【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2013年5月21日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product/application.html ・2013年6月5日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product/application.html ・2013年7月8日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product/application.html ・2013年5月21日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product_e/application.html ・2013年6月5日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product_e/application.html ・2013年7月8日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product_e/application.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明のフィラー組成物、フィラー含有樹脂組成物及びそれらの製造方法について実施形態に基づき以下詳細に説明する。
【0018】
本発明のフィラー組成物はどのような用途に用いても良い。例えば、樹脂組成物中に分散させて本願発明のフィラー含有樹脂組成物を調製することが出来る。
【0019】
(フィラー組成物)
本実施形態のフィラー組成物は無機繊維と球状シリカ粒子とを有する。無機繊維と球状シリカ粒子との関係は特に限定されないが、無機繊維の表面に球状シリカ粒子が付着する形態になることが望ましい。例えば両者を、単純に混合したり、混合した後に振動を与えたりすることで調製できる。無機繊維と球状シリカ粒子との混合は乾燥状態で行っても、何らかの液体中にて行ってもよい。球状シリカ粒子の存在割合は特に限定されない。球状シリカ粒子が僅かにでも存在することにより流動特性改善効果が発現できる。例えば球状シリカ粒子の含有量は無機繊維の質量を基準として、上限が50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%程度を好ましい範囲として採用でき、下限が0.001%、0.005%、0.01%、0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、0.75%、1%、1.5%程度を好ましい範囲として採用できる。
【0020】
無機繊維は無機物単独又は無機物を主成分(質量基準で50%以上)とする繊維である。無機物としては炭素材料又は炭素材料を主成分とするものやガラスやガラスを主成分とするものが例示できる。炭素材料又は炭素材料を主成分にするものからなる無機繊維は炭素繊維と称されるものを含み、ガラス又はガラスを主成分にするものからなる無機繊維はガラス繊維と称されるものを含む。本明細書中における「繊維」とは通常の意味における繊維以外にも細長い形状をもつもので有ればよい。例えばアスペクト比が5以上、10以上、50以上、100以上のものが採用できる。
【0021】
無機繊維の繊維径は特に限定しない。例えば1μm〜400μm、2000μm〜15000μmが挙げられる。また、無機繊維の繊維長も特に限定しない。例えば10μm〜600μm、2000μm〜30000μmが挙げられる。繊維長は切断、粉砕などの操作により必要な長さに制御可能である。
【0022】
球状シリカ粒子は球状のシリカ粒子である。球状であるかどうかは球形度が0.7以上であるかどうかで判断する。球形度の好ましい下限としては0.8、0.85、0.9、0.95、0.99を挙げることが出来る。本明細書中における「球形度」とは、SEM で写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×( 面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真円に近い。具体的には画像処理装置(シスメックス株式会社:FPIA−3000)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。球形度は高い方が流動性が高くなるものと考えられる。
【0023】
球状シリカ粒子の体積平均粒径は0.
1μm以上5μm以下である。体積平均粒径の下限として好ましい値は、0.015μm、0.02μm、0.03μm、0.05μm、0.07μm、0.1μmが挙げられる。体積平均粒径の上限として好ましい値は4μm、3μm、2μm、1μm、0.7μm、0.5μm、0.3μm、0.2μm、0.15μmが挙げられる。
【0024】
球状シリカ粒子は表面処理が為されていても良い。表面処理の種類としては特に限定されず、例えば樹脂組成物に分散される場合に、その樹脂組成物に対する親和性が高い官能基を導入するもの、樹脂組成物に対して反応性をもつ官能基を導入するものが挙げられる。
【0025】
本実施形態のフィラー組成物は、微小粒子材料を含
む。微小粒子材料は、一次粒子の体積平均粒径が50nm以下、嵩密度が450g/L以下であり、式(1):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基と、式(2):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基とを表面にもつ。
(上記式(1)、(2)中;X
1はフェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基であり;X
2、X
3は−OSiR
3及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択され;Y
1はRであり;Y
2、Y
3はR及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択される。Y
4はRであり;Y
5及びY
6は、R及び−OSiR
3からそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1〜3のアルキル基から独立して選択される。なお、X
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかは、隣接する官能基のX
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合しても良い。)微小粒子材料における一次粒子の体積平均粒径としては、好ましい上限として、100nm、70nm、50nmが挙げられる。また、好ましい下限として、1nmが挙げられる。微小粒子材料としては球状シリカ粒子と区別可能であるときにはすべて300nm以下の粒径であることが望ましい。
【0026】
本明細書における嵩密度の測定は筒井理化学器械(株)製:電磁振動式カサ密度測定器(MVD−86型)を使用して行う。具体的には試料槽としての上部500μm篩に測定対象のサンプルを投入し、加速度4Gの条件で電磁振動により上部・下部の2つの500μm篩を通してサンプルを分散させ100mLの試料容器に落下投入した後、質量を測定し、その質量と体積とからかさ密度を算出した。自重による嵩密度の低下を防止するため測定は落下投入後1時間以内に実施する。
【0027】
嵩密度の好ましい上限としては400g/L、370g/L、350g/L、300g/L、280g/L、250g/Lが挙げられる。好ましい下限としては100g/Lが挙げられる。嵩密度をこれら上限よりも下の値にすることにより一次粒子の分離がより確実に行われる。また、嵩密度をこれら下限よりも上の値にすることで嵩が小さく取り扱いやすくなる。
【0028】
微小粒子材料は表面に炭素を含む官能基が表面に導入されている。炭素を含む官能基の具体的な構成及び球状シリカ粒子表面への導入方法などについては後述する製造方法にて詳述するため、ここでの説明は省略する。
【0029】
(フィラー組成物の製造方法)
本実施形態のフィラー組成物の製造方法は、原料シリカ粒子に対して解砕工程を行い製造した微小粒子材料(球状シリカ粒子)を無機繊維の表面に付着させる方法である。前述の本実施形態のフィラー組成物(特に微小粒子材料を含有するもの)の製造に好適に利用できる方法である。原料シリカ粒子は一次粒子同士が結合している割合が多いが、その結合を解砕工程にて分離することが出来る。
【0030】
解砕工程は特に方法は問わない。好ましくは凝集体の凝集を分離する程度の作用が加えられる方法が良く、凝集体を構成する一次粒子を破壊するような方法でない方が良い。例えば乾燥状態で行う粉砕に類する方法にて行うことができ、ジェットミル、ピンミル、ハンマーミルが例示できる。特に望ましくはジェットミルにて行う。工程の終期は原料シリカ粒子の嵩密度の値から判断する。適正な嵩密度後としては先述した範囲内から選択できる。ジェットミルは原料シリカ粒子を気流に乗せて粉砕を行う装置である。ジェットミルの種類は問わない。ジェットミルによる解砕は乾式にて行うことが望ましい。
【0031】
原料シリカ粒子は一次粒径の体積平均粒径が200nm以下である。その他、上限としては100nm、70nm、50nmが挙げられる。原料シリカ粒子の製造方法は特に限定しない。例えば水ガラス法、アルコキシド法、VMC法が例示でき、水ガラス法を採用することが望ましい。水ガラス法は水ガラスに対して、イオン交換、化学反応による置換基の導入・脱離、pHや温度などの制御などを行うことにより原料シリカ粒子を析出させる方法である。例えば、水ガラスをイオン交換樹脂でイオン交換することによって、ナノメートルオーダーのシリカ粒子が分散された水性スラリーを調製することができる。原料シリカ粒子を構成する二次粒子の粒径は特に限定しないが、体積平均粒径が10μm以上、100μm以上などの値を示すこともある。更に、金属ケイ素をアルカリ溶液などに溶解させた後に析出させることで(水ガラス法類似の方法)、原料シリカ粒子を製造することが出来る。
【0032】
原料シリカ粒子の調製には前処理工程を適用する。前処理工程は表面処理工程と液状媒体を除去する工程(固形化工程)とをもつ。表面処理工程は水を含む液状媒体(水、水の他にアルコールなどを含むもの)中でシランカップリング剤およびオルガノシラザンによって表面処理する工程である。シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基とをもつ。シランカップリング剤とオルガノシラザンとのモル比は、(シランカップリング剤):(オルガノシラザン)=1:2〜1:10である。
【0033】
表面処理工程は、前述のシランカップリング剤で処理する第1の処理工程と、その後、オルガノシラザンで処理する第2の処理工程と、をもつ。
【0034】
表面処理工程は、上述の方法にて得られたシリカ粒子に対して、式(1):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基と、式(2):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基とが表面に結合した原料シリカ粒子を得る工程である。以下、式(1)で表される官能基を第1の官能基と呼び、式(2)で表される官能基を第2の官能基と呼ぶ。
【0035】
第1の官能基におけるX
1は、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基である。X
2、X
3は、それぞれ、−OSiR
3又は−OSiY
4Y
5Y
6である。Y
4はRである。Y
5、Y
6は、それぞれ、R又は−OSiR
3である。
【0036】
第2の官能基におけるY
1はRである。Y
2、Y
3は、それぞれ、−OSiR
3又は−OSiY
4Y
5Y
6である。
【0037】
第1の官能基および第2の官能基に含まれる−OSiR
3が多い程、原料シリカ粒子の表面にRを多く持つ。第1の官能基および第2の官能基に含まれるR(炭素数1〜3のアルキル基)が多い程、原料シリカ粒子は凝集し難い。
【0038】
第1の官能基に関していえば、X
2、X
3がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最小となる。また、X
2およびX
3がそれぞれ−OSiY
4Y
5Y
6であり、かつ、Y
5、Y
6がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最大となる。
【0039】
第2の官能基に関していえば、Y
2、Y
3がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最小となる。また、Y
2およびY
3がそれぞれ−OSiY
4Y
5Y
6であり、かつ、Y
5、Y
6がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最大となる。
【0040】
第1の官能基に含まれるX
1の数、第1の官能基に含まれるRの数、第2の官能基に含まれるRの数は、RとX
1との存在数比や、原料シリカ粒子の粒径や用途に応じて適宜設定すれば良い。
【0041】
なお、X
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかは、隣接する官能基のX
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合しても良い。例えば、第1の官能基のX
2、X
3、Y
5、及びY
6の何れかが、この第1の官能基に隣接する第1の官能基のX
2、X
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合していても良い。同様に、第2の官能基のY
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかが、この第2の官能基に隣接する第2の官能基のY
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合していても良い。さらには、第1の官能基のX
2、X
3、Y
5、及びY
6の何れかが、この第1の官能基に隣接する第2の官能基のY
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合していても良い。
【0042】
原料シリカ粒子において、第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12〜1:60であれば、原料シリカ粒子の表面にX
1とRとがバランス良く存在する。このため、第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12〜1:60である原料シリカ粒子は、樹脂に対する親和性および凝集抑制効果に特に優れる。また、X
1が原料シリカ粒子の単位表面積(nm
2)あたり0.5〜2.5個であれば、原料シリカ粒子の表面に充分な数の第1の官能基が結合し、第1の官能基および第2の官能基に由来するRもまた充分な数存在する。したがってこの場合にも、樹脂に対する親和性および原料シリカ粒子の凝集抑制効果が充分に発揮される。
【0043】
何れの場合にも、原料シリカ粒子の単位表面積(nm
2)あたりのRは、1個〜10個であるのが好ましい。この場合には、原料シリカ粒子の表面に存在するX
1の数とRの数とのバランスが良くなり、樹脂に対する親和性および原料シリカ粒子の凝集抑制効果との両方がバランス良く発揮される。
【0044】
原料シリカ粒子においては、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基の全部が第1の官能基または第2の官能基で置換されているのが好ましい。第1の官能基と第2の官能基との和が、原料シリカ粒子の単位表面積(nm
2)あたり2.0個以上であれば、原料シリカ粒子において、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基のほぼ全部が第1の官能基または第2の官能基で置換されているといえる。
【0045】
原料シリカ粒子は、表面にRを持つ。これは、赤外線吸収スペクトルによって確認できる。詳しくは、原料シリカ粒子の赤外線吸収スペクトルを固体拡散反射法で測定すると、2962±2cm
−1にC−H伸縮振動の極大吸収がある。
【0046】
また、上述したように原料シリカ粒子は凝集し難い。
【0047】
なお、原料シリカ粒子は、例え僅かに凝集した場合にも、超音波処理することによって再度分散可能である。詳しくは、原料シリカ粒子をメチルエチルケトンに分散させたものに、発振周波数39kHz、出力500Wの超音波を照射することで、原料シリカ粒子を実質的に一次粒子にまで分散できる。このときの超音波照射時間は10分間以下で良い。原料シリカ粒子が一次粒子にまで分散したか否かは、粒度分布を測定することで確認できる。詳しくは、この原料シリカ粒子のメチルエチルケトン分散材料をマイクロトラック装置等の粒度分布測定装置で測定し、原料シリカ粒子の粒度分布があれば、原料シリカ粒子が一次粒子にまで分散したといえる。
【0048】
原料シリカ粒子は、凝集し難いため、水やアルコール等の液状媒体に分散されていない原料シリカ粒子として提供できる。この場合、液状媒体の持ち込みがないために、樹脂材料用のフィラーとして好ましく用いられる。
【0049】
また、原料シリカ粒子は凝集し難いために、水で容易に洗浄できる。
【0050】
原料シリカ粒子は、水を含む液状媒体中で、シランカップリング剤およびオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理する工程(表面処理工程)にて処理される。シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基(すなわち上記のX
1)とを持つ。
【0051】
シランカップリング剤で表面処理することで、シリカ粒子の表面に存在する水酸基がシランカップリング剤に由来する官能基で置換される。シランカップリング剤に由来する官能基は式(3);−OSiX
1X
4X
5で表される。式(3)で表される官能基を第3の官能基と呼ぶ。第3の官能基におけるX
1は式(1)で表される官能基におけるX
1と同じである。X
4、X
5は、それぞれ、アルキコキシ基である。オルガノシラザンで表面処理することで、第3の官能基のX
4、X
5がオルガノシラザンに由来する−OSiY
1Y
2Y
3(式(2)で表される官能基、第2の官能基)で置換される。シリカ粒子の表面に存在する水酸基の全てが第3の官能基で置換されていない場合には、シリカ粒子の表面に残存する水酸基が第2の官能基で置換される。このため、表面処理された原料シリカ粒子の表面には、式(1):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基(すなわち第1の官能基)と、式(2):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基と(すなわち第2の官能基)が結合する。なお、シランカップリング剤とオルガノシラザンとのモル比は、シランカップリング剤:オルガノシラザン=1:2〜1:10であるため、得られた原料シリカ粒子における第1の官能基と第2の官能基との存在数比は理論上1:12〜1:60となる。
【0052】
表面処理工程においては、シリカ粒子をシランカップリング剤及びオルガノシラザンで同時に表面処理しても良い。または、先ずシリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理し、次いでオルガノシラザンで表面処理しても良い。または、先ずシリカ粒子をオルガノシラザンで表面処理し、次いでシランカップリング剤で表面処理し、さらにその後にオルガノシラザンで表面処理しても良い。何れの場合にも、シリカ粒子の表面に存在する水酸基全てが第2の官能基で置換されないように、オルガノシラザンの量を調整すれば良い。なお、シリカ粒子の表面に存在する水酸基は、全てが第3の官能基で置換されても良いし、一部のみが第3の官能基で置換され、他の部分が第2の官能基で置換されても良い。第3の官能基に含まれるX
4、X
5は、全て第2の官能基で置換されるのが良い。
【0053】
なお、オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤で置き換えても良い。第2のシランカップリング剤としては、3つのアルコキシ基と、1つのアルキル基とを持つものを用いることができる。この場合には、第3の官能基に含まれるX
4、X
5が、第2のシランカップリング剤に由来する第4の官能基で置換される。第4の官能基は式(4);−OSiY
1X
6X
7で表される。Y
1は第2の官能基におけるY
1と同じRであり、X
6、X
7はそれぞれアルコキシ基または水酸基である。第4の官能基に含まれるX
6、X
7は、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、または、別の第4の官能基で置換される。この場合には、原料シリカ粒子の表面に存在するRの量をさらに多くする事ができる。なお、オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤に置き換える場合、第2のシランカップリング剤で表面処理した後に、再度オルガノシラザンで表面処理する必要がある。第4の官能基に含まれるX
6、X
7を、最終的にはオルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換するためである。
【0054】
オルガノシラザンの一部を第2のシランカップリング剤で置き換える場合、上述した第1の官能基に含まれるX
4、X
5は、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、第2のシランカップリング剤に由来する第4の官能基で置換される。X
4、X
5が第4の官能基で置換された場合、第4の官能基に含まれるX
6、X
7は、第2の官能基で置換されるか、別の第4の官能基によって置換される。第4の官能基に含まれるX
6、X
7が別の第4の官能基によって置換された場合、第4の官能基に含まれるX
6、X
7は、第2の官能基で置換される。このため第2のシランカップリング剤は、第1のカップリング剤及びオルガノシラザンのみで表面処理する場合(オルガノシラザンを第2のシランカップリング剤で置き換えなかった場合)に設定されるオルガノシラザンの量(a)molに対して、最大限5a/3mol置き換えることができる。この場合に必要になるオルガノシラザンの量は、8a/3molである。
【0055】
シランカップリング剤および第2のシランカップリング剤のアルコキシ基は特に限定しないが、比較的炭素数の小さなものが好ましく、炭素数1〜12であることが好ましい。アルコキシ基の加水分解性を考慮すると、アルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基の何れかであることがより好ましい。
【0056】
シランカップリング剤として、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0057】
オルガノシラザンとしては、シリカ粒子の表面に存在する水酸基およびシランカップリング剤に由来するアルコキシ基を、上述した第2の官能基で置換できるものであれば良いが、分子量の小さなものを用いるのが好ましい。具体的には、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン等が挙げられる。
【0058】
第2のシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
なお、表面処理工程において、シランカップリング剤の重合や第2のシランカップリング剤の重合を抑制するため、重合禁止剤を加えても良い。重合禁止剤としては、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、p−メトキシフェノール(メトキノン)等の一般的なものを用いることができる。
【0060】
原料シリカ粒子は、表面処理工程後に固形化工程を備えても良い。固形化工程は、表面処理後の原料シリカ粒子を鉱酸で沈殿させ、沈殿物を水で洗浄・乾燥して、原料シリカ粒子の固形物を得る工程である。上述したように、一般的なシリカ粒子は非常に凝集し易いため、一旦固形化したシリカ粒子を再度分散するのは非常に困難である。しかし、原料シリカ粒子は凝集し難いため、固形化しても凝集し難く、また、例え凝集しても再分散し易い。なお、洗浄工程においては、原料シリカ粒子の抽出水(詳しくは、シリカ粒子を121℃で24時間浸漬した水)の電気伝導度が50μS/cm以下となるまで、洗浄を繰り返すのが好ましい。
【0061】
固形化工程で用いる鉱酸としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが例示でき、特に塩酸が望ましい。鉱酸はそのまま用いても良いが、鉱酸水溶液として用いるのが好ましい。鉱酸水溶液における鉱酸の濃度は0.1質量%以上が望ましく、0.5質量%以上が更に望ましい。鉱酸水溶液の量は、洗浄対象である原料シリカ粒子の質量を基準として6〜12倍程度にすることができる。
【0062】
鉱酸水溶液による洗浄は複数回数行うことも可能である。鉱酸水溶液による洗浄は原料シリカ粒子を鉱酸水溶液に浸漬後、撹拌することが望ましい。また、浸漬した状態で1時間から24時間、更には72時間程度放置することができる。放置する際には撹拌を継続することもできるし、撹拌しないこともできる。鉱酸含有液中にて洗浄する際には常温以上に加熱することもできる。
【0063】
その後、洗浄して懸濁させた原料シリカ粒子をろ取した後、水にて洗浄する。使用する水はアルカリ金属などのイオンを含まない(例えば質量基準で1ppm以下)ことが望ましい。例えば、イオン交換水、蒸留水、純水などである。水による洗浄は鉱酸水溶液による洗浄と同じく、原料シリカ粒子を分散、懸濁させた後、ろ過することもできるし、ろ取した原料シリカ粒子に対して水を継続的に通過させることによっても可能である。水による洗浄の終了時期は、上述した抽出水の電気伝導度で判断しても良いし、原料シリカ粒子を洗浄した後の排水中のアルカリ金属濃度が1ppm以下になった時点としても良いし、抽出水のアルカリ金属濃度が5ppm以下になった時点としても良い。なお、水で洗浄する際には常温以上に加熱することもできる。
【0064】
原料シリカ粒子の乾燥は、常法により行うことができる。例えば、加熱や、減圧(真空)下に放置する等である。
【0065】
(フィラー含有樹脂組成物)
本実施形態のフィラー含有樹脂組成物は上述した本実施形態のフィラー組成物と、そのフィラー組成物を分散する樹脂組成物とからなる。この樹脂組成物は射出成形などの成形法により必要な形状をもつ成形体を製造することができる。本実施形態のフィラー含有樹脂組成物は流動性に優れるため、成形がし易い。上述のフィラー組成物の他にもフィラーを含有させることが出来る(上述のフィラー組成物の質量よりも少ない量を添加することが望ましい)。
【0066】
樹脂組成物としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、更にはそれらの前駆体(モノマー、プレポリマーなど)を含むことができる。熱可塑性樹脂としては。ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、6−ナイロン、6,6−ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、更にはこれらの共重合体やポリマーアロイが例示される。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、前述の熱可塑性樹脂と架橋剤との組み合わせが例示される。樹脂組成物としては流動性があるものを採用することにより、それを型などに流し込むことで成形することができる。流動性をもつ樹脂組成物は加熱、光、高エネルギー線照射などにより硬化させることができる。硬化させるために、重合開始剤、架橋剤などを含有させることが出来る。
【0067】
フィラー組成物と樹脂組成物との混合比は特に限定しない。例えばフィラー組成物と樹脂組成物とを併せた全体の質量を基準として、フィラー組成物の存在比の上限が80%、70%、60%、50%にすることが出来る。フィラー組成物の存在比は大きい方が得られるフィラー含有樹脂組成物の物理的特性が向上できる。
【0068】
(フィラー含有樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のフィラー含有樹脂組成物の製造方法はフィラー組成物を先に製造した後、樹脂組成物中に分散させることにより製造する方法である。フィラー組成物を先に製造することによりフィラー組成物がもつ無機繊維の表面に球状シリカ粒子を適正に配設することが可能になる。
【実施例】
【0069】
本発明のフィラー組成物、フィラー含有樹脂組成物、及びそれらの製造方法について実施例に基づき説明を行う。なお、本実施例では粒径について言及するときには特に一次粒子の粒径であるとの記載が無い場合には二次粒子の粒径について記載する。
〔微小粒子材料の製造〕
・原料シリカ粒子の製造
シリカ粒子を水系媒質としての水に分散させた水系スラリーとしてのコロイドシリカスノーテックスOS(シリカ分20%:日産化学製:一次粒子の粒径が10nm)100質量部に対して前処理工程(表面処理工程及び乾燥工程)を行った。
【0070】
(表面処理工程)
(1)準備工程
水系スラリー100質量部にイソプロパノール40質量部を加え、室温(約25℃)で混合することで、シリカ粒子が液状媒体に分散されてなる分散液を得た。
(2)第1工程
この分散液にフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM103)1.82質量部を加え40℃で72時間混合した。この工程により、シリカ粒子の表面に存在する水酸基をシランカップリング剤で表面処理した。なお、このときフェニルトリメトキシシランは必要な量の水酸基(一部)が表面処理されず残存するように計算して加えた。
(3)第2工程
次いで、この混合物にヘキサメチルジシラザン3.71質量部を加え、40℃で72時間放置した。この工程によって、シリカ粒子が表面処理され、シリカ粒子材料が得られた。表面処理の進行に伴い、疎水性になったシリカ粒子が水及びイソプロパノールの中に安定に存在できなくなり、凝集・沈殿した。なお、フェニルトリメトキシシランとメキサメチルジシラザンとのモル比は2:5であった。
【0071】
(固形化工程)
表面処理工程で得られた混合物に35%塩酸水溶液を4.8質量部加え、シリカ粒子材料を沈殿させた。沈殿物をろ紙(アドバンテック社製 5A)で濾過した。濾過残渣(固形分)を純水で洗浄した後に100℃で真空乾燥して、シリカ粒子材料の固形物(原料シリカ粒子)を得た。
【0072】
得られたシリカ粒子はD10が8.8μm、D50が124.5μm、D90が451.9μmであった。
【0073】
(解砕工程)
得られた原料シリカ粒子に対して解砕工程を行い、本試験例のシリカ粒子を得た。解砕工程はジェットミル((株)セイシン企業製、型番STJ−200)を用い、解砕圧0.3MPa、供給量10kg/hの条件で実施した。得られたシリカ粒子は嵩密度が251.7g/L、D10が0.8μm、D50が1.8μm、D90が4.0μm、一次粒子の体積平均粒径が10nmであった。
【0074】
詳しい実験結果は示さないが、上述の解砕工程において解砕圧及び供給量を調節することにより嵩密度を調節した試験試料を調製した結果、嵩密度が271.3g/L、364.6g/L、249.8g/Lの3種類の微小粒子材料が得られた。解砕圧を大きくすることにより嵩密度が大きくなる傾向があった。これらの微小粒子材料についても、以下の評価試験と同様の試験を行うことにより嵩密度251.7g/Lの試験試料と同様の効果を発揮することが明らかになった。
【0075】
〔球状シリカ粒子の調製〕
体積平均粒径0.5μmのシリカ(球状シリカ粒子:アドマテックス製)100質量部に対して、前述の微小粒子材料0.6質量部を混合したものを微小粒子含有球状シリカ粒子とした。
【0076】
〔試験例1〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、E−001、繊維長30μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子としての微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0077】
各試料の混合は自転・公転真空ミキサー(ARV−31−LED、THINKY社製)にて行った(以下の試験例において同じ)。得られた試験試料に対してレオメーター(ARES−G2、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン製)にて粘度測定を行った(以下の試験例において同じ)。粘度測定はシェアレートを変化させながら行った。結果を
図1A及び1Bに示す。なお、グラフの左上の数字は樹脂組成物と無機繊維との質量の和に対する無機繊維の質量の割合を百分率で記載したものである(以下の試験例も同じ)。
【0078】
図1Aでは樹脂組成物と無機繊維とを質量比で5:5で混合し(濃度50%)、
図1Bでは樹脂組成物と無機繊維とを質量比で4:6で混合した(濃度60%)。微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%、5%、15%になるように添加した。
【0079】
図1A及びBから明らかなように、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度が小さくなることが分かった。
図1A(濃度50%)における粘度(シュアレート1/sにおける粘度)は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で20.15Pa・s、5%で14.39Pa・s、15%で14.23Pa・sであった。
図1B(濃度60%)における粘度(シュアレート1/sにおける粘度)は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で94.07Pa・s、5%で41.71Pa・s、15%で39.80Pa・sであった。添加量として5%と15%とで粘度に大差無いことから、5%でも充分に流動性向上効果を発揮できるものと推測できた。
【0080】
〔試験例2〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、E−001、繊維長70μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子としての微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0081】
粘度測定を行い、結果を
図2A及び2Bに示す。
【0082】
図2Aでは樹脂組成物と無機繊維とを質量比で5:5で混合し(濃度50%)、
図2Bでは樹脂組成物と無機繊維とを質量比で4:6で混合した(濃度60%)。微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%、5%、15%になるように添加した。
【0083】
図2A及びBから明らかなように、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度が小さくなることが分かった。微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加していない場合には粘度が2倍から3倍程度大きくなり流動性が充分では無い場合もあるが、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより試験例1と大差無い程度にまで粘度を低下させることができた。
図2A(濃度50%)における粘度(シュアレート1/sにおける粘度)は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で38.09Pa・s、5%で16.30Pa・s、15%で16.58Pa・sであった。
図2B(濃度60%)における粘度(シュアレート1/sにおける粘度)は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で123.55Pa・s、5%で56.95Pa・s、15%で52.01Pa・sであった。添加量として5%と15%とで粘度に大差無いことから、5%でも充分に流動性向上効果を発揮できるものと推測できた。
【0084】
〔試験例3〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのカットファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、SS 10C−404、繊維長
300μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子としての微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0085】
粘度測定を行い、結果を
図3に示す。
【0086】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で7:3で混合し(濃度30%)、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%、10%になるように添加した。
【0087】
図3から明らかなように、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度が小さくなることが分かった。特に微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加していない場合にはシュアレートが小さいときの粘度が著しく大きかったところ、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、広いシュアレートの値の範囲において、粘度を大幅に低下させることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で277.07Pa・s、10%で109.26Pa・sであった。
【0088】
〔試験例4〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(東邦テナックス製、カーボンファイバー、HTM 100 40MU、繊維長40μm、繊維径7μm)と、球状シリカ粒子としての微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0089】
粘度測定を行い、結果を
図4に示す。
【0090】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で7:3で混合し(濃度30%)、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%、5%、15%になるように添加した。
【0091】
図4から明らかなように、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度が小さくなることが分かった。特に微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加していない場合には粘度が著しく大きかったところ、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度を大幅に低下させることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で278.09Pa・s、5%で91.53Pa・s、15%で29.07Pa・sであった。添加量として5%と15%とで粘度が大きく低下していることから、5%を超えた範囲(少なくとも15%程度まで)でも粘度低減効果は増加することが推測できた。
【0092】
〔試験例5〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(東邦テナックス製、カーボンファイバー、HTM 100 160MU、繊維長160μm、繊維径7μm)と、球状シリカ粒子としての微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0093】
粘度測定を行い、結果を
図5に示す。
【0094】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で88:12で混合し(濃度12%)、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%、5%、15%になるように添加した。
【0095】
図5から明らかなように、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度が小さくなることが分かった。特に微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加していない場合、シュアレートが小さい範囲では粘度が著しく大きかったところ、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度を大幅に低下させることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で291.65Pa・s、5%で137.93Pa・s、15%で149.39Pa・sであった。添加量として5%と15%とで粘度に大差無いことから、5%でも充分に流動性向上効果を発揮できるものと推測できた。
【0096】
〔試験例6〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、70E−001、繊維長70μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子としての微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0097】
粘度測定を行い、結果を
図6に示す。
【0098】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で4:6で混合し(濃度60%)、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%、5%になるように添加した。
【0099】
図6から明らかなように、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度が小さくなることが分かった。特に微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加していない場合、粘度が著しく大きかったところ、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を添加することにより、粘度を大幅に低下させることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として0%で287.44Pa・s、5%で60.74Pa・sであった。
【0100】
〔試験例7〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、E−001、繊維長30μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子としての単独の微小粒子材料とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0101】
粘度測定を行い、結果を
図7に示す。
【0102】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で5:5で混合し(濃度50%)、微小粒子材料を単独で無機繊維の質量を基準として0%、0.2%になるように添加した。
【0103】
図7から明らかなように、微小粒子材料のみを添加することによっても、粘度が小さくなることが分かった。微小粒子材料を添加していない場合、シェアレートの変化により粘度の変動が大きかったところ、微小粒子材料を添加することにより、粘度を大幅に低下且つ変動を少なくすることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料を無機繊維の質量を基準として0%で20.15Pa・s、0.2%で14.87Pa・sであった。
【0104】
〔試験例8〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、70E−001、繊維長70μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子としての単独の微小粒子材料とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0105】
粘度測定を行い、結果を
図8に示す。
【0106】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で5:5で混合し(濃度50%)、微小粒子材料を単独で無機繊維の質量を基準として0%、0.2%になるように添加した。
【0107】
図8から明らかなように、無機繊維の繊維長が長くても微小粒子材料のみを添加することによって粘度が小さくなることが分かった。微小粒子材料を添加していない場合、シェアレートの変化により粘度の変動が大きかったところ、微小粒子材料を添加することにより、粘度を大幅に低下且つ変動を少なくすることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料を無機繊維の質量を基準として0%で38.09Pa・s、0.2%で23.85Pa・sであった。
【0108】
〔試験例9〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(東邦テナックス製、カーボンファイバー、HTM 100 40MU、繊維長40μm、繊維径7μm)と、球状シリカ粒子としての単独の微小粒子材料とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。
【0109】
粘度測定を行い、結果を
図9に示す。
【0110】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で55:45で混合し(濃度45%)、微小粒子材料を単独で無機繊維の質量を基準として0%、0.3%、0.5%、0.7%になるように添加した。
【0111】
図9から明らかなように、無機繊維がカーボンファイバーであっても微小粒子材料のみを添加することによって粘度が小さくなることが分かった。微小粒子材料を添加していない場合、シェアレートの変化により粘度の変動が大きかったところ、微小粒子材料を添加することにより、粘度を大幅に低下且つ変動を少なくすることができた。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料を無機繊維の質量を基準として0%で192.17Pa・s、0.3%で65.20Pa・s、0.5%で46.67Pa・s、0.7%で43.01Pa・sであった。添加量として少なくとも0.5%までは微小粒子材料の添加に従い粘度の低下が進むことが分かった。更に、0.5%から0.7%になると粘度の低下の進行が遅くなることから、0.5%の添加でも充分に流動性向上効果を発揮できるものと推測できた。
【0112】
〔試験例10〕
樹脂組成物としての液状エポキシ樹脂ZX1059(東都化成製)と、無機繊維としてのミルドファイバー(日東紡製、ガラスファイバー、70E−001、繊維長70μm、繊維径11μm)と、球状シリカ粒子とを所定の混合比にて混合して本試験例のフィラー含有樹脂組成物とした。球状シリカ粒子としては微小粒子材料を含まないもの(以下、単に「球状シリカ粒子単独」と称する)と、微小粒子材料含有球状シリカ粒子とを用いた。また、球状シリカ粒子に代えて、破砕シリカ粒子(アドマテックス製、体積平均粒径0.9μm)を用いた試料を調製した。
【0113】
粘度測定を行い、結果を
図10に示す。なお、破砕シリカ粒子を添加した試料については粘度が非常に大きく測定が不能であった。
【0114】
樹脂組成物と無機繊維とを質量比で4:6で混合し(濃度60%)、球状シリカ粒子を含まないもの(0%)、球状シリカ粒子単独を無機繊維の質量を基準として5%添加したもの、微小粒子材料含有球状シリカ粒子を無機繊維の質量を基準として5%になるように添加したものをそれぞれ用意した。
【0115】
図10から明らかなように、微小粒子材料の存在の有無にかかわらず球状シリカ粒子を添加することにより粘度の低減効果が認められた。また、微小粒子材料の存在の有無の比較から、微小粒子材料の存在が粘度の低減効果の向上に有効であることが明らかになった。シュアレート1/sにおける粘度は、微小粒子材料を無機繊維の質量を基準として0%で287.44Pa・s、球状シリカ粒子単独5%で74.99Pa・s、微小粒子材料含有球状シリカ粒子5%で56.95Pa・sであった。
【0116】
〔考察〕
以上の結果から、無機繊維としてはガラスファイバー、カーボンファイバーなど材料の種類にかかわらず粘度低減効果を発現できることが分かった。また、微小粒子材料を添加することにより更なる粘度の低減が発揮できることが明らかになった。