(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165132
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】新規の自己潤滑表面コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
F16C 17/02 20060101AFI20170710BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20170710BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20170710BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20170710BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20170710BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170710BHJP
C09D 161/10 20060101ALI20170710BHJP
C09D 129/10 20060101ALI20170710BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C33/20 A
F16C33/10 D
F16C33/10 Z
C09D133/06
C09D5/00 Z
C09D7/12
C09D161/10
C09D129/10
C09D133/14
【請求項の数】24
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-511397(P2014-511397)
(86)(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公表番号】特表2014-516098(P2014-516098A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】US2012036983
(87)【国際公開番号】WO2012158408
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】13/108,677
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513288791
【氏名又は名称】ニュー ハンプシャー ボール ベアリングス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ソエルヒ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー,グラント,エー.
(72)【発明者】
【氏名】オーレット,トーマス
【審査官】
▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−108299(JP,A)
【文献】
米国特許第06180574(US,B1)
【文献】
特表平06−505528(JP,A)
【文献】
特開2009−084632(JP,A)
【文献】
特開2009−133374(JP,A)
【文献】
特開昭58−142942(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/135094(WO,A1)
【文献】
特開2008−039185(JP,A)
【文献】
特開2005−146366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/82
C09D 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置される自己潤滑表面コーティング組成物と、を備え、
前記自己潤滑表面コーティング組成物は、少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレート層と、少なくとも1つのフェノール樹脂層とを含み、
前記少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレート層は、前記少なくとも1つのフェノール樹脂層と異なる、
軸受。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフェノール樹脂層が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との混合物である、
請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフェノール樹脂層が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との熱硬化性混合物である、
請求項1に記載の軸受。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフェノール樹脂層が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との硬化した熱硬化性混合物である、
請求項1に記載の軸受。
【請求項5】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、潤滑剤をさらに含む、
請求項1に記載の軸受。
【請求項6】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン粉末、グラファイト、タルク、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、銅、パーフルオロポリエーテル、シリコーン溶液、油類、ワックス類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される潤滑剤をさらに含む、
請求項1に記載の軸受。
【請求項7】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、羊毛繊維、ポリエステル繊維、ポリマー繊維、鉱物充填材、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される補強充填材をさらに含む、
請求項1に記載の軸受。
【請求項8】
前記基材が金属である、
請求項1に記載の軸受。
【請求項9】
前記基材が、アルミニウム、チタン、鋼、ステンレス鋼、金属合金、セラミック、ポリマー、および複合材からなる群から選択される1つ以上の材料を含む、
請求項1に記載の軸受。
【請求項10】
基材と自己潤滑表面コーティング組成物とを備えた軸受を製造する方法であって、前記自己潤滑表面コーティング組成物は、少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレートと、少なくとも1つのフェノール樹脂とを含み、該方法は、
前記フェノール樹脂を前記基材上に配置することと、
前記フェノール樹脂がコーティングされた基材上に前記熱硬化性アクリレートを配置することと、
を含む方法。
【請求項11】
前記フェノール樹脂が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との混合物である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フェノール樹脂を乾燥させることと、
前記乾燥後のフェノール樹脂がコーティングされた基材上に前記熱硬化性アクリレートを配置することと、
をさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記フェノール樹脂を乾燥させることと、
前記乾燥後のフェノール樹脂がコーティングされた基材上に前記熱硬化性アクリレートを配置することと、
前記フェノール樹脂および前記熱硬化性アクリレートを硬化することと、
をさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン凝集物、ポリテトラフルオロエチレン粉末、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、銅、タルク、パーフルオロポリエーテル、シリコーン溶液、油類、ワックス類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される潤滑剤をさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、羊毛繊維、ポリエステル繊維、ポリマー繊維、鉱物充填材、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される補強充填材をさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレート層および少なくとも1つのフェノール樹脂層と、
ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン凝集物、ポリテトラフルオロエチレン粉末、グラファイト、タルク、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、銅、パーフルオロポリエーテル、シリコーン溶液、油類、ワックス類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される潤滑剤と、
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、羊毛繊維、ポリエステル繊維、ポリマー繊維、鉱物充填材、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される補強充填材と、
ヒュームドシリカ、変性尿素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるチキソトロープ剤と
過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、光開始剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される開始剤と、
を含み、
前記少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレート層は、前記少なくとも1つのフェノール樹脂層と異なる、
自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのフェノール樹脂層が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との混合物である、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのフェノール樹脂層が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との熱硬化性混合物である、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つのフェノール樹脂層が、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との硬化した熱硬化性混合物である、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項20】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、潤滑剤をさらに含む、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項21】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン凝集物、ポリテトラフルオロエチレン粉末、グラファイト、タルク、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、銅、パーフルオロポリエーテル、シリコーン溶液、油類、ワックス類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される潤滑剤をさらに含む、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項22】
前記自己潤滑表面コーティング組成物が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、羊毛繊維、ポリエステル繊維、ポリマー繊維、鉱物充填材、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される補強充填材をさらに含む、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレート層が、トリス(2‐ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含む、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレート層が、トリス(2‐ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含む、
請求項16に記載の自己潤滑表面コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、概して、自己潤滑表面コーティング分野に関し、特に、基材と、この基材の少なくとも一部に付着した自己潤滑表面コーティング組成物とからなる軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 摺動面としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用した自己潤滑軸受は、米国特許第4,666,318号(以降、318号特許と呼ぶ)に従って、1960年代から航空宇宙産業で使用されてきた。318号特許は、PTFE織布軸受表面の薄膜を、焼結ブロンズと、ガラス、グラファイト繊維、または比較的高い融点を有する高強度有機糸などの織編用糸とにより高頻度で補強することを教示する。織物構造には、通常、フェノールホルムアルデヒド、エポキシ類、またはシアノアクリレート類などの樹脂系が注入され、摺動面を固めて稠密構造を得る。318号特許は、さらに、摺動面と、表面粗さが小さく硬度の高い対向面とを有する、PTFEからなる低摩擦強化プラスチック要素を使用した改良された軸受を教示する。
【0003】
[0003] 米国特許第3,996,143号(以降、143号特許と呼ぶ)は、アクリレート組成物、粒状固体潤滑剤、および有機または無機充填材の硬化した混合物からなる軸受表面を記載している。この軸受表面には、噴霧、はけ塗り、または浸漬などの従来技術を適用することができる。軸受表面は、基板に付着され、任意の厚さを持たせることができる。さらに、軸受表面は、コーティング対象の基板の形状に容易に適合し、多様な厚さで容易に製造することができ、しばしば所定のサイズに機械加工することができ、これにより自己潤滑生地などの従来採用されていた材料に対して、重大な利点を有する。
【0004】
[0004] 米国特許第4,053,665号は、硬化性アクリレート組成物と粒状PTFEとの硬化した混合物によってコーティングされた一面を有する成形軸受アセンブリを教示する。さらに米国特許第6,180,574号は、硬化性アクリレート組成物およびPTFEなどの固体潤滑剤を含む軸受用の自己潤滑ライナを教示する。
【0005】
[0005] 米国特許出願公開公報第2009/0275685号は、表面と、金属アクリレート化合物を有する硬化性アクリレート組成物を含む自己潤滑表面コーティング組成物とを有する軸受を教示する。
【0006】
[0006] これらおよびその他の取り組みにより、自己潤滑軸受分野、特に、硬化した自己潤滑アクリレート表面組成物を利用する分野が進歩してきた。これらの自己潤滑アクリレート表面組成物は、軸受に対し、多くの望ましい加工上の利点をもたらし、増々重要になってきている。それでも、耐用期間をより長くし、かつ性能を向上させるために、形状適合性があり、かつ機械加工可能な自己潤滑表面を有する改良された軸受に対する需要がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本発明は、基材と、この基材上に配置される自己潤滑表面コーティング組成物と、を含む自己潤滑軸受であって、自己潤滑表面コーティング組成物が、さらに、少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレートと、少なくとも1つのフェノール樹脂とを含む、軸受を提供する。フェノール樹脂は、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との混合物を含むことが好ましい。本発明は、また、自己潤滑表面コーティング組成物および上記新規の軸受を製造するいくつかの方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[0008] 本発明の多くの態様は、以下の図面を参照してより深く理解することができる。図面内の構成要素は、必ずしも寸法通りではなく、本発明の原理を明確に説明するための強調がなされている場合もある。さらに、図面において、同様の参照番号は、複数の図面を通して対応する部品を示している。
【0009】
【
図1】[0009]
図1は、本発明の第1の例示的な実施形態を図示し、軸受基材および自己潤滑表面コーティングを示している。
【
図2】[0010]
図2は、自己潤滑表面コーティング組成物が、軸受基材上に層状構造で配置されている硬化したアクリレート成分およびフェノール成分を有する、本発明の第2の例示的な実施形態を図示する。
【
図3】[0011]
図3は、
図2の構造を有するジャーナル軸受の断面図である。
【
図4】[0012]
図4は、軸受基材上に層状の自己潤滑表面コーティングを有する本発明の第3の例示的な実施形態を図示する。
【
図5】[0013]
図5は、自己潤滑組成物が、フェノール樹脂と熱硬化性アクリレートとの硬化した混合物上に配置された硬化した熱硬化性アクリレートである、本発明の第4の例示的な実施形態であって、フェノール樹脂と熱硬化性アクリレートとの硬化した混合物が、軸受基材上をコーティングしている状態を図示する。
【
図6】[0014]
図6は、フェノール樹脂と熱硬化性アクリレートとの硬化した混合物が基材上にコーティングされ、熱硬化性アクリレートとフェノール樹脂との別の硬化した混合物が最上層としてコーティングされている、本発明の第5の例示的な実施形態を図示する。
【
図7】[0015]
図7は、本発明の例示的な使用に係る、円筒状のブッシュホルアセンブリを図示する。
【
図8】[0016]
図8は、
図7の円筒状のブッシュホルダアセンブリの断面図を図示する。
【
図9】[0017]
図9は、本発明により提供される自己潤滑ライナの摩耗対振動サイクルをグラフで表している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0018] 本発明は、基材と、基材上に配置された自己潤滑表面コーティング組成物とを含む自己潤滑軸受であって、自己潤滑表面コーティング組成物が、さらに、少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレートおよび少なくとも1つのフェノール樹脂を含む、自己潤滑軸受を提供する。フェノール樹脂は、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂との混合物を含むことが好ましい。本発明は、また、自己潤滑表面コーティング組成物および本発明に係る軸受を製造するいくつかの方法も提供する。
【0011】
[0019] 自己潤滑軸受は、いずれのタイプであってもよく、任意の幾何形状の面または基材を有する。より一般的な軸受のタイプの例として、ジャーナルすべり軸受、フランジ付きジャーナル軸受、球面軸受、トラックローラ、ころ軸受、ローダスロット軸受(loader slot bearings)、平板、(建物、道路、橋、トンネル用の)地震軸受構造、ならびに他の軸受がある。本発明の軸受は、いくらかの負荷がかかった状態で、互いに接触した二表面であって、一方の表面が他方の表面に対して自由に移動する、あらゆる構築物において使用され、自己潤滑組成物が、二表面のうちの一方を含み、この二表面が移動可能に接触する領域の少なくとも一部上で基材上に配置される。これらの表面は、互いに同じ幾何形状でも、異なる幾何形状でもよい。自己潤滑組成物は、これら二表面間の摩擦および摩耗を減少させるように機能する。
【0012】
[0020] いくつかの代表的な軸受の実施形態は、本発明および本発明の別の例示的な実施形態を図示するために本明細書において提供される図面に示されている。なお、これらの図面は、全体像を表すものではないため、どのような形であれ本発明を限定することは意図されていない。
【0013】
[0021] 本発明の第1の例示的な実施形態が
図1に示されている。基材1は、簡素化するために平坦に図示されているが、任意の幾何形状であってよい。自己潤滑表面コーティング組成物2aは、基材1上に配置され、熱硬化性アクリレートとフェノール樹脂との硬化した混合物を含む。軸受の対向面は、簡素化するために図示を省略した。熱硬化性アクリレートとフェノール樹脂との硬化した混合物2aは、基材1に付着し、かつ基材1の幾何形状に適合しており、基材1に対して任意の厚さにすることができる。自己潤滑表面コーティング組成物2aは、基材1の全体を覆うように示されているが、基材1の一部のみを覆うものであってもよい。
【0014】
[0022]
図2は、自己潤滑表面コーティング組成物が、軸受基材上に層状構造で配置された硬化したアクリレート成分およびフェノール成分を有する、本発明の第2の例示的な実施形態を図示する。
図2を参照すると、自己潤滑表面コーティング組成物は、フェノール樹脂3a上に付着した硬化した熱硬化性アクリレート2bを含む層状構造である。フェノール樹脂3aは、基材1に付着される。
【0015】
[0023]
図3は、
図2の層状構造を有するジャーナル軸受(または、スリーブ軸受)の断面図である。全ての図面と同様に、実施形態をより明確に表すために、個々の層の相対的な厚さは、寸法通りには描かれていない。
【0016】
[0024]
図4は、軸受基材上に層状の自己潤滑表面コーティングを有する、本発明の第3の例示的な実施形態を図示する。
【0017】
[0025] 層状の自己潤滑組成物は、フェノール樹脂3aに付着した熱硬化性アクリレートとフェノール樹脂との硬化した混合物2aを含む。
図4に示すように、フェノール樹脂3aは、基材1に付着している。
【0018】
[0026] あるいは、
図5に示すように、本発明の第4の例示的な実施形態に従って、自己潤滑組成物は、フェノール樹脂と熱硬化性アクリレートとの硬化した混合物3b上に配置された硬化した熱硬化性アクリレート2bでもよい。フェノール樹脂と熱硬化性アクリレートとの硬化した混合物3bは、基材1の少なくとも一部を覆う。
【0019】
[0027]
図6は、自己潤滑軸受の第5の例示的な実施形態を図示する。
図6に示すように、フェノール樹脂と熱硬化性アクリレートとの硬化した混合物3bは、基材1を覆っており、熱硬化性アクリレートとフェノール樹脂との別の硬化した混合物2aが最上層である。
【0020】
[0028] 図面内の自己潤滑表面層2a,2b,3a,3bは、任意の厚さであってよい。自己潤滑組成物全体の厚さは、0.25インチ以上の厚さで基材1に適用可能であるが、典型的には0.100インチ未満であり、より典型的には0.050インチ未満である。なお、一部の好適な実施形態では、自己潤滑表面層3aおよび3bは、約0.002インチ以下の厚さである。さらに、自己潤滑表面層3aおよび3bは約0.001インチ以下の厚さであってもよい。
【0021】
[0029] 本明細書に開示する軸受を製造するいくつかの方法もまた、本発明によって提供される。自己潤滑組成物は、流動状態で、噴霧、はけ塗り、ロール塗り、スピニング(spinning)、鋳込み、コーティング、またはそれらのいくつかの組み合わせにより基材1上に配置され、その後硬化により該組成物を固体化させ、この組成物を適切な位置に付着させることができる。これらのプロセスは、全ての図に図示された本発明の軸受に適用可能である。他の配置方法もまた使用可能であることが当業者には理解されるであろう。
【0022】
[0030] あるいは、
図2〜
図6の自己潤滑組成物の一部(2aまたは2bのいずれか適用可能な方)を、鋳込みまたは他の方法によって整形し、かつ基材1とは別個に硬化してもよい。その後、層3aまたは3bのいずれか適用可能な方を、流動状態で、噴霧、はけ塗り、ロール塗り、スピニング、鋳込みまたは他の方法でコーティングすることにより、基材1上に堆積させる。堆積した層3aまたは3bのいずれか適用可能な方が溶剤を含んでいる場合、その後、任意で乾燥させてもよい。単独で形成された固化後の形状は、その後、コーティングされた基材と結合され、後硬化されることで、本発明の自己潤滑軸受が製造される。
【0023】
[0031] 驚くことに、この作業過程において、鋳込みまたは他の方法で形成された、自己潤滑表面成分2aおよび/または2bを含む硬化後の形状は、特定の用途においては、基材1に張り付けなくとも、それ自体が軸受として使用することもできることが判明した。本発明の特定の軸受を製造する最良の方法は、軸受表面の幾何形状、サイズ、使用目的、必要な軸受の数に応じて左右されることになる。
【0024】
[0032]
図1の軸受基材1は、任意の材料でよく、その材料には、アルミニウム、鋼、チタン、ステンレス鋼、金属合金、複合材、ポリマー合金、セラミックス、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。基材1は、
図1には図示されない別の表面に対して移動可能に接触した状態で使用される。
【0025】
[0033] 軸受全体の性能を最適化するために、軸受基材1の仕上げは、自己潤滑表面コーティング組成物が塗布される前に処理される。基材仕上げ処理の第1ステップは、基材1の表面を粗くし、特定の平均粗さまたはRaを得ることである。この粗さは、研磨媒体を使ったグリットブラスト、ケミカルエッチング、プラズマエッチングもしくは放電エッチング、ランダムな粗さパターンもしくは特定の粗さパターンを付与する機械的粗面化、または他の方法といった多様な公知の方法によって実現することができるが、これらに限定されない。任意の表面粗さを使用することができるが、0.030インチのカットオフを使用したプロファイロメータで測定した際のRa値が25マイクロインチよりも大きいことが好ましい。必須ではないが、Ra値が100マイクロインチ以上であるとさらに好ましく、一部の用途では、Ra値が150マイクロインチより大きいとより一層好ましい。
【0026】
[0034] 所望の基材粗さが得られたら、基材は、油、グリース、および他の汚染物質が無くなるように洗浄され、さらに、特定の基材組成向けの公知の表面処理方法に応じて、任意で、エッチング、脱酸素処理、不活性化処理などがなされてもよい。
【0027】
[0035] アクリレートは、任意のアクリレートモノマーもしくはアクリレートオリゴマーであってよい。アクリレートは、酸もしくはエステル官能基を有するものであってもよく、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。本発明において有用なアクリレートモノマーもしくはアクリレートオリゴマーは無数存在し、代表例として、ペンシルバニア州エクストンのSartomer社から供給されているものがあるが、これに限定されない。モノマーおよびオリゴマーは、樹脂粘度、耐摩耗性、架橋密度、耐薬品性、反応性、耐熱性、硬度、粘着性、および他の使用特性などの最終用途特性に適応させるべく選択され、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。
【0028】
[0036] フェノール樹脂は、任意のフェノール樹脂であってよい。フェノール樹脂は、レゾール、ノボラック、またはそれらの組み合わせであってよい。フェノール樹脂は、フェノール樹脂とポリビニルホルマール樹脂(ポリビニルホルマールと呼ばれることもある)との組み合わせである、ビニルフェノール樹脂が好ましい。ポリビニルホルマールは、ポリマー族の一種であり、共重合体としてのポリビニルアルコールおよびホルムアルデヒドとポリ酢酸ビニルとから形成されたポリマーを含むが、これに限定されない。ポリビニルホルマールの別名は、変性ポリビニルアセタール樹脂である。ビニルフェノール樹脂の一例として、オハイオ州ブルーアッシュのMaverick社から入手可能なMVK−7000がある。フェノール樹脂は、熱硬化性フェノール樹脂であってもよく、熱可塑性フェノール樹脂であってもよい。
【0029】
[0037] 本発明のアクリレート自己潤滑組成物には、特定の最終用途の要件を満たすために、充填材、補強材、改質剤を添加してもよい。充填材の典型例としては、ガラス繊維、ガラス繊維織物、炭素繊維、炭素繊維織物、鉱物繊維、ポリマー繊維、粘土、雲母、ガラスフレーク、鉱物充填材、カーボンブラック、着色料、アラミド繊維およびアラミド織物、ならびに、これらの多様な組み合わせなどがある。
【0030】
[0038] 自己潤滑表面コーティング組成物に潤滑剤を添加して、摩擦係数を低下させ、耐摩耗性を向上させることもできる。潤滑剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン膜、活性化ポリテトラフルオロエチレン繊維、活性化ポリテトラフルオロエチレン繊維を含む(ただし、限定されない)濡れ性が向上したポリテトラフルオロエチレン潤滑剤、他のフルオロポリマー系の潤滑剤、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素、炭化水素油、シリコーン溶液およびシリコーン重合体、ペルフルオロポリエーテル、ならびに他の類似の潤滑剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
[0039] 本発明の自己潤滑組成物には、チキソトロープ剤(thixotrope)を添加してもよい。ヒュームドシリカは、有用なチキソトロープ剤である。ヒュームドシリカと変性尿素との相乗的な組み合わせにより、典型的に必要とされるシリカの半量以下で、驚くほどに高いチキソトロピー性がもたらされることが判明した。
【0032】
[0040] 硬化は、熱、光、電子ビームまたは別の方法を含む任意の方法で行うことができる。標準的な熱開始剤および光開始剤が本技術分野で公知であり、自己潤滑組成物の硬化を促進するために添加することができる。公知の熱開始剤の具体例には、有機過酸化物が含まれるが、これに限定されない。多様な有機過酸化物が、例えば、Arkema社またはSigma Aldrich社など、多くの供給源から入手可能である。本発明において使用するのが好適な過酸化物の例には、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されない。過酸化物が異なると、硬化が開始する温度および速度が異なる。過酸化物は、加工および取扱い上の考慮に基づいて選択されることが多い。ある例では、2つ以上の過酸化物を使用して異なる温度で硬化を開始すること、あるいは過酸化物および光開始剤を含めることで紫外線硬化と熱硬化を組み合わせることが有利な場合もある。
【0033】
[0041] 過酸化ベンゾイル(Luperox(登録商標)A98)は、本発明において有用な、効果的な過酸化物である。使用される開始剤の量は、アクリレート組成物のポットライフに影響する重要な要因である。アクリレートが異なると、過酸化物の量および種類が同じであっても、反応する速度がいくらか異なるため、正確なアクリレート組成物を選ぶこともまたポットライフに影響する重要な要因である。
【0034】
[0042] 自己潤滑表面コーティング組成物は、アクリレート、シリコーンまたはエポキシタイプの組成物を混合するのに好適な標準的なミキサ内で混合または化合させることにより、最も効果的に調製される。組成物の調製に有用な典型的なミキサには、遊星型ミキサ、高せん断ミキサ、および他のミキサが含まれる。材料は、全てが一度に混合されてもよく、任意の順序で混合されてもよい。フェノール樹脂成分は、他の材料とともにアクリレート組成物に添加することができる。フェノール樹脂成分は、任意で、アクリレート組成物を軸受基材と組み合わせる前に、単独で軸受基材に添加してもよい。フェノール樹脂成分は、任意で、アクリレート組成物に添加し、このアクリレート含有フェノール樹脂組成物を軸受基材に添加する前に、同一のもしくは別のフェノール樹脂成分をこの基材に添加してもよい。
【0035】
[0043] 正確な配合、ミキサのタイプ、混合される量に応じて、アクリレートと固体充填材とを部分的に、あるいは全てを一度に組み合わせて最も効果的な混合を促進することが有利な場合がある。充填材および添加剤の添加および混合の順序、ならびに、ミキサの速度および条件は、分散度が制御され、かつ混合プロセス中に起こるせん断発熱が管理されるべく、化合技術分野の当業者により理解および操作される。
【0036】
[0044] 充填材または繊維を適度に濡らし、分散させ、さらに軸受基材に自己潤滑表面コーティング組成物を塗布する前の最終混合物内の酸素濃度を減少させるために、ミキサが真空で材料を混合する性能を備えていることが望ましい。アクリレート組成物中の最終酸素濃度は、適用される真空レベルによって制御される。酸素濃度は、混合物のポットライフおよび本発明の自己潤滑軸受の品質に影響する重要なパラメータである。
【0037】
[0045] 流動状態の自己潤滑表面コーティング組成物は、多様な方法によって軸受基材上に配置させることができる(上記参照のこと)。自己潤滑アクリレート組成物は、その後、硬化され、固体化される。プロセス中のこの時点で、基材および自己潤滑表面コーティング組成物を含む軸受は、そのまま使用すること、適度なサイズに機械加工すること、後硬化すること、後硬化してから機械加工すること、あるいは機械加工してから後硬化し、さらに機械加工することが可能である。正確な順序は、軸受の設計及び最終用途の要件に応じて変化する。後硬化は、通常、最初の硬化に使用される温度よりも高い温度で行われてきたが、これは、本発明では必要条件ではない。後硬化は、自己潤滑軸受の性能をさらに向上させることができる。所定の熱硬化性フェノール樹脂を使用するいくつかの実施形態では、熱硬化性フェノール樹脂成分は、後硬化プロセスまで完全には硬化しない。
【0038】
[0046] 以下、上述した非限定的な例を説明する。なお、以下の説明は、例示を目的としており、本発明および/または本開示をどのような形であれ限定することを意図していない。
【0039】
[0047] [第1実施例‐熱硬化性自己潤滑表面コーティング組成物の調製]
【0040】
[0048] 材料(1)および(2)は、予備混合し、約2時間かけて約120F゜まで緩やかに加熱して、溶解を促した。得られた溶液は、室温まで冷却され、残りの熱硬化性アクリレート材料を、混合しながら順次添加した。
熱硬化性アクリレートおよびポリマー材料 容量部
(1)トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 63.6
(2)トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート 23.1
(3)過酸化ベンゾイル 1.2
(4)変性尿素 1.0
【0041】
[0049] その後、以下のリストに記載した補強充填材、潤滑剤および粘度調整剤を、熱硬化性アクリレート混合物中に混合し、よく分散させた。
その他の材料 容量部
(5)ガラス繊維 13.2
(6)活性化PTFE繊維 23.6
(7)PTFE粉末 4.5
(8)シリカ 0.7
【0042】
[0050] 混合された熱硬化性自己潤滑組成物を、3時間断続的に混合しながら、真空(水銀で28)に保持した。混合物の一部は、その後、空気圧ディスペンサカートリッジ内に注入された。
【0043】
[0051] 航空宇宙規格番号M81934/1−08A12を満たす0.5インチの孔を有するアルミニウムブッシュを、標準的な方法で、150マイクロインチを超える表面粗さ(0.030インチのカットオフで測定されたRa)を有するように作製した。この表面は、その後、アルカリ性洗浄剤を用いて超音波洗浄され、業界標準の方法に従ってOakite(商標)脱酸素剤LNCを使ってエッチングされた。
【0044】
[0052] [第2(比較)例‐自己潤滑熱硬化性アクリレートを有する軸受の作製]
【0045】
[0053]
図7の展開図および、
図8の断面アセンブリに示すように、アルミニウム円筒ホルダ6内に、2つの0.5インチブッシュ4を、厚さ0.012インチのポリテトラフルオロエチレンガラス繊維シートから切り出したワッシャ5と共に並べて設置された。ワッシャ(5)の内径は、ブッシュ4の表面上に配置された自己潤滑ライナ4の内径と一致させた。そして、ブッシュ‐円筒ホルダアセンブリは、鋼製コレットを使用して速度可変旋盤内に入れられた。旋盤は、開流路を備えており、窒素ガスが毎分8.7リットルの速さで旋盤およびブッシュ‐円筒状ホルダアセンブリ内に流された(
図8)。ブッシュ‐円筒ホルダアセンブリは、その後、38rpmで回転された。厚さ0.030インチの(上記)自己潤滑熱硬化性組成物層は、EFDカートリッジから0.930グラムを均一にブッシュ内側面に塗布することにより、堆積された。ブッシュ‐円筒ホルダアセンブリの回転速度は、その後、60秒間で3000rpmまで上げられた。加熱された空気をブッシュ‐円筒ホルダアセンブリの表面上に吹付け、この表面を5分間で約240゜Fまで加熱した。10分後、スピン速度を300rpmまで下げ、次の20分間で表面温度を248゜Fまで徐々に上昇させた。その後、ブッシュ‐円筒ホルダアセンブリを冷却し、ブッシュを除去した。
【0046】
[0054] [第3実施例‐少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレートおよび少なくとも1つのフェノール樹脂を含む自己潤滑表面コーティング組成物を有する軸受の作製]
【0047】
[0055] 比較例において上述したように作成した2つのアルミニウムブッシュの内側面に、ビニルフェノール樹脂を手ではけ塗りし、200゜Fで30分間空気乾燥させた。乾燥したブッシュは、乾燥後、約0.0005〜0.001インチの厚さのビニルフェノール樹脂層を有していた。
【0048】
[0056] ビニルフェノール樹脂がコーティングされたブッシュは、アルミニウムの円筒ホルダ内に並べて設置された。その後、ブッシュ‐円筒ホルダアセンブリは、(上記の)比較例のように鋼製のコレットを使用して速度可変旋盤内に入れられた。旋盤は、開流路を備えており、窒素ガスが毎分8.7リットルの速さで旋盤およびポットチャック内に流された。ポットチャックは、その後、37rpmで回転された。厚さ0.030インチの自己潤滑熱硬化性組成物層を、接着剤ディスペンサカートリッジから0.930グラムを均一にブッシュ内側面に塗布することにより、生成した。本発明に従って使用可能な接着剤ディスペンサカートリッジの一例として、ロードアイランド州、イーストプロヴィデンスのNordson EFD, LLC社から購入可能なものがある。ポットチャックの速度は、その後、60秒間で3000rpmまで上げられた。加熱された空気をポットチャックの表面上に吹付け、チャックの表面を5分間で約240゜Fまで加熱した。10分後、スピン速度を300rpmまで下げ、次の30分間で表面温度を248゜Fまで徐々に上昇させた。その後、チャックを冷却し、硬化したアクリレートおよびビニルフェノール樹脂表面組成物を有するブッシュを除去した。
【0049】
[0057] これらの研究では、概して、硬化した熱硬化性アクリレートおよび少なくとも1つのフェノール樹脂を含む本発明の自己潤滑表面コーティング組成物は、比較例のフェノール樹脂組成物を含まない熱硬化性アクリレートと比較して、固体塊になるまで硬化させるのにやや高い温度および/またはやや長い時間を要することが観察された。
【0050】
[0058] [自己潤滑ライナを有する比較例2および実施例3の機械加工および後硬化]
【0051】
[0059] ブッシュ内の、厚さ約0.030インチの固化(硬化)した自己潤滑表面コーティング組成物ライニングは、その後、0.012インチまで機械加工された。機械加工は、旋盤上で、冷媒を使用せず、0.015インチのノーズ径を有するカーバイドインサートを使用して、毎分2700〜4400インチの表面速度、および毎分1.5インチ未満の供給速度で行われた。そして、機械加工された自己潤滑ライニング組成物を有するブッシュは、局所的に遊合した状態でアルミニウムロッド上を摺動させられた。
【0052】
[0060] 次に、アルミニウムロッド‐ブッシュアセンブリを強制空気循環炉に入れ、自己潤滑組成物を後硬化させた。この炉は、毎分2゜Fの速度で、室温から340゜Fまで加熱され、340゜Fで20時間保持され、毎分5゜Fの速度で室温に戻された。
【0053】
[0061] ブッシュをアルミニウムロッドから除去し、その後、自己潤滑組成物ライニングを、最終サイズの厚さ0.010インチまで(上述したように)機械加工して、高温振動試験を行った。
【0054】
[0062] [機械加工および後硬化後の自己潤滑ライナを有する比較例2および実施例3の軸受の高温振動試験]
【0055】
[0063] 各軸受(またはスリーブ軸受)2つずつに対し、航空宇宙標準規格AS81934、パラグラフ4.6.4および3.6.4に準拠して半径方向荷重下における高温振動試験を行った。
【0056】
[0064] 試験は、特注の動的試験機を2台使用して遂行された。両試験機は、油圧により荷重がかけられ、機械駆動される振動機構を有している。試験対象のスリーブ軸受は、ころ軸受に取り付けられたスピンドルによって硬化鋼製のピンが孔内で振動されている間、このスリーブ軸受が静止状態で保たれるように、設置された。軸受は、電子加熱コントローラによって制御された電気抵抗加熱器を使用して、試験中、325°Fの温度を維持するように加熱された。試験温度を示すために使用される熱電対は、スリーブ軸受の被荷重領域に直接隣接した軸受保持筐体内のドリル穴内に配置された。
【0057】
[0065] スリーブ軸受に荷重をかけ、さらに孔内のピンがライナに対して振動している状態で、各ステーションで、0.0001インチ刻みで測定可能な機械式ダイヤルインジケータを使用して、自己潤滑ライナの摩耗を監視した。試験機は、都合の良い間隔で一時停止され、適当なタイミングで自己潤滑ライナの摩耗の測定値を読み取った。自己潤滑ライナの摩耗の測定値は、X−Yグラフ上にプロットされ、摩耗対振動サイクルをグラフ表示した(
図9)。比較例(自己潤滑熱硬化性アクリレートライナを有する軸受)は、27,000サイクルで平均0.006インチ摩耗した一方、少なくとも1つの硬化した熱硬化性アクリレートおよび少なくとも1つのフェノール樹脂を含む自己潤滑表面コーティング組成物を有する本発明の軸受は、0.006インチ摩耗するのに、平均65,000サイクルを要した。したがって、機械加工および後硬化後の本発明の実施例3の軸受は、機械加工および後硬化後の比較例2の軸受よりも、平均で、2.3倍長く持続した。
【0058】
[0066] 上述した本発明の実施形態は、単に実現可能な実施の例であり、単に本発明の原理の明確な理解を助けるために記載されたものであることを、強調しなくてはならない。本発明の精神および原理から実質的に逸脱しない範囲で、上述した本発明の実施形態に対し、多くの変形および改良を加えることができる。そのような改良および変形は、本開示および本発明の範囲内に含まれ、かつ、以下の請求の範囲により保護されることが意図される。