特許第6165055号(P6165055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165055
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20170710BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   A61M5/20
   A61M5/315
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-517198(P2013-517198)
(86)(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公表番号】特表2013-529523(P2013-529523A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】EP2011060507
(87)【国際公開番号】WO2012000875
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月13日
【審判番号】不服2016-10734(P2016-10734/J1)
【審判請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】10187528.4
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10167500.7
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10167495.0
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック・ホワマンド
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ドナルド・バロー−ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エクマン
【合議体】
【審判長】 山口 直
【審判官】 関谷 一夫
【審判官】 平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−500530(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/007305(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0105430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−中空針(4)、及びシリンジ(3)をシールし、そして薬剤(M)を投与するためのストッパ(6)を備えたシリンジ(3)を含むように配置された細長い本体(2)が、遠位端(D)、及び注射サイトに対して適用する意図を持ったオリフィスを備えた近位端(P)を有し、ここで、シリンジ(3)が、本体(2)に対して摺動可能に配置される、該本体(2);
−起動時に:
−本体(2)の内側のカバーのある位置から、オリフィスを通して、そして近位端(P)を通過して前進位置へ針(4)を押すこと;
−薬剤(M)の用量を供給するために、シリンジ(3)を操作すること;及び
−薬剤(M)を送達した後、針(4)を備えたシリンジ(3)をカバーのある位置へ後退させること;
が可能なばね手段(8);
−手動操作に先立って、加圧状態においてばね手段(8)をロックするように配置され、手動操作時に、注射のためのばね手段(8)を解放することが可能である起動手段(20);
を含んでなり、
ここで、ばね手段(8)は、針(4)を前進させ、そしてプランジャ(9)を経由して薬剤(M)の用量を注射するための本体(2)内の遠位端(8.1)に基礎を置くように配置された圧縮ばね形状の単一駆動ばね(8)であり、そしてここで、駆動ばね(8)は、駆動ばねの遠位端(8.1)が本体(2)内にその基礎を置くことから解除されると同時に、シリンジ(3)を後退させるために本体(2)におけるその基礎をその近位端(8.2)に切り替えられるように配置される液体薬剤(M)の用量を投与するための自動注射器(1)であって:
起動手段(20)が、自動注射器(1)の遠位端(D)に亘って配置されたラップオーバスリーブボタン形状のトリガボタン(20)として配置され、トリガボタン(20)は、自動注射器(1)の少なくともほとんど全長に亘って伸び、ここで、トリガボタン(20)は、近位方向(P)への並進運動時に、駆動ばね(8)を解放するように配置される
ことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項2】
少なくとも一つのクリップ(2.1)が本体(2)内に配置され、ここで、トリガボタン(20)のスリーブは、送達構成において、クリップ(2.1)が外側に曲がることを防止するように配置された小径のロッキングセクション(20.1)を有し、ここで、クリップ(2.1)は、送達構成において駆動ばね(8)をロックするように配置され、ここで、クリップ(2.1)は、トリガボタン(20)及びロッキングセクション(20.1)が近位方向(P)に平行移動するとき、外側に曲がることにより、駆動ばね(8)の荷重下でロック解除されるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の自動注射器(1)。
【請求項3】
インタロックスリーブ(25)が、本体(2)の近位端(P)ではめ込まれ、インタロックスリーブ(25)は、近位位置と遠位位置の間で縦方向に並進運動が可能であり、そして本体(2)から近位方向に突出するように、近位方向(P)に付勢され、ここで、その近位位置において、インタロックスリーブ(25)は、シリンジ(3)のその後退位置から近位方向(P)への並進運動を防止するように配置され、そしてここで、その遠位位置におけるインタロックスリーブ(25)は、近位方向(P)へのシリンジ(3)の並進運動を可能とするように配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動注射器(1)。
【請求項4】
少なくとも一つの第二の弾力クリップ(2.2)が、本体(2)上に配置され、第二のクリップ(2.2)は、クリップ(2.2)が緩和されたとき、トリガボタン(20)が近位方向(P)に平行移動するのをブロックするように付勢され、ここで、遠位位置におけるインタロックスリーブ(25)は、クリップ(2.2)をトリガボタン(20)から連結解除するように、その付勢部に抗してクリップ(2.2)を押すように配置され、その結果、近位方向(P)へのトリガボタン(20)の並進運動を可能にすることを特徴とする、請求項3に記載の自動注射器(1)。
【請求項5】
遠位位置におけるインタロックスリーブ(25)が、駆動ばね(8)の遠位基礎の解除を防止するように配置されることを特徴とする、請求項3又は4に記載の自動注射器(1)。
【請求項6】
後退スリーブ(10)が、本体(2)内に軸方向に可動に配置され、ここで、駆動ばね(8)は、後退スリーブ(10)の遠位端面(13)に支えられるその遠位端、及び連結解除部材(14)のスラスト面(17)に支えられるその近位端を備えて後退スリーブ(10)の内側に配置され、駆動ばね(8)の近位端は、プランジャ(9)の周りに配置された連結解除部材(14)を支えており、連結解除部材(14)は、ほとんど最大近位位置内に、近位方向で動くとき、ハウジング(2)内に設けられたラッチ(12)の連結を解除するように配置され、ここで、少なくとも一つの弾力クリップ(10.1)は、後退スリーブ(10)の近位端に配置され、ここで、本体(2)は、後退スリーブ(10)がその近位位置にあるとき、弾力クリップ(10.1)を収容するためのそれぞれの凹部(2.2)を有し、ここで、その遠位位置におけるインタロックスリーブ(25)は、後退スリーブ(10)が遠位方向(D)に並進運動するのを防止するために、内側から弾力クリップ(10.1)を支持するように配置されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項7】
管状シリンジキャリア(7)が、その近位端でシリンジ(3)を保持し、そしてそれを支持するように配置され、シリンジ(3)及びシリンジキャリア(7)は、ジョイント軸方向並進運動のために配置され、ここで、シリンジキャリア(7)は、インタロックスリーブ(25)にはめ込まれ、ここで少なくとも一つの第二の弾力ラッチ(27)は、近位
端(P)の近くの本体(2)内に配置され、ここで、送達状態において、第二の弾力ラッチ(27)は、シリンジキャリア(7)が近位方向(P)に並進運動するのを防止するように内側に伸び、ここで、第二の弾力ラッチ(27)は、遠位方向(D)へのインタロックスリーブ(25)の並進運動時に、シリンジキャリア(7)から係合を解除するように配置されることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項8】
少なくとも一つのラッチ(12)が、最大近位位置において後退スリーブ(10)を軸方向に固定するために本体(2)内に設けられ、ここで、連結解除部材(14)は、近位方向(P)に最大近位位置近くに移動したとき、ラッチ(12)を連結から解除するように配置され、その結果、後退スリーブ(10)を遠位方向(D)に動かし、そして針(4)を後退させることを可能とすることを特徴とする、請求項6又は請求項6を引用する請求項7に記載の自動注射器(1)。
【請求項9】
少なくとも二つの弾力連結解除アーム(18)は、連結解除部材(14)に配置され、連結解除アーム(18)は、プランジャ(9)の第一のショルダ(19)に近位方向(P)に支えられる内部傾斜面を有し、ここで、弾力連結解除アーム(18)は、連結解除アーム(18)が外側に曲げられ、そして第一のショルダ(19)をスリップして通過するのを防止するために、後退スリーブ(10)の内壁により支持可能であり、そしてここで、少なくとも一つの開口部(34)は、連結解除アーム(18)が第一のショルダ(19)により外側に曲げられることを可能とし、その結果、第一のショルダ(19)が近位方向(P)に連結解除アーム(18)をスリップして通過することを可能にする後退スリーブ(10)内に配置され、ここで、プランジャ(9)は、近位方向(P)にシリンジ(3)及びストッパ(6)を押すように配置されることを特徴とする、請求項6又は請求項6を直接又は間接的に引用する請求項7又は8のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項10】
シリンジ(3)が、後退スリーブ(10)内に摺動可能に配置されるシリンジホルダ(22)とのジョイント軸方向運動のために配置され、ここで、シリンジホルダ(22)は、遠位配置された少なくとも二つの弾力シリンジホルダアーム(23)を備え、シリンジホルダアーム(23)は、第一のショルダ(19)から近位にプランジャ(9)に配置される第二のショルダ(24)に支えられるようにそれぞれ傾斜面を有し、ここで、シリンジホルダアーム(23)は、それらが外側に曲げられることを防止するために、本体(2)の内面により支持可能であり、そしてここで、拡幅部分(2.3)は、シリンジホルダ(22)がほとんど最大近位位置に到達したとき、シリンジホルダアーム(23)が外側に曲がることを可能とし、その結果、第二のショルダ(24)が、シリンジホルダアーム(23)をスリップして通過し、駆動ばね(8)の荷重をシリンジ(3)からストッパ(6)に切り替えることが可能にするために、本体(2)に提供されることを特徴とする、請求項6又は請求項6を直接又は間接的に引用する請求項7〜9のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求範囲の請求項1の前置部に記載の液体薬剤の用量を投与するための自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射での投与は、使用者及び医療専門家に対する多くの精神的及び肉体的リスク及び課題を提起する工程である。
【0003】
注射デバイス(即ち、薬物容器から薬剤を投与することが可能なデバイス)は、一般的に二つのカテゴリ−手動デバイス及び自動注射器−に分けられる。
【0004】
手動デバイスにおいて、使用者は、針を通して流体を駆動させるために機械的エネルギを提供しなければならない。これは、一般的に、注射中、使用者が継続的に押す必要のある、ある種の形体のボタン/プランジャにより行われる。この方法には使用者にとっては多くの不利益がある。使用者がボタン/プランジャを押すことを止めた場合、その後、また、注射は停止するであろう。これは、使用者がデバイスを適切に使用しない場合(即ち、プランジャがその末端位置まで完全に押されない場合)、過少用量を送達するかもしれないことを意味する。注射力は、使用者にとって、特に患者が年長者であり、又は器用さに問題を抱えている場合、大き過ぎるかもしれない。
【0005】
ボタン/プランジャの伸びは、大きすぎるかもしれない。その結果、完全に伸びたボタンに到達することは、使用者にとって不都合であるかもしれない。注射力とボタンの伸びの組み合わせは、挿入された針が動くとき、次々に不愉快さを増大させる手の震え/振動を発生させることがあり得る。
【0006】
自動注射器デバイスは、患者にとって注射治療の自己投与を容易にすることを目的とする。自己投与注射を用いて送達される現行の治療は、糖尿病用(インスリン及び新しいGLP−1クラスの薬剤の両方)、片頭痛、ホルモン療法、抗凝血剤などの薬剤を含む。
【0007】
自動注射器は、標準的なシリンジから非経口の薬物送達に関連する活動を完全に、又は部分的に代替するデバイスである。これらの活動は、保護用のシリンジキャップの取り外し、患者の皮膚内への針の挿入、薬剤の注射、針の除去、針の遮蔽及びデバイスの再使用の阻止を含み得る。これは、手動デバイスの多くの不利益に打勝つものである。注射力/ボタンの伸び、手の震え、及び不完全な用量を送達する可能性は低下する。始動する(triggering)ことは、多くの手段で、例えば、トリガボタン又はその注射深さに到達する針の作用により達成され得る。ある種のデバイスにおいて、流体を送達するためのエネルギは、ばねで提供される。
【0008】
特許文献1は、張力ばねが解除されるとき、流体薬剤の所定量を自動的に注射する自動注射デバイスを開示する。張力ばねが、アンプル及び注射針を、それが解除されたとき、保存位置から配置位置へ動かす。アンプルの内容物は、その後、アンプルの内側にピストンを前進させる張力ばねにより放出される。流動薬剤が注射された後、張力ばねに保存されていたねじれは解放され、そして注射針は自動的にその元の保存位置まで後退する。
【0009】
後に刊行された特許文献2は、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器であって:
−シリンジをシールし、及び薬剤を投与するために、中空針及びストッパを備えたシリンジを含むように配置された細長いハウジング、ハウジングは、遠位端、及び注射サイトに対して適用することを意図したオリフィスを備えた近位端を有し、ここでシリンジは、ハウジングに対して摺動可能に配置され;
−起動時に;
−ハウジングの内側のカバーのある位置から、近位端を過ぎオリフィスを通して前進位置へ針を押すこと;及び
−薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作すること;及び
−薬剤を送達した後、針を備えたシリンジをカバーのある位置内へ後退させること;が可能なばね手段;及び
−手動操作の前に、加圧状態においてばね手段をロックするように配置され、そして、手動操作時に、注射のためにばね手段を解除することが可能な起動手段;
を含む自動注射器を開示している。
【0010】
ばね手段は、針を前進させるため、及び薬剤の用量を注射するため、ハウジング内で遠位端に基礎を置くように配置された単一の圧縮ばねであり、ここで圧縮ばねは、シリンジを後退させるために、その近位端に切り替えたハウジングにその基礎を置くように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US第2002/0095120号A1
【特許文献2】欧州特許出願第092908482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡略化した取扱いの自動注射器を提供することである。
【0013】
目的は特許請求範囲の請求項1に基づく自動注射器により達成される。
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、従属項で与えられる。
【0015】
本明細書の文脈において、用語「近位」は、注射中、患者に向かって指示する方向を参照し、一方、用語「遠位」は、患者から離れて示す反対方向を参照する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によると、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器は:
−中空針、及びシリンジをシールし、及び薬剤を投与するために、ストッパを備えたシリンジを含むように配置された細長い本体、本体は、遠位端、及び注射サイトに対して適用することを意図したオリフィスを備えた近位端を有し、ここでシリンジは、本体に対して摺動可能に配置され;
−起動時に;
−本体の内側のカバーのある位置から、近位端を通過してオリフィスを通して前進位置内へ針を押すこと;及び
−薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作すること;及び
−薬剤を送達した後、針を備えたシリンジをカバーのある位置内へ後退させること;が可能なばね手段;及び
−手動操作の前に、加圧状態においてばね手段をロックするように配置され、そして、手動操作時に、注射のためにばね手段を解放することが可能な起動手段;
を含む。
【0017】
本発明によると、ばね手段は、針を前進させるため、及び薬剤の用量を注射するため、体内で遠位端に基礎を置くように配置された圧縮ばねの形状の単一駆動ばねである。駆動ばねの力は、針及び/又はシリンジを、プランジャを経由して前進させる。駆動ばねは、薬剤の注射が少なくともほとんど完了するとき、シリンジを後退させるために、その近位端に切り替えた体にその基礎を置くように配置される。
【0018】
単一の駆動ばねは、針を挿入し、シリンジを完全に空にし、そして注射後、シリンジ及び針を安全な位置まで後退させるために使用される。その結果、シリンジを前進させ、用量を注射することに比較して、反対方向の運動であるシリンジ及び針を引き抜くための第二のばねは要求されない。駆動ばねの遠位端が基礎を置く間、近位端は、針の挿入のためシリンジを前進させ、そしてストッパを押すことにより注射を実行する。注射が少なくともほとんど完了するとき、駆動ばねがその近位端で底を打ち、近位端において体に基礎を置くことになる。同時に、駆動ばねの遠位端は、体内にその基礎を置くことから解除される。駆動ばねは、今、反対方向にシリンジを引く。
【0019】
本発明によると、起動手段は、自動注射器の遠位端上で配置されたラップオーバスリーブボタン(wrap-over sleeve button)形状のトリガボタンを含んでもよい。トリガボタンは、少なくともほとんど、自動注射器の全長に亘って伸びる。トリガボタンは、近位方向における並進運動時に、駆動ばねを解除するように配置される。注射を始動させるために、自動注射器は、注射サイトを、例えば、患者のスキンを押す必要がある。使用者、例えば、患者又は介護者は、手全体でラップオーバスリーブボタンを握り、そして注射サイトを押す。結果として、トリガボタンは、近位方向で並進運動し、そして注射サイクルを開始するために駆動ばねを解除する。本発明に基づく自動注射器は、器用さに問題を抱えている人々には特に十分ふさわしいが、それは、従来技術の自動注射器に反して、始動は、指一本で小さいボタンを操作することを要求されないからである。代わりに、手全体が使用される。
【0020】
本発明に記載の自動注射器は、大半の従来の自動注射器と比較して、特に、部材数が少ない。丁度一つの駆動ばねの使用は、金属の必要量を低下させ、その結果、重量と製造コストを低下させる。
【0021】
自動注射器の一つの実施態様において、少なくとも一つのクリップは、本体に配置される。クリップは、送達構成において駆動ばねをロックするように配置される。更に、クリップは外側に曲げることにより、駆動ばねの荷重下でロックを解除するように配置される。トリガボタンのスリーブは、送達構成において、即ち、トリガボタンが押されないとき、クリップを外側に曲げることを防ぐために配置された小直径を有するロッキングセクションを含む。トリガボタン及びロッキングセクションが、クリップ上を押されることにより近位方向に並進運動するとき、クリップはロッキングセクションを離れるようになり、そして、今、駆動ばねの荷重下で外側に曲げてもよく、その結果、駆動ばねを注射のために解除する。駆動ばねの荷重の下でのクリップ及び/又は構成部材は、クリップを外側に曲げるためのランプを有してもよい。
【0022】
好ましい実施態様において、インタロックスリーブは、本体の近位端にはめ込まれ、インタロックスリーブは、近位位置と遠位位置の間で縦方向に並進運動可能であり、そして近位位置において本体から突出するような方法で近位方向に付勢され、ここで、その近位位置において、インタロックスリーブは、本体に対してその後退位置から近位方向にシリンジの並進運動を防ぐように配置され、そしてここで、その遠位位置におけるインタロックスリーブは、近位方向におけるシリンジの並進運動を可能とするように配置される。
【0023】
自動注射器の送達状態において、インタロックスリーブは、本体の近位端から突出する近位位置にある。シリンジ及び針は、後退位置にある。注射を始動するために、自動注射器は、インタロックスリーブを遠位方向に本体内へ並進運動する方法で、その近位端で、即ち、注射サイトをインタロックスリーブで押さなければならない。その結果、シリンジは、本体からロックを解除され、そして、今、患者の皮膚を穿き刺すためにその前進位置内に針を動かすために並進運動し得る。シリンジ及び針が、実際に、近位方向に並進運動する前に、起動手段、即ち、ラップオーバスリーブトリガボタンは、駆動ばねを解除するために操作する必要がある。遠位方向でインタロックスリーブを並進運動すること、及び近位方向においてトリガボタンを並進運動することの両方は、使用者に、トリガボタンをつかみ、そして注射サイトに対して自動注射器を押すことを求められる。インタロックスリーブがトリガボタンの前に並進運動することを確実にするために、インタロックスリーブは、トリガボタンより弱いそれを付勢するためのばね手段を有してもよい。これら二つの並進運動は、使用者に、工程間の力の増大を伴った二段階の並進運動のように思わせる。
【0024】
別の好ましい実施態様において、少なくとも一つの第二の弾力クリップは、本体に配置される。第二のクリップは、第二のクリップが緩和するとき、トリガボタンが近位方向において並進運動することをブロックするために付勢される。その遠位位置において、インタロックスリーブは、それをトリガボタンから連結を解除するために、そのバイアスに対してクリップを押すように配置され、その結果、近位方向において、トリガボタンの並進運動を可能にする。この実施態様は、二つの異なった強いばね手段より、高い信頼性を持って順序付けされた操作を確実にする。インタロックスリーブは、トリガボタンがロックを解除する前に、常に、その遠位位置内に並進運動をする必要がある。
【0025】
シリンジの内容物が完全に患者に送達されたとき、即ち、ストッパがシリンジの底を打ったとき、針の後退を始動することは望ましいことである。ストッパが正確にその走行の終了点に到達したとき、自動的に後退を始動することは、シリンジ及びストッパを製造するときの許容誤差のために問題である。これらの許容誤差に起因して、その走行の終了時点での後退手段に対するストッパの位置は繰り返し可能ではない。結果として、ある場合には、ストッパは、時期を早めて底を打ち、それでは後退は全く始動しないであろう。その他の場合においても、後退は、ストッパが底を打つ前に始動し、それでは残留薬剤はシリンジ内に残るであろう。
【0026】
後退は、自動的にある時間後に始動し、又はストッパがシリンジの底を打つ前に、走行することができるであろう。しかし、この信頼性のある後退は、シリンジ内での残留薬剤に対してトレードオフの関係にある。
【0027】
その結果、好ましい実施態様において、インタロックスリーブは、遠位位置にあるとき、更に、駆動ばねが遠位基礎(distal ground)の解除を防ぐように配置される。これは、自動注射器が注射サイトに対して押され続けている限り、駆動ばねが遠位に基礎を置いて残留することを意味し、それで針の後退は、自動注射器が注射サイトから除去されるときのみ開始することができ、そしてインタロックスリーブは、結果として、その近位位置へ戻り、その結果、遠位的に基礎を置くことから解除される。薬剤の完全な送達及び信頼性のある後退は、その結果、注射サイトから自動注射器を取り除く使用者の動作を待つことにより達成される。
【0028】
後退スリーブは、本体内で軸方向に可動に配置されてもよく、ここで、駆動ばねは、遠位端面を支えるその遠位端、及び連結解除部材のスラスト面を支えるその近位端を備えた後退スリーブの内側に配置される。少なくとも一つの弾力ウェッジが、後退スリーブの近位端に配置され、ここで、本体は、後退スリーブがその近位位置にあるとき、弾力ウェッジを収容するためにそれぞれの凹部を有する。その遠位位置にあるインタロックスリーブは、それを遠位方向で並進運動することを防ぐために、内側から弾力ウェッジを支持するように配置され得る。それ故、インタロックスリーブが注射サイトに押されたとき、後退スリーブは、後退を避けられる。自動注射器を注射サイトから取り除き、そしてその後のインタロックスリーブのその近位端位置への並進運動の後のみ、後退スリーブは、遠位方向に並進運動してもよく、そして本体内へ針を後退させてもよい。
【0029】
管状のシリンジキャリアは、その近位端でシリンジを保持し、及びそれを支持するように配置され得る。シリンジを近位端で支持することは、フィンガフランジにおける支持を優先するが、それはフィンガフランジが荷重の下で壊れやすいからであり、一方、シリンジの近位端又は前端は強固である。シリンジ及びシリンジキャリアは、ジョイント軸方向並進運動のために配置される。シリンジキャリアは、インタロックスリーブ内にはめ込まれ、ここで、少なくとも一つの第二の弾力ラッチは、近位端近くの本体に配置される。送達状態において、第二の弾力ラッチは、シリンジキャリアを近位方向に並進運動することを防ぐ方法で内側に伸びる。第二の弾力ラッチは、遠位方向でインタロックスリーブの並進運動時に、シリンジキャリアからの係合を解除するように配置される。
【0030】
好ましい実施態様において、少なくとも一つのラッチは、最大近位位置における後退スリーブを軸方向に固定するために提供される。連結解除部材は、ほとんど最大近位位置内に、近位方向で動くとき、ラッチの連結を解除するように配置される。連結が解除されるとき、後退スリーブは、その遠位端において最早その基礎を置かないばね力を用いて遠位方向に動き、そして針を後退させることが可能となる。その結果、後退は、ラッチが解除される場合、及び自動注射器が注射サイトから除去される場合のみ発生することができる。
【0031】
好ましくは、プランジャは、シリンジ及び/又はストッパを近位方向に押すために配置される。少なくとも一つ、好ましくは、二つ又はそれより多くの弾力連結解除アームは、連結解除部材に配置される。連結解除アームは、近位方向でプランジャの第一のショルダに支えられる内部傾斜面を示す。弾力連結解除アームは、連結解除アームを外側に曲げ、そして、第一のショルダをスリップして通過することを防ぐために、後退スリーブの内壁により支持可能である。この状態において、プランジャは、針を挿入し、そして用量を注射するために、第一のショルダを押す連結解除部材により近位方向に押されるかもしれない。少なくとも一つの開口部は、連結解除アームを第一のショルダにより外側に曲げることを可能とし、その結果、第一のショルダを近位方向で連結解除アームをスリップして通過することを可能にする後退スリーブに配置される。これは、注射が少なくともほとんど終了するとき起こり得る。連結解除プランジャは、シリンジ及び針を後退させることを可能にするが、それは、最早、連結解除部材を支えないからである。
【0032】
シリンジは、後退スリーブに摺動可能に配置されるシリンジホルダとのジョイント軸方向運動のために配置され得る。シリンジホルダは、遠位的に配置された少なくとも一つ、好ましくは、二つ又はそれより多くの弾力シリンジホルダアームを備え、シリンジホルダアームは、第一のショルダから近位的にプランジャに配置された第二のショルダに支えられるために、それぞれ傾斜面を有する。シリンジホルダアームは、それらを外側に曲げることを防ぐために、本体の内面により支持可能である。それ故、トリガボタンが押されるとき、プランジャにより前進させるばね力は、ストッパに対しては、更に押さないが、それを前進させるシリンジに対しては押す。結果として、いわゆる濡れ注射が阻止され、即ち、液体薬剤は、針が挿入する前に中空針から漏れることはない。拡幅部分は、シリンジホルダがほとんど最大近位位置に到達したとき、シリンジホルダアームを外側に曲げることを可能にするために、その結果、第二のショルダがシリンジホルダアームをスリップして通過することを可能にするために、そしてシリンジからストッパへ駆動ばねの荷重を切り替えることを可能にするために、本体内に提供される。これは、薬剤の注射を開始する瞬間を定義することを可能にする。
【0033】
通常、中空針は、針を無菌状態に維持し、そしてそれを機械的損傷から防ぐために、保護ニードルシールドを装備している。保護ニードルシールドは、自動注射器又はシリンジが組立てられるとき、針に取り付けられる。
【0034】
好ましくは、キャップは、本体の近位端に提供される。シートメタルクリップは、ジョイント軸方向運動及び独立の回転運動のために、キャップに取り付けられる。シートメタルクリップは、キャップがインタロックスリーブに取り付けられるとき、オリフィスを通してインタロックスリーブ内に伸びるように配置される。シートメタルクリップは、保護ニードルシールドの円周状のノッチ内に、又はショルダの後ろにはめ込まれた少なくとも二つのかかり(barb)を組み込む。これは、組立中、シートメタルクリップと保護ニードルシールドとの係合を自動的に行うことを可能にする。キャップが、注射の準備中に、インタロックスリーブから除去されるとき、保護ニードルシールドは、使用者に自分自身を傷つける高すぎるリスクにさらすことなく確実に除去される。
【0035】
キャップは、ねじ連結により本体に取り付け可能であり得る。これは、小さい力での保護ニードルシールドの除去を可能にする。
【0036】
後退スリーブの開口部は、用量の終了時点の連結解除アームの位置まで、送達状態における連結解除アームの位置へ少なくともほとんど伸び得る。開口部は、後退スリーブがその近位位置にあるとき、連結解除アームに対して、角度的にずれるように配置され、それでプランジャは、連結解除部材から連結を解除されない。開口部及び後退スリーブは、ま
た、遠位方向における近位位置からの後退スリーブの並進運動時に、開口部を連結解除アームと心合わせするために回転するように配置され、それでプランジャ及び連結解除部材は、互いに連結を解除し、その結果、プランジャ、シリンジのストッパ及び針の後退を可能にする。この実施態様は注射サイクルのいかなる点においても後退を開始することを可能とする。
【0037】
心合わせ位置への回転は、本体に配置されたカムトラック及び後退スリーブにおけるカム従動子により実施でき得る。カムトラックは、本質的に、その近位端においてわずかに角度的に曲がった部分を有する自動注射器の縦軸に平行であり得る。
【0038】
代わりに、カムトラックが後退スリーブに、そしてカム従動子が本体内に配置されてもよい。
【0039】
自動注射器は、少なくとも一つのシリンジを検査するための視界窓を有してもよい。
【0040】
自動注射器は、好ましくは、皮下注射又は筋肉内注射のため、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体及び複合炭水化物の一つを送達するために使用し得る。
【0041】
シートメタルばねを備えたキャップは、また、他の自動注射器及び注射デバイスに適用してもよい。
【0042】
本発明の適用可能性の更なる範囲は、以下に与えられた詳細な記載から明白になるであろう。しかし、本発明の好ましい実施態様を示す詳細な記載及び具体的な例は、例証としてのみ与えられるのは当然であるが、何故ならば、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び改変は、この詳細な記載から当業者には明白になるからである。
【0043】
本発明は、本明細書の以下に与えられた詳細な記述、例証としてのみ与えられる添付図面から完全に理解され、それ故、それは本発明を制限するものではない:
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1A及び1Bは、送達状態の自動注射器である針を備えたシリンジを前進させ、薬剤の用量を注射し、そしてシリンジ及び針を後退させるための単一の駆動ばねを備えた自動注射器の二つの縦方向の断面である。
図2図2A及び2Bは、注射サイトを押さえる皮膚インタロックシュラウドを備えた自動注射器の二つの縦方向の断面である。
【0045】
全ての図において、対応する部分は、同一の参照記号で記される。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、自動注射器1の異なった断面における二つの縦断面を示し、異なった断面は、互いに約90°回転したものである。自動注射器1は、細長い本体2を含む。中空針4を備えたシリンジ3、例えば、Hypakシリンジは、自動注射器1の近位部分に配置される。自動注射器1又はシリンジ3が組立てられるとき、保護ニードルシールドは、針に取り付けられ得る(図示されていない)。ストッパ6は、シリンジ3を遠位的にシールするために、及び液体薬剤Mが中空針4を通して投与されるために配置される。シリンジ3は、管状シリンジキャリア7内で保持され、そしてその中の近位端で支持される。圧縮ばねの形状の単一駆動ばね8は、自動注射器1の遠位部分に配置される。プランジャ9は、駆動ばね8のばね力で前進させるために配置される。
【0047】
本体2の内側で、後退スリーブ10は、摺動可能に配置される。注射が始動する前に、後退スリーブ10は、最大近位位置にあり、及び本体2内でラッチ12の後部でつかまえられた停止部11を用いて遠位方向Dに動くことを阻止される。駆動ばね8の遠位端は、後退スリーブ10の端面13を支える。停止部11及びラッチ12に起因して、駆動ばね8の力は、本体2内へ反応する。駆動ばね8の近位端は、プランジャ9の周りに配置された連結解除部材14を支える。
【0048】
連結解除部材14は、駆動ばね8の近位端を支えるためのスラスト面17を含む。スラスト面17から近位的に、二つ又はそれより多くの連結解除アーム18が、連結解除部材14で提供され、連結解除アーム18は、近位方向Pにプランジャ9の第一のショルダ19を支える内部傾斜面を有する。弾力連結解除アーム18は、この状況において後退スリーブ10の内壁により支持され、それで、それらは外側に曲げることができず、そして第一のショルダ19をスリップして通過することができない。送達構成において、連結解除部材14は、弾力第一のクリップ2.1で本体2にラッチをかけられる。
【0049】
トリガボタン20は、自動注射器1のほとんど全長に亘って伸びる自動注射器1の遠位端D上に、ラップオーバスリーブボタン形状に配置される。トリガボタン20のスリーブ部分は、図1で示す送達構成において、クリップ2.1を外側に曲げることを避けるように配置された小径を有するロッキングセクション20.1を有する。その結果、連結解除部材14は、近位方向Pにおいて並進運動することが阻止される。
【0050】
シリンジキャリア7は、ジョイント軸方向運動のために、後退スリーブ10に摺動可能に配置されるシリンジホルダ22と係合する。シリンジホルダ22は、遠位的に配置された二つ又はそれより多くの弾力シリンジホルダアーム23を備えている。シリンジホルダアーム23は、第一のショルダ19から近位的に配置されたプランジャ9において第二のショルダ24を支えるために、それぞれの傾斜面を有する。図1で示す初期位置において、シリンジホルダアーム23は、本体2の内面により支持され、それでそれらは外側に曲げることができず、そして第二のショルダ24は、それをスリップして通過することができない。シリンジホルダアーム23を本体2において支えるために、それぞれの開口部の数は、後退スリーブ10において提供される。
【0051】
二つの弾力クリップ10.1は、後退スリーブ10の近位端で配置される。本体2は、後退スリーブ10がその近位位置にあるとき、弾力クリップ10.1を収容するように配置された二つの開口部を有する。
【0052】
皮膚インタロックスリーブ25は、近位端Pで配置される。皮膚インタロックスリーブ25は、それらの間にスペースを有する外壁25.1及び内壁25.2を保有する。外壁25.1及び内壁25.2は、互いに、近位端Pで、インタロックスリーブ25の前面25.3により連結する。内壁部分25.2.1は、本体2内にはめ込まれる(図1a参照)。別の内壁部分25.2.2は、本体2の外側にはめこまれる。外壁25.1は、ラップオーバトリガボタン20にはめ込まれる。近位方向Pにおいてインタロックスリーブ25を付勢するためのインタロックばね26は、内壁25.2と外壁25.1の間のスペースに隠される。シリンジキャリア7は、インタロックスリーブ25の内壁25.2内にはめ込まれる。
【0053】
二つの第二の弾力ラッチ27は、近位端P近くの本体2内に配置される。送達状態において、第二のラッチ27は緩和し、そして第二のラッチ27のそれぞれの遠位面27.1に対して隣接するシリンジキャリア7により近位方向Pにおいてシリンジキャリア7を並進運動することを防ぐ方法で、インタロックスリーブ25においてそれぞれの開口部25.4を通して内側に伸びる。従って、シリンジキャリア7、シリンジ3及び針4は、プランジャ9により押されるとき、前進できない。二つの外側に付勢される第二の弾力クリップ2.2は、第二の弾力ラッチ27から遠位的に本体2上に配置される。送達構成において、第二の弾力クリップ2.2は緩和し、そしてトリガボタン20を近位方向Pで並進運動することを防ぐ方法で外側に伸びる。
【0054】
注射を開始するために、自動注射器1は、注射サイト、例えば、患者の皮膚を押さえなければならない。この目的のために、自動注射器1は、介護者により又は患者により、クリップ2.2に基づき本体2に対して並進運動できないトリガボタン20で保持される。代わりに、インタロックスリーブ25は、遠位方向Dにおいて、本体2内に並進運動する。開口部25.1の近位端部は、第二のラッチ27の近位ランプ27.2に対して押し、それにより、第二のラッチ27を外側に曲げ、それでシリンジキャリア7は、遠位面27.1から離し、そして、今、近位方向Pに並進運動し得る。同時に、内壁部分25.2.2の遠位端は、本体2に対してトリガボタン20を並進運動することを可能にする方法でクリップ2.2を内側に押す(図2b参照)。
【0055】
図2における通り、本体2内に並進運動するとき、インタロックスリーブ25の内壁25.2の遠位端は、内側から弾力ウェッジ10.1を支持し、それでそれらは、内側に曲げることができず、その結果、後退スリーブ10を遠位方向Dに並進運動することを防ぐ。
【0056】
自動注射器1が、トリガボタン20を更に押すことなしで、この状態で、注射サイトから除去される場合、インタロックスリーブ25は、インタロックばね26の荷重の下でその近位位置内へ並進運動して戻るであろう。第二のラッチ27は、内側に曲げられ、そしてシリンジキャリア7をブロックし、それで、自動注射器1は、再び、その送達状態にある。クリップ2.2は、内壁部分25.2.2から離し、そして再度外側に曲げ、その結果、トリガボタン20を本体2に対して近位方向Pに並進運動することをブロックする。
【0057】
トリガボタン20上の近位方向Pにおける圧力が継続する場合、トリガボタンは、近位方向Pで並進運動し、その結果、ロッキングセクション20.1が第一のクリップ2.1を外側に曲げることを可能にする位置へ動かす。これは、駆動ばね8の荷重下で、クリップ2.1のランプに沿って摺動する連結解除部材14により発生する。トリガボタン20が走行の終了時に接近するとき、それは、本体2上のキャッチ2.4とトリガボタン20上のキャッチ20.2を係合することによりロックされ、それで、それはこの点から遠位方向Dに並進運動して戻ることができない。これは、本体2を注射中、トリガボタン20の内側でスロートする(float)ことを防ぐ。キャッチ20.2及び2.4が遠位端Dの近くで配置されるが、それはトリガボタン20のスリーブの長さに沿って、更に、どこにでも配置され得る。
【0058】
図2は、自動注射器1内へ押されたインタロックスルーブ25、及び近位方向Pに並進運動し、そしてキャッチ20.2、2.4でロックされたトリガボタン20を備えた自動注射器1を示す。
【0059】
第二のショルダ24は、シリンジホルダ22、シリンジキャリア7及びシリンジ3を前方へ押し、その間、荷重はストッパ6にかけない。中空針4は、近位端Pから出現し、そして注射サイト、例えば、患者の皮膚に挿入する。
【0060】
前進運動は、シリンジホルダ22が本体2の第一アバットメント32において底を打つまで継続する。初期位置からこの点までの走行は、注射深さ、即ち、針の挿入深さを定義する。
【0061】
シリンジホルダ22が殆ど底を打つとき、弾力シリンジホルダアーム23は、本体2の拡幅部分2.3に到達し、そこで、それらは、最早、本体2の内壁で支持されない。しかし、針4を挿入するのに必要な力は、相対的に低いので、第二のショルダ24は、近位走行が第一のアバットメント32で停止するまで、シリンジホルダ22を前進させることを継続する。この点において、シリンジホルダアーム23は、第二のショルダ24の継続した力により曲げられ、そしてそれをスリップすることを可能にする。今、プランジャ9は、最早、シリンジホルダ22を押さないが、薬剤Mをシリンジ3から放出し、そしてそれを患者の皮膚内に、又は皮膚を通して注射するためにストッパ6を押す。
【0062】
ストッパ6がシリンジ3で殆ど底を打つとき、連結解除部材14は、それが後退スリーブ10を本体2から連結を解除する方法で、ラッチ12を押す位置に到達する。その結果、駆動ばね8は、最早、ラッチ12により本体2のその遠位端で基礎を持たず、それで駆動ばね8は、遠位方向Dで後退スリーブ10を引こうとする。
【0063】
ラッチ12が、今、係合を解除されるが、後退スリーブ10は、インタロックスリーブ25が注射サイトを押し続ける自動注射器1によりその遠位位置にある限り、インタロックスリーブ25により内側に曲げられることが避けられる弾力クリップ10.1のために、遠位方向Dで、尚、摺動しないかもしれない。
【0064】
自動注射器1が注射サイトから除去される場合、インタロックスリーブ25は、インタロックばね26の荷重の下でその近位位置(図1で示す通り)に戻り、それで弾力クリップ10.1は、最早、内側から支持されない。駆動ばね8が、遠位方向Dに後退スリーブ10を引くようにするので、弾力クリップ10.1の遠位ランプは、本体2の凹部の近位端部に沿って動き、それにより、後退スリーブ10が遠位方向で並進運動を開始するとき、弾力クリップ10.1を内側に曲げる。後退スリーブ10は、連結解除部材18が後退スリーブ10の開口部34に到達する点まで動き、それでそれらは、最早、外側に曲げられることが避けられない。その結果、連結解除部材18は、その傾斜面を押す第一のショルダ19により外側に押され、それで第一のショルダ19は、遠位方向Dをスリップして通過することができる。連結解除部材14は、第二のアバットメント33で底を打ち、そして本体2のその近位端で駆動ばね8に基礎を与えるために、更に、近位方向Pにおいて小距離を動くことができる。
【0065】
遠位方向Dに、尚、動く後退スリーブ10は、その前面35でシリンジホルダ22をつかみ、そしてそれを遠位方向Dに沿って持っていく。その結果、シリンジ3及び針4は、本体2の安全な位置、例えば、初期位置内へ後退する。最早、連結解除部材18を支えないプランジャ9も、また、引き戻される。
【0066】
後退スリーブ10におけるラッチ12及び停止部11は、絶対、必要というわけではない。後退は、注射サイトからのみ自動注射器1を除去することにより、始動することができる。しかし、送達状態において、停止部11及びラッチ12は、駆動ばね8の荷重を静的に分割するループの一部であり、ループは、連結解除部材14、クリップ2.1、本体2、ラッチ12、停止部11及び後退スリーブ10を含む。それ故、送達状態において、いかなる荷重もプランジャ9にかけられない。
【0067】
自動注射器1が注射サイトから早めに除去される場合、即ち、ストッパ6がシリンジ3で底を打つ前に、後退は、シリンジ3が空になるときのみ開始する。後退スリーブ10がその近位位置に戻るインタロックスリーブ25により解除されるという事実にも拘わらず、連結解除部材14及びプランジャ9は、尚、連結解除部材18が後退スリーブ10の開口部34に合致する点に到達していない。それ故、プランジャ9は、尚、駆動ばね8の荷重の元にあり、そしてシリンジ3を空にすることを継続する。しかし、後退スリーブ10が解除されると、それは遠位方向Dで並進運動を開始し、そして、前面35とシリンジホルダ22の間のギャップを埋める。実際の後退は、連結解除部材14が第二のアバットメント33上で底を打つまで起こらず、その結果、駆動ばね8の近位端で基礎を置かれる。その間、駆動ばね8の荷重は、連結解除部材14を押す駆動ばね8の近位端、プランジャ9、ストッパ6、シリンジ3、シリンジキャリア7、シリンジホルダ22及び駆動ばね8の遠位端で押される後退スリーブ10より成るサブアセンブリループに分割される。換言すれば、このサブアセンブリは、自動注射器1の内側でフロートし、この間、シリンジ3は空である。連結解除部材14は、近位方向Pで走行を継続し、開口部34が合致するとき、プランジャ9を解除し、そして第二のアバットメント33の底を打つ。それ故、駆動ばね8の近位端は、駆動ばね8の更なる膨張を可能とする本体2、並びにシリンジホルダ22、シリンジキャリア7、シリンジ3及び針4を自動注射器1の内側の針の安全位置内へ後退させる後退スリーブ10に基礎を置く。
【0068】
参照番号リスト:
1:自動注射器;
2:本体;
2.1:第一のクリップ;
2.2:第二のクリップ;
2.3:拡幅部分;
2.4:キャッチ;
3:シリンジ;
4:中空針;
6:ストッパ;
7:シリンジキャリア;
8:駆動ばね;
9:プランジャ;
10:後退スルーブ;
10.1:弾力クリップ;
11:停止部;
12:ラッチ;
13:端面;
14:連結解除部材;
17:スラスト面;
18:連結解除アーム;
19:第一のショルダ;
20:トリガボタン;
20.1:ロッキングセクション;
20.2:キャッチ;
22:シリンジホルダ;
23:シリンジホルダアーム;
24:第二のショルダ;
25:インタロックスリーブ;
25.1:外壁;
25.2:内壁;
25.2.1:内壁部分;
25.2.2:内壁部分;
25.3:前面;
25.4:開口部;
26:インタロックばね;
27:第二のラッチ;
27.1:遠位面;
27.2:近位ランプ;
32:第一のアバットメント;
33:第二のアバットメント;
34:開口部;
35:前面;
D:遠位端、遠位方向;
M:薬剤;
P:近位端、近位方向;
図1A
図1B
図2A
図2B