(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、水とO/W型のエマルション樹脂を含有する乾燥後もタック性が残存する塗布液を充填した塗布具を用いて、該塗布液を任意の形状・文字として爪、皮膚に塗布した後乾燥させ、タック性の発現した塗布描線上に転写箔を押圧接触させ、箔をはがすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を転写することを特徴とする爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
少なくとも、水とO/W型のエマルション樹脂を含有する乾燥後もタック性が残存する塗布液を充填した塗布具を用いて、該塗布液を任意の形状・文字として爪、皮膚に塗布した後乾燥させ、タック性の発現した塗布描線上に色材粉末を押圧接触させ、塗布描線外の粉末を清掃具で払い落とすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を得ることを特徴とする爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
塗布液が、当該塗布液を用いて塗布厚50μmの皮膜を形成させ、25℃、湿度65%の環境下で30分間乾燥した後の、傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、25℃)におけるボールナンバーが1以上である粘着性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
塗布液のO/W型のエマルション樹脂が(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、〔アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)〕コポリマーから選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一つに記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
塗布時の描線は、透明から半透明乳白色であり、乾燥時には白色となることで描線を確認できると共に、描線乾燥の目安が色調(白色度)変化で判別されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一つに記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
描線乾燥の目安を色調(白色度)変化で知らせるため、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーからなるエマルション樹脂を配合することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一つに記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
前記転写箔は、感熱によるホットメルト溶融層を持たないコールド箔であることを特徴とする特徴とする請求項1に記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
塗布厚50μmの皮膜を形成させ、25℃、湿度65%の環境下で30分間乾燥した後の、傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、25℃)におけるボールナンバーが1以上である粘着性を有する、水とO/W型のエマルション樹脂を少なくとも含有する塗布液と、転写箔又は色材粉末と、を含む爪及び皮膚に対する高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すための装飾セット又は化粧セット。
前記塗布液にO/W型のエマルション樹脂が(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、〔アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)〕コポリマーから選ばれる1種以上含むことを特徴とする、請求項8に記載の爪及び皮膚に対する高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すための装飾セット又は化粧セット。
【背景技術】
【0002】
従来より、爪や皮膚に任意の描線で装飾又は化粧を施すには、溶媒に染料及び顔料からなる色材と固着樹脂を混合分散した液体をブラシや筆先で爪や皮膚に塗布し、溶媒が揮発することによって描線を定着させる方法が一般的に知られている。その際、キラキラとした高輝度の描線を得るためには、鱗片状のパール顔料、アルミフレーク、ラメ粒子などが色材として配合されている。
しかしながら、これら鱗片状の色材は、描線上に不均一に配向しているため、粒子感が残り連続した光沢感を出すことが出来ない。また、粒子が大きいためブラシや筆先で目詰まりしやすく高濃度に配合することが困難であった。
【0003】
また、鱗片状の高輝度色材を高濃度に塗布するためには、これらの色材に少量のワックス類やオイルを混合して圧縮成型したプレスパウダーをブラシで塗布する方法が知られている(例えば、アイシャドウ用として市販)。しかし、この方法は、固着樹脂を多量に配合することが出来ないため、塗布後の色材が取れやすいという欠点がある。
【0004】
一方、高輝度描線を表現するために、例えば、爪や皮膚の塗布面に接着剤を塗布し、その上にアルミ蒸着が施された転写箔を押圧接触することで描線を転写する方法が過去に提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
本発明者らは、上記特許文献1、2に記載される各方法をもとに再現試験を行ったところ、一定の条件下では連続した金属光沢感のある描線が得られたものの、外気温や接着剤の乾燥時間により、転写性にバラつきが生じ、手軽に良好な描線を得ることが困難であった。
また、爪、手の甲、上腕内側など塗布する部位においては、接着性能が異なり安定な転写性能を得ることが出来ないなどの課題があることが判った。このため、接着剤の種類・物性、転写箔の各層の構成を種々変更してテストしてみたが、やはり十分な転写性能を得ることが出来なかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、爪及び皮膚に任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を簡便に施す方法、並びに、その装飾又は化粧を施すための装飾セット又は化粧セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、既知の塗布容器に充填された特定の配合からなる塗布液を塗布することと、特定の転写箔又は色材を組み合わせることによって、上記目的の爪及び皮膚に任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すことができることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)に存する。
(1) 少なくとも、水とO/W型のエマルション樹脂を含有する乾燥後もタック性が残存する塗布液を充填した塗布具を用いて、該塗布液を任意の形状・文字として爪、皮膚に塗布した後乾燥させ、タック性の発現した塗布描線上に転写箔を押圧接触させ、箔をはがすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を転写することを特徴とする爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(2) 少なくとも、水とO/W型のエマルション樹脂を含有する乾燥後もタック性が残存する塗布液を充填した塗布具を用いて、該塗布液を任意の形状・文字として爪、皮膚に塗布した後乾燥させ、タック性の発現した塗布描線上に色材粉末を押圧接触させ、塗布描線外の粉末を清掃具で払い落とすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を得ることを特徴とする爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(3) 塗布液が、当該塗布液を用いて塗布厚50μmの皮膜を形成させ、25℃、湿度65%の環境下で30分間乾燥した後の、傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、25℃)におけるボールナンバーが1以上である粘着性を有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(4) 塗布液のO/W型のエマルション樹脂が(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、〔アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)〕コポリマーから選ばれる1種以上であることを特徴とする、上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(5) 塗布時の描線は、透明から半透明乳白色であり、乾燥時には白色となることで描線を確認できると共に、描線乾燥の目安が色調(白色度)変化で判別されることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(6) 描線乾燥の目安を色調(白色度)変化で知らせるため、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーからなるエマルション樹脂を配合することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(7) 前記転写箔は、感熱によるホットメルト溶融層を持たないコールド箔であることを特徴とする特徴とする上記(1)に記載の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法。
(8) 塗布厚50μmの皮膜を形成させ、25℃、湿度65%の環境下で30分間乾燥した後の、傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、25℃)におけるボールナンバーが1以上である粘着性
を有する、水とO/W型のエマルション樹脂を少なくとも含有する塗布液と、転写箔又は色材粉末と、を含む爪及び皮膚に対する高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すための装飾セット又は化粧セット。
(9) 前記塗布液にO/W型のエマルション樹脂が(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、〔アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)〕コポリマーから選ばれる1種以上含むことを特徴とする、上記(8)に記載の爪及び皮膚に対する高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すための装飾セット又は化粧セット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、爪や皮膚へ任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を簡便に施すことができる方法、並びに、その装飾又は化粧を施すための装飾セット又は化粧セットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の爪及び皮膚へ高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施す方法は、第1実施形態として、少なくとも、水とO/W型のエマルション樹脂を含有する乾燥後もタック性が残存する塗布液を充填した塗布具を用いて、該塗布液を任意の形状・文字として爪、皮膚に塗布した後乾燥させ、タック性の発現した塗布描線上に転写箔を押圧接触させ、箔をはがすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を転写することを特徴とするものであり、第2実施形態として、上記第1実施形態と同様の塗布液を充填した塗布具を用いて、該塗布液を任意の形状・文字として爪、皮膚に塗布した後乾燥させ、タック性の発現した塗布描線上に色材粉末を押圧接触させ、塗布描線外の粉末を清掃具で払い落とすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を得ることを特徴とするものである。
以下において、「本発明」というときは、上記第1実施形態及び第2実施形態を含むものである。
【0012】
本発明に用いる塗布液は、少なくとも、O/W型のエマルション樹脂と、水(精製水、イオン交換水、純水など)とを含有する乾燥後もタック性(粘着性)が残存する塗布液であることを特徴としている。
本発明において、乾燥後タック性を発現するためには、特定のO/W型のエマルション樹脂を配合する必要がある。用いることができるO/W型のエマルション樹脂としては、例えば、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、〔アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)〕コポリマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
市販品では、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマーであるニカゾールMH−6010、TS−620(日本カーバイド社製、エマルション樹脂)、〔アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)〕コポリマーであるSOLTEX OPT(ダウ・ケミカル社製、エマルション樹脂)などを用いることができる。
【0013】
本発明の塗布液としては、上記O/W型のエマルション樹脂と水を主成分とするが、これらのO/W型のエマルション樹脂は塗布液全量に対して、(固形分量で)10〜70質量%の範囲で配合することが好ましい。
このO/W型のエマルション樹脂の配合量が10質量%未満の場合は、乾燥後のタック性が不足し、次の作業工程である転写箔の剥離が不十分であったり、または、高輝度又は高隠蔽性の色材の定着が弱く簡単に取れてしまうという問題が生じ、一方、O/W型のエマルション樹脂の配合量が70質量%を超えて多すぎる場合は、塗布体の先にて乾燥固化しやすく、安定した描線を作ることが困難となるため、いずれも好ましくない。
【0014】
本発明における塗布液としては、上記O/W型のエマルション樹脂の他に、任意成分として、粘着力強化のための既知の水溶性樹脂を加えても良く、また、描線の乾燥性をあげるためにエタノールを加えてもかまわない。ただし、エタノールを多量に加えると、前述のO/W型のエマルション樹脂が不安定となり、乾燥後十分なタック性が得られなくなるため、塗布液全量に対して、20質量%以内に止めるのが好ましい。
この他、本塗布液には、既知の防腐剤や粘度調整のための増粘剤を組み合わせても良いが、最終的には乾燥後のタック性が残る必要があるため、材料の選定には好適な組み合わせとなるように調整する。また、粘着性を調整するために既知の水溶性樹脂を併用してもかまわない。ここでいう既知の水溶性樹脂は乾燥によってしだいに粘度が上がり、乾燥後はタック性を失ってしまうため単独使用では本発明の機能は果たさないが、乾燥初期のタック性向上と箔等の転写後の固着性アップのために補助的に配合することが可能である。
たとえば東亜合成社製、ジュリマーAT−210(アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム)や日本触媒社製、PVP−K90(ポリビニルピロリドン)等が使用可能である。
【0015】
本発明に用いる塗布液は、少なくとも、水とO/W型のエマルション樹脂、並びに、必要に応じて、上記各配合成分、残部を水として含有するものであるが、更に好ましくは、描線乾燥の目安を色調(白色度)変化で判別することができるようにするために、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーからなるエマルション樹脂を配合することが望ましい。
本発明の塗布液において、主成分となる上記O/W型のエマルション樹脂は、一般的に乳白色をしているが、着色性は若干弱く、塗布描線が若干わかりにくいといったことがある。ここで、染料、顔料等の色材を配合する方法が考えられるが、この場合、後工程での転写等の描線の品質に悪影響を及ぼすことがある。また、描線が乾いたか乾いていないかの判断がつきにくいため、アクリル系エマルション樹脂である(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーからなるエマルション樹脂を配合することが望ましい。
【0016】
用いることができる(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーとしては、市販品でROMSPHERE PGL、OPULYN 305(以上、ダウ・ケミカル社製、エマルション樹脂)などを用いることができる。
この(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーの配合量としては、塗布液全量に対して、塗布液全量に対して、(固形分量で)2.5〜10質量%の範囲で配合することが好ましい。
この(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーの配合量が2.5質量%未満の場合は、着色力が弱く効果が不十分である、一方、10質量%を超えて多い場合は、乾燥後の塗布面タック性を阻害する要因となるためやはり好ましくない。
【0017】
上記(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーを配合することにより、塗布時には薄く白い描線であるが室温下で2分間経過するに従い白さが明確に増し、乾燥後は一定の白さとなる。このため、塗布箇所がわかるとともに描線の乾燥状態が把握できるため、後工程の箔転写の品質を安定させることができる。
この(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーを上記水とO/W型のエマルション樹脂を含有する塗布液に配合することにより、描線乾燥の目安を色調(白色度)変化で判別することができることとなる。具体的には、塗布時には透明から半透明乳白色(薄く白い描線)となるものであるが室温下で数分間(2分間)程度経過するに従い白さが明確に増し、乾燥後は一定の白さ(白色)となる。このため塗布箇所がわかるとともに描線の乾燥状態が把握できるため、描線乾燥の目安を色調(白色度)変化で簡便に判別することができ、後工程の箔転写、色材の押圧接触などの品質を安定させることができる。
【0018】
本発明において、乾燥後もタック性が残存する塗布液とは、具体的には、当該塗布液を用いて塗布厚50μmの皮膜を形成させ、25℃、湿度65%の環境下で30分間乾燥した後の、傾斜式ボールタック試験(傾斜角30度、25℃)におけるボールナンバーが1以上となる塗布液をいうものである。
本発明(後述する実施例を含む)における傾斜式ボールタック試験は、JIS Z 0237:2009で採用されている測定法である。この測定法は、傾斜角20度、30度または40度の傾斜坂を備えた三角形の装置の頂上に、JIS G 4805に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の2種でJIS B 1501「ボールの呼び」が1/16から1までの大きさの鋼球のうち、5/64、7/64、9/64、15/64及び17/64を除いた合計31種のボールを置き、ボールが助走路(100mm)を転がり、助走路に続く試験片の粘着面(100mm)上で停止した「ボール呼び」の32倍の数値を「ボールナンバー」といい、試験結果は停止した最大のボールナンバーを持って表すものである。この方法は、J.Dow法ともよばれる。
本発明では、上記組成の塗布液を用いて塗布厚50μmの皮膜を形成させ、25℃、湿度65%の環境下で30分間乾燥した後の、上記測定法により傾斜式ボールタック試験(傾斜角30度、25℃)におけるボールナンバーが1以上となる粘着性を有する塗布液となるものが望ましい。粘着性は強ければ強いほど良いため、ボールナンバーの上限は可能な限り大きい方が好ましい。
上記ボールナンバーとなる粘着性を有する塗布液の調整は、塗布液に配合する上記O/W型のエマルション樹脂の種類及びその量、その他の配合成分を好適に組み合わせことなどにより調製することができる。
【0019】
本発明に用いる塗布液は、常法により調製することができ、例えば、塗布具に充填して、爪や皮膚に塗布される。
用いることができる塗布具としては、適量となる塗布液を任意の形状・文字として爪、及び/又は皮膚に塗布できるものであれば、特に限定されず、例えば、塗布液を刷毛付きボトル容器に充填した塗布具、筆穂やペン芯などの塗布手段(塗布先)を備えた塗布容器に充填した塗布具などを挙げることができる。
【0020】
具体的には、任意の文字、図柄を塗布するためには、刷毛のついたボトルや容器本体の先にバルブ機構を介して筆やペン型等の塗布先が設けられた容器に充填した塗布具が好ましい。
例えば、
図1に示す、塗布具Aを挙げることができる。この塗布具Aは、先軸3と後軸4を組み合わせることで塗布液を貯留すると共に弁棒5、塗布先となるペン型の塗布部6、口金7、中芯8、攪拌ボール9等を保持するごく一般のペンタイプの塗布具の構成となっている。ペン型の塗布部6を皮膚等に押圧することにより、弁棒5が開き、塗布液が塗布部6に供給されて塗布されることとなる。勿論本実施形態はこの塗布具のみならず他の形態の塗布具であっても良いものある。キャップ本体2とキャップ飾り具1が嵌合し一体のキャップとなる。キャップは先軸3と嵌合することで、塗布部6を囲繞し外部空間との空気の流通を遮断することができるので、塗布部6の乾燥等を防ぐことができる。
【0021】
本発明では、使用者は、上記各塗布具の塗布先から本発明の塗布液を爪及び/又は皮膚に任意の形状(図柄等)・文字を描画した後、室温下(25℃)にて乾燥させる。好ましくは、少なくとも1分間、通常1〜10分間乾燥させることが望ましく、更に好ましくは、1〜5分間が望ましい。従来の技術では、乾燥時間で接着剤の粘着性が刻々と変わってしまい、早すぎると粘着性が弱く転写箔を転写することできなかった。逆に、乾燥時間が長いと固まってしまうためやはり転写できなくなり、ラメ粒子の付着も困難となっていた。従来において、良好に転写等するには、一定の乾燥時間の範囲で作業を行う必要があり、これらの時間は外気温、湿度にも左右されるため容易ではなかった。本発明では、外気温、湿度によって初期の乾燥時間に差は出るものの、乾燥後はタック性が持続するため、微妙な乾燥時間を気にすることなく安定した品質での転写等が可能となるものである。
【0022】
本発明では、塗布面が乾燥したあとは、第1実施形態では、タック性の発現した塗布描線上に転写箔を押圧接触させ、箔をはがすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を転写することにより目的の爪や皮膚に任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すことができ、また、第2実施形態では、タック性の発現した塗布描線上に色材粉末を押圧接触させ、塗布描線外の粉末を清掃具で払い落とすことで高輝度又は高隠蔽性の描線を得ることにより目的の爪や皮膚に任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を施すことができるものとなる。
本発明の第1実施形態において、用いる転写箔は、高輝度又は高隠蔽性のものを転写できるものであれば、特に限定されず、例えば、1)基材であるPETなどの樹脂フィルムに、2)着色層(剥離層)、3)アルミ蒸着層、4)接着層の順にコーティングされている薄いフィルム、あるいは、アルミ蒸着層の無いいわゆるピグメントホイルと呼ばれるフィルムを挙げることができる。一般的には、1)のPET等面から熱を加えた版で、2)着色層(剥離層)及び4)接着層の樹脂を加熱溶融させ、非転写物に図柄等を転写されるが、本発明ではこの2)着色層(剥離層)及び4)接着層の樹脂層を熱によらず簡単に剥離できるようにする、感熱によるホットメルト溶融層を持たないコールド箔であるものが好ましい。具体的には、樹脂層を薄くしたり、凝集破壊しやすいようシリカを配合したりすることで、より剥離しやすくすることができる。上記着色層の色材は、工業用途に使用できる、いわゆる染料・顔料でもよく、また、より望ましい色材としては、酸化チタン、酸化鉄、コンジョウ、グンジョウ、D&C Black No. 2.、FD&C Blue No. 1およびレーキ顔料、FD & C Yellow No.5およびレーキ顔料、FD & C Yellow No.6およびレーキ顔料、D & C Red No.6、D & C Red No.7、D & C Red No.34、D & C Red No.30、といった化粧品で使用できる色材が好ましい。
本第1実施形態では、高輝度又は高隠蔽性の描線を得るためにアルミ蒸着した転写箔を用いているが、蒸着層を設けないで着色層と接着層だけで構成する上記のピグメントホイルを用いることも何ら問題ない。タック性の出た描線の表面に連続した着色層が転写されるため、光沢のある描線を得ることができる。
【0023】
本発明の第2実施形態では、タック性の出た描線表面に、例えば、鱗片状のパール顔料、アルミフレーク、ラメ粒子、高隠蔽性顔料などの色材をふりかけ軽く押圧した後、筆やティッシュ、刷毛等の清掃具で余分な色材を取り除くと、描線上に高密度に色材が残る。このため、液体に分散した状態で塗布した描線に比べ、高輝度又は高隠蔽性(高濃度)の描線を得ることができる。また、塗布液が乾燥した面は上記タック性が強く残っているため色材が固定されており、前述のプレスパウダーに比べて皮膚等から取れにくい描線を得ることができる。
【0024】
このように構成される本発明方法では、爪や皮膚に任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を簡便に施すことができるものとなる。
また、本発明の装飾セット又は化粧セットは、爪や皮膚に任意の描線で高輝度又は高隠蔽性の装飾又は化粧を簡便に施すためものであり、上記のような塗布液を充填した容器又は塗布具、並びに、インクジェットカートリッジ及びインクジェットプリンターと、高輝度又は高隠蔽性の描線を得るためにアルミ蒸着した転写箔、ピグメントホイル、鱗片状のパール顔料、アルミフレーク、ラメ粒子、高隠蔽性顔料などの色材粉末とを組み合わせたセットにすることによって、本発明方法の実施を容易に行うことが出来る。
【実施例】
【0025】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
O/W型エマルション樹脂 30.0質量%
〔SOLTEX OPT、ダウ・ケミカル社製、アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22)コポリマー、固形分量48%〕
エタノール 10.0質量%
(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマー 20.0質量%
〔ROMSPHERE PGL、ダウ・ケミカル社製、固形分量25%〕
水(精製水) 24.0質量%
粘着性調整樹脂(ジュリマー AT−210、東亞合成社製) 15.0質量%
ヒドロキシエチルセルロース(増粘剤) 0.1質量%
フェノキシエタノール(防腐剤) 0.9質量%
上記原料成分を混合撹拌し塗布液を得た。
上述の傾斜式ボールタック測定法で、タック性を測定したところ、ボールナンバーが1であった。
この塗布液をバルブ機構を介し先端にポリアセタール樹脂からなるペン型の塗布先が設けられた
図1に示す容器に充填し塗布具を作製した。
次に、塗布液をペン型の塗布先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、金色の転写箔(村田金箔社製、コールド箔NSA−6)を押圧しゆっくり剥がしたところ、腕上には高輝度かつ高隠蔽性の金色描線が転写された。同様に10分間の乾燥後、及び20分間の乾燥後に転写箔を押圧しゆっくり剥がしたところ、時間に関係なく腕上には高輝度かつ高隠蔽性の金色描線が転写された。
上記腕上での塗布時には、塗布液は透明から半透明乳白色(薄く白い描線)となるものであったが室温下で上記2分間程度経過するに従い白さが明確に増し、乾燥後は一定の白さ(白色)となっており、塗布箇所が簡単にわかるとともに描線の乾燥状態が把握でき、描線乾燥の目安を色調(白色度)変化で簡便に判別することができることがわかった。なお、この色調(白色度)変化による判別は、下記実施例2〜5でも同様に簡便に判別することができた。
【0027】
〔実施例2〕
上記実施例1で得られた塗布液、塗布具を用い、同様に塗布液を塗布先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、銀色のラメ粉末(ダイヤ工業社製、ダイヤモンドピースH−55UC、平均粒度150μm)をふりかけ、ティッシュペーパーで押圧した後、余剰のラメ粉末を刷毛で落としたところ、腕上には高輝度かつ高隠蔽性の銀色の描線が残った。
【0028】
〔実施例3〕
上記実施例1における、O/W型エマルション樹脂30%を下記のエマルション樹脂30%に置換えた他は実施例1と同配合で混合撹拌し塗布液を得た。
O/W型エマルション樹脂 30.0質量%
〔ニカゾール MH−6010、日本カーバイド社製、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、固形分量58%〕
この塗布液を上述の傾斜式ボールタック測定法で、タック性を測定したところ、ボールナンバーが2であった。
実施例1と同様にこの塗布液をバルブ機構を介し先端にポリアセタール樹脂からなるペン型の塗布先が設けられた
図1に示す容器に充填し塗布具を作製した。
次に、塗布液をペン型の塗布先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、金色の転写箔(村田金箔社製、コールド箔NSA−6)を押圧しゆっくり剥がしたところ、腕上には高輝度かつ高隠蔽性の金色描線が転写された。
【0029】
〔実施例4〕
上記実施例1における、O/W型エマルション樹脂30%を下記のエマルション樹脂30%に置換えた他は実施例1と同配合で混合撹拌し塗布液を得た。
O/W型エマルション樹脂 30.0質量%
〔ニカゾール TS−620、日本カーバイド社製、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、固形分量58%〕
この塗布液を上述の傾斜式ボールタック測定法で、タック性を測定したところ、ボールナンバーが2であった。
実施例1と同様にこの塗布液をバルブ機構を介し先端にポリアセタール樹脂からなるペン型の塗布先が設けられた
図1に示す容器に充填し塗布具を作製した。
次に、塗布液をペン先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、金色の転写箔(村田金箔社製、コールド箔NSA−6)を押圧しゆっくり剥がしたところ、腕上には高輝度かつ高隠蔽性の金色描線が転写された。
【0030】
〔実施例5〕
上記実施例1における、粘着性調整樹脂(ジュリマー AT−210、東亞合成社製)15%をPVP−K90(日本触媒社製)2%に変更し、差分13%を水(精製水)に置き換えた(水分合計37%)他は実施例1と同配合で混合撹拌し塗布液を得た。
この塗布液を上述の傾斜式ボールタック測定法で、タック性を測定したところ、ボールナンバーが2であった。
実施例1と同様にこの塗布液をバルブ機構を介し先端にポリアセタール樹脂からなるペン型の塗布先が設けられた
図1に示す容器に充填し塗布具を作製した。
次に、塗布液をペン先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、金色の転写箔(村田金箔社製、コールド箔NSA−6)を押圧しゆっくり剥がしたところ、腕上には高輝度かつ高隠蔽性の金色描線が転写された。
【0031】
〔実施例6〕
上記実施例1と同じ塗布液及び塗布具を用いて、腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、緑色のピグメントホイル(村田金箔社製、GF−177グリーン)を押圧しゆっくり剥がしたところ、腕上には高隠蔽性の緑色描線が転写された。
【0032】
〔実施例7〕
上記実施例5と同じ塗布液を、インクカートリッジICBK57(EPSON社製)を丁寧に洗浄したものに充填し、これをPX−W8000プリンター(EPSON社製)を一部改造したものにセットした。このプリンターにより手の甲に任意の図柄を描かせ、室温下で、2分間の乾燥後、金色の転写箔(村田金属製、コールド箔NSA−6)を押圧しゆっくり剥がしたところ、手の甲には高輝度かつ高隠蔽性の金色図画が転写された。
【0033】
〔比較例1〕
上記実施例1における、乾燥後タック性の出るO/W型エマルション樹脂30%を下記の一般的なエマルション樹脂30%に置換えた他は実施例1と同配合で混合撹拌し塗布液を得た。
O/W型エマルション樹脂 30.0質量%
〔ヨドゾール GH800F、アクゾノーベル社製、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、固形分量45%〕
この塗布液を上述の傾斜式ボールタック測定法で、タック性を測定したところ、ボールナンバーが1よりも小さく測定不可能であった。すなわち、乾燥後のタック性は発現しなかった。
実施例1と同様にこの塗布液をバルブ機構を介し先端にポリアセタール樹脂からなるペン型の塗布先が設けられた
図1に示す容器に充填し塗布具を作製した。
次に、塗布液をペン型の塗布先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、金色の転写箔(村田金箔社製、コールド箔NSA−6)を押圧しゆっくり剥がしたところ、箔は転写されなかった。また10分間、20分間乾燥したのちに箔を押圧しゆっくり剥がしたがやはり箔は転写されなかった。2分後では乾燥が不十分で液の粘度が低く十分なタック性が発現せず、10分乃至20分後では液が乾燥してしまって樹脂皮膜はタック性のない表面状態になっているためやはり箔は転写できない。この間にちょうど良い粘着性の出るポイントがあると思われるが、塗布厚、温度、湿度によってこの時間が変化するため安定した品質で転写するのは非常に困難であった。
【0034】
〔比較例2〕
上記実施例1で得られた塗布液、塗布具を用い、同様に塗布液をペン型の塗布先から出しながら腕上に任意の図柄を描いた。
室温下で、2分間の乾燥後、一般的に使用される金色の熱転写性転写箔(カタニ産業社製、FINE FOIL ST−4−H)を押圧しゆっくり剥がしたが、箔は転写されなかった。一般に使用される熱転写性転写箔は、基材であるPETフィルムと剥離層の強度が強く加熱により剥離層を溶融することで転写することができるが、本発明の塗布液のタック性だけでは剥離させることが出来なかったものと考えられる。