特許第6164937号(P6164937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164937
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】エアレス容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20170710BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20170710BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B65D83/00 K
   B65D47/34 100
   B65D1/02 111
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-111783(P2013-111783)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-231362(P2014-231362A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】飯島 恵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英哉
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−264979(JP,A)
【文献】 特開2011−011781(JP,A)
【文献】 特開平09−058750(JP,A)
【文献】 特開2001−106252(JP,A)
【文献】 特開2004−203443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00,83/08 − 83/76
B65D 1/02
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の収容部に収容された内容液を、前記収容部の内容積を減少させながら、容器本体の口首部に装着されたポンプ装置によって吐出させるエアレス容器あって、
内容液が使用される前の状態において、中空の中栓アダプターが、前記容器本体の口首部の内側に嵌め込まれていると共に、前記口首部を覆って装着部材が装着されており、
前記中栓アダプターは、前記容器本体の口首部の内径と同様の外径の嵌着部分を有する、前記口首部の長さより長い筒状部と、該筒状部の下端部を閉塞し、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部を差し込み可能な開閉弁を備える底部とからなり、
該開閉弁は、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部が差し込まれていない状態および前記ポンプ装置が前記口首部に装着された状態のいずれの状態においても、前記底部において液体を通さない開閉弁であり、
前記中栓アダプターは、前記嵌着部分が嵌着されるまで前記口首部に押し込まれて、前記開閉弁を備える底部を、前記口首部より下方に配置した状態で、且つ前記開閉弁を備える底部を、前記収容部に収容された内容液の液面よりも下方に配置した状態で、前記口首部に取り付けられているエアレス容器。
【請求項2】
前記開閉弁を備える底部は、弾性を有する合成樹脂からなり、スリットが形成されていることにより、前記開閉弁として機能する請求項1記載のエアレス容器。
【請求項3】
前記中栓アダプターの前記筒状部の外周面には、下端部分から少なくとも上端近傍部分に至るまで空気排出溝が形成されている請求項1又は2記載のエアレス容器。
【請求項4】
前記中栓アダプターは、前記開閉弁を有する底部の上方に、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部を差し込み可能な補助開閉弁を備えており、該補助開閉弁は、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部が差し込まれていない状態および前記ポンプ装置が前記口首部に装着された状態のいずれの状態においても、前記底部の上方において液体を通さない開閉弁である請求項1〜3のいずれか1項記載のエアレス容器。
【請求項5】
前記筒状部は、その軸方向の略全長に亘って、前記容器本体の前記口首部の内径と同様の外径を有する中空の円筒形状を備えている請求項1〜4のいずれか1項記載のエアレス容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のエアレス容器に用いる中空の中栓アダプターであって、
前記容器本体の口首部の内径と同様の外径の嵌着部分を有する、前記口首部の長さより長い筒状部と、該筒状部の下端部を閉塞する、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部を差し込み可能な開閉弁を備える底部とからなり、該開閉弁は、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部が差し込まれていない状態および前記ポンプ装置が前記口首部に装着された状態のいずれの状態においても、前記底部において液体を通さない開閉弁である中栓アダプター。
【請求項7】
前記筒状部の外周面には、下端部分から少なくとも上端近傍部分に至るまで空気排出溝が形成されている請求項6記載の中栓アダプター。
【請求項8】
前記筒状部と、前記開閉弁を有する底部とが一体となった一体成形品として形成されている請求項6又は7記載の中栓アダプター。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載のエアレス容器の容器本体の口首部に、前記装着部材としてポンプ装置が装着されているポンプ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容部に収容された内容液を、空気と置換することなく、すなわち収容部の内容積を減少させながら吐出させるエアレス容器、及び該エアレス容器に用いる中栓アダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
エアレス容器は、収容部に収容された内容液を、空気と置換することなく、収容部の体積(内容積)を減少させながら吐出する容器である。エアレス容器としては、例えば、保形性を有する外容器と、外容器の内部に剥離可能に装着された、柔軟な可撓性を有する内袋とからなる容器本体を有しており、内袋を収容部として内容液が充填収容されると共に、容器本体の口首部に装着されたポンプ装置等の作用によって、内袋を減容変形させながら内容液を吐出させる一方で、外容器に形成された空気流入孔を介して内袋と外容器との間に空気を送り込むことによって、外容器による容器本体の外観形状を保持できるようにした、いわゆるデラミ容器(二重剥離容器)が知られている。
【0003】
また、他のエアレス容器として、例えば、保形性を有する容器本体の内部に、上下に摺動可能に中皿が設けられており、この中皿よりも上方部分を収容部として内容液が充填収容されると共に、ポンプ装置の作用によって、中皿を上昇させることにより収容部を減容させながら内容液を吐出させるようにした、いわゆるポップル容器や、内容液が充填収容された可撓性を有するチューブ容器の一端部にポンプ装置が取り付けられており、ポンプ装置の作用によって、チューブ容器を減容変形させながら内容液を吐出させるようにした、いわゆるチューブポンプ容器等が知られている。
【0004】
これらのエアレス容器によれば、収容部の内側面に付着しやすい例えば粘度の高い内容液が収容されている場合でも、効率良く内容液を吐出させることが可能になる。
【0005】
一方、近年、各種の液体や、その他の内容物を収納する合成樹脂製の容器について、環境負荷の低減が図られるようになっており、例えば内容液を吐出させるポンプ装置等の吐出装置を、内容液の収容部を有する容器本体に着け替え可能に形成することで、高価な吐出装置をその都度廃棄することなく長期間使用できるようにして、材料費や製造コストを低減することが行われている。
【0006】
例えば、収容部に内容液を収容した着け替え用のボトル容器に、内容液を吐出させるポンプ装置を着け替えることを可能にした、ポンプ付き液体容器が種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の汲み出しポンプ付液体容器用の詰め替えボトルでは、詰め替えボトルの上端の開口部に嵌合せしめて内溶液の収容部を密封する中栓が取り付けられており、この中栓には、ポンプ装置のシリンダー部分を挿入させるシリンダー受け口が形成されていると共に、このシリンダー受け口の下端には、密封用のシール膜が設けられた吸引口が形成されており、シリンダー受け口にポンプ装置を挿入したときに、ポンプのシリンダー部分の先端でシール膜を破断することで、吸引口を開封するようになっている。これによって、ポンプ装置の着け替え時に、雑菌や異物がボトルの内部に持ち込まれないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−292073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
収容部に収容された内容液を、空気と置換することなく、収容部の内容積を減少させながら吐出させるエアレス容器では、特に粘度の高い内容液を収容した場合に、収容部に充填収容された内容液の液面と容器本体の上端(先端)の開口部との間に形成されるヘッドスペースに残存する空気が、例えば容器の搬送中に、収容された内容液の内部に混入すると、混入した空気が抜け難くなって長期に滞留することで、容器の使用中に、空気を混入した内容液がポンプ装置から吐出されるエア咬みの問題を生じ易い。
【0009】
このため、エアレス容器が製品化された状態において、収容部に充填収容された内容液の液面と、容器本体の上端の開口部との間に形成されるヘッドスペースの容積を、極力減少させることが望ましい。ところが、特許文献1の詰め替えボトルでは、ヘッドスペースの容積を十分に減少させることができず、また吸引口は、シリンダー部分の先端によってシール膜が破断されることで開封されることから、使用者が使用途中で中栓からポンプ装置を取り外すと、破断され開封されたままの吸引口から空気が収容部に入り込み易くなって、再度ポンプ装置を取り付けて容器を使用した際に、エア咬みの問題を生じ易くなる。
【0010】
本発明は、内容液が使用される前の状態において、内容液の液面と、容器本体の上端の開口部との間に形成されるヘッドスペースの容積を十分に減少させると共に、使用者が使用途中でポンプ装置を取り外した場合でも、空気が収容部に入らないようにして、内容液を吐出する際にエア咬みが生じるのを効果的に回避することのできるエアレス容器、及び該エアレス容器に用いる中栓アダプターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、容器本体の収容部に収容された内容液を、前記収容部の内容積を減少させながら、容器本体の口首部に装着されたポンプ装置によって吐出させるエアレス容器であって、内容液が使用される前の状態において、中空の中栓アダプターが、前記容器本体の口首部の内側に嵌め込まれていると共に、前記口首部を覆って装着部材が装着されており、前記中栓アダプターは、前記容器本体の口首部の内径と同様の外径の嵌着部分を有する、前記口首部の長さより長い筒状部と、該筒状部の下端部を閉塞し、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部を差し込み可能な開閉弁を備える底部とからなる。該開閉弁は、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部が差し込まれていない状態および前記ポンプ装置が前記口首部に装着された状態のいずれの状態においても、前記底部において液体を通さない開閉弁であり、前記中栓アダプターは、前記嵌着部分が押し込まれて、前記底部を前記口首部の下方に配置した状態で前記口首部に取り付けられているエアレス容器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明は、前記エアレス容器に用いる中空の中栓アダプターであって、前記容器本体の口首部の内径と同様の外径の嵌着部分を有する、前記口首部の長さより長い筒状部と、該筒状部の下端部を閉塞する、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部を差し込み可能な開閉弁を備える底部とからなり、該開閉弁は、前記ポンプ装置のシリンダー部又はチューブ部が差し込まれていない状態および前記ポンプ装置が前記口首部に装着された状態のいずれの状態においても、前記底部において液体を通さない開閉弁である中栓アダプターを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記エアレス容器の容器本体の口首部に、前記装着部材としてポンプ装置が装着されているポンプ付き容器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアレス容器、又は該エアレス容器に用いる中栓アダプターによれば、内容液の液面と、容器本体の上端の開口部との間に形成されるヘッドスペースの容積を十分に減少させると共に、使用者が使用途中でポンプ装置を取り外した場合でも、空気が収容部に入らないようにして、内容液を吐出する際にエア咬みが生じるのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好ましい第1実施形態に係るエアレス容器である、ポンプ装置が取り付けられたデラミ容器の構成を説明する略示断面図である。
図2】本発明の好ましい第1実施形態に係るエアレス容器の要部略示断面図である。
図3】(a)は中栓アダプターの断面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
図4】容器本体の口首部に中栓アダプター及びポンプ装置を取り付ける工程の説明図である。
図5】本発明の好ましい第2実施形態に係るエアレス容器である、ポンプ装置が後から取り付けられる着け替え用のデラミ容器の構成を説明する要部略示断面図である。
図6】中栓アダプターの他の形態を例示する断面図である。
図7】(a)、(b)は、中栓アダプターのさらに他の形態を例示する略示断面図である。
図8】本発明の好ましい他の実施形態のエアレス容器である、(a)はポップル容器の略示部分断面図、(b)はチューブポンプ容器の略示部分断面図である。
図9】(a)〜(d)は、中栓アダプターの筒状部のさらに他の形態を例示する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す本発明の好ましい第1実施形態に係るエアレス容器10は、保形性を有する外容器11と、外容器11の内部に剥離可能に貼り付けられた、柔軟な内袋12とからなる容器本体13を有しており、ポンプ装置14が予め取り付けられている。容器本体13はいわゆるデラミ容器(二重剥離容器)と呼ばれるものであって、内袋12を収容部として内容液が充填され収容される。エアレス容器10においては、容器本体13の口首部13aに装着されたポンプ装置14の作用によって、内袋12の体積(内容積)を減らしながら内容液を吐出させる一方で、内袋の体積が減ることで外容器11の底部に形成された空気流入孔を介して内袋12と外容器11との間に空気が吸い込まれることによって、外容器11すなわち容器本体13の外観形状を保持できる。本第1実施形態のエアレス容器10は、容器本体13の口首部13aに後述する中栓アダプター15が取り付けられていることにより、内容液が使用される前の状態において、内袋12の上端部に形成されるヘッドスペースの容積を効果的に減少させると共に、使用者が使用途中にポンプ装置14を取り外した場合でも、空気が内袋12の内部に流入しないようにする機能を備える。
【0017】
そして、本第1実施形態のエアレス容器10は、容器本体13の内袋12による収容部に収容された内容液を、空気と置換することなく、内袋12の内容積を減少させて変形させながら、容器本体13の口首部13aに予め取り付けられたポンプ装置14によって吐出させるデラミ容器であって、図1及び図2に示すように、内容液が使用される前の状態において、中空の中栓アダプター15が、容器本体13の口首部13aの内側に嵌め込まれていると共に、口首部13aを覆って、装着部材としてのポンプ装置14が装着されている。中栓アダプター15は、容器本体13の口首部13aの内径と同様の外径の嵌着部分17aを好ましくは上端部に有する、口首部13aの長さより長い筒状部17と、筒状部17の下端部を閉塞し、ポンプ装置14のチューブ部14aを差し込み可能な開閉弁18を備える底部19とからなる。開閉弁18は、ポンプ装置14のチューブ部14aを、液密状態を保ったままで、言い換えると液がその前後および途中のいずれにおいても漏れない状態を維持したままで、挿通させることが可能な開閉弁となっている。すなわち、開閉弁18は、ポンプ装置14のチューブ部14aが差し込まれていない状態およびポンプ装置14が口首部13aに装着された状態のいずれの状態においても、底部19において液体を通さない開閉弁となっている。中栓アダプター15は、嵌着部分17aが嵌着(中途半端に嵌った状態を含まない。)されるまで押し込まれて、底部19を口首部13aのさらに下方に配置した状態で口首部13aに取り付けられている。中栓アダプター15は、好ましくはこれの上端面が口首部13aの上端面と面一又は略面一に配置されるまで、嵌着部分17aが口首部13aに押し込まれている。
【0018】
また、本第1実施形態の容器は、例えば、乳液、クリーム、ジェル状製剤等の、粘度が5000〜100000mPa・s程度の液体を収容するのに好ましく、さらに10000〜60000mPa・s程度の粘度の液を収容するためにはより好ましい。特に20000〜50000mPa・s程度の、高い粘度の内容液の場合に、最も好ましい。すなわち、収容部12に充填収容された内容液が高い粘度の内容液であると、内容液の内部に空気が混入した場合に、混入した空気が抜け難くなって長期に内部に滞留することで、容器の使用中に、内容液が空気を混入した状態で吐出されるエア咬みが生じ易くなる。本第1実施形態のエアレス容器10によれば、ヘッドスペースの容積を十分に減少させることができ、且つ空気が内袋12の内部に流入しないようにして、内袋12の内部の空気を極く少量に留めることができるので、このような高い粘度の内容液を収容した場合に、エア咬みの発生を効果的に回避できるため有効である。
【0019】
本第1実施形態では、容器本体13の口首部13aの内側に嵌め込まれる中栓アダプター15は、上述のように、容器本体13の口首部13aの内径と同様の外径の嵌着部分17aを好ましくは上端部に有する、口首部13aの長さより長い筒状部17と、筒状部17の下端部を閉塞する、ポンプ装置14のチューブ部14aを差し込みの前後で液密状態に維持することが可能な開閉弁18を備える底部19とからなり、さらに、筒状部17の外周面には、下端部分(下端)から少なくとも口首部の上端近傍部分に至るまで(本第1実施形態では上端に至るまで)縦方向に延設した空気排出溝21が形成されている。
【0020】
筒状部17は、例えばPP,PE等の合成樹脂からなる成形品であって、図3(a)、(b)にも示すように、その軸方向の略全長に亘って、容器本体13の口首部13aの内径と同様の外径を有する中空の円筒形状を備えている。これによって筒状部17の上端部は、容器本体13の口首部13aの内径と同様の外径の嵌着部分17aとなっている。筒状部17は、これの長さが容器本体13の口首部13aの長さ(高さ)よりも長くなっており、例えばこれの上端面が口首部13aの上端面と面一に配置されるまで口首部13aの内側に押し込まれた際に、底部19が接合された下端部を、口首部13aの下端部を越えてさらに下方に、好ましくは内袋12に充填収容された内容液の液面よりも下方に配置させるようになっている(図2参照)。
【0021】
また、本第1実施形態では、中栓アダプター15の筒状部17の外周面には、上述のように、底部から上端近傍部分(上端)に至るまで縦方向に延設して、空気排出溝21が形成されている。空気排出溝21は、本第1実施形態では、筒状部17の直径方向に背向して、一対設けられている。筒状部17の外周面に空気排出溝21が設けられていることにより、製造時において容器本体13の口首部13aに中栓アダプター15を嵌め込んで行く際に、内容液の液面と、容器本体13の口首部13aの上端の開口部との間に形成される、内袋12の収容部内のヘッドスペースの空気を、空気排出溝21を介して外部に逃がしながら、略全長に亘って口首部13aの内径と同様の外径を有する筒状部17を、口首部13aの内周面に沿って押し込んで行くことが可能になる。
【0022】
開閉弁18を備える底部19は、本第1実施形態では、筒状部17とは別の部材として形成された、例えばシリコン、NBR等の弾性を有する合成樹脂からなる成形品であって、頂部を下方に配置した、上底面が開口する中空の略倒立円錐形状を有している。底部19は、略倒立円錐形状の傾斜する周面部を、下方に向けて急勾配となるよう形成することで、頂部において底面と略垂直に延設するようなっている。また底部19の中央部に位置する周面部の下端部分に、放射方向に延設する複数のスリット22を切込み形成することで、こられの複数のスリット22が形成された底部19の下端部分を、ポンプ装置14のチューブ部14aを液密状態を保ったままで挿通させる、開閉弁18として機能させるようになっている。底部19は、筒状部17の下端開口の周縁部に、略倒立円錐形状の上底面の周縁部を熱融着や接着剤等を介して接合することで、筒状部17の下端部を閉塞した状態で筒状部17に一体として取り付けられる。
【0023】
本第1実施形態では、好ましくは、中栓アダプター15は、例えば筒状部17の上端面を口首部13aの上端面と面一に配置した状態で、開閉弁18を備える底部19を、内袋12に収容された内容液の液面又は液面よりも下方に配置させる長さを有している。開閉弁18を備える底部19を、内容液の液面又は液面よりも下方に配置させることにより、ヘッドスペースの容積を効果的に減少することができ、例えば容器の搬送中に、収容された内容液の内部への空気の混入を極力減らすことが可能になる。
【0024】
本第1実施形態では、エアレス容器10は、容器本体13の口首部13aにポンプ装置14を装着固定した状態で製品化されている。エアレス容器10を製品化する製造工程において、中栓アダプター15を、容器本体13の口首部13aの内側に、例えば筒状部17の上端面が口首部13aの上端面と面一になるように嵌め込んだ後に、装着部材としてのポンプ装置14が、これのキャップ部16を、例えば当該キャップ部16のスカート部16bの内周面に形成された雌ネジ凸条を口首部13aの外周面に形成された雄ネジ凸条に螺合して、口首部13aに締着することで、容器本体13の口首部13aに装着される(図4参照)。
【0025】
ポンプ装置14は、ポンプヘッド14bへの押圧操作を繰り返すことにより、チューブ部14aを介して内袋12による収容部から汲み上げた内容液を、ポンプヘッド14bの先端の吐出口14cから吐出させる機能を有する公知の吐出装置であり、内部にピストンが配設されたシリンダー14d等を備えている。
【0026】
本第1実施形態では、容器本体13にポンプ装置14を取り付ける工程では、図4に示すように、内側に中栓アダプター15が嵌め込まれた容器本体13の口首部13aに、チューブ部14aやシリンダー14dを下方に配置した状態で、キャップ部16と一体となったポンプ装置14を、上方から差し込んで行く。ポンプ装置14を上方から差し込んで行く際に、チューブ部14aは、中栓アダプター15の底部19に設けられた開閉弁18を押し広げながら、液密な状態を保持したまま開閉弁18に差し込まれて、内袋12による収容部に充填収容された内容液の内部に押し込まれてゆく。ここで、開閉弁18は、チューブ部14aが押し込まれた時の内圧によって変形しない程度の強度を有している。チューブ部14aが内容液の内部に押し込まれてゆく際に、チューブ部14aの肉厚分、内容液の液面が上昇して、余剰空間であるヘッドスペースの容積をさらに減少させることが可能になる。また、内容液の液面の上昇に伴って、ヘッドスペース内の空気は、中栓アダプター15の外周面に形成された空気排出溝21介して外部に排出される。
【0027】
チューブ部14aを内容液の内部にさらに押し込むと共に、ポンプ装置14のキャップ部16を容器本体13の口首部13aに締め付けて、キャップ部16を介してポンプ装置14が容器本体13に装着固定される。ポンプ装置14が容器本体13に装着固定されると、キャップ16の天面部16aは、中栓アダプター15の筒状部17の上端面や口首部13aの上端面と気密に密着するので、エアレス容器10は、容積を減少させたヘッドスペースに空気を流入させない状態で製品化されることになる。
【0028】
そして、上述の構成を備える本実施形態のエアレス容器10によれば、内容液の液面と、容器本体13の口首部13aの上端の開口部との間に形成されるヘッドスペースの容積を十分に減少させると共に、使用者が使用途中でポンプ装置14を取り外した場合でも、空気が内袋12による収容部に入らないようにして、内容液を吐出する際にエア咬みが生じるのを効果的に回避することが可能になる。
【0029】
すなわち、本第1実施形態のエアレス容器10によれば、製品化された状態において、中栓アダプター15が容器本体13の口首部13aの内側に嵌め込まれており、中栓アダプター15は、チューブ部14aを液密に挿通させることが可能な開閉弁18を備える底部19を有しており、中栓アダプター15は、底部19を口首部13aの下方に配置した状態で口首部13aに取り付けられているので、口首部13aの内側に嵌め込まれた中栓アダプター15によって、口首部13aの内側を含む部分をヘッドスペースから除外させて、ヘッドスペースの容積を十分に減少させることが可能になる。また、中栓アダプター15の底部19に設けられた開閉弁18は、チューブ部14aを液密状態を保ったままで挿通させることができると共に、チューブ部14aが引き抜かれても、元の状態に容易に復帰して中栓アダプター15の下端部を閉塞することができるので、使用者が使用途中でポンプ装置14を取り外した場合でも、閉塞した開閉弁18によって空気が内袋12に入り込まないようにすることが可能になる。これらによって、エアレス容器10を購入した使用者が容器を用いて内容液を吐出する際に、エア咬みが生じるのを効果的に回避することが可能になる。
【0030】
図5は、本発明の好ましい第2実施形態に係るエアレス容器10’の要部を示すものである。本第2実施形態のエアレス容器10’は、容器本体13’の口首部13a’にポンプ装置か取り付けられていないキャップ16’が装着部材として装着されており、容器を購入した使用者が、キャップ16’を取り外した後に、上述のキャップ部16を有するポンプ装置14を着け替えて使用する、着け替え用のデラミ容器(二重剥離容器)として製品化されている。
【0031】
すなわち、本第2実施形態のエアレス容器10’は、図5に示すように、中空の中栓アダプター15’が、容器本体13’の口首部13a’の内側に嵌め込まれていると共に、口首部13a’を覆ってキャップ16’が装着されている。中栓アダプター15’は、容器本体13’の口首部13a’の内径と同様の外径の嵌着部分17a’を好ましくは上端部に有する、口首部13a’の長さより長い筒状部17’と、筒状部17’の下端部を閉塞する、ポンプ装置14のチューブ部14aを液密状態を保ったままで挿通させることが可能な開閉弁18’を備える底部19’とからなり、筒状部17’の外周面には、下端部分(下端)から上端に至るまで空気排出溝21’が形成されている。中栓アダプター15’は、筒状部17’の上端部の嵌着部分17aが口首部13a’に嵌着されるまで押し込まれて、底部19’を口首部13a’の下方に配置した状態で口首部13a’に取り付けられている。
【0032】
また、本第2実施形態のエアレス容器10’では、中栓アダプター15’は、筒状部17’の下端部を閉塞する底部19’が、円形の平板形状を備えており、これの周縁部を熱融着や接着剤等を介して筒状部17’の下端開口の周縁部に接合することで、筒状部17’の下端部を閉塞した状態で、筒状部17’に一体として取り付けられる。円形の平板形状の底部19’は、これの中央部に、放射方向に延設する十字形状のスリット22’を切込み形成することで、ポンプ装置14のチューブ部14aを液密状態を保ったままで挿通させる開閉弁18’を備えている。
【0033】
さらに、本第2実施形態のエアレス容器10’では、中栓アダプター15’は、開閉弁18’を有する底部19’の上方に、当該底部19’と間隔をおいて配置された、補助底部23’を備えている。補助底部23’の中央部には、底部19’と同様に、放射方向に延設する十字形状のスリット22’を切込み形成することで、ポンプ装置14のチューブ部14aを液密状態を保ったままで挿通させる、チューブ部14aを差し込み可能な補助開閉弁24’が設けられている。補助開閉弁24’は、ポンプ装置14のチューブ部14aが差し込まれていない状態およびポンプ装置14が口首部13a’に装着された状態のいずれの状態においても、底部19’の上方において液体を通さない開閉弁となっている。これによって中栓アダプター15’は、開閉弁18’を有する底部19’の上方に、ポンプ装置14のチューブ部14aを液密状態を保ったままで挿通させる補助開閉弁24’を備えることになる。
【0034】
本第2実施形態のエアレス容器10’によれば、ポンプ装置14を着け替えて使用される際に、口首部13a’の内側に嵌め込まれた中栓アダプター15’によって、口首部13a’の内側を含む部分をヘッドスペースから除外させて、ヘッドスペースの容積を十分に減少させることが可能になると共に、ポンプ装置14を取り外した場合でも、閉塞した開閉弁18’や補助開閉弁23’によって、空気が内袋12’による収容部に入り込まないようにして、上記第1実施形態のエアレス容器10と同様の作用効果が奏される。
【0035】
また、本第2実施形態のエアレス容器10’によれば、特に、中栓アダプター15’には、開閉弁18’を有する底部19’の上方に補助開閉弁23’を備える2重構造の弁機構が設けられているので、使用者がポンプ装置14を取り付けたり取り外したりする際に、中栓アダプター15’から内袋12’による収容部に空気が入り込むのを、さらに安定した状態で回避することが可能になる。
【0036】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、中栓アダプターは、筒状部が、略全長に亘って容器本体の口首部の内径と同様の外径を有している必要は必ずしも無い。また中栓アダプターの外周面に空気排出溝を形成する必要は必ずしも無いが、好ましくは下端部分から少なくとも上端近傍部分に至るまで延設する空気排出溝を形成するほうが良い。空気排出溝を設けない場合、例えば図6に示すように、中栓アダプター50は、筒状部51の外周面に空気排出溝を形成することなく、筒状部51の外周面を、容器本体の口首部の内径と同様の外径を有する上端部の嵌着部分51aから、下方に向けて緩やかに縮径させたテーパー面51bとすることもできる。図6に示す中栓アダプター50によれば、これを容器本体の口首部に嵌め込んで行く際に、ヘッドスペースの空気を、口首部の内周面とテーパー面51bとの間の隙間を介して外部に逃がしながら、筒状部51を、口首部の内周面に沿って押し込んで行くことが可能になる。
【0037】
開閉弁18を備える底部19は、図3に示すような湾曲した形状以外の形状に形成することもできるが(図5参照)、底部19を湾曲した形状とすることにより、中栓アダブターの挿入によって液に内圧がかかり、ヘッドスペースのエアーが抜けやすくなる一方で、チューブ部の挿入が容易になる。
【0038】
また、中栓アダプターは、開閉弁を備える底部を、筒状部とは別の部材として形成して、当該底部を筒状部の下端開口を覆って一体として接合する必要は必ずしも無く、例えば図7(a)、(b)に示すように、筒状部と底部とを同時に成形した一体成形品として、中栓アダプター60を形成することもできる。
【0039】
さらに、本発明のエアレス容器は、デラミ容器である必要は必ずしも無く、例えば図8(a)、(b)に示すように、中栓アダプター70を、保形性を有する容器本体の内部に、上下に摺動可能に中皿が設けられており、この中皿よりも上方部分を収容部として内容液が充填収容されると共に、ポンプ装置の作用によって、中皿を上昇させることにより収容部を減容させながら内容液を吐出させるようにした、ポップル容器((a)参照)の容器本体の口首部や、内容液が充填収容された可撓性を有するチューブ容器の一端部にポンプ装置が取り付けられており、ポンプ装置の作用によって、チューブ容器を減容変形させながら内容液を吐出させるようにした、チューブポンプ容器((b)参照)の容器本体の口首部に嵌め込んで、本発明のエアレス容器とすることもできる。中栓アダプター70の底部に設けられた開閉弁は、例えばチューブ部が設けられていない場合に、ポンプ装置のシリンダー部を液密状態を保ったままで挿通させることが可能な構成を備えていても良い。
【0040】
さらにまた、中栓アダプターの筒状部は、図9(a)〜(d)に示すように、種々の形状に形成することができる。図9(a)の筒状部は、外周面に周方向に延設する線状リブを設けて、この線状リブによって嵌着部分を形成したものである。図9(a)の筒状部では、ポンプ装置側のパッキンで気密性を向上させることができる。空気排出溝は、2箇所以上設けることもできる。図9(b)の筒状部は、外周面に周方向に延設する線状リブを設けると共に、空気排出溝の底面を、下端部から上端部に向けて深さが小さくなるように傾斜するテーパー面としたものである。図9(c)の筒状部は、外周面に縦方向に延設する棒状のリブを設けて、この線状リブによって嵌着部分を形成したものである。図9(c)の筒状部では、容器本体の口首部の内側面に線状リブと対応する形状の嵌着凹溝を縦方向に延設させて形成して、この嵌着凹溝に線状リブを嵌め込むようにして、容器本体の口首部に嵌着させることができる。図9(d)の筒状部は、上端開口の周縁部から外側に張り出して設けられた、周方向に延設する環状リブを備えており、この環状リブが口首部の上端面に載置されるまで押し込まれて、嵌着部分が口首部に嵌着されるようになっている。図9(d)の筒状部では、環状リブ部は、キャップが装着されることで、キャップの天面部と口首部の上端面との間に挟みこまれて、口首部の上端面に密着するようになっている。
【符号の説明】
【0041】
10,10’ エアレス容器
11 外容器
12,12’ 内袋(収容部)
13,13’ 容器本体
13a,13a’ 口首部
14 ポンプ装置(装着部材)
14a チューブ部
14d シリンダー
15,15’ 中栓アダプター
16 キャップ部
16’ キャップ(装着部材)
16a,16a’ 天面部
17,17’ 筒状部
17a,17a’ 嵌着部分
17b,17b’ 上端開口
18,18’ 開閉弁
19,19’ 底部
21 空気排出溝
22 スリット
23’ 補助底部
24’ 補助開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9