(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164953
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ゴルフボールホルダー
(51)【国際特許分類】
A63B 57/20 20150101AFI20170710BHJP
A63B 47/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
A63B57/20
A63B47/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-138144(P2013-138144)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-9043(P2015-9043A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513165492
【氏名又は名称】有限会社佐藤木型製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】513165506
【氏名又は名称】有限会社ヨネプラ金型
(73)【特許権者】
【識別番号】505458876
【氏名又は名称】株式会社ティーエヌ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝康
(72)【発明者】
【氏名】小山 由朗
【審査官】
宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭37−020431(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第3067559(JP,U)
【文献】
米国特許第4269338(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0026348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 57/20
A63B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール収容部と、当該ボール収容部から外方に突出した係止片とを有し、
前記ボール収容部と前記係止片との間にゴルフボールを挟持することが可能なゴルフボールホルダーであって、
前記ボール収容部及び前記係止片に、ゴルフボールのディンプルに組み合う小突起が設けられているゴルフボールホルダーが2つ連続して、互いに逆向きに設けられていることを特徴とする、ボールを2個収容することが可能なゴルフボールホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールを収容し、携帯できるゴルフボールホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフのプレー中にボールを携帯しておくためのボールホルダーとして、様々な形態が知られている。最も単純なものとして、ファスナーや蓋の付いた小袋の中にボールを収容するものがあるが、開閉が面倒なことや取り出す時にボールを落としてしまうことなどがあり、使い勝手は必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
ファスナーや蓋の無いボールホルダーとしては、例えば特許文献1(特開平5−329239号)がある。特許文献1のボールホルダーは箱状のボール収納室を有し、ボール収納室の一方の壁面には放射状の切り込みが設けられた可撓性部材からなるボール出し入れ口が設けられており、対向する壁面にはボールを指で押し出すための小穴が設けられている。
特許文献1のボールホルダーによれば、手でボールを押し入れる、指でボールを押し出すという動作でボールの出し入れができる。しかしながら、収納されたボールは収納室内で固定保持されていないので、収納室内でごろごろする、外部から衝撃を受けてボールが外に飛び出てしまう等の課題もあった。
【0004】
また特許文献2(登録実用新案3007598号)には、ゴルフボールの一部が外面に露出した形態で保持するための凹部が形成されたゴルフボールホルダーが記載されている。凹部の開口端には、ゴルフボールの抜け止めのために弾性爪部が設けられ、底面にはボールを指で押し出すための穴が設けられている。
特許文献2のホルダーはゴルフボールの大きさに合わせた凹部が形成されているため、保持されたボールがごろごろするという問題はないが、ホルダーの凹部形状と開口端の弾性爪部のみでボールを保持しているため、保持力が十分ではなく、意図しない時にボールが飛び出てしまう、使用するうちに材質自体が劣化し保持力が低下するという課題もあった。
【0005】
特許文献3(登録実用新案3067559号)には、ゴルフボールを収容するカップの底部中央には一つの開口が設けられ、カップの側壁には逆U字形で上部がカップの内側に向けて突出した弾性係止片が設けられて、ゴルフボールを係止可能であるゴルフボールホルダーが記載されている。このゴルフボールホルダーも特許文献2と同じく、弾性係止片でボールを保持して脱落を防止するものである。
特許文献3のゴルフボールホルダーは、ゴルフボールの全体がカップの中に収容されるため、ボールの一部が露出する形態である先行文献2のホルダーよりもボールの脱落は少なくなる。しかしながらやはり、ボールは逆U字形の爪で抑えられているのみであって、思わぬ衝撃がかかった場合等にボールが飛び出てしまうということがあった。
【0006】
また、特許文献1〜3のボールホルダーはいずれも、底部の穴から一方の手(例えば右手)の指を入れてボールを押出し、反対の手(例えば左手)で押し出されたボールを受けることを想定した形状であり、片手でボールの出し入れを行うことは困難であった。しかしながら実際にゴルフのプレー中にホルダーから予備ボールを取り出す場面では、片手がクラブで塞がっていることが多い。このため、片手でボールを落とさず確実に取り出せるボールホルダーが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−329239号公報
【特許文献2】登録実用新案3007598号公報
【特許文献3】登録実用新案3067559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明は、ボールをより確実に保持することが可能で、不意にボールが脱落してしまうことがなく、かつ耐久性に優れたゴルフボールホルダーを提供すること、また、片手でボールを取り出すことが可能なゴルフボールホルダーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはこれらの課題について検討を重ねる中で、ゴルフボール表面の凹凸(ディンプル)に着目し、ディンプルを利用してボールを保持することに着想した。そして、ホルダーのカップ内面と弾性爪部に、ディンプルに組み合う小さな突起を設けることで、ボールの保持力が飛躍的に向上することを見出した。さらにこの突起による確実な支持構造によれば、開口部を広くすることが可能となるためボールの出し入れがより簡単になり、ボールの取り出しが片手でも簡単・確実に行えることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、ボール収容部と、当該ボール収容部から外方に突出した係止片とを有し、前記ボール収容部と前記係止片との間にゴルフボールを挟持することが可能なゴルフボールホルダーであって、前記ボール収容部及び/又は前記係止片に、ゴルフボールのディンプルに組み合う小突起が設けられていることを特徴とするゴルフボールホルダーに関する。
【0011】
本発明のゴルフボールホルダーはボール収容部と係止片の間にボールを挟むように保持するものである。ボール収容部や係止片の内側には小突起が設けられており、ボールを収容すると小突起がゴルフボール表面のディンプルと緩く組み合う。この小突起によって、ゴルフボールが確実に保持されるので、例えばボールを収容したままホルダー全体を落とした場合や、ホルダー全体に強い衝撃がかかった場合であっても、ホルダーからボールが脱落しない。従来のゴルフボールホルダーはいずれも、ボールを箱や袋に収容するか、もしくはボール全体(又は部分)を弾性部材で保持し出し入れ可能な構造としたもので、表面にディンプルを有するというゴルフボールの特徴に注目し、ディンプルを利用して確実にホールドするものは存在しなかった。
【0012】
また本発明は、前記小突起が前記ボール収容部と前記係止片に各1箇所ずつ設けられており、ボール収容部の小突起と係止片の小突起とが、ボールの直径方向に互いに対向する位置に設けられていることを特徴とする、前記のゴルフボールホルダーに関する。
ゴルフボールの直径方向に互いに対向する位置に小突起を配置すると、より確実にゴルフボールを保持することが可能となる。
【0013】
また本発明は、ボール収容部が、球面を切り欠いた開口が設けられた半カップ状であることも好ましい。
ボール収容部を半カップ状(半球状)とすることによって、ボールを押し入れたときに、ボールがぴったり収まる。また、カップの球面を切り欠いた開口を設けることで、開口から露出したボールに指を当てて、ボールを押し出すことができる。本発明のゴルフボールホルダーは、小突起によってゴルフボールが確実に保持されるので、カップに大きな開口を形成することができる。ボールを出したいときには、収容されたゴルフボールとホルダーを片手で握って開口部からボールを押すと、そのまま同じ手で押し出されたボールを受けることができるため、片手のみでボールを押し出すことが可能である。逆の動作をすれば、片手のみでボールを押し入れることができる。
【0014】
また本発明のゴルフボールホルダーは、前記ボール収容部と前記係止片とが一体成型されていることが好ましい。一体成型であることで、強度が高く耐久性に優れたゴルフボールホルダーとなり、また、成型工程も簡潔になるためコスト面でも有利である。
【0015】
さらに本発明は、ゴルフボールホルダーが樹脂製又は木製であることも好ましい。樹脂製又は木製であれば、ほどよい硬度と弾性を両立し、スムーズに押し入れ/取り出しができるとともに耐久性にも優れる。
【0016】
さらに本発明は、前記の構成を有するゴルフボールホルダーが2つ連続して互いに逆向きに設けられている、ボールを2個収容できるゴルフボールホルダーであることも好ましい。
互いに逆向きとは、2つのホルダーに収容されるボールを、それぞれ180°反対の方向から出し入れできることを意味する。従来の複数個を収容するゴルフボールホルダーはいずれも、1方向のみからボールを出し入れするものであったところ、本発明のゴルフボールホルダーは異なる方向から(両面から)ボールを出し入れすることができるので、ボールの出し入れをより素早く、簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のゴルフボールホルダーによれば、ゴルフボールをより確実に保持し、携帯することが可能であり、ボールが脱落せず、かつ、片手で出し入れすることができる。また、2連のボールホルダーでは2方向からボールを出し入れすることも可能であり、より素早く簡単にボールを出し入れすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例であるゴルフボールホルダー(2連)の斜視図である。(A)は前面、(B)は背面から見た図である。
【
図2】
図1のゴルフボールホルダーの横面図である。
【
図3】
図1のゴルフボールホルダーにボールを収容した状態の概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、図示された実施態様は本願発明の一例であって、本願発明はこれに制限されるものではない。
図1はゴルフボールを2個収容できるゴルフボールホルダーである。(A)は前面から見た斜視図、(B)は背面から見た斜視図である。
【0020】
ゴルフボールホルダーは2つのボール収容部1と係止片2とを備えている。ボール収容部1は、前面側及び背面側のそれぞれに開口1a、1bを有している。開口1aの周縁には係止片2が突設されている。ボールの出し入れは開口1aから行うため、開口1aはゴルフボールの直径と略同一の円ないし楕円状の開口である。開口1aの係止片2と対向する位置には、ガイド4が形成されている。
一方、開口1bはボールが抜け落ちないよう、ゴルフボールの直径よりも小さな径の円ないし楕円状の開口である。ボール収容部1の内周面1cはゴルフボールの直径に合わせた略球面に形成されている。
【0021】
係止片2は、開口1aの一端から外方に突出した三角形の板状部分である。係止片2はゴルフボールの脱落を抑止し、繰り返し使用に耐える耐久性を有する限りにおいてその形状は特に制限されず、三角形以外にも四角形、半円形等の任意の形状にできる。また係止片2の板厚も特に制限されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂の場合、1.5〜5mm程度、好ましくは2〜4mm程度にできる。
図1の例では係止片2の全体は一定の厚みであるが、係止片は一定の厚みでなくてもよく、例えば根元付近に厚みをもたせて、先端付近を薄くすることも可能である。
【0022】
ボール収容部1の内周面1c及び係止片2の内側(ボールと接する側)には、小突起3が設けられている。
図1の場合、内周面1cと係止片2にそれぞれ1箇所の小突起3が設けられている。小突起3はゴルフボール表面のディンプルと緩く組み合う大きさであればよく、例えば、突起の高さを0.2〜1.2mm程度(好ましくは0.3〜1.0mm程度)、突起の直径を2〜6mm程度(好ましくは2.5〜5mm程度)とすることができるが、これらの範囲に制限されない。
図1の場合、2箇所の小突起3はゴルフボールの直径方向に互いに対向して設けられているが、小突起の数は2箇所に限られず、1箇所、3箇所、4箇所、又は5〜20箇所程度とすることもできる。小突起は、ゴルフボールの外周に対して対称に配置されることが好ましい。
【0023】
図1の実施例では、2つのボール収容部1が互いに180°逆向きに形成されている。すなわち、一方のボール収容部は前面側から、他方のボール収容部は背面側から、それぞれボールを出し入れできる。2つのボール収容部は原則的に同じ形状であり配置のみが異なっている。
【0024】
図1のゴルフボールホルダー全体の外形は、真ん中にくびれのある楕円形である。
図1の例ではくびれの近傍には窪み5が形成されている。窪み5はより小さくてもよく、無くてもよい。また、ゴルフボールホルダーの一方の端にはクリップ取り付け部6が形成されているが、当然この形状や大きさは任意である。
【0025】
図2は、
図1のゴルフボールホルダーの横面図である。クリップ取り付け部6を除いたゴルフボールホルダーの全体は、中心線7の中心Cを対称の中心とする点対称構造である。ボール収容部1は開口1bを切り欠きとする略半球状(半カップ状)に形成されている。係止片2はボール収容部1から外方に突出しており、その先端近傍に小突起3が設けられている。中心線7に対する係止片2の長さ及び角度は、ボールを適切に係止できる限り特に制限されないが、例えば長さLは13〜23mm、好ましくは15〜20mmとすることができ、中心線7に対する角度は30〜40°、好ましくは37〜40°とすることができる。
【0026】
本発明のゴルフボールホルダーは全体が一体的に形成された一部材からなることが好ましい。
図1、2の例ではポリプロピレン樹脂製の一体成型品であるが、材質は適度な弾性と強度を有する限り特に限定されず、ポリプロピレン樹脂の他にも、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができ、木製であってもよい。
【0027】
本発明の別の実施例として、2つのボール収容部を同じ向きに並列して配置してもよく、ボール収容部を3つ以上としてもよく、横向きに2つのボールを収容する形態としてもよく、特に制限されない。また、小突起でゴルフボールのディンプルと組み合うという特徴を有する限りにおいて、ボール収容部や係止片の形状は任意であり、デザインや強度、耐久性等の観点から様々に変更できる。
【0028】
本発明のゴルフボールホルダーは、別の部品と組み合わせて使用することも好ましい。例えば、クリップ取り付け部に任意のクリップやストラップを付けてもよい。また、半球状のラインマーカーと組み合わせた物品とすれば、ボールを保持して固定しながらボールにラインを記入できるので便利である。
【0029】
本発明のゴルフボールホルダーは公知の製造方法によって製造することができ、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形等を用いることができる。これらのうちでも射出成形によれば高品質の成形物が得られ、またコストや製作時間の点からも好ましい。
【0030】
図3はゴルフボールを収容した状態の概要断面図を示している。点線で示したゴルフボールbはボール収容部1と係止片2の間に挟持されており、特に、小突起3とゴルフボール表面のディンプルが組み合って係止されている。このためボールの動きが制限され、ボールの脱落が防止される。
【0031】
ボールを取り出す時には、係止片と反対側の開口に露出しているボールに指を当てて押し出すだけでよい。この時に、ボール全体を握るように手を当てて押し出すと、押し出されたボールを確実にキャッチすることができる。
また、ボールを押し入れる時には、ボールとゴルフボールホルダーを一緒に手で握るようにするだけで、ボールはガイド4に導かれてボール収容部1に確実に収まる。すなわち本発明のゴルフボールホルダーは、片手でボールを落とすことなく確実に出し入れすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ボール収容部
1a、1b ボール収容部の開口
2 係止片
3 小突起
4 ガイド
5 窪み
6 クリップ取り付け部
7 中心線