれ複数(本例では5つ)設けられている。この導光体30は、その周囲に、側方へ突出する突出部30aを備えている。そして、それぞれの入射部31に対向する位置には、それぞれ半導体発光素子21が配置されている。
【0021】
複数の半導体発光素子21の各々は、例えば、1mm四方程度の大きさの発光部を有する白色発光ダイオード(LED)である。この半導体発光素子21は、光出射面21aから灯具前方に向けて上下左右方向に略均一に光を出射するものである。これらの半導体発光素子21は、光出射面21aとは反対側の実装面21bが、フレキシブルプリント基板(以下、FPC)51に対向するようにFPC51に搭載されている。FPC51の背面側には、各半導体発光素子21およびFPC51から発生する熱を拡散するためのアルミニウム製の複数の放熱板52が配置されている。放熱板52は、フレーム53に固定されており、これにより、半導体発光素子21が搭載されたFPC51は、放熱板52を介してフレーム53に支持されている。
【0022】
フレーム53は、略垂直に配置された支持板部54及び固定板部55と、水平に配置された平板部56とを有している。支持板部54は、平板部56の後端から上方へ延在されており、固定板部55は、平板部56の前端から下方へ延在されている。平板部56は、導光体30における入射部31と出射部33との間の側面である下面30bと対向する位置に配置されており、この平板部56には、半導体発光素子21からの光の一部を反射させる反射部57が設けられている。
【0023】
また、導光体30には、出射部33側の下端から、半導体発光素子21からの光の出射軸Ax及び左右方向の両方と略直交するように交差する上下方向(第2の方向の一例)における下方へ延出する板状の延出部60が形成されている。この延出部60は、出射部33側の下端から下方へ延出する第1延出部61と、第1延出部61の下端から後方へ屈折して延出する第2延出部62と、第2延出部62の後端から下方側へ延出する第3延出部63と、を有している。第3延出部63には、出射部33から所定の長さ離れた位置に、前後方向に貫通する貫通穴63a(位置決め要素の一例)が形成されている。この貫通穴63aに対してフレーム53の固定板部55に設けられた突起ピン55aを挿入することで、導光体30がフレーム53に対して位置決めされる。このように位置決めされた状態で、スクリュー等を貫通穴63aの近傍に形成された固定用の貫通穴(図示せず)に挿入し、さらに固定板部55まで挿入することによって、導光体30がフレーム53に対して固定される。
【0024】
灯室S内には、エクステンション65が設けられている。このエクステンション65は、灯具ユニット20の前方側における下方に配置されており、このエクステンション65によって、灯具ユニット20の前方側における下方側が覆われている。
【0025】
また、灯室S内には、アウターカバー12側から見てランプボディ11と灯具ユニット20との間の隙間を覆う閉塞板50が設けられており、導光体30の周囲の突出部30aは、灯具正面視において閉塞板50の背面側に組み付けられている。
【0026】
次に、導光体30の具体的な構造について説明する。
図1及び図2に示すように、各入射部31は、第1の入射部71(第1の光学要素の一例)と、第2の入射部72(第2の光学要素の一例、72Aまたは72B)と、第3の入射部76(第3の光学要素の一例)とを有している。
【0027】
第1の入射部71は、半導体発光素子21へ向かって僅かに突出した湾曲面からなるもので、例えば、水平断面視において、放物曲線とされている。第1の入射部71は、半導体発光素子21から入射された光を出射軸Axと略平行な平行光となるように屈折させる程度の曲率半径を有する湾曲面である。
【0028】
また、左右方向における第1の入射部71の両側には、それぞれ導光突起部75が形成されている。この導光突起部75は、半導体発光素子21側が第3の入射部76とされ、半導体発光素子21と反対側に内面反射面77を有している。
【0029】
複数の入射部31のうち、少なくとも一つ(本例では中央側から1番目、4番目、5番目)の第2の入射部72は、凸状の第2の入射部72Aである。第2の入射部72Aは、半導体発光素子21へ向かって突出する湾曲面からなるもので、例えば、水平断面視において、楕円曲線とされている。第2の入射部72Aは、半導体発光素子21の出射軸Ax上に配置されている。第2の入射部72Aの曲率半径は、第1の入射部71の曲率半径より小さい。
【0030】
また、複数の入射部31のうち、少なくとも一つ(本例では中央側から2番目、3番目)の第2の入射部72は、凹状の第2の入射部72Bである。第2の入射部72Bは、半導体発光素子21の出射軸Axに対して傾いた傾斜面73を有している。第2の入射部72Bは、半導体発光素子21の出射軸Ax上に設けられている。
【0031】
出射部33は、導光部32を通過した半導体発光素子21からの光が出射される。これらの出射部33は、左右方向に連結するように一体的に設けられており、これにより、導光体30の前面側は、アウターカバー12の形状に沿って左右方向に延びる帯状の連続出射面81とされている。出射部33には、上下方向に沿う微小な湾曲凸状のシリンドリカル面で形成されたステップ82が複数配列されている。
【0032】
また、導光体30の導光部32は、板状に形成されている。導光部32は、入射部31と隣接する隣接部分32a(図2(b)を参照)の厚さが、半導体発光素子21の出射軸Axの方向に沿って入射部31から出射部33に向かうに従い、入射部31の厚さTより大きくなるように形成されている。
【0033】
また、導光体30の導光部32の上面の出射部33寄りには、前後方向に沿う微小な湾曲凸状のシリンドリカル面で形成されたステップが複数形成されている。これらのステップにより、灯具を外部から見たときに灯具の内部(例えば半導体発光素子21など)が上方から素通しして見えることを抑制することができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る車両用灯具10における光路について説明する。
各半導体発光素子21に電気が供給されると、これらの半導体発光素子21が点灯する。すると、この半導体発光素子21から出射された光が、第1の入射部71、第2の入射部72A,72B及び第3の入射部76に入射する。
【0035】
まず、第2の入射部72Aを有する入射部31から入射する光路について説明する。図3は、第2の入射部72Aを有する入射部31から入射する光路を説明するための導光体30の部分拡大図である。
【0036】
図3に示すように、第1の入射部71に入射した光L1は、第1の入射部71で半導体発光素子21の出射軸Axに対して平行寄りに屈折される。このように屈折された光L1は導光部32の内部を出射軸Axと略平行な平行光として導光された後、ステップ82で左右方向に拡散されて灯具外部の一定の領域を照射するように出射部33から出射される。
【0037】
第2の入射部72Aに入射した光L2は、この第2の入射部72Aで屈折され、導光部32の内部を導光された後、ステップ82で拡散されて出射部33から出射される。
【0038】
ここで、光L2は、第1の入射部71より小さい曲率半径を有する第2の入射部72Aによって導光部32の内部で集光するように屈折される。本例では、第2の入射部72Aで屈折される光L2は、第2の入射部72Aに入射する前の出射軸Axとなす角度θ1に対して、第2の入射部72Aに入射した後の出射軸Axとなす角度θ2が大きくなるように導かれる。このように、第2の入射部72Aに入射された光L2は、その光L2が第2の入射部72Aを通過する入射位置Xから出射軸Axまでの距離Daに対して、その光L2が出射部33を通過する出射位置Yから出射軸Axまでの距離Dbの方が大きくなるように屈折される。そして、このように第2の入射部72Aで屈折された光L2は、出射部33のうち出射軸Axから離れた部分に到達し、ステップ82で拡散されて灯具外部の一定の領域を照射するように出射部33から出射される。
【0039】
第3の入射部76に入射した光L3は、内面反射面77で出射軸Axに対して平行寄りに内面反射される。このように反射された光L3は導光部32の内部を出射軸Axと略平行な平行光として導光された後、ステップ82で拡散されて灯具外部の一定の領域を照射するように出射部33から出射される。
【0040】
なお、図2の(a)に示すように、半導体発光素子21の光のうちの導光体30の入射部31に入射されなかった一部の光L4は、導光体30における入射部31と出射部33との間の側面である下面30bと対向する位置に設けられたフレーム53の平板部56の反射部57で反射される。そして、この反射部57で反射された光L4は、導光体30の出射部33側の下端から下方へ延出する板状の延出部60を通して灯具前方へ照射される。
【0041】
次に、第2の入射部72Bを有する入射部31から入射する光路について説明する。図4は、第2の入射部72Bを有する入射部31から入射する光路を説明するための導光体30の部分拡大図である。
【0042】
図4に示すように、第2の入射部72Bの傾斜面73で屈折される光L2は、傾斜面73に入射する前の出射軸Axとなす角度θ1に対して、傾斜面73に入射した後の出射軸Axとなす角度θ2が大きくなるように、車両の中央側へ向かって屈折される。本例では、第2の入射部72Bの傾斜面73で車両の中央側へ向かって、約45°屈折される。このように、第2の入射部72Bに入射された光L2は、その光L2が第2の入射部72Bの傾斜面73を通過する入射位置Xから出射軸Axまでの距離Daに対して、その光L2が出射部33を通過する出射位置Yから出射軸Axまでの距離Dbの方が大きくなるように屈折される。
【0043】
そして、このように第2の入射部72Bで車両の中央側へ屈折される光L2は、出射部33のうち出射軸Axから大きく離れた部分から出射される。
【0044】
ところで、第2の入射部72Bを、車両の中央側端部に設けると、第2の入射部72Bの傾斜面73で車両の中央側へ大きく屈折された光L2が車両のボディ等で遮られてしまうおそれがあるが、この第2の入射部72Bは、車両の中央側の端部を除く位置に配置されているので、第2の入射部72Bの傾斜面73で屈折された光L2が車両のボディ等によって遮られるようなことはない。
【0045】
以上、説明したように、本実施形態に係る車両用灯具10によれば、導光体30の入射部31において、上記の第2の入射部72(72Aまたは72B)を設けている。これにより、比較的に出射強度の強い半導体発光素子21の出射軸Ax近傍の光を、出射部33のうち出射軸Axから離れた部分から出射させることができる。その結果、灯具を外部から視認した際に、導光体30の出射部33の一部が点光りして見えることを抑制することができる。
【0046】
入射部31に凸状の第2の入射部72Aを設ける構成によれば、比較的に出射強度の強い半導体発光素子21の出射軸Ax近傍の光は、出射部33のうち出射軸Axから離れた部分に到達した後、ステップ82で拡散されて灯具外部の一定の領域を照射するように出射部33から出射される。このように、半導体発光素子21の光を満遍なく出射部33へ導いて出射部33から均一な光を出射させることができる。
【0047】
また、入射部31に凹状の第2の入射部72Bを設ける構成によれば、比較的に出射強度の強い半導体発光素子21の出射軸Ax近傍の光を、出射部33のうち出射軸Axから離れた部分から出射させることができる。本例では、第2の入射部72Aは、半導体発光素子21からの光L2を、車両用灯具10が搭載される車両の中央側に向けて出射軸Axに対して約45°屈折させる。このように、半導体発光素子21の出射軸Ax近傍から出射された出射強度の高い光を、例えばポジショニングランプ(車幅灯)の光として利用することができる。
【0048】
また、導光体30の板状に形成された導光部32が、出射軸Axの方向に沿って入射部31から出射部33に向かうに従い、導光部32のうち入射部31と隣接する隣接部分32aの厚さが入射部31の厚さTより大きくなるように形成されている。このため、高い寸法精度で導光体30の入射部31を成形することができる。つまり、金型に高温の樹脂を流し込んで導光体30を射出成形等によって成形する際に、比較的に厚さが小さい入射部31から樹脂の温度が下がり始め、その隣接部分32aよりも早く固まり成形される。このように、第1の入射部71と第2の入射部72を有する入射部31がその隣接部分32aよりも早く冷却されて固まる結果、入射部31に形成される第1の入射部71及び第2の入射部72の形状の高い寸法精度を確保することができる。
【0049】
また、第3の入射部76と内面反射面77とを有する導光突起部75が設けられている。このため、第2の入射部72による点光りの抑制を図りつつ、第1の入射部71、第2の入射部72及び導光突起部75によって、半導体発光素子21の光をさらに満遍なく出射部33へ導いて出射部33から均一な光を出射させることができる。従って、各半導体発光素子21からの光を、左右方向に延びる帯状の連続出射面81の全体から均一に出射させることができる。
【0050】
また、導光体30には、出射軸Ax及び左右方向と交差する上下方向に延出する板状の延出部60が形成されている。また、この延出部60は、第1延出部61と第2延出部62と第3延出部63を有しており、第3延出部63には位置決め用の貫通穴63aが設けられている。このため、第3延出部の貫通穴63aに対して固定板部55の突起ピン55aを挿入することで、導光体30を容易にフレーム53に対して位置決めすることができる。また、貫通穴63aが形成された第3延出部63と出射部33との間には第1延出部61と第2延出部62とが存在するため、半導体発光素子21から出射して導光部32を導光される光のうち貫通穴63aまで到達する光は減衰して極僅かとなる。また、貫通穴63aで局所的に散乱する光のうち出射部33まで到達する光も減衰される。従って、半導体発光素子21が点灯している状態を前方から視認した場合、貫通穴63aで散乱する光が目立つことなく、均一に発光しているように見せることが可能となる。
【0051】
また、導光体30における入射部31と出射部33との間の側面である下面30bと対向する位置に、半導体発光素子21から出射されて入射部31に入射されなかった半導体発光素子21の一部の光L4を車両用灯具10の前方に向けて反射させる反射部57が設けられている。このため、半導体発光素子21からの光の利用効率を上げることができる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、入射部31に凹部を形成することで、傾斜面73を有する第2の入射部72Bを形成したが、図5に示すように、入射部31に凸部を形成することで、傾斜面73を有する第2の入射部72Cを形成しても良い。
【0054】
この変形例の場合も、半導体発光素子21から入射された光L2が、図4の形態と同様に屈折される。これにより、比較的に出射強度の強い半導体発光素子21の出射軸Ax近傍の光を、出射部33のうち出射軸Axから離れた部分から出射させることができる。その結果、灯具を外部から視認した際に、導光体30の出射部33の一部が点光りして見えることを抑制することができる。
【0055】
また、この変形例の場合も、第2の入射部72Cに入射した光L2を、図4の形態と同様にポジショニングランプ(車幅灯)の光として利用することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、第2の入射部72(72A,72B,72C)を、半導体発光素子21の出射軸Ax上に配置させたが、第2の入射部72は、半導体発光素子21の出射軸Axの近傍に配置しても良い。出射軸の近傍とは、比較的に出射強度の強い光が出射される領域であり、例えば、その領域の光が外部に直射された場合に点光りの原因となり得る程度の出射強度を有する領域である。そのため、第2の入射部72が出射軸の近傍に配置される場合であっても、出射軸上に配置した場合に近い程度の点光り抑制効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
10:車両用灯具、21:半導体発光素子、30:導光体、31:入射部、32:導光部、32a:隣接部分、33:出射部、57:反射部、60:延出部、63a:(位置決め要素の一例)、71:第1の入射部(第1の光学要素の一例)、72,72A:第2の入射部(第2の光学要素の一例)、73:傾斜面、75:導光突起部、76:第3の入射部(第3の光学要素の一例)、77:内面反射部、81:連続出射面、Ax:出射軸
図1
図2
図3
図4
図5