特許第6164929号(P6164929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6164929カーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164929
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】カーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 16/32 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   C08F16/32
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-105793(P2013-105793)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-227431(P2014-227431A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北條 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 育巳
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/014837(WO,A1)
【文献】 特開2010−001414(JP,A)
【文献】 特表平03−502923(JP,A)
【文献】 特表平04−505177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 16/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物と、光開始剤と、を含む樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、−X−、−X−は、それぞれ独立に、−C−、−C−、−COC−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(2)の置換基を表す。式(1)中、−Z−は、式(3)の置換基を表す。式(1)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基および環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【化2】
【化3】
【請求項2】
分子式(a)で示されるカーボネートジオールと、分子式(b)で示されるジイソシアネートと、分子式(c)で示される水酸基含有ビニルエーテルモノマーとの反応により得られる式(1)に記載のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物と、光開始剤と、を含む樹脂組成物。
【化4】
[式(a)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基および環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子の一部にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【化5】
【化6】
[式(c)中、−X−は、−C−、−C−、−COC−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(3)の置換基を表す。]
【化7】
【化8】
[式(1)中、−X−、−X−は、それぞれ独立に、−C−、−C−、−COC−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(2)の置換基を表す。式(1)中、−Z−は、式(3)の置換基を表す。式(1)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基および環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルエーテルは、可とう性に優れるため、各種接着剤、インク組成物、コーティング膜、潤滑油、電気部品材料、光学材料および医療用材料に用いられている。
【0003】
ポリビニルエーテルを含むコーティング膜は、可とう性が優れるものの、実用に供する強度を保つことが困難であった。ポリビニルエーテルを含むコーティング膜の強度の改良のため、ポリビニルエーテルの主鎖構造の検討が提案されている。
【0004】
特許文献1には、エーテル骨格を含有するポリビニルエーテル組成物を含むコーティング膜が開示されている。一般に、エーテル骨格を含有するポリビニルエーテル組成物を含むコーティング膜は、柔軟性、耐加水分解性、伸縮性を有する。
【0005】
特許文献2には、エステル骨格を含有するポリビニルエーテル組成物が開示されている。このエステル骨格を含有する組成物は、コーティング用途に用いた際、強靭性、耐熱性、耐候性という特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2843767号公報
【特許文献2】特許第3115317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物を基材に塗布後、光硬化して得られた塗膜は、伸び特性が小さく、また、膜の強度が小さくなるという問題がある。これはこの組成物のエーテル骨格のエーテル部位に強度がないためと考えられる。
さらに、この組成物の硬化物は、強度を得るために高分子化すると、柔軟性(可とう性)や伸び特性が不十分になるという問題がある。
また、特許文献2に記載のエステル骨格を有する組成物は、エーテル骨格を有する組成物よりも高い強度を示すものの、ビニルエーテル部位が柔軟性を有するために、コーティング膜の強度が十分ではないという問題があった。
さらに、この組成物の硬化物は、強度を得るために高分子化すると、柔軟性(可とう性)や伸び特性が不十分になるという問題がある。
【0008】
本発明者は、優れた伸び特性と強度とを有するコーティング膜を得るため、新規のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物を開発した。さらに、本発明者は、この樹脂化合物をコーティング用途に用いることで、優れた伸び特性と強度とを共に有することを見出し、本発明を完成することができた。
【0009】
本発明の課題は、コーティング膜に用いた際に、優れた伸び特性と強度とを有するカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意研究した結果、以下のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物をコーティング膜に用いた際に、優れた伸び特性と、強度とを同時に有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の態様を包含する。
【0011】
[1]式(1)で示されるカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物である。
【0012】
【化1】
[式(1)中、−X1−、−X2−は、それぞれ独立に、−C−、−C−、−COC2−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(2)の置換基を表す。式(1)中、−Z−は、式(3)の置換基を表す。式(1)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基および環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
[2]分子式(a)で示されるカーボネートジオールと、分子式(b)で示されるジイソシアネートと、分子式(c)で示される水酸基含有ビニルエーテルモノマーとの反応により得られる[1]に記載のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物である。
【0016】
【化4】
[式(a)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基および環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子の一部にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
[式(c)中、−X−は、−C−、−C−、−COC2−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(3)の置換基を表す。]
【0019】
【化7】
【0020】
[3]重量平均分子量が700〜50,000の範囲であることを特徴とする[1]または[2]に記載のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コーティング膜に用いた際に、優れた伸び特性と強度とを同時に有するカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物を詳細に説明する。なお、本明細書において、カーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物を単に樹脂化合物と称することがある。
【0023】
本発明の樹脂化合物は、式(1)で表されるカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物である。
【0024】
【化8】
[式(1)中、−X1−、−X2−は、それぞれ独立に、−C−、−C−、−COC2−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(2)の置換基を表す。式(1)中、−Z−は、式(3)の置換基を表す。式(1)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜50の分岐鎖状炭化水素基および炭素数3〜50の環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
本発明の樹脂化合物(1)は、ビニルエーテル基を2つ持つ。そのため、本発明の樹脂化合物(1)と光重合開始剤とを含む樹脂組成物を基材等に塗布後、光照射することでコーティング膜を容易に得ることができる。
【0028】
本発明の樹脂化合物(1)は、以下に示す分子式(a)で表されるカーボネートジオールと、分子式(b)で表されるジイソシアネートと、分子式(c)で表される水酸基含有ビニルエーテルモノマーとの反応により得られる。なお、反応時、分子式(c)で表される水酸基含有ビニルエーテルモノマーが1種類の場合、本発明の樹脂化合物(1)において式(1)中の−X1−および−X2−は同一となる。
【0029】
【化11】
[式(a)中、−R−は、炭素数3〜50の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜50の分岐鎖状炭化水素基および炭素数3〜50の環状炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一つの炭化水素基を表す。−R−は、構成する原子の一部にヘテロ原子を含んでもよい。また、nは、正の整数を表す。]
【0030】
【化12】
【0031】
【化13】
[式(c)中、−X−は、−C−、−C−、−COC2−、−COCOC−、−C−、−COC−、−COCOC−または式(3)の置換基を表す。]
【0032】
【化14】
【0033】
本発明の樹脂化合物(1)は、分子式(a)で示されるようにカーボネート骨格を有するため、高強度、高耐熱性を有し、また、分子式(b)で示されるようにイソホロン骨格のジイソシアネート構造を有するため、高強度であり、さらに、分子式(c)で示されるように水酸基含有ビニルエーテルモノマー構造を有するため、柔軟性、速硬化性を有する。
【0034】
本発明に用いる樹脂化合物(1)の重量平均分子量は、798〜50,000、好ましくは798〜10,000の範囲であることが好ましい。樹脂化合物(1)の重量平均分子量が50,000以上になると、樹脂化合物(1)が有するカーボネート骨格により結晶性が高くなり粘度が上昇するため、樹脂化合物(1)の製造時に、樹脂化合物(1)の取扱いが困難となる。なお、本発明に用いる樹脂化合物(1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出することができる。
【0035】
本発明の樹脂化合物(1)と光重合開始剤とを含有する樹脂組成物を、ポリプロピレンフィルム等の基材に塗布後、光硬化して得られたコーティング膜は、優れた伸び特性を有し、かつコーティング膜の強度が大きいという特徴を有する。
【0036】
本発明に好適に用いることができる光重合開始剤は、たとえば、アリールスルホニウム塩誘導体(ダウケミカル社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974;ADEKA社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172;サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−110P、CPI−110A、CPI−210S;三和ケミカル社製のTS−91、TS−01;BASF社製のイルガキュア PAG270、PAG290、GSID26−1;Lamberti社製のEsacure1187、Esacure1188等)、アリルヨードニウム塩誘導体(ローディア社製のPHOTOINITIATOR 2074;BASF社製のイルガキュア PAG250等)、オキシムスルホン酸誘導体(BASF社製のイルガキュア PAG103、PAG108、PAG121、PAG203、CGI725、CGI1905、CGI1906、CGI1907)、アレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤およびその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。
なお、優れた硬化性を示し、かつ得られるコーティング膜の臭気を抑えることができるため、本発明に特に好適に用いることができる光重合開始剤は、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−110P(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート)、CPI−210S(リン系アニオン含有トリアリールスルホニウム塩)、三和ケミカル社製のTS−91(トリス(4−メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスファート)、BASF社製のイルガキュア PAG290、ローディア社製のPHOTOINITIATOR 2074が挙げられる。
【0037】
本発明の樹脂化合物(1)を含む樹脂組成物は、樹脂化合物(1)以外のビニルエーテルモノマーを含んでもよい。このようなビニルエーテルモノマーは、たとえばエチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテルが挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂化合物(1)を含む樹脂組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で、各種樹脂、レベリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合禁止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増感剤等を含有することができる。
【0039】
本発明の樹脂化合物(1)を含む樹脂組成物は、ポリプロピレンフィルム等の基材に塗布後光硬化することで、伸び特性を有し、かつ膜の強度が大きいコーティング膜となる。したがって、本発明の樹脂化合物は、コーティング膜として有用である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
本発明の樹脂化合物の重量平均分子量(以下Mwと略す)は、GPCを用いた標準ポリスチレン換算法により算出し求めた。Mwは、GPC分析システム装置としてHLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)を、カラムとして直列に2本接続したTSKgel SuperMultiporeHZ−H(東ソー株式会社製)を、検出器として示差屈折率計(RI)(東ソー株式会社製 HLC−8220装置組込)を、移動相としてテトラヒドロフラン(流速0.35mL/分)をそれぞれ用いて、カラム温度40℃の条件にて求めた。
【0042】
(実施例1)
〔カーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物の合成〕
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、プラクセルCD205PL(株式会社ダイセル製:ポリカーボネートジオール)100質量部、イソホロンジイソシアネート92質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.21質量部、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE) 46質量部を投入し、さらに2時間反応させた。反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。このようにして透明液体である樹脂化合物を得た。樹脂化合物のMwは2,100であった。
【0043】
(実施例2)
〔カーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物の合成〕
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、クラレポリオールC−590(株式会社クラレ製:ポリカーボネートジオール)100質量部、イソホロンジイソシアネート90質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.17質量部、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)44質量部を投入し、さらに2時間反応させた。反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。このようにして、透明液体である樹脂化合物を得た。樹脂化合物のMwは2,000であった。
【0044】
(比較例1)
〔末端にビニルエーテル基を有するカプロラクトンジオール化合物の合成〕
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、ポリカプロラクトンジオール(株式会社ダイセル製 商品名 プラクセル210CP)100質量部、イソホロンジイソシアネート44.7質量部、及びジブチルスズジラウレート0.01質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.09質量部および4−ヒドロキシブチルビニルエーテル22.2質量部を投入し、さらに2時間反応させた。冷却後、透明液体であるカプロラクトンジオール化合物を得た。
なお、反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。カプロラクトンジオール化合物のMwは3,200であった。
【0045】
(比較例2)
〔末端にビニルエーテル基を有するポリテトラメチレングリコール化合物の合成〕
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、ポリテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製 商品名 PTMG1000)100質量部、イソホロンジイソシアネート44.4質量部、及びジブチルスズジラウレート0.01質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.09質量部および4−ヒドロキシブチルビニルエーテル22.1質量部を投入し、さらに2時間反応させた。冷却後、透明液体であるポリテトラメチレングリコール化合物を得た。
なお、反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。ポリテトラメチレングリコール化合物のMwは4,040であった。
【0046】
(比較例3)
〔末端にビニルエーテル基を有するポリプロピレングリコール化合物の合成〕
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、ポリプロピレングリコール(三洋化成株式会社製 商品名 サンニックスPP−400)100質量部、イソホロンジイソシアネート110質量部、及びジブチルスズジラウレート0.04質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.21質量部および4−ヒドロキシブチルビニルエーテル54質量部を投入し、さらに2時間反応させた。冷却後、透明液体としてポリプロピレングリコール化合物264質量部を得た。
なお、反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。ポリプロピレングリコール化合物のMwは1,700であった。
【0047】
(コーティング膜の調製)
コーティング膜は、表1に示す配合にて各実施例のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物および各比較例の化合物に光重合開始剤(サンアプロ株式会社製 商品名 CPI−210S)を配合して組成物を調製した。次いでこの組成物を、塗布膜厚90μmアプリケーターを用いてポリプロピレンフィルム上にコーティングし、照射強度160Wの高圧水銀ランプを用いて、照射量1000mJ/cmの条件で硬化させた後、ポリプロピレンフィルムから剥離することでコーティング膜を調製した。得られたコーティング膜は、膜厚70〜80μmであった。
【0048】
(引張強度試験)
JIS K7127に準じ、引張速度10mm/minの条件にて伸度(%)と強度(MPa)とを測定した。前記コーティング膜を、幅15mmの短冊型に切断し、試験片を作製した。試験片の伸度および強度の測定は、チャック間の距離を25mmの条件でおこなった。
コーティング膜の伸度が90%以上かつ強度が10MPa以上のものを○、伸度が90%未満または強度が10MPa未満のいずれかであれば×とそれぞれ判定した。
【0049】
表1に、各実施例の樹脂化合物および各比較例の化合物の配合と、これらの化合物を含むコーティング膜の伸び(伸度)と強度の測定値と、判定結果とを示した。
表1に示した各実施例の評価結果によれば、本発明の樹脂化合物を含む樹コーティング膜は、優れた伸び特性と強度とを共に有していることが確認された。
一方、比較例に示したとおり、カプロラクトンジオール化合物を含むコーティング膜は、伸び特性を有するものの強度が弱く、また、ポリテトラメチレンジイソシアネート化合物またはポリプロピレングリコール化合物を含むコーティング膜は、それぞれ伸び特性と強度とが共に小さく、したがってそれぞれコーティング膜としての有用性が劣る。
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のカーボネート骨格含有ビニルエーテル系樹脂化合物は、伸び特性と強度とを共に有するため、コーティング膜として有用である。