(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加硫缶内で、加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させることができる導電性ゴム組成物であって、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含むゴム分、前記ゴム分を架橋させるための架橋成分、ならびに前記ゴム分を発泡させるための発泡成分を含むとともに、前記発泡成分は、前記ゴム分の総量100質量部あたり8質量部以上、12質量部以下の、加熱によって分解してガスを発生する発泡剤、および前記発泡剤量の70質量%以上、150質量%以下の、前記発泡剤の分解を促進する発泡助剤を含むことを特徴とする導電性ゴム組成物。
前記ゴム分は、さらにアクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、およびアクリルゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種の極性ゴムを含んでいる請求項1に記載の導電性ゴム組成物。
【背景技術】
【0002】
例えばレーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置においては、概略下記の工程を経て、紙類やプラスチックフィルムなどの用紙の表面に画像が形成される。
まず、光導電性を有する感光体の表面を一様に帯電させた状態で露光して、当該表面に、形成画像に対応する静電潜像を形成する(帯電工程→露光工程)。
【0003】
次いで、微小な着色粒子であるトナーをあらかじめ所定の電位に帯電させた状態で、感光体の表面に接触させる。そうするとトナーが、静電潜像の電位パターンに応じて感光体の表面に選択的に付着されて、静電潜像がトナー像に現像される(現像工程)。
次いで、トナー像を用紙の表面に転写し(転写工程)、さらに定着させることにより(定着工程)、当該用紙の表面に画像が形成される。
【0004】
また転写工程では、感光体の表面に形成したトナー像を、用紙の表面に直接に転写(直接転写)させる場合だけでなく、像担持体の表面に一旦転写(一次転写工程)させたのち用紙の表面に再転写させる(二次転写工程)場合もある。
トナー像を、転写工程において感光体の表面から用紙の表面に直接に転写させたり、一次転写工程において感光体の表面から像担持体の表面に転写させたり、あるいは二次転写工程において像担持体の表面から用紙の表面に転写させたりするためには、導電性ゴム組成物からなり、所定のローラ抵抗値を有する転写ローラが用いられる。
【0005】
例えば直接転写の場合は、転写工程において、互いに所定の圧接力で圧接させた感光体と転写ローラとの間に所定の転写電圧を印加した状態で、両者間に用紙を通紙させると、感光体の表面に形成されたトナー像が用紙の表面に転写される。
近時、特に新興国向けの汎用のレーザープリンタ等に用いる転写ローラとしては、できるだけ汎用の材料を使用して、なるべく構造が簡単で、しかもコスト安価に製造できるものが求められる傾向にある。
【0006】
これらの要求に対応するため、転写ローラとしては、多孔質構造としたものが広く用いられる。多孔質構造とすることで、形成材料を少なくして材料費を抑制できる上、軽量化して輸送費等をも削減できる。また、可塑剤の配合を省略したり配合割合を少なくしたりしても、多孔質構造により、転写ローラに適度な柔軟性を付与できる。
かかる多孔質構造の転写ローラは、例えば導電性、架橋性、および発泡性を有する導電性ゴム組成物を用いて、下記の手順で製造するのが一般的である。
【0007】
すなわち導電性ゴム組成物を、押出機のヘッドを通して連続的に筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして、加硫缶内で加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させる。
次いで発泡、架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨することにより、転写ローラが製造される。
【0008】
導電性ゴム組成物を構成するゴム分としては、例えばエピクロルヒドリンゴム等の高価なイオン導電性ゴムを単独で使用するのではなく、当該イオン導電性ゴムを架橋性ゴムと併用するのが、材料コストを低減して転写ローラの生産コストをさらに圧縮する上で好ましい。
かかる架橋性ゴムとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が一般的である。しかし、先の要求に対応して転写ローラの生産コストをより一層圧縮するためには、架橋性ゴムとして、NBRに代えて、スチレンブタジエンゴム(SBR)とエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)とを併用するのが好ましい。
【0009】
この2種の架橋性ゴムとイオン導電性ゴムとの併用系では、転写ローラの良好な耐オゾン性を維持しながら、さらに材料コストを抑制できる。
すなわち、転写ローラに所定のローラ抵抗値を付与するために必要であるものの、高価なイオン導電性ゴムの配合割合を、架橋性ゴムとの併用によって少なくできる上、架橋性ゴムのうちSBRはNBRよりも汎用性が高くコスト安価であるため、材料コストをより一層低減できる。
【0010】
ただしSBRは、レーザープリンタ等の内部で発生するオゾンに対する耐性、つまり耐オゾン性が十分でないためEPDMを併用する。
EPDMは、それ自体が耐オゾン性に優れているだけでなく、SBRのオゾン劣化を抑制する働きもするため、転写ローラのオゾン耐性を向上できる。
発泡成分としては、加熱によって分解してガスを発生する発泡剤と、当該発泡剤の分解温度を引き下げて、分解を促進する働きをする発泡助剤とを組み合わせるのが一般的である。
【0011】
特にアゾジカルボンアミド(発泡剤、H
2NOCN=NCONH
2、以下「ADCA」と略記する場合がある。)と、尿素系発泡助剤との組み合わせが広く採用されている(特許文献1等参照)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
《導電性ゴム組成物》
本発明は、加硫缶内で、加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させることができる導電性ゴム組成物であって、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含むゴム分、前記ゴム分を架橋させるための架橋成分、ならびに前記ゴム分を発泡させるための発泡成分を含むとともに、前記発泡成分は、前記ゴム分の総量100質量部あたり
8質量部以上、12質量部以下の、加熱によって分解してガスを発生する発泡剤、および前記発泡剤量の70質量%以上、150質量%以下の、前記発泡剤の分解を促進する発泡助剤を含むことを特徴とするものである。
【0029】
〈SBR〉
SBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
【0030】
さらにSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。スチレン含量や架橋度を変更することで、転写ローラの各種物性を調整できる。
これらSBRの1種または2種以上を使用できる。
SBRの配合割合は、ゴム分がSBR、EPDM、およびエピクロルヒドリンゴムの3種のみで極性ゴムを含まない場合、当該ゴム分の総量100質量部中の40質量部以上、特に60質量部以上であるのが好ましく、90質量部以下、特に80質量部以下であるのが好ましい。また極性ゴムを含む場合は、当該極性ゴムの配合割合にもよるが、ゴム分の総量100質量部中の30質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下であるのが好ましい。
【0031】
配合割合がこの範囲未満では、先に説明した、汎用性が高くコスト安価であるといったSBRの利点を十分に活用できないおそれがある。
一方、範囲を超える場合には、相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、転写ローラに良好なオゾン耐性を付与できないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、転写ローラに良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
【0032】
なお配合割合は、SBRとして油展タイプのものを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の配合割合である。
〈EPDM〉
EPDMとしては、エチレンとプロピレンに少量の第3成分(ジエン分)を加えることで主鎖中に二重結合を導入した種々のEPDMが、いずれも使用可能である。EPDMとしては、第3成分の種類や量の違いによる様々な製品が提供されている。代表的な第3成分としては、例えばエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。重合触媒としてはチーグラー触媒を使用するのが一般的である。
【0033】
EPDMの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
配合割合がこの範囲未満では、転写ローラに良好なオゾン耐性を付与できないおそれがある。
一方、範囲を超える場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、汎用性が高くコスト安価であるといったSBRの利点を十分に活用できないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、転写ローラに良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
【0034】
〈エピクロルヒドリンゴム〉
エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0035】
エピクロルヒドリンゴムとしては、これらの中でもエチレンオキサイドを含む共重合体、特にECO、および/またはGECOが好ましい。
かかる両共重合体においてエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは転写ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、転写ローラのローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0036】
一方、エチレンオキサイド含量が範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に転写ローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また、架橋後の転写ローラの硬度が上昇したり、架橋前の導電性ゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇したりするおそれもある。
ECOにおいて、エピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
【0037】
またGECOにおいて、アリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、転写ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかしアリルグリシジルエーテル含量が先の範囲未満では、かかる働きが得られないため、転写ローラのローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0038】
一方、アリルグリシジルエーテルは、GECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が範囲を超える場合には、GECOの架橋密度が高くなり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、却って転写ローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また転写ローラの引張強度や疲労特性、耐屈曲性等が低下するおそれもある。
【0039】
GECOにおいて、エピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
GECOとしては、上で説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではかかる変性物も、GECOとして使用可能である。
【0040】
エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、特に10質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に30質量部以下であるのが好ましい。
配合割合がこの範囲未満では、転写ローラに良好なイオン導電性を付与できないおそれがある。
【0041】
一方、範囲を超える場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、汎用性が高くコスト安価であるといったSBRの利点を十分に活用できないおそれがある。また相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、転写ローラに良好なオゾン耐性を付与できないおそれもある。
〈極性ゴム〉
極性ゴムを配合すると、先に説明したように転写ローラのローラ抵抗値を微調整できる。また、発泡のムラがなくできるだけ均一な多孔質構造を形成することもできる。
【0042】
極性ゴムとしては、例えばNBR、CR、BR、ACMの1種または2種以上が挙げられる。特にNBR、および/またはCRが好ましい。
このうちNBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。
【0043】
またCRとしては、例えばクロロプレンを乳化重合させて合成され、その際に用いる分子量調整剤の種類によって分類される硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプ、ならびに結晶化速度に基づいて分類される、当該結晶化度が遅いタイプ、中程度であるタイプ、および速いタイプのいずれのCRも使用可能である。
極性ゴムの配合割合は、目的とする転写ローラのローラ抵抗値に応じて任意に設定できるが、特にゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、特に20質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
【0044】
配合割合がこの範囲未満では、極性ゴムを配合することによる、転写ローラのローラ抵抗値を微調整したり、発泡のムラをなくしたりする効果が十分に得られないおそれがある。
また範囲を超える場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、汎用性が高くコスト安価であるといったSBRの利点を十分に活用できないおそれがある。また相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、転写ローラに良好なオゾン耐性を付与できないおそれもある。さらに、相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、転写ローラに良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
【0045】
〈発泡成分〉
(発泡剤)
発泡成分のうち発泡剤としては、加熱によって分解してガスを発生する種々の発泡剤が使用可能である。かかる発泡剤としては、例えばADCA、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の1種または2種以上が挙げられる。特にADCAが好ましい。
【0046】
発泡剤の配合割合が、先に説明したようにゴム分の総量100質量部あたり
8質量部以上、12質量部以下に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち、発泡剤の配合割合がこの範囲未満では、導電性ゴム組成物中での発泡剤間の距離が大きくなって、個々の発泡剤を起源とする隣り合う発泡セルが互いに膨張を抑制し合う効果が得られない。そのため、全体として発泡セル径が大きくなって、カラー画像の形成に適した発泡セル径の小さい転写ローラを得ることができない。
【0047】
また、導電性ゴム組成物を十分に発泡できないため、ゴム硬さが硬くなり過ぎて、転写ローラに、当該転写ローラとして適した良好な柔軟性を付与できず、例えば感光体に対して広いニップ幅を確保した状態で圧接できないため、トナーの転写効率が低下したり、感光体にダメージを与えたりするといった問題を生じるおそれもある。
また発泡が不十分であると、先に説明した、形成材料を少なくして材料費を抑制する効果や、軽量化して輸送費等を削減する効果が得られないという問題もある。
【0048】
一方、配合割合が範囲を超える場合、発泡セル径は小さくできるものの、ゴム硬さが硬くなり過ぎて、転写ローラに、当該転写ローラとして適した良好な柔軟性を付与できないため、前述した種々の問題を生じるおそれがある。
これに対し、発泡剤の配合割合を上記の範囲とすることにより、転写ローラの良好な柔軟性や、発泡させることによる種々の利点を確保しながら、その発泡セル径をより一層小さくできる。
【0049】
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、発泡剤の配合割合は、上記の範囲内でも、ゴム分の総量100質量部あた
り11質量部以下、
特に10質量部以下であるのが好ましい。
(発泡助剤)
発泡助剤としては、組み合わせる発泡剤の分解温度を引き下げて、分解を促進する働きをする種々の発泡助剤が使用可能である。例えばADCAと組み合わせる発泡助剤としては、尿素(H
2NCONH
2)系発泡助剤が挙げられる。
【0050】
発泡助剤の配合割合が、先に説明したように発泡剤量の70質量%以上、150質量%以下に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち、発泡助剤の配合割合がこの範囲未満では、転写ローラの良好な柔軟性は確保できるものの、先に説明したメカニズムによって発泡セル径を小さくする効果が得られない。そのため、全体として発泡セル径が大きくなって、カラー画像の形成に適した発泡セル径の小さい転写ローラを得ることができない。
【0051】
一方、配合割合が範囲を超える場合、発泡セル径は小さくできるものの、ゴム硬さが硬くなり過ぎて、転写ローラに、当該転写ローラとして適した良好な柔軟性を付与できないため、前述した種々の問題を生じるおそれがある。
これに対し、発泡助剤の配合割合を上記の範囲とすることにより、転写ローラの良好な柔軟性を確保しながら、発泡セル径をより一層小さくできる。
【0052】
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、発泡助剤の配合割合は、上記の範囲内でも、発泡剤量の80質量%以上、特に95質量%以上であるのが好ましく、120質量%以下、特に105質量%以下であるのが好ましい。
〈架橋成分〉
ゴム分を架橋させるための架橋成分としては、架橋剤、促進剤等が挙げられる。
【0053】
このうち架橋剤としては、例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。中でも硫黄系架橋剤が好ましい。
また硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。このうち有機含硫黄化合物等としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等が挙げられる。特に粉末硫黄等の硫黄が好ましい。
【0054】
硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
配合割合がこの範囲未満では、導電性ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって転写ローラの生産性が低下するおそれがある。また範囲を超える場合には、架橋後の転写ローラの圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄が転写ローラの外周面にブルームしたりするおそれがある。
【0055】
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、あるいは有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
また有機促進剤としては、例えばジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤;テトラメテルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;チオウレア系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0056】
促進剤としては、これら種々の促進剤の中から、組み合わせる架橋剤の種類に応じて、最適な促進剤の1種または2種以上を選択して使用すればよい。例えば架橋剤として硫黄を使用する場合は、促進剤としてチウラム系促進剤、および/またはチアゾール系促進剤を選択して使用するのが好ましい。
また促進剤は、種類によって架橋促進のメカニズムが異なるため、2種以上を併用するのが好ましい。併用する個々の促進剤の配合割合は任意に設定できるが、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
【0057】
架橋成分としては、さらに促進助剤を配合してもよい。
促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
促進助剤の配合割合は、ゴム分の種類および組み合わせや、架橋剤、促進剤の種類および組み合わせ等に応じて適宜設定できる。
【0058】
〈その他〉
導電性ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば受酸剤、可塑剤、加工助剤、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0059】
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムから発生する塩素系ガスの、転写ローラ内への残留と、それによる架橋阻害や感光体の汚染等を防止するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0060】
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用すると、より高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
配合割合がこの範囲未満では、受酸剤を配合することによる効果が十分に得られないおそれがある。また範囲を超える場合には、架橋後の転写ローラの硬さが上昇するおそれがある。
【0061】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤や、極性ワックス等の各種ワックス等が挙げられる。また加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸などが挙げられる。
可塑剤、および/または加工助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えば画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑のうち極性ワックスを使用するのが特に好ましい。
【0062】
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、転写ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
【0063】
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
充填剤を配合することにより、転写ローラの機械的強度等を向上できる。
また充填剤として導電性カーボンブラックを用いることで、導電性ゴム組成物の全体としてのマイクロ波の吸収効率を向上したり、転写ローラに電子導電性を付与したりすることができる。
【0064】
導電性カーボンブラックとしては、HAFが好ましい。HAFは、マイクロ波の吸収効率に特に優れる上、導電性ゴム組成物中に均一に分散できるため、転写ローラにできるだけ均一な電子導電性を付与できる。
導電性カーボンブラックの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
【0065】
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0066】
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、あるいはジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0067】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) (a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) (a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの、複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0068】
また(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの、各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0069】
以上で説明した各成分を含む本発明の導電性ゴム組成物は、従来同様に調製できる。まずゴム分を所定の割合で配合して素練りし、次いで発泡成分、架橋成分以外の各種添加剤を加えて混練した後、最後に発泡成分、架橋成分を加えて混練することで導電性ゴム組成物が得られる。混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
【0070】
《転写ローラ》
図1は、本発明の転写ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の転写ローラ1は、本発明の導電性ゴム組成物により、単層構造の筒状に形成されるとともに、中心の通孔2にシャフト3が挿通されて固定されたものである。
【0071】
シャフト3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。
シャフト3は、例えば導電性を有する接着剤を介して転写ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入することで、転写ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されて、一体に回転される。
【0072】
転写ローラ1を製造するには、まず本発明の導電性ゴム組成物を、押出成形機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして、加硫缶内で加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させる。
次いで発泡、架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨する。
【0073】
シャフト3は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で、通孔2に挿通して固定できる。
ただしカット後、まず通孔2にシャフト3を挿通した状態で二次架橋、および研磨をするのが好ましい。これにより、二次架橋時の膨張収縮による筒状体→転写ローラ1の反りや変形を防止できる。また、シャフト3を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面4のフレを抑制できる。
【0074】
シャフト3は、先に説明したように通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入するか、あるいは導電性を有する熱硬化性接着剤を介して、二次架橋前の筒状体の通孔2に挿通すればよい。
後者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト3が、筒状体→転写ローラ1に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
【0075】
また前者の場合は、圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
〈発泡セル径〉
転写ローラ1は、先に説明したカラー画像の形成に使用することを考慮すると、研磨後の外周面4に露出した発泡セルの発泡セル径が
、250μm以下であるのが好ましい。
【0076】
発泡セル径の下限は特に限定されないが、100μm以上、特に150μm以上であるのが好ましい。発泡セル径がこの範囲未満では、ゴム硬さが硬くなり過ぎて、転写ローラに、当該転写ローラとして適した良好な柔軟性を付与できないおそれがある。
また発泡セル径が小さすぎると、先に説明した、形成材料を少なくして材料費を抑制する効果や、軽量化して輸送費等を削減する効果が得られないという問題もある。
【0077】
発泡セル径は、外周面4の複数箇所で、マイクロスコープを用いて測定した発泡セル径の平均値でもって表すこととする。
〈その他の特性〉
転写ローラ1は、そのゴム硬さが、(社)日本ゴム協会標準規格SRIS 0101「膨張ゴムの物理試験方法」に規定された測定方法により、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下、500gf(≒4.9N)の荷重を付加して測定されるアスカーC型硬さで表して45°以下、特に34°以下であるのが好ましい。
【0078】
ゴム硬さがこの範囲を超える硬い転写ローラは柔軟性が不足して、感光体に対して広いニップ幅を確保した状態で圧接できないため、トナーの転写効率が低下したり、感光体にダメージを与えたりするおそれがある。
ゴム硬さの下限は特に限定されないが、上記アスカーC型硬さで表して20°以上、特に24°以上であるのが好ましい。
【0079】
ゴム硬さがこの範囲未満の柔らかい転写ローラは強度が不足して、感光体に対して所定のニップ圧で圧接できないため、トナーの転写効率が低下したり、短期間で摩耗したりするおそれがある。
これに対し、転写ローラのゴム硬さを上記の範囲とすることにより、短期間で摩耗したり、感光体にダメージを与えたりすることなしに、当該転写ローラを、感光体に対して好適なニップ圧、およびニップ幅で圧接させてトナーの転写効率の低下を防止できる。
【0080】
また転写ローラ1は、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下で測定される、印加電圧1000Vでのローラ抵抗値が10
10Ω以下、特に10
9Ω以下であるのが好ましい。
さらに転写ローラ1は、所定の圧縮永久ひずみや誘電正接等を有するように調整できる。
【0081】
圧縮永久ひずみ、アスカーC型硬さ、ローラ抵抗値、並びに誘電正接等を調整するためには、例えば導電性ゴム組成物を構成する各成分の種類と量を調整したりすればよい。
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、本発明の転写ローラを組み込んだことを特徴とするものである。かかる本発明の画像形成装置としては、例えばレーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。
【0082】
特に本発明の画像形成装置としては、先に説明したようにシアン、マゼンタ、およびイエロー等の複数色のトナーの画像を重ねてカラー画像を形成するためのカラー機が好ましい。
かかるカラー機としては、1つの感光体の周囲に各色のトナーに対応した現像ユニットを有するもの、色ごとに個別の感光体とそれに対応した現像ユニットを有するもの等の、種々の方式のカラー機があるが、このいずれの方式のものであってもよい。
【0083】
いずれの場合にも、それぞれの現像ユニットに組み込む転写ローラとして本発明の転写ローラを採用することにより、コスト削減、軽量化等の要求に対応しながら、形成するカラー画像の乱れを防いで画質を向上することが可能となる。
【実施例】
【0084】
〈
比較例1〉
(導電性ゴム組成物の調製)
ゴム分としては、ECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕20質量部、EPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)505A〕10質量部、およびSBR〔JSR(株)製のJSR 1502、非油展〕70質量部を配合した。
【0085】
そしてこれらゴム分の総量100質量部に、下記表1に示す各成分を配合し、バンバリミキサを用いて混錬して導電性ゴム組成物を調製した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1中の各成分は下記の通り。なお表1中の質量部は、ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
充填剤:カーボンブラックHAF〔東海カーボン(株)製の商品名シースト3〕
発泡剤:ADCA〔永和化成工業(株)製の商品名ビニホールAC#3〕
発泡助剤:尿素系発泡助剤〔永和化成工業(株)製の商品名セルペースト101〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A−2〕
架橋剤:粉末硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド〔Shandong Shanxian Chemical Co. Ltd.製の商品名SUNSINE MBTS〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムジスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
促進助剤I:ステアリン酸〔日油(株)製の商品名つばき、加工助剤を兼ねる。〕
促進助剤II:酸化亜鉛2種〔三井金属鉱業(株)製〕
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
【0088】
(転写ローラの製造)
調製した導電性ゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ10mm、内径φ3.0mmの円筒状に押出成形した後、所定の長さにカットして外径φ2.2mmの架橋用の仮のシャフトに装着した。
そして加硫缶内で、加圧水蒸気によって120℃×10分間、次いで160℃×20分間の加圧、加熱をして、筒状体を、発泡剤の分解によって発生したガスによって発泡させるとともに、ゴム分を架橋させた。発泡後の筒状体の外径はφ35mmであった。
【0089】
次いでこの筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ5mmのシャフト3に装着して、オーブン中で160℃×60分間加熱して二次架橋させるとともに、熱硬化性接着剤を硬化させて、シャフト3と電気的に接合し、機械的に固定した。
そして筒状体の両端をカットしたのち、その外周面4を、円筒研削盤を用いてトラバース研削することで、外径をφ12.5mm(公差±0.1mm)に仕上げて転写ローラ1を製造した。
【0090】
〈
比較例2〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり6質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり6質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
【0091】
〈実施例
1〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
【0092】
〈実施例
2〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0093】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
〈実施例
3〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり12質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり12質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0094】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
〈実施例
4〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり6質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0095】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の75質量%であった。
〈実施例
5〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0096】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の125質量%であった。
〈実施例
6〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり12質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0097】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の150質量%であった。
〈実施例
7〉
ゴム分として、
比較例1で使用したのと同じECO20質量部、EPDM10質量部、SBR40質量部に、さらにNBR〔JSR(株)製のJSR N250SL、非油展、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:20%〕30質量部を配合したこと以外は実施例
1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0098】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の150質量%であった。
〈比較例
3〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり3質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり3質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0099】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
〈比較例
4〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり13質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり13質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0100】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の100質量%であった。
〈比較例
5〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0101】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の62.5質量%であった。
〈比較例
6〉
発泡剤としてのADCAの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり8質量部とし、かつ尿素系発泡助剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり13質量部としたこと以外は
比較例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、転写ローラ1を製造した。
【0102】
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡剤量の162.5質量%であった。
〈発泡セル径の測定〉
実施例、比較例で製造した転写ローラ1の、研磨後の外周面4に露出した発泡セルの発泡セル径を、当該外周面4の複数箇所で、マイクロスコープを用いて測定し、その平均値を求めて、発泡セル径とした。そして下記の基準で、発泡セル径の大小を評価した。
【0103】
◎:
発泡セル径は250μm以下であった。
×:発泡セル径は250μm以
上であった
。
〈ゴム硬さ評価〉
実施例、比較例で製造した転写ローラ1のアスカーC型硬さを、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下、先に説明した測定方法に則って測定した。そしてアスカーC型硬さが34°以下のものをきわめて良好(◎)、34°を超え、45°以下の範囲内であったものを良好(○)、45°を超えたものを不良(×)と評価した。
【0104】
以上の結果を表2
、表3に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0108】
表
2の比較例1
〜3の結果より、発泡剤の配合割合が、ゴム分の総量100質量部あたり
8質量部未満では、全体として発泡セル径が大きくなって、カラー画像の形成に適した発泡セル径の小さい転写ローラが得られないことが判った。
また比較例
4の結果より、発泡剤の配合割合が、ゴム分の総量100質量部あたり12質量部を超える場合には、発泡セル径は小さくできるものの、ゴム硬さが硬くなり過ぎて、転写ローラに、当該転写ローラとして適した良好な柔軟性を付与できないことが判った。
【0109】
表3の比較例
5の結果より、発泡助剤の配合割合が、発泡剤量の70質量%未満では、良好な柔軟性は確保できるものの、全体として発泡セル径が大きくなって、カラー画像の形成に適した発泡セル径の小さい転写ローラが得られないことが判った。
さらに比較例
6の結果より、発泡助剤の配合割合が、発泡剤量の150質量%を超える場合には、発泡セル径は小さくできるものの、ゴム硬さが硬くなり過ぎて、転写ローラに、当該転写ローラとして適した良好な柔軟性を付与できないことが判った。
【0110】
これに対し表2、3の実施例1〜
7の結果より、発泡剤の配合割合が、ゴム分の総量100質量部あたり
8質量部以上、12質量部以下で、かつ発泡助剤の配合割合が、発泡剤量の70質量%以上、120質量%以下であるとき柔軟性に優れるとともに、カラー画像の形成に適した発泡セル径の小さい転写ローラが得られることが判った。
また実施例1〜
6の結果より、転写ローラの柔軟性を向上しながら発泡セル径をより一層小さくすることを考慮すると、発泡剤の配合割合は、上記の範囲内でも、ゴム分の総量100質量部あた
り11質量部以下、
特に10質量部以下であるのが好ましいことが判った。また発泡助剤の配合割合は、上記の範囲内でも、発泡剤量の80質量%以上、特に95質量%以上であるのが好ましく、120質量%以下、特に105質量%以下であるのが好ましいことが判った。
【0111】
さらに実施例
1、7の外周面を比較したところ、極性ゴムを配合することで、発泡のムラがより一層均一な多孔質構造を形成できることが判った。