【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によると、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器は:
−中空針、及びシリンジをシールし、及び薬剤を投与するために、ストッパを備えたシリンジを含むように配置された細長い本体、本体は、遠位端、及び注射サイトに対して適用することを意図したオリフィスを備えた近位端を有し、ここでシリンジは、本体に対して摺動可能に配置され;
−起動時に;
−本体の内側のカバーのある位置から、近位端を通過してオリフィスを通して前進位置内へ針を押すこと;及び
−薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作すること;及び
−薬剤を送達した後、針を備えたシリンジをカバーのある位置内へ後退させること;が可能なばね手段;及び
−手動操作の前に、加圧状態においてばね手段をロックするように配置され、そして、手動操作時に、注射のためにばね手段を解放することが可能な起動手段;
を含む。
【0017】
本発明によると、ばね手段は、針を前進させるため、及び薬剤の用量を注射するため、
本体内で遠位端に基礎を置くように配置された圧縮ばねの形状の単一駆動ばねである。駆動ばねの力は、針及び/又はシリンジを、プランジャを経由して前進させる。駆動ばねは、薬剤の注射が少なくともほとんど完了するとき、シリンジを後退させるために、その近位端に切り替えた
本体にその基礎を置くように配置される。
【0018】
単一の駆動ばねは、針を挿入し、シリンジを完全に空にし、そして注射後、シリンジ及び針を安全な位置まで後退させるために使用される。その結果、シリンジを前進させ、用量を注射することに比較して、反対方向の運動であるシリンジ及び針を引き抜くための第二のばねは要求されない。駆動ばねの遠位端が基礎を置く間、近位端は、針の挿入のためシリンジを前進させ、そしてストッパを押すことにより注射を実行する。注射が少なくともほとんど完了するとき、駆動ばねがその近位端で底を打ち、近位端において
本体に基礎を置くことになる。同時に、駆動ばねの遠位端は、
本体内にその基礎を置くことから解除される。駆動ばねは、今、反対方向にシリンジを引く。
【0019】
本発明によると、起動手段は、自動注射器の遠位端上で配置されたラップオーバスリーブボタン(wrap-over sleeve button)形状のトリガボタンを含んでもよい。トリガボタンは、少なくともほとんど、自動注射器の全長に亘って伸びる。トリガボタンは、近位方向における並進運動時に、駆動ばねを解除するように配置される。注射を始動させるために、自動注射器は、注射サイトを、例えば、患者のスキンを押す必要がある。使用者、例えば、患者又は介護者は、手全体でラップオーバスリーブボタンを握り、そして注射サイトを押す。結果として、トリガボタンは、近位方向で並進運動し、そして注射サイクルを開始するために駆動ばねを解除する。本発明に基づく自動注射器は、器用さに問題を抱えている人々には特に十分ふさわしいが、それは、従来技術の自動注射器に反して、始動は、指一本で小さいボタンを操作することを要求されないからである。代わりに、手全体が使用される。
【0020】
本発明に記載の自動注射器は、大半の従来の自動注射器と比較して、特に、部材数が少ない。丁度一つの駆動ばねの使用は、金属の必要量を低下させ、その結果、重量と製造コストを低下させる。
【0021】
自動注射器の一つの実施態様において、少なくとも一つのクリップは、本体に配置される。クリップは、送達構成において駆動ばねをロックするように配置される。更に、クリップは外側に曲げることにより、駆動ばねの荷重下でロックを解除するように配置される。トリガボタンのスリーブは、送達構成において、即ち、トリガボタンが押されないとき、クリップを外側に曲げることを防ぐために配置された小直径を有するロッキングセクションを含む。トリガボタン及びロッキングセクションが、クリップ上を押されることにより近位方向に並進運動するとき、クリップはロッキングセクションを離れるようになり、そして、今、駆動ばねの荷重下で外側に曲げてもよく、その結果、駆動ばねを注射のために解除する。駆動ばねの荷重の下でのクリップ及び/又は構成部材は、クリップを外側に曲げるためのランプを有してもよい。
【0022】
好ましい実施態様において、インタロックスリーブは、本体の近位端にはめ込まれ、インタロックスリーブは、近位位置と遠位位置の間で縦方向に並進運動可能であり、そして近位位置において本体から突出するような方法で近位方向に付勢され、ここで、その近位位置において、インタロックスリーブは、本体に対してその後退位置から近位方向にシリンジの並進運動を防ぐように配置され、そしてここで、その遠位位置におけるインタロックスリーブは、近位方向におけるシリンジの並進運動を可能とするように配置される。
【0023】
自動注射器の送達状態において、インタロックスリーブは、本体の近位端から突出する近位位置にある。シリンジ及び針は、後退位置にある。注射を始動するために、自動注射器は、インタロックスリーブを遠位方向に本体内へ並進運動する方法で、その近位端で、即ち、注射サイトをインタロックスリーブで押さなければならない。その結果、シリンジは、本体からロックを解除され、そして、今、患者の皮膚を穿き刺すためにその前進位置内に針を動かすために並進運動し得る。シリンジ及び針が、実際に、近位方向に並進運動する前に、起動手段、即ち、ラップオーバスリーブトリガボタンは、駆動ばねを解除するために操作する必要がある。遠位方向でインタロックスリーブを並進運動すること、及び近位方向においてトリガボタンを並進運動することの両方は、使用者に、トリガボタンをつかみ、そして注射サイトに対して自動注射器を押すことを求められる。インタロックスリーブがトリガボタンの前に並進運動することを確実にするために、インタロックスリーブは、トリガボタンより弱いそれを付勢するためのばね手段を有してもよい。これら二つの並進運動は、使用者に、工程間の力の増大を伴った二段階の並進運動のように思わせる。
【0024】
別の好ましい実施態様において、少なくとも一つの第二の弾力クリップは、本体に配置される。第二のクリップは、第二のクリップが緩和するとき、トリガボタンが近位方向において並進運動することをブロックするために付勢される。その遠位位置において、インタロックスリーブは、それをトリガボタンから連結を解除するために、そのバイアスに対してクリップを押すように配置され、その結果、近位方向において、トリガボタンの並進運動を可能にする。この実施態様は、二つの異なった強いばね手段より、高い信頼性を持って順序付けされた操作を確実にする。インタロックスリーブは、トリガボタンがロックを解除する前に、常に、その遠位位置内に並進運動をする必要がある。
【0025】
シリンジの内容物が完全に患者に送達されたとき、即ち、ストッパがシリンジの底を打ったとき、針の後退を始動することは望ましいことである。ストッパが正確にその走行の終了点に到達したとき、自動的に後退を始動することは、シリンジ及びストッパを製造するときの許容誤差のために問題である。これらの許容誤差に起因して、その走行の終了時点での後退手段に対するストッパの位置は繰り返し可能ではない。結果として、ある場合には、ストッパは、時期を早めて底を打ち、それでは後退は全く始動しないであろう。その他の場合においても、後退は、ストッパが底を打つ前に始動し、それでは残留薬剤はシリンジ内に残るであろう。
【0026】
後退は、自動的にある時間後に始動し、又はストッパがシリンジの底を打つ前に、走行することができるであろう。しかし、この信頼性のある後退は、シリンジ内での残留薬剤に対してトレードオフの関係にある。
【0027】
その結果、好ましい実施態様において、インタロックスリーブは、遠位位置にあるとき、更に、駆動ばねが遠位基礎(distal ground)の解除を防ぐように配置される。これは、自動注射器が注射サイトに対して押され続けている限り、駆動ばねが遠位に基礎を置いて残留することを意味し、それで針の後退は、自動注射器が注射サイトから除去されるときのみ開始することができ、そしてインタロックスリーブは、結果として、その近位位置へ戻り、その結果、遠位的に基礎を置くことから解除される。薬剤の完全な送達及び信頼性のある後退は、その結果、注射サイトから自動注射器を取り除く使用者の動作を待つことにより達成される。
【0028】
後退スリーブは、本体内で軸方向に可動に配置されてもよく、ここで、駆動ばねは、遠位端面を支えるその遠位端、及び連結解除部材のスラスト面を支えるその近位端を備えた後退スリーブの内側に配置される。少なくとも一つの弾力ウェッジが、後退スリーブの近位端に配置され、ここで、本体は、後退スリーブがその近位位置にあるとき、弾力ウェッジを収容するためにそれぞれの凹部を有する。その遠位位置にあるインタロックスリーブは、それを遠位方向で並進運動することを防ぐために、内側から弾力ウェッジを支持するように配置され得る。それ故、インタロックスリーブが注射サイトに押されたとき、後退スリーブは、後退を避けられる。自動注射器を注射サイトから取り除き、そしてその後のインタロックスリーブのその近位端位置への並進運動の後のみ、後退スリーブは、遠位方向に並進運動してもよく、そして本体内へ針を後退させてもよい。
【0029】
管状のシリンジキャリアは、その近位端でシリンジを保持し、及びそれを支持するように配置され得る。シリンジを近位端で支持することは、フィンガフランジにおける支持を優先するが、それはフィンガフランジが荷重の下で壊れやすいからであり、一方、シリンジの近位端又は前端は強固である。シリンジ及びシリンジキャリアは、ジョイント軸方向並進運動のために配置される。シリンジキャリアは、インタロックスリーブ内にはめ込まれ、ここで、少なくとも一つの第二の弾力ラッチは、近位端近くの本体に配置される。送達状態において、第二の弾力ラッチは、シリンジキャリアを近位方向に並進運動することを防ぐ方法で内側に伸びる。第二の弾力ラッチは、遠位方向でインタロックスリーブの並進運動時に、シリンジキャリアからの係合を解除するように配置される。
【0030】
好ましい実施態様において、少なくとも一つのラッチは、最大近位位置における後退スリーブを軸方向に固定するために提供される。連結解除部材は、ほとんど最大近位位置内に、近位方向で動くとき、ラッチの連結を解除するように配置される。連結が解除されるとき、後退スリーブは、その遠位端において最早その基礎を置かないばね力を用いて遠位方向に動き、そして針を後退させることが可能となる。その結果、後退は、ラッチが解除される場合、及び自動注射器が注射サイトから除去される場合のみ発生することができる。
【0031】
好ましくは、プランジャは、シリンジ及び/又はストッパを近位方向に押すために配置される。少なくとも一つ、好ましくは、二つ又はそれより多くの弾力連結解除アームは、連結解除部材に配置される。連結解除アームは、近位方向でプランジャの第一のショルダに支えられる内部傾斜面を示す。弾力連結解除アームは、連結解除アームを外側に曲げ、そして、第一のショルダをスリップして通過することを防ぐために、後退スリーブの内壁により支持可能である。この状態において、プランジャは、針を挿入し、そして用量を注射するために、第一のショルダを押す連結解除部材により近位方向に押されるかもしれない。少なくとも一つの開口部は、連結解除アームを第一のショルダにより外側に曲げることを可能とし、その結果、第一のショルダを近位方向で連結解除アームをスリップして通過することを可能にする後退スリーブに配置される。これは、注射が少なくともほとんど終了するとき起こり得る。連結解除プランジャは、シリンジ及び針を後退させることを可能にするが、それは、最早、連結解除部材を支えないからである。
【0032】
シリンジは、後退スリーブに摺動可能に配置されるシリンジホルダとのジョイント軸方向運動のために配置され得る。シリンジホルダは、遠位的に配置された少なくとも一つ、好ましくは、二つ又はそれより多くの弾力シリンジホルダアームを備え、シリンジホルダアームは、第一のショルダから近位的にプランジャに配置された第二のショルダに支えられるために、それぞれ傾斜面を有する。シリンジホルダアームは、それらを外側に曲げることを防ぐために、本体の内面により支持可能である。それ故、トリガボタンが押されるとき、プランジャにより前進させるばね力は、ストッパに対しては、更に押さないが、それを前進させるシリンジに対しては押す。結果として、いわゆる濡れ注射が阻止され、即ち、液体薬剤は、針が挿入する前に中空針から漏れることはない。拡幅部分は、シリンジホルダがほとんど最大近位位置に到達したとき、シリンジホルダアームを外側に曲げることを可能にするために、その結果、第二のショルダがシリンジホルダアームをスリップして通過することを可能にするために、そしてシリンジからストッパへ駆動ばねの荷重を切り替えることを可能にするために、本体内に提供される。これは、薬剤の注射を開始する瞬間を定義することを可能にする。
【0033】
通常、中空針は、針を無菌状態に維持し、そしてそれを機械的損傷から防ぐために、保護ニードルシールドを装備している。保護ニードルシールドは、自動注射器又はシリンジが組立てられるとき、針に取り付けられる。
【0034】
好ましくは、キャップは、本体の近位端に提供される。シートメタルクリップは、ジョイント軸方向運動及び独立の回転運動のために、キャップに取り付けられる。シートメタルクリップは、キャップがインタロックスリーブに取り付けられるとき、オリフィスを通してインタロックスリーブ内に伸びるように配置される。シートメタルクリップは、保護ニードルシールドの円周状のノッチ内に、又はショルダの後ろにはめ込まれた少なくとも二つのかかり(barb)を組み込む。これは、組立中、シートメタルクリップと保護ニードルシールドとの係合を自動的に行うことを可能にする。キャップが、注射の準備中に、インタロックスリーブから除去されるとき、保護ニードルシールドは、使用者に自分自身を傷つける高すぎるリスクにさらすことなく確実に除去される。
【0035】
キャップは、ねじ連結により本体に取り付け可能であり得る。これは、小さい力での保護ニードルシールドの除去を可能にする。
【0036】
後退スリーブの開口部は、用量の終了時点の
連結解除アームの位置まで、送達状態における連結解除アームの位置へ少なくともほとんど伸び得る。開口部は、後退スリーブがその近位位置にあるとき、連結解除アームに対して、角度的にずれるように配置され、それでプランジャは、連結解除部材から連結を解除されない。開口部及び後退スリーブは、ま
た、遠位方向における近位位置からの後退スリーブの並進運動時に、開口部を連結解除アームと心合わせするために回転するように配置され、それでプランジャ及び連結解除部材は、互いに連結を解除し、その結果、プランジャ、シリンジのストッパ及び針の後退を可能にする。この実施態様は注射サイクルのいかなる点においても後退を開始することを可能とする。
【0037】
心合わせ位置への回転は、本体に配置されたカムトラック及び後退スリーブにおけるカム従動子により実施でき得る。カムトラックは、本質的に、その近位端においてわずかに角度的に曲がった部分を有する自動注射器の縦軸に平行であり得る。
【0038】
代わりに、カムトラック
が後退スリーブ
に、そしてカム従動子
が本体内に配置されてもよい。
【0039】
自動注射器は、少なくとも一つのシリンジを検査するための視界窓を有してもよい。
【0040】
自動注射器は、好ましくは、皮下注射又は筋肉内注射のため、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体及び複合炭水化物の一つを送達するために使用し得る。
【0041】
シートメタルばねを備えたキャップは、また、他の自動注射器及び注射デバイスに適用してもよい。
【0042】
本発明の適用可能性の更なる範囲は、以下に与えられた詳細な記載から明白になるであろう。しかし、本発明の好ましい実施態様を示す詳細な記載及び具体的な例は、例証としてのみ与えられるのは当然であるが、何故ならば、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び改変は、この詳細な記載から当業者には明白になるからである。
【0043】
本発明は、本明細書の以下に与えられた詳細な記述、例証としてのみ与えられる添付図面から完全に理解され、それ故、それは本発明を制限するものではない: