特許第6165146号(P6165146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許6165146凍結適応構造を備えた選択触媒還元のための還元剤供給ユニット
<>
  • 特許6165146-凍結適応構造を備えた選択触媒還元のための還元剤供給ユニット 図000002
  • 特許6165146-凍結適応構造を備えた選択触媒還元のための還元剤供給ユニット 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165146
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】凍結適応構造を備えた選択触媒還元のための還元剤供給ユニット
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170710BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F01N3/08 BZAB
   B01D53/90
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-530728(P2014-530728)
(86)(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公表番号】特表2014-530315(P2014-530315A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2012054586
(87)【国際公開番号】WO2013039870
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】13/231,314
(32)【優先日】2011年9月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ニコラース ヴァン ヴーレン
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0179960(US,A1)
【文献】 特開2008−101564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/90
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の選択触媒還元(SCR)の後処理のための還元剤供給ユニットであって、前記還元剤供給ユニットは、
SCR触媒変換装置の上流の排ガス流路と連通するように構成されかつ配置された流体注入器であって、前記流体注入器は、流体入口および流体出口を有しており、前記流体入口は、尿素溶液の供給源を受容するように構成されかつ配置されており、かつ前記流体出口は、排気流路と連通して、それによって前記排ガス流路中への尿素溶液の注入を制御するように構成されかつ配置されている、流体注入器と、
前記流体注入器の流体入口と流体連通している入口カップ構造であって、移動できるように取り付けられている、入口カップ構造と、
前記流体注入器に対して固定されたシールドであって、前記流体注入器および前記入口カップ構造の少なくとも一部を包囲している、シールドと、
前記入口カップ構造の一部とシールドとの間に介装されたばねと、
を備え、
前記尿素溶液が、前記流体注入器中で凍結して、前記流体注入器の流体入口付近まで膨張するとき、前記入口カップ構造が、前記ばねの付勢力に抗して前記流体入口の方向に移動して、凍結した尿素溶液を受け入れ、前記凍結した尿素溶液が一旦融解したならば、前記ばねにより前記入口カップ構造を最初の位置へ戻すように前記入口カップ構造は構成されかつ配置されており、
前記入口カップ構造が、カップ、および前記カップと一体の入口チューブを備え、前記カップは、前記ばねが係合する前記入口カップ構造の一部としての外面を有し、
前記シールドが前記カップの前記外面に面する内面を形成するフランジ部分を有し、前記内面に、前記ばねが係合しており、
前記入口チューブが、前記カップに隣接するガイド部分を備え、かつ前記シールドが、前記ガイド部分の一部を囲むガイド受容部分を備え、それによって前記入口カップ構造の動きを案内
前記カップは、前記流体注入器の一部を包囲し、
前記カップの内面と前記流体注入器の外面との間にOリングをさらに備えていて、前記ばねは、前記凍結した尿素溶液が一旦融解したならば、前記Oリングと前記カップとの間の接触面の摩擦抵抗に打ち勝って、前記入口カップ構造を最初の位置に戻すための十分な力を発揮するように構成されかつ配置されている、還元剤供給ユニット。
【請求項2】
前記ばねが、圧縮コイルばねである、請求項1記載のユニット。
【請求項3】
前記ばねが、円錐コイルばねである、請求項記載のユニット。
【請求項4】
前記ガイド受容部分は、開口端部を有する中空シリンダーの形態であり、前記ガイド部分は、前記中空シリンダー内で移動できるように受容されたチューブの形態である、請求項1からまでのいずれか1項記載のユニット。
【請求項5】
車両用の選択触媒還元(SCR)の後処理のための還元剤供給ユニットであって、前記還元剤供給ユニットは、
SCR触媒変換装置の上流の排ガス流路と連通するように構成されかつ配置された流体注入器であって、前記流体注入器は、流体入口および流体出口を有しており、前記流体入口は、尿素溶液の供給源を受容するように構成されかつ配置されており、かつ前記流体出口は、排気流路と連通して、それによって前記排ガス流路中への尿素溶液の注入を制御するように構成されかつ配置されている、流体注入器と、
前記流体注入器の流体入口と流体連通している入口カップ構造であって、移動できるように取り付けられている、入口カップ構造と、
前記流体注入器に対して固定されたシールドであって、前記流体注入器および前記入口カップ構造の少なくとも一部を包囲している、シールドと、
前記入口カップ構造を付勢するための手段と、
を備え、
前記尿素溶液が、前記流体注入器中で凍結して、前記流体注入器の流体入口付近まで膨張するとき、前記入口カップ構造が、前記付勢するための手段の付勢力に抗して前記流体入口の方向に移動して、凍結した尿素溶液を受け入れ、前記凍結した尿素溶液が一旦融解したならば、前記付勢するための手段により前記入口カップ構造を最初の位置へ戻すように前記入口カップ構造は構成されかつ配置されており、
前記入口カップ構造が、カップ、および前記カップと一体の入口チューブを備え、前記カップは、前記付勢するための手段が係合する前記入口カップ構造の一部としての外面を有し、前記シールドが前記カップの前記外面に面する内面を形成するフランジ部分を有し、前記内面に、前記付勢するための手段が係合しており、
前記入口チューブが、前記カップに隣接するガイド部分を備え、前記シールドが、前記ガイド部分の一部を囲むガイド受容部分を備え、それによって前記入口カップ構造の動きを案内
前記カップは、前記流体注入器の一部を包囲し、
前記カップの内面と前記流体注入器の外面との間にOリングをさらに備えていて、前記付勢するための手段は、前記凍結した尿素溶液が一旦融解したならば、前記Oリングと前記カップとの間の接触面の摩擦抵抗に打ち勝って、前記入口カップ構造を最初の位置に戻すための十分な力を発揮するように構成されかつ配置されている、還元剤供給ユニット。
【請求項6】
前記付勢するための手段が、前記入口カップ構造の一部と前記シールドとの間に介装された圧縮コイルばねである、請求項記載のユニット。
【請求項7】
前記ばねが、円錐コイルばねである、請求項記載のユニット。
【請求項8】
前記ガイド受容部分は、開口端部を有する中空シリンダーの形態であり、前記ガイド部分は、前記中空シリンダー内で移動できるように受容されたチューブの形態である、請求項からまでのいずれか1項記載のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤をエンジン排気システムに供給する還元剤供給ユニット(RDU)に関し、さらに具体的には、凍結の際の尿素氷の膨張を受け入れるRDUに関する。
【0002】
発明の背景
欧州および北米における新ラウンドの厳格な排ガス法の出現によって、新規な排気後処理システム、特に、希薄燃焼技術、例えば、希薄条件および超希薄条件下で作動する、圧縮点火(ディーゼル)エンジン、および層状給気火花点火エンジン(通常は、直接噴射による)の実現が推進されている。希薄燃焼エンジンは、高レベルの窒素酸化物(NOx)排出を示し、これは、希薄燃焼の特徴である酸素リッチな排気環境では処理することが困難である。これらの条件下でNOxを処理する、排気後処理技術は現在開発中である。これらの技術の1つは、窒素(N2)および水(H2O)を生じる、アンモニア(NH3)と排気窒素酸化物(NOx)との反応を促進する触媒を含む。この技術は、選択触媒還元(SCR)と呼ばれる。
【0003】
アンモニアは、自動車環境ではそれを純粋な形で取り扱うことは困難である。従って、これらのシステムでは、液体尿素水溶液、典型的には、32%濃度の尿素溶液(CO(NH22)を用いることは費用がかさむ。この溶液は、AUS−32と呼ばれ、またその商品名AdBlueとしても公知である。この尿素溶液は、熱い排気流に与えられ、加熱分解を受けた後に排気中のアンモニアに変換されるか、または熱分解によって、アンモニアおよびイソシアン酸(HNCO)に変換される。次いで、イソシアン酸は、排気中に存在する水による加水分解を受けて、アンモニアおよび二酸化炭素(CO2)に変換される。次いで、加熱分解および加水分解から生じるアンモニアは、前記のような窒素酸化物との触媒反応を受ける。
【0004】
AUS−32またはAdBlueの凝固点は、−11℃である。開発中の別の還元剤キャリアは、商業上はDenoxiumとして公知であり、−30℃という凝固点を有する。両方の液体の場合、凝固系は、寒冷気候で生じると予想される。これらの液体は水性であるので、固体状態(氷)への移行後に容積膨張が生じる。この膨張する氷は、注入パイプまたは流体供給パイプのような任意の閉じた容積に有意な力を及ぼし得る。従来のSCRシステムでは、流体は、このシステムおよびRDUからエンジンのシャットダウン時に排出されて、注入ユニット中の流体の局所的な凍結を回避する。しかし、ある程度の尿素溶液の氷がこのユニット中で形成され得る。例えば、図1を参照すると、RDUは、その全体が10で示されており、これは、内部キャリア14に溶接された流体注入器12を備える。入口カップ構造16は、シールド18に固定されている。これらの2つのアセンブリは、キャリア14およびシールド18のつば部分を覆うフランジ20の端部の折り畳み(かしめ)によって互いに圧着される。結果として、全体的なアセンブリは、圧着およびシールド・ツー・カップ(shield−to−cup)構造の固定の強度的制限内で、一緒に固定される。
【0005】
尿素溶液の氷がこのユニット内で生成される場合、尿素溶液の氷は、注入器12の入口の外側に向かって膨張する傾向がある。次いで、この氷は、入口カップ構造16上に力を及ぼす。反力が、注入器12のフィルターおよび調整チューブのような内部注入器構成要素に及ぼされる。この調整チューブが、この力によって動かされるか、そうでなければ損傷される場合、この注入器はもはや正確に設定された値で流体を流すことができず、結果的にシステムが誤作動することになる。他の内部損傷、例えば、注入器12の変形が生じる場合があり、これは、アーマチュアの固着による開口をもたらし、またシステムの誤作動を惹起する。
【0006】
従って、凍結の際にRDUが尿素溶液の氷の膨張に適応できるようにする必要性がある。
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、上記で言及される必要性を満たすことである。本発明の原理によれば、この目的は、車両用の選択触媒還元(SCR)の後処理のための還元剤供給ユニットを提供することによって達成される。還元剤供給ユニットは、SCR触媒変換装置の上流の排気ガス流路と連通するように構成されかつ配置された流体注入器を備える。この流体注入器は、流体入口と流体出口とを有する。この流体入口は、尿素溶液の供給源を受容するように構成されかつ配置されており、この流体出口は、排気流路と連通するように構成されかつ配置されており、それによってこの排ガス流路中への尿素溶液の注入を制御する。移動可能な入口カップ構造は、流体注入器の流体入口と流体連通している。シールドは、流体注入器に対して固定され、この流体注入器および入口カップ構造の少なくとも一部を包囲している。ばねは、入口カップ構造の一部とシールドとの間に介装されている。尿素溶液が流体注入器中で凍結して、注入器の流体入口付近まで膨張するとき、この入口カップ構造は、凍結した尿素溶液を注入器入口が受け入れるように、ばねの付勢力に抗して移動するように構成されかつ配置されており、このばねは、凍結した尿素溶液が一旦融解したならば、この入口カップ構造を最初の位置へ戻す。
【0008】
開示された実施形態の別の側面によれば、車両用の選択触媒還元(SCR)の後処理のための還元剤供給ユニット中での尿素溶液の凍結に適応する方法は、SCR触媒変換装置の上流の排気ガス流路と連通するように構成されかつ配置された流体注入器を、還元剤供給ユニットに備える。この流体注入器は、流体入口と流体出口とを有する。この流体入口は、尿素溶液の供給源を受容するように構成されかつ配置されており、この流体出口は、排気流路と連通するように構成されかつ配置されており、それによってこの排ガス流路中への尿素溶液の注入を制御する。このユニットはまた、この流体注入器の流体入口と流体連通している入口カップ構造を備える。尿素溶液が流体注入器中で凍結して、注入器の流体入口付近で膨張するとき、この入口カップ構造は、凍結した尿素溶液を注入器入口が受け入れるように、移動することを可能にされる。
【0009】
本発明の他の目的、特徴および特徴付け、ならびにこの構造の関連要素の操作方法および機能、部分の組み合わせおよび製造の経済性は、その全体が本明細書の一部を構成する添付の図面を参照して、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を考慮すればより明白になる。
【0010】
本発明は、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明から、添付の図面(ここでは同様の参照番号は、同様の部分を指す)と組み合わせて、さらに良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来のRDUの図面である。
図2】凍結受け入れ構造とともに示される、実施形態によって得られるRDUの図である。
【0012】
例示的な実施形態の詳細な説明
図2を参照すると、RDUが示されており、本発明の実施形態によれば、その全体が10’で示される。RDU10’は、その内容が本明細書中へ参照によって援用される、米国特許出願公開第2008/0236147(A1)号明細書に開示の種類のシステムにおいて使用することができる。
【0013】
RDU10’は、流体を計量しかつ、投与用途において車両の排気通路への流体の噴霧を達成する、ソレノイド流体注入器12を備える。従って、この流体注入器12は、SCR触媒変換装置の上流の排ガス流路と結合するように構成されかつ配置される。この流体注入器12は好ましくは、その内容が本明細書中へ参照によって援用される、米国特許第6,685,112号明細書に開示される種類のような、ガソリンの、電気的に操作される、ソレノイド燃料噴射器である。
【0014】
この流体注入器12は、内部キャリア14に溶接されている。入口カップ構造は、その全体が16’で示され、これは、カップ22と、このカップ22と一体になった入口チューブ23とを備える。このカップ構造16’は、注入器12の入口24と流体連通されており、移動できるように取り付けられている。この入口チューブ23は、注入器12の出口25から注入されるべき、注入器12へ供給される尿素溶液の供給源(図示せず)と接続されている。注入器シールド18’は、キャリア14およびシールド18’のつば部分を覆うフランジ20の端部の折り畳みによって注入器キャリア14と連結される。従って、シールド18’は、注入器12に対して固定される。
【0015】
上記の従来のRDU中で流体をパージする代わりとして、シャットダウン時に流体をRDU10’中に残したままにしてもよく、それによって、パージ操作の必要性が省かれる。尿素溶液の凍結の際のRDU10’に対する損傷を防止するために、この実施形態によれば、ばね26が、カップ22の外面27と注入器シールド18’の内面28との間に介装される。ばね26は好ましくは、圧縮円錐コイルばねである。このシールド18’は、カップ22と、注入器12の少なくとも一部とを包囲し、かつこれらの構成要素を、車両の排気の過度の熱から隔離する。シールド18’は、フランジ部分29を備え、これが、カップ22の外面27に面する内面28を提供する。この入口チューブ23は、一体のガイド部分30を、カップ22に隣接して配置された拡張されたチューブの形態で備える。このシールド18’は、開口端部を有する、中空のシリンダー状のガイド受容部分32を備える。このガイド受容部分32は、ガイド部分30の外周の一部を囲み、その結果、このガイド受容部分32は、以下にさらに詳細に説明されるように、シールド18’に対する入口カップ構造16’の垂直方向の動きを案内するものである。従って、図1のRDU10とは異なり、この実施形態のRDU10’は、入口カップ構造16’とシールド18’との間を固定するものではない。
【0016】
尿素溶液は凍結すると、カップ22に対して矢印Aの方向に力を及ぼすので、カップ22は、注入器入口24に向かって、かつばね26の付勢力に抗して動くことになり、ここでばね26は、漸次圧縮される。カップ22の動きは、シールド18’のガイド受容部分32中でスライドするガイド部分30によって案内される。カップ22の上向きの予想移動量は、注入器12の中の流体の容積の関数である。ばね26は、この最大変位を許容するようにサイズ決めされている。更に、この最大変位時のばね26の力は、注入器のOリング34とカップ22との摺接によってもたらされる任意の摩擦抵抗に打ち勝つのに十分な力を提供するようにサイズ決めされている。従って、カップ22は、流体が融解して、氷の力が消失するとき、ばね26によって最初の位置に戻される。
【0017】
このように、ばね26および移動可能な入口カップ構造16’が、RDUの注入器12中に流体の如何なる凍結をも受け入れることが理解できる。
【0018】
前述の好ましい実施形態は、本発明の構造的および機能的な原理を図示し、そして好ましい実施形態を使用する方法を例示する目的のために示し、かつ記載しており、このような原理から逸脱しない範囲で変更される。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲内に包含される全ての改変を包含する。
図1
図2