(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165212
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】空気ばねハイブリッドピストンアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/084 20060101AFI20170710BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
F16F9/084
F16F9/32 L
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-204448(P2015-204448)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-80176(P2016-80176A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】14/516,801
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット エム. プニュースキ
【審査官】
鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−180615(JP,A)
【文献】
特開2006−234070(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/048085(WO,A1)
【文献】
特開平09−250587(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0320657(US,A1)
【文献】
米国特許第8474798(US,B2)
【文献】
特開2006−151284(JP,A)
【文献】
特開平03−244844(JP,A)
【文献】
実開平03−096444(JP,U)
【文献】
特開平10−086621(JP,A)
【文献】
実開昭60−009712(JP,U)
【文献】
米国特許第04555096(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパと、
前記ダンパの一部に接続された支持リングと、
ピストンアッセンブリであって、
前記ダンパにプレス嵌めされる第1のピストン部材と、
該第1のピストン部材に嵌合された、前記支持リングによって支持される第2のピストン部材と、を有するピストンアッセンブリと、
を備え、
前記第1のピストン部材はプラスチックから成り、前記第1のピストン部材は、前記ダンパの一方の端部にプレス嵌めされる金属キャップを有しており、該金属キャップは、前記第1のピストン部材によって被覆されていることを特徴とする空気ばね。
【請求項2】
圧縮空気によって充填されるように構成され配置された少なくとも1つの作業室を少なくとも部分的に仕切っているベローズと、
前記ベローズの少なくとも一部を取り囲むガイド管と、をさらに備え、
前記ベローズは、前記第1のピストン部材の外面と、前記ガイド管の内面とに対して相対的に転動するように構成され配置されている、請求項1記載の空気ばね。
【請求項3】
前記第1のピストン部材はほぼ円筒状であって、前記第2のピストン部材のほぼ円筒状の周面の一部を収容する内室を有している、請求項1または2記載の空気ばね。
【請求項4】
前記第1のピストン部材と前記第2のピストン部材との間にシールを提供するOリングをさらに有している、請求項3記載の空気ばね。
【請求項5】
前記ダンパの周面に連結されたダンパスナップリングをさらに有していて、該ダンパスナップリングは前記支持リングを支持している、請求項1から4までのいずれか1項記載の空気ばね。
【請求項6】
前記第2のピストン部材は金属から成っている、請求項1から5までのいずれか1項記載の空気ばね。
【請求項7】
前記第2のピストン部材はプラスチックから成っている、請求項1から5までのいずれか1項記載の空気ばね。
【請求項8】
ダンパを備えた空気ばね用のピストンアッセンブリであって、該ピストンアッセンブリは、
前記ダンパにプレス嵌めされるように構成され配置された第1のピストン部材と、
該第1のピストン部材に嵌合された、前記ダンパによって支持されるように構成され配置された第2のピストン部材と、を備え、
前記第1のピストン部材はプラスチックから成り、前記第1のピストン部材は、前記ダンパの一方の端部にプレス嵌めされるように構成され配置された金属キャップを有しており、該金属キャップは、前記第1のピストン部材によって被覆されていることを特徴とする空気ばね用のピストンアッセンブリ。
【請求項9】
前記第1のピストン部材はほぼ円筒状であって、前記第2のピストン部材のほぼ円筒状の周面の一部を収容する内室を有している、請求項8記載のピストンアッセンブリ。
【請求項10】
前記第1のピストン部材と前記第2のピストン部材との間にシールを提供するOリングをさらに有している、請求項9記載のピストンアッセンブリ。
【請求項11】
前記ピストンアッセンブリは前記ダンパと組み合わされていて、この組み合わせ体はさらに、前記第2のピストン部材を支持する支持リングと、前記ダンパの周面に連結されたダンパスナップリングとを有していて、該ダンパスナップリングは前記支持リングを支持している、請求項8から10までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項12】
前記第2のピストン部材は金属から成っている、請求項8から11までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【請求項13】
前記第2のピストン部材はプラスチックから成っている、請求項8から11までのいずれか1項記載のピストンアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のニューマチックスプリング又は空気ばねに関し、特に空気ばねの2部分から成るピストンアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気ばねは、車体とシャシとの間に配置される装置である。典型的な空気ばねは、圧縮空気で満たされた少なくとも1つの作業空間を有しており、この少なくとも1つの作業空間はそれぞれ、ロール型又は折り返し型ベローズの形態の可動壁によって少なくとも部分的に仕切られている。複数の作業空間は互いに通流ダクトを介して接続されており、通流ダクトはスロットルバルブを有している。
【0003】
図1には、自動車用の従来の空気ばねの一部が、符号10で示されている。空気ばね10は圧縮空気が充填された作業室12を有していて、この作業室12は、ロール折り返し部14aを形成するローリングベローズ(転動形ベローズ)14によって少なくとも部分的に仕切られている。車両がばねの圧縮及びばねの伸張を経験すると、ローリングベローズ14は、ロールオフピストン16の回転対称的な輪郭と、ガイド管18の内面との両方に沿って転動する。ローリングベローズ14の端部20,22は、クランプリング24,26によって結合部分へと固定される。空気ばね10は、中央に配置された液圧ダンパを有していて、この液圧ダンパは、空気ばねカバー(図示せず)を介して車体構造に結合されるピストンロッド28を有している。ピストンロッド28はダンパ30に結合されていて、ダンパ30は、接続フランジ(図示せず)を介して、従来の形式のシャシにおける車輪支持体に接続されている。
【0004】
ピストン16は、一体型の直立ピストンであって、ダンパスナップリング34によって支持された支持リング32上に立っている。これらの低コスト部品は典型的にはプラスチック材料から形成されていて、このピストンは、空気ばねのために大きな容積を提供しない。ピストン16はまた、パッケージ化することが困難である。
【0005】
別のタイプの空気ばねピストンは、懸吊型ピストン(図示せず)である。このタイプのピストンは、ダンパに押し付けられていて、典型的にはロール成形されたアルミニウムから形成されている。このピストンは、容積体に対してより大きなパッケージを提供するが、極めて高価である。
【0006】
従って、低コストで空気ばねのために大きな容積を提供できる空気ばね用の直立ピストンを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述した必要性を満たすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施態様の原理によると、この課題は、ダンパと、前記ダンパの一部に接続された支持リングと、ピストンアッセンブリとを備えた空気ばねによって達成される。ピストンアッセンブリは、前記ダンパにプレス嵌めされる第1のピストン部材と、該第1のピストン部材に嵌合された第2のピストン部材とを含む。第2のピストン部材は支持リングによって支持される。2つの部分から成るピストンアッセンブリにより、容積体のための大きなパッケージが低コストで得られる。
【0009】
実施態様の別の態様によれば、ダンパを有した空気ばね用のピストンアッセンブリが設けられている。このピストンアッセンブリは、前記ダンパにプレス嵌めされるように構成され配置された第1のピストン部材と、該第1のピストン部材に嵌合された、前記ダンパによって支持されるように構成され配置された第2のピストン部材と、を有している。
【0010】
本発明のその他の対象、詳細、特徴及び、構造の関連する部材の機能と操作方法、部品の組み合わせ、製造のコストについては、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明、請求の範囲を考えることで明らかであり、これらの全ては、この明細書の一部を成す。
【0011】
本発明は、図面につき示した好適な実施態様の以下の詳しい説明により、より良く理解される。実施態様では、類似する参照符号は、類似の部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】単一部分から成る直立ピストンを有した従来の空気ばねを示した図である。
【
図2】一実施態様による二部分から成る直立ピストンを有した空気ばねを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施態様の詳細な説明
図2には、自動車用の空気ばねの一部が符号10´で示されている。空気ばね10´は米国特許第8474798号明細書に開示されたタイプのものであって良く、当該明細書の内容は、ここで参照することにより本願に含まれる。従って、空気ばね10´は圧縮空気が充填された少なくとも1つの作業室12を有していて、この作業室12は、ロール折り返し部14aを形成するエラストマ製のローリングベローズ14によって少なくとも部分的に仕切られている。車両がばねの圧縮及び伸張を経験すると、ローリングベローズ14は、符号16´で示されたロールオフピストンアッセンブリの回転対称的な外面15と、金属製のガイド管18の内面17との両方に沿って転動する。即ち、ガイド管18はローリングベローズ14の一部を取り囲んでいる。ローリングベローズ14の端部20,22は、クランプリング24,26によって結合部分へと固定される。空気ばね10´は、符号27で示された中央に配置された液圧ダンパ構造を有していて、この液圧ダンパ構造は、空気ばねカバー(図示せず)を介して好適には車体構造に結合されるピストンロッド28を有している。ピストンロッド28はダンパ30に結合されていて、ダンパ30は、接続フランジ(図示せず)を介して、従来の形式のシャシにおける車輪支持体に接続されている。ベローズ14の従来のカルダン折り返し部36は、ガイド管18の端部38に隣接している。
【0014】
この態様によると、ピストンアッセンブリ16´は、上方の又は第1のピストン部材40を有していて、この第1のピストン部材40はストライカキャップ42を有している。このストライカキャップ42は、ダンパ30の端部45にプレス嵌め接続部43を有している。第1のピストン部材40は好適にはプラスチックであって、従って、金属製のストライカキャップ42上に被覆されている。選択的には、上方のピストン40は、アルミニウム又は鋼又はこれらの組み合わせのような金属から形成することができる。ピストンアッセンブリ16´はプラスチック製の下方の又は第2の部材44も有しており、この第2の部材44は、ダンパスナップリング34によって支持された支持リング32によって支持されている(例えば、支持リング32上に立っている)。選択的には、上方のピストン40がストライカキャップ42を被覆するプラスチックから成っていて、下方のピストン44が、アルミニウム又は鋼又はこれらの組み合わせのような金属から形成されていても良い。ダンパスナップリング34は、ダンパ30の周面に連結されている。従って、ピストンアッセンブリ16´は直立型である。上方のピストン部材40はほぼ円筒状であって、下方のピストン部材44のほぼ円筒状の周面49の一部を収容する内室47を有している。Oリング46は、上方のピストン部材40と下方のピストン部材44との間のシールを提供する。Oリング46を設ける代わりに、上方のピストン部材40と下方のピストン部材44は互いに溶接されていても良い。別のOリング48は、ダンパ30と下方のピストン部材44との間のシールを提供する。
【0015】
従ってピストンアッセンブリ16´は2つの保持部材を使用している。即ち、上方のピストン部材40ではプレス嵌め接続部43がダンパ30に被さっていて、下方のピストン部材44は支持リング32上に立てられている。これにより上方のピストン部材40と下方のピストン部材44の両部材はダンパ30によって保持される。好適にはピストンアッセンブリ16´により、
図1に示した従来の単一部分から成るピストンと比較して容積体のためのより大きなパッケージが可能であり、このような容積体パッケージは、従来のアルミニウム製の懸吊型ピストンに匹敵するものである。しかも、アルミニウムの懸吊型ピストンの付加的なコストはかからず、製造コストはそれ相応のものである。さらに、ピストンアッセンブリ16´は、単に支持リングを加えることによって、現在の生産応用として既存の懸吊型ピストンと置き換えることができる。
【0016】
上述した好適な実施態様は、本発明の構造と機能原理を説明し、かつ好適な実施態様を使用する方法を説明するために示され記載された。この実施態様は、このような原理を逸脱することなく変更することができる。従って本発明は、以下に示す請求の範囲内にある全ての変化実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0017】
10,10´ 空気ばね、 12 作業室、 14 ローリングベローズ、 14a ロール折り返し部、 15 外面、 16,16´ ピストンアッセンブリ、 17 内面、 18 ガイド管、 20,22 ローリングベローズの端部、 24,26 クランプリング、 27 液圧ダンパ構造、 28 ピストンロッド、 30 ダンパ、 32 支持リング、 34 ダンパスナップリング、 36 カルダン折り返し部、 38 ガイド管の端部、 40 第1のピストン部材、上方のピストン部材、 42 ストライカキャップ、 43 プレス嵌め接続部、 44 第2のピストン部材、下方のピストン部材、 45 ダンパの端部、 46 Oリング、 47 内室、 48 Oリング、 49 周面