(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165002
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】エラスティックフレキシブルセンサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20170710BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20170710BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
G01B7/16 R
H05K1/02 A
H05K1/09 A
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-191027(P2013-191027)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-55615(P2015-55615A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】高橋 里香
(72)【発明者】
【氏名】撰 隆文
(72)【発明者】
【氏名】松本 紀生
(72)【発明者】
【氏名】菅 武
(72)【発明者】
【氏名】羅 志偉
【審査官】
八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−258112(JP,A)
【文献】
特開平11−241903(JP,A)
【文献】
特開2011−47702(JP,A)
【文献】
特開2009−186308(JP,A)
【文献】
特開2002−157918(JP,A)
【文献】
特開2005−337819(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/42398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー基材と、該エラストマー基材上に積層形成した伸縮性導電層とを有する伸縮可能なエラスティックフレキシブルセンサであって、
両端部の幅広大面積の着力部分と、両着力部分の間に位置する、上記着力部分より幅狭の伸張部分とを有し、
かつ、この伸張部分は、中央部の小幅伸張集中部と、この小幅伸張集中部の両端を両端の着力部分に接続する一対の縮幅部とを有していて、その小幅伸張集中部が一定幅であり、縮幅部が着力部分から小幅伸張集中部に向けて幅を縮小していること、
上記エラストマー基材と上記伸縮性導電層は、上記積層方向と直交する方向の平面形状が同一であること、
を特徴とするエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記伸張部分の上には、上記エラストマー基材の厚さより薄いエラストマー絶縁層が積層形成されているエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項3】
請求項2記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記伸縮性導電層の厚さは100〜150μm、上記エラストマー絶縁層の厚さは10〜40μmであるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記縮幅部は、階段状に幅を縮める階段状縮幅形状であるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記縮幅部はテーパ状縮幅形状であるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記小幅伸張集中部の幅は、1〜3mmであり、長さは、4〜20mmであるエラステッィクフレキシブルセンサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記縮幅部の長さは、1〜8mmであるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記エラストマー基材は、シリコーンゴム絶縁基材からなり、伸縮性導電層は、導電粉と、バインダーとしてシリコーンゴムポリマーを含む導電性ペーストからなり、上記エラストマー絶縁層は、シリコーンゴム絶縁層からなるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項9】
請求項8記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記導電粉は、銀粉であるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項10】
請求項8記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記導電粉は、不定形粒子と球状粒子との混合系からなるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記導電粉の粒径が1〜5μmであるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項12】
請求項8ないし10のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記導電部ペーストのバインダーゴムポリマーが、付加型液状シリコーンゴムであるエラスティックフレキシブルセンサ。
【請求項13】
請求項8ないし10のいずれか1項記載のエラスティックフレキシブルセンサにおいて、上記導電部ペーストが、シリコーンゴムと、導電粉と、溶剤とを含んでいるエラスティックフレキシブルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラスティック(伸縮可能な)フレキシブルセンサ(以下、適宜『EFセンサ』と略称することがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなEFセンサは、一般的に、伸縮可能なエラストマー基材上に、導電層(センサ電極)を積層形成して構成されている(特許文献1)。
【0003】
このEFセンサは、伸び、曲げ、捻り等、センサ部に生じる変位(各種の変形)を検出するものであり、例えば人体等への伸縮センサあるいは就寝中の人の挙動を検出するセンサ(特許文献2)として用いられている。このFEセンサは、高伸長にすればするほど必要荷重が増えるため、低伸長領域で大きな抵抗値変化(電圧変化)があるような特性を有することが望ましい。このような要求に対して従来、エラストマー基材の材料の選定、あるいは導電層の構成に開発の主眼が置かれており、エラストマー基材としてシリコーンゴム材料を用い、導電層として液状シリコーンゴムバインダーに導電フィラー(カーボン、金属粉)を混合したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-177259号公報
【特許文献2】特開2008-173226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のEFセンサは、ある程度大きな変位(伸び)を与えないと、低い初期抵抗値を保ったまま、電気特性を変化させることができず、低伸長領域でのセンシングは難しいという課題があった。
【0006】
本発明者らは、この課題を追求するうち、従来のEFセンサにおいて低伸張域でのセンシングが難しい大きな理由は、センサの平面形状にあることを見出した。従来のEFセンサは、一定幅のストリップ状あるいは一定面積の平面状(特許文献2)をなしており、このため、低伸張域でのセンシングが難しいのである。この分野の特許文献では、エラストマー基材と電極層の材料構成あるいは積層構造に関心が向いており、その結果、平面形状については言及されていない例も多い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
EFセンサには、両端の着力部分(電極部分、伸びを与えるために測定対象物を把持(接着)する部分)の間に、伸張部分を設けるのが一般である。本発明者らは、この伸張部分の幅を一定幅の幅狭とすることにより、低伸張域においても電気特性を変化させることを見出して本発明を完成したものである。すなわち、EFセンサの電気特性は、ある変位を与えたときに、導電層の導電フィラー間の導電パスが変化することを利用しており、低伸張域では特に、変位(伸び)を与えたときにセンサ伸張部の相当ひずみが大きくなる形状が望ましいのである。
【0008】
本発明は、エラストマー基材と
、該エラストマー基材上に積層形成した伸縮性導電層とを有するEFセンサにおいて、両端部の幅広大面積の着力部分と、両着力部分の間に位置する、上記着力部分より幅狭の伸張部分とを有し、かつ、この伸張部分は、中央部の小幅伸張集中部と、この小幅伸張集中部の両端を両端の着力部分に接続する一対の縮幅部とを有していて、その小幅伸張集中部が一定幅であり、縮幅部が着力部分から小幅伸張集中部に向けて幅を縮小している
こと、及び上記エラストマー基材と上記伸縮性導電層は、上記積層方向と直交する方向の平面形状が同一であること、を特徴としている。
上記伸張部分の上には、上記エラストマー基材の厚さより薄いエラストマー絶縁層を積層形成することができる。上記伸縮性導電層の厚さは100〜150μm、上記エラストマー絶縁層の厚さは10〜40μmとすることができる。
【0009】
縮幅部は、階段状に幅を縮める階段状縮幅形状が好ましいが、テーパ状に幅を縮めるテーパ状縮幅形状も可能である。さらに、縮幅部と小幅伸張集中部の幅を同一としてもよい。
【0010】
小幅伸張集中部の幅は、1〜3mmとし、長さは4〜20mmとすることが好ましい。小幅伸張集中部の幅が1mm未満では機械的強度が不足し(伸張の際破断するおそれがあり)、3mmを超えると、伸びに対する電気特性変化が顕著でなくなる。また小幅伸張集中部の長さが4mm未満では、伸びに対する電気特性変化が顕著に表れず、20mmを超えると、センサとして実際的でない。
【0011】
縮幅部の長さはそれぞれ、1〜8mmとすることが好ましい。また、小幅伸張集中部と縮幅部の合計長さで見ると、10〜20mmとするのがよい。
【0012】
また別の観点からは、縮幅部と両端着力部との接続部(境界部)の幅は、5〜7mmとし、縮幅部によって小幅伸張集中部の幅が1〜3mmとなるように縮める。
【0013】
本EFセンサのエラストマー基材は、シリコーンゴム絶縁基材から構成することができ、
エラストマー絶縁層は、シリコーンゴム絶縁層から構成することができる。
【0014】
伸縮性導電層は、導電粉と、バインダーとしてシリコーンゴムポリマーを含む導電性ペーストから構成するのが実際的である。
【0015】
導電粉は、銀粉を用いることが好ましい。また、導電粉は、不定形粒子(フレーク状粒子)と球状粒子との混合系とすると、小幅伸張集中部と縮幅部の形状によっては、伸張に伴い抵抗値が減少する領域を持つ逆特性のEFセンサを得ることができる。一方、導電粉が不定形粒子のみからなるときには、伸張に伴い抵抗値が増加する順特性のEFセンサが得られる(逆特性のEFセンサは得られない)。なお、不定形粒子とは、アスペクト比で2〜10程度の形状の粒子を言う。
【0016】
導電粉の平均粒径(走査型電子顕微鏡(SEM)により測定)は1〜5μmであることが好ましい。
【0017】
また、導電性ペーストのバインダーゴムポリマーは、付加型液状シリコーンゴムであることが好ましい。
【0018】
導電性ペーストは、シリコーンゴムと、導電粉と、溶剤とを含むものである。
【0019】
本発明のエラスティックフレキシブルセンサは、例えば電気抵抗変化を利用する感圧センサ、曲げセンサ、捻りセンサとして用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低伸長領域でも使用可能なEFセンサが得られ、その形状を変えることで電気特性が制御可能なセンサが得られる。また、逆特性のEFセンサによれば、縮幅部が伸縮しセンシングするときのみ電力が消費されるため、省エネであるセンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)は本発明によるエラスティックフレキシブルセンサの平面図、(B)は(A)のB-B線に沿う模式断面図である。
【
図2】本発明によるエラスティックフレキシブルセンサの第1の実施例を示す、主に伸張部分を拡大して示す平面図である。
【
図3】同第2の実施例を示す伸張部分の拡大平面図である。
【
図4】同第3と第7の実施例を示す伸張部分の拡大平面図である。
【
図5】上記実施例1ないし3の伸び量-電圧変化の測定結果を示すグラフ図である。
【
図6】本発明によるエラスティックフレキシブルセンサの第4の実施例を示す、主に伸張部分を拡大して示す平面図である。
【
図7】同第5の実施例を示す伸張部分の拡大平面図である。
【
図8】同第6の実施例を示す伸張部分の拡大平面図である。
【
図9】上記実施例4ないし7及び比較例1、2の伸び量-電圧変化の測定結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明によるEFセンサ10の形状例を示している。このEFセンサ10は、同図(B)の断面に示すように、エラストマー基材11と、該エラストマー基材11上の伸縮性のある導電層12と、該伸縮性導電層12上のエラストマー絶縁層13とを有する積層構造をなしており、伸縮可能である。エラストマー基材11、伸縮性導電層12、エラストマー絶縁層13の厚さはそれぞれ、200〜2000μm、100〜150μm、10〜40μmである。
【0023】
このEFセンサ10は、同図(A)に示すように、平面形状では、上下(左右)対称形状をしており、両端部の幅広大面積の着力部分20と、両着力部分20の間に位置する幅狭の伸張部分30とを有している。両端の着力部分20を伸張装置(引張試験機)に把持し、引張力を加えることにより、伸張部分30が伸張する。エラストマー絶縁層13は、感電を防ぐため、伸張部分30上にのみ形成されている。
【0024】
伸張部分30は、中央部の小幅伸張集中部31と、この小幅伸張集中部31の長さ方向の両端部を着力部分20に接続する一対の縮幅部32とを有している。小幅伸張集中部31は一定幅であるのに対し、縮幅部32は着力部分20から小幅伸張集中部31にかけてその幅を縮小する。着力部分20と伸張部分30の境界部33は、エラストマー絶縁層13の縁部として定義される。
【0025】
縮幅部32は、
図1(A)に実線で示すように、階段状に幅を縮小する態様と、同図に破線で示すように、テーパ状に幅を縮小する態様とが可能である。さらに、縮幅部32の幅を小幅伸張集中部31と同一とする(境界部33において急激に(階段状に)幅を縮小する)態様も可能である。
【0026】
ちなみに、ゴム材料の物性試験を行うためのダンベル形状と称される試験片は、
図1(A)に鎖線で示すように両端の着力部分20を一定幅ストリップ30Xで接続する形状であった。
【0027】
この従来のダンベル形状と比較して、本実施形態は、小幅伸張集中部31の幅が縮小される(ている)点において特徴的である。このように縮幅部32を介して小幅伸張集中部31を形成すると、低伸張域においても電気特性を変化させることができる。その理由は、幅狭の小幅伸張集中部31に伸びが集中し、伸びに伴いその抵抗値(つまり両端の伸張部分30間の抵抗値)が明確に変化するからではないかと考えられる。また、縮幅部32を介して小幅伸張集中部31を形成することにより、急激な幅の変化により破断しやすくなる(応力が集中する)のを避けつつ、小幅伸張集中部31に局所的なひずみを生じさせやすくなる。
【0028】
図1(A)に示すように伸張部分30の小幅伸張集中部31と縮幅部32のAないしKの寸法を採ったとき、小幅伸張集中部31の幅Fは、1〜3mmとし、長さCは4〜20mmとすることが好ましい。小幅伸張集中部31の幅Fが1mm未満では機械的強度が不足し(伸張の際破断するおそれがあり)、3mmを超えると、伸びに対する電気特性変化が顕著でなくなる。また小幅伸張集中部31の長さCが4mm未満では、伸びに対する電気特性変化が顕著に表れず、20mmを超えると、センサとして実際的でない。
【0029】
縮幅部32の長さ(D+E)はそれぞれ、1〜8mmとすることが好ましい。また、小幅伸張集中部31と縮幅部32の合計長さ(A)で見ると、10〜20mmとするのがよい。
【0030】
また別の観点からは、縮幅部32と両端着力部分20との境界部33の幅Bは1〜7mmとし、縮幅部32によって小幅伸張集中部31の幅Fが1〜3mmとなるように縮める。
【0031】
より一般的に、小幅伸張集中部31と縮幅部32は、
図1(A)のようにAないしKの寸法をとったとき、10≦A≦20、1≦B≦5、2≦C≦20、0≦D≦4.5、0≦E≦4.5、1≦F≦3、0≦J≦1、0≦K≦1を満足することが好ましい。
【0032】
また、
図1(A)の破線のようにテーパ状に幅を縮小する態様のときには、縮幅部32は、境界部33から小幅伸張集中部31にかけて幅を40%以上縮小する態様が好ましい。また、縮径部32の長さと縮径量との関係では、縮径量/長さの比が6〜25%となるようにするのがよい。
【0033】
エラストマー基材11とエラストマー絶縁層13は、少なくともシリコーンゴム絶縁基材から構成することができる。伸縮性導電層12は、少なくとも、導電粉と、バインダーとしてシリコーンゴムポリマーを含む導電性ペーストから構成することができる。導電性ペーストのバインダーゴムポリマーは、付加型液状シリコーンゴムであることが好ましい。導電性ペーストは、シリコーンゴムと、導電粉と、溶剤とを含むものである。
【0034】
導電粉は、銀粉を用いることが好ましい。また、導電粉は、不定形粒子(フレーク状粒子)と球状粒子との混合系とする態様と、不定形粒子(フレーク状粒子)のみの単一系とする態様が可能である。混合系では、以下の具体的な実施例で説明するように、小幅伸張集中部31と縮幅部32の形状によっては、伸張に伴い抵抗値が減少する逆特性のEFセンサを得ることができる。一方、単一系では、伸張に伴い抵抗値が増加する順特性のEFセンサが得られる(逆特性のEFセンサは得られない)ことが確認された。
【0035】
導電粉の平均粒径は1〜5μmであることが好ましい。
【0036】
次に、具体的な実施例について説明する。
テスト概要
下記に詳細を示すエラストマー基材11、伸縮性導電層12及びエラストマー絶縁層13を有するEFセンサ10を下記形状に加工し、両端着力部分20間に定電流を印加した状態で、これらを一定スピードで伸長させたときの電圧変化を調べた。
【0037】
〈実施例1、2、3、比較例1、2〉
<試料作製>
EFセンサ試験片の作製
(バインダーゴムポリマー)
液状シリコーンゴムKE1820(信越化学工業株式会社製)。
(導電粉)
平均粒径約1〜5μmの不定形銀粒子(SF-70、フェロジャパン(株)製、アスペクト比5、密度10.5g/cm
3)と、平均粒径約2μmの球状銀粒子(SPN-10JS、三井金属(株)製、密度10.5g/cm
3)が、不定形銀粒子:球状銀粒子=7:3(重量比)の比率で混合されたもの。平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)によって測定した。
(溶剤)
YS-150、山一化学工業(株)製の芳香族系炭化水素の混合溶剤。
(導電ペースト)
上記バインダーゴムポリマーと上記導電粉とを2:8(重量比)で混合し、3本ロールミルにて分散した後、溶剤にて粘度調整を行い導電性ペーストとした。
(エラストマー基材11の作製方法)
シリコーンゴムポリマー「KE−951」(信越化学工業株式会社製)と「TSE−2623U」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン株式会社製)と「TSE−2627U」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン株式会社製)と加工助剤「MR−14」と架橋剤「C23−N」(信越化学工業株式会社製)を混練したものを、150℃で5分間遠赤外線加熱することにより、シリコーンゴムサンプルを得た。得られたゴムサンプルの硬度は、Hs50(JISK6253 デュロメータ(タイプA)で測定)であった。
(伸縮性導電層12の作製方法)
上記エラストマー基材11に、200μm厚のメタルマスクを使用して、上記バインダーゴムポリマーと銀粉とを2:8(重量比)で混合した導電ペーストを糊引きし、100℃、30分、次いで、180℃、1時間加熱硬化させ、厚さ約150μm(SEMにて測定)のそれぞれ電極形状を有する試験片を作製した。
(エラストマー絶縁層13の作製方法)
上記伸縮性導電層12の表面の小幅伸張集中部31と縮幅部32上に、シリコーンゴムポリマー(「KE1820」信越化学工業株式会社製)を糊引きし、100℃、1時間加熱硬化させ、厚さ約40μmのエラストマー絶縁層13を作製した。
【0038】
実施例1、2、3のEFセンサ10の平面形状
実施例1、2、3のEFセンサ10の小幅伸張集中部31と縮幅部32の平面形状を
図2、
図3、
図4及び下記表1に示す。なお、両端着力部分20の幅は25mm、長さは40mm(一定幅部分の長さ15mm、伸縮部30迄の漸減幅部分の長さ25mm)である。
(表1)
実施例番号 A B C D E F J K(単位mm)
1 20 1 20 1
2 20 5 8 3
3 10 5 4 1.5 1.5 1 1 1
(記載のない数値は0)
比較例1、2のEFセンサの平面形状
比較例1は、
図1(A)に鎖線で示したダンベル形状30Xの試験片であり、その幅Bは5mmである。
比較例2は、両端着力部分20を含め、全体の幅を6mmとした試験片である。
【0039】
(評価方法)
伸長装置は、引張試験機(型式:STROGRAPH VES 5D、東洋精機株式会社製)を使用した。伸長時の電圧変化の計測には、電圧モニターGR3500(キーエンス製)を使用した。電源は、HIOKI 7020(HIOKI製)を使用し、定電流10mAを流しながら伸長スピード50mm/minで伸長させたときの電圧変化を測定した。
【0040】
(評価結果)
図5は、実施例1、2、3の伸張率と電圧変化の測定結果を示している。この結果によれば、実施例1では少なくとも8.7〜14.5(9〜15)%の伸張領域、実施例2では少なくとも9.7〜20.0(10〜20)%の伸張領域、実施例3では少なくとも3.5〜11.5(3〜12)%の伸張領域において、それぞれ伸張率が増加するに従い電圧が下降(抵抗値は減少)する特性(逆特性)が得られた。
【0041】
〈実施例4、5、6〉
これらの実施例4ないし6では、導電粉として、平均粒径1〜5μmの不定形銀粒子(フレーク状銀粒子)(密度10.5g/cm
3)を用いた。この他のセンサ試験片構造については、実施例1、2、3と同一である。
実施例4、5、6のEFセンサ10の小幅伸張集中部31と縮幅部32の平面形状を
図6、
図7、
図8及び下記表2に示す。
【0042】
(表2)
実施例番号 A B C D E F J K(単位mm)
4 20 5 4 1
5 10 5 4 3
6 10 5 4 1.5 1.5 1 1 1
(記載のない数値は0)
【0043】
(評価結果)
図9は、実施例4、5、6と比較例1、2の伸張率と電圧変化の測定結果を示している。この結果によれば、実施例4では少なくとも11.0〜35.5(11〜36)%の伸張領域、実施例5では少なくとも17.4〜40.5(18〜41)%の伸張領域、実施例6では少なくとも8.1〜24.5(8〜25)%の伸張領域において、それぞれ伸張率が増加するに従い電圧が上昇(抵抗値は増加)する特性(順特性)が得られた。これに対し、比較例1、2では、高い伸張領域(50〜70%)でのみ、順特性が得られるに過ぎない。
【0044】
導電粉(銀粉)として、不定形粒子(フレーク状粒子)と球状粒子との混合系を用いる態様(実施例1ないし3)では、特定の小幅伸張集中部31と縮幅部32の平面形状によっては、逆特性が得られ、不定形粒子(フレーク状粒子)のみの単一系を用いる態様(実施例4ないし7)では、順特性が得られる(逆特性が得られない)理由は必ずしも明らかではない。本発明者らは、小幅伸張集中部31が引き延ばされる結果、混合系では導電層の厚み方向の不定形粒子と球状粒子が接近して(導電粒子どうしのつながりが増えて)抵抗値が下がるのに対し、単一系では、導電層の厚み方向の粒子間同士の接近より長さ方向の粒子の離間の方が多く生じるため抵抗値が上がるのではないかと推論している。
【符号の説明】
【0045】
10 エラスティックフレキシブルセンサ
11 エラストマー基材
12 伸縮性導電層
13 エラストマー絶縁層
20 着力部分
30 伸張部分
31 小幅伸張集中部
32 縮幅部
33 境界部