特許第6165152号(P6165152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165152
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20170710BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170710BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20170710BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20170710BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20170710BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B05D1/36 B
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 302T
   B32B27/40
   B32B27/30 A
   C09D133/14
   C09D175/04
【請求項の数】11
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2014-536625(P2014-536625)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2013067293
(87)【国際公開番号】WO2014045657
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-206449(P2012-206449)
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直之
(72)【発明者】
【氏名】山下 文男
(72)【発明者】
【氏名】石倉 稔
(72)【発明者】
【氏名】中藪 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小西 和司
(72)【発明者】
【氏名】森田 鋭昭
(72)【発明者】
【氏名】小畑 政示
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−125000(JP,A)
【文献】 特開2004−025046(JP,A)
【文献】 特開2010−058068(JP,A)
【文献】 特表2001−521956(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/018872(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/062022(WO,A1)
【文献】 特許第5976001(JP,B2)
【文献】 特許第5837054(JP,B2)
【文献】 特許第6073291(JP,B2)
【文献】 特許第5885828(JP,B2)
【文献】 特許第6073315(JP,B2)
【文献】 特許第6067006(JP,B2)
【文献】 特許第5892698(JP,B2)
【文献】 特許第5924813(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00〜B05D7/26
B32B1/00〜B32B43/00
C09D1/00〜C09D201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成し、
該未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成し、
該未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成し、
該未硬化の、第1着色塗膜、第2着色塗膜及び該未硬化のクリヤ塗膜を同時に硬化させる複層塗膜形成方法であって、
上記水性第1着色塗料(X)が
水性被膜形成性樹脂(A)、及び下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【化1】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を
表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【化2】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【化3】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)
を含有し、
上記クリヤ塗料(Z)が、
(K)水酸基価85〜215mgKOH/gである水酸基含有アクリル樹脂、
(L)ポリイソシアネート化合物 、ならびに、
(M)(M1)金属が、亜鉛、錫、ジルコニウム、ビスマス、鉛、コバルト、マンガン、チタン、アルミニウム及びモリブデンからなる群から選ばれる1種である金属化合物及び(M2)アミジン化合物からなる有機金属触媒
を含有する塗料であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
一般式(I)において、Rがイソプロピル基である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
一般式(III)において、Rがイソプロピル基である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(IV)
【化4】
〔式(IV)中、Rは前記と同じであり、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)
及び下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
【化5】
〔式(VI)中、R、R、R及びRは前記と同じである。〕
を反応させて得られる請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(V)
【化6】
〔式(V)中、Rは前記と同じであり、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び前記2級アルコール(b4)を反応させて得られる請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
水酸基含有アクリル樹脂(K)中の水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)全量のうち、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)の含有率が、50〜100質量%である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項8】
水酸基含有アクリル樹脂(K)の重量平均分子量が2000〜50000の範囲内である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項9】
金属化合物(M1)が、カルボン酸金属塩化合物である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項10】
水酸基含有アクリル樹脂(K)及びポリイソシアネート化合物(L)の総量に対して、有機金属触媒(M)が0.05〜5質量%の範囲内である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により複層塗膜を形成する工程を含む、塗装物品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年9月20日に出願された、日本国特許出願第2012−206449号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。本発明は、低温かつ短時間で硬化した場合においても、硬化性に優れ、耐水性、付着性及び仕上り外観に優れる複層塗膜を得ることができる複層塗膜形成方法及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の他、工業製品の塗装において、近年、省エネルギー及び環境負荷軽減の観点から、焼付け硬化工程の短縮及び工程削減に向けての開発が活発になされている。
【0003】
自動車車体の塗装における工程削減に向けての取り組みとしては、焼付け硬化工程の削減が挙げられる。すなわち、従来の工程では例えば、鋼板上に電着塗装を施し焼付け硬化せしめた後、中塗り塗料の塗装→焼付け硬化→ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化を順次行なう3コート2ベーク方式により複層塗膜を形成する方法が行なわれていたところ、中塗り塗料塗装後の焼付け硬化工程を省略して「中塗り塗料・ベースコート塗料・クリヤ塗料」の三層を同時に焼付ける塗装方式の開発が進められている。
【0004】
また、自動車部品の塗装における工程削減においても同様に、従来の工程では例えば、プラスチック基材上にプライマー塗料を塗装した後、焼付け硬化→ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化を順次行なう3コート2ベーク方式により複層塗膜を形成する方法が行なわれていたところ、プライマー塗料塗装後の焼付け硬化工程を省略して「プライマー塗料・ベースコート塗料・クリヤ塗料」の三層を同時に焼き付ける塗装方式の開発が進められている。
【0005】
一方、焼付け硬化工程の短縮においては、焼付け硬化工程の低温化及び短時間化の要求が高まっている。かかる低温短時間硬化の要求を満足させるための複層塗膜形成方法において、塗料組成物としては、コスト面も勘案すると、水酸基含有樹脂を、ポリイソシアネート化合物を架橋剤として硬化させる、水酸基/イソシアネート基架橋系塗料が有力と考えられ、これまでにも検討がなされている。
【0006】
しかしながら、従来技術では、低温短時間の硬化性の向上において、硬化時間の短縮が不十分であり、また、特に自動車塗装等において要求される高度の仕上り外観も満足させることは困難であった。
【0007】
特許文献1には、ピラゾール化合物でブロックされた3級イソシアネート基を1分子中に2個以上含有するピラゾールブロックポリイソシアネート化合物と、特定の水酸基価及び重量平均分子量を有する水酸基含有樹脂を必須成分として含有することを特徴とする塗料組成物及び該塗料組成物を用いた塗膜形成方法が開示されている。しかしながら、この塗料組成物を用いた塗膜形成方法は、短時間条件での硬化性が不十分であった。
【0008】
特許文献2には、ポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含有し、ポリオール(A1)が環構造を有することを主たる特徴とする塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物とを含む硬化性塗料組成物、及び、更に、該硬化性塗料組成物に、金属有機化合物及び酸性物質を含むことを特徴とする硬化性塗料組成物が開示されている。
【0009】
しかしながら、この塗料組成物は、該金属有機化合物及び酸性物質を含む態様において、低温短時間硬化性には優れるが、ポットライフが不十分であり、また、該塗料組成物を用いた塗膜形成方法により得られる複層塗膜の仕上り外観が不十分となる場合があった。
【0010】
また、複層塗膜において、クリヤ塗膜の下層塗膜である中塗り塗膜、ベースコート塗膜は水酸基含有樹脂と架橋剤としてメラミン樹脂を使用した塗料組成物が一般的に使用されるが、前記のように、中塗り塗料塗装後の焼付け硬化工程を省略した、低温短時間硬化の複層塗膜においては、低温短時間条件での硬化性が不十分となるため、得られる複層塗膜の硬度、耐チッピング性が不十分となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−225907号公報
【特許文献2】特開2002−97412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、低温かつ短時間での硬化性、耐水性、付着性及び仕上り外観に優れる複層塗膜を得ることができる複層塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、被塗物上に、順次、水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料を塗装する複層塗膜形成方法において、水性第1着色塗料として、(A)水性被膜形成性樹脂、及び(B)特定のブロックポリイソシアネート化合物を含有する塗料を使用し、クリヤ塗料として、(K)特定水酸基価範囲の水酸基含有アクリル樹脂及び(L)ポリイソシアネート化合物、ならびに(M)(M1)特定範囲の金属化合物及び(M2)アミジン化合物からなる有機金属触媒を含有する塗料を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法によれば上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下の項を提供する:
項1.被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成し、
該未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成し、
該未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成し、
該未硬化の、第1着色塗膜、第2着色塗膜及び該未硬化のクリヤ塗膜を同時に硬化させる複層塗膜形成方法であって、
上記水性第1着色塗料(X)が
水性被膜形成性樹脂(A)、及び下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0015】
【化1】
【0016】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を
表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0017】
【化2】
【0018】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0019】
【化3】
【0020】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)
を含有し、
上記クリヤ塗料(Z)が、
(K)水酸基価85〜215mgKOH/gである水酸基含有アクリル樹脂、
(L)ポリイソシアネート化合物 、ならびに、
(M)(M1)金属が、亜鉛、錫、ジルコニウム、ビスマス、鉛、コバルト、マンガン、チタン、アルミニウム及びモリブデンからなる群から選ばれる1種である金属化合物及び(M2)アミジン化合物からなる有機金属触媒
を含有する塗料であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【0021】
項2.一般式(I)において、Rがイソプロピル基である項1に記載の複層塗膜形成方法。
【0022】
項3.一般式(III)において、Rがイソプロピル基である項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【0023】
項4.ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(IV)
【0024】
【化4】
【0025】
〔式(IV)中、Rは前記と同じであり、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)
及び下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
【0026】
【化5】
【0027】
〔式(VI)中、R、R、R及びRは前記と同じである。〕
を反応させて得られる項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【0028】
項5.ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(V)
【0029】
【化6】
【0030】
〔式(V)中、Rは前記と同じであり、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び前記2級アルコール(b4)を反応させて得られる項1又は3に記載の複層塗膜形成方法。
【0031】
項6.ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)である項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0032】
項7.水酸基含有アクリル樹脂(K)中の水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)全量のうち、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)の含有率が、50〜100質量%である項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0033】
項8.水酸基含有アクリル樹脂(K)の重量平均分子量が2000〜50000の範囲内である項1〜7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0034】
項9.金属化合物(M1)が、カルボン酸金属塩化合物である項1〜8のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0035】
項10.水酸基含有アクリル樹脂(K)及びポリイソシアネート化合物(L)の総量に対して、有機金属触媒(M)が0.05〜5質量%の範囲内である項1〜9のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0036】
項11.項1〜10のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を含む物品。
【発明の効果】
【0037】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、低温かつ短時間での硬化性、耐水性、付着性及び仕上り外観に優れる複層塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の複層塗膜形成方法(以下、「本方法」ということがある。)について詳細に説明する。
【0039】
本方法は、被塗物に、順次、水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料を塗装する複層塗膜形成方法において、
水性第1着色塗料として、(A)水性被膜形成性樹脂及び(B)特定のブロックポリイソシアネート化合物を含有する塗料を使用し、
クリヤ塗料として、(K)特定水酸基価範囲の水酸基含有アクリル樹脂及び(L)ポリイソシアネート化合物、ならびに(M)(M1)特定範囲の金属化合物及び(M2)アミジン化合物からなる有機金属触媒を含有する塗料を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0040】
被塗物
本方法が適用される被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等を挙げることができる。またこれらにより形成された自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体や部品であってもよい。
【0041】
また、被塗物としては、上記金属基材や車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材、車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよいし、また、バンパー等プラスチック素材に脱脂処理、水洗処理などが施されていたりプライマー塗膜が形成されたものであってもよい。
【0042】
工程(1)
本方法においては、まず、水性第1着色塗料(X)が塗装される。
【0043】
水性第1着色塗料(X)
水性第1着色塗料(X)は、(A)水性皮膜形成性樹脂、及び(B)特定のブロックポリイソシアネート化合物を含有する塗料である。
【0044】
水性皮膜形成性樹脂(A)
水性皮膜形成性樹脂(A)としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の皮膜形成性樹脂を使用することができる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。水性皮膜形成性樹脂(A)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0045】
水性皮膜形成性樹脂(A)としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を使用することが好ましい。
【0046】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を、併用することが、塗膜の平滑性及び鮮映性の向上の観点から、より好ましい。併用する場合の割合としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)との合計量に基づいて、前者が10〜90質量%程度、特に20〜80質量%程度で、後者が90〜10質量%程度、特に80〜20質量%程度であるのが好ましい。
【0047】
また、水性皮膜形成性樹脂(A)は、水酸基を有する場合、水酸基価が1〜300mgKOH/gであるのが好ましく、2〜250mgKOH/gであるのがより好ましく、5〜180mgKOH/gであるのが更に好ましい。また、該樹脂(A)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価が1〜200mgKOH/gであるのが好ましく、2〜150mgKOH/gであるのがより好ましく、5〜80mgKOH/gであるのが更に好ましい。
【0048】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー、及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0049】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、形成される複層塗膜の仕上がり外観が向上する観点から、水分散性である水酸基含有アクリル樹脂(以下「水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)」と称する)を使用することが好ましい。
【0050】
すなわち水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)を単独使用するか、又は水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)と水溶性水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)とを併用することが好ましい。
【0051】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、
例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。但し、本発明においては、後述する(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして規定されるべきものであり、水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0053】
また、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有アクリル樹脂(A1)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマーの具体例を、(i)〜(xix)に列挙する。これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルコール又は炭素数3〜12のシクロアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xi)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xii)リン酸基含有重合性不飽和モノマー:2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(xiii)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xiv)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:メチレンビスアクリルアミド、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xv)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xvi)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii)光安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0054】
なかでも、得られる塗膜の付着性及び仕上り外観等の観点から水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することが好ましい。かかる場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1)を製造する際のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.05〜15質量%程度が好ましく、0.2〜8質量%程度がより好ましく、0.5〜6質量%程度がさらに好ましい。
【0055】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜50質量%程度が好ましく、2〜40質量%程度がより好ましく、3〜30質量%程度がさらに好ましい。
【0056】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
【0057】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性、付着性及び仕上り外観等の観点から、酸価が、1〜50mgKOH/g程度であることが好ましく、3〜40mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜35mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
【0058】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、原料モノマーの一部として(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートを用いるものが好ましい。上記(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、50〜99質量%程度が好ましく、55〜97質量%程度がより好ましく、60〜95質量%程度がさらに好ましい。
【0059】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の耐水性、付着性及び仕上り外観等の観点から、(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートのなかでも炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーを用いることが好ましい。本発明において、「炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマー」とは、アルキル部分の炭素数が4〜8であるアルキル基含有重合性不飽和モノマーを意味する。該炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーを原料モノマーに含む水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、例えば、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー及び酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの1種として、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより、製造することができる。
【0060】
上記炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、5〜70質量%程度が好ましく、15〜60質量%程度がより好ましく、30〜50質量%程度がさらに好ましい。上記炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、これらの範囲に限られず、例えば、モノマー成分の合計量を基準として、5〜30質量%程度、10〜25質量%程度、15〜20質量%程度等の範囲内で適宜設定してもよい。
【0061】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、原料モノマーの一部として(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーを含むものが好ましい。上記(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜10質量%程度が好ましく、2〜8質量%程度がより好ましく、3〜7質量%程度がさらに好ましい。
【0062】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、その一部として、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂を使用してもよい。
【0063】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量は、得られる塗膜の外観、耐水性等の観点から、2,000〜5,000,000、好ましくは100,000〜2,000,000の範囲内であることが好適である。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0064】
前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)としては、樹脂粒子の構造を制御して耐水性、付着性及び仕上り外観に優れた塗膜を得る観点から、コア・シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(以下「コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)」と称する)であることが好ましい。ここで、「シェル」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型複層構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型複層構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよく、あるいはコア部の一部にシェル部の構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、コア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
【0065】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)としては、形成される塗膜の発色性、漆黒性、平滑性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と、
水酸基含有重合性不飽和モノマー、酸基含有重合性不飽和モノマー、炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂であることが好ましい。
【0066】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いることができる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、コア部(I)を構成するモノマー合計質量を基準として、0.1〜30質量%程度であるのが好ましく、0.5〜10質量%程度であるのがより好ましく、1〜7質量%程度であるのが更に好ましい。
【0068】
また、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の仕上がり外観の観点から、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を使用することが好ましい。このアミド基含有モノマーを使用する場合の使用量としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜25質量%程度であるのが好ましく、0.5〜8質量%程度であるのがより好ましく、1〜4質量%程度であるのが更に好ましい。
【0069】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いることができる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
【0070】
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー、前記モノマー(i)〜(xii)、(xv)〜(xix)、ならびに(xiii)に記載の含窒素重合性不飽和モノマーのうちメチレンビス(メタ)アクリルアミド及びエチレンビス(メタ)アクリルアミドを除いたもの等を挙げることができる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部(I)を構成するモノマー合計質量を基準として、70〜99.9質量%程度であるのが好ましく、90〜99.5質量%程度であるのがより好ましく、93〜99質量%程度であるのが更に好ましい。
【0072】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いることができる水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られる水分散性アクリル樹脂に、硬化剤と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該水分散性アクリル樹脂の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば前記した水酸基含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いるのが好ましい。
【0073】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜40質量%程度であるのが好ましく、4〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
【0074】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いることができる酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記モノマー(x)〜(xii)等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
上記酸基含有重合性不飽和モノマーは、特にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことが好ましい。該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。その他の重合性不飽和モノマーとして、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)の水性媒体中における安定性を確保できる。
【0076】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合の使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜30質量%程度であるのが好ましく、5〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
【0077】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いることができる炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーは、炭素数が4〜8の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーである。該モノマーとしては、例えば、
n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、などの直鎖状、分岐状の飽和アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;
シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−トなどの環状の飽和アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの環状の不飽和アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;を挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
また、得られる塗膜の発色性、漆黒性及び平滑性を向上させる観点から、上記炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーとして、直鎖状、分岐状の飽和アルキル基を有する重合性不飽和モノマー及び/又は環状の不飽和アルキル基を有する重合性不飽和モノマーを用いるのが好ましい。特に、炭素数4の飽和アルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、さらに特にn−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレートを用いるのがより好ましい。
【0079】
上記炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、30〜80質量%程度であるのが好ましく、40〜70質量%程度であるのがより好ましく、45〜65質量%程度であるのが更に好ましい。
【0080】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いることができるその他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー、酸基含有重合性不飽和モノマー及び炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーである。当該モノマーとしては、前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)で列挙したモノマーから適宜選択して使用することが出来る。例えば特に、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、などの炭素数1〜3または炭素数9以上のアルキル(メタ)アクリレート;
t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−トなどの炭素数9以上のシクロアルキル基を有する重合性不飽和モノマー;
前記モノマー(ii)、(iii)、(vi)〜(ix)、(xiii)〜(xix);
などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーの使用割合は、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、0〜68質量%程度であるのが好ましく、0〜51質量%程度であるのがより好ましく、0〜41質量%程度であるのが更に好ましい。
【0082】
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の外観向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
【0083】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)における共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、塗膜の仕上がり外観向上の観点から、固形分質量比で10/90〜90/10程度であるのが好ましく、50/50〜85/15程度であるのがより好ましく、65/35〜80/20程度であるのが更に好ましい。
【0084】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)は、得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、水酸基価が1〜70mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜30mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0085】
また、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)は、塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、酸価が1〜50mgKOH/g程度であるのが好ましく、3〜40mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜30mgKOH/g程度あるのが更に好ましい。
【0086】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー、酸基含有重合性不飽和モノマー、炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマー、及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得られる。
【0087】
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
【0088】
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤;を使用することもできる。
【0089】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、1〜5質量%程度が更に好ましい。
【0090】
前記重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0091】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0092】
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0093】
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0094】
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、水酸基含有重合性不飽和モノマー、酸基含有重合性不飽和モノマー、炭素数4〜8のアルキル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
【0095】
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0096】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0097】
本発明の好ましい実施形態においては、上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1−1)とコア・シェル型以外の水酸基含有アクリル樹脂とを組合わせてもちいてもよい。
【0098】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、ポリエステル及び/またはポリウレタン樹脂で変性された水酸基含有アクリル樹脂(A1)を用いることもできる。
【0099】
水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種として、水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1)の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)及び前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、5〜90質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましく、15〜70質量部であるのが更に好ましい。
【0100】
また、水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種として水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合であって、かつ後述する硬化剤(C)を含む場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1)の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100質量部を基準として、2〜85質量部が好ましく、10〜75質量部がより好ましく、15〜65質量部であるのが更に好ましい。
【0101】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)
水性第1着色塗料(X)において、水性皮膜形成性樹脂(A)として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を使用することによって、得られる塗膜の平滑性を向上させることができる。
【0102】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0103】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0104】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0105】
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、1種単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0106】
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0107】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0108】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸などの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0109】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0110】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0111】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、先ず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。ここで、酸無水物としては、前述した脂肪族多塩基酸の無水物、脂環属多塩基酸の無水物芳香族多塩基酸の無水物等を挙げることができ、好ましい具体例としては、無水トリメリット酸等が挙げられる。また、先ず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0112】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0113】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0114】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などが挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0115】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネートなどの有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0116】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、水酸基価が10〜300mgKOH/gであるのが好ましく、30〜250mgKOH/gであるのがより好ましく、50〜180mgKOH/gであるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が1〜200mgKOH/gであるのが好ましく、15〜100mgKOH/gであるのがより好ましく、20〜60mgKOH/gであるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量は、500〜50,000であるのが好ましく、1,000〜30,000であるのがより好ましく、1,200〜10,000であるのが更に好ましい。
【0117】
また、水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を含有する場合、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)及び前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜95質量部が好ましく、2〜70質量部がより好ましく、3〜50質量部であるのが更に好ましい。
【0118】
また、水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種として水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を含有する場合であって、かつ後述する硬化剤(C)を含む場合、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100質量部を基準として、1〜95質量部が好ましく、2〜70質量部がより好ましく、3〜50質量部であるのが更に好ましい。
【0119】
ポリウレタン樹脂
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族および/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも一種以上のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメタノールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径1nm〜3000nm程度の自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。また、上記ポリウレタン樹脂の市販品としては、例えば、「ユーコートUX−310」、「ユーコートUX−5000」、「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業社製)等を挙げることができる。
【0120】
また、水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種として、ポリウレタン樹脂を含有する場合、該ポリウレタン樹脂の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)及び前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜55質量部が好ましく、2〜50質量部がより好ましく、3〜45質量部であるのが更に好ましい。
【0121】
また、水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種としてポリウレタン樹脂を含有する場合であって、かつ後述する硬化剤(C)を含む場合、該ポリウレタン樹脂の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100質量部を基準として、1〜50質量部が好ましく、2〜45質量部がより好ましく、3〜40質量部であるのが更に好ましい。
【0122】
ポリオレフィン樹脂
本方法において、特に被塗物がプラスチック基材である場合、得られる塗膜の付着性等の観点からポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。なかでも水性塗料への適用性の観点から、上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性したポリオレフィン(i)を水性媒体中に分散してなる変性ポリオレフィン樹脂水分散体を使用することが好ましい。
【0123】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数が2〜10、特に2〜4のオレフィン類から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合せしめることにより得られるポリオレフィンを、さらに、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの炭素数が3〜10、特に4〜8の不飽和カルボン酸(好ましくは不飽和モノ−もしくはジ−カルボン酸)又はこれらの不飽和カルボン酸の無水物を用いて、それ自体既知の方法に従ってグラフト重合することにより得ることができ、特に、マレイン酸又はその酸無水物によって変性されたものが好適である。該不飽和カルボン酸又はその酸無水物によるグラフト量は、厳密に制限されるものではなく、形成塗膜に望まれる物性などに応じて変えることができるが、ポリオレフィンの固形分質量に基づいて、一般に1〜20質量%、好ましくは1.5〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%の範囲内が適当である。
【0124】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、必要に応じて、さらにアクリル変性されていてもよい。該アクリル変性に使用し得る重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマー;さらにスチレンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0125】
上記アクリル変性の方法としては、例えば、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンに、該変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなどをまず反応させて重合性不飽和基を導入し、次いで少なくとも1種の他のモノマーを、重合性不飽和基が導入された不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンと共重合させるなどの方法が挙げられる。アクリル変性する場合の上記重合性不飽和モノマーの使用量は、他成分との相溶性や形成塗膜の付着性などの観点から、得られる変性ポリオレフィン(i)の固形分質量に基いて、30質量%以下、特に0.1〜20質量%、さらに特に0.15〜15質量%の範囲内が望ましい。
【0126】
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、形成塗膜の耐水性、仕上がり性、耐ガソホール性などの観点から、必要に応じて、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性されていてもよい。ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物におけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。
【0127】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物は、通常400〜3,000、好ましくは500〜2,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。該数平均分子量が400より小さいと、親水基としての効果を十分発揮することができず、また、塗膜性能(特に耐水性)に悪影響を及ぼす可能性があり、他方、3,000より大きいと、室温において固形化し溶解性が悪くなり、取り扱いにくくなる。
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、必要に応じて、さらに塩素化されていてもよい。ポリオレフィンの塩素化は、例えば、ポリオレフィン又はその変性物の有機溶剤溶液又は分散液に塩素ガスを吹き込むことによって行うことができ、反応温度は50〜120℃の範囲内とすることができる。ポリオレフィンの塩素化物(固形分)中の塩素含有率は、ポリオレフィンの塩素化物に望まれる物性などに応じて変えることができるが、形成塗膜の付着性などの観点から、ポリオレフィンの塩素化物の質量に基いて、一般に35質量%以下、特に10〜30質量%、さらに特に12〜25質量%の範囲内とすることが望ましい。
【0128】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)に使用されるポリオレフィンは、特に、プロピレンを重合単位として含有するものが好適であり、該不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)におけるプロピレンの質量分率は、他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の観点から、通常0.5〜0.99、特に0.6〜0.97、さらに特に0.7〜0.95の範囲内にあることが好適である。
【0129】
上記の如くして得られる不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、
一般に30,000〜180,000、好ましくは50,000〜150,000、さらに好ましくは70,000〜120,000の範囲内の質量平均分子量(Mw)を有することができる。該変性ポリオレフィンの質量平均分子量がこれらの範囲から逸脱すると、他成分との相溶性、形成塗膜の基材や上塗り塗膜層との層間付着性などが低下するので好ましくない。上記変性ポリオレフィン(i)の質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した質量平均分子量をポリスチレンの質量平均分子量を基準にして換算した値であり、「HLC/GPC150C」(Water社製、商品名、60cm×1)により、カラム温度135℃、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o−ジクロロベンゼン3.4mlに対し変性ポリオレフィン5mgの溶液濃度となるように140℃で1〜3時間溶解して調製する。なお、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「GMHHR−H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を挙げることができる。
【0130】
前記変性ポリオレフィンの水分散体は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を水性媒体中、例えば、脱イオン水中に分散することによって得ることができ、その際、必要に応じて、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)中のカルボキシル基の一部もしくは全部をアミン化合物で中和するか及び/又は乳化剤を用いて水分散することができる。上記変性ポリオレフィン(i)がポリオキシアルキレン鎖を有する場合には、該アミン化合物や乳化剤を使用せず又はそれらの少量の使用のみで変性ポリオレフィン(i)を水性媒体中に分散することが可能である。
【0131】
上記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミンなどが挙げられる。
【0132】
上記アミン化合物を使用する場合のその使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜1.0モル当量の範囲内とすることが望ましい。
【0133】
上記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩等のアニオン系乳化剤などが挙げられ、さらに、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基などのポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基を有する反応性アニオン性乳化剤なども使用することができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0134】
上記乳化剤の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の固形分100質量部に対して、通常30質量部以下、特に0.5〜25質量部の範囲内とすることが望ましい。
【0135】
水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種として、ポリオレフィン樹脂を含有する場合、該ポリオレフィン樹脂の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)及び前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、15〜65質量部であるのが好ましく、20〜60質量部であるのがより好ましく、25〜55質量部であるのが更に好ましい。
【0136】
また、水性第1着色塗料(X)が、水性皮膜形成性樹脂(A)の少なくとも1種としてポリオレフィン樹脂を含有する場合であって、かつ後述する硬化剤(C)を含む場合、該ポリオレフィン樹脂の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100質量部を基準として、15〜60質量部であるのが好ましく、20〜55質量部であるのがより好ましく、25〜50質量部であるのが更に好ましい。
【0137】
前記水性被膜形成性樹脂(A)の一部として前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)及びポリオレフィン樹脂を使用する場合、ポリオレフィン樹脂と前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)との使用比が、ポリオレフィン樹脂/水酸基含有アクリル樹脂(A1)の固形分質量比で、一般に5/95〜80/20、特に10/90〜75/25、さらに特に15/85〜75/25の範囲内にあることが好適である。この範囲を外れると、形成塗膜の素材への付着性、耐水性、耐ガソホール性等が低下するので好ましくない。
【0138】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)
本方法で用いられるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0139】
【化7】
【0140】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0141】
【化8】
【0142】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0143】
【化9】
【0144】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有することを特徴とするブロックポリイソシアネート化合物である。
【0145】
上記式(I)〜(III)において、R、R、R、R及びRで示される炭素数1〜12の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル、ベンジル等のアリール基などが挙げられる。
【0146】
の好ましい例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ベンジルが挙げられる。中でも、メチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、エチル、イソプロピルが特に好ましい。
【0147】
、R及びRは、それぞれ、メチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチルである。
【0148】
としては、−C2p−(pは、1〜12の整数を示す。)で示される直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキレン基が例示され、特に好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン)である。
【0149】
の好ましい例としては、メチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル、イソプロピルが挙げられる。
【0150】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基に、活性メチレン化合物(b2)を反応させて、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)を得た後、得られたブロックポリイソシアネート化合物(b3)と2級アルコール(b4)とを反応させることによって、得ることができる。
【0151】
ポリイソシアネート化合物(b1)
ポリイソシアネート化合物(b1)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0152】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシア
ナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0153】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0154】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0155】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0156】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができ、好ましい例としては、前記ポリイソシアネートの環化重合体(例えば、イソシアヌレート)等を挙げることができる。
【0157】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、得られるブロックポリイソシアネート組成物の加熱時の黄変が発生しにくいことから、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。なかでも形成される塗膜の柔軟性向上の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がさらに好ましい。
【0158】
また、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
【0159】
また、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
【0160】
上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、数平均分子量が300〜20,000の範囲内であることが好ましく、400〜8,000の範囲内であることがより好ましく、500〜2,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0161】
また、上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子中の平均イソシアネート官能基数が2〜100の範囲内であることが好ましい。下限としては、得られるブロックポリイソシアネート組成物の反応性を高める観点から3がより好ましい。上限としては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造時にゲル化を防ぐ観点から20がより好ましい。
【0162】
活性メチレン化合物(b2)
上記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基をブロック化する活性メチレン化合物(b2)としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsec−ブチル、マロン酸エチルsec−ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル及びアセト酢酸ベンジル等のアセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル及びイソブチリル酢酸ベンジル等のイソブチリル酢酸エステル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0163】
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり性の観点から、活性メチレン化合物(b2)が、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、マロン酸ジイソプロピル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び貯蔵安定性ならびに該ブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり性の観点から、マロン酸ジイソプロピルであることがさらに好ましい。
【0164】
活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、必要に応じて反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、例えば金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が良い。これらのうち、オニウム塩としてはアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩が好適である。該反応触媒の使用量は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)及び活性メチレン化合物(b2)の合計固形分質量を基準として、10〜10,000ppmの範囲内であることが好ましく、20〜5,000ppmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0165】
また、上記活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、0〜150℃で行うことができ、溶媒を用いても良い。この場合、溶媒としては非プロトン性溶剤が好ましく、特に、エステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等が好ましい。反応が目的どおり進行したならば酸成分を添加することで、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
【0166】
活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応において、活性メチレン化合物(b2)の使用量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルに対して0.1〜3モル、好ましくは0.2〜2モル用いることが好適である。また、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基と反応しなかった活性メチレン化合物は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
【0167】
また上記ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基を、活性水素含有化合物と反応させてもよい。ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と活性水素含有化合物とを反応させることにより、例えば、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性の向上、ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の調整及び形成される塗膜の柔軟性向上等を図ることができる。
【0168】
上記活性水素含有化合物としては、例えば、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0169】
上記水酸基含有化合物としては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
【0170】
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の高粘度化を抑制する観点から、上記水酸基含有化合物は、1価のアルコールであることが好ましい。該1価のアルコールとしては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0171】
また、前記アミノ基含有化合物としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリオキシプロピレン−α,ω−ジアミン(市販品としては、例えば、ハンツマン社製の「ジェファーミンD−400」等が挙げられる)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0172】
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の高粘度化を抑制する観点から、上記アミノ基含有化合物は、1価のアミンであることが好ましい。該1価のアミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0173】
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記活性水素含有化合物を反応させる場合、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに形成される複層塗膜の仕上がり性の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)と活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が、0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、水性塗料組成物の硬化性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性ならびに形成される複層塗膜の仕上がり性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
【0174】
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性ならびに形成される複層塗膜の仕上がり性の観点から、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)であることが好ましい。
【0175】
上記親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)は、例えば、前記活性水素含有化合物として、親水基を有する活性水素含有化合物を使用することによって、得ることができる。
【0176】
親水基を有する活性水素含有化合物としては、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、カチオン性の親水基を有する活性水素含有化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基を活性メチレン化合物(b2)によってブロック化する反応が阻害されにくいため、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物を使用することが好ましい。
【0177】
上記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物が好ましい。
【0178】
上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、得られるブロックポリイソシアネート化合物の水分散後の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、3個以上、好ましくは5〜100個、より好ましくは8〜45個のオキシエチレン基が連続したポリオキシエチレン基を有することが好適である。
【0179】
また、上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、連続したオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。該オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、50〜100モル%の範囲内であることが好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0180】
また、前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、数平均分子量が200〜2,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量の下限としては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、300がより好ましく、400がさらに好ましい。上限としては、該ブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の耐水性の観点から、1,500がより好ましく、1,200がさらに好ましい。
【0181】
前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)などのω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
【0182】
また、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。また、前記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
【0183】
前記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物、スルホン酸基を有する活性水素含有化合物、リン酸基を有する活性水素含有化合物及びこれらの中和塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。
【0184】
上記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中の酸基の一部または全部は、前記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基を、前記の活性メチレン化合物(b2)によってブロック化する反応が阻害されにくくなるため、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。
【0185】
上記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中の酸基の中和は、該アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物と上記ポリイソシアネート化合物(b1)との反応前に行ってもよく、反応後に行ってもよい。
【0186】
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;金属アルコキシド;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性化合物の使用量としては、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中のアニオン性基に対して通常0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の範囲内とすることができる。
【0187】
前記カルボキシル基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸及びクエン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸及び2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシカルボン酸、これらジヒドロキシカルボン酸のラクトン開環付加物、グリシン、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニン等を挙げることができる。
【0188】
前記スルホン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2−アミノ−1−エタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0189】
前記リン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート、ヒドロキシアルキルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸等を挙げることができる。
【0190】
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記親水基を有する活性水素含有化合物を反応させる場合、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに該水性塗料組成物によって形成される塗膜の付着性、仕上がり性及び耐水性の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)と親水基を有する活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、得られる水性塗料組成物の硬化性及び該水性塗料組成物によって形成される塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性ならびに該水性塗料組成物
によって形成される塗膜の付着性、仕上がり性及び耐水性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
【0191】
また、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、界面活性剤と予め混合することにより水分散性を付与することもできる。この場合、塗料の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0192】
ブロックポリイソシアネート化合物(b3)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、前記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)及び活性メチレン化合物(b2)を反応させることにより得られる。該ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部又は全部が、活性メチレン化合物(b2)によってブロックされたブロックポリイソシアネート化合物である。
【0193】
なかでも、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)が、下記一般式(IV)
【0194】
【化10】
【0195】
〔式(IV)中、Rは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び下記一般式(V)
【0196】
【化11】
【0197】
〔式(V)中、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)の少なくとも一方であることが好ましい。
【0198】
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)は、前記一般式(IV)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0199】
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(b2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、Rが、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性、ならびに該水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0200】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と、活性メチレン化合物(b2)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得ることができる。
【0201】
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピルがより好ましく、マロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
【0202】
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)は、前記一般式(V)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0203】
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(b2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、R及びRが、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性、該水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0204】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と、活性メチレン化合物(b2)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステル又は炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させることによって得ることができる。なかでも、活性メチレン化合物(b2)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルを用いて反応させて得ることが好ましい。
【0205】
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
【0206】
また、前記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
【0207】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)、活性メチレン化合物(b2)及び前記活性水素含有化合物を反応させることによって得られる化合物であってもよい。具体的には、例えば、上記活性水素含有化合物として、前記ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を使用することにより、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部が活性メチレン化合物(b2)によってブロックされ、他のイソシアネート基の一部又は全部がポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物と反応したブロックポリイソシアネート化合物とすることができる。
【0208】
本方法においてブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)と、下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
【0209】
【化12】
【0210】
〔式(VI)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
とを反応させることによって、得ることができる。
【0211】
2級アルコール(b4)
2級アルコール(b4)は、前記一般式(VI)で示される化合物である。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)と上記2級アルコール(b4)との反応性を高める観点から、Rはメチル基であることが好ましい。また、R、R及びRは、それぞれ炭素数が多いと、得られるブロックポリイソシアネート組成物の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、R及びRはメチル基であることが好ましい。
【0212】
上記2級アルコール(b4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び上記2級アルコール(b4)の反応後に、未反応の2級アルコール(b4)の一部又は全部を蒸留除去する際に、該2級アルコール(b4)の除去が比較的容易であることから、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールがより好ましい。
【0213】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、具体的には、例えば、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の説明において記載した下記一般式(IV)
【0214】
【化13】
【0215】
〔式(IV)中、Rは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)と、上記2級アルコール(b4)とを反応させることによって得ることができる。
【0216】
この場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のブロックイソシアネート基におけるRの少なくとも一方が、下記一般式(VII)
【0217】
【化14】
【0218】
〔式(VII)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
【0219】
また、この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0220】
【化15】
【0221】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
又は下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0222】
【化16】
【0223】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
を有する。
【0224】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のブロックイソシアネート基におけるRの少なくとも一方を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のRの少なくとも一方に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を得る方法が好ましい。
【0225】
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎると親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の分解劣化が激しくなり、硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
【0226】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の説明において記載した下記一般式(V)
【0227】
【化17】
【0228】
〔式(V)中、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)と、前記2級アルコール(b4)とを反応させることによって得ることができる。
【0229】
この場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のブロックイソシアネート基におけるRは、下記一般式(VII)
【0230】
【化18】
【0231】
〔式(VII)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
【0232】
この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0233】
【化19】
【0234】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
を有する。
【0235】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のブロックイソシアネート基におけるRを、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のRに由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を得る方法が好ましい。
【0236】
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎるとブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の分解劣化が激しくなり硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
【0237】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造における、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の配合割合は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性および製造効率の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(b4)が5〜500質量部の範囲内であることが好ましく、10〜200質量部の範囲内であることがさらに好ましい。5質量部未満では、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の反応速度が遅すぎる場合がある。また、500質量部を超えると生成するブロックポリイソシアネート化合物(B)の濃度が低くなりすぎ製造効率が低下する場合がある。
【0238】
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の反応においては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の分子量を調整するために、該ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)に、ポリオール化合物を加えてから前記除去操作を行ってもよい。
【0239】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)の数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性や形成される塗膜の仕上がり性、付着性及び耐水性等の観点から、600〜30,000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量の上限は、他の塗料成分との相溶性ならびに形成される塗膜の仕上がり性の観点から、10,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。また、下限は、形成される塗膜の付着性、耐水性の観点から、900がより好ましく、1,000がさらに好ましい。
【0240】
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、界面活性剤と予め混合してもよい。この場合、該ブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0241】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が親水基を有する場合には、特に水中での貯蔵安定性に優れる理由としては、水中で比較的安定に存在し、さらに、分岐構造を有する炭化水素基を有するためにブロックイソシアネート基が低極性化し加水分解しにくくなるためと推察される。
【0242】
水性第1着色塗料(X)では、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)の含有割合が、形成される塗膜の仕上がり性、付着性及び耐水性等の観点から、前記成分(A)、及び成分(B)の合計固形分に基づいて5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0243】
水性第1着色塗料(X)には、さらに前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)を適宜含有することができる。
【0244】
水性第1着色塗料(X)が、上記硬化剤(C)を含む場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)前記特定のブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100質量部を基準として、5〜45質量部であるのが好ましく、10〜35質量部であることがさらに好ましい
ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)
ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)(以下、「硬化剤(C)」と略記することがある)は、水性皮膜形成性樹脂(A)中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基と反応して、水性第1着色塗料(X)を硬化し得る化合物である。上記硬化剤(C)としては、公知の硬化剤が使用でき、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物などが挙げられる。なかでも、得られる塗膜の耐水性の観点から、水酸基と反応し得るアミノ樹脂及び前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、アミノ樹脂が更に好ましい。
【0245】
前記硬化剤(C)は、1種単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0246】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
【0247】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0248】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。また、イミノ基含有メラミン樹脂が好ましい。
【0249】
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
【0250】
メラミン樹脂としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル250」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0251】
また、前記硬化剤として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;これらのスルホン酸とアミン化合物との塩;等を触媒として使用することができる。
【0252】
前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物であって、前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物である。
【0253】
1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)などの3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体(ビウレット、イソシアヌレートなど);これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーなどが挙げられる。
【0254】
また、前記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0255】
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、前記(B)成分以外の活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0256】
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸なども使用できる。特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロックポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
【0257】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を挙げることができる。
【0258】
水性第1着色塗料(X)が硬化剤(C)を含有する場合、該硬化剤(C)の配合割合は、塗膜の耐水性、付着性及び仕上り外観の向上の観点から、水性皮膜形成性樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及び該硬化剤(C)の合計固形分100質量部を基準として、1〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることが更に好ましい。以下、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(C)をあわせて「硬化剤成分」と称することがある。
【0259】
水性第1着色塗料(X)は、通常、着色剤として、顔料(D)を含有することができる。顔料(D)としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料などを挙げることができ、顔料(D)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0260】
水性第1着色塗料(X)が、顔料(D)を含有する場合、顔料(D)の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の、水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計100質量部を基準として、一般に1〜200質量部、好ましくは10〜150質量部、さらに好ましくは20〜120質量部の範囲内であることができる。
【0261】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0262】
水性第1着色塗料(X)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計100質量部を基準として、通常1〜120質量部、好ましくは3〜100質量部、さらに好ましくは5〜90質量部の範囲内であることができる。
【0263】
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
【0264】
なかでも、上記体質顔料として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れ、水性第2着色塗料(Y)(水性ベースコート塗料)として光輝性顔料を含有する塗料を使用する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラの少ない優れた外観を有する複層塗膜を得られるため、好適である。
【0265】
なお、本明細書において、硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム20個の最大径を平均した値である。
【0266】
水性第1着色塗料(X)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計100質量部を基準として、通常1〜120質量部、好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは10〜80質量部の範囲内であることができる。
【0267】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などを挙げることができ。これらの光輝性顔料は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
【0268】
水性第1着色塗料(X)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
【0269】
被塗物がプラスチック基材の場合には、水性第1着色塗料(X)は導電性顔料を含有することができる。導電性顔料としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状のいずれの形状のものでも使用することができる。具体的には、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイルなどの導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウムなどの金属粉が挙げられ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫などを被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫やアンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。これらのうち特に導電性カーボンを好適に使用することができる。
【0270】
上記導電性顔料の含有量は、導電性付与及び形成塗膜の付着性、耐水性などの観点から、水性第1着色塗料(X)中の水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計100質量部を基準として、通常1〜300質量部、特に2〜250質量部、さらに特に3〜180質量部の範囲内であることが望ましい。特に、導電性カーボンを使用する場合には、その使用量は水性第1着色塗料(X)中の水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計100質量部を基準として、通常1〜30質量部、特に2〜25質量部、さらに特に3〜25質量部の範囲内であることが望ましい。
【0271】
オリゴマー(E)
水性第1着色塗料(X)には、複層塗膜の塗面平滑性を向上させる観点から、水トレランス10以上、好ましくは20以上、さらに好ましくは50以上であり、かつ、数平均分子量200〜1500、好ましくは300〜1000、さらに好ましくは400〜1000のオリゴマー化合物(前記水性皮膜形成性樹脂(A)を除く)をさらに含有することができる。
【0272】
具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、これらのエーテル化物等をあげることができる。
【0273】
なかでも、水酸基含有オリゴマー、特にポリオキシプロピレングリセリルエーテルを用いることが好ましい。
【0274】
市販品としては、GP400、GP600、GP1000(以上、三洋化成社製)等をあげることができる。
【0275】
本明細書において、オリゴマーについての水トレランスは以下の測定により得られる値である。
【0276】
オリゴマーの水トレランスの測定は、以下の方法により行なった。直径5cmの200mlビーカーに試料(オリゴマー)を5.0g取り、50mlのアセトンで希釈する。試料溶液を20℃とし、ビーカーの底面の下に4号活字が印刷された新聞を置き、マグネチックスターラーで撹拌しながら、脱イオン水を滴下していく。この時、ビーカー底面の下に置いた新聞の4号活字が該ビーカー上部から透視し判読できる限界の脱イオン水の最大滴下量(ml)を水トレランスとする。
【0277】
上記水トレランスの値が大きいほどオリゴマーは親水性であることを意味する。
【0278】
水性第1着色塗料(X)が、オリゴマー(E)を含有する場合、その配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計固形分100質量部に対して1〜30質量部であるのが好ましく、2〜20質量部であるのがより好ましく、3〜15質量部であるのが更に好ましい。
【0279】
ジエステル化合物
水性第1着色塗料(X)は、下記一般式(VIII)
【0280】
【化20】
【0281】
[式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、R10は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表し、複数のR10同士は同一でも異なっていてもよい。]で表されるジエステル化合物を含有する。
【0282】
上記ジエステル化合物を含有することにより、鮮映性、塗膜外観及び耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【0283】
上記炭化水素基としては、炭素数5〜11のアルキル基が好ましく、炭素数5〜9のアルキル基がより好ましく、炭素数6〜8のアルキル基がさらに好ましい。特に、上記R及びRが、炭素数6〜8の分岐状のアルキル基である場合、塗料を比較的長期間貯蔵した後に塗装した場合にも、形成される塗膜に優れた鮮映性を付与することができる。
また、R10は好ましくはエチレンであり、さらに、mは特に4〜10の整数であることが好ましい。
【0284】
上記ジエステル化合物は、例えば、2個の末端水酸基を有するポリオキシアルキレングリコールと炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸とをエステル化反応させることにより得ることができる。
【0285】
また、水性第1着色塗料(X)は、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
【0286】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤などが挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0287】
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
【0288】
上記増粘剤としては、ポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤を用いるのが好ましく、会合型増粘剤を用いるのがより好ましく、末端に疎水基を有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン会合型増粘剤を用いるのが更に好ましい。該ウレタン会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
【0289】
また、水性第1着色塗料(X)が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の配合量は、水性皮膜形成性樹脂(A)及び硬化剤成分の合計固形分100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.05〜3質量部であるのがより好ましく、0.1〜2質量部であるのが更に好ましい。
【0290】
水性第1着色塗料(X)の調整
水性第1着色塗料(X)は、水性皮膜形成性樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)、並びに、必要に応じて、ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)、顔料(D)、オリゴマー(E)及びその他の塗料用添加剤を、公知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって、調製することができる。また、水性媒体としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒の混合物を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0291】
水性第1着色塗料(X)の固形分濃度は、通常、20〜70質量%であるのが好ましく、30〜60質量%であるのがより好ましく、35〜60質量%であるのが更に好ましい。
【0292】
水性第1着色塗料(X)の塗装
本方法において使用される水性第1着色塗料(X)の塗装は、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装が特に好ましい。水性第1着色塗料(X)の塗布量は、硬化塗膜に基づく膜厚が一般に5〜30μm、特に10〜25μmになる量とすることが好ましい。水性第1着色塗料(X)をかくの如く塗装し、第1着色塗膜を形成することができる。
【0293】
工程(2)
上記第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)が塗装される。
【0294】
上記第1着色塗膜の固形分含有率は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブロー等を行なうことにより調整することができるが、本方法では、水性第1着色塗料(X)の塗装後に予備加熱しなくても、
耐水性、付着性及び仕上り外観に優れた複層塗膜を得ることができる。予備加熱をしない場合、水性第1着色塗料(X)の塗装後に室温で30秒〜5分間程度静置(セッティング)することが好ましい。これによって第1着色塗膜と第2着色塗膜との混層を防止することができる。
【0295】
予備加熱をする場合には該予備加熱は、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で約50〜約110℃、好ましくは約60〜約80℃の温度で1〜30分間程度直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。
【0296】
また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0297】
また、前記第1着色塗膜の固形分含有率は、例えば以下の方法により測定することができる。
【0298】
まず、被塗物と同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上に、水性第1着色塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、必要に応じて予備加熱などがされた該アルミホイルを、水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
水性第2着色塗料(Y)
本方法に使用される水性第2着色塗料(Y)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。
【0299】
水性第2着色塗料(Y)は、一般に、基体樹脂、架橋剤および顔料等を水性媒体中に混合分散することにより調製することができる。
【0300】
基体樹脂としては、例えば、カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂を使用することが好ましい。基体樹脂の種類としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0301】
カルボキシル基及び水酸基含有樹脂中のカルボキシル基は中和されていることが好ましい。該中和は、架橋剤等と混合する前に、塩基性物質を用いて行うことが好ましい。
【0302】
中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;N,N−ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0303】
中和に用いられる塩基性物質の使用量は、カルボキシル基及び水酸基含有樹脂中のカルボキシル基を基準にして、通常0.1〜1.5当量、特に0.3〜1.2当量の範囲内であることが好ましい。
【0304】
基体樹脂は、水分散性等の観点から、通常10〜150mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。また、基体樹脂は、硬化性等の観点から、通常10〜150mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0305】
基体樹脂は、さらに、耐侯性等の観点から、アクリル樹脂においては、通常3000〜100000、特に5000〜50000、そして、ポリエステル樹脂においては、通常500〜50000、特に3000〜30000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0306】
基体樹脂としてカルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂を用いる場合、分散安定剤の存在下で乳化重合によって製造されるカルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂も使用することができる。
【0307】
上記乳化重合により製造されるアクリル樹脂の場合、通常100000以上、特に200000〜2000000の範囲内の数平均分子量を有するものが好ましい。
【0308】
乳化重合で用いる分散安定剤としては、ノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤のほか、酸価が10〜150mgKOH/g程度で且つ数平均分子量が5000〜30000程度のアクリル樹脂等の水性樹脂を好適に使用することができる。
【0309】
乳化重合はそれ自体既知の方法で行うことができる。
【0310】
基体樹脂としては、なかでも、カルボキシル基含有不飽和モノマーを共重合成分とする多段重合法により製造されるアクリルエマルションが、塗装作業性に優れた水性第2着色塗料(Y)を得ることができるので好ましい。すなわち、最初にカルボキシル基含有不飽和モノマーを全くもしくは殆ど含まない(通常、全モノマー中3質量%以下)組成のモノマー混合物を用いて重合反応を行い、次いでカルボキシル基含有不飽和モノマーを含有する(通常、全モノマー中5〜30質量%)組成のモノマー混合物を用いて重合反応を行なうことにより得られるアクリルエマルションは、塩基性物質を用いた中和により、粘性発現効果を有しており、耐タレ性等の塗装作業性に優れた水性第2着色塗料(Y)を得ることができるので好ましい。
【0311】
架橋剤としては、例えばメラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、水分散性ブロックポリイソシアネート化合物等の、水酸基と反応し得る架橋剤から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0312】
水性第2着色塗料(Y)における基体樹脂及び架橋剤の配合割合は、両成分の合計固形分量を基準にして、基体樹脂は一般に60〜100質量%、特に65〜95質量%、さらに特に70〜90質量%、架橋剤は一般に0〜40質量%、特に5〜35質量%、さらに特に10〜30質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0313】
顔料としては特に制限されるものではなく、例えば、無機系および有機系顔料の着色顔料、体質顔料及び光輝性顔料等を好適に使用することができる。上記着色顔料としては例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等を挙げることができる。上記体質顔料としては、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等を挙げることができる。上記光輝性顔料としてはアルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等を挙げることができる。
【0314】
顔料の配合量は、基体樹脂及び架橋剤の固形分合計を基準にして、一般に0.1〜200質量%、特に1〜100質量%の範囲内であることが好ましい。
【0315】
水性第2着色塗料(Y)には、さらに必要に応じて、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、酸化防止剤等を適宜、使用することができる。
【0316】
水性第2着色塗料(Y)の塗装時における不揮発分濃度は、通常15〜65質量%が好ましく、その単独塗膜は不透明または透明のソリッド調もしくはメタリック調の塗膜であることができる。本明細書において、不透明塗膜とは、塗料単独塗膜の20μmの硬化塗膜における光線透過率が5%未満の塗膜を意味し、透明塗膜とは、20μmの上記硬化塗膜における光線透過率が5%以上の塗膜を意味する。
【0317】
水性第2着色塗料(Y)は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装等により、必要に応じて静電印加を行なって、硬化塗膜に基づく膜厚が一般に5〜30μm、特に10〜25μmになるように塗装することができる。
【0318】
本方法では、第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装し、次いでクリヤ塗料(Z)が塗装されるが、クリヤ塗料(Z)の塗装に先立ち、必要に応じて、水性第2着色塗料(Y)を塗装して得られる第2着色塗膜を50〜100℃程度の温度で予備乾燥を行なってもよい。
【0319】
この予備乾燥により、第2着色塗膜中の揮発性成分をある程度揮散させることができる。
【0320】
上記予備乾燥により、塗膜がある程度乾燥固化するので、該第2着色塗膜上にクリヤ塗料(Z)を塗装したときに該塗膜中に含まれる溶媒や低分子樹脂成分等が、第2着色塗膜中に浸透拡散しても、該第2着色塗膜の粘度低下を抑制することができ、メタリック顔料を使用した場合等のメタリック顔料等の再流動を抑制することができ、メタルムラ等の発生を防止することができる。
【0321】
工程(3)
上記の如くして第2着色塗料(Y)によって形成される水性第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)が塗装される。
【0322】
クリヤ塗料(Z)
クリヤ塗料(Z)は、水酸基含有アクリル樹脂(K)、 ポリイソシアネート化合物(L)ならびに、金属化合物(M1)及びアミジン化合物(M2)からなる有機金属触媒(M)を含有するクリヤ塗料である。
【0323】
水酸基含有アクリル樹脂(K)
水酸基含有アクリル樹脂(K)は、(k1)水酸基含有重合性不飽和モノマー及び(k2)その他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を常法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0324】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを各々1個有する化合物である。
【0325】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)としては、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)及び水酸基(2級水酸基を除く)含有重合性不飽和モノマー(k1−2)を挙げることができる。
【0326】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)としては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル部のアルキル基の炭素数が2〜8、特に3〜6、さらに特に3又は4の2級水酸基を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸とエポキシ基含有化合物(例えば、カージュラE10、商品名、ヘキシオン・スペシャリティー・ケミカル社製、ネオデカン酸グリシジルエステル)との付加物等を挙げることができる。これらの中でも特に、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0327】
上記モノマー(k1−1)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0328】
水酸基(2級水酸基を除く)含有重合性不飽和モノマー(k1−2)は、1分子中に水酸基(2級水酸基を除く)と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物である。
【0329】
該モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物(2級水酸基を有するものを除く);ε−カプロラクトンを開環重合反応させることにより変性した水酸基含有モノマー(2級水酸基を有するものを除く)等を挙げることができる。
【0330】
ε−カプロラクトンを開環重合反応させることにより変性した水酸基含有モノマーとしては、市販品を使用することができ、市販品としては、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0331】
上記モノマー(k1−2)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0332】
その他の重合性不飽和モノマー(k2)は、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)以外のモノマーであり、具体的には、1分子中に1個の重合性不飽和結合を有する化合物である。不飽和モノマー(k2)の具体例を、下記(1)〜(7)に列挙する。
【0333】
(1)酸基含有重合性不飽和モノマー
酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に酸基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物である。該モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を使用することができる。酸基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、アクリル樹脂(A)の酸価が、0.5〜30mgKOH/g程度、特に1〜20mgKOH/g程度となる量とすることが好ましい。
【0334】
(2)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのエステル化物
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0335】
上記アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのエステル化物のうち、仕上り外観の向上及び塗膜硬度の両立の観点から、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマー(k2−1)を好適に使用することができる。
【0336】
炭素数6〜20の脂環式炭化水素基の代表例としては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基及びトリシクロデカニル基等を挙げることができる。
【0337】
不飽和モノマー(k2−1)の具体例としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等の有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。
【0338】
不飽和モノマー(k2−1)を使用する場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して、10〜60質量%、特に15〜50質量%、さらに特に20〜45質量%の範囲内であることが好ましい。
【0339】
(3)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等をあげることができる。これらのうち好ましいアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとして、ビニルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0340】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを構成成分とすることにより、水酸基とイソシアネート基との架橋結合に加え、アルコキシリル基同士の縮合反応及びアルコキシシリル基と水酸基との反応による架橋結合を生成することから硬化性を向上させることができる。
【0341】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して1〜20質量%、特に、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0342】
(4)芳香族系ビニルモノマー
具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0343】
芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とすることにより、得られる樹脂のガラス転移温度が上昇し、また、高屈折率で疎水性の塗膜を得ることができることから、塗膜の光沢向上による仕上り外観の向上効果を得ることができる。
【0344】
芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して3〜40質量%、特に、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
【0345】
(5)グリシジル基含有重合性不飽和モノマー
グリシジル基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にグリシジル基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であり、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
【0346】
(6)重合性不飽和結合含有窒素原子含有化合物
例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0347】
(7)その他のビニル化合物
例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステル等を挙げることができる。バーサティック酸ビニルエステルとしては、市販品である「ベオバ9」、「ベオバ10」(以上、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を挙げることができる。
【0348】
その他の重合性不飽和モノマー(k2)としては、前記(1)〜(7)で示されるモノマーを1種で、又は2種以上を用いることができる。
【0349】
水酸基含有アクリル樹脂(K)の重量平均分子量は、塗膜の仕上り外観及び硬化性の観点から、2000〜50000程度、特に、5000〜30000程度であることが好ましい。
【0350】
水酸基含有アクリル樹脂(K)のガラス転移温度は、塗膜の硬化性及び仕上り外観の観点から、−10〜30℃程度、特に、−5〜20℃程度であることが好ましい。
【0351】
塗膜の仕上り外観向上及びポットライフの観点から、水酸基含有アクリル樹脂(K)中の水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)全量のうち、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)を50〜100質量%含むことが好ましく、80〜100質量%含むことがより好ましい。
【0352】
また、水酸基含有アクリル樹脂(K)の水酸基価は、硬化性及び仕上り外観の観点から、85〜215mgKOH/gであり、100〜200mgKOH/g、特に120〜200mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
【0353】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)及びその他の重合性不飽和モノマー(k2)の配合割合は、硬化性及び硬化塗膜の仕上り外観の観点から、
全モノマー量に対して、水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)が好ましくは20〜50質量%程度、さらに好ましくは30〜45質量%程度であり、その他の不飽和モノマー(k2)が、好ましくは50〜80質量%程度、さらに好ましくは55〜70質量%程度である。
【0354】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)は、塗膜の仕上り外観向上及びポットライフの観点から、水酸基含有アクリル樹脂(K)中のモノマー全量のうち、10〜50質量%含まれることが好ましく、20〜45質量%含まれることがより好ましい。
【0355】
また、水酸基含有アクリル樹脂(K)の酸価は、塗料組成物の硬化性の観点から、0.5〜30mgKOH/g程度、特に1〜20mgKOH/g程度であることが好ましい。
【0356】
上記重合性不飽和モノマー(k1)及び(k2)からなるモノマー混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂(K)を得ることができる。
【0357】
上記モノマー混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂(K)を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を好適に使用することができる。
【0358】
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール1000(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどを挙げることができる。
【0359】
これらの有機溶剤は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができるが、アクリル樹脂の溶解性の点から高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用することが好ましい。また、さらに高沸点の芳香族系溶剤を好適に組合せて使用することもできる。
【0360】
水酸基含有アクリル樹脂(K)の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のそれ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0361】
水酸基含有アクリル樹脂(K)は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0362】
本発明において使用されるクリヤ塗料(Z)は、水酸基含有アクリル樹脂(K)以外の樹脂も必要に応じて併用することができる。具体的には、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(K)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂等をあげることができ、好ましいものとして、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有ポリウレタン樹脂をあげることができる。
【0363】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、常法により、例えば、多塩基酸と多価アルコ−ルとのエステル化反応によって製造することができる。該多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物などが挙げられ、また、該多価アルコ−ルは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステ)などのモノエポキシ化合物などを酸と反応させて、これらの化合物をポリエステル樹脂に導入しても良い。
【0364】
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0365】
水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは85〜250mgKOH/g、さらに好ましくは100〜220mgKOH/gの範囲内である。水酸基含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2500〜40000、さらに好ましくは5000〜30000の範囲内である。
【0366】
水酸基含有ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる水酸基含有ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0367】
ポリオールとしては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価アルコールなどをあげることができる。高分子量のものとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどをあげることができる。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどがあげられる。ポリエステルポリオールとしては前記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸などの2塩基酸との重縮合物、ポリカプロラクトンなどのラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオールなどをあげることができる。また、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ポリオールも使用することができる。
【0368】
上記のポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;等を挙げることができる。
水酸基含有ポリウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは85〜250mgKOH/g、さらに好ましくは100〜220mgKOH/gの範囲内である。水酸基含有ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2500〜40000、さらに好ましくは5000〜30000の範囲内である。水酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−40℃〜85℃、さらに好ましくは−30℃〜80℃の範囲内である。
【0369】
上記の水酸基含有アクリル樹脂(K)以外の樹脂(より具体的には、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂等)を併用する場合、水酸基含有アクリル樹脂(K)以外の樹脂の含有量は、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して、好ましくは10〜50質量%の範囲内である。
【0370】
ポリイソシアネート化合物(L)
ポリイソシアネート化合物(L)は、クリヤ塗料(Z)の硬化剤であり、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物(L)としては、ポリウレタン製造用として公知のもの、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0371】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、具体的には例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0372】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0373】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0374】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0375】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等をあげることができる。
【0376】
上記のうち、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HMDIということがある)、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIということがある)及びこれらの誘導体を特に好適に使用することができる。
【0377】
上記ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0378】
ポリイソシアネート化合物(L)において、25℃における粘度は、硬化性及び仕上がり外観の観点から、好ましくは200〜4000mPa・sであり、さらに好ましくは250〜3000mPa・s、さらに特に好ましくは300〜2000mPa・sである。該粘度が、200mPa・s未満であると、クリヤ塗膜さらには、得られる複層塗膜の硬化性が低下する場合がある。また、4000mPa・sを超えると、得られる複層塗膜の仕上り外観が低下する場合がある。
【0379】
ポリイソシアネート化合物(L)として、ジイソシアネート化合物の2量体以上の多量体を含有するものを低温短時間硬化性及び仕上り外観の観点から好適に使用することができる。
【0380】
ポリイソシアネート化合物(L)が、上記のような2量体以上の多量体を含有する場合、特に、ポリイソシアネート化合物の総量を基準にして、イソシアヌレート3量体の含有量が、30〜70質量%、特に40〜70質量%、さらに特に50〜70質量%、ウレトジオン2量体の含有量が、3〜30質量%、特に5〜25質量%、さらに特に8〜20質量%、その他の3量体以上の多量体の含有量が、0〜67質量%、特に5〜55質量%、さらに特に10〜42質量%の範囲内であるものを好適に使用することができる。
【0381】
上記において、イソシアヌレート3量体とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなる、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであり、ウレトジオン2量体とは、ジイソシアネートモノマー2分子からなる、ウレトジオン基を有するポリイソシアネートである。
【0382】
上記ポリイソシアネート化合物において、未反応のジイソシアネートモノマーは含まないことが好ましく、残存ジイソシアネートモノマー濃度は、好ましくは、1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0383】
有機金属触媒(M)
有機金属触媒(M)は、金属化合物(M1)及びアミジン化合物(M2)からなる触媒である。
【0384】
金属化合物(M1)とアミジン化合物(M2)とを併用することにより、低温短時間での硬化性に優れ、かつ、形成する塗膜の仕上り外観が良好であり、しかも2液型塗料としてのポットライフを充分に維持することが可能となる。
【0385】
これは、金属化合物(M1)とアミジン化合物(M2)とからなる触媒が、錯体構造を形成し、アミジン化合物がブロック剤となっており、このブロック剤であるアミジン化合物が低温で解離し、アミジン化合物の解離後は金属化合物本来の低温硬化性に優れる触媒能が活性となることにより、クリヤ塗料(Z)の低温短時間での硬化性とポットライフの両立を達成することが可能となることによるものであると考えている。
【0386】
金属化合物(M1)は、金属が、亜鉛、錫、ジルコニウム、ビスマス、鉛、コバルト、マンガン、チタン、アルミニウム及びモリブデンからなる群から選ばれる1種である金属化合物であり、例えば、カルボン酸金属塩化合物、アセチルアセトン金属錯体等を挙げることができる。特に、カルボン酸金属塩化合物を好適に使用することができる。
【0387】
カルボン酸金属塩化合物としては、具体的には、下記式(IX)で表される化合物を挙げることができる。
【0388】
(RCO)M (IX)
(式中、Mは、Zn、Sn、Zr、Bi、Pb、Co、Mn、Ti、Al、Moからなる群から選ばれる金属であり、Rは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアラルキル基又はアルキルアリール基を表し、nは1以上4以下の値を有する整数である)
より具体的には、例えば、2−エチルヘキサン酸金属塩、酢酸金属塩、ナフテン酸金属塩、オクタン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、ネオデカン酸金属塩、オレイン酸金属塩等を挙げることができる。
【0389】
触媒活性に優れ工業的に入手が容易なことから、オクチル酸マンガン、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト、オクチル酸チタン、オクチル酸アルミニウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸ビスマス、又はオクチル酸鉛を好適に使用することができる。
【0390】
アミジン化合物(M2)は、R11−C(=NR12)−NR1314で表される構造を有する有機化合物である。該構造において、炭素(C)原子に、二重結合で窒素原子が1つ、単結合で窒素原子が1つ付いている構造を有している。
【0391】
構造式R11−C(=NR12)−NR1314・・・(X)において、
11は水素原子、置換されていても良い、炭素原子に結合した有機基、アミン基であり、具体的には、置換されていてもよいヒドロカルビル基又はエーテル化されていてもよいヒドロキシル基を挙げることができる。
【0392】
12とR13は互いに独立して、水素原子又は炭素原子に結合した有機基、又は互いに結合した構造を有する複素環(1又は2以上のヘテロ原子を持つ、又は、1又は2以上のヘテロ原子を有する結合した2重環を有する)である。
【0393】
11は水素原子、置換されていても良い、炭素原子に結合した有機基、エーテル化されていてもよいヒドロキシル基、好ましくは、置換されていてもよい炭素原子数8以上のヒドロカルビル基を挙げることができる。
【0394】
11又はR14が有機基の場合、それらは例えば1乃至40の炭素原子を有するもの、あるいは、例えば、500〜50000の分子量を有するポリマー基であってよい。
【0395】
11、R12、R13、R14で表される基は、各々互いに独立して、置換基として、アルコール性水酸基を含有することができる。
【0396】
構造式R11−C(=NR12)−NR1314・・・(X)で表され、R12とR13とが結合していないアミジン化合物としては、具体的には、
N’−シクロヘキシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−メチル−N,N−ジ−n−ブチルアセトアミジン、N’−オクタデシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−シクロヘキシル−N,N−ジメチルバレロアミジン、1−メチル−2−シクロヘキシルイミノピロリジン、3−ブチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、N−(ヘキシルイミノメチル)モルホリン、N−(α−(デシルイミノエチル)エチル)ピロリジン、N’−デシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−ドデシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−シクロヘキシル−N,N−アセトアミジン等を挙げることができる。
【0397】
また、該アミジン化合物として、R12−R13が、アミジン構造中の2つの窒素原子を含む5乃至7員環を形成し、R11−R13又はR11−R14のうちの1つが、アミジン構造中の1つの窒素原子と複数の炭素原子により5乃至9員環を形成した構造を有するアミジン化合物もアミジン化合物(M2)に包含される。
【0398】
このような構造を有するアミジン化合物としては、具体的には、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ(3.3.0)オクテ−4−エン、2−メチル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、2,7,8−トリメチル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、2−ブチル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、1,9−ジアザビシクロ(6.5.0)トリデセ−8−エン等を挙げることができる。
【0399】
また、アミジン化合物として、構造式R11−C(=NR12)−NR1314・・・(X)中のR12とR13が結合した構造を有する複素環化合物、例えば、イミダゾリン、イミダゾール、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロピリミジン、ピリミジン環含有化合物を挙げることができる。
【0400】
イミダゾール化合物は一般に下記一般式(XI)で表される。
【0401】
【化21】
【0402】
上記において、R15、R16、R17及びR18としては、各々互いに独立して、水素原子、アルキル基又は置換アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基、アラルキル基、シクロアルキル基、複素環、エーテル基、チオエーテル基、ハロゲン、−N(R) 、ポリエチレンポリアミン、ニトロ基、ケト基、エステル基、カルボンアミド基、及びこれら官能基のアルキル置換基を挙げることができる。
【0403】
イミダゾール化合物としては、具体的には、N−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、N−(3−アミノプロピル)イミダゾール、4−(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(tert−ブトキシカルボニル)イミダゾール、イミダゾール−4−プロピオン酸、4−カルボキシイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチル−4−イミダゾールカルボン酸、4−ホルミルイミダゾール、1−(エトキシカルボニル)イミダゾール、プロピレンオキサイドとイミダゾール及び2−メチルイミダゾールとの反応物、1−トリメチルシリルイミダゾール、4−(ヒドロキシメチル)イミダゾール塩酸塩、1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとイミダゾールの共重合物、1−(p−トルエンスルホニル)イミダゾール、1,1−カルボニルビスイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−2−イミダゾリンピロメリテート、4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールピクリン酸塩、2−プロペン酸と4,5−ジヒドロ−2−ノニル−1H−イミダゾール−1−エタノールと2−ヘプチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−1−エタノールのジナトリウム塩、1−(シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾールのギ酸エステル、ナトリウムイミダゾール塩、銀イミダゾール塩等を挙げることができる。
【0404】
上記アミジン化合物は、単独で、又は2種以上併用して使用することができる。
【0405】
具体的には、クリヤ塗料(Z)において、有機金属触媒(M)とは金属錯体であり、該錯体は、例えば、1モルのカルボン酸金属塩と2モルのアミジン化合物をメタノール等の溶媒中で加熱することにより製造することができる。
【0406】
上記製造において、透明な溶液状態となるまで約50℃で約2時間保持することによって金属錯体を作成することができる。該透明溶液をろ過し乾燥する。
【0407】
アミジン化合物(M2)と金属化合物(M1)とのモル比((M2)のモル数/(M1)のモル数の比)は、1.3〜8.0、特に、1.6〜5.0、さらに特に、1.8〜4.0の範囲とすることが好ましい。
【0408】
上記モル比が1.3〜8.0の範囲外であると、低温短時間硬化性、ポットライフ及び仕上り外観のいずれかが不十分となる場合がある。
【0409】
(M)成分の量は、低温短時間硬化性、ポットライフ及び仕上り外観の観点から、(K)成分及び(L)成分の総量に対して、0.05〜5質量%、特に0.1〜4質量%、さらに特に0.3〜3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0410】
(M)成分の量が、0.05質量%より少ないと低温短時間硬化性が不十分となる場合がある。また、5質量%を超えると、得られるクリヤ塗膜、さらには複層塗膜の仕上り外観が不十分となる場合がある。
【0411】
有機金属触媒(M)は、溶媒に溶解して使用することもできる。溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール類、トルエン、キシレン、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒、アセチルアセトン及びそのフッ素化置換体等のβ−ジケトン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル類等の溶媒を挙げることができる。
【0412】
クリヤ塗料(Z)において、触媒として、有機金属触媒(M)に加えて、必要に応じて、有機金属触媒(M)以外の触媒を使用することができる。
【0413】
上記有機金属触媒(M)以外の触媒としては、ポリウレタン製造用触媒として従来公知の有機金属であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒等を挙げることができる。
【0414】
これらのうち、スタナスジオクトエート、ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0415】
クリヤ塗料(Z)において、低温短時間硬化性及び得られる塗膜の仕上り外観ならびに硬化塗膜の耐水性、耐酸性等の観点から、ポリイソシアネート化合物(L)中のイソシアネート基と、水酸基含有アクリル樹脂(K)中の水酸基との当量比(NCO/OH)は0.8〜1.8であり、好ましくは0.8〜1.6、さらに好ましくは0.8〜1.4の範囲内である。
【0416】
クリヤ塗料(Z)により形成されるクリヤ塗膜のガラス転移温度(Tg)は、得られるクリヤ塗膜さらには複層塗膜の仕上り外観向上の観点から、好ましくは80〜120℃程度、さらに好ましくは90〜110℃程度の範囲内である。
【0417】
なお、本明細書において、塗膜のガラス転移温度(Tg)は、硬化塗膜について、動的粘弾性測定により求めた値である。
【0418】
動的粘弾性の測定は、昇温速度3℃/分で、温度範囲20〜200℃で、周波数11Hzの条件下で行なった。塗膜のガラス転移温度(Tg℃)は、この測定において、tanδの値が極大値を示す時の温度である。動的粘弾性測定装置としては、FTレオスペクトラDVE−V4(レオロジ社製、商品名、動的粘弾性測定装置)を使用した。
【0419】
その他の成分
クリヤ塗料(Z)は、水酸基含有アクリル樹脂(K)、ポリイソシアネート化合物(L)及び有機金属触媒(M)を必須成分とする塗料組成物であって、通常、有機溶剤を含有し、さらに必要に応じて、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤等通常、塗料の分野で用いられる塗料用添加剤を含有することができる。
【0420】
顔料としては、特に制限なく使用することができ、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイ等の体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等のメタリック顔料等をあげることができる。
【0421】
上記したこれらの顔料は単独で又は2種以上を使用することができる。顔料の含有量はその種類により異なるが、(K)成分、(L)成分及び(M)成分の固形分総量に対し、通常、0〜200質量%、好ましくは1〜100質量%程度である。
【0422】
また、着色顔料の含有量はその種類により異なるが、(K)成分、(L)成分及び(M)成分の固形分総量に対し、通常、0〜150質量%、好ましくは1〜100質量%程度である。
【0423】
顔料の含有量はクリヤ塗料(Z)から得られる塗膜の透明性を害さない範囲の含有量とすることが好ましい。
【0424】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤をあげることができる。
【0425】
紫外線吸収剤のクリヤ塗料(Z)中の含有量としては、通常、樹脂固形分総量に対して、0〜10質量%、特に0.2〜5質量%、さらに特に0.3〜2質量%の範囲内であることが耐侯性、耐黄変性の観点から好ましい。
【0426】
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤をあげることができる。
【0427】
光安定剤のクリヤ塗料(Z)中の含有量としては、通常、樹脂固形分総量に対して、0〜10質量%、特に0.2〜5質量%、さらに特に0.3〜2質量%の範囲内であることが耐侯性、耐黄変性の観点から好ましい。
【0428】
クリヤ塗料(Z)は貯蔵安定性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(K)及び有機金属触媒(M)と、ポリイソシアネート化合物(L)とが分離した2液型塗料とすることが好ましく、使用直前に両者を混合して使用することが好ましい。
【0429】
クリヤ塗料(Z)の塗装方法
クリヤ塗料(Z)の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装が特に好ましい。クリヤ塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度、好ましくは20〜40μm程度となる量とすることが好ましい。
【0430】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行なう場合には、クリヤ塗料(Z)の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0431】
工程(4)
以上に述べた如くして形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
【0432】
加熱保持温度(キープ温度)は、低温での硬化性に優れることから、60〜120℃、特に70〜110℃、さらに特に80〜100℃の範囲内であることが適している。加熱保持時間(キープ時間)は、本方法は短時間での硬化性に優れることから、5〜15分間、特に、5〜12分間、さらに特に、5〜10分間の範囲内であることが適している。
【0433】
上記焼付け硬化を行う前に必要に応じて、50〜100℃程度の温度で予備乾燥を行なってもよい。
【0434】
本方法は、低温かつ短時間での硬化性、耐水性、付着性及び仕上り外観に優れる複層塗膜を得ることができる。
【0435】
本方法は、工業製品全般の複層塗膜形成方法として好適に使用することができる。本方法は、自動車の複層塗膜形成方法として特に好適に使用することができる。
【0436】
本方法によれば、低温かつ短時間での硬化性、耐水性、付着性及び仕上り外観に優れる複層塗膜を得ることができる理由は定かではないが、以下のように推測することができる。本方法において、水性第1着色塗料が、特定のブロックポリイソシアネートを含有するものであることから低温かつ短時間で該ブロックポリイソシアネートのブロック基が外れて硬化を開始することができるため、低温かつ短時間での硬化性に優れる。また、かかる優れた硬化性によって塗膜の架橋密度が高くなるために耐水性、付着性に優れる。さらにかかる優れた硬化性によって第1着色塗膜の粘性発現効果がもたらされ、塗装時における第2着色塗膜との混層が抑制され、混層による複層塗膜の仕上がり外観の低下を抑制することができる。
【0437】
さらに、クリヤ塗料が、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋反応の触媒として、特定範囲の金属化合物及びアミジン化合物からなる有機金属触媒を含有するものであることから、低温かつ短時間での硬化性に優れ、かつポットライフの両立も満足させることができる。
【0438】
これは該有機金属触媒が、金属化合物に対し、アミジン化合物が配位した錯体構造を形成しているためであると推察され、このアミジン化合物が立体障害となるため、このアミジン化合物が配位した構造となっている間は、金属化合物(金属イオン)が本来有するウレタン化反応の触媒活性を抑制することができることから、ポットライフにも優れている。
【0439】
また、該アミジン化合物は比較的低温で解離することから、低温の解離温度に到達すれば配位したアミジン化合物が脱離して、金属化合物が再生し、該金属化合物(金属イオン)が本来有するウレタン化反応の触媒活性が作用することにより、低温短時間での硬化性に優れた塗料組成物が得られると考えられる。
【0440】
これらの相乗効果により、低温かつ短時間での硬化性、耐水性、付着性及び仕上り外観に優れた複層塗膜を得ることができると考えられる。
【実施例】
【0441】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また、塗膜の膜厚はいずれも硬化塗膜に基づくものである。
【0442】
水性第1着色塗料(X)の製造
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0443】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)分散液を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0444】
モノマー乳化物(1):脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0445】
モノマー乳化物(2):脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0446】
製造例3
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(3)のうちの全量の3%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で30分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(3)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液0.3部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径140nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂(A1−3)分散液を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価が12mgKOH/g、水酸基価が12mgKOH/gであった。
【0447】
モノマー乳化物(3):脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.5部、メチルメタクリレート47部、n−ブチルアクリレート45部、スチレン4部、メタクリル酸1.5部を混合攪拌して、モノマー乳化物(3)を得た。
【0448】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、イソフタル酸142部、アジピン酸313部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール59部、トリメチロールプロパン220部及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール228部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸38部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH6.3の水酸基含有ポリエステル樹脂(A2−1)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂の酸価は35mgKOH/g、水酸基価が164mgKOH/g、数平均分子量が1600であった。
【0449】
製造例5
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール105部、トリメチロールプロパン273部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール320部、アジピン酸219部及びイソフタル酸385部を仕込み、160℃から220℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら220℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸76部を加え、170℃で30分間反応させた後、ジメチルエタノールアミン5.5部及び脱イオン水120部を攪拌しながら添加して、固形分濃度70%である水酸基含有ポリエステル樹脂(A2−2)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が140mgKOH/g、数平均分子量が5,000であった。
【0450】
製造例6
メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8質量%で変性した、融点が80℃、Mwが約10万及びMw/Mnが約2.1である変性ポリオレフィンを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散化して変性ポリオレフィンの水分散体を得た。
【0451】
製造例7
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)溶液25部(樹脂固形分10部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部及び脱イオン水46部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P−1)を得た。
【0452】
製造例8
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)溶液25部(樹脂固形分10部)、「JR−806」80部、「バルカンXC72」(商品名、キャボットスペシャリティーケミカルズ社製、導電性カーボンブラック顔料)20部及び脱イオン水46部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P−2)を得た。
【0453】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造
製造例9
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)360部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)60部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル252部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.12モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール683部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−1)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが95部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−1)の固形分濃度は約60%であった。
【0454】
製造例10
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」360部、「ユニオックスM−400」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約400)50部、「PEG#600」(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量 約600)5部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル247部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.11モル/Kgであった。これに4−メチル−2−ペンタノール670部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−2)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが92部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−2)の固形分濃度は約60%であった。
【0455】
製造例11
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル365部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−3)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが183部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−3)の固形分濃度は約60%であった。
【0456】
製造例12
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジイソプロピル330部及びアセト酢酸イソプロピル27部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−4)1390部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが173部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−4)の固形分濃度は約60%であった。
【0457】
製造例13
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジエチル280部及びイソブチリル酢酸エチル30部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチル−2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−5)1350部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが133部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−5)の固形分濃度は約60%であった。
【0458】
製造例14
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに5−メチル−2−ヘキサノール990部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、5−メチル−2−ヘキサノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−6)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが180部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−6)の固形分濃度は約60%であった。
【0459】
製造例15
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「デュラネートTPA−100」450部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに6−メチルー2−ヘプタノール1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、6−メチル−2−ヘプタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−7)1430部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが170部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−7)の固形分濃度は約60%であった。
【0460】
製造例16
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにn−ブタノールを630部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、n−ブタノールを90部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−8)1270部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが100部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−8)の固形分濃度は約60%であった。
【0461】
製造例17
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これに2−エチルヘキサノールを1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、2−エチルヘキサノールを120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−9)1410部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが130部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−9)の固形分濃度は約60%であった。
【0462】
製造例18
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを1000部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−10)1380部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが125部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−10)の固形分濃度は約60%であった。
【0463】
水性第1着色塗料(X)の製造
製造例19
製造例7で得られた顔料分散ペースト(P−1)を固形分質量で89部(樹脂固形分10部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)分散液を固形分質量で45部、製造例4で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(A2−1)溶液を固形分質量で15部、製造例9で得たブロックポリイソシアネート化合物(B−1)を固形分質量で20部、及び「サイメル325」(商品名、1核体メラミンの割合が45%、重量平均分子量800、イミノ基及びメチロール基を有するメラミン樹脂、固形分80%)を固形分質量で10部を定法に従って均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性第1着色塗料(X−1)を得た。
【0464】
製造例20〜43
製造例19において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、製造例19と同様にして、pH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒である水性第1着色塗料(X−2)〜(X−25)を得た。
【0465】
なお、表1に示す水性第1着色塗料(X)の配合は各成分の固形分質量比である。
【0466】
【0467】
【0468】
(注1)ユーコートUX−310:商品名、三洋化成工業社製、ポリウレタン樹脂エマルション、固形分40%
(注2)GP600:商品名、三洋化成社製、ポリオキシプロピレングリセリンエーテル(分子量600)、水トレランスは100以上
(注3)ジエステル化合物:ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸のジエステル化合物。前記一般式(VIII)においてR及びRは2−エチルヘプチル基であり、R10は、エチレン基であり、mが7である。分子量578。
【0469】
クリヤ塗料(Z)の製造
水酸基含有アクリル樹脂(K)の製造
製造例44〜55
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で155℃に昇温した。155℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記表2に示すモノマーと重合開始剤からなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。ついで、155℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、酢酸ブチル32.5部で希釈することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(K−1)〜(K−12)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の質量固形分濃度(%)及び樹脂性状値を下記表2に示す。
【0470】
表2におけるガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出した:
1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・・・
Tg(℃)=Tg(K)−273
各式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの質量分率、T1、T2、・・はそれぞれの単量体のホモポリマ−のTg(K)を表わす。なお、上記計算に使用した各モノマーの単量体のホモポリマ−のTg(℃)は表2のモノマー名の右隣の欄に示した値である。
【0471】
【0472】
有機金属触媒の製造 その1
製造例56
攪拌器、冷却器、温度制御器、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置にエチル−3−エトキシプロピオネート47 部、ニッカオクチックス亜鉛(*1)(オクチル酸亜鉛、日本化学産業社製、亜鉛含有量8質量%)82部を仕込み、反応容器内を窒素で置換し、50℃に加熱した。次に、攪拌下、1−メチルイミダゾール16部を滴下し、滴下終了後50℃の温度を2時間保持し、反応を終了させた。得られた有機金属触媒(M−1)は、亜鉛含有量4.5質量%の透明液体であった。
【0473】
製造例57〜66
下記表3に示す組成で、製造例56と同様にして、各有機金属触媒(M−2)〜(M−11)を得た。
【0474】
併せて、有機金属触媒(M−1)〜(M−11)のアミジン化合物(M2)/金属化合物(M1)のモル比及び質量金属濃度(%)を下記表3に示す。
【0475】
表3中の(*1)〜(*6)はそれぞれ下記のとおりである。
【0476】
ニッカオクチックス亜鉛(*1):商品名、オクチル酸亜鉛、亜鉛含有量8%、日本化学産業社製
ニッカオクチックス錫(*2):商品名、オクチル酸錫、錫含有量28%、日本化学産業社製
ニッカオクチックス鉛(*3):商品名、オクチル酸鉛、鉛含有量24%、日本化学産業社製
K−KAT 348(*4):商品名、オクチル酸ビスマス、ビスマス含有量25%、キングインダストリーズ社製
ニッカオクチックスコバルト(*5):商品名、オクチル酸コバルト、コバルト含有量8%、日本化学産業社製
ニッカオクチックスマンガン(*6):商品名、オクチル酸マンガン、マンガン含有量8%、日本化学産業社製。
【0477】
【0478】
クリヤ塗料の製造 その1
製造例67〜95
前記のようにして得られた水酸基含有アクリル樹脂(K−1)〜(K−12)、有機金属触媒(M−1)〜(M−11)及び後記表4に記載の原材料を用いて、後記表4に示す配合にて羽根型撹拌機を用いて攪拌して混合した。次いで該混合物に酢酸ブチルを添加してフォードカップ#No.4を用いて20℃で25秒の粘度に調整し、各クリヤ塗料(Z−1)〜(Z−29)を得た。なお、表4に示すクリヤ塗料(Z)の配合は各成分の固形分質量比である。
【0479】
表4におけるポリイソシアネート化合物(L−1)〜(L−5)は、それぞれ下記の意味を有する。
【0480】
ポリイソシアネート化合物(L−1):ヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリイソシアネート化合物、多量体の組成比は、イソシアヌレート3量体が53%、その他の3量体以上の多量体が47%。固形分100%、NCO含有率21.8%、粘度は25℃において3000mPa・s
ポリイソシアネート化合物(L−2):ヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリイソシアネート化合物、多量体の組成比は、イソシアヌレート3量体が63%、ウレトジオン2量体が12%、その他の3量体以上の多量体が25%。固形分100%、NCO含有率21.8%、粘度は25℃において500mPa・s
ポリイソシアネート化合物(L−3):N3200、商品名、バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、固形分100%、NCO含有率23.0%、粘度は25℃において2500mPa・s
ポリイソシアネート化合物(L−4):XP2580、商品名、バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体、固形分100%、NCO含有率19.5%、粘度は25℃において450mPa・s
ポリイソシアネート化合物(L−5):Z4470、商品名、バイエル社製、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分70%、NCO含有率11.9%、粘度は25℃において600mPa・s。
【0481】
【0482】
【0483】
有機金属触媒の製造 その2
製造例96
下記表5に示す組成で、製造例56と同様にして、各有機金属触媒(M−12)〜(M−14)を得た。併せて、有機金属触媒(M−12)〜(M−14)のアミジン化合物(M2)/金属化合物(M1)のモル比及び質量金属濃度(%)を下記表5に示す。表5中の(*7)〜(*9)はそれぞれ下記のとおりである。
【0484】
ニッカオクチックスジルコニウム(*7):商品名、オクチル酸ジルコニウム、ジルコニウム含有量12%、日本化学産業社製
トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(*8):、アルミニウム含有量8%、東京化成工業製
ビス(2,4−ペンタンジオナト)モリブデン(VI)ジオキシド(*9):モリブデン含有量29%、東京化成工業製
【0485】
【0486】
クリヤ塗料の製造 その2
製造例99〜101
下記表6に示す組成で、製造例67と同様にして、各クリヤ塗料(Z−30)〜(Z−32)を得た。なお、表6に示すクリヤ塗料(Z)の配合は各成分の固形分質量比である。表6におけるポリイソシアネート化合物(L−1)は、それぞれ前述したとおりである。
【0487】
【0488】
複層塗膜形成方法
(試験用被塗物の作製 その1)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物1とした。
(試験用被塗物の作製 その2)
脱脂処理した黒色のポリプロピレン板を試験用被塗物2とした。
(複層塗膜形成方法 その1)
実施例1
上記試験用被塗物1に、前記のようにして得た水性第1着色塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装し、第1着色塗膜を形成した。3分間室温で静置後、80℃で3分間プレヒートを行った。
【0489】
次いで、該未硬化の第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y−1)「WBC710メタリックベース」(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系水性メタリック色ベースコート塗料)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚で15μmとなるように静電塗装し、第2着色塗膜を形成した。
【0490】
5分間静置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の第2着色塗膜上に、前記のようにして得たクリヤ塗料(Z−1)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤ塗膜を形成した。
【0491】
室温で7分間静置した後、100℃で7分間(塗板温度100℃のキープ時間)加熱して、上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に硬化させることにより、試験塗板を作製した。
【0492】
実施例2〜12、比較例1〜3
実施例1において、水性第1着色塗料(X−1)を、下記表5に示す水性第1着色塗料(X−2)〜(X−12)及び(X−20)〜(X−22)のいずれかに変更する以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作成した。
【0493】
(複層塗膜形成方法 その2)
実施例13
上記試験用被塗物2に、前記のようにして得た水性第1着色塗料(X−13)を硬化膜厚で10μmとなるようにエアスプレー塗装し、第1着色塗膜を形成した。
【0494】
3分間室温で静置後、その上に水性第2着色塗料(Y−1)「WBC710メタリックベース」を硬化膜厚で15μmとなるように静電塗装し、第2着色塗膜を形成した。
【0495】
5分間静置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の第2着色塗膜上に、前記のようにして得たクリヤ塗料(Z−1)を硬化膜厚で35μmとなるように静電塗装し、クリヤ塗膜を形成した。室温で7分間静置した後、100℃で7分間(塗板温度100℃のキープ時間)加熱して、上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に硬化させることにより、試験塗板を作製した。
【0496】
実施例14〜46、比較例4〜10
実施例13において、水性第1着色塗料(X−1)を、下記表5に示す水性第1着色塗料(X−14)〜(X−19)及び(X−23)〜(X−25)のいずれかに変更し、かつクリヤ塗料(Z−1)を、下記表5に示すクリヤ塗料(Z−2)〜(Z−33)のいずれかに変更する以外は、実施例13と同様にして試験塗板を作成した。
【0497】
塗膜評価
上記実施例1〜46及び比較例1〜10で得られた各試験塗板について、以下の方法で耐水付着性、仕上がり外観及びヌープ硬度の試験を行った。評価結果を表7に示す。
【0498】
(耐水付着性):試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で1時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。尚、S、Aが合格である。
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
B:ゴバン目塗膜の残存数が99個以下である。
【0499】
(仕上り外観):各試験板の塗膜表面の光の明暗パタ−ンを光学的に走査し反射光のコントラスト(強弱)を解析する装置である「Wave−Scan」(商品名、BYK Gardner社製)により、塗膜表面の平滑性及び鮮映性を評価した。平滑性は、波長領域600〜1000μmで測定されるLong Wave(LW)値に基づいて評価され、LW値が小さいほど塗面の平滑性が良好であることを示す。試験用被塗物1を用いて試験塗板を作成した場合では、LW値が10以下で合格である。試験用被塗物2を用いて試験板を作成した場合では、LW値が12以下で合格である。
一方、鮮映性は、波長領域100〜600μmで測定されるShort Wave(SW)値に基づいて評価され、SW値が小さいほど塗面の鮮映性が良好であることを示す。試験用被塗物1を用いて試験塗板を作成した場合では、SW値が10以下で合格である。試験用被塗物2を用いて試験板を作成した場合では、SW値が12以下で合格である。
【0500】
(ヌープ硬度):各試験板を20℃の恒温室に24時間放置後、TUKON(American Chain&Cable Company社製、micro hardness tester)にて測定した。該ヌープ硬度は、四角錘ダイヤモンド圧子を一定の試験荷重で材料の試験面に押し込み、生じた菱形のくぼみの大きさから読み取られる塗膜の硬さを表したものであり、数値が大きいほど硬度が高いことを表す。
【0501】
【表7】