特許第6164994号(P6164994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6164994ガスタービンプラント、その制御装置、及びガスタービンの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164994
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ガスタービンプラント、その制御装置、及びガスタービンの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/28 20060101AFI20170710BHJP
   F02C 9/50 20060101ALI20170710BHJP
   F02C 9/54 20060101ALI20170710BHJP
   F01D 17/20 20060101ALI20170710BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F02C9/28 C
   F02C9/50
   F02C9/54
   F01D17/20 F
   F01D17/00 P
   F01D17/00 Q
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-185230(P2013-185230)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52288(P2015-52288A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】恵藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】笹原 淳
(72)【発明者】
【氏名】北内 洋介
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−042360(JP,A)
【文献】 特開2010−285955(JP,A)
【文献】 特開2008−075578(JP,A)
【文献】 特開昭63−183230(JP,A)
【文献】 特開平05−187271(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0167581(US,A1)
【文献】 特開2013−036357(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01679563(EP,A1)
【文献】 特開2011−111996(JP,A)
【文献】 特開2009−114956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/00− 9/58
F01D 17/00、17/20
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気量を調節する吸気量調節器を有する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、前記燃焼ガスに供給する前記燃料の流量を調節する燃料流量調節弁と、を備えているガスタービンプラントの制御装置において、
前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃料流量調節弁の弁開度を制御する温調制御部と、
前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性で前記圧縮機の吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器を制御する吸気量制御部と、
を有するガスタービンプラントの制御装置。
【請求項2】
吸気量を調節する吸気量調節器を有する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、前記燃焼ガスに供給する前記燃料の流量を調節する燃料流量調節弁と、を備えているガスタービンプラントの制御装置において、
前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃料流量調節弁の弁開度を制御する温調制御部と、
前記温調制御部により、前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃料流量調節弁の弁開度を制御している温調制御工程中に、前記圧縮機と前記燃焼器と前記タービンとを有するガスタービンの出力変動に対して、負の相関性で前記圧縮機の吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器を制御する吸気量制御部と、
を有するガスタービンプラントの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記吸気量制御部は、前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性で前記吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器を制御する、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項4】
請求項1又は3に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記吸気量制御部は、前記単位熱量の変化前のガスタービンの出力が維持されるよう、変更後の前記吸気量を定める、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記吸気量調節器は、前記圧縮機のケーシングにおける吸気口側に設けられて、開度変更に応じて吸気量を変える入口案内翼と、前記入口案内翼の開度を変更する翼駆動機と、を有しており、
前記吸気量制御部は、前記燃料の単位熱量の変化量と前記入口案内翼の基準開度に対する開度変更量との予め定めた関係を用いて、外部から受け付けた前記燃料の単位熱量の変化量に対する開度変更量を求め、前記開度変更量に前記基準開度を加えて、指令開度を決定し、前記指令開度を指令値として前記吸気量調節器に出力し、
前記関係は、前記燃料の単位熱量から予め定められている基準単位熱量を減算した変化量に対して、前記開度変更量に正の相関性を持たせる関係である、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記関係は、前記変化量に対して、前記単位熱量の変化前のガスタービンの出力を維持できる開度変更量が得られる関係である、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項7】
請求項1、3から6のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記吸気量制御部は、外部から前記単位熱量を受け付けて前記吸気量調節器による前記吸気量の変更量を示す指令値を求める指令値演算部と、前記指令値演算部が前記単位熱量を受け付けてから設定時間後に前記吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器に対する前記指令値の出力タイミングを制御する出力タイミング制御部と、を有し、
前記設定時間は、前記吸気量制御部が外部から前記単位熱量を受け付けてから、当該単位熱量の前記燃料が前記燃焼器に到達するまでの到達時間に基づいて定められている、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記出力タイミング制御部は、前記燃料の流量を外部から受け付け、前記流量を用いて前記到達時間を定める、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記設定時間は、前記到達時間と同じである、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のガスタービンプラントの制御装置において、
前記設定時間は、外部から受け付けた前記単位熱量が大きくなった場合には前記到達時間より短く、外部か受け付けた前記単位熱量が小さくなった場合には前記到達時間より長い、
ガスタービンプラントの制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記圧縮機と前記燃焼器と前記タービンとを有するガスタービンと、
前記燃料流量調節弁と、
を備えているガスタービンプラント。
【請求項12】
空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えているガスタービンの運転方法において、
前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する温調制御工程と、
前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性を持たせて前記圧縮機の吸気量を変更する吸気量制御工程と、
を実行するガスタービンの運転方法。
【請求項13】
空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えているガスタービンの運転方法において、
前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する温調制御工程と、
前記温調制御工程中に、前記ガスタービンの出力変動に対して、負の相関性を持たせて前記圧縮機の吸気量を変更する吸気量制御工程と、
を実行するガスタービンの運転方法。
【請求項14】
請求項13に記載のガスタービンの運転方法において、
前記吸気量制御工程では、前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性を持たせて前記吸気量を変更する、
ガスタービンの運転方法。
【請求項15】
請求項12又は14に記載のガスタービンの運転方法において、
前記吸気量制御工程では、前記単位熱量の変化前の前記ガスタービンの出力が維持されるよう、変更後の前記吸気量を定める、
ガスタービンの運転方法。
【請求項16】
請求項12、14、15のいずれか一項に記載のガスタービンの運転方法において、
前記吸気量制御工程では、外部から前記単位熱量を受け付けて前記吸気量の変更量を示す指令値を求める指令値演算工程と、前記指令値演算工程で前記単位熱量を受け付けてから設定時間後に前記吸気量を変更するタイミング制御工程と、を実行し、
前記設定時間は、外部から前記単位熱量を受け付けてから、当該単位熱量の前記燃料が前記燃焼器に到達するまでの到達時間に基づいて定められている、
ガスタービンの運転方法。
【請求項17】
請求項16に記載のガスタービンの運転方法において、
前記タイミング制御工程では、前記燃料の流量を外部から受け付け、前記流量を用いて前記到達時間を定める、
ガスタービンの運転方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のガスタービンの運転方法において、
前記設定時間は、前記到達時間と同じである、
ガスタービンの運転方法。
【請求項19】
請求項16又は17に記載のガスタービンの運転方法において、
前記設定時間は、外部から受け付けた前記単位熱量が大きくなった場合には前記到達時間より短く、外部か受け付けた前記単位熱量が小さくなった場合には前記到達時間より長い、
ガスタービンの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンを備えているガスタービンプラント、その制御装置、ガスタービンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。燃焼器には、外部からの燃料を燃焼器に供給するための燃料ラインが接続されている。この燃料ラインには、燃焼器に供給する燃料の流量を調節する燃料流量調節弁が設けられている。また、ガスタービンには、例えば、ガスタービンの駆動で発電する発電機が接続されている。
【0003】
このガスタービンの運転方法として、例えば、以下の特許文献1に開示されている方法がある。この方法は、温調制御法と呼ばれる方法で、燃焼ガスが流入するタービン入口の温度が予め定められた上限温度に維持されるよう、燃料流量調節弁の弁開度を調節する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−42360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンでは、燃焼器に供給される燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量が大きくなった場合、燃料流量及び吸気量が一定のままだと、タービンの入口温度が上昇する。この場合、上記温調制御法では、タービンの入口温度が予め定められた上限値になるよう、燃料流量調節弁の弁開度を小さくし、燃焼器に供給される燃料の流量を少なくする。
【0006】
このため、上記温調制御法では、単位熱量の増加に対して、タービンへの入熱量が保たれるものの、タービンを通過するガス流量が減少し、ガスタービン出力が減少する。
【0007】
そこで、本発明は、タービンの入口温度を一定に保ちつつも、ガスタービン出力の変動を抑えることができるガスタービンプラント、その制御装置、及びガスタービンの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービンプラントの制御装置は、
吸気量を調節する吸気量調節器を有する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、前記燃焼ガスに供給する前記燃料の流量を調節する燃料流量調節弁と、を備えているガスタービンプラントの制御装置において、前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃料流量調節弁の弁開度を制御する温調制御部と、前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性で前記圧縮機の吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器を制御する吸気量制御部と、を有する。
【0009】
当該制御装置では、燃料流量調節弁の弁開度は、温調制御部によって、タービンの入口温度が一定に保たれるよう制御される。つまり、温調制御部によって温調制御が実行される。この温調制御中に、単位熱量が大きくなると、タービンの入口温度が高まるため、燃料流量弁の弁開度が小さくなって、燃焼器に供給される燃料の流量が少なくなる。この結果、タービンの入口温度は元の温度に戻る。タービンの入口温度が温調制御で元の温度に戻った時点では、燃料流量が少なくなっている関係上、タービンに流入するガスの流量も少なくなる。よって、タービンの入口温度が温調制御で元の温度に戻った時点では、ガスタービンの出力が減少している。
【0010】
そこで、当該制御装置の吸気量制御部は、燃料の単位熱量の変化に対して、正の相関性で吸気量が変更されるよう、吸気量調節器を制御する。すなわち、吸気量制御部は、燃料の単位熱量が大きくなると、空気圧縮機による吸気量を増加させる。この結果、タービンに流入するガスの流量が増えて、ガスタービンの出力も増える。よって、当該制御装置では、温調制御中に燃料の単位熱量が変化しても、ガスタービンの出力変動を抑えることができる。
【0011】
上記目的を達成するための発明に係る他の態様としてのガスタービンプラントの制御装置は、
吸気量を調節する吸気量調節器を有する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、前記燃焼ガスに供給する前記燃料の流量を調節する燃料流量調節弁と、を備えているガスタービンプラントの制御装置において、前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃料流量調節弁の弁開度を制御する温調制御部と、前記温調制御部により、前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃料流量調節弁の弁開度を制御している温調制御工程中に、前記圧縮機と前記燃焼器と前記タービンとを有するガスタービンの出力変動に対して、負の相関性で前記圧縮機の吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器を制御する吸気量制御部と、を有する。
【0012】
当該制御装置の吸気量制御部は、温調制御中のガスタービンの出力変動に対して、負の相関性で吸気量が変更されるよう、吸気量調節器を制御する。すなわち、吸気量制御部は、温調制御中にガスタービンの出力が減少すると、空気圧縮機による吸気量を増加させる。この結果、タービンに流入するガスの流量が増えて、ガスタービンの出力も増える。よって、当該制御装置では、温調制御中のガスタービンの出力変動を抑えることができる。
【0013】
ここで、前記他の態様としてのガスタービンプラントの制御装置において、前記吸気量制御部は、前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性で前記吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器を制御してもよい。
【0014】
また、外部から燃料の単位熱量を受け付ける、いずれかの前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記吸気量制御部は、前記単位熱量の変化前のガスタービンの出力が維持されるよう、変更後の前記吸気量を定めてもよい。
【0015】
当該制御装置では、温調制御中のガスタービンの出力変動をより抑えることができる。
【0016】
また、外部から燃料の単位熱量を受け付ける、いずれかの前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記吸気量調節器は、前記圧縮機のケーシングにおける吸気口側に設けられて、開度変更に応じて吸気量を変える入口案内翼と、前記入口案内翼の開度を変更する翼駆動機と、を有しており、前記吸気量制御部は、前記燃料の単位熱量の変化量と前記入口案内翼の基準開度に対する開度変更量との予め定めた関係を用いて、外部から受け付けた前記燃料の単位熱量の変化量に対する開度変更量を求め、前記開度変更量に前記基準開度を加えて、指令開度を決定し、前記指令開度を指令値として前記吸気量調節器に出力し、前記関係は、前記燃料の単位熱量から予め定められている基準単位熱量を減算した変化量に対して、前記開度変更量に正の相関性を持たせる関係であってもよい。
【0017】
また、入口案内翼の指令開度を指令値として吸気量調節器に出力する前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記関係は、前記変化量に対して、前記単位熱量の変化前のガスタービンの出力を維持できる開度変更量が得られる関係であってもよい。
【0018】
また、外部から燃料の単位熱量を受け付ける、いずれかの前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記吸気量制御部は、外部から前記単位熱量を受け付けて前記吸気量調節器による前記吸気量の変更量を示す指令値を求める指令値演算部と、前記指令値演算部が前記単位熱量を受け付けてから設定時間後に前記吸気量が変更されるよう、前記吸気量調節器に対する前記指令値の出力タイミングを制御する出力タイミング制御部と、を有し、前記設定時間は、前記吸気量制御部が外部から前記単位熱量を受け付けてから、当該単位熱量の前記燃料が前記燃焼器に到達するまでの到達時間に基づいて定められていてもよい。
【0019】
この場合、前記出力タイミング制御部は、前記燃料の流量を外部から受け付け、前記流量を用いて前記到達時間を定めてもよい。
【0020】
また、前記出力タイミング制御部を有するいずれかの前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記設定時間は、前記到達時間と同じであってもよい。
【0021】
当該制御装置の吸気量制御部は、単位熱量が変化した燃料が燃焼器に到達する時点に、圧縮機の吸気量を変更する。このため、当該制御装置では、温調制御中に燃料ガスの単位熱量が変化しても、タービンの入口温度の変化を抑えることができる。
【0022】
また、前記出力タイミング制御部を有するいずれかの前記ガスタービンプラントの制御装置において、前記設定時間は、外部から受け付けた前記単位熱量が大きくなった場合には前記到達時間より短く、外部か受け付けた前記単位熱量が小さくなった場合には前記到達時間より長くてもよい。
【0023】
当該制御装置の吸気量制御部は、燃料の単位熱量が大きくなった場合、当該燃料が燃焼器に到達する前に、圧縮機の吸気量を変更する。また、当該制御装置の吸気量制御部は、反対に燃料の単位熱量が小さくなった場合、当該燃料が燃焼器に到達した後に、圧縮機の吸気量を変更する。このため、当該制御装置では、温調制御中に燃料ガスの単位熱量が変化しても、タービンの入口温度の変化を抑えることができる。
【0024】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービンプラントは、
以上のいずれかの制御装置と、前記圧縮機と前記燃焼器と前記タービンとを有するガスタービンと、前記燃料流量調節弁と、を備えている。
【0025】
当該ガスタービンプラントでも、以上のいずれかの制御装置を備えているので、温調制御中のガスタービンの出力変動を抑えることができる。
【0026】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービンの運転方法は、
空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えているガスタービンの運転方法において、前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する温調制御工程と、前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性を持たせて前記圧縮機の吸気量を変更する吸気量制御工程と、を実行する。
【0027】
上記目的を達成するための発明に係る他のとしてのガスタービンの運転方法は、
空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えているガスタービンの運転方法において、前記燃焼ガスが流入する前記タービンの入口温度が一定に保たれるよう、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する温調制御工程と、前記温調制御工程中に、前記ガスタービンの出力変動に対して、負の相関性を持たせて前記圧縮機の吸気量を変更する吸気量制御工程と、を実行する。
【0028】
ここで、前記他の態様としての前記ガスタービンの運転方法において、前記吸気量制御工程では、前記燃焼器に供給される前記燃料の単位量当たりの熱量である単位熱量を外部から受け付け、前記単位熱量の変化に対して、正の相関性を持たせて前記吸気量を変更してもよい。
【0029】
また、外部から燃料の単位熱量を受け付ける、いずれかの前記ガスタービンの運転方法において、前記吸気量制御工程では、前記単位熱量の変化前の前記ガスタービンの出力が維持されるよう、変更後の前記吸気量を定めてもよい。
【0030】
また、外部から燃料の単位熱量を受け付ける、いずれかの前記ガスタービンの運転方法において、前記吸気量制御工程では、外部から前記単位熱量を受け付けて前記吸気量の変更量を示す指令値を求める指令値演算工程と、前記指令値演算工程で前記単位熱量を受け付けてから設定時間後に前記吸気量を変更するタイミング制御工程と、を実行し、前記設定時間は、外部から前記単位熱量を受け付けてから、当該単位熱量の前記燃料が前記燃焼器に到達するまでの到達時間に基づいて定められてもよい。
【0031】
この場合、前記タイミング制御工程では、前記燃料の流量を外部から受け付け、前記流量を用いて前記到達時間を定めてもよい。
【0032】
また、タイミング制御工程を実行する、いずれかの前記ガスタービンの運転方法において、前記設定時間は、前記到達時間と同じであってもよい。また、前記設定時間は、外部から受け付けた前記単位熱量が大きくなった場合には前記到達時間より短く、外部か受け付けた前記単位熱量が小さくなった場合には前記到達時間より長くてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、温調制御中のガスタービンの出力変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図2】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービンの温調曲線と各状態点との関係を示す説明図である。
図3】本発明に係る第一実施形態における単位熱量の変化量と入口案内翼の開度変更量との関係を示す説明図である。
図4】本発明に係る第二実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図5】本発明に係る第二実施形態における、燃料ガスの単位熱量の変化に伴う入口案内翼の開度変化のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るガスタービンプラントの各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
「第一実施形態」
本発明に係るガスタービンプラントの第一実施形態について、図1図3を用いて説明する。
【0037】
本実施形態のガスタービンプラントは、図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機31と、ガスタービン10の駆動で燃料ガスを圧縮するガス圧縮機35と、ガスタービン10の状態等を制御する制御装置50と、を備えている。
【0038】
ガスタービン10は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機11と、圧縮空気中で燃料ガスを燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する燃焼器19と、燃焼ガスにより駆動するタービン21と、を備えている。
【0039】
空気圧縮機11は、圧縮機ロータ12と、これを回転可能に覆う圧縮機ケーシング13と、空気Aの吸気量を調節する吸気量調節器15と、を有している。吸気量調節器15は、圧縮機ケーシング13の吸込口側に設けられている入口案内翼16と、この入口案内翼16の開度を変える案内翼駆動機17と、を有している。空気圧縮機11の吐出口と燃焼器19の圧縮空気入口と間の圧縮空気が流れる圧縮空気流路には、この圧縮空気流路内の圧力を検知する圧力計56が設けられている。
【0040】
タービン21は、燃焼ガスにより回転するタービンロータ22と、このタービンロータ22を回転可能に覆うタービンケーシング23とを有している。タービン21の排気口には、タービン21から排気される燃焼ガスである排気ガスの温度を検知する温度計57が設けられている。圧縮機ロータ12とタービンロータ22とは互いに連結され、一体となってガスタービンロータ28を成している。
【0041】
発電機31は、発電機ロータ32と、この発電機ロータ32を回転可能に覆う発電機ケーシング33と、を有している。発電機ロータ32は、ガスタービンロータ28に連結されている。このため、ガスタービンロータ28が回転すると、発電機ロータ32も、一体的に回転する。この発電機31には、この発電機31による発電量を検知する出力計58が設けられている。
【0042】
ガス圧縮機35は、圧縮機ロータ36と、これを回転可能に覆う圧縮機ケーシング37と、を有している。ガス圧縮機35の圧縮機ロータ36は、増速機38を介して、発電機ロータ32又はガスタービンロータ28と機械的に接続されている。このガス圧縮機35の吐出口と燃焼器19とは、高圧燃料ガスライン44で接続されている。この高圧燃料ガスライン44には、ここを通る燃料ガスの流量を調節する燃料流量調節弁47が設けられている。
【0043】
このガスタービンプラントは、製鉄所61及びコークスプラント62から燃料ガスが供給される。製鉄所61は、製鉄所61の高炉から低カロリー燃料ガスとしてのBFG(Blast Furnace Gas)を発生する。この高炉には、BFGが流れるBFGライン41が接続されている。BFGライン41には、このBFGの流量を調節するBFG流量調節弁45が設けられている。コークスプラント62は、コークスプラント62のコークス炉から高カロリー燃料ガスとしてのCOG(Coke Oven Gas)を発生する。このコークス炉には、COGが流れるCOGライン42が接続されている。COGライン42には、COGの流量を調節するCOG流量調節弁46が設けられている。BFGライン41とCOGライン42とは、合流して低圧燃料ガスライン43となる。この低圧燃料ガスライン43は、ガス圧縮機35の吸込口に接続されている。低圧燃料ガスライン43には、ここを通るガスの単位量(単位体積又は単位重量)当たりの熱量である単位熱量を計測する熱量計55が設けられている。
【0044】
なお、以下では、低圧燃料ガスライン43及び高圧燃料ガスライン44に、BFGのみが流れている場合、COGのみが流れている場合、BFGとCOGとが混ざり合って流れている場合のいずれの場合でも、低圧燃料ガスライン43及び高圧燃料ガスライン44に流れるガスを燃料ガスという。
【0045】
制御装置50は、燃料流量調節弁47の弁開度を制御する温調制御部51と、吸気量調節器15の入口案内翼16の開度を制御する吸気量制御部52と、を有している。
【0046】
温調制御部51は、ガスタービン10の燃焼器19から燃焼ガスが流入するタービン21の入口温度が予め定められた上限値を保つよう、燃料流量調節弁47の弁開度を制御する。このため、温調制御部51は、タービン21の入口温度を認識する必要がある。しかしながら、タービン21の入口温度は、千数百℃で極めて高い温度であるため、熱電対等の温度計でタービン21の入口温度を検知することが難しい。そこで、本実施形態では、空気圧縮機11の吐出口と燃焼器19の圧縮空気入口と間の圧縮空気流路内の圧力と、タービン21から排気される排気ガスの温度とからタービン21の入口温度を実質的に推定する。
【0047】
タービン21内では、タービン21のガス入口からガス出口までの間でガスが断熱膨張すると考えることができる。このため、タービン21の入口圧力とタービン21の出口圧力との比であるタービン圧力比と、タービン21の出口温度とを把握できれば、タービン21の入口温度を推定することができる。
【0048】
ところで、タービン21の入口圧力は、燃焼器19のガス入口における圧力に対して、ガスが燃焼器19を通過するときの圧力損失分低い。しかし、この圧力損失はほぼ一定であると考えてよい。また、タービン21の出口圧力は、ほぼ大気圧でほぼ一定であるため、実質的に固定値として扱うことができる。このため、タービン21の入口圧力に対して一定圧力損失分低い燃焼器19のガス入口における圧力をタービン圧力比に代替することができる。よって、燃焼器19のガス入口における圧力とタービン21の出口温度とを把握できれば、タービン21の入口温度を推定することができる。
【0049】
本実施形態では、以上の見地から、圧縮空気流路内の圧力と、タービン21から排気される排気ガスの温度とからタービン21の入口温度を実質的に推定する。このため、本実施形態では、圧縮空気流路内の圧力を圧力計56で検知し、タービン21から排気される排気ガスの温度を温度計57で検知する。
【0050】
図2に示すように、圧縮空気流路内の圧力Pcsと排気ガスの温度Texとタービン21の入口温度Tinとは、タービン21の入口温度Tinを一定にする場合、圧縮空気流路内の圧力Pcsの増加に伴って排気ガスの温度Texが低くなるという関係がある。このタービン21の入口温度Tinを一定にする場合の圧縮空気流路内の圧力Pcsと排気ガスの温度Texとの関係を示す曲線は、一般的に温調曲線Hと呼ばれる。本実施形態の温調制御部51には、タービン21の入口温度Tinが予め定めた上限値のときの温調曲線Hが記憶されている。また、温調制御部51には、圧力計56で検知された圧縮空気流路内の圧力Pcsと、温度計57で検知された排気ガスの温度Texとが入力される。温調制御部51は、前述したように、タービン21の入口温度を実質的に推定するものの、この入口温度そのものを推定するわけではない。つまり、温調制御部51は、入口温度が上限値のときの温調曲線Hを用いて、タービン21の入口温度がこの上限値であるか、この上限値より高い又は低いかを認識する。
【0051】
仮に、現在の圧縮空気流路内の圧力Pcs1と排気ガスの温度Tex1とにより定まる現在の状態点S1が温調曲線H上にあるとする。この場合、温調制御部51は、現在の入口温度は目標としている上限値であると認識する。その後、タービン21に供給される圧縮空気の流量が一定の状態で、燃料ガスの単位熱量が大きくなったとする。この場合、タービン21の入口圧力及び入口温度が高まる関係で、圧縮空気流路内の圧力Pcsは高まって圧力Pcs2になると共に、排気ガスの温度Texも高まって温度Tex2になる。この圧力Pcs2と温度Tex2とで定まる状態点S2では、温調曲線Hよりも排気ガスの温度Texが高いため、温調制御部51は、タービン21の入口温度が上限値よりも高くなったと認識する。温調制御部51は、タービン21の入口温度が上限値よりも高くなったと認識すると、燃料流量調節弁47に対して、弁開度を小さくする旨を指示する。この結果、燃料流量調節弁47の弁開度が小さくなり、燃焼器19に供給される燃料ガスの流量が少なくなる。燃料ガスの流量が少なくなると、排気ガスの温度Texが低下すると共に、圧縮空気流路内の圧力Pcsも低下し、最終的に、状態点S3(Pcs3,Tex3)が温調曲線H上に位置するようになる。つまり、タービン21の入口温度は、目標の上限値に戻る。
【0052】
以上のように、温調制御部51は、まず、圧縮空気流路内の圧力Pcs1と排気ガスの温度Tex1とから、タービン21の入口温度が上限値であるか、この上限値より高い又は低いかを認識する。そして、温調制御部51は、この認識に基づいて、タービン21の入口温度が上限値を維持するように、燃料流量調節弁47の弁開度を制御する。すなわち、温調制御部51は、温調制御工程を実行する。
【0053】
ところで、温調制御部51による温調制御後の状態点S3では、燃料ガスの単位熱量が大きくなる前と比べて、タービン21の入口温度は同じであるものの、燃料ガスの流量が減少しているため、タービン21に流入する燃焼ガスの流量も減少している。このため、状態点S3では、燃料ガスの単位熱量が大きくなる前と比べて、タービン21の入口圧力が低くなっていると共に、タービン圧力比が小さくなっている。よって、温調制御部51による温調制御後の状態点S3では、燃料ガスの単位熱量が大きくなる前と比べて、ガスタービン10の出力及びガスタービン10全体の出力が減少している。
【0054】
また、以上とは逆に、タービン21に供給される圧縮空気の流量が一定の状態で、燃料ガスの単位熱量が小さくなった場合、圧縮空気流路内の圧力Pcsが低下すると共に、排気ガスの温度Texも低下する。この場合、状態点Sにおける排気ガスTexが温調曲線H上よりも低くなるため、温調制御部51は、タービン21の入口温度が上限値よりも低くなったと認識する。温調制御部51は、タービン21の入口温度が上限値よりも低くなったと認識すると、燃料流量調節弁47に対して、弁開度を大きくする旨の指示を与える。この結果、燃料流量調節弁47の弁開度が大きくなり、燃焼器19に供給される燃料ガスの流量が多くなる。燃料ガスの流量が多くなると、排気ガスの温度Texが高まると共に、圧縮空気流路内の圧力Pcsも高まり、最終的に、状態点Sが温調曲線H上に戻る。この状態点Sでは、燃料ガスの単位熱量が小さくなる前と比べて、タービン21の入口温度は同じであるものの、燃料ガスの流量が増加しているため、タービン21に流入する燃焼ガスの流量も増加している。このため、この状態点Sでは、燃料ガスの単位熱量が小さくなる前と比べて、タービン21の入口圧力が高くなっていると共に、タービン圧力比が大きくなっている。よって、温調制御部51による温調制御後の状態点Sでは、燃料ガスの単位熱量が小さくなる前と比べて、ガスタービン10の出力は増加している。
【0055】
以上のように、温調制御中、燃料ガスの単位熱量が変化すると、この変化に伴ってガスタービン出力も変化する。より具体的には、温調制御中における燃料ガスの単位熱量の変化に対して、ガスタービン出力の変化は、負の相関性がある。
【0056】
そこで、本実施形態では、温調制御中における燃料ガスの単位熱量の変化に伴うガスタービン出力の変化を抑えるため、吸気量制御部52が吸気量調節器15の入口案内翼16の開度を制御する。すなわち、吸気量制御部52は、吸気量制御工程を実行する。
【0057】
吸気量制御部52は、熱量計55から燃料ガスの単位熱量を随時受け付けている。吸気量制御部52は、受け付けた単位熱量に基づいて、単位熱量の変化を認識し、この単位熱量の変化に対して、正の相関性で空気圧縮機11の吸気量が変更されるよう、吸気量調節器15を制御する。言い換えると、吸気流量制御部は、単位熱量の変化に対して、正の相関性で入口案内翼16の開度が変更されるよう、空気圧縮機11の吸気量調節器15に指令値を出力する。すなわち、吸気量制御部52は、単位熱量が大きくなると、入口案内翼16の開度が大きくなるよう、吸気量調節器15に指令値を出力する。
【0058】
仮に、図2を用いて前述したように、燃料ガスの単位熱量が大きくなって温調制御が実行された結果、状態点S3が温調曲線H上に位置するようになったとする。この場合、吸気量制御部52は、単位熱量が大きくなったことに基づいて、入口案内翼16の開度が大きくなるよう、吸気量調節器15に指令値を出力する。
【0059】
入口案内翼16の開度が大きくなり、空気圧縮機11の吸気量が増加すると、圧縮空気流路内の圧力Pcsは高まって圧力Pcs4になる一方で、排気ガスの温度Texが下がって温度Tex4になる。この圧力Pcs4と温度Tex4とで定まる状態点S4では、温調曲線Hよりも排気ガスの温度Texが低いため、温調制御部51は、タービン21の入口温度が上限値よりも低くなったと認識する。そして、温調制御部51は、燃料流量調節弁47に対して、弁開度を大きくする旨を指示する。この結果、燃料流量調節弁47の弁開度が大きくなり、燃焼器19に供給される燃料ガスの流量が多くなる。燃料ガスの流量が多くなると、排気ガスの温度Texが高まると共に、タービン21の入口圧力とほぼ等しい圧縮空気流路内の圧力Pcsも高まり、最終的に、状態点S5(Pcs5,Tex5)が温調曲線H上に位置するようになる。つまり、タービン21の入口温度は、目標の上限値に戻る。
【0060】
この状態点S5では、入口案内翼16の開度が大きくなる前の状態点S3のときと比べ、タービン21の入口温度は同じであるものの、燃料ガスの流量が増加している関係で、タービン21の入口圧力が高くなっている。このため、この状態点S5では、入口案内翼16の開度が大きくなる前の状態点S3のときと比べて、タービン圧力比が高くなっている。さらに、この状態点S5では、入口案内翼16の開度が大きくなる前の状態点S3のときと比べて、タービン21に流入する燃焼ガスの流量も増加している。よって、この状態点S5では、入口案内翼16の開度が大きくなる前の状態点S3のときと比べて、ガスタービン10の出力は増加している。
【0061】
従って、本実施形態では、温調制御中、燃料ガスの単位熱量が変化しても、ガスタービン出力の変動を抑制することができる。
【0062】
ここで、燃料ガスの単位熱量が変化した場合の入口案内翼16の開度変更量は、予め定めた単位変更量であってもよいし、単位熱量の変化量に対応した変更量であってもよい。入口案内翼16の開度変更量を単位変更量とした場合、燃料ガスの単位熱量の変化に伴って入口案内翼16の開度を変更しても、発電機31に設けられている出力計58で検知された発電量(≒ガスタービン10出力)が単位熱量の変化前と比べて小さい場合には、図3に示すように、再度、入口案内翼16の開度を変更するようにしてもよい。
【0063】
また、入口案内翼16の開度変更量を単位熱量の変化量に対応した変更量にする場合、吸気量制御部52には、単位熱量の変化量と開度変更量との関係を予め記憶しておく。この関係は、単位熱量の変化量の増加に対して開度変更量が増加し、ガスタービン10出力をほぼ維持できる関係である。吸気量制御部52は、この関係を用いて、単位熱量の変化量に対応した開度変更量を求める。
【0064】
また、入口案内翼16の開度変更量を単位熱量の変化量に対応した変更量にする場合、単位熱量の変化量として、基準単位熱量に対する変化量を採用し、入口案内翼16の開度変更量として、入口案内翼16の基準開度に対する変更量を採用してもよい。この場合、図3に示すように、吸気量制御部52には、熱量計55で計測された単位熱量Cdから基準単位熱量Csを減算した変化量(Cd−Cs)と、入口案案内翼の基準開度Asに対する開度変更量Acとの関係fを予め記憶しておく。この関係fも、単位熱量の変化量(Cd−Cs)の増加に対して開度変更量Acが増加し、ガスタービン10出力を維持できる関係である。なお、図3中で、関係fを示す線の傾きを適宜定めることで、この関係fがガスタービン10出力を維持できる関係になる。吸気量制御部52には、この関係fを関数として記憶しておいてもよいし、単位熱量の各変化量毎の開度変更量のマップとして記憶しておいてもよい。
【0065】
吸気量制御部52は、熱量計55から単位熱量Cdを受け付けると、この単位熱量Cdから基準単位熱量Csを減算して変化量(Cd−Cs)を求める。次に、吸気量制御部52は、関係fを用いて変化量(Cd−Cs)に対する開度変更量Acを求める。そして、以下の式に示すように、変化量(Cd−Cs)に対する開度変更量Acに基準開度Asを加えて指令開度Aiを求め、この指令開度Aiを指令値として吸気量調節器15に出力する。
Ai=As+f(Cd−Cs)=As+Ac
【0066】
なお、以上では、燃料ガスの単位熱量を随時計測し、温調制御中に燃料ガスの単位熱量が変化した場合、計測で得られた単位熱量の変化量に基づいて、入口案内翼16の開度、言い換える空気圧縮機11の吸気量を制御している。しかしながら、例えば、発電機31の発電量等で示されるガスタービン出力を随時計測し、温調制御中に燃料ガスの単位熱量が変化してガスタービン出力が変化した場合、計測で得られたガスタービン出力変化量に基づいて、入口案内翼16の開度、言い換えると空気圧縮機11の吸気量を制御してもよい。
【0067】
「第二実施形態」
次に、図4及び図5を用いて、本発明に係るガスタービンプラントの第二実施形態について説明する。
【0068】
本実施形態のガスタービンプラントは、第一実施形態のガスタービンプラントと比べて、制御装置の構成が異なることを除いて、基本的に同一である。よって、以下では、本実施形態のガスタービンプラントの制御装置50aについて主として説明する。
【0069】
本実施形態の制御装置50aは、第一実施形態の制御装置50と同様に、温調制御部51と吸気量制御部52aとを有する。但し、本実施形態の制御装置50aにおける吸気量制御部52aは、第一実施形態の吸気量制御部52と異なっている。
【0070】
本実施形態の吸気量制御部52aは、熱量計55で計測された燃焼ガスの単位熱量に基づいて指令開度(指令値)を求める指令値演算部53と、吸気量調節器15への指令開度(指令値)の出力タイミングを制御する出力タイミング制御部54と、を有している。
【0071】
指令値演算部53は、第一実施形態で例示したいずれかの方法で指令開度(指令値)を求める。
【0072】
出力タイミング制御部54は、図5に示すように、指令値演算部53が熱量計55から単位熱量を受け付けてから(t2)、設定時間Ts後に吸気量が変更されるよう、吸気量調節器15に対する指令値の出力タイミングを制御する。この設定時間Tsは、指令値演算部53が熱量計55から単位熱量を受け付けてから(t2)、この単位熱量の燃料ガスが燃焼器19に到達するまでの到達時間Trに基づいて定められている。本実施形態では、単位熱量が大きくなった場合、この設定時間Tsを到達時間Trより僅かに短い時間に設定し、単位熱量が小さくなった場合、この設定時間Tsを到達時間Trより僅かに長い時間に設定する。
【0073】
本実施形態の低圧燃料ガスライン43又は高圧燃料ガスライン44には、ここを通る燃料ガスの流量を検知する流量計59が設けられている。出力タイミング制御部54は、この流量計59で検知された流量と、熱量計55が燃焼ガスをサンプリングする位置から燃焼器19の燃料ガス入口までのライン距離等を用いて、前述の到達時間Trを求める。出力タイミング制御部54は、この到達時間Trを基準にして、例えば、この到達時間Trより予め定められた時間分短い設定時間Tsを定める。なお、前述の到達時間Trは、流量計59で検知された流量を用いる代わりに、例えば、燃料流量調節弁47の弁開度から推定される流量を用いてもよい。
【0074】
次に、図5に従って、燃料ガスの単位熱量の変化に伴う空気圧縮機11の入口案内翼16の開度変化について説明する。
【0075】
仮に、熱量計55のガスサンプリング位置における単位熱量Caが、時刻t1のときに大きくなったとする。熱量計55が燃料ガスをサンプリングしてから、この燃料ガスの単位熱量を求めて、制御装置50aの指令値演算部53がこの単位熱量を受け付けるまでには、第一所定時間T1かかる。このため、制御装置50aの指令値演算部53が熱量計55から受け付ける単位熱量Cbは、時刻t1から第一所定時間T1後の時刻t2に変化する。
【0076】
熱量計55のガスサンプリング位置における燃料ガスは、一部が熱量計55でサンプリングされ、残りが、低圧燃料ガスライン43、ガス圧縮機35、及び高圧燃料ガスライン44を経由して、燃焼器19に到達する。熱量計55のガスサンプリング位置から、燃料ガスが燃焼器19に到達するまでの時間は、第一所定時間T1より長い第二所定時間T2である。従って、燃焼器19に流入する燃料ガスの単位熱量Ccは、時刻t1から第二所定時間T2後、言い換えると、時刻t2から前述の到達時間Tr後の時刻t4に大きくなる。よって、第一所定時間T1と到達時間Trと第二所定時間T2との関係は、以下の式で示される関係がある。
T1+Tr=T2
【0077】
このため、到達時間Trを求める場合、予め第一所定時間T1を計測しておき、この第一所定時間T1を出力タイミング制御部54に記憶しておく。出力タイミング制御部54は、まず、流量計59で検知された流量と、熱量計55が燃焼ガスをサンプリングする位置から燃焼器19の燃料ガス入口までのライン距離等を用いて、第二所定時間T2を求める。そして、出力タイミング制御部54は、第二所定時間T2から第一所定時間T1を減算して、到達時間Trを求める。
【0078】
前述したように、出力タイミング制御部54が扱う設定時間Tsは、単位熱量Caが大きくなった場合、到達時間Trより僅かに短い時間である。このため、空気圧縮機11の入口案内翼16の開度は、燃焼器19に流入する燃料ガスの単位熱量Ccが大きくなる時刻t4より前の時刻t3に、大きくなる。すなわち、本実施形態では、燃焼器19に流入する燃料ガスの単位熱量の変化に対して、空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を先行制御する。
【0079】
このように、燃料ガスの単位熱量Ccが大きくなる時刻t4より前の時刻t3に、空気圧縮機11の入口案内翼16の開度が大きくなると、タービン21の入口温度が上限値よりあまり高くならないうちに、又は、タービン21の入口温度が高くなる前に、吸気量の増加と温調制御により、タービン21の入口温度が上限値に戻る。
【0080】
また、前述したように、出力タイミング制御部54が扱う設定時間Tsは、単位熱量Caが小さくなった場合、到達時間Trより僅かに長い時間である。このため、空気圧縮機11の入口案内翼16の開度は、燃焼器19に流入する燃料ガスの単位熱量Ccが小さくなる時刻より後の時刻に、小さくなる。
【0081】
このように、燃料ガスの単位熱量Caが小さくなる時刻より後の時刻に、空気圧縮機11の入口案内翼16の開度が小さくなると、タービン21の入口温度が上限値より低くなった後に、吸気量の減少と温調制御により、タービン21の入口温度が上限値に戻る。
【0082】
このため、本実施形態では、温調制御中に燃料ガスの単位熱量が変化しても、タービン21の入口温度の変化を抑えることができる。よって、本実施形態では、燃焼器19及びタービン21の耐久性を高めることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、単位熱量が大きくなった場合、設定時間Tsを到達時間Trより僅かに短い時間に設定し、単位熱量が小さくなった場合、この設定時間Tsを到達時間Trより僅かに長い時間に設定する。しかしながら、設定時間Tsを到達時間Trと同じ時間にしても、以上と同様に、温調制御中に燃料ガスの単位熱量の変化に対して、タービン21の入口温度の変化を抑えることができる。
【0084】
ところで、以上で説明した先行制御を実行しない場合、「第一実施形態」の欄で述べたように、計測で得られたガスタービン出力の変化量に基づいて入口案内翼16の開度を制御することは可能である。しかしながら、以上で説明した先行制御を実行する場合、計測で得られたガスタービン出力の変化量に基づいて入口案内翼16の開度を制御することはできない。つまり、燃焼器19に流入する燃料ガスの単位熱量が変化するときとき又は変化する前に、空気圧縮機11の入口案内翼16の開度を変更することはできない。よって、以上で説明した先行制御を実行する場合には、燃料ガスの単位熱量を計測することが必要である。
【0085】
以上の実施形態では、温調制御のために、圧力計56で検知された圧縮空気流路内の圧力と、温度計57で検知されたタービン21からの排気ガスの温度とを用いて、タービン21の入口温度を実質的に推定している。しかしながら、他の方法で、タービン21の入口温度を推定しても、さらに、温度計でタービン21の入口温度を検知してもよい。
【0086】
また、以上の各実施形態のガスタービンプラントの燃料は、BFG単味、COG単味、BFGとCOGの混合物とのいずれかである。しかしながら、ガスタービンプラントの燃料は、BFGのみでも、COGのみでもよい。さらに、ガスタービン10の燃料は、他の燃料ガス、例えば、天然ガスや、バイオガス等であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10:ガスタービン、11:空気圧縮機、15:吸気量調節器、16:入口案内翼、19:燃焼器、21:タービン、31:発電機、35:ガス圧縮機、43:低圧燃料ガスライン、44:高圧燃料ガスライン、47:燃料流量調節弁、50,50a:制御装置、51:温調制御部、52,52a:吸気量制御部、53:指令値演算部、54:出力タイミング制御部、55:熱量計、56:圧力計、57:温度計、58:出力計、59:流量計
図1
図2
図3
図4
図5