(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164989
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】電力線通信システム及び電力線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20170710BHJP
H04B 3/54 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
H04Q9/00 311S
H04B3/54
H04Q9/00 301Z
H04Q9/00 311B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-182476(P2013-182476)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-50707(P2015-50707A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502036826
【氏名又は名称】埼広エンジニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中城 陽
(72)【発明者】
【氏名】井出崎 功
(72)【発明者】
【氏名】水戸 克己
(72)【発明者】
【氏名】下口 剛史
【審査官】
石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−250508(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/073548(WO,A1)
【文献】
特表2008−543117(JP,A)
【文献】
特開2007−019670(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0281717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家を対象とした電力線通信システムであって、
前記複数の需要家の各々に設けられ、電力線通信の機能を有する電力量計と、
前記変圧器と前記電力量計とを繋ぐ電力線を利用した第1ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するデータ集約機器と、
前記複数の需要家の各々に設けられ、前記電力量計と繋ぐ電力線を利用した第2ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するエネルギー管理機器とを備え、
前記電力量計は、前記データ集約機器から逐次ポーリングを受け取るタイミングを時期的基準として、前記ポーリングを受け取ってから次の前記ポーリングを受け取るまでの間に規定された一定のタイミングで前記ポーリングを受け取るたびに前記エネルギー管理機器との通信を実行する、電力線通信システム。
【請求項2】
前記電力量計と前記エネルギー管理機器との通信は、電力量の検針のための前記ポーリングの順番及びタイミングに追従して実行される請求項1記載の電力線通信システム。
【請求項3】
前記電力量計は、自己宛のポーリングに対する応答完了後に、同一需要家の前記エネルギー管理機器との通信を実行する請求項1又は2に記載の電力線通信システム。
【請求項4】
前記電力量計は、自己宛のポーリングに対する応答を第1の周波数帯域を用いて行い、前記自己宛のポーリングに対する応答と同時に、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域を用いて、同一需要家の前記エネルギー管理機器との通信を実行する請求項1又は2に記載の電力線通信システム。
【請求項5】
前記電力量計が、自己宛のポーリングに対する応答を完了し、かつ、同一需要家の前記エネルギー管理機器との通信を完了した後、次のポーリングまでの空き時間に、複数組の前記電力量計と前記エネルギー管理機器との通信が、時分割で実行される請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力線通信システム。
【請求項6】
前記空き時間における、前記複数組の前記電力量計と前記エネルギー管理機器との通信は、前記第1ルートのポーリングの順序に基づく順番にて時分割で実行される請求項5記載の電力線通信システム。
【請求項7】
一度のポーリングに対して、複数組の前記電力量計と前記エネルギー管理機器との間で同時に通信が行われ、各組で周波数帯域が異なる請求項1記載の電力線通信システム。
【請求項8】
前記電力量計が、自己宛のポーリングに対する応答を完了し、かつ、対応する前記エネルギー管理機器との通信を完了した後、次のポーリングまでの空き時間に、複数組の前記電力量計と、対応する前記エネルギー管理機器との通信が、時分割で実行され、かつ、同時に実行される複数組は互いに異なる周波数帯域を使用する請求項1〜4及び7のいずれか1項に記載の電力線通信システム。
【請求項9】
共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家の各々に設けられ、電力線通信の機能を有する電力量計と、前記変圧器と前記電力量計とを繋ぐ電力線を利用した第1ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するデータ集約機器と、前記複数の需要家の各々に設けられ、前記電力量計と繋ぐ電力線を利用した第2ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するエネルギー管理機器とを備える電力線通信システムにおける電力線通信方法であって、
前記電力量計は、前記データ集約機器から逐次ポーリングを受け取り、
前記電力量計は、前記ポーリングを受け取ったタイミングを時期的基準として、前記ポーリングを受け取ってから次の前記ポーリングを受け取るまでの間に規定された一定のタイミングで前記ポーリングを受け取るたびに前記エネルギー管理機器との通信を実行する、
電力線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家を対象とした電力線通信システム及び電力線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭で使用する電力量への関心が高まっており、家庭内でエネルギー管理を行うエネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)が注目されている。このシステムでは、宅内に設置されたエネルギー管理機器が、宅内の電気機器の消費電力を監視し、必要に応じてパワーセーブ等の制御を行うことも可能である。
【0003】
また、各家の電力量計として、自動検針が可能な通信機能を備えた、いわゆるスマートメータ(登録商標)の導入が進んでいる。かかる電力量計は、検針データを電力会社等の電力供給元に提供するのみならず、宅内のエネルギー管理機器にも提供することができる。これにより、エネルギー管理機器は、前述のように、消費電力を監視し、必要に応じてパワーセーブ等の制御を行うことができる。
【0004】
エネルギー管理機器と、電力量計との相互の通信には、例えば、専用の通信線を別途必要としない電力線通信(PLC:Power Line Communication)が好適である。特に、マンション等の集合住宅では、電力量計が分厚いコンクリート壁や金属製のドアで囲まれたメータボックスに設けられている。一方、エネルギー管理機器は、家の中に設けられる。このような状況では無線通信が困難な場合が多く、この点でも電力線通信が好適である。
【0005】
電力量計とエネルギー管理機器との間の通信は、基本的には自由に行うものとすることができ、例えば、エネルギー管理機器からランダムに検針データを求め、これに電力量計が答える場合と、電力量計がランダムにエネルギー管理機器に検針データを送りつける場合とがある。
【0006】
一方、電力線通信は、電力線を使用するため、集合住宅内の基幹配電線を介して、ある家の通信が、他の家にも漏れる(聞こえる)という状態になる場合がある。このような状態において、各戸でランダムに通信が行われると、信号が衝突する場合も生じる。そこで、通信に、例えばCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式を採用することができる。CSMA方式によれば、信号の衝突を回避しつつ、自由な通信を行うことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−73240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、集合住宅において電力線通信にCSMA方式を採用すると、多数の家で通信が行われることから、ある家で通信を行おうとするとき、既に他の家で通信が行われている、という場合が多くなる。この場合、ランダムな遅延時間(バックオフタイム)後に、再度通信にトライする。このランダムな遅延時間は、通信しようとして待機している家が複数ある場合に、再び、競合するのを避けるためである。しかし、集合住宅の総戸数が多くなると、バックオフタイム後でもまた競合して再々トライを余儀なくされる場合がある。
【0009】
図10は、CSMA方式によるデータ伝送の一例を示す図である。例えば、複数(n)の電力量計SM1〜SMnのいずれかが、エネルギー管理機器へ信号を送信しようとする場合に、他の電力量計による送信信号のキャリアが検出されないときは、送信を実行する。例えば電力量計SM1が送信中に、電力量計SMnが送信を行おうとしたときは、キャリア検出により、バックオフタイム後に再トライする。バックオフタイム後にも他の送信が行われているときは、再度、送信できず、2度目のバックオフタイム後に再々トライをしなければならない。集合住宅の総戸数が多くなるほど、このような2回以上のトライが多くなり、待ち時間が長くなると、全体として通信の効率が低下する。
【0010】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家を対象とした電力線通信システム及び電力線通信方法において、需要家の電力量計とエネルギー管理機器との間の通信について効率を高め、確実な通信が実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家を対象とした電力線通信システムであって、前記複数の需要家の各々に設けられ、電力線通信の機能を有する電力量計と、前記変圧器と前記電力量計とを繋ぐ電力線を利用した第1ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するデータ集約機器と、前記複数の需要家の各々に設けられ、前記電力量計と繋ぐ電力線を利用した第2ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するエネルギー管理機器とを備え、前記電力量計は、前記データ集約機器から逐次ポーリングを受け取るタイミングを時期的基準として前記エネルギー管理機器との通信を実行するものである。
【0012】
上記第1ルートは一般にAルートと呼ばれ、上記第2ルートは一般にBルートと呼ばれている。上記のような電力線通信システムでは、電力量計が、Aルートの通信であるポーリング(例えば、電力量の検針のためのポーリング)を受け取るタイミングを時期的基準としてBルートの通信をエネルギー管理機器との間で実行する。ここで、ポーリングは定期的に行われている。従って、Bルートの通信は、定期的に実行される。その結果、特にBルートにおいて、CSMA方式に任せる場合に比べて通信の効率を高め、Bルートの確実な通信を実現することができる。
【0013】
(2)また、上記(1)の電力線通信システムにおいて、電力量計とエネルギー管理機器との通信は、電力量の検針のためのポーリングの順番及びタイミングに追従して実行されてもよい。
この場合、ポーリングが一周すれば、電力量計とエネルギー管理機器との通信についても全ての需要家について実行される。
【0014】
(3)また、上記(1)又は(2)の電力線通信システムにおいて、電力量計は、自己宛のポーリングに対する応答完了後に、同一需要家のエネルギー管理機器との通信を実行するようにしてもよい。
この場合、自己宛のポーリングに対する電力量計からデータ集約機器への応答と、同一需要家での電力量計とエネルギー管理機器との通信とが、時間的に同時に行われないので、Aルート、Bルートで、同一の周波数帯域を使用することができる。
【0015】
(4)また、上記(1)又は(2)の電力線通信システムにおいて、電力量計は、自己宛のポーリングに対する応答を第1の周波数帯域を用いて行うと同時に、第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域を用いて、同一需要家の前記エネルギー管理機器との通信を実行するようにしてもよい。
この場合、異なる周波数帯域であることにより同時に通信しても信号同士の干渉が生じない。従って、ポーリング間の限られた時間を、より有効に、活用することができる。
【0016】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかの電力線通信システムにおいて、電力量計が、自己宛のポーリングに対する応答を完了し、かつ、同一需要家の前記エネルギー管理機器との通信を完了した後、次のポーリングまでの空き時間に、複数組の電力量計とエネルギー管理機器との通信が、時分割で実行されるようにしてもよい。
この場合、ポーリング間の空き時間を利用して、さらにBルートの通信を行うことができる。
【0017】
(6)また、上記(5)の電力線通信システムにおいて、空き時間における、複数組の電力量計とエネルギー管理機器との通信は、第1ルートのポーリングの順序に基づく順番にて時分割で実行されるようにしてもよい。
この場合、順番が明確になるので、空き時間を利用したBルートの通信を、より確実に行うことができる。
【0018】
(7)また、上記(1)の電力線通信システムにおいて、一度のポーリングに対して、複数組の電力量計とエネルギー管理機器との間で同時に通信が行われ、各組で周波数帯域が異なっていてもよい。
この場合、異なる周波数帯域であることにより同時に通信しても信号同士の干渉が生じない。従って、ポーリング間の限られた時間に、多数のBルートの通信を行うことができる。
【0019】
(8)また、上記(1)〜(4)、(7)のいずれかの電力線通信システムにおいて、電力量計が、自己宛のポーリングに対する応答を完了し、かつ、対応するエネルギー管理機器との通信を完了した後、次のポーリングまでの空き時間に、複数組の電力量計と、対応するエネルギー管理機器との通信が、時分割で実行され、かつ、同時に実行される複数組は互いに異なる周波数帯域を使用するようにしてもよい。
この場合、ポーリング間の空き時間を利用して、さらにBルートの通信を行うことができる。また、複数組については、異なる周波数帯域であることにより同時に通信しても信号同士の干渉が生じない。従って、ポーリング間の限られた時間に、多数のBルートの通信を行うことができる。
【0020】
(9)一方、本発明は、共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家の各々に設けられ、電力線通信の機能を有する電力量計と、前記変圧器と前記電力量計とを繋ぐ電力線を利用した第1ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するデータ集約機器と、前記複数の需要家の各々に設けられ、前記電力量計と繋ぐ電力線を利用した第2ルートの電力線通信により、前記電力量計と通信を行う機能を有するエネルギー管理機器とを備える電力線通信システムにおける電力線通信方法であって、(a)前記電力量計は、前記データ集約機器から逐次ポーリングを受け取り、(b)前記電力量計は、前記ポーリングを受け取ったタイミングを時期的基準として前記エネルギー管理機器との通信を実行する、電力線通信方法である。
【0021】
上記第1ルートは一般にAルートと呼ばれ、上記第2ルートは一般にBルートと呼ばれている。上記のような電力線通信システムでは、電力量計が、Aルートの通信であるポーリング(例えば、電力量の検針のためのポーリング)を受け取るタイミングを時期的基準としてBルートの通信をエネルギー管理機器との間で実行する。ここで、ポーリングは定期的に行われている。従って、Bルートの通信は、定期的に実行される。その結果、特にBルートにおいて、CSMA方式に任せる場合に比べて通信の効率を高め、Bルートの確実な通信を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、需要家の電力量計とエネルギー管理機器との間の通信について効率を高め、確実な通信が実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家を対象とした本発明の実施形態に係る電力線通信システムの概略構成図である。
【
図2】
図1における主としてAルート、Bルートの電力線通信に着目した接続図である。
【
図3】第1実施形態におけるデータ伝送の順序の一例を示す図である。図の横方向は時間の経過を表し、横線の上はAルートの信号、下はBルートの信号をそれぞれ表している。
【
図4】
図1における主としてAルート、Bルートの電力線通信に着目した接続図である。
【
図5】Aルート、Bルートに割り当てる周波数帯域の分布の一例を示す図である。
【
図6】第2実施形態におけるデータ伝送の順序の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態と同様なデータ伝送を行った場合に、空き時間がある場合の一例を示す図である。
【
図8】第3実施形態におけるデータ伝送の順序の一例を示す図である。
【
図9】空き時間にTDMA/FDMAの両方を使用した場合のデータ伝送の一例を示す図である。
【
図10】CMSA方式によるデータ伝送の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《全体的構成》
図1は、共通の変圧器から電力供給を受ける複数の需要家を対象とした本発明の実施形態に係る電力線通信システムの概略構成図である。図において、電力量計5及びエネルギー管理機器7からの電力線通信の信号は、電路(L2,L3,L4)で減衰して変圧器3に達し、さらに商用周波数を扱う変圧器3の2次側/1次側間の減衰も大きいため、共通の電路L1(6.6kV)を介して異なる変圧器が接続されていても、異なる変圧器の傘下の電路L2(100/200V)にまでは信号が通りにくい。従って、共通の変圧器の傘下にある複数の需要家を対象として、ローカルに電力線通信のネットワークを構成することができる。
【0025】
図1において、複数の需要家とは、例えばマンション等の集合住宅1である。集合住宅1では、例えば、構内に設けられた電気室2において電路L1に6.6kVを受電し、変圧器3で単相3線式の100/200Vに変圧する。変圧器3の出力電圧は、電路L2により、各戸に提供される。各戸では、電路L2から電力量計5及び電路L3を介して分電盤6に接続される。
【0026】
変圧器3の2次側には、データ集約機器(以下、コンセントレータという。)4が設けられ、電路L2に対して、電力線通信の信号の注入/抽出を行うことができる。コンセントレータ4は、例えば光ファイバFを介して電力供給元と繋がっており、電力供給元が制御・管理する装置である。
各戸では、エネルギー管理機器(HEMSと表記)7が、電路L4を介して、分電盤6に接続されている。なお、分電盤6には屋内配線が接続され、多くの家電機器等が接続されるが、ここでは図示は省略する。
【0027】
電力量計5は、電力線通信の機能を有し、コンセントレータ4と電力線通信による通信を行うことができる。コンセントレータ4と電力量計5とが電路L2を介して行う電力線通信の第1ルートを、例えば、Aルートという。また、エネルギー管理機器7は、電力線通信の機能を有し、電力量計5と電力線通信による通信を行うことができる。エネルギー管理機器7と電力量計5とが電路L3,L4を介して行う電力線通信の第2ルートを、例えば、上記Aルートと区別してBルートという。Aルートの電力線通信と、Bルートの電力線通信とは、互いに論理的に隔離されている。但し、Aルートの電力線通信を、Bルートのエネルギー管理機器7が聞く(リスニングする。)ことは可能である。
【0028】
《第1実施形態》
第1実施形態に係る電力線通信システム(方法も含む。以下同様。)は、TDMA(Time Division Multiple Access)を利用する。
図2は、
図1における主としてAルート、Bルートの電力線通信に着目した接続図である。図において、集合住宅1を構成するn戸を、それぞれ、部屋(家)1−1,1−2,・・・,1−nとする。コンセントレータ4は、周波数帯域fにて、電力量計5(又はSM1〜SMn)に対して、例えばSM1〜SMnの順番に、電力量の検針のためのポーリングを行う。同一の電力量計5に対する検針(ポーリング)の周期は、例えば30分に1回である。
【0029】
ポーリングに対する応答として、電力量計5は、検針データをコンセントレータ4に返信する。コンセントレータ4は検針データを受け取って集約し、電力供給元へ情報を提供する。こうして、所定時間内に、接続されている全ての電力量計5に対してポーリングを実行し、それに対する応答を得ることができる。従って、コンセントレータ4は、接続されている電力量計5の台数も常に把握している。なお、例えば一定時間待って返信が来ない場合は、再度呼びかけるか、又は、次の電力量計5に対してポーリングを行うようにすればよい。
【0030】
一方、ポーリングを受け取った電力量計5は、これをトリガにして、その後、Bルートでエネルギー管理機器7に検針データを送信する。このとき、Aルートと同じ周波数帯域fを使用することができる。
【0031】
図3は、第1実施形態におけるデータ伝送の順序の一例を示す図である。図の横方向は時間の経過を表し、横線の上はAルートの信号、下はBルートの信号をそれぞれ表している(以下同様。)。前述のように、SM1〜SMnの順番に、電力量の検針のためのポーリングが行われるとすると、まず、コンセントレータ4からAルートで電力量計SM1に検針データ要求のポーリング(SMA1要求)が届く。これを受けて、電力量計SM1は、応答として、Aルートでコンセントレータ4に対し、検針データの提供(SMA1応答)を行う。続いて、電力量計SM1は、Bルートでエネルギー管理機器7に対し、検針データ等を伝送する(SMB1伝送)。SMA1要求、SMA1応答及びSMB1伝送は、時間的に同時ではないので、前述のように、同じ周波数帯域fを使用することができる。
なお、
図3におけるSMB1〜SMBnの各伝送は、電力量計5とエネルギー管理機器7との双方向通信(要求と応答)、又は、電力量計5からのデータの送信、の両方の意味を有する(以下同様。)。
【0032】
以下同様に、ポーリングごとに、電力量計SM2,SM3,・・・,SMnの順にAルートのポーリングを時期的基準としてBルート、すなわち、電力量計5(SM1〜SMn)とエネルギー管理機器7との間で検針データの伝送が行われる。電力量計SM1〜SMnについてのAルート・Bルートの通信が完了すると、その後再び、電力量計SM1から順に、Aルート・Bルートの通信が行われる。
【0033】
以上のように、Aルートの通信である電力量の検針のためのポーリングを受け取るタイミングを時期的基準として、電力量計5は、Bルートの通信をエネルギー管理機器7との間で実行する。ここで、検針のためのポーリングは定期的に行われている。従って、Bルートの通信は、定期的に実行される。その結果、特にBルートにおいて、CSMA方式に任せる場合に比べて通信の効率を高め、Bルートの確実な通信を実現することができる。
【0034】
また、電力量計5とエネルギー管理機器7との通信は、ポーリングの順番及びタイミングに追従して実行されるので、ポーリングが一周すれば、電力量計5とエネルギー管理機器7との通信についても全ての需要家について実行される。
さらに具体的には、電力量計5は、自己宛のポーリングに対する応答完了後に、同一需要家のエネルギー管理機器7との通信を実行するので(
図3)、自己宛のポーリングに対する電力量計5からコンセントレータ4への応答と、同一需要家での電力量計5とエネルギー管理機器7との通信とが、時間的に同時に行われない。これにより、Aルート、Bルートで、同一の周波数帯域(f)を使用することができる。
【0035】
なお、前述のように、エネルギー管理機器7は、対応する電力量計5がポーリングを受け取ったことを聞く(検出する)ことができるので、エネルギー管理機器7の方から、電力量計5に対して検針データを要求することも可能である。
【0036】
なお、DR(デマンドレスポンス)などを行う場合、例えば、上位(電力供給元)からのDR信号を、電力量計5を介してBルートに伝送する場合も同様である。この場合、AルートからのDR信号を受け取り次第、電力量計5は、Bルートに転送すればよい。逆にエネルギー管理機器7からのレスポンス信号は、エネルギー管理機器7からの応答を電力量計5に一旦保存しておき、次のポーリングのタイミングにおいて、コンセントレータ4に返信すればよいと考えられる(DR応答も、初回DR応答以外では、それほど迅速な応答性は求められていない。)。通常、これらの信号のやり取りは、n台の電力量計に対して順次要求と応答を繰り返し行うため、n台の通信が最低30分間以内に終わればよい。また、Aルートにおいて、直接コンセントレータ4から電力量計5まで伝文が到達しない場合(ホップ伝送を行う場合)は、途中の電力量計が信号の中継を行うが、同様にポーリング対象の電力量計が信号を受け取り次第、Bルートの通信を行えばよい。
【0037】
《第2実施形態》
第2実施形態に係る電力線通信システムは、TDMAに加えてFDMA(Frequency Division Multiple Access)も利用する。
図4は、
図1における主としてAルート、Bルートの電力線通信に着目した接続図である。
図2との違いは、周波数帯域の利用の仕方にある。Aルートの通信には周波数帯域fAが使用される。Bルートの通信には、周波数帯域fB1,fB2,・・・,fBnが使用される。電力線通信の変調方式としては、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用することができる。使用帯域としては、例えば、10〜450kHzを使用することができる。
【0038】
図5は、Aルート、Bルートに割り当てるOFDMのキャリア周波数帯域の分布の一例を示す図である。横軸の周波数は、右に行くほど高い。この場合、まず、AルートとBルートとでは、周波数帯域が異なる。また、Bルートの周波数帯域としては、例えば、全て同じ周波数帯域を割り当てることができる。また、小グループごとに同じキャリア周波数帯域を割り当て、異なるグループには異なるキャリア周波数帯域を割り当てるようにしてもよい。総戸数が少ない場合は、各戸ごとに全て異なるキャリア周波数帯域を割り当てることも可能である。
【0039】
図6は、第2実施形態におけるデータ伝送の順序の一例を示す図である。
前述のように、SM1〜SMnの順番に、電力量の検針のためのポーリングが行われるとすると、まず、コンセントレータ4からAルートで電力量計SM1に検針データ要求のポーリング(SMA1要求)が届く。これを受けて、電力量計SM1は、応答として、Aルートでコンセントレータ4に対し、検針データの提供(SMA1応答)を行う。また、これと同時に、電力量計SM1は、Bルートでエネルギー管理機器7に対し、検針データを伝送する(SMB1伝送)。同時に送信できるのは、AルートとBルートとでは、周波数帯域が互いに異なるからである。
【0040】
以下同様に、ポーリングごとに、電力量計SM2,SM3,・・・,SMnの順にAルートのポーリングを時期的基準としてBルート、すなわち、電力量計5(SM2,SM3,・・・,SMn)からエネルギー管理機器7に対する検針データの送信が行われる。電力量計SM1〜SMnについてのAルート・Bルートの通信が完了すると、再び、電力量計SM1から順に、Aルート・Bルートの通信が行われる。
【0041】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加えて、AルートとBルートとで、異なる周波数帯域であることにより、同時に通信しても信号同士の干渉が生じない。従って、ポーリング間の限られた時間を、より有効に、活用することができる。
【0042】
《第3実施形態》
図7は、第1実施形態と同様なデータ伝送を行った場合に、空き時間がある場合の一例を示す図である。図において、Aルートにおける電力量計5からの検針データの収集は、通常30分ごとに行われることから、総戸数によっては、電力量計SM1からのBルートで検針データを伝送(SMB1伝送)した後、次のポーリングまでに、相応の空き時間があり、この空き時間を、TDMA領域として使用し、Bルートの信号伝送を行うことができる。すなわち、TDMA領域に順次、Bルートの通信を割り当てて、通信を行うことができる。信号伝送は、時間スロットをn台分で均等に分けてもよいし、1台の信号伝送が終わり次第、次の順番のBルート通信を行ってもよい。
【0043】
図8は、上記の要領による、第3実施形態におけるデータ伝送の順序の一例を示す図である。図において、空き時間のTDMA領域において、例えば、Bルートの通信をB1,B2,・・・,Bnとしてタイムスロットを割り当てることができる。この場合、ポーリング間の空き時間を利用して、さらにBルートの通信を行うことができる。
【0044】
なお、空き時間を使ってBルートの通信をより確実に行うためには、データを送信する順番を明確に識別する必要がある。Aルートによるポーリング順序から空き時間にデータを送信するタイムスロットの順番を決め、データを送信することが考えられる。あるいは、自局の送信を行う際に、一つ前の順番の他局の信号伝送が終わり次第、伝送を行ってもよい。なお、一つ前の他局の伝送が行われない場合は、一定時間待った後に伝送を行なえばよい。なお、次のAルートによるポーリング周期に達した場合、又は、ポーリングを検知した場合には、次回の空き時間を使って信号伝送を再開すればよい。
【0045】
なお、他局(他の家)が通信中であることを、より確実に認識する手段としては、例えば以下の手段が考えられる。
Bルート側の機器(電力量計5やエネルギー管理機器7)は、他局の通信をリスニングしておき、Aルートのポーリングの順番から自局のBルート側の機器の送信順位をスケジュールするとともに、他局の送信状況を監視しながら、自局の送信順番をあらかじめ予想して信号伝送を行なえば、送信のタイミング制御が容易になる。さらに、PLC伝送においては、電力量計5はエネルギー管理機器7に比べてAルートの信号伝送状況及び他のBルート信号伝送状況の把握精度が高い。エネルギー管理機器7からBルートにより電力量計5に信号伝送を行う際に、電力量計5が他局の送信状況を把握し、他局の送信状況をフラグ化しエネルギー管理機器7へ通知する手段を持たせることで、送信タイミングを教えることができ、無駄なく信号伝送ができると考えられる。以上の認識手段を持たせることにより、より確実に信号の送信タイミングを制御することが可能となる。
【0046】
また、OFDMの信号帯域を周波数分割し、各Bルートが使用する周波数をコンセントレータ4から指定するようにしてもよい。この際に、各Bルートが使用する帯域は、家の中の電力線の環境によって通信環境が異なる場合が考えられる。コンセントレータ4と電力量計5においてネゴシエーションすることにより良い周波数帯域を割り振るとともに、伝送を行う順番を予め決めることができる。異なる周波数帯域を効率的に割り振れば、複数のBルートが、同時に通信することができるため、効率良く伝送することができる。
【0047】
図9は、TDMA/FDMAの両方を使用した場合(例として、3種類の周波数帯域を使用した場合)を示す。この場合、空き時間は、TDMA/FDMA領域として使用される。周波数帯域f1を使用するBルートのタイムスロットは、B1,B4,・・・,Bn−2である。周波数帯域f2を使用するタイムスロットは、B2,B5,・・・,Bn−1である。そして、周波数帯域f3を使用するタイムスロットは、B3,B6,・・・,Bnである。同時に行われる3種類のBルートの通信(例えばB1,B2,B3)は、互いに異なる周波数帯域であることにより同時に通信しても信号同士の干渉が生じない。従って、ポーリング間の限られた時間に、多数のBルートの通信を行うことができる。
【0048】
《その他》
なお、
図1の全体構成は集合住宅を想定したものであるが、各実施形態の電力線通信システムは、本発明の適用は、これに限定されるものではない。例えば、共通の配電用変圧器(例えば柱上変圧器)の傘下にある複数の戸建て住宅について同様に適用することも可能である。
【0049】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1−1,1−2,1−n 部屋(需要家)
2 電気室
3 変圧器
4 コンセントレータ(データ集約機器)
5 電力量計
6 分電盤
7 エネルギー管理機器(HEMS)