【文献】
Stougaard et al.,BMC Biotechnology,Vol.7:69(2007),doi:10.1186/1472-6750-7-69
【文献】
Larsson C,"Single-molecule Detection in situ",Digital Comprehensive Summaries of Uppsala Dissertations from the Faculty of Medicine 4311,(2009.1),URL:http://umu.diva-portal.org/smash/get/diva2:174889/FULLTEXT01.pdf
【文献】
Larsson et al,Nature Methods,Vol.7,No.5,p.395-397 supplementary data,doi:10.1038/nmeth.1448
【文献】
Yong et al.,Journal of Microbiological Methods,Vol.79,p.242-245(2009)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
以下の段階を含む、ホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)である1つまたは複数の細胞の試料中の少なくとも1つの標的RNAを局在インサイチュー検出するための方法:
試料中のRNAと相補的なcDNAを作製する段階;
該cDNAとハイブリダイズしているRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
該試料を、該cDNAと相補的な末端領域を含む1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階、および該パドロックプローブを該相補的末端領域においてcDNAとハイブリダイズさせる段階であって、該パドロックプローブは、長さが50〜150ヌクレオチドである、段階;
該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結することにより、該パドロックプローブを環状化する段階;
該環状化パドロックプローブをローリングサークル増幅(RCA)に供する段階;
ローリングサークル増幅産物を検出する段階。
逆転写プライマーが、2'O-Me RNA、メチルホスホナート、もしくは2' Fluor RNA塩基、ロックド核酸残基、またはペプチド核酸残基を含む、請求項4記載の方法。
cDNAを消化して、前記RCAのプライマーとして働く遊離の3'末端を生成させるために、試料をエキソヌクレアーゼと接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
前記接触させる段階において、前記試料を少なくとも第1および第2パドロックプローブと接触させ、第1パドロックプローブが前記cDNA上の隣接した領域と相補的な末端領域を含み、第2パドロックプローブが、第2パドロックプローブの5'または3'終端において第1パドロックプローブの末端領域と単一ヌクレオチドだけ異なる末端領域を含む、請求項1記載の方法。
前記試料を少なくとも、第1パドロックプローブの第1検出プローブ結合領域と同一の配列を含む第1標識検出プローブ、および第2パドロックプローブの第2検出プローブ結合領域と同一の配列を含む第2標識検出プローブと接触させる段階、ならびに第1および第2標識検出プローブをローリングサークル増幅産物とハイブリダイズさせる段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
ローリングサークル増幅産物とハイブリダイズしている第1標識検出プローブからのシグナルを検出する段階、またはローリングサークル増幅産物とハイブリダイズしている第2標識検出プローブからのシグナルを検出する段階、またはローリングサークル増幅産物とハイブリダイズしている第1および第2標識検出プローブの両方からのシグナルを検出する段階をさらに含み、第1標識検出プローブの検出により、細胞内の野生型mRNAの存在が示され、かつ第2標識検出プローブの検出により、細胞内の変種mRNAの存在が示される、請求項10記載の方法。
以下の段階を含む、スライド表面上のホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)である細胞の試料中のKRAS遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法:
(a) プライマーを用いて試料中のmRNAからcDNAを作製する段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化する段階;
(c) 該試料を、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階。
プライマーが、2'O-Me RNA、メチルホスホナート、もしくは2' Fluor RNA塩基、ペプチジル核酸残基、またはロックド核酸残基を含む、請求項14記載の方法。
環状化プローブを複製するためのプライマーとして働くDNA相補体上で遊離の3'末端を生成する条件下で、環状化プローブがインキュベートされる、請求項21記載の方法。
以下の段階を含む、固体支持体上のホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)生物学的試料由来の細胞中の特定のRNAをインサイチューで検出および/または位置特定するための方法:
(a) RNA-DNAハイブリッドを形成するために、該特定のRNAに相補的なDNA分子を作製する条件下で、固体支持体上の固定化されたFFPE生物学的試料を逆転写酵素およびリボヌクレアーゼ耐性プライマーと共にインキュベートする段階;
(b) リボヌクレアーゼを添加する段階、およびRNA-DNAハイブリッド中のRNAを消化する条件下でリボヌクレアーゼをインキュベートする段階;
(c) 相補的パドロックプローブを、消化されたRNA-DNAハイブリッドのDNA部分とハイブリダイズさせる条件下で、消化されたRNA-DNAハイブリッドをインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが、該DNA分子の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を含む、段階;
(d) パドロックプローブの終末端を連結させる条件下で、RNA-DNAハイブリッドのDNA部分とハイブリダイズしているパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;
(e) パドロックプローブを複製するために用いられるDNA由来のプライマーを作製しかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階;ならびに
(f) 該細胞中の特定のRNAの有無または位置を検出するために、該核酸を1つまたは複数の相補的核酸プローブと共にインキュベートする段階。
【発明の概要】
【0008】
本発明の方法により、有利に、RNAの検出、詳細にはRNA中の単一ヌクレオチド変化の検出が可能になる。例えば、2つの対立遺伝子転写物の相対発現の差を組織において直接研究することを可能にする検出分解能が達成され得る。多くの遺伝子がこの種の転写調節を受けること、および対立遺伝子発現が組織間で異なり得ることが示されたために、このような研究は、対立遺伝子特異的発現の大規模解析との関連で重要であると最近認識された。さらに、大部分のヒト遺伝子は選択的スプライシングを受けることが示されており、そこで本明細書に記載される方法を用いて、これを単一細胞レベルで研究することができる。RNAにおいて、発現された単一ヌクレオチド配列変種の多重検出を行うことができるインサイチュー方法は、現在のところ他には存在しない。本方法はこの必要性を満たすことができる、ならびに本方法が提供する、転写変化を細胞および組織において直接可視化する能力は、研究および診断の両方において価値があると考えられ、ヒトトランスクリプトームに関する新たな洞察が提供される。
【0009】
本発明の1つの方法によると、インサイチューでの転写物検出は、最初に少なくとも1つのmRNAを局在cDNA分子に変換し、この分子をパドロックプローブおよび標的プライミングRCAによって検出することにより達成される(
図1)。本方法はmRNAに対して特に適用性があるが、ウイルスRNA、tRNA、rRNA、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、アンチセンスRNA、および非コードRNAを含むがこれらに限定されない、細胞中のいかなるRNA分子の検出に用いることもできる。典型的には、逆転写酵素および1つまたは複数の逆転写酵素プライマーを含む逆転写酵素反応物中で、RNAをcDNAに変換する。リボヌクレアーゼを使用して、得られたRNA:DNA二重鎖中のRNAを消化し、パドロックプローブとのハイブリダイゼーションに利用可能なcDNA鎖を作製する。パドロックプローブのcDNAとのハイブリダイゼーションにより、プローブの末端の直接的または間接的連結によるプローブの環状化が可能になる。次に、環状化パドロックプローブをRCAに供し、RCPを当技術分野で利用可能な任意の適切な手段によって検出する。特定の態様において、本方法はまた、2つ以上の標的RNA、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の標的RNAを位置特定するために用いることもできる。これらの標的RNAは、同じ遺伝子に由来してもよいし、もしくは異なる遺伝子に由来してもよく、または同じゲノム配列に由来してもよいし、もしくは異なるゲノム配列に由来してもよい。
【0010】
1つの態様において、本発明は、1つまたは複数の細胞の試料中の少なくとも1つの標的RNAをインサイチュー検出するための方法であって、試料中のRNAと相補的なcDNAを作製する段階;該cDNAとハイブリダイズしているRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;該試料を、該cDNA上の隣接した領域と相補的な末端領域を含む1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階、および該パドロックプローブを該相補的末端領域においてcDNAとハイブリダイズさせる段階;該パドロックプローブの末端を連結する段階;該環状化パドロックプローブをローリングサークル増幅(RCA)に供する段階;ならびにローリングサークル増幅産物を検出する段階を含む方法を提供する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、生物学的試料中の細胞中の遺伝子配列の存在および位置を決定するための方法であって、(a) 該遺伝子配列を有するDNA相補体をRNAとハイブリダイズさせる段階;(b) DNA相補体とハイブリダイズしているRNAを消化する段階;(c) 第1パドロックプローブをDNA相補体の少なくとも一部とハイブリダイズさせる段階であって、該パドロックプローブが、DNA相補体の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端のうちの一方の上に該遺伝子配列を含む、段階;(d) パドロックプローブの2つの終末端を連結する段階;(e) 環状化プローブを複製して、複製されたプローブの複数のコピーを含む核酸分子を得る段階;および(f) 該核酸分子とハイブリダイズするプローブを用いて、細胞中の該遺伝子配列の有無を検出する段階を含む方法を提供する。ある種の局面において、本方法は、RNAとハイブリダイズさせるDNA相補体を作製する段階をさらに含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、特定の核酸配列を有する組織試料中の細胞を同定するための方法であって、(a) RNA-DNAハイブリッドを作製するために、細胞を、特定の核酸配列を含むDNA相補体と共にインキュベートする、段階;(b) RNA-DNAハイブリッドの少なくとも一部を消化する条件下で、RNA標的分子をリボヌクレアーゼと共にインキュベートする段階;(c) パドロックプローブを、特定の核酸配列を含むDNA相補体とハイブリダイズさせる条件下で、DNA相補体を該パドロックプローブと共にインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが、DNA相補体の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を含む、段階;(d) パドロックプローブの終末端を結合させる条件下で、DNA相補体およびパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;(e) DNA相補体によりパドロックプローブの複製をプライミングしかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階;ならびに(f) 複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を1つまたは複数の相補的オリゴヌクレオチドと共にインキュベートして、特定の配列の有無を検出する段階を含む方法を提供する。
【0013】
1つの態様において、本発明は、特定の核酸配列を有する細胞試料中の細胞を同定するための方法であって、(a) RNAのDNA相補体を作製する条件下で、細胞試料を、該試料に固定化されたリボヌクレアーゼ耐性プライマーおよび逆転写酵素と共にインキュベートする段階であって、該DNA相補体が特定の核酸配列を含む、段階;(b) RNAの少なくとも一部を消化する条件下で、細胞試料をリボヌクレアーゼと共にインキュベートする段階;(c) パドロックプローブを、特定の核酸配列を含むDNA相補体とハイブリダイズさせる条件下で、DNA相補体を該パドロックプローブと共にインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが、DNA相補体の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を含む、段階;(d) パドロックプローブの終末端を結合させる条件下で、DNA相補体およびパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;(e) DNA相補体によりパドロックプローブの複製をプライミングしかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階;ならびに(f) 特定の配列の有無を検出するために、複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を1つまたは複数の核酸プローブと共にインキュベートする段階を含む方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、スライド上の生物学的試料中の細胞中の核酸配列をインサイチューで位置特定するための方法であって、(a) 該核酸配列を含みかつ該細胞中の相補的RNA分子とハイブリダイズしてRNA-DNAハイブリッドを形成する核酸分子を作製する条件下で、固体支持体上の固定化された生物学的試料を逆転写酵素およびリボヌクレアーゼ耐性プライマーと共にインキュベートする段階;(b) リボヌクレアーゼを添加する段階、およびRNA-DNAハイブリッド中のRNAを消化する条件下でリボヌクレアーゼをインキュベートする段階;(c) 相補的パドロックプローブを、消化されたRNA-DNAハイブリッドのDNA部分とハイブリダイズさせる条件下で、消化されたRNA-DNAハイブリッドをインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが該核酸配列を含み、かつ、該DNAの別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を有する、段階;(d) パドロックプローブの終末端を連結させる条件下で、RNA-DNAハイブリッドのDNA部分とハイブリダイズしているパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;(e) パドロックプローブを複製するために用いられるDNA由来のプライマーを作製しかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階;ならびに(f) 特定の配列の有無を検出するために、該核酸を1つまたは複数の相補的核酸プローブと共にインキュベートする段階を含む方法を提供する。
【0015】
例えば上記の、本発明の、組織試料中の細胞を同定するための方法、細胞試料中の細胞を同定するための方法、または生物学的試料中の細胞中の核酸配列をインサイチューで位置特定するための方法の特定の態様において、試料はホルマリン固定されたパラフィン包埋組織切片である。
【0016】
別の態様において、本発明は、細胞の試料中の少なくとも1つのRNAを局在インサイチュー検出するための方法であって、(a) 該試料を逆転写酵素および逆転写酵素プライマーと接触させて、試料中のRNAからcDNAを作製する段階;(b) リボヌクレアーゼを該試料に添加して、該cDNAとハイブリダイズしているRNAを消化する段階;(c) 該試料を、該cDNAと相補的な末端領域を含む1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階、および該パドロックプローブを該相補的末端領域においてcDNAとハイブリダイズさせる段階;(d) 該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結することにより、該パドロックプローブを環状化する段階;(e) 3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて、該環状化パドロックプローブをRCAに供する段階であって、必要に応じて該エキソヌクレアーゼ活性がcDNAを消化して、ローリングサークル増幅(RCA)のプライマーとして働く遊離の3'末端を生成する、段階;ならびに(f) ローリングサークル増幅産物を検出する段階を含む方法を提供する。
【0017】
したがって本方法は、標的RNAを検出する手段として、ローリングサークル増幅産物(RCP)を検出する段階を含む。RCPは、標的RNAと相補的なcDNAのパドロックプローブ認識(すなわち、cDNA中の相補的配列とのハイブリダイゼーションによる、標的RNAのcDNA相補体へのパドロックプローブ結合)、およびRCA反応のための環状鋳型を生成するためのパドロックプローブの連結の結果として生成される。したがってRCPは、RNAを検出するために検出される、cDNAの代替マーカーと見なされ得る。
【0018】
上記のように、本方法は、細胞中に存在する任意のRNA分子型またはRNA配列の検出のために用いることができる。いくつかの態様において、本方法は、mRNAの検出のために用いられる。試料中のRNAと相補的なcDNAは、該試料をRNA依存性DNAポリメラーゼおよびプライマーと接触させることによって生成され得る。RNA依存性DNAポリメラーゼは、例えば、MMLV逆転写酵素またはAMV逆転写酵素などの逆転写酵素であってよい。
【0019】
本発明のある種の局面において、第1鎖cDNA合成に用いられるプライマーはリボヌクレアーゼ耐性である。「リボヌクレアーゼ耐性」であるプライマーとは、それが、同じ配列の裸の非修飾プライマーを上回る、リボヌクレアーゼ作用に対する(特にRNase Hの作用に対する)ある程度の耐性増加を示すことを意味する。したがってプライマーは、リボヌクレアーゼによる消化から少なくとも部分的に保護され、またはより詳細には、プライマーがそのRNA鋳型とハイブリダイズしている場合に、プライマー/鋳型ハイブリッドはリボヌクレアーゼ消化から少なくとも部分的に保護される。好ましい態様において少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60、70、80、もしくは90%、またはさらには100%が、リボヌクレアーゼ処理を免れる。プライマーは、例えば、プライマーをリボヌクレアーゼによる消化に対して耐性にする、2'O-Me RNA、メチルホスホナート、もしくは2' Fluor RNA塩基、ロックド核酸残基、またはペプチド核酸残基を含み得る。
【0020】
1つの態様において、プライマーは、プライマー配列中に、1個または複数個の天然または合成ヌクレオチドによって分離された2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、またはそれ以上のロックド核酸を含む。ある種の態様において、プライマーは、プライマー配列中に4〜9個のロックド核酸を含み、各ロックド核酸は、1個または複数個の天然または合成ヌクレオチドによって他のロックド核酸と分離されている。
【0021】
本明細書で用いられる「逆転写酵素プライマー」または「RTプライマー」という用語(cDNAプライマーとしても知られる)は、適切な条件下でRTによるcDNA合成の開始点として働き得るオリゴヌクレオチドを指す。したがって、逆転写反応はRTプライマーによってプライミングされる。RTプライマーの適切な長さは、典型的には6〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜35ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は、一般的に、mRNA鋳型と共に十分に安定したハイブリッド複合体を形成するためにより低い温度を必要とするが、それでもなお用いることができる。プライマーを30ヌクレオチドから25ヌクレオチドに短くしても、その機能に影響しなかった。プライマーは、鋳型核酸の正確な配列を反映する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。cDNA合成のための適切なプライマーの設計は、当技術分野で周知である。
【0022】
典型的には、RTプライマーは、RNA中の関心対象の領域、例えば、検出が所望される特定のRNA内の領域、またはその内部で配列変化が起こり得る領域(例えば、対立遺伝子もしくはスプライス変種、多型、または変異等、例えばSNP等)に結合するように設計される。したがって、特定の変異等の有無を検出しようとする際には(例えば、遺伝子型同定状況において)、RTプライマーは、その内部でそのような変異が起こる領域の内部または周囲に(例えば、そのような領域の近傍に、例えば、そのような領域の100、70、50、30、20、15、10、または5ヌクレオチド内に)結合するように設計することができる。そのような変異または配列変化は、疾患(例えば、癌)または疾患のリスクもしくは素因と関連している可能性があるか、または治療処置に対する反応と関連している可能性がある。
【0023】
RTプライマーは、試料中の細胞へのまたは細胞内へのプライマーの固定化を可能にするが、cDNA合成の開始点として働くプライマーの基本的な特性を変更しない付加的な特徴を組み入れることができる。したがって、プライマーに、プライマーを細胞または細胞成分に固定化するための機能的部分または手段が提供され得ることが企図される。これは、例えば、細胞または細胞成分に結合し得るかまたはこれと反応し得る部分であってよく、上記のように、そのような細胞成分はRNAを含み得る。したがって、機能的部分は、プライマーを、鋳型RNA内のプライマー結合部位とハイブリダイズしたままにする部分、すなわち、プライマーをリボヌクレアーゼ消化に対して耐性にする部分を含み得る。
【0024】
プライマーは、細胞または細胞成分に共有結合し得る1つまたは複数の反応基、例えば化学的カップリング剤を取り込むように修飾することができる。これは、プライマーに、タンパク質等などの細胞成分と反応性である、チオール、ヒドロキシ、またはアミノ基、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)を介するリン酸基、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)-エステル等などの化学基または化学基を保有する修飾ヌクレオチド残基を提供することによって、達成され得る。そのような化学的カップリング基およびそれらを核酸分子に導入する手段は、当技術分野で周知である。したがって潜在的反応性官能基には、求核性官能基(アミン、アルコール、チオール、ヒドラジド)、求電子性官能基(アルデヒド、エステル、ビニルケトン、エポキシド、イソシアネート、マレイミド)、環化付加反応、ジスルフィド結合の形成、または金属への結合が可能な官能基が含まれる。具体例には、第一級および第二級アミン、ヒドロキサム酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルカーボネート、オキシカルボニルイミダゾール、ニトロフェニルエステル、トリフルオロエチルエステル、グリシジルエーテル、ビニルスルホン、ならびにマレイミドが含まれる。
【0025】
あるいはまたは加えて、プライマーに、細胞または細胞成分もしくは他の試料成分に結合し得るアフィニティー結合基を提供することができる。そのようなアフィニティー結合基は、細胞、組織、試料成分等の内部または上部の対応する結合パートナーに対する特異的結合活性を有する、当技術分野で公知の任意のそのような結合基であってよい。したがって、代表的な結合基には、抗体ならびにそれらの断片および誘導体(例えば、一本鎖抗体等)、天然もしくは合成であってよい他の結合タンパク質ならびにそれらの断片および誘導体、例えば、レクチン、受容体等、ペプチドもしくはファージディスプレイ等などのスクリーニング技術によって得られるもしくは同定される結合パートナー、アプタマー等、またはタンパク質に対する、例えば細胞上もしくは細胞内の受容体および他のタンパク質に対する実際に小分子の結合パートナーが含まれる。そのような固定化システムは、例えばアクチンフィラメントといった、豊富である細胞成分に関して最も良好に働き得る。
【0026】
標的RNAまたは合成されたcDNAは、検出シグナルの局在性を保存するために、天然細胞マトリックスの代わりに、試料中の合成成分、例えば合成ゲルマトリックスに付着させることができる。重合に際して、cDNAまたは標的を付着させることができるゲルマトリックスを生じるゲル溶液中に、細胞または組織を浸漬することができる。例えば、cDNAプライマーの5'末端にAcrydite修飾が含まれる場合、このcDNAをポリアクリルアミドマトリックスに共有結合させることができる(Mitra & Church, 1999)。
【0027】
あるいは、またはRTプライマーに対する前述の修飾に加えて、プライマーの5'リン酸を、EDC媒介結合により細胞マトリックス中のタンパク質上に存在するアミンに連結し得る上記の修飾を用いて、ひいては他の細胞成分に対するRNAの局在性を維持するのに役立てることができる。そのような技法は、マイクロRNAおよびインサイチューハイブリダイゼーションによるそれらの検出に関して以前に記載されている(Pena et al., 2009)。
【0028】
優れたリボヌクレアーゼ耐性を確実にするために、場合によっては、RTプライマー中に数個の修飾残基、例えば連続して2個、3個、4個、5個、または6個の修飾残基を用いることが有利であり得る。好ましくは、2残基ごとまたは3残基ごとに、修飾残基をRTプライマーに取り込むことができる。したがってRTプライマーは、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、またはそれ以上の修飾残基を含み得る。文献では、リボヌクレアーゼ耐性に影響する核酸の様々な修飾が記載されており、RTプライマーまたはそれをハイブリダイズさせるRNAの消化を妨げる、または部分的に妨げるいかなる修飾も本方法に包含される。
【0029】
1つの態様において、修飾(例えば、修飾残基)はプライマーの5'末端(プライマーの5'領域中)に位置し、3'末端は未修飾のままである。例えば、最も3'末端側の1個、2個、3個、4個、5個、または6個の残基は未修飾である。
【0030】
リボヌクレアーゼ耐性を付与するための好ましい修飾は、RTプライマーへのLNA残基の取り込みである。したがってRTプライマーは、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個のLNA残基を含み得る。LNA単量体は、リボヌクレアーゼ耐性を付与する上に、相補的RNAに対して増強されたハイブリダイゼーション親和性を有し、したがってハイブリダイゼーション効率を増強するためにこれを用いることができる。
【0031】
本発明の代表的な態様において、RTプライマーは、2残基ごとまたは3残基ごとにLNA残基を含む。LNAとは、リボヌクレオシドがメチレン単位により2'-酸素原子と4'-炭素原子との間で連結された二環式ヌクレオチド類似体である。LNAを含むプライマーは、相補的RNAに対して優れた熱安定性を示し、これにより優れたミスマッチ識別が可能になる。さらに、LNAは、多重アッセイにおけるプライマーおよびプローブのTm値を調整する可能性を提供する。
【0032】
生成されるcDNAは、約10ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド長であってよく、ある種の態様では、約10〜約500ヌクレオチド長、例えば約50〜約500ヌクレオチド長を含め、例えば約90〜約400ヌクレオチド長、例えば約90〜約200ヌクレオチド長、約90〜約100ヌクレオチド長等などの範囲であってよい。ある種の代表的な態様において、cDNAは長さが、約10〜約100ヌクレオチド長、約30〜約90ヌクレオチド長、約14〜約70ヌクレオチド長、約50〜約80ヌクレオチド長、および記載した範囲間の任意の長さの範囲であってよい。
【0033】
cDNAは、ワトソン・クリック型または類似の塩基対相互作用に関与し得るデオキシリボヌクレオチドおよび/または合成ヌクレオチド残基から構成され得る。したがって、cDNA合成のための逆転写酵素段階に取り込むために用いられるヌクレオチドには、逆転写酵素反応に関与し得る(すなわち、逆転写酵素によって取り込まれ得る)任意のヌクレオチド類似体または誘導体が含まれ得る。
【0034】
RNaseとしても知られるリボヌクレアーゼは、RNAの加水分解を触媒する酵素のクラスである。本発明の方法に従って用いるためのリボヌクレアーゼは、RNA:DNA二重鎖中のRNAを分解することができる。RNase Hは、DNA:RNA二重鎖中のRNAの3'-O-P結合を切断して、3'-ヒドロキシルおよび5'-リン酸終端生成物を生成するリボヌクレアーゼのファミリーである。RNase Hは、RNA:DNAハイブリッド中のRNAを特異的に分解し、DNAもハイブリダイズしていないRNAも分解しないため、逆転写による第1鎖cDNA合成後にRNA鋳型を破壊するために通常用いられる。したがってRNase Hは、使用するのに好ましいクラスの酵素である。RNase Hファミリーのメンバーは、古細菌および原核生物から真核生物に至るまで、ほとんどすべての生物中に見出され得る。この場合も同様に、適切なリボヌクレアーゼ、具体的にはRNase Hといった酵素は周知であり、広く入手可能である。
【0035】
パドロックプローブの末端領域が相補的cDNA配列とハイブリダイズすると、パドロックプローブは連結によって「環状化」される。パドロックプローブの環状化は、該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結することによって行われ得る。このための手順、試薬、および条件は当技術分野で周知であり、記載されており、好みに従って選択することができる。適切なリガーゼには、例えば、Tth DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、サーモコッカス属種(株9°N) DNAリガーゼ(9°N(商標) DNAリガーゼ、New England Biolabs)、Ampligase(商標) (Epicentre Biotechnologies)、およびT4 DNAリガーゼが含まれる。特定の態様では、パドロックプローブの環状化段階において、パドロックプローブの末端領域は、該末端領域間にギャップが存在するように、cDNAの非連続領域とハイブリダイズし得る。本方法のさらなる特定の態様において、ギャップは、1〜60ヌクレオチドのギャップ、好ましくは1〜40ヌクレオチドのギャップ、より好ましくは3〜40ヌクレオチドのギャップであってよい。特定の態様において、ギャップは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、または60ヌクレオチド、表示した値の間の任意の整数値のヌクレオチドのギャップであってよい。さらなる態様において、ギャップは60ヌクレオチドよりも大きくてよい。さらなる態様において、ギャップは60ヌクレオチドよりも大きなサイズを有し得る。さらなる態様において、該末端領域間のギャップは、ギャップオリゴヌクレオチドによって、またはパドロックプローブの3'末端を伸長させることによって埋められ得る。よってギャップオリゴヌクレオチドは、1〜60ヌクレオチドのサイズ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、もしくは60ヌクレオチド、または表示した値の間の任意の整数値のヌクレオチドのサイズを有し得る。さらなる態様において、ギャップオリゴヌクレオチドのサイズは、60ヌクレオチドよりも大きくてよい。
【0036】
環状化パドロックプローブのローリングサークル増幅または「RCA」は、プローブヌクレオチド配列の多数の縦列反復を含むコンカテマー増幅産物の合成をもたらす。RCA反応およびそのための条件は文献に広く記載されており、必要に応じて任意のそのような条件等を用いることができる。連結反応は、RCA反応の段階と同じ時期に(すなわち同時に)、すなわち同じ段階で行われ得る。いくつかの態様において、RCA反応は、パドロックプローブがハイブリダイズしたcDNA鎖の3'末端によってプライミングされる。他の態様では、cDNAの3'末端によるRCA反応のプライミングの代わりに、プライマーをパドロックプローブとハイブリダイズさせ、これがRCA反応をプライミングする。ある種の局面において、このプライマーは、パドロックプローブの5'および3'末端領域以外のパドロックプローブの領域とハイブリダイズする。
【0037】
パドロックプローブがハイブリダイズしたcDNA鎖の3'末端によってRCA反応がプライミングされる場合、RCAのプライマーを生成するように、cDNA中の対形成されていないいかなる3'ヌクレオチドも除去される。これは、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを用いることによって達成され得る。そのような標的プライミングRCA手順は当技術分野で公知であり、記載されており、そのような使用に適したポリメラーゼ酵素も当技術分野で公知であり、記載されている。したがって、例えば、ファイ29(φ29)ポリメラーゼ、クレノウ断片、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus) DNAポリメラーゼ(BST)、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、またはDNAポリメラーゼIなどのDNAポリメラーゼを用いることができる。当業者は、例えば、望ましい特徴を有するように操作されるかまたは変異させたDNAポリメラーゼを含む、用いられ得る他の適切なポリメラーゼを容易に決定することができる。RCA反応において、ポリメラーゼはこのように、鋳型として環状化パドロックプローブを用いて、cDNAの3'末端を伸長させる。RCAの結果として、プローブヌクレオチド配列の多数の縦列反復を含むコンカテマー増幅産物が生成され、試料中のRNAの存在および/または性質を示すものとして検出され得る。あるいは、遊離の3'末端を生成させるために、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有する別個の酵素を反応に添加することができ、この場合、RCAのために、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼをその後用いることができる。場合によっては、ハイブリダイズしたパドロックプローブの標的cDNAの3'末端に対する近接性に応じて、RCAのプライマーとして働くために適切な位置で遊離の3'末端を生成するようにcDNAを消化する必要がない場合もある。
【0038】
用語「パドロックプローブ」および「プローブ」ならびにそれらの複数形は同義であり、本明細書を通して互換的に用いられる。単一のパドロックプローブの使用は、本発明の方法の「一重」(「多重」に対立する)態様の場合に、すなわち、単一RNAまたはRNAの単一変種が検出される場合に行われる。パドロックプローブまたはRNAに関連して用いられる場合の「単一」という用語は、「単一種」という意味での単一を意味し、すなわち、検出のための試料中には同じ型の複数のRNA分子が存在してよく、そのRNAに特異的な複数の同一パドロックプローブを用いることができるが、そのような複数のものはRNAまたはパドロックプローブの特有の配列にのみ関連する。多重態様においては、細胞の試料中で2つまたはそれ以上の異なる標的RNAが検出される。そのような態様では、細胞の試料を各標的RNA用の複数のパドロックプローブと接触させ、試料と接触させるプローブの数は2つまたはそれ以上、例えば3つまたはそれ以上、4つまたはそれ以上等であってよい。任意で、10、15、または20個までのプローブを用いることができる。そのような方法は、ハイスループット適用において特に有用である。例えば、本方法は、単一反応において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40個、またはその中で導き出せる任意の範囲のパドロックプローブを使用することができる。
【0039】
例えば、1つの態様において、本方法は、試料を少なくとも第1および第2パドロックプローブと接触させる段階を含み、この場合、第1パドロックプローブは該cDNA上の隣接した領域と相補的な末端領域を含み、第2パドロックプローブは、第2パドロックプローブの5'または3'終端において第1パドロックプローブの末端領域と単一ヌクレオチドだけ異なる末端領域を含む。このようにして、2つのパドロックプローブを用いて、RNA配列中の単一ヌクレオチドの違いを検出することができる。例えば、第1パドロックプローブは、野生型mRNA配列と相補的なcDNAとハイブリダイズするように構成されることができ、第2パドロックプローブは、mRNA配列の単一ヌクレオチド変種と相補的なcDNAとハイブリダイズするように構成される。核酸置換の検出に加えて、パドロックプローブは、核酸配列中の挿入または欠失を検出するように構成されることもできる。
【0040】
パドロックプローブは、RCA鋳型として働くのに適した任意の長さのものであってよい。例えば、パドロックプローブは、約50〜150ヌクレオチド、好ましくは約60〜120ヌクレオチド、より好ましくは約70〜100ヌクレオチドの全長(2つのアームおよび背部断片を含む)を有し得る。したがって、パドロックプローブは、例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ヌクレオチドの長さを有し得る。パドロックプローブのアームは任意の適切な長さを有してよく、例えば、それぞれが約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、例えば13、24、25、26、27、28、29、30、32、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドの長さを有し得る。パドロックプローブの2つのアームの長さは、ある種の態様において、同一であるか、または例えば約1〜2ヌクレオチドの長さの違いを示して本質的に同一であってよい。さらなる態様において、2つのアームの長さは、一方が他方と3ヌクレオチド以上異なってよく、例えば、一方のアームは約15ヌクレオチドの長さを有するのに対して、他方は約20ヌクレオチドの長さを有する。長さの違いは、好ましくは5〜7ヌクレオチドを上回らなくてよい。プローブは、cDNAと相補的である末端領域に加えて、RCAまたはRCA産物の検出もしくはさらなる増幅に有用な特徴または配列または部分を含み得る。そのような配列には、RCAプライマー、ハイブリダイゼーションプローブ、および/または増幅もしくは配列決定プライマーの結合部位が含まれ得る。したがって、パドロックプローブは、3'と5'の標的相補的領域を連結する「背部断片」を有すると見なされ得る。この背部断片または連結領域内に、環状化プローブのRCAによって増幅された場合に、RCPにおいて検出プローブまたはプライマーが結合し得る特定の配列を含めることにより、パドロックプローブは、RCPの検出のための検出部位を有する、またはより具体的には提供すると見なされ得る。よって、パドロックプローブは、多重アッセイの状況において、所与のRCA産物が関連するcDNAおよび拡張してこれと対応するmRNAを同定するために診断的に用いられ得る任意の「タグ」または「バーコード」配列を含み得る。そのような配列は単純に、特定のcDNAに「特異的」である(すなわち、これとのみハイブリダイズし得る)パドロックプローブ中にのみ存在するように設計された配列を含む一続きのヌクレオチドである。したがって、例えば、遺伝子型同定のためのパドロックプローブの状況において、タグ配列(または検出部位)は、野生型配列およびその変異体/配列変種を検出するように設計されたパドロックプローブに関して異なり得る。
【0041】
本発明のある種の局面において、パドロックプローブは「タグ」または「検出プローブ結合領域」を含む。検出プローブ結合領域を用いて、ローリングサークル増幅産物に検出プローブ結合領域を取り込み、その後これを標識検出プローブに対してハイブリダイズさせることができる。ローリングサークル増幅産物の検出において、差次的に標識された検出プローブが用いられ得るように、異なるパドロックプローブは異なる検出プローブ結合領域を有し得る。例えば、第1パドロックプローブは第1検出プローブ結合領域を含んでよく、第2パドロックプローブは第2検出プローブ結合領域を含んでよい。第1および第2パドロックプローブによって生成されたローリングサークル増幅産物がもしある場合に、第1パドロックプローブの第1検出プローブ結合領域と同一の配列を含む第1標識検出プローブ、および第1パドロックプローブの第2検出プローブ結合領域と同一の配列を含む第2標識検出プローブがそれらとハイブリダイズするように、次に試料を第1および第2標識検出プローブと接触させることができる。
【0042】
「検出」という用語は本明細書において広く用いられて、試料中の少なくとも1つのRNAの存在(すなわち、それが存在するかどうか、またはどの程度までそれが存在するどうか)を決定または測定する(例えば、定量的に決定する)任意の手段を含む。「局在」検出とは、RNAの検出をもたらすシグナルがRNAに局在することを意味する。そのためRNAは、試料中のその位置内でまたはその位置において検出され得る。言い換えれば、試料内のRNAの空間的位置(または局在性)が決定(または「検出」)され得る。このことは、RNAを、それが発現された細胞にもしくは細胞内に、または細胞もしくは組織試料内の位置に位置特定することができることを意味する。したがって、「局在検出」は、RNAの存在もしくは量および位置または非存在を何らかの方法で決定、測定、評価、またはアッセイする段階を含み得る。半定量的を含め、定量的および定性的な決定、測定、または評価が含まれる。そのような決定、測定、または評価は、例えば試料中の2つまたはそれ以上の異なるRNAが検出される場合、相対的であってよい。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「インサイチュー」という用語は、その天然状況における、すなわちそれが通常存在する細胞、器官、体液、または組織における、少なくとも1つのRNAの検出を指す。したがって、これは、RNAの自然または天然の局在性を指し得る。言い換えれば、RNAは、その天然の環境または状況において、それが存在する場所で、またはそれが存在する通りに検出され得る。したがって、RNAはその通常の位置から移動されず、すなわち、それは決して単離もしくは精製されず、または別の位置もしくは媒体に移行されること等もない。典型的に、本用語は、細胞内、または細胞、器官、体液、もしくは組織試料内で存在する通りのRNA、例えば、細胞もしくは組織内および/またはその通常もしくは天然の細胞環境内のその天然の局在性を指す。
【0044】
核酸を標識するための種々の標識が公知であり、ローリングサークル増幅産物の検出において用いることができる。そのような標識の非限定的な例には、蛍光標識、発色標識、放射性標識、発光標識、磁性標識、および電子密度標識が含まれる。増幅中に修飾または標識dNTPを用いるなど、標識を増幅産物に直接取り込むことができる。あるいは、標識プローブとのハイブリダイゼーションによるなど、増幅産物を間接的に標識することもできる。多重反応において、反応物中に存在し得るそれぞれ異なる増幅産物に対して、異なる標識が使用され得ることが企図される。
【0045】
検出の方法は、用いられる標識の種類に依存する。ある種の態様において、検出は、蛍光または発色標識の画像化または直接的可視化による。よって、本方法により、標的RNAの位置におけるインサイチューでの増幅産物の検出が可能になる。この感受性により、例えば、単一細胞レベルでの遺伝子型同定が可能になる。
【0046】
「試料」は、そのような試料がインサイチュー検出に適している範囲で、RNA分子が存在し得る細胞の任意の試料であってよい。典型的に、細胞は、RNAが存在し得る任意の生体、臨床、または環境試料、および具体的には、RNAが試料中の固定された、検出可能な、または可視化可能な位置に存在する試料であってよい。したがって試料は、RNAの通常または天然(インサイチュー)の局在性を反映する任意の試料、すなわちそれが通常または天然に存在する任意の試料である。試料は、例えば、身体の組織もしくは器官、または体液に由来し得る。そのような試料は有利には、細胞、または組織などの細胞の群であるか、またはそれらを含む。試料は、例えば、結腸、肺、膵臓、前立腺、皮膚、甲状腺、肝臓、卵巣、子宮内膜、腎臓、脳、精巣、リンパ液、血液、血漿、膀胱、もしくは乳房試料であってよく、または結腸、肺、膵臓、前立腺、皮膚、甲状腺、肝臓、卵巣、子宮内膜、腎臓、脳、精巣、リンパ液、血液、膀胱、もしくは乳房の細胞、細胞群、もしくは組織部分を含み得る。
【0047】
特に好ましいのは、RNAの定性的性質、すなわちそれが存在すること、またはmRNAのヌクレオチド配列、またはmRNA中の1つもしくは複数のヌクレオチドの存在および/もしくは同一性、ならびに細胞の他の特徴に対する局在性を明らかにするためにRNAが検出され得る、例えば上記のような、培養された、または回収された、または生検された細胞または組織試料などの試料である。細胞の試料は、新たに調製することができ、または固定もしくは凍結によるなど、任意の簡便な方法で事前処理することができる。よって、例えばFFPE組織(ホルマリン固定されたパラフィン包埋)といった、新鮮な、凍結された、または固定された細胞または組織を用いることができる。したがって、処理されたまたは未処理の組織切片を用いることができる。あるいは、組織の捺印試料を用いることもできる。この手順では、単層の細胞が表面(例えば、スライド)上にプリントされ、その形態は通常の組織切片と類似している。捺印は、新鮮な組織試料を用いて得られる。例えば、スライド上に固定化されるか、もしくはスライド上で増殖させた細胞、またはフローサイトメトリー用に調製された細胞といった、他の細胞学的調製物を用いることもできる。
【0048】
特定の態様では、細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし、調製物は新鮮凍結組織の調製物ではない。さらなる特定の態様では、細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、Superfrost Plusスライド上への播種を含む調製物ではない。さらに付加的な特定の態様では、細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、Larsson et al., Nature Methods, 2010, Vol 7 (5)、395-397ページに開示されている調製物ではない。極めて特定の態様では、細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、Larsson et al., Nature Methods, 2010, Vol 7 (5)、395-397ページのオンライン方法の項「Preparation of tissue sections」および/または「Sample pretreatment for in situ experiments」に開示されている調製物ではない。
【0049】
試料は、哺乳動物および非哺乳動物の動物細胞、植物細胞、ラン藻を含む藻類、真菌、細菌、原虫等のすべての型を含む、RNAを含有する任意の細胞型を含み得る。したがって代表的な試料には、臨床試料、例えば、全血および血液由来生成物、血液細胞、組織、生検標本、ならびに細胞培養物および細胞懸濁液等などの他の試料が含まれる。本発明のある種の局面において、試料は、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、甲状腺癌、肝癌、卵巣癌、子宮内膜癌、腎癌、脳癌、精巣癌、急性非リンパ性白血病、骨髄異形成、膀胱癌、頭頸部癌、または乳癌細胞などの癌細胞を含むか、または含むと疑われる。例えば、試料は、癌性であると疑われるか、または癌もしくは癌性細胞、または癌性細胞群もしくは組織中に見出されるmRNAを含むと疑われる結腸、肺、膵臓、前立腺、皮膚、甲状腺、肝臓、卵巣、子宮内膜、腎臓、脳、精巣、リンパ液、血液、血漿、膀胱、または乳房試料であってよい。
【0050】
いくつかの態様において、試料は、以前に癌を有することが知られ、それが治療されたまたは寛解した患者から得られる。場合によっては、患者は再発癌を有し得る。他の態様において、患者は転移を有し得るか、または転移を有する疑いがあってよく、または転移のリスクがあってよい。癌または転移のリスクがある患者は、家族歴のために、またはその他の遺伝的素因の決定においてリスクがあってよい。他の態様において、患者は、癌細胞または前癌細胞の病理を示す細胞を有すると判定された可能性があるか、またはそのように判定され得る。
【0051】
病理学命名法における癌「再発」とは、原発腫瘍の部位における癌の再増殖を指す。多くの癌について、そのような再発は、不完全な外科的除去、または隣接血液もしくは手術野外部のリンパ管中の微小転移病変によって生じる。逆に、「転移」とは、原発腫瘍の部位から離れた癌増殖を指す。癌の転移は、外科的切除前の原発腫瘍の部位からの腫瘍細胞の血管および/またはリンパ管浸透ならびに広がりによって生じると考えられている。治療された癌の二次発症を経験した患者は「再発」を起こしたと称されるが、これらの病変は通常、時間的に原発癌から離れた部位での遠隔転移であるという点で、癌統計に用いられる一般的な臨床命名法はいくらか紛らわしい。この臨床用語は本明細書で用いられ、すなわち、「再発」という用語は、臨床的再発の2つの形態を分離するために特定の病理的命名法が必要とされない場限り、後に生じるこれらの転移病変も意味する。
【0052】
ある種の態様において、試料は、化生、異形成、および/または過形成を含むがこれらに限定されない、前癌性または前悪性細胞を含む。それを用いて、扁平上皮化生、異形成、良性前立腺過形成細胞、および/または過形成病変などの、望ましくないが良性の細胞を同定することもできる。
【0053】
付加的な態様では、特定の種類の肺癌に関して、方法および組成物が実行される。それらは、特定の種類の肺癌と診断された、そのリスクがある、またはその症状を示す患者で実行され得る。いくつかの態様において、特定の種類の肺癌は、小細胞肺癌(SCLC)と区別される非小細胞肺癌(NSCLC)である。他の態様において、NSCLCは、扁平上皮癌(または類表皮癌)、腺癌、気管支肺胞上皮癌、または大細胞未分化癌である。
【0054】
ある種の態様では、特定の種類の結腸癌に関して、方法および組成物が実行される。それらは、特定の種類の結腸癌と診断された、そのリスクがある、またはその症状を示す患者で実行され得る。いくつかの態様において、特定の種類の結腸癌は、腺癌、平滑筋肉腫、結腸直腸リンパ腫、黒色腫、神経内分泌腫瘍(高悪性度および低悪性度)である。腺癌の場合、癌は粘液性または印環細胞にさらに下位分類され得る。
【0055】
「標的」、「標的配列」、「標的領域」、および「標的核酸」等という用語は、本明細書において同義に用いられ、検出されるか、または本方法で用いられる試薬が結合する核酸またはその領域もしくは配列、例えば、検出されるRNA、またはパドロックプローブをハイブリダイズさせるcDNA、もしくはより具体的にはその領域を指す。したがって標的配列はcDNA内にあってよく、この場合、cDNAヌクレオチド配列は標的RNAヌクレオチド配列に由来し、これと相補的であることが理解されるべきである。標的は、ある種の態様において、単一のRNA分子であってよい。他の態様において、標的は少なくとも1つのRNA分子、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上のRNA分子の群であってよい。これらのRNA分子は、分子型が異なってよく、および/または配列が異なってよい。
【0056】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、本明細書で用いられる場合、相補的な塩基対形成に起因する2本の一本鎖核酸による二重鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖の間で、またはミスマッチの少数領域を含む「実質的に相補的な」核酸鎖の間で起こり得る。完全に相補的な核酸鎖のハイブリダイゼーションが強力に優先される条件は、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「配列特異的ハイブリダイゼーション条件」と称される。実質的に相補的な配列の安定した二重鎖は、ストリンジェンシーがより低いハイブリダイゼーション条件下で達成され得る;許容されるミスマッチの程度は、ハイブリダイゼーション条件を適切に調整することによって管理することができる。核酸技術の分野の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さおよび塩基対組成、イオン強度、ならびにミスマッチ塩基対の頻度を含む、多くの変数を考慮しつつ、当技術によって提供される手引きに従って、二重鎖の安定性を経験的に決定することができる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., 1989.;Wetmur, 1991;およびOwczarzy et al., 2008を参照されたい)。したがって、適切なプライマーおよびプローブの設計、ならびにそれらがそれぞれの標的とハイブリダイズする条件は、十分に当業者の日常的な技術の範囲内である。
【0057】
KRASの変異は、いくつかの種類の癌においてよく見られる。ある種の態様において、本発明は、インサイチューでKRAS変異の有無を検出するための方法を提供する。特定の態様において、本方法は、12AGT、12CGT、12TGT、12GAT、12GCT、12GTT、および13GAC(野生型配列は12GGTおよび13GGCである)、ならびにKRASコドン61の変異体、KRASコドン146の変異体、およびKRASの3'非翻訳領域の変異体からなる群より選択される1つまたは複数の変異体KRAS mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成されたパドロックプローブを用いる。ある種の態様において、本方法は、野生型KRAS配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成されたパドロックプローブを用いる。さらなる態様において、本方法は、12AGT、12CGT、12TGT、12GAT、12GCT、12GTT、および13GAC(野生型配列は12GGTおよび13GGCである)、ならびにKRASコドン61の変異体、KRASコドン146の変異体、およびKRASの3'非翻訳領域の変異体からなる群より選択される1つまたは複数の変異体KRAS mRNA配列;ならびに12GGTおよび13GGC、KRASコドン61、KRASコドン146、およびKRASの3'非翻訳領域の野生型配列からなる群より選択される1つまたは複数の野生型KRAS mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成されたパドロックプローブを用いる。
【0058】
別の態様において、本発明は、HER2、cMyc、TERT、APC、Braf、PTEN、PI3K、および/またはEGFRをコードするmRNAにおける変異の有無を検出するための方法を提供する。特定の態様において、本方法は、1つまたは複数の変異体HER2、cMyc、TERT、Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成されたパドロックプローブを用いる。さらなる態様において、本方法は、1つまたは複数の野生型HER2、cMyc、TERT、Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成されたパドロックプローブを用いる。さらなる態様において、パドロックプローブは、1つまたは複数の変異体Braf、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列、ならびに1つまたは複数の野生型Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される。よって本発明は、変異体および野生型のBraf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列の1つまたは複数に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出するための方法を提供する。
【0059】
さらに別の群の態様において、パドロックプローブは、1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体Braf mRNA配列;または1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体APC mRNA配列;または1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PTEN mRNA配列;または1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される。よって本発明は、変異体KRASおよび変異体Braf mRNA配列に対応するか;または変異体KRASおよび変異体APC mRNA配列に対応するか;または変異体KRASおよび変異体PTEN mRNA配列に対応するか;または変異体KRASおよび変異体PI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出するための方法を提供する。
【0060】
さらなる態様において、パドロックプローブは、野生型KRASおよび野生型Braf mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよび野生型APC mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよび野生型PTEN mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよび野生型PI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される。よって本発明は、野生型KRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出するための方法を提供する。
【0061】
さらなる態様群において、パドロックプローブは、(i) 1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体Braf mRNA配列に対応するか;または1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異APC mRNA配列に対応するか;または1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PTEN mRNA配列に対応するか;または1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PI3K mRNA配列に対応し;かつ(ii) 野生型KRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される。よって本発明は、1つもしくは複数の変異体および野生型のKRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または1つもしくは複数の変異体および野生型のKRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または1つもしくは複数の変異体および野生型のKRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または1つもしくは複数の変異体および野生型のKRASおよびPI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出するための方法を提供する。
【0062】
1つの態様において、本発明は、以下を含む、KRAS遺伝子に対する変異に特異的なパドロックプローブの集合を提供する:
(a) Y1-X1-Z1-A
(b) Y1-X1-Z1-T
(c) Y1-X1-Z1-C
(d) Y2-X1-Z2-A
(e) Y2-X1-Z2-T
(f) Y2-X1-Z2-C、および
(g) Y3-X1-Z3-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y2+Z2=20〜40ヌクレオチドであり;
Y3+Z3=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;
Y2は、
であり;
Y3は、
であり;
Z1は、
、または結合であり;
Z2は、
、または結合であり;かつ
Z3は、
、または結合である。
【0063】
いくつかの態様において、KRASプローブの集合は以下をさらに含む:
(h) Y1-X2-Z1-G
(i) Y2-X2-Z2-G
(j) Y3-X2-Z3-G
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
【0064】
特定の態様において、KRASプローブの集合は以下をさらに含む:
(h) Y1-X2-Z1-G
(i) Y2-X2-Z2-G
(j) Y3-X2-Z3-G
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり、X1とは異なる。
【0065】
さらなる態様において、本発明は、以下を含む、Braf遺伝子に対する変異に特異的なパドロックプローブの集合を提供する:
(k) Y1-X1-Z1-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;かつ
Z1は、
、または結合である。
【0066】
いくつかの態様において、Brafプローブの集合は以下をさらに含む:
(l) Y1-X2-Z1-T
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
【0067】
特定の態様において、Brafプローブの集合は以下をさらに含む:
(l) Y1-X2-Z1-T
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり、X1とは異なる。
【0068】
さらなる態様において、本発明は、以下を含む、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合を提供する:
(m) Y1-X1-Z1-W
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して3'側の5〜20ヌクレオチドを含み;
Z1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して5'側の5〜20ヌクレオチドを含み;かつ
Wは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異と相補的なヌクレオチドである。
【0069】
いくつかの態様において、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なプローブの集合は、以下をさらに含む:
(n) Y1-X2-Z1-V
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり;かつ
Vは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異の部位における野生型配列と相補的なヌクレオチドである。
【0070】
特定の態様において、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なプローブの集合は、以下をさらに含む:
(n) Y1-X2-Z1-V
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり、X1とは異なり;および
Vは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異の部位における野生型配列と相補的なヌクレオチドである。
【0071】
いくつかの態様において、X1は25〜50ヌクレオチドである。ある種の態様において、X1は少なくとも1個の標識ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、各プローブ(a)〜(g)は同じX1を有する。いくつかの態様において、(a)〜(g)、(k)、および(m)より選択される各プローブは、同じX2を有する。
【0072】
本発明のある種の局面において、Y1+Z1、Y2+Z2、およびY3+Z3はそれぞれ、少なくとも約25ヌクレオチドである。
【0073】
本発明のある種の局面において、プローブの集合中の各プローブは、少なくとも40%のGC含量を有する。
【0074】
いくつかの態様において、本発明は、例えば上記のような、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な、Braf遺伝子に対する変異に特異的な、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合、および任意で、対応する野生型配列に特異的なパドロックプローブの集合を提供し、該集合は、(i) KRAS遺伝子、(ii) KRAS遺伝子およびBraf遺伝子、(iii) KRAS遺伝子およびAPC遺伝子、(iv) KRAS遺伝子およびPTEN遺伝子、または(v) KRAS遺伝子およびPI3K遺伝子における複数の変異を検出することができ、該複数の変異が、癌と関連するKRAS変異の少なくとも40%を構成する。
【0075】
さらなる態様において、本発明は、例えば上記のような、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な、Braf遺伝子に対する変異に特異的な、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合、および任意で、対応する野生型配列に特異的なパドロックプローブの集合を提供し、(i) KRAS遺伝子、(ii) KRAS遺伝子およびBraf遺伝子、(iii) KRAS遺伝子およびAPC遺伝子、(iv) KRAS遺伝子およびPTEN遺伝子、または(v) KRAS遺伝子およびPI3K遺伝子に対する変異の検出により、癌の存在または癌の素因を決定することが可能になる。
【0076】
特定の態様において、前記の癌または癌の素因は、腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者の少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%、好ましくは約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%、より好ましくは約80%、約85%、約90%、または約95%において決定される。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、患者または患者群におけるKRAS変異体腫瘍の有無を決定するためまたはKRAS変異体腫瘍の素因を決定するための、例えば上記のような、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な、Braf遺伝子に対する変異に特異的な、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合、および任意で、対応する野生型配列に特異的なパドロックプローブの集合の使用を提供する。
【0078】
特定の態様では、患者または患者群におけるKRAS変異体腫瘍の有無の決定、またはKRAS変異体腫瘍の素因の決定により、腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%、好ましくは約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%、より好ましくは約80%、約85%、約90%、または約95%において、癌の存在を決定することが可能になる。
【0079】
「腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者」または「腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群」とは、各患者または群のメンバーが、腫瘍発生と関連する、例えば、腫瘍の前形態もしくは腫瘍の素因と関連する、異なる腫瘍発生段階と関連する、または完全に成長した腫瘍もしくは癌と関連すると、科学文献に記載されているかまたは当業者に知られているKRAS遺伝子の少なくとも1つの変異(または対応する変異体)を含む個体または個体群を指す。特定の態様において、これらの変異または変異体は、癌または前癌と関連する、2012年2月15日現在のSangerデータベース(sanger.ac.ukにおけるワールドワイドウェブ上)に由来し得るような変異を含む。
【0080】
特定の態様において、患者群、すなわち患者群の各メンバーは、腫瘍発生と関連するKRAS変異、ならびにBraf遺伝子、および/またはAPC遺伝子、および/またはPTEN遺伝子、および/またはPI3K遺伝子の付加的な変異を有し得る。変異のこれらの組み合わせは、KRAS変異と関連する腫瘍発生に寄与し得る;またはそれらは、癌もしくは前癌形態、または癌の素因と関連する変異の組み合わせに寄与し得る。さらなる特定の態様において、患者群、すなわち患者群の各メンバーは、Braf遺伝子、および/またはAPC遺伝子、および/またはPTEN遺伝子、および/またはPI3K遺伝子の変異を有し得る。これらの変異は、Sangerデータベース(sanger.ac.ukにおけるワールドワイドウェブ上)に由来し得るように、癌もしくは前癌、または癌の素因と関連している。さらなる特定の態様において、患者群、すなわち患者群の各メンバーは、EGFR遺伝子、および/またはKRAS遺伝子、および/またはBraf遺伝子、および/またはAPC遺伝子、および/またはPTEN遺伝子、および/またはPI3K遺伝子の変異を有し得る。これらの変異は、Sangerデータベース(sanger.ac.ukにおけるワールドワイドウェブ上)に由来し得るように、癌もしくは前癌、または癌の素因と関連している。さらに、本発明に従って検出され得る、または本発明の組成物との関連で使用され得るEGFR変異の例を表7に示す。
【0081】
ある種の態様において、前記の癌は、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、甲状腺癌、肝癌、卵巣癌、子宮内膜癌、腎癌、脳癌、精巣癌、急性非リンパ性白血病、骨髄異形成、膀胱癌、頭頸部癌、または乳癌である。さらなる態様において、癌の素因は、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、甲状腺癌、肝癌、卵巣癌、子宮内膜癌、腎癌、脳癌、精巣癌、急性非リンパ性白血病、骨髄異形成、膀胱癌、頭頸部癌、または乳癌の素因である。
【0082】
さらなる態様において、結腸直腸癌は、転移性結腸直腸癌、腺癌、平滑筋肉腫、結腸直腸リンパ腫、黒色腫、または神経内分泌腫瘍である。他の態様において、肺癌は非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC)である。
【0083】
さらなる態様において、本発明は、例えば上記のような、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な、Braf遺伝子に対する変異に特異的な、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合、および任意で、対応する野生型配列に特異的なパドロックプローブの集合、または
(i) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約25〜約60%における結腸直腸癌の存在;
(ii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約25〜約60%における肺癌の存在;
(iii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約80〜約90%における膵癌の存在;
(iv) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約25%における前立腺癌の存在;
(v) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約25%における皮膚癌の存在;
(vi) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約60%における甲状腺癌の存在;
(vii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約10〜約25%における肝癌の存在;
(viii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約50%における卵巣癌の存在;
(ix) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約10〜40%における子宮内膜癌の存在;
(x) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約50%における腎癌の存在;
(xi) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約15%における脳癌の存在;
(xii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約10〜45%における精巣癌の存在;
(xiii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約15%における急性非リンパ性白血病の存在;
(xiv) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5%における膀胱癌の存在;
(xv) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約10%における頭頸部癌の存在;もしくは
(xvi) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約10%における乳癌の存在
を決定することを可能にする、例えば上記のようなそれらの使用を提供する。いくつかの態様において、プローブの上記の集合は、以下のうちの1つまたは複数と共にキット内に提供される:
(ii) 1個もしくは複数個のロックド核酸を含みかつ前記標的RNAとハイブリダイズできる、逆転写酵素プライマー;
(iii) 逆転写酵素;
(iv) リボヌクレアーゼ;
(v) リガーゼ;
(vi) 3'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ;
(vii) 前記パドロックプローブの相補体とハイブリダイズできる検出プローブ;または
(ix) ヌクレオチド。
【0084】
さらなる態様において、本発明は、以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のKRAS遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法を提供する:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、例えば上記のような、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な、Braf遺伝子に対する変異に特異的な、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合、および任意で、対応する野生型配列に特異的なパドロックプローブの集合より選択される配列を含む、段階。
【0085】
1つの態様において、本発明は、以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のKRAS遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法を提供する:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、以下からなる群より選択される配列を含む、段階:
(a) Y1-X1-Z1-A
(b) Y1-X1-Z1-T
(c) Y1-X1-Z1-C
(d) Y2-X1-Z2-A
(e) Y2-X1-Z2-T
(f) Y2-X1-Z2-C、および
(g) Y3-X1-Z3-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y2+Z2=20〜40ヌクレオチドであり;
Y3+Z3=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;
Y2は、
であり;
Y3は、
であり;
Z1は、
、または結合であり;
Z2は、
、または結合であり;かつ
Z3は、
、または結合である;
(d) 該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結する段階;
(e) 3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて、該環状化パドロックプローブをRCAに供する段階であって、必要に応じて該エキソヌクレアーゼ活性がcDNAを消化して、ローリングサークル増幅(RCA)のプライマーとして働く遊離の3'末端を生成する、段階;ならびに
(f) ローリングサークル増幅産物を検出する段階。
【0086】
本方法のいくつかの態様において、段階(c)は、前記試料を、それぞれが野生型KRAS遺伝子に特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(h)、(i)、および(j)と接触させることをさらに含む:
(h) Y1-X2-Z1-G
(i) Y2-X2-Z2-G、および
(j) Y3-X2-Z3-G
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
【0087】
本方法の特定の態様において、段階(c)は、前記試料を、それぞれが野生型KRAS遺伝子に特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(h)、(i)、および(j)と接触させることをさらに含む:
(h) Y1-X2-Z1-G
(i) Y2-X2-Z2-G、および
(j) Y3-X2-Z3-G
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり、X1とは異なる。
【0088】
さらなる態様において、本発明は、以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のBraf遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法を提供する:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、Braf遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、以下からなる群より選択される配列を含む、段階:
(k) Y1-X1-Z1-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;かつ
Z1は、
、または結合である
(d) 該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結する段階;
(e) 3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて、該環状化パドロックプローブをRCAに供する段階であって、必要に応じて該エキソヌクレアーゼ活性がcDNAを消化して、ローリングサークル増幅(RCA)のプライマーとして働く遊離の3'末端を生成する、段階;ならびに
(f) ローリングサークル増幅産物を検出する段階。
【0089】
本方法のいくつかの態様において、段階(c)は、前記試料を、それぞれが野生型Braf遺伝子に特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(l)と接触させることをさらに含む:
(l) Y1-X2-Z1-T
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
【0090】
本方法の特定の態様において、段階(c)は、前記試料を、それぞれが野生型Braf遺伝子に特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(l)と接触させることをさらに含む:
(l) Y1-X2-Z1-T
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり、X1とは異なる。
【0091】
さらなる態様において、本発明は、以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のAPC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRの1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法を提供する:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、以下からなる群より選択される配列を含む、段階:
(m) Y1-X1-Z1-W
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して3'側の5〜20ヌクレオチドを含み;
Z1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して5'側の5〜20ヌクレオチドを含み;かつ
Wは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異と相補的なヌクレオチドである。
【0092】
本方法のいくつかの態様において、段階(c)は、前記試料を、それぞれが野生型APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(n)と接触させることをさらに含む:
(n) Y1-X2-Z1-V
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり;かつ
Vは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異の部位における野生型配列と相補的なヌクレオチドである。
【0093】
本方法の特定の態様において、段階(c)は、前記試料を、それぞれが野生型APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(n)と接触させることをさらに含む:
(n) Y1-X2-Z1-V
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり、X1とは異なり;および
Vは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異の部位における野生型配列と相補的なヌクレオチドである。
【0094】
いくつかの態様において、X1およびX2はそれぞれ少なくとも1個の標識ヌクレオチドを含む。本発明のある種の局面において、標識はフルオロフォアまたは発色団である。ある種の態様において、(a)〜(g)、(k)、および(m)より選択される各プローブは、同じX1を有する。ある種の態様において、(h)〜(j)、(l)、および(n)より選択される各プローブは、同じX2を有する。
【0095】
本方法のある種の態様において、プライマーは、2'O-Me RNA、メチルホスホナート、もしくは2' Fluor RNA塩基、ペプチジル核酸残基、またはロックド核酸残基を含む。いくつかの態様において、試料は、1つまたは複数の細胞を含む固定組織切片、新鮮凍結組織、捺印試料、または細胞学的調製物を含む。
【0096】
本明細書に記載されるいかなる方法または組成物も、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実行され得ることが企図される。
【0097】
「含む(comprise)」(ならびに含む(comprise)の任意の形態、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」など)、「有する(have)」(ならびに有する(have)の任意の形態、例えば「有する(has)」および「有する(having)」など)、「含有する(contain)」(ならびに含有する(contain)の任意の形態、例えば「含有する(contains)」および「含有する(containing)」など)、および「含む(include)」(ならびに含む(include)の任意の形態、例えば「含む(includes)」および「含む(including)」など)という用語は、非制限的連結動詞である。結果として、列挙された1つまたは複数の段階または要素を「含む(comprises)」、「有する」、「含有する」、または「含む(includes)」方法、組成物、キット、または系は、列挙されたそれらの段階または要素を持っているが、それらの段階または要素のみを持っていることに限定されない;それは、列挙されていない要素または段階を持っていても(すなわち、網羅しても)よい。同様に、列挙された1つまたは複数の特徴を「含む(comprises)」、「有する」、「含有する」、または「含む(includes)」方法、組成物、キット、または系の要素も、それらの特徴を持っているが、それらの特徴のみを持っていることに限定されない;それは、列挙されていない特徴を持っていてもよい。
【0098】
本方法、組成物、キット、および系のいずれかの任意の態様は、記載された段階および/または特徴を含む(comprise)/含む(include)/含有する/有するというよりもむしろ、それらからなり得るか、または本質的にそれらからなり得る。したがって、添付の特許請求の範囲のいずれにおいても、「〜からなる」または「本質的に〜からなる」という用語を上記の非制限的連結動詞のいずれかと置き換えて、所与の請求項の範囲を、非制限的連結動詞を用いている、その請求項の範囲を置きかえなかった場合のものから変更することができる。
【0099】
添付の特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明示されていない限り、または選択肢が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために用いられるが、その開示は選択肢のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。
【0100】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用された装置または方法に関する誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。
【0101】
長年の特許法に従って、添付の特許請求の範囲または明細書において「含む」という単語と共に用いられる場合の、「1つの(a)」および「1つの(an)」という単語は、特記されない限り、1つまたは複数を意味する。
【0102】
[本発明1001]
以下の段階を含む、1つまたは複数の細胞の試料中の少なくとも1つの標的RNAを局在インサイチュー検出するための方法:
試料中のRNAと相補的なcDNAを作製する段階;
該cDNAとハイブリダイズしているRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
該試料を、該cDNAと相補的な末端領域を含む1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階、および該パドロックプローブを該相補的末端領域においてcDNAとハイブリダイズさせる段階;
該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結することにより、該パドロックプローブを環状化する段階;
該環状化パドロックプローブをローリングサークル増幅(RCA)に供する段階;
ローリングサークル増幅産物を検出する段階。
[本発明1002]
RNAがmRNAである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
試料中のRNAと相補的なcDNAを作製する段階が、該試料を逆転写酵素および逆転写プライマーと接触させる段階を含む、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
逆転写プライマーがリボヌクレアーゼ耐性である、本発明1003の方法。
[本発明1005]
逆転写プライマーが、前記細胞内に固定化され得るように修飾される、本発明1003または1004の方法。
[本発明1006]
逆転写プライマーが、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基を有する、本発明1005の方法。
[本発明1007]
逆転写プライマーが、2'O-Me RNA、メチルホスホナート、もしくは2' Fluor RNA塩基、ロックド核酸残基、またはペプチド核酸残基を含む、本発明1004〜1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
逆転写プライマーが1個または複数個のロックド核酸残基を含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
逆転写プライマーが、プライマー配列中に、1個または複数個の天然または合成ヌクレオチドによって分離された2個またはそれ以上のロックド核酸を含む、本発明1007の方法。
[本発明1010]
リボヌクレアーゼがRNase Hである、本発明1001〜1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
ローリングサークル増幅が、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを使用し、必要に応じて該エキソヌクレアーゼ活性がcDNAを消化して、該RCAのプライマーとして働く遊離の3'末端を生成する、本発明1001〜1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記DNAポリメラーゼがφ29ポリメラーゼである、本発明1011の方法。
[本発明1013]
cDNAを消化して、前記RCAのプライマーとして働く遊離の3'末端を生成させるために、試料をエキソヌクレアーゼと接触させる段階をさらに含む、本発明1001〜1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記接触させる段階において、前記試料を少なくとも第1および第2パドロックプローブと接触させ、第1パドロックプローブが前記cDNA上の隣接した領域と相補的な末端領域を含み、第2パドロックプローブが、第2パドロックプローブの5'または3'終端において第1パドロックプローブの末端領域と単一ヌクレオチドだけ異なる末端領域を含む、本発明1001〜1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
第1パドロックプローブが、野生型mRNAと相補的なcDNAとハイブリダイズするように構成され、第2パドロックプローブが、該mRNAの単一ヌクレオチド変種と相補的なcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1014の方法。
[本発明1016]
第1パドロックプローブが第1検出プローブ結合領域を含み、第2パドロックプローブが第2検出プローブ結合領域を含む、本発明1014または1015の方法。
[本発明1017]
前記試料を少なくとも、第1パドロックプローブの第1検出プローブ結合領域と同一の配列を含む第1標識検出プローブ、および第1パドロックプローブの第2検出プローブ結合領域と同一の配列を含む第2標識検出プローブと接触させる段階、ならびに第1および第2標識検出プローブをローリングサークル増幅産物とハイブリダイズさせる段階をさらに含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
ローリングサークル増幅産物とハイブリダイズしている第1標識検出プローブからのシグナルを検出する段階、またはローリングサークル増幅産物とハイブリダイズしている第2標識検出プローブからのシグナルを検出する段階、またはローリングサークル増幅産物とハイブリダイズしている第1および第2標識検出プローブの両方からのシグナルを検出する段階をさらに含み、第1標識検出プローブの検出により、細胞内の野生型mRNAの存在が示され、かつ第2標識検出プローブの検出により、細胞内の変種mRNAの存在が示される、本発明1017の方法。
[本発明1019]
標識検出プローブが、異なる蛍光標識、発色標識、放射性標識、発光標識、磁性標識、または電子密度標識を含む、本発明1017または1018の方法。
[本発明1020]
複数の異なるパドロックプローブを用いて、複数の異なるRNAが検出される、本発明1001〜1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
RNAが単一細胞において検出される、本発明1001〜1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
試料が、1つまたは複数の細胞を含む固定組織切片、捺印試料、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織切片、または細胞学的調製物を含む、本発明1001〜1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
試料が新鮮凍結組織を含む、本発明1001〜1021のいずれかの方法。
[本発明1024]
試料がホルマリン固定されたパラフィン包埋組織切片である、本発明1022の方法。
[本発明1025]
前記試料が、身体の組織もしくは器官、または体液に由来する、本発明1001〜1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記試料が、結腸、肺、膵臓、前立腺、皮膚、甲状腺、肝臓、卵巣、子宮内膜、腎臓、脳、精巣、リンパ液、血液、血漿、膀胱、または乳房試料である、本発明1025の方法。
[本発明1027]
試料が、癌細胞中に見出されるRNAを含むと疑われる、本発明1001〜1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
前記癌が、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、甲状腺癌、肝癌、卵巣癌、子宮内膜癌、腎癌、脳癌、精巣癌、急性非リンパ性白血病、骨髄異形成、膀胱癌、頭頸部癌、もしくは乳癌、またはそれらの任意の早期発症段階、またはそれらの任意の前形態である、本発明1027の方法。
[本発明1029]
RNAが、KRAS、HER2、cMyc、TERT、APC、Braf、PTEN、PI3K、EGF、およびβ-アクチンをコードするmRNAを含むか該mRNAからなる群より選択される、少なくとも1つのmRNAである、本発明1001〜1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
RNAがKRASをコードするmRNAである、本発明1029の方法。
[本発明1031]
前記パドロックプローブが、12AGT、12CGT、12TGT、12GAT、12GCT、12GTT、および13GAC、KRASコドン61の変異体、KRASコドン146の変異体、ならびにKRASの3'非翻訳領域の変異体からなる群より選択される1つまたは複数の変異体KRAS mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1030の方法。
[本発明1032]
前記変異体KRAS mRNA配列の1つまたは複数に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記パドロックプローブが、12GGTおよび13GGC、KRASコドン61、KRASコドン146、およびKRASの3'非翻訳領域の野生型配列からなる群より選択される1つまたは複数の野生型KRAS mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1030の方法。
[本発明1034]
前記野生型KRAS mRNA配列の1つまたは複数に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1033の方法。
[本発明1035]
前記パドロックプローブが、12AGT、12CGT、12TGT、12GAT、12GCT、12GTT、および13GAC、KRASコドン61の変異体、KRASコドン146の変異体、ならびにKRASの3'非翻訳領域の変異体からなる群より選択される1つまたは複数の変異体KRAS mRNA配列;ならびに12GGTおよび13GGC、KRASコドン61、KRASコドン146、およびKRASの3'非翻訳領域の野生型配列からなる群より選択される1つまたは複数の野生型KRAS mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1030〜1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記変異体および野生型KRAS mRNA配列の1つまたは複数に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1035の方法。
[本発明1037]
RNAがEGFRをコードするmRNAである、本発明1029の方法。
[本発明1038]
1つまたは複数の変種EGFR mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1037の方法。
[本発明1039]
前記変種EGFR mRNA配列の1つまたは複数が挿入変異または欠失変異を含む、本発明1038の方法。
[本発明1040]
RNAが、Braf、APC、PTEN、またはPI3KをコードするmRNAである、本発明1029の方法。
[本発明1041]
前記パドロックプローブが、1つまたは複数の変異体Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1040の方法。
[本発明1042]
1つまたは複数の変異体Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1041の方法。
[本発明1043]
前記パドロックプローブが、1つまたは複数の野生型Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1040の方法。
[本発明1044]
前記野生型Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
前記パドロックプローブが、1つまたは複数の変異体Braf、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列、ならびに1つまたは複数の野生型Braf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1040〜1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記変異体および野生型のBraf、APC、PTEN、および/またはPI3K mRNA配列の1つまたは複数に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
RNAが、BrafおよびKRASをコードするmRNA、またはKRASおよびAPCをコードするmRNA、またはKRASおよびPTENをコードするmRNA、またはKRASおよびPI3KをコードするmRNAである、本発明1029の方法。
[本発明1048]
前記パドロックプローブが、本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体Braf mRNA配列;または本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体APC mRNA配列;または本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PTEN mRNA配列;または本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1047の方法。
[本発明1049]
前記変異体KRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または前記変異体KRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または前記変異体KRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または前記変異体KRASおよびPI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1048の方法。
[本発明1050]
前記パドロックプローブが、野生型KRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1047の方法。
[本発明1051]
前記野生型KRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または前記野生型KRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または前記野生型KRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または前記野生型KRASおよびPI3K mRNA配列に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1050の方法。
[本発明1052]
前記パドロックプローブが、(i) 本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体Braf mRNA配列に対応するか;または本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体APC mRNA配列に対応するか;または本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PTEN mRNA配列に対応するか;または本発明1031の1つもしくは複数の変異体KRAS mRNA配列、および1つもしくは複数の変異体PI3K mRNA配列に対応し;かつ(ii) 野生型KRASおよびBraf mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびAPC mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPTEN mRNA配列に対応するか;または野生型KRASおよびPI3K mRNA配列に対応するcDNAとハイブリダイズするように構成される、本発明1047〜1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記変異体および野生型のKRASおよびBraf mRNA配列の1つもしくは複数に対応するか;または前記変異体および野生型のKRASおよびAPC mRNA配列の1つもしくは複数に対応するか;または前記変異体および野生型のKRASおよびPTEN mRNA配列の1つもしくは複数に対応するか;または前記変異体および野生型のKRASおよびPI3K mRNA配列の1つもしくは複数に対応するローリングサークル増幅産物の有無を検出する段階を含む、本発明1052の方法。
[本発明1054]
以下を含む、KRAS遺伝子に対する変異に特異的なパドロックプローブの集合:
(a) Y1-X1-Z1-A
(b) Y1-X1-Z1-T
(c) Y1-X1-Z1-C
(d) Y2-X1-Z2-A
(e) Y2-X1-Z2-T
(f) Y2-X1-Z2-C、および
(g) Y3-X1-Z3-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y2+Z2=20〜40ヌクレオチドであり;
Y3+Z3=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;
Y2は、
であり;
Y3は、
であり;
Z1は、
、または結合であり;
Z2は、
、または結合であり;かつ
Z3は、
、または結合である。
[本発明1055]
以下をさらに含む、本発明1054のプローブの集合:
(h) Y1-X2-Z1-G
(i) Y2-X2-Z2-G
(j) Y3-X2-Z3-G
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
[本発明1056]
以下を含む、Braf遺伝子に対する変異に特異的なパドロックプローブの集合:
(k) Y1-X1-Z1-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;かつ
Z1は、
、または結合である。
[本発明1057]
以下をさらに含む、本発明1056のプローブの集合:
(l) Y1-X2-Z1-T
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
[本発明1058]
以下を含む、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的なパドロックプローブの集合:
(m) Y1-X1-Z1-W
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して3'側の5〜20ヌクレオチドを含み;
Z1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して5'側の5〜20ヌクレオチドを含み;かつ
Wは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異と相補的なヌクレオチドである。
[本発明1059]
以下をさらに含む、本発明1058のプローブの集合:
(n) Y1-X2-Z1-V
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり;かつ
Vは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異の部位における野生型配列と相補的なヌクレオチドである。
[本発明1060]
X2がX1とは異なる、本発明1055、1057、または1059のいずれかのプローブの集合。
[本発明1061]
各プローブが少なくとも40%のGC含量を有する、本発明1054〜1060のいずれかのプローブの集合。
[本発明1062]
Xが25〜50である、本発明1054〜1061のいずれかのプローブの集合。
[本発明1063]
Xが少なくとも1個の標識ヌクレオチドを含む、本発明1054〜1062のいずれかのプローブの集合。
[本発明1064]
(a)〜(g)、(k)、および(m)より選択される各プローブが同じX1を有する、本発明1054〜1063のいずれかのプローブの集合。
[本発明1065]
(h)〜(j)、(l)、および(n)より選択される各プローブが同じX2を有する、本発明1054〜1064のいずれかのプローブの集合。
[本発明1066]
Y1+Z1、Y2+Z2、およびY3+Z3のそれぞれが少なくとも約25ヌクレオチドである、本発明1054〜1065のいずれかのプローブの集合。
[本発明1067]
(i) KRAS遺伝子、(ii) KRAS遺伝子およびBraf遺伝子、(iii) KRAS遺伝子およびAPC遺伝子、(iv) KRAS遺伝子およびPTEN遺伝子、または(v) KRAS遺伝子およびPI3K遺伝子における複数の変異を検出することができ、該複数の変異が、癌と関連するKRAS変異の少なくとも40%を構成する、本発明1054〜1066のいずれかのプローブの集合。
[本発明1068]
(i) KRAS遺伝子、(ii) KRAS遺伝子およびBraf遺伝子、(iii) KRAS遺伝子およびAPC遺伝子、(iv) KRAS遺伝子およびPTEN遺伝子、または(v) KRAS遺伝子およびPI3K遺伝子に対する変異の検出により、癌の存在または癌の素因を決定することが可能になる、本発明1054〜1066のいずれかのプローブの集合。
[本発明1069]
癌の存在または癌の素因が、腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者の少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%において決定される、本発明1068のプローブの集合。
[本発明1070]
患者または患者群におけるKRAS変異体腫瘍の有無を決定するためまたはKRAS変異体腫瘍の素因を決定するための、本発明1054〜1069のいずれかのプローブの集合の使用。
[本発明1071]
腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%において、癌の存在を決定することを可能にする、本発明1070の使用。
[本発明1072]
前記癌が、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、甲状腺癌、肝癌、卵巣癌、子宮内膜癌、腎癌、脳癌、精巣癌、急性非リンパ性白血病、骨髄異形成、膀胱癌、頭頸部癌、または乳癌であり、かつ癌の前記素因が該癌のうちの1つの素因である、本発明1067〜1069のいずれかのプローブの集合、または本発明1070もしくは1071の使用。
[本発明1073]
以下を決定することを可能にする、本発明1072のプローブの集合または使用:
(i) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約25〜約60%における結腸直腸癌の存在;
(ii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約25〜約60%における肺癌の存在;
(iii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約80〜約90%における膵癌の存在;
(iv) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約25%における前立腺癌の存在;
(v) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約25%における皮膚癌の存在;
(vi) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約60%における甲状腺癌の存在;
(vii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約10〜約25%における肝癌の存在;
(viii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約50%における卵巣癌の存在;
(ix) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約10〜40%における子宮内膜癌の存在;
(x) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約50%における腎癌の存在;
(xi) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約15%における脳癌の存在;
(xii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約10〜45%における精巣癌の存在;
(xiii) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約15%における急性非リンパ性白血病の存在;
(xiv) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5%における膀胱癌の存在;
(xv) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約10%における頭頸部癌の存在;または
(xvi) 腫瘍発生と関連するKRAS変異体を有する患者群の少なくとも約5〜約10%における乳癌の存在。
[本発明1074]
以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のKRAS遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、本発明1054〜1066のいずれかのパドロックプローブの集合より選択される配列を含む、段階。
[本発明1075]
以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のKRAS遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、KRAS遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、以下からなる群より選択される配列を含む、段階:
(a) Y1-X1-Z1-A
(b) Y1-X1-Z1-T
(c) Y1-X1-Z1-C
(d) Y2-X1-Z2-A
(e) Y2-X1-Z2-T
(f) Y2-X1-Z2-C、および
(g) Y3-X1-Z3-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y2+Z2=20〜40ヌクレオチドであり;
Y3+Z3=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;
Y2は、
であり;
Y3は、
であり;
Z1は、
、または結合であり;
Z2は、
、または結合であり;かつ
Z3は、
、または結合である;
(d) 該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結する段階;
(e) 3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて、該環状化パドロックプローブをRCAに供する段階であって、必要に応じて該エキソヌクレアーゼ活性がcDNAを消化して、ローリングサークル増幅(RCA)のプライマーとして働く遊離の3'末端を生成する、段階;ならびに
(f) ローリングサークル増幅産物を検出する段階。
[本発明1076]
段階(c)が、前記試料を、それぞれが野生型KRAS遺伝子に特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(h)、(i)、および(j)と接触させることをさらに含む、本発明1075の方法:
(h) Y1-X2-Z1-G
(i) Y2-X2-Z2-G、および
(j) Y3-X2-Z3-G
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
[本発明1077]
以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のBraf遺伝子の1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、Braf遺伝子に対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、以下からなる群より選択される配列を含む、段階:
(k) Y1-X1-Z1-A
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、
であり;かつ
Z1は、
、または結合である;
(d) 該パドロックプローブの末端を直接的または間接的に連結する段階;
(e) 3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて、該環状化パドロックプローブをRCAに供する段階であって、必要に応じて該エキソヌクレアーゼ活性がcDNAを消化して、ローリングサークル増幅(RCA)のプライマーとして働く遊離の3'末端を生成する、段階;ならびに
(f) ローリングサークル増幅産物を検出する段階。
[本発明1078]
段階(c)が、前記試料を、それぞれが野生型Braf遺伝子に特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(l)と接触させることをさらに含む、本発明1077の方法:
(l) Y1-X2-Z1-T、
式中、X2は10〜50ヌクレオチドである。
[本発明1079]
以下の段階を含む、スライド表面上の細胞の試料中のAPC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRの1つまたは複数の変異をコードするmRNAを局在インサイチュー検出するための方法:
(a) 試料中のmRNAからcDNAを作製する段階であって、プライマーに、細胞もしくは細胞成分に結合できるか細胞もしくは細胞成分と反応できる機能的部分、または細胞もしくは細胞成分に結合できるアフィニティー結合基が提供される、段階;
(b) 該cDNAとハイブリダイズしているmRNAを消化するために、該試料にリボヌクレアーゼを添加する段階;
(c) 該試料を、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに対する変異に特異的な1つまたは複数のパドロックプローブと接触させる段階であって、各パドロックプローブが、以下からなる群より選択される配列を含む、段階:
(m) Y1-X1-Z1-W、
式中:
X1は5〜50ヌクレオチドであり;
Y1+Z1=20〜40ヌクレオチドであり;
Y1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して3'側の5〜20ヌクレオチドを含み;
Z1は、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異に対して5'側の5〜20ヌクレオチドを含み;かつ
Wは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異と相補的なヌクレオチドである。
[本発明1080]
段階(c)が、前記試料を、それぞれが野生型APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTRに特異的でありかつ以下の配列を有するパドロックプローブ(n)と接触させることをさらに含む、本発明1079の方法:
(n) Y1-X2-Z1-V、
式中、X2は10〜50ヌクレオチドであり;かつ
Vは、APC遺伝子、PTEN遺伝子、PI3K遺伝子、KRAS遺伝子コドン61もしくはコドン146、またはKRAS遺伝子3'UTR中の点変異の部位における野生型配列と相補的なヌクレオチドである。
[本発明1081]
X2がX1とは異なる、本発明1076、1078、または1080のいずれかの方法。
[本発明1082]
プライマーが、2'O-Me RNA、メチルホスホナート、もしくは2' Fluor RNA塩基、ペプチジル核酸残基、またはロックド核酸残基を含む、本発明1074〜1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
プライマーが1個または複数個のロックド核酸残基を含む、本発明1074〜1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
プライマーが、プライマー配列中に、1個または複数個の天然または合成ヌクレオチドによって分離された2個またはそれ以上のロックド核酸を含む、本発明1083の方法。
[本発明1085]
リボヌクレアーゼがRNase Hである、本発明1074〜1084のいずれかの方法。
[本発明1086]
X1およびX2がそれぞれ、少なくとも1個の標識ヌクレオチドを含む、本発明1074〜1085のいずれかの方法。
[本発明1087]
(a)〜(g)、(k)、および(m)より選択される各プローブが同じX1を有する、本発明1074〜1086のいずれかの方法。
[本発明1088]
(h)〜(j)、(l)、および(n)より選択される各プローブが同じX2を有する、本発明1074〜1087のいずれかの方法。
[本発明1089]
標識ヌクレオチドがフルオロフォアまたは発色団を含む、本発明1074〜1088のいずれかの方法。
[本発明1090]
試料が、1つまたは複数の細胞を含む固定組織切片、捺印試料、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織切片、または細胞学的調製物を含む、本発明1074〜1089のいずれかの方法。
[本発明1091]
試料が新鮮凍結組織を含む、本発明1074〜1089のいずれかの方法。
[本発明1092]
(i) 本発明1054〜1066のいずれかのパドロックプローブの集合
と、以下のうちの1つまたは複数とを含む、キット:
(ii) 1個もしくは複数個のロックド核酸を含みかつ前記標的RNAとハイブリダイズできる、逆転写酵素プライマー;
(iii) 逆転写酵素;
(iv) リボヌクレアーゼ;
(v) リガーゼ;
(vi) 3'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ;
(vii) 前記パドロックプローブの相補体とハイブリダイズできる検出プローブ;
(ix) ヌクレオチド。
[本発明1093]
以下の段階を含む、生物学的試料中の細胞中の遺伝子配列の存在および位置を決定するための方法:
(a) 該遺伝子配列を有するDNA相補体をRNAとハイブリダイズさせる段階;
(b) DNA相補体とハイブリダイズしているRNAを消化する段階;
(c) 第1パドロックプローブをDNA相補体の少なくとも一部とハイブリダイズさせる段階であって、該パドロックプローブが、DNA相補体の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端のうちの一方の上に該遺伝子配列を含む、段階;
(d) パドロックプローブの2つの終末端を連結する段階;
(e) 環状化プローブを複製して、複製されたプローブの複数のコピーを含む核酸分子を得る段階;および
(f) 該核酸分子とハイブリダイズするプローブを用いて、細胞中の該遺伝子配列の有無を検出する段階。
[本発明1094]
DNA相補体を作製する段階をさらに含む、本発明1093の方法。
[本発明1095]
DNA相補体が、プライマーおよび逆転写酵素を含む処理によって生成される、本発明1094の方法。
[本発明1096]
プライマーがリボヌクレアーゼ耐性である、本発明1093〜1095のいずれかの方法。
[本発明1097]
プライマーが細胞内に固定化される、本発明1093〜1096のいずれかの方法。
[本発明1098]
環状化プローブが、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを用いて複製される、本発明1093〜1097のいずれかの方法。
[本発明1099]
環状化プローブを複製するためのプライマーとして働くDNA相補体上で遊離の3'末端を生成する条件下で、環状化プローブがインキュベートされる、本発明1098の方法。
[本発明1100]
ポリメラーゼがファイ29である、本発明1093〜1099のいずれかの方法。
[本発明1101]
第2遺伝子配列と相補的である第2パドロックプローブを添加する段階をさらに含む、本発明1093〜1100のいずれかの方法。
[本発明1102]
遺伝子配列が点変異である、本発明1093〜1101のいずれかの方法。
[本発明1103]
遺伝子配列が野生型配列である、本発明1093〜1102のいずれかの方法。
[本発明1104]
以下の段階を含む、特定の核酸配列を有する組織試料中の細胞を同定するための方法:
(a) RNA-DNAハイブリッドを作製するために、細胞を、特定の核酸配列を含むDNA相補体と共にインキュベートする、段階;
(b) RNA-DNAハイブリッドの少なくとも一部を消化する条件下で、RNA標的分子をリボヌクレアーゼと共にインキュベートする段階;
(c) パドロックプローブを、特定の核酸配列を含むDNA相補体とハイブリダイズさせる条件下で、DNA相補体を該パドロックプローブと共にインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが、DNA相補体の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を含む、段階;
(d) パドロックプローブの終末端を結合させる条件下で、DNA相補体およびパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;
(e) DNA相補体によりパドロックプローブの複製をプライミングしかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階、ならびに
(f) 複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を1つまたは複数の相補的オリゴヌクレオチドと共にインキュベートして、特定の配列の有無を検出する段階。
[本発明1105]
以下の段階を含む、特定の核酸配列を有する細胞試料中の細胞を同定するための方法:
(a) RNAのDNA相補体を作製する条件下で、細胞試料を、該試料に固定化されたリボヌクレアーゼ耐性プライマーおよび逆転写酵素と共にインキュベートする段階であって、該DNA相補体が特定の核酸配列を含む、段階;
(b) RNAの少なくとも一部を消化する条件下で、細胞試料をリボヌクレアーゼと共にインキュベートする段階;
(c) パドロックプローブを、特定の核酸配列を含むDNA相補体とハイブリダイズさせる条件下で、DNA相補体を該パドロックプローブと共にインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが、DNA相補体の別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を含む、段階;
(d) パドロックプローブの終末端を結合させる条件下で、DNA相補体およびパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;
(e) DNA相補体によりパドロックプローブの複製をプライミングしかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階、ならびに
(f) 特定の配列の有無を検出するために、複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を1つまたは複数の核酸プローブと共にインキュベートする段階。
[本発明1106]
以下の段階を含む、スライド上の生物学的試料中の細胞中の核酸配列をインサイチューで位置特定するための方法:
(a) 該核酸配列を含みかつ該細胞中の相補的RNA分子とハイブリダイズしてRNA-DNAハイブリッドを形成する核酸分子を作製する条件下で、固体支持体上の固定化された生物学的試料を逆転写酵素およびリボヌクレアーゼ耐性プライマーと共にインキュベートする段階;
(b) リボヌクレアーゼを添加する段階、およびRNA-DNAハイブリッド中のRNAを消化する条件下でリボヌクレアーゼをインキュベートする段階;
(c) 相補的パドロックプローブを、消化されたRNA-DNAハイブリッドのDNA部分とハイブリダイズさせる条件下で、消化されたRNA-DNAハイブリッドをインキュベートする段階であって、該パドロックプローブが該核酸配列を含み、かつ、該DNAの別々だが隣接した領域と相補的である2つの終末端を有する、段階;
(d) パドロックプローブの終末端を連結させる条件下で、RNA-DNAハイブリッドのDNA部分とハイブリダイズしているパドロックプローブをリガーゼと共にインキュベートする段階;
(e) パドロックプローブを複製するために用いられるDNA由来のプライマーを作製しかつ複製されたパドロックプローブの複数コピーを含む核酸を作製する条件下で、連結されたパドロックプローブをポリメラーゼおよびヌクレオチドと共にインキュベートする段階;ならびに
(f) 特定の配列の有無を検出するために、該核酸を1つまたは複数の相補的核酸プローブと共にインキュベートする段階。
[本発明1107]
試料がホルマリン固定されたパラフィン包埋組織切片である、本発明1104〜1106のいずれかの方法。
[本発明1108]
段階(c)において、パドロックプローブの末端領域が、該末端領域間にギャップが存在するように、cDNAの非連続領域とハイブリダイズする、本発明1001〜1053のいずれかの方法。
[本発明1109]
ギャップが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチドのギャップ、または11〜60ヌクレオチドのギャップ、好ましくは3〜40ヌクレオチドのギャップである、本発明1108の方法。
[本発明1110]
末端領域間のギャップが、ギャップオリゴヌクレオチドによって、またはパドロックプローブの3'末端を伸長させることによって埋められる、本発明1108または1109の方法。
[本発明1111]
前記結腸直腸癌が、転移性結腸直腸癌、腺癌、平滑筋肉腫、結腸直腸リンパ腫、黒色腫、または神経内分泌腫瘍である、本発明1028〜1053のいずれかの方法、または本発明1073もしくは1074のプローブの集合もしくは使用。
[本発明1112]
前記肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC)である、本発明1028〜1053のいずれかの方法、または本発明1072もしくは1073のプローブの集合もしくは使用。
[本発明1113]
前記試料が組織切片を含み得るが、ただし該組織切片は、新鮮凍結組織の調製物ではなく、該調製物を含んでもいない、本発明1001〜1053、1074〜1091、または1093〜1106のいずれかの方法。
[本発明1114]
前記試料が組織切片を含み得るが、ただし該組織切片は、Superfrost Plusスライド上への播種を含む調製物ではなく、該調製物を含んでもいない、本発明1001〜1053、1074〜1091、または1093〜1106のいずれかの方法。
[本発明1115]
段階(c)において、パドロックプローブの末端領域が、cDNA上の隣接した領域とハイブリダイズする、本発明1001〜1053のいずれかの方法。
本発明のその他の目的、特色、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲の範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかとなるであろうから、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的な態様を示しながら、例示として与えられているに過ぎないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0104】
発明の詳細な説明
A. インサイチューでのRNA標的からのcDNAの局在合成
上記のように、本発明は、細胞内のRNA、特にmRNAの検出に関する。本方法は、パドロックプローブによる相補的DNA(cDNA)の標的化の前の、RNAのcDNAへの変換を含む。cDNAは、鋳型RNAの位置においてインサイチューで合成される。逆転写酵素(RT) プライマーは、固定化、特に細胞に固定化し得るように修飾することができる。したがって、プライマーに、プライマーが試料中の成分、例えば細胞または細胞成分に固定化されることを可能にする、またはプライマーをそれらに固定化できるようにする機能的部分または機能的手段(すなわち、「官能性」)が提供され得ることが企図される。これは、例えば、細胞または試料もしくは細胞成分に結合し得るか、またはこれと反応し得る機能的部分であってよい。試料に(例えば、細胞にまたは細胞内に)固定化されるそのようなプライマーの使用は、cDNA産物(RTプライマーの伸長によって生成され、そのためそれと連続している)もまた試料に(例えば、細胞にまたは細胞内に)固定化されるという結果を有する。
【0105】
最終的に検出されるRCPを生成するために行われるRCAは、プライマーとしてcDNAを用いて実行されるため(すなわち、標的プライミングRCAであるため)、RCPはcDNAと連続しており、したがってRCPもまた試料(例えば、細胞)に繋留されるかまたは付着している。したがって、そのようなプライマーの使用は、RCPが試料中の(例えば、細胞中の)RNAの部位に局在したままであることを確実にする、または可能にする。言い換えれば、標的RNAの元の部位へのRCPの局在性が保存される。このようにして、標的RNAを報告するシグナルの局在性が保存され、したがって、このことが局在インサイチュー検出を支持し、促進することが理解され得る。
【0106】
RTプライマーのそのような様々な修飾が本明細書に記載されており、これには、例えば、細胞または細胞もしくは他の試料成分に、例えば、細胞内のタンパク質もしくは他の生体分子に、または例えば試料中のマトリックス成分といった試料中の成分に共有結合し得る反応基または部分、例えばチオール基、NHS-エステル等などの化学的カップリング剤のRTプライマー中への提供が含まれる。あるいはまたは加えて、プライマーに、細胞または細胞もしくは試料成分に結合し得るアフィニティー結合基を提供することができる。
【0107】
細胞または細胞成分はRTプライマーの付着の簡便な点または固定化の部位を提供するが、本発明のこの局面は、細胞上または細胞内への固定化に限定されず、RTプライマーを、試料中に存在する他の成分、例えば細胞外成分に固定化することもできる。実際に、成分は天然または合成であってよく、天然細胞成分を補うかまたは置き換えるために、合成成分を試料に添加することができる。例えば、本方法において、シグナル局在性を保存するために(すなわち、検出されるRCP産物の局在性を保存するために)、合成マトリックスを細胞または組織試料に提供することができる。実際に、RTプライマーを固定化する(cDNAを固定化する手段として)というよりも、合成されたcDNA自体または標的RNAが、試料に提供される合成マトリックス中に固定化され得る。
【0108】
したがって例えば、標的RNAまたは合成されたcDNAは、検出シグナルの局在性を保存するために、天然細胞マトリックスの代わりに合成ゲルマトリックスに付着させることができる。これは、重合に際して、cDNAまたは標的RNAを付着させることができるゲルマトリックスを生じるゲル溶液中に、試料(例えば、試料の細胞または組織)を浸漬することによって、達成され得る。そのような付着を達成するために、RTプライマーの例えばその5'末端に、マトリックス物質と反応し得る反応基または部分を提供することができる。これについては、以下にさらに説明する。
【0109】
しかしながら、好ましい修飾において、プライマーはリボヌクレアーゼに対して耐性にされる。したがって、プライマーは、リボヌクレアーゼ耐性になるよう修飾することができる。リボヌクレアーゼは、RNA:DNA二重鎖中のcDNAとハイブリダイズしているRNAを消化するために使用される。以下に述べるように、リボヌクレアーゼは好ましくはRNase H、またはRNA:DNA二重鎖中のRNAを消化し得るリボヌクレアーゼであってよい。本発明の好ましい態様において、逆転写酵素プライマーの固定化は、それがリボヌクレアーゼ耐性であることによって達成される。そのような状況において、リボヌクレアーゼは、RTプライマーとハイブリダイズしているRNAを分解することができない。したがってRTプライマーは、RNA中のプライマー結合部位を分解から保護する。よってRTプライマーは、細胞内でRNAに結合したままであり、このようにして細胞内で固定化される。プライマーをリボヌクレアーゼ耐性にするためにプライマーに対してなされ得る修飾は以下に記載され、これには特に、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、例えば、プライマーに取り込まれた場合に、プライマーをリボヌクレアーゼ消化に対して少なくとも部分的に耐性する2'O-Me RNA、メチルホスホナート、2' fluor RNA塩基等を含むヌクレオチドの使用が含まれる。あるいはまたは加えて、プライマーはロックド核酸(LNA)またはペプチド核酸(PNA)を含み得る。したがって、本発明の態様において、cDNAの5'末端が、リボヌクレアーゼ耐性の逆転写酵素プライマーによって、標的RNA分子に結合したままであることが想定される。
【0110】
「逆転写反応」とは、そのヌクレオチド配列がRNA鋳型の配列と相補的である一本鎖cDNA分子の生成をもたらす、酵素「逆転写酵素」(「RT」)を用いてRNAがcDNAに変換される反応である。しかしながら、逆転写は、RNA相補体ではウラシルが存在したであろうすべての場合においてチミンを含むcDNAを生成する。逆転写反応は典型的に「第1鎖反応」と称されるが、一本鎖cDNAがその後、DNAポリメラーゼの作用(すなわち、第2鎖反応)によって元のRNAの二本鎖DNAコピーに変換され得るためである。しかしながら、本方法では、配列特異的パドロックプローブの標的として働くように、一本のcDNA鎖が形成される。逆転写反応は、RNA依存性DNAポリメラーゼとして機能する酵素によって触媒される。そのような酵素は通常、逆転写酵素と称される。逆転写酵素は当技術分野で周知であり、広く入手可能である。任意の適切な逆転写酵素を用いることができ、適切な酵素の選択は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0111】
B. パドロックプローブ
上記のように、cDNAはパドロックプローブの標的として働く。パドロックプローブは周知であり、広く用いられており、先行技術において十分に報告され記載されている。したがって、パドロックプロービングの原理は十分に理解されており、パドロックプローブの設計および使用は、当技術分野において公知であり、記載されている。例えばWO 99/49079を参照することができる。パドロックプローブは本質的に、連結に利用可能な遊離の5'および3'末端を有する直鎖状の環状化可能なオリゴヌクレオチドであり、環状高次構造の採用をもたらす。環状化(連結)が起こるために、パドロックプローブが遊離の5'リン酸基を有することが理解される。連結の目的で、パドロックプローブの末端を近位にするために、パドロックプローブは、その5'および3'末端において、その標的配列(この場合、解析される細胞試料中の合成cDNA分子)に対する相補性の領域を有するように設計される。したがって相補性のこれらの領域によって、標的中の特異的配列とのハイブリダイゼーションにより、その標的配列に対するパドロックプローブの特異的結合が可能になる。したがってパドロックプローブは、所望のまたは特定の標的に特異的に結合するように設計することができる。本発明の方法の場合、cDNA標的の配列は、標的RNA、すなわち検出が所望されるRNA分子の配列によって規定される。cDNA標的とのハイブリダイゼーションにより、パドロックプローブの末端は連結のために近位になる。以下により詳細に記載するように、連結は直接的または間接的であってよい。言い換えれば、パドロックプローブの末端は相互に直接連結され得るか、またはそれらは、介在する核酸分子/ヌクレオチドの配列に連結され得る。したがってパドロックプローブの末端領域は、段階(a)のcDNA産物中の隣接したもしくは連続した領域に相補的であってよく、またはそれらはcDNAの非隣接(非連続)領域と相補的であってもよい(この場合、連結が起こるためには、ハイブリダイズしたパドロックプローブの2つの末端間の「ギャップ」は介在分子/配列によって埋められる)。
【0112】
試料に添加されると、パドロックプローブの末端は、cDNA分子中の相補的領域とハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後、パドロックプローブは、リガーゼ酵素によるパドロックプローブの末端の直接的または間接的連結によって環状化され得る。次に環状化パドロックプローブを、cDNAの3'末端によってプライミングされるRCAに供する(すなわち、RCAは標的プライミングされる)。3'-5'エキソクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼが用いられる。これにより、結合したパドロックプローブに隣接した点までの、3'-5'方向のcDNA鎖の消化が可能になる。あるいは、cDNAは適切な長さであってよく、そのような消化なしで、DNAポリメラーゼ媒介性増幅反応のプライマーとして働き得る。このようにして、RCPの5'末端は有利にcDNA分子と連続している。さらなる別の方法として、cDNA分子でRCAをプライミングする代わりに、パドロックプローブとハイブリダイズする別個のプライマーを反応において用いてもよい。
【0113】
RNAのリボヌクレアーゼ消化、パドロックプローブのcDNAに対するハイブリダイゼーション、パドロックプローブの連結、およびRCAは連続してまたは同時に行われ得ることが、当業者によって理解されよう。したがって、例えば、リボヌクレアーゼ、パドロックプローブ、リガーゼ、およびRCAのためのDNAポリメラーゼは、連続してまたは実質的に同時に試料に添加することができる。さらに、本方法によって生成されるRCPが試料中のRNAを検出し得る、ならびにその存在、非存在、および/または性質を示すように、本方法の段階の任意の組み合わせを同時に行うことができ、それは本発明の範囲内で企図される。例えば、RNAのリボヌクレアーゼ消化およびパドロックプローブのハイブリダイゼーションを同時にもしくは同じ段階で行うことができ、またはパドロックプローブの連結およびRCAを同時にもしくは同じ段階で行うことができる。
【0114】
パドロックプローブの「相補的領域」は、cDNAとハイブリダイズするプローブの5'および3'末端領域に相当する。したがってパドロックプローブは、標的特異的様式でcDNAに結合するように設計される。パドロックプローブは、特定のRNAの存在を検出するように、例えば特定の遺伝子が発現されるかどうかを判定するように、設計することができる。パドロックプローブは、遺伝子型同定の適用のために、例えば細胞または組織試料中の特定の配列変種または変異体の存在を検出するように、設計することもでき‐遺伝子の特定の公知の変異体(例えば、以下にさらに記載されるような、KRAS遺伝子の公知の変異)に、または野生型配列に特異的であるパドロックプローブを設計することができ、よって特定の変異または配列変種等の存在または分布(組織試料の状況内で)を検出または決定するために用いることができる。
【0115】
よって、当技術分野で公知の原理に基づいて、パドロックプローブは、対応するRNA中の特定の配列または配列変種の存在を検出するために選択された部位でcDNAに結合するように設計することができる。プローブは、特定の変異もしくは配列変種の存在を検証もしくは確認するために設計して用いることができ(例えば、標的遺伝子型同定)、またはそれらは、変異/変種が存在するか否か、および/もしくは変異/変種の特定の性質を検出するために、未知の変異/変種状態の試料において用いることもできる(盲検遺伝子型同定)。例えば、1つは野生型を検出するように設計され、もう1つの他のものは特定の変異/変種を検出するように設計された、パドロックプローブの混合物を用いることができる。そのような遺伝子型同定の適用では、パドロックプローブは、3'および/または5'末端における最後のヌクレオチドを除いて、同一の相補的領域を有するように設計することができ、該ヌクレオチドは遺伝子型によって異なり、これを検出するようにプローブが設計される;パドロックプローブの環状化に用いられるDNAリガーゼは、パドロックプローブの末端を結合する際にミスマッチを許容せず、そのためプローブが、該末端ヌクレオチドにおいてそれが「一致する」配列とハイブリダイズした場合にのみ、連結が起こる。このようにして、単一ヌクレオチドの違いを識別することができる。
【0116】
ハイブリダイゼーション反応において、パドロックプローブの両末端は、cDNAの対応する部分またはcDNA中の対応する領域に結合し、その結果それらは相互に直接的または間接的に連結されて、プローブの環状化をもたらし得る。この段階におけるハイブリダイゼーションは、cDNAとパドロックプローブにおける該領域の間の100%の相補性を必要としないが、それを含む。したがって「相補的な」とは、本明細書で用いられる場合、「機能的に相補的な」、すなわち生産的ハイブリダイゼーションを媒介するのに十分なレベルの相補性を意味し、これは100%未満の相補性の程度を包含する。したがって、cDNAとパドロックプローブの領域との間の相補性の領域は、少なくとも5ヌクレオチド長であってよく、好ましくは10またはそれ以上のヌクレオチド長、例えば6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50等のヌクレオチドであってよい。例えばそれは、30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチド長までであってよい。
【0117】
上記のように、パドロックプローブの末端は、直接的または間接的に連結され得る。パドロックプローブの末端の「直接的連結」とは、プローブの末端がcDNA鎖上に隣接してハイブリダイズして、リガーゼ酵素の基質を形成し、それらの相互の連結(分子内連結)をもたらすことを意味する。あるいは、「間接的」とは、プローブの末端がcDNAに非隣接的に、すなわち1個または複数個の介在ヌクレオチドによって分離されてハイブリダイズすることを意味する。そのような態様において、該末端は相互に直接連結されないが、1つもしくは複数の介在物(いわゆる「ギャップ」または「ギャップ充填」(オリゴ)ヌクレオチド)の仲介、または該介在ヌクレオチドに対応する「ギャップ」を「埋める」ためのプローブの3'末端の伸長のいずれかにより、プローブの環状化が代わりに起こる(分子間連結)。したがって、前者の場合、パドロックプローブのハイブリダイズした末端間の1個または複数個のヌクレオチドのギャップは、cDNAの介在部分と相補的である1つまたは複数の「ギャップ」(オリゴ)ヌクレオチドによって「埋められ」得る。ギャップは、1〜60ヌクレオチドのギャップ、好ましくは1〜40ヌクレオチドのギャップ、より好ましくは3〜40ヌクレオチドのギャップであってよい。特定の態様において、ギャップは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、または60ヌクレオチド、表示した値の間の任意の整数値のヌクレオチドのギャップであってよい。さらなる態様において、ギャップは60ヌクレオチドよりも大きなサイズを有し得る。さらなる態様において、該末端領域間のギャップは、ギャップオリゴヌクレオチドによって、またはパドロックプローブの3'末端を伸長させることによって埋められ得、例えばギャップオリゴヌクレオチドは本明細書で上記されるようなものである。それによってパドロックプローブの環状化は、プローブの末端の少なくとも1個のギャップ(オリゴ)ヌクレオチドへの連結を含み、その結果ギャップ(オリゴ)ヌクレオチドは、得られる環状化プローブに取り込まれる。したがって、そのような態様において、RCAのための鋳型はパドロックプローブおよび該ギャップ(オリゴ)ヌクレオチドを含む。そのような態様において、cDNAの介在部分は、ギャップオリゴヌクレオチドとの生産的ハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な任意の長さのものであってよく、「生産的ハイブリダイゼーション」とは、パドロックプローブの末端の間接的連結(すなわち、ギャップオリゴヌクレオチドを介する)を鋳型にし得るハイブリダイゼーションを意味する。パドロックプローブは、cDNAの介在部分(すなわち、ハイブリダイズしたプローブ末端間のギャップ)と相補的であるいかなる配列も含まないように設計されるべきである。ギャップオリゴヌクレオチドは、最終的なRCA産物の増幅または検出または配列決定等に有用な配列を含み得る。加えてまたはあるいは、ギャップオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のタグまたはバーコード配列を含み得る(後述する)。関連態様において、2個以上のギャップオリゴヌクレオチドを用いることができ、これらのギャップオリゴヌクレオチドは、それらおよびパドロックプローブの末端が連結段階中に末端間で共に連結されるような方法で、cDNAの介在部分とハイブリダイズすることが理解されよう。後者の場合、cDNAとハイブリダイズしているパドロックプローブの末端間のギャップは、パドロックプローブの3'末端のポリメラーゼ媒介性伸長によって埋められ得る。適切なポリメラーゼは、当技術分野で公知である。該3'末端がパドロックプローブの5'末端の所まで伸長されると、末端は連結反応において結合され得る。プローブおよび/または(オリゴ)ヌクレオチドのcDNAに対するハイブリダイゼーションは、有利にはcDNAのヌクレオチド配列に依存し、したがって1つまたは複数のcDNAおよび拡張してこれと対応するRNAヌクレオチド配列の高感度、特異的、定性的、および/または定量的検出が可能になる。
【0118】
C. 試料
試料がインサイチュー検出に適している限り、本明細書に開示される方法および組成物を用いて、RNA分子が存在し得る細胞の任意の試料中のRNAを評価することができる。代表的な試料は、1つまたは複数の細胞を含む固定組織切片、新鮮凍結組織、または細胞学的調製物を含み得る。試料は、RNAに到達できるようにするために、透過処理することができる。細胞を透過処理するための適切な手段は当技術分野で周知であり、これには例えば、界面活性剤、例えば、適切に希釈されたTriton X-100溶液、例えば0.1% Triton X-100、もしくはTween、0.1% Tweenの使用、または例えば0.1 M HClによる酸処理が含まれる。組織試料の透過処理はまた、1つまたは複数の酵素、例えば、ペプシン、プロテイナーゼK、トリプシノーゲン、またはプロナーゼ等による試料の処理を含み得る。また、当技術分野において記載されるように、試料のマイクロ波処理を行うこともできる。
【0119】
試料はまた、細胞中に含まれるRNAを試料に固定するために、例えばそれを細胞マトリックスに固定するために、処理することができる。そのような手順は当技術分野で公知であり、記載されている。例えば、インサイチューハイブリダイゼーションの分野において、mRNAを細胞に固定するための試薬が知られている。特に、RNA中の5'リン酸基を、EDC媒介結合(EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)により細胞マトリックス中のタンパク質上に存在するアミンに連結して、ひいては他の細胞成分に対するRNAの局在性を維持するのに役立てることができる。そのような技法は、マイクロRNAおよびインサイチューハイブリダイゼーションによるそれらの検出に関して以前に記載されている(Pena et al. (2009) Nat. Methods, 6(2): 139-141)。細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、新鮮凍結組織の調製物ではない。細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、Superfrost Plusスライド上への播種を含む調製物ではない。さらに、細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、Larsson et al., Nature Methods, 2010, Vol 7 (5)、395-397ページに開示されている調製物ではない。あるいは、細胞または組織の試料を調製、例えば新たに調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし調製物は、Larsson et al., Nature Methods, 2010, Vol 7 (5)、395-397ページのオンライン方法の項「Preparation of tissue sections」および/または「Sample pretreatment for in situ experiments」に開示されている調製物ではない。
【0120】
D. 局在インサイチュー検出
RCA段階に続く本方法の次の段階は、試料中の標的RNAを検出するために、反応混合物中の伸長産物(すなわち、RCA産物またはRCP)の存在を判定することである。言い換えれば、試験される試料中の標的RNAの存在を検出するために、得られた任意のRCPの存在について、試料をスクリーニングなどする(すなわち、アッセイする、評価する(assessed)、評価する(evaluated)、試験する等)。本明細書に記載される方法によって生成されたRCPは、最も広い意味において、任意の簡便なプロトコールを用いて検出することができる。特定の検出プロトコールは、所望される感度、および本方法が実施される適用に応じて異なり得る。1つの態様において、RCP検出プロトコールは、例えば特定のアッセイの感度を増強するために、その中でRCA産物(またはその一部)のコピー数が増加する増幅成分を含み得るが、これは一般的には必要ではない。したがってRCPは、任意の増幅なしに直接検出することができる。
【0121】
局在検出は、第1に検出可能シグナルの発生および第2にそのシグナルの読み取りという2段階を含むと見なされ得る。第1段階に関して、以下の検出方法が企図され得る。シグナルには、蛍光、発色、放射性、発光、磁性、電子密度、または粒子に基づくシグナルが含まれ得るが、これらに限定されない。したがって、そのようなシグナルを直接的または間接的に提供する標識を用いることができる。シグナルは、増幅中に標識ヌクレオチドを取り込んで標識RCPをもたらすこと、RCPとハイブリダイズし得る相補的な標識オリゴヌクレオチド(「検出プローブ」)を用いること、または生成された核酸を配列非特異的様式で標識することのいずれかによって、得ることができる。標識は、直接的(例えば、これらに限定されないが:フルオロフォア、色素原、放射性同位体、発色分子、磁性粒子、またはAu粒子)、または間接的(例えば、これらに限定されないが、酵素または分岐オリゴヌクレオチド)であってよい。酵素は、その後のまたは同時の酵素段階においてシグナルを生成し得る。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼが、適切な基質との接触に際してシグナルを生成する標識として提供され得る。いくつかの方法が文献に十分に記載されており、様々な手段(第2段階で用いられ得る)、例えば、顕微鏡観察(明視野、蛍光、電子、走査型プローブ)、フローサイトメトリー(蛍光、粒子、磁性)、またはスキャン装置によって検出可能なシグナルを提供するために用いられることが知られている。
【0122】
特定の態様において、検出は、相補性を有して、それによってRCPとハイブリダイズする標識オリゴヌクレオチドプローブ(「検出プローブ」)によるものである。そのような標識化は、ratiolabelingを含む蛍光標識化、放射標識化、発色もしくは発光基質によるか、または例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ等といった酵素による標識化など、当技術分野で公知の任意の手段によるものであってよい。蛍光標識プローブが好ましい。標識によって生成されるシグナルは、顕微鏡によることを含め視覚的など、任意の適切な手段によって検出することができる。RCPは、パドロックプローブ(任意で、上記のように、取り込まれた付加的なヌクレオチドまたはギャップオリゴヌクレオチドを伴う)に対応する「単量体」の反復からなるため、オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする配列は「反復」され、すなわち、RCA反応が鋳型の単一複製を超えて進むと仮定すると、オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズするための複数の部位が各RCP内に存在することになる。このようにして、RCA反応を延長して、多くのハイブリダイゼーション部位を含む長いRCA産物を生成させることによって、オリゴヌクレオチドプローブ上の標識からのシグナル強度を増加させることができる。シグナルの強度および局在性は、RCPの自発的なコイル形成によってさらに増加する。ハイブリダイズした複数のオリゴヌクレオチドプローブを含む得られたコイルは、ハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドプローブのバックグラウンドに対して、例えば顕微鏡的可視化により容易に識別可能な凝縮したシグナルをもたらす。したがって、ハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドプローブを除去するための洗浄段階を行わずに、試料中のRNAを検出することが定性的または定量的に可能であり得る。
【0123】
異なるRNAに関して差次的に標識された検出プローブを用いることにより、多重化検出が促進され得、この場合、各オリゴヌクレオチドプローブは、各RNAに対するRCP中にのみ存在する「特有の」配列(パドロックプローブ中にのみ存在する配列に対応する)に対して相補性を有するように設計される。そのような配列は、上記のように、バーコードまたはタグ配列であってよい。特定の態様では、1つまたは複数のRCPを検出するために、2つまたはそれ以上の差次的に標識されたオリゴヌクレオチドを用いることができ、1つは遺伝子の野生型変種を報告する標識検出オリゴヌクレオチドであり、別のものは該遺伝子の1つまたは複数の変異体変種を報告する標識検出オリゴヌクレオチドである。異なるフルオロフォアを標識として用いることができる。多重化検出はまた、連結による配列決定、合成による配列決定、またはハイブリダイゼーションによる配列決定などの、インサイチュー配列決定技術を適用することによって達成され得る。
【0124】
本発明によって、RNAヌクレオチド配列の検出における単一ヌクレオチド分解能が可能になる。したがって、RNA中の1つもしくは複数の点変異、または実際に任意の単一ヌクレオチド変種を検出するために、本方法を用いることができる。したがって本方法は、対立遺伝子変種または選択的スプライシング等の検出において有用性を見出し得る。本方法によって与えられる優れた感度および局在性はまた、それを用いて、単一細胞中のRNAを検出できることを意味する。例えば、単一細胞中を含め、発現プロファイリングのために、本発明の方法によるmRNA転写物の多重検出を有利に用いることができる。
【0125】
当業者によって認識されるように、本方法は、様々な診断適用、特に単一ヌクレオチド感度を必要とする診断適用において用いることができる。例えば、疾患、疾患のリスクもしくは素因、または治療に対する反応性等に関連する点変異、例えば癌遺伝子の活性化変異を検出するために、本方法を用いることができる。
【0126】
本発明の方法は、例えば、従来の自動化FISHアッセイにおいて用いられるような手順を適用して、自動化に適合させることができる。
【0127】
E. KRAS
本明細書においてより詳細に記載されるように、本発明の方法を用いて、KRASをコードするmRNA配列中の点変異を検出することができる。KRASは、最も頻繁に活性化される癌遺伝子の1つである。本明細書で用いられる場合、「KRAS」とは、v-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子相同体を指す。KRASは、当技術分野において、NS3、KRAS1、KRAS2、RASK2、KI-RAS、C-K-RAS、K-RAS2A、K-RAS2B、K-RAS4A、およびK-RAS4Bとしても知られている。本遺伝子、哺乳動物ras遺伝子ファミリーからのカーステンras癌遺伝子相同体は、低分子量GTPアーゼスーパーファミリーのメンバーであるタンパク質をコードする。単一アミノ酸置換は、活性化変異の原因となり得る。生成される形質転換タンパク質は、肺癌、結腸癌、甲状腺癌、および膵癌を含む様々な悪性腫瘍に関与し得、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤療法に対する耐性と強く関連している。例えば、転移性結腸直腸癌において、KRAS遺伝子の変異の存在が日常的に解析され、陽性変異状態は、腫瘍がEGFR抗体療法に反応しないことを示す。肺線癌において、KRAS変異は、喫煙、予後不良、およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する非反応性と関連しているのに対して、EGFR変異を伴うKRAS野生型腫瘍は、非喫煙、予後良好、およびEGFR-TKI療法に対する反応と関係している。
【0128】
腫瘍は、KRASの1つもしくは複数の変異(例えば、活性化変異)、KRASの望ましくない発現(例えば、野生型を上回る過剰発現)、KRAS欠損、および/またはKRAS遺伝子の増幅(例えば、KRAS遺伝子の2つ超の機能的コピーを有する)を有し得る。コドン12および13には7個の点変異が存在し、これらは合わせて全KRAS変異の95%超を占める。従来のKRAS解析は、粗腫瘍組織から抽出されたDNAに基づき、エキソン1上のホットスポット領域のPCR増幅後に、コドン12および13中の配列異常が、直接的なジデオキシ配列決定によって、またはパイロシーケンシングもしくは対立遺伝子特異的PCRなどのより高感度の標的化アッセイによって特徴づけられる。したがって、腫瘍試料中に存在するすべての異なる細胞型‐正常な実質細胞、間質細胞、炎症細胞、異なる新生物発生前および新生物サブクローン‐が、それらの野生型および変異型KRAS対立遺伝子をこれらのアッセイに提供する。日常的な診断設定において、腫瘍細胞は手動のマイクロダイセクションによって濃縮され得るが、特定の腫瘍亜区画に対する変異を注釈づけるためには、必要とされるダイセクションは労力を要する。それでもなお、単一細胞分解能を達成することは極めて困難である。結腸直腸癌においては、活性化KRAS変異は腫瘍形成における早期事象であり、おそらく腫瘍中に均一に分布するために、このことは問題にならないと考えられる。しかしながら、他の種類の癌に関して、および他の癌遺伝子の変異に関しては、癌サブクローン間の不均一性、ならびに腫瘍生物学および治療反応に及ぼすその影響についてほとんど知られていない。そのため、組織切片上での直接の遺伝子型同定を提供する方法が、非常に必要とされる。したがって、患者に最も適した治療を決定するための高感度KRAS変異解析の必要性が存在する。
【0129】
本明細書に記載されるように、複数の変異特異的パドロックプローブおよびローリングサークル増幅を用いることにより、組織試料上でインサイチューでコドン12および13のKRAS変異を標的化する遺伝子型同定アッセイにおいて、本方法を用いることができる。そのようなインサイチュー技法は、組織における直接の単一転写物解析を提供し、したがってこれにより不均一な腫瘍組織からの伝統的なDNA抽出が回避される。加えてまたはあるいは、KRASのコドン61および/またはコドン146の変異を標的化することもできる(特定の情報については、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Loupakis et al., 2009, Br J Cancer, 101(4): 715-21もまた参照されたい)。さらに、KRAS転写物の3'UTRの変異を標的化することもできる(特定の情報については、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Graziano et al., 2010, Pharmacogenomics J., doi 10.1038/tpj.2010.9もまた参照されたい)。これらの変異は、コドン12、13、61、および/もしくは146変異の検出と組み合わせて検出することができ、またはそれらは単独で、もしくはコドン12変異と、もしくはコドン13変異と、もしくはコドン61変異と、もしくはコドン146変異と、もしくはコドン12、13、61、および146変異の任意のサブグループと組み合わせて検出することもできる。本方法は好ましくは、ホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織において、または捺印試料中の組織において実施することができる。組織試料は、好ましくは癌組織、例えば結腸または肺組織であってよい。本方法はまた、新鮮凍結組織と共に実施することもできる。ある種の態様では、細胞または組織の試料と共に本方法を実施することができ、該細胞または組織の試料は、調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし、調製物は新鮮凍結組織の調製物ではない。さらなる特定の態様では、細胞または組織の試料を調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし、調製物はSuperfrost Plusスライド上への播種を含む調製物ではない。さらに付加的な特定の態様では、細胞または組織の試料を調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし、調製物はLarsson et al., Nature Methods, 2010, Vol 7 (5)、395-397ページに開示されている調製物ではない。極めて特定の態様では、細胞または組織の試料を調製してもよく、または任意の簡便な方法で事前処理してもよいが、ただし、調製物はLarsson et al., Nature Methods, 2010, Vol 7 (5)、395-397ページのオンライン方法の項「Preparation of tissue sections」および/または「Sample pretreatment for in situ experiments」に開示されている調製物ではない。
【0130】
いくつかの態様において、方法および組成物は、KRAS変異、具体的には癌細胞において見出されたそのような変異に関する。「癌と関連するKRAS変異」または「腫瘍発生と関連するKRAS変異」という用語は、癌または前癌と関連する、2012年2月15日現在のSangerデータベース(sanger.ac.ukにおけるワールドワイドウェブ上)において同定されているKRAS遺伝子の変異または対応する変異を指す。ある種の態様において、本方法および組成物は、複数の変異を検出することに関する。いくつかの態様において、複数の変異とは、癌と関連するその遺伝子の変異の少なくともまたは多くとも以下の割合を指す:5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%、またはその中で導き出せる任意の範囲。
【0131】
F. EGFR
上皮成長因子受容体(EGFR)は、いくつかの癌の治療における重要な標的である。したがって、これらの癌の治療において、抗EGFR抗体と化学療法の併用がよく用いられる。KRASタンパク質は、EGFRによって調節されるシグナル伝達カスケードにおける重要なメディエーターである。KRAS遺伝子の変異は、EGFRに対して標的化される分子生物学的治療選択肢の選択における非常に重要な因子である。その変異が存在する場合、セツキシマブ(Erbitux)およびパニツムマブ(Vectibix)などの抗EGFR薬物療法が、それらの使用を保証するのに十分に有効ではないことが、研究から示された。したがって、本明細書において論じられるように、KRASをコードするmRNA中の点変異の有無を検出するために、本方法を有利に用いることができ、KRAS野生型mRNAの同定により、癌をEGFR阻害剤で治療できることが示される。
【0132】
加えて、本方法を用いて、EGFRをコードするmRNA中の変異の有無を検出することができる。本発明に従って検出され得るEGFR変異の例を表7に示す。
【0133】
G. Braf、APC、PTEN、PI3K
本発明の方法はさらに、Braf、APC、PTEN、またはPI3KをコードするmRNA配列中の1つまたは複数の点変異を検出するために用いることができる。適切なBraf変異は当業者に公知であり、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる、Rajagopalan et al., 2002, Nature, 418 (29), 934、およびMonticone et al., 2008, Molecular Cancer, 7(92)に記載されている。特に好ましいのは、変異V600Eの検出である(実施例18もまた参照されたい)。本発明の方法はさらに、KRASおよびBraf中の1つまたは複数の点変異の検出を想定する。BrafとKRASの変異は、下流経路エレメントの機能に関して相互に排他的であると記載されている。したがって、BrafおよびKRASの変異を同時に判定することにより、経路機能が遺伝子変異によって損なわれているかどうかが解明され得る。
【0134】
適切なAPC変異は当業者に公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Vogelstein and Fearon, 1988, N Engl J Med, 319(9): 525-32に記載されている。
【0135】
適切なPTEN変異は当業者に公知であり、例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる、Laurent-Puig et al, 2009, J Clon Oncol, 27(35), 5924-30、またはLoupakis et al., 2009, J clin Oncol, 27(16), 2622-9に記載されている。
【0136】
適切なPI3K変異は当業者に公知であり、例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる、Satore-Bianchi et al., 2009, Cancer Res., 69(5), 1851-7、またはPrenen et al., 2009, Clin Cancer Res., 15(9), 3184-8に記載されている。
【0137】
いくつかの態様において、方法および組成物は、Braf、APC、PTEN、またはPI3K変異に関する。さらなる態様において、方法および組成物は、Braf変異と組み合わせた、および/またはAPC変異と組み合わせた、および/またはPTEN変異と組み合わせた、および/またはPI3K変異と組み合わせたKRAS変異、具体的には癌細胞において見出されたそのような変異に関する。そのような変異は、適切な文献情報源、例えば上記のものに由来してよく、または適切なデータベース、例えば2012年2月15日現在のSangerデータベース(sanger.ac.ukにおけるワールドワイドウェブ上)に従って同定され得る。ある種の態様において、本方法および組成物は、複数の該変異を検出することに関する。いくつかの態様において、複数の変異とは、癌と関連する該遺伝子または遺伝子組み合わせの変異の少なくともまたは多くとも以下の割合を指す:5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%、またはその中で導き出せる任意の範囲。
【0138】
H. キット
本発明はまた、本発明の方法において用いるためのキットを提供する。キットは、上記のように、特定のcDNAに特異的な少なくとも1つの(1種の)パドロックプローブを含み得る。そのようなキットはまた、RTプライマー、RT酵素、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、リガーゼ、および/またはRCA産物の検出の手段を含み得る。
【0139】
キットは任意で、非隣接的にハイブリダイズしたパドロックプローブ末端間に位置する、標的cDNAの一部に対する相補性を有する1つもしくは複数のギャップオリゴヌクレオチドをさらに含み得るか、またはパドロックプローブの末端がcDNAとハイブリダイズした場合に存在する任意のギャップを別の方法で埋めるための試薬、例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、および必要な補因子などを含み得る。いくつかの態様において、キットは、パドロックプローブのRCAをプライミングするためのプライマーオリゴヌクレオチドをさらに含み得る。ある種の局面において、プライマーは、標的cDNAと相補的であるパドロックプローブの領域以外の位置でパドロックプローブとハイブリダイズする。
【0140】
あるいはまたは加えて、キットは、パドロックプローブを環状化するためのリガーゼ(キット中に存在してもしなくてもよい)、またはRCAをもたらすためのファイ29ポリメラーゼなどのポリメラーゼ(ならびに任意で、同様に、必要な補因子、およびヌクレオチド)を含み得る。RCA産物を検出するための試薬もまた、キット中に含まれ得る。そのような試薬には、キット中に存在する、パドロックプローブの一部またはギャップオリゴヌクレオチドの一部に対して相補性を有する標識オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブが含まれ得る。
【0141】
キットは、本発明の方法の多重態様において用いるために設計することができ、よって2つ以上の標的RNAに関する、先に定義された成分の組み合わせを含み得る。複数のcDNA種に対してそれぞれ結合特異性を有するプローブがキット中に存在する場合、キットは、並行した複数のRNA検出を区別することを可能にする成分を付加的に含み得る。例えば、キットは異なるcDNA標的に対するパドロックプローブを含んでよく、この場合、該cDNA標的は、プローブの特定の種とのみハイブリダイズするための「特有」の配列を有する。そのようなパドロックプローブは、例えば、異なるRNAの検出を区別することを可能にする異なるタグまたは識別子配列を保有し得る。
【0142】
キットは、KRASをコードするmRNAの検出において用いるために設計することができる。キットは好ましくは、野生型KRAS mRNAから逆転写されたcDNAを標的化する1つもしくは複数のパドロックプローブ、および/または点変異を含むKRAS mRNA分子から逆転写されたcDNAを標的化する1つもしくは複数のパドロックプローブを含み得る。
【0143】
上記の成分に加えて、キットは、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含み得る。これらの説明書は種々の形態でキット中に存在してよく、そのうちの1つまたは複数がキット中に存在してよい。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、キットの包装中、添付文書中等の、適切な媒体または基材上に印刷された情報、例えば、情報が印刷された1枚または複数枚の紙片としてである。さらなる別の手段は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、CD等である。存在し得るさらなる別の手段は、遠隔部で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用され得るウェブサイトアドレスである。任意の簡便な手段がキット中に存在してよい。
【0144】
したがって、さらなる局面において、本発明は、試料中の標的RNAの局在インサイチュー検出において用いるためのキットであって、以下を含むリストより選択される1つまたは複数の成分を含むキットを提供する:
(i) 該標的RNAから転写されたcDNAに対して相補性を有する3'および5'末端領域を含むパドロックプローブ(そのような領域はあるいは、該標的RNAの領域と配列において対応すると定義され得、上記で定義された領域は隣接的であっても非隣接的であってもよい);
(ii) 該標的RNAとハイブリダイズし得る(例えば、該RNAと特異的にハイブリダイズし得る)逆転写酵素プライマー;
(iii) 逆転写酵素;
(iv) リボヌクレアーゼ;
(v) リガーゼ;
(vi) 3'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ;
(vii) 該標的RNAから転写されたcDNAの一部とハイブリダイズし得るギャップオリゴヌクレオチド;
(viii) (i)のパドロックプローブの相補体と;または(vii)のギャップオリゴヌクレオチドの相補体とハイブリダイズできる検出プローブ;
(ix) 取り込みのためのヌクレオチド、例えばdNTP。
【0145】
(viii)の検出プローブは、増幅産物((i)のパドロックプローブの相補体または(vii)のギャップオリゴヌクレオチドの相補体を含む)とハイブリダイズし得る標識検出オリゴヌクレオチドであってよい。例えば、検出オリゴヌクレオチドは、蛍光標識することができ、または西洋ワサビペルオキシダーゼで標識することができる。
【0146】
1つの態様において、キットは、(i)のパドロックプローブ、および任意で、(ii)〜(ix)のいずれか1つより選択される1つまたは複数のさらなる成分を含み得る。キット成分の他の組み合わせもまた可能である。例えば、キットは、(i)のパドロックプローブ、ならびに(ii)の逆転写酵素プライマー、(iii)の逆転写酵素、および(iv)のリボヌクレアーゼのうちの少なくとも1つを含んでよく、任意で、(ii)または(iii)または(iv)〜(ix)のいずれか1つより選択される1つまたは複数のさらなる成分を伴う。本発明の他の代表的なキットは、(ii)の逆転写酵素プライマー、および成分(iii)〜(ix)のうちの少なくとも1つ、より具体的には(ii)のプライマーと成分((iii)〜(vi)のうちの少なくとも1つを含んでよく、および任意で、(i)または(vii)〜(ix)のいずれか1つより選択される1つまたは複数のさらなる成分を伴う。代表的な例として同様に含まれるのは、任意で、(i)、(ii)、または(vii)〜(ix)より選択される1つまたは複数のさらなる成分と一緒に、成分(iii)〜(vi)のうちの少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または全4つを含むキットである。(iii)〜(iv)より選択される2つまたは3つの成分のすべての可能な組み合わせが網羅される。例えば、そのような態様は、(iii)、(iv)、および(v)、または(iii)、(v)、および(vi)、または(iii)、(iv)、および(vi)等を含み得る。
【0147】
I. 表
(表1)オリゴヌクレオチド配列
オリゴヌクレオチドは5'-3'の順に示され、+記号はLNA塩基を意味する
オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies
3、DNA technology A/S
b、Biomers
c、およびEurogentec
dから購入した
【0148】
(表2)LNA含量研究用のcDNAプライマーの配列
オリゴヌクレオチドは5'-3'の順に示される。+記号はLNA塩基を意味する。
LNA含有オリゴヌクレオチドはすべて、Integrated DNA Technologyから購入した。非修飾プライマーは、Biomerから購入した。
【0149】
(表3)cDNA合成長を研究するためのcDNAプライマーの配列
オリゴヌクレオチドは5'-3'の順に示される。+記号はLNA塩基を意味する
オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologyから購入した。
プライマー名は、それぞれのcDNAプライマーに関して生成されるcDNAの最大長を示す。
【0150】
(表4)KRAS変異の遺伝子型同定のためのオリゴヌクレオチド配列
+=LNA修飾塩基、下線=標的相補的配列、イタリック体=検出プローブ相補的配列
オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies
a、Exiqon
b、Biomers
c、およびEurogentec
dから購入した。
【0151】
(表5)KRAS変異について遺伝子型同定された試料の概要
【0152】
(表6)KRAS変異を遺伝子型同定するために用いられたオリゴヌクレオチドの概要
【0153】
(表7)COSMICデータベースにおける症例に基づいたEGFRの変異および普及
【実施例】
【0154】
J. 実施例
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をこれよりさらに説明する。これらの実施例が、本発明の態様を示す一方で、単に例示として提供されることが理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特徴を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正を行って、それを様々な使用および条件に適合させることができる。したがって、本明細書に示され記載されているものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。本明細書で参照された文書はすべて、参照により組み入れられる。
【0155】
材料および方法
細胞培養:
細胞株GM08402(Coriell Cell Repositories)およびBJhTERTは、10% FBS(Sigma)、1×非必須アミノ酸(Gibco)、2 mM l-グルタミン(Sigma)、および1×ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST、Sigma)を補充したフェノールレッドおよびl-グルタミン不含MEM(Gibco)中で培養した。マウス胎仔線維芽細胞(MEF)は、10% FBS、2 mM l-グルタミン、および1×PESTを補充したフェノールレッドおよびl-グルタミン不含DMEM(Gibco)中で培養した。ONCO-DG-1、SW-480、A-427、およびHCT-15(4つすべてDSMZによる)、SKOV3、ならびにSKBR3は、10% FBS、2 mM l-グルタミン、および1×PESTを補充したRPMI培養液(Sigma)中で培養した。A-549(DSMZ)は、10% FBS、2 mM L-グルタミン、および1×PESTを補充したフェノールレッドおよびL-グルタミン不含DMEM(Gibco)中で培養した。HUP-T3(DSMZ)は、10% FBS、2 mM L-グルタミン、および1×PESTを補充したMEM-イーグル培養液(Sigma)中で培養した。
【0156】
組織切片の調製:
E14.5マウス胚の新鮮凍結9-μm切片は、Superfrost Plus Goldスライド(Thermo Scientific)上に載せた。HER2陽性乳癌由来の完全に匿名化された新鮮凍結ヒト組織切片は、スウェーデンバイオバンク法(Swedish Biobank Legislation)に従って、Department of Pathology, Uppsala University Hospitalの新鮮組織バイオバンク(Fresh Tissue Biobank)から入手した。4μm厚の乳房組織切片は、Starfrost顕微鏡スライド(Instrumedics)上に載せた。
【0157】
インサイチュー実験のための試料の前処理:
細胞をSuperfrost Plusスライド(Thermo Scientific)上に播種し、接着させた。細胞が所望のコンフルエンシーに達した時点で、それらをPBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド(Sigma)中で室温(20〜23℃)にて30分間固定した。固定後、スライドをDEPC処理PBS(DEPC-PBS)で2回洗浄し、一連のそれぞれ3分間の70%、85%、および99.5%エタノールにより脱水した。分子反応は、スライド上に付着させたSecure-seal(Grace Bio-Labs、直径9 mmおよび深さ0.8 mm)中で行った。各試料に対して、50-μl反応容積を使用した。RNAをより容易にcDNA合成に利用できるようにするために、細胞に0.1 M HClを室温で10分間適用した。これに続き、DEPC-PBSでの短時間の洗浄を2回行った。組織は、わずかな例外を除いて、細胞株と同様に処理した。組織固定は、PBS中の2%(w/v) パラホルムアルデヒド中で行った。次に、組織を0.1 M HCl中の0.01%ペプシン(Sigma)で37℃にて2分間透過処理した。分子反応は、組織上に載せたSecure-seal(直径13 mm、深さ0.8 mm;Grace Bio-Labs)中で100μlの反応容積で行った。逆転写は一晩行い、連結、RCA、および検出プローブハイブリダイゼーションのためのインキュベーション時間は倍にした。マウス組織について、連結はT4 DNAリガーゼを用いて行った。
【0158】
オリゴヌクレオチド配列:
オリゴヌクレオチド配列(表1〜3)は、GenBankアクセッション番号NM_001101.3(ACTB)、NM_007393.3(Actb)、NM_198253.2(TERT)、NM_002467(MYC),NM_001005862.1(ERBB2)、NM_009606(Acta1)、NM_009609(Actg1)、およびNM_033360(KRAS)を用いて設計した。パドロックプローブはすべて、製造業者の緩衝液A中の0.2 U μl
-1 T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Ferments)+1 mM ATPを用いて2μMの濃度で37℃にて30分間かけて5'リン酸化し、その後65℃で10分間処理した。培養細胞におけるβ-アクチン転写物検出については、他の指示のない限り、検出のためにプライマーP-βe1をパドロックプローブPLP-βe1と共に、プライマーP-βe6をパドロックプローブPLP-βe6と共に、プライマーP-βhumをパドロックプローブPLP-βhumと共に、およびプライマーP-βmusをパドロックプローブPLP-βmusと共に使用した。TERTはプライマーP-TERTおよびパドロックプローブPLP-TERTを用いて、cMycはプライマーP-cMycおよびパドロックプローブPLP-cMycを用いて、ならびにHER2はプライマーP-HER2およびパドロックプローブPLP-HER2を用いて検出した。マウス組織における転写物の検出に関して、β-アクチンについてはパドロックプローブPLP2-βmusと共に、およびα1-アクチンについてはパドロックプローブPLP-α1musと共にプライマーP-α1βmusを使用し、ならびにγ1-アクチン検出についてはプライマーP-γ1musをパドロックプローブPLP-γ1musと共に使用した。KRAS遺伝子型同定については、プライマーP-KRASをパドロックプローブPLP-KRAS-wtGGT、PLP-KRAS-mutGTT、およびPLP-KRAS-mutGATと組み合わせて使用した。
【0159】
KRAS遺伝子型同定実験のための試料調製:
細胞株ONCO-DG-1、A-427、SW-480、HCT-15、A-549、およびHUP-T3(すべてDSMZ)をコラーゲンI 8-ウェル培養スライド(BD BioCoat)上に播種し、接着させた。細胞が所望のコンフルエンシーに達した時点で、それらをDEPC処理PBS(DEPC-PBS)中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド(Sigma)中で室温(20〜23℃)にて30分間固定した。固定後、スライドをDEPC-PBSで2回洗浄し、スライドからプラスチックウェルを除去した。その後スライドを、それぞれ1分間の70%、85%、および99.5%エタノールというエタノール系列により脱水した。
【0160】
結腸直腸癌および肺癌患者からの新鮮凍結およびFFPEヒト腫瘍組織は、スウェーデンバイオバンク法および倫理審査法(Ethical Review Act)(ウプサラ倫理審査委員会(Uppsala Ethical Review Board)承認、参照番号2006/325および2009/224)に従って、Department of Pathology and Cytology(Botling and Micke, 2011), Uppsala University Hospitalのバイオバンクから入手した。
【0161】
-80℃で貯蔵された新鮮凍結腫瘍試料から、Starfrost顕微鏡スライド(Instrumedics)上にテープ転写した新鮮凍結組織切片(4μm)を調製した。スライドをDEPC-PBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド中で室温にて45分間固定し、その後0.1 M HCl中の0.01%ペプシン(Sigma、#P0609)で37℃にて2分間透過処理し、続いてDEPC-PBSで短時間洗浄した。
【0162】
新鮮な外科的結腸直腸癌および肺癌標本から、Superfrost Plus顕微鏡スライド上に調製された捺印を得た。スライドの調製後、スライドを1分間風乾し、その後-80℃で貯蔵した。スライドをDEPC-PBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド中で室温にて30分間固定し、続いてDEPC-PBSで短時間洗浄した。
【0163】
FFPE組織切片(4μm)は、Superfrost Plus顕微鏡スライド(Menzel Glaser)上に載せ、60℃で30分間加熱した。次に、スライドをキシレン中に15+10分間浸漬することによって脱パラフィンし、その後エタノール系列(100%中で2×2分間、95%中で2×2分間、70%中で2×2分間、および最後にDEPC-H
2O中で5分間)により徐々に再水和した。スライドをDEPC-PBSで2分間洗浄してから、DEPC-PBS中の4%(w/v) パラホルムアルデヒドで室温にて10分間固定し、続いて再度DEPC-PBSで2分間洗浄した。次に、FFPE組織スライドを0.1 M HCl中の2 mg ml-1ペプシン(Sigma #P7012)中で37℃にて10分間透過処理した。DEPC処理H
2O(DEPC-H
2O)で5分間洗浄し、その後DEPC-PBSで2分間洗浄することにより、消化を停止した。最後に、DEPC-PBS中の4%(w/v) パラホルムアルデヒドを用いて、室温で10分間かけてスライドの2回目の固定を行い、DEPC-PBSで2分間洗浄した。組織の前処理が完了した後、スライドを、それぞれ1分間の70%、85%、および99.5%エタノールというエタノール系列により脱水した。
【0164】
組織のKRAS変異状態は、以前に記載された通りに(Sundstorm et al. (2010), BMC Cancer, 10, 660)、パイロシーケンシング(Pyromark Q24 KRAS、Qiagen GmbH、Hilden, Germany)により解析した。
【0165】
インサイチューcDNA検出手順:
試料をM-MuLV反応緩衝液中でプレインキュベートした。次に、M-MuLV反応緩衝液中、1μMのcDNAプライマーを20 U μl
-1のRevertAid HマイナスM-MuLV逆転写酵素(Fermentas)、500 nM dNTP(Fermentas)、0.2μg μl
-1 BSA(NEB)、および1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤(Fermentas)と共にスライドに添加した。スライドを37℃で3時間〜一晩インキュベートした。インキュベーション後、スライドをPBS-T(0.05% Tween-20(Sigma)を含むDEPC-PBS)で短時間洗浄し、続いてDEPC-PBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド中で室温にて30分間の後固定段階を行った。後固定後、試料をPBS-Tで2回洗浄した。標的cDNA鎖をパドロックプローブハイブリダイゼーションに利用できるようにするために、生成されたRNA-DNAハイブリッドのRNA部分をリボヌクレアーゼHで分解した。これは、パドロックプローブのハイブリダイゼーションおよび連結と同じ段階で行った。大部分の反応について、連結にはAmpligase(Epicentre)を使用した。試料をまず、Ampligase緩衝液(20 mM Tris-HCl、pH 8.3、25 mM KCl、10 mM MgCl
2、0.5 mM NAD、および0.01% Triton X-100)中でプレインキュベートした。次に、0.5 U μl
-1 Ampligase、0.4 U μl
-1 RNase H(Fermentas)、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、Ampligase緩衝液、50 mM KCl、および20%ホルムアルデヒドの混合物中で100 nMの各パドロックプローブを用いて、連結を行った。最初に37℃で30分間、その後45℃で45分間のインキュベーションを行った。マウス胚組織切片においてアクチン転写物アイソフォームを検出する場合、連結は代わりにT4 DNAリガーゼ(Fermentas)を用いて行った。試料を次にまず、T4 DNAリガーゼ緩衝液(Fermentas)中でプレインキュベートした。次に、0.5 mM ATPおよび250 mM NaClを補充したT4 DNAリガーゼ緩衝液中で、100 nMの各パドロックプローブを、0.1 U μl
-1 T4 DNAリガーゼ、0.4 U μl
-1 RNase H、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、および0.2μg μl
-1 BSAと共に添加した。次いで、スライドを37℃で30分間インキュベートした。AmpligaseまたはT4 DNAリガーゼによる連結後、スライドを、0.05% Tween-20を含むDEPC処理2×SSCで37℃にて5分間洗浄し、PBS-Tでリンスした。スライドを、φ29 DNAポリメラーゼ緩衝液(Fermentas)中で短時間プレインキュベートした。次に、提供される反応緩衝液中の1 U μl
-1 φ29 DNAポリメラーゼ(Fermentas)、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、250μM dNTP、0.2μg μl
-1 BSA、および5%グリセロールを用いて、RCAを行った。インキュベーションを37℃で60分間行った。インキュベーションに続いて、PBS-Tで洗浄した。2×SSCおよび20%ホルムアミド中の100 nMのそれぞれ対応する検出プローブを用いて、37℃で30分かけてRCPを可視化した。次にスライドをPBS-Tで洗浄し、Secure-sealを除去し、一連のそれぞれ3分間の70%、85%、および99.5%エタノールを用いてスライドを脱水した。100 ng ml
-1 DAPIを含むVectashield(Vector)で乾燥スライドを封入して、細胞核を対比染色した。
図5中の細胞膜の対比染色のためのプロトコールは、以下の「WGA染色」に記載する。
【0166】
WGA染色:
細胞質を対比染色するため、1×PBS中に希釈した2.5μg ml
-1 WGA 488(Invitrogen)を添加して、室温で60分間置いた。この後、PBS-Tで2回洗浄して、脱水してから、先に記載されるように封入およびDAPIによる核染色を行った。
【0167】
単一細胞定量化:
図6中の単一細胞定量化に関しては、個々の細胞に印をつけ、印のつけられた領域内のRCPを計数するために、特注のMatLabスクリプトを使用した。MatLabでのRCPの定量化は、本明細書で他の実施例において定量化のために用いられたBlobFinderソフトウェアと比較して、RCPが定義される方法が異なる。結果として、その結果は、BlobFinder解析と比較して約30%少ないRCPを示す。
【0168】
画像の取得および解析:
培養細胞の画像は、100 W水銀ランプ、CCDカメラ(C4742-95、Hamamatsu)、ならびにDAPI、FITC、Cy3、Cy3.5、およびCy5を可視化するための励起および発光フィルターを含むコンピュータ制御フィルターホイールを備えたAxioplan II落射蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて取得した。画像を捕獲するために、×20(Plan-Apocromat、Zeiss)、×40(Plan-Neofluar、Zeiss)、または×63(Plan-Neofluar、Zeiss)対物レンズを使用した。画像は、Axiovisionソフトウェア(4.3版、Zeiss)を用いて収集した。細胞画像のための露出時間は、DAPIに関して、260〜340 ms(×20倍率において)、10〜80 ms(×40)、または220 ms(×63);FITCに関して、40 ms(×40)または220 ms(×63);Cy3に関して、560〜640 ms(×20)、110〜160 ms(×40)、または200 ms(×63);Texas Redに関して、110 ms(×40)または250 ms(×63);およびCy5に関して、6,350 ms(×20)、180 ms(×40)、または350 ms(×63)であった。SKBR3およびSKOV3細胞については、すべてのRCPが画像化されることを確実にするために、画像をz-stackとして収集した。実施例3における新鮮凍結マウス胚組織切片でのα1-アクチンおよびβ-アクチンの画像化は、CCDカメラ(AxioCam MRm、Zeiss)および×20 Plan-Apochromat対物レンズを備えたMirax Midiスライドスキャナー(3D Histech)を用いて画像化した。スライドスキャナーにおける露出時間は、DAPIに関して45 ms、Cy3に関して270 ms、Texas Redに関して340 ms、およびCy5に関して3,200 msであった。定量化のため、画像中のRCPおよび細胞核の数を、BlobFinderソフトウェア(バージョン3.0_β)を用いてデジタル的に計数した。培養細胞については、5つの20×顕微鏡画像において定量化を行った(各試料につきおよそ20〜30個の細胞)。各画像について、RCPの総数を核の数で除した。次に、5つの画像の結果から各試料の平均値を算出し、これを細胞当たりのRCPとして報告する。
図6において用いられた単一細胞定量化のための手順は、上記の「単一細胞定量化」に記載されている。
【0169】
細胞におけるβ-アクチン転写物定量化のためのqPCR
細胞株GM08402の2つの別個の継代物を、細胞を計数した後に収集し、全細胞溶解物からRNAを単離するためのプロトコールと共にPARISキット(Ambion)を用いて、細胞から全RNAを精製した。DNAフリーキット(Ambion)を用いて、精製RNAから微量のDNAを除去した。対応する酵素緩衝液中の20 U RevertAid HマイナスM-MuLV逆転写酵素(Fermentas)、0.5μgオリゴ(dT)プライマー(20マー)、1 mM dNTP、および1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤を含む混合物中で、700 ngの鋳型RNAを用いて、第1鎖cDNA合成を行った。試料を37℃で5分間、その後42℃で60分間インキュベートした。70℃で10分間加熱することによって、反応を停止した。検量線作成のための鋳型を合成するために、予備PCRを行った。このPCRでは、細胞継代物のうちの1つに由来する1μlのcDNAを、全量50μlにおいて、0.02 U μl
-1 Platinum Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)、PCR緩衝液、2 mM MgCl
2、200μM dNTP、200 nM ACTBfwdプライマー、および200 nM ACTBrevプライマーの混合物中で増幅した。PCRは、95℃で2分、続いて45回のサイクル(95℃で15秒、50℃で15秒、および72℃で1分)、および最後の72℃で5分で行った。溶液からDNAを精製するためのプロトコールに従って、Illustra GFX PCRおよびゲルバンド精製キット(GE Healthcare)を用いて、PCR産物を精製した。Nanodrop 1000分光光度計(Thermo Scientific)を用いて精製PCR産物の濃度を測定し、マイクロリットル当たりの分子数を算出した。全量30μl中、2μlの鋳型cDNAまたは希釈した検量線PCR産物を、SYBR Green(Invitrogen)、0.02 U μl
-1 Platinum Taq DNAポリメラーゼ、PCR緩衝液、2 mM MgCl
2、200μM dNTP、200 nM ACTBfwdプライマー、および200 nM ACTBrevプライマーと共に用いて、qPCRを実行した。qPCRは、予備PCRと同じプログラムを用いて実行した。検量線試料は同一試料の2つ組で実行し、細胞の2つの継代物によるcDNA試料は3つ組で実行した。2つの細胞継代物に関する転写物コピー数の計数は、回収時に計数された細胞の数に基づいた。次いで、細胞株の平均β-アクチンmRNAコピー数を決定した。インサイチュー多重検出実験のためのqPCRによる効率推定のプロトコールは、以下の通りである。
【0170】
細胞株GM08402、SKBR3、およびBJhTERTを、細胞を計数した後に回収し、RiboPureキット(Ambion)を用いて細胞から全RNAを精製した。DNAフリーキット(Ambion)を用いて、精製RNAからDNA痕跡を除去した。RNA 6000 Picoチップ(Agilent)を用いてAgilent Bioanalyzerで、RNAの濃度および質を調べた。第1鎖cDNA合成は、大容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を用いて行った。調製されたcDNAを×4希釈してから、TaqMan qPCRで解析した。PCRプライマーおよびTaqManプローブは、Applied Biosystemsから、確証された20×TaqMan Gene Expression Assays(β-アクチンに関してアッセイ番号Hs99999903_ml、TERTに関してHs00972650_ml、およびHER2に関してHs99999005_mH)として購入した。異なる遺伝子の検量線のための鋳型は、PCRによって作製した。このPCRでは、BJhTERT細胞株に由来する1μlのcDNAを、異なる遺伝子に関して別個の反応物において、0.02 U μl
-1 Platinum Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)、1×PCR緩衝液、2 mM MgCl2、200μM dNTP、および0.01×各プライマーミックス(0.2μΜの各プライマー)の混合物中で増幅した。全PCR量は50μlであり、PCRは、95℃で2分、続いて45×のサイクル(95℃で15秒および60℃で1分)で行い、60℃で5分で終了した。Illustra GFX PCRおよびゲルバンド精製キット(GE Healthcare)を用いて、PCR産物を精製した。Nanodrop 1000分光光度計(Thermo Scientific)を用いて精製PCR産物の濃度を測定し、μl当たりの分子数を算出した。全量20μlにおいて、1×TaqMan Gene Expression Assayプライマーおよびプローブミックスを加えた1×TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG(Applied Biosystems)中で4μlの鋳型cDNAまたは検量線PCR産物を用いて、qPCRを実行した。qPCRプログラムは、95℃で10分、続いて95℃で15秒および60℃で1分の40×のサイクルで実行した。試料はすべて2つ組で実行し、それらは検量線の段階希釈物、段階希釈したcDNA試料、細胞株由来のRNA対照、および鋳型なしの対照を特徴とした。転写物コピー数の算出は、回収時に計数された細胞の数に基づいた。
【0171】
細胞株および組織におけるKRASのインサイチュー遺伝子型同定:
分子インサイチュー反応はすべてSecure-seal(Grace Bio-Labs Inc.)中で行い、組織または捺印の反応容積は、試料のサイズに応じて100μl(直径13 mm、深さ0.8 mmのサイズ)または350μl(直径22 mm、深さ0.8 mmのサイズ)のいずれかであった。細胞に用いられたSecure-sealは、50μlの全容積(直径9 mmおよび深さ0.8 mmのサイズ)を有した。Secure-sealを細胞または組織上に載せ、PBS-T(0.05% Tween-20(Sigma)を含むDEPC-PBS)で短時間洗い流すことによってウェルを脱水した。
【0172】
その後、ごくわずかな例外を除いて、試料を同様に処理した。後固定は、細胞株および腫瘍捺印については30分であるのに対して、新鮮凍結およびFFPE組織については45分間行った。また、FFPE組織の後固定については、3%(w/v) パラホルムアルデヒドの代わりに3.7%ホルムアルデヒドを使用した。最後に、組織上で行ったRCAインキュベーション時間は、培養細胞および腫瘍捺印(2時間)と比較してより長かった(5時間)。すべての反応について、スライドは加湿チャンバー内でインキュベートした。
【0173】
KRAS遺伝子型同定実験のためのオリゴヌクレオチド:
オリゴヌクレオチド配列(表4)は、GenBankアクセッション番号NM_033360(KRAS)、NM_005228(EGFR)、NM_001126114.1(TP53)、およびNM_001101.3(ACTB)用いて設計した。パドロックプローブはすべて、PNK緩衝液A中の0.2 U μl
-1 T4 PNK(Ferments)および1 mM ATPを用いて10μMの濃度で37℃にて30分間かけて5'リン酸化し、その後65℃で10分間処理した。異なる組織試料および細胞株に適用されたプライマー、パドロックプローブ、および検出プローブを、表6に要約する。
【0174】
M-MuLV反応緩衝液中、1μMのcDNAプライマーを20 U μl
-1のRevertAid HマイナスM-MuLV逆転写酵素(Fermentas)、500μM dNTP(Fermentas)、0.2μg μl
-1 BSA(NEB)、および1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤(Fermentas)と共にスライドに添加した。スライドを37℃で3時間インキュベートした。
【0175】
インキュベーション後、PBS-Tでウェルを洗い流すことによってスライドを短時間洗浄し、続いてDEPC-PBS中の3%パラホルムアルデヒド(w/v)中で室温にて45分間(新鮮凍結およびFFPE組織)または30分間(捺印)の後固定段階を行った。後固定後、PBS-TでSecure-sealチャンバーを洗い流すことによって、試料を洗浄した。
【0176】
KRAS遺伝子型同定実験のためのRNase H消化、パドロックプローブのハイブリダイゼーションおよび連結:
パドロックプローブハイブリダイゼーションに利用可能な一本鎖標的cDNA鎖を作出するために、生成されたRNA-DNAハイブリッドのRNA部分をRNase Hで分解した。これは、パドロックプローブのハイブリダイゼーションおよび連結と同じ段階で行った。反応は、Ampligase緩衝液中の1 U μl
-1 Ampligase(Epicentre)、0.4 U μl
-1 RNase H(Fermentas)、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、50 mM KCl、20%ホルムアルデヒドの混合物中で100 nMの各パドロックプローブを用いて行った。最初に37℃で30分間、その後45℃で45分間のインキュベーションを行った。連結後、PBS-Tでチャンバーを洗い流して、スライドを洗浄した。未知組織試料の前向きKRAS変異検出については、KRASコドン12および13パドロックプローブのすべてのカクテルを、10 nMの最終濃度で混合した。
【0177】
KRAS遺伝子型同定実験のための環状化パドロックプローブの増幅および検出:
提供される反応緩衝液中の1 U μl
-1 φ29 DNAポリメラーゼ(Fermentas)を、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、250μM dNTP、0.2μg μl
-1 BSA、および5%グリセロールと共に用いて、RCAを行った。インキュベーションは、37℃で、腫瘍捺印および細胞株については2時間、ならびに新鮮凍結およびFFPE組織についてはおよそ5時間行った。RCA後、PBS-TでSecure-sealチャンバーを洗い流して、試料を洗浄した。2×SSCおよび20%ホルムアミド中の100 nMのそれぞれ対応する検出プローブを用いて、37℃で15分かけてRCPを可視化した。次に、PBS-Tでチャンバーを洗い流すことによってスライドを再度洗浄し、Secure-sealを除去し、一連のそれぞれ30秒間の70%、85%、および99.5%エタノールを用いてスライドを脱水した。100 ng ml
-1 DAPIを含むVectashield(Vector)で乾燥スライドを封入して、細胞核を対比染色した。
【0178】
KRAS遺伝子型同定実験のための画像の取得および解析:
画像は、100 W水銀ランプ、CCDカメラ(C4742-95、Hamamatsu)、ならびにDAPI、FITC、Cy3、およびCy5を可視化するための励起および発光フィルターを含むコンピュータ制御フィルターホイールを備えたAxioplanII落射蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて取得した。画像を捕獲するために、新鮮凍結およびFFPE組織に対して×10(Plan-Apocromat、Zeiss)対物レンズを使用し、腫瘍捺印に対して×20(Plan-Apocromat、Zeiss)対物レンズを使用し、ならびに最後に細胞に対して×63(Plan-neofluar、Zeiss)対物レンズを使用した。画像は、Axiovisionソフトウェア(4.8版、Zeiss)を用いて収集した。説明のために提示される画像は、印刷を明確にするために画像編集ソフトウェアを用いて加工した。異なるカラーチャネルの閾値は、ImageJ 1.42qを用いて設定し、Cy3およびCy5でのKRASシグナルのより明らかな可視化のために、最大値フィルターを適用した。
【0179】
実施例1:
パドロックプローブを用いた培養ヒト細胞におけるβ-アクチン(ACTB)転写物の検出
培養ヒト細胞におけるβ-アクチン(ACTB)転写物を検出するために、それぞれ第1エキソンおよび最終エキソン中の配列を標的化する2つの異なるパドロックプローブを使用した。この転写物に関する以前の報告と一致するこの転写物の以前の知見と一致して、細胞の細胞質に局在する多くの明るい点状シグナルが可視化された。検出効率は2つのパドロックプローブについて同様であり、この場合、検出が、転写物に沿った標的位置に大きく依存しないことが示された(
図5)。対照的に、cDNA合成反応から逆転写酵素を除いた場合には、シグナルは検出されず、シグナルがcDNA依存的であることが検証された(
図5)。GM08402細胞株におけるβ-アクチンmRNAの定量的PCR(qPCR)データ(細胞当たり2,000コピー)との比較に基づいて、全体的なインサイチュー検出効率は、利用可能な転写物の約30%であると推定された。β-アクチンmRNA発現における細胞間変動の他の報告と一致して、細胞間のシグナル数にかなりの変動があった(
図6)。
【0180】
実施例2:
インサイチューでの培養細胞における転写物の単一ヌクレオチド変化の検出
検出の高い選択性を実証するために、アッセイを用いて、インサイチューで転写物の単一ヌクレオチド変化を検出した。β-アクチンにおいて発現される多型は稀であり、そのため遺伝子型同定標的として、ヒトとマウスのβ-アクチン配列間の単一塩基の違いを使用した。共培養したヒトおよびマウス線維芽細胞を、パドロックプローブPLP-βhum(ヒト)およびPLP-βmus(マウス(Mus musculus))ならびに標的プライミングRCAを用いるcDNAのインサイチュー遺伝子型同定に供した。共培養物中の細胞の2つの亜集団間に、明確な区別が認められた。環状化段階における完全に一致したパドロックプローブの優先選択により、リガーゼによる2つの標的間の区別が確実になる。
【0181】
実施例3:
インサイチューでの新鮮凍結組織における転写物の単一ヌクレオチド変化の検出
固定化組織切片における方法を試験するために、頸部の高さで横断切断されたE14.5マウス胚由来の新鮮凍結組織において、近縁の骨格筋α1-アクチン(Acta1)および細胞質β-アクチン(Actb)転写物を標的化した。単一塩基だけ異なる標的配列を考慮して設計されたパドロックプローブを用いて、2つのアクチン転写物は組織中でうまく検出された。α1-アクチンシグナルは主に骨格筋に分布したのに対して、β-アクチンシグナルは広く分布したが、非筋肉組織においてわずかにより多くのシグナルを示した。細胞質α1-アクチン(Acta1)転写物に特異的なプローブを含めることにより、同じ遺伝子ファミリーに由来する3つの転写物を識別する能力が実証された。
【0182】
実施例4:
発現プロファイリングのための転写物の検出
発現プロファイリングのための転写物の多重検出に関する本方法の能力を試験するために、3つの癌関連転写物、HER2(ERBB2としても知られる)、cMyc(MYCとしても知られる)、およびTERTに対してパドロックプローブを設計した。参照転写物としてβ-アクチンを用いて、これらの転写物を4つの細胞株(ヒト卵巣癌細胞株、ヒト乳癌細胞株、TERT不死化ヒト包皮線維芽細胞細胞株、および初代線維芽細胞培養物)においてアッセイした。癌関連遺伝子の発現レベルは、細胞株間で異なった(
図2a〜d)。卵巣癌および乳癌細胞株が、HER2およびcMyc転写物の発現の類似のパターンを示したのに対して、TERT不死化線維芽細胞は、TERT転写物の検出可能なレベルを有する唯一の細胞型であった。4つの細胞株はすべてβ-アクチンを発現し、正常線維芽細胞株において、これは検出可能なレベルで発現された、調べられた中で唯一の転写物であった。これらの結果をqPCRデータおよび入手可能な文献と比較し、異なる細胞株において予測された相対発現レベルとの良好な相関関係、および異なる転写物間の検出効率の著しい一貫性が認められた(実施例5)。調べたすべての転写物について、発現の大きな細胞間変動が認められたが、これは培養物中の単一細胞における発現の以前の研究と一致する。
【0183】
実施例5:
ヒト細胞株における癌関連転写物の発現
実施例4に記載されるように、3つの癌関連転写物、TERT、HER2、およびcMycを4つの細胞株においてアッセイした。インサイチューデータによると、細胞株はすべてハウスキーピング遺伝子β-アクチンを発現したが、癌関連転写物の発現において異なった。次に、インサイチュー実験における検出効率の変動を評価できるようにするため、GM08402、BJhTERT、およびSKBR3細胞株においてqPCR測定を行って、異なる転写物を定量化した。TERT発現のqPCR測定から、BJhTERT細胞株における比較的高い発現(247分子/細胞)、およびSKBR3乳癌細胞株における低発現(6分子/細胞)が示された。qPCRにより、TERT発現は正常初代線維芽細胞において検出されなかった。TERTのqPCRデータは、文献中に見出されるTERTのmRNA発現レベルと良好に相関する(BJhTERTに関して220分子/細胞、およびSKBR3に関して0.57分子/細胞(Yi et al., 2001))。したがって、BJhTERTにおいて細胞当たり39個のRCPが検出されたというインサイチュー結果は、qPCRデータに基づいて16%の検出効率に相当する。HER2転写物は、卵巣癌および乳癌細胞株において過剰発現されることが知られている。SKBR3細胞株において、HER2 mRNA数/細胞は168〜336分子であると報告されており、本明細書に記載されるqPCR測定は177分子/細胞であった。インサイチューで検出されたHER2 mRNA数/細胞は25であった。これにより、SKBR3細胞におけるHER2転写物の検出効率は14%となる。HER2発現は、正常初代線維芽細胞またはBJhTERT細胞株において、qPCRによって検出され得なかった。SKOV3細胞におけるcMycの発現レベルは、同じ細胞株におけるHER2転写物の数の約4分の1と推定され、これは本明細書に記載されるインサイチュー測定と良好に相関する。単独でアッセイした場合、培養線維芽細胞におけるβ-アクチンの検出効率は、転写物のqPCR測定およびインサイチュー検出に基づいて、30%であると推定された。これらの多重実験において、検出効率は、同じqPCR推定に基づいて、わずかに低く約15%である。同様の影響が癌転写物においても認められ、それらは多重において約15%の検出効率を示す一方で、個々ではより良好に機能する。特にcDNAプライマーのLNA修飾塩基は相互に非常に強力に結合する能力を有するため、多重実験における標的について観察されたより低い検出効率は、異なるパドロックプローブおよび/またはcDNAプライマー間の相互作用に起因する可能性が高い。多重反応の検出プロトコールは、プローブおよび/またはプライマーの濃度を最適化することによって、改善することができる。さらに、qPCR測定は、細胞株間の相対的β-アクチン発現レベルに関して、インサイチュー測定と良好な相関関係を示す。まとめると、これらのデータから、異なる細胞型におけるRCPの相対レベルは、細胞集団における真の相対転写物レベルの優れた推定値であることが示される。したがって、本方法は、異なる試料における相対発現プロファイリングに適していると考えられる。qPCRによるmRNA定量化において、逆転写反応は変化を導入することが知られているが、このことはインサイチューでの逆転写についても当てはまる可能性が高い。
【0184】
実施例6:
新鮮凍結HER2陽性ヒト乳癌組織における転写物分布の検出
本発明の技法はまた、新鮮凍結HER2陽性ヒト乳癌組織切片においてHER2転写物分布を評価するために使用した。腫瘍組織において予測される癌細胞および正常間質の存在と一致して、発現は細胞間で大きく異なった。
【0185】
実施例7:
KRAS野生型および変異体細胞におけるKRAS点変異の遺伝子型同定
本発明の方法はまた、KRAS野生型および変異体細胞におけるKRAS点変異を遺伝子型同定するために使用した(
図7)。それらの対応するRCPの色に基づいて、異なる細胞型を明らかに識別することができた。KRAS癌遺伝子の活性化変異は、全ヒト腫瘍の17%〜25%において見出され、組織標本においてこれらの変異および他の腫瘍細胞特異的マーカーをインサイチューでモニターするためのアッセイは、臨床病理学研究にとって大いに価値があると考えられる。KRASにおける点変異についてヘテロ接合性である細胞株に由来する77個の細胞を解析することにより、対立遺伝子発現の研究の可能性をさらに調べた。かなりの細胞間変動を伴って、48%が野生型転写物という平均対立遺伝子比が認められ(
図6bおよび7)、均衡のとれた対立遺伝子転写が示された。本実験において、7個を超えるRCPを有するすべてのヘテロ接合性細胞は、両対立遺伝子からのシグナルを示した。7個未満のシグナルを示す細胞については、単一細胞において2対立遺伝子発現の可能性および不均衡な対立遺伝子発現の程度を決定することは難しい。
【0186】
実施例8:
cDNAプライマーへのLNA塩基取り込みの効果
逆転写段階の効率を高めるために、ロックド核酸(LNA)塩基が取り込まれたRTプライマーを使用した。LNA修飾オリゴヌクレオチドは、これまでにFISHで用いられており、2塩基または3塩基ごとにLNAと置換されたDNA/LNAミックスマー(mixmer)が最もよく機能する。標的に対するハイブリダイゼーション効率の増加に加えて、プライマーのLNA含量は、RNase Hによる分解から標的RNAを保護するように設計することができる。このことは、本方法において、インサイチューで合成されたcDNAが、cDNAプライマーのハイブリダイゼーションにより、細胞内で、検出されるmRNA分子に対する局在性を維持し得ることを意味する(
図1)。異なるLNA置換を有するcDNAプライマー(表2)を、PLP-βe1パドロックプローブ標的部位のその後の検出に関して、インサイチューで試験した。5'末端において2塩基ごとにLNAで置換されたプライマーが、3塩基ごとの置換を有するプライマーよりも良好に機能することが判明した(
図3)。合計して5個、7個、または9個のLNA塩基を含むプライマーもまた調べ、9個のLNA塩基を付加することで、インサイチューにおけるシグナルの量がわずかに減少することが判明した。LNAが、逆転写酵素がプライマーからcDNAを合成する能力を妨げないことを確実にするために、LNA塩基はプライマーの5'側に配置し、3'側は未修飾のままにした。プライマーの全長を30ヌクレオチドから25ヌクレオチドに短くしても、結果に影響しないことが判明し、したがってプライミングはプライマー中のLNA塩基の存在によって妨げられないと結論づけられた。
【0187】
実施例9:
cDNA合成効率
ハイブリダイズするcDNAプライマーとパドロックプローブの標的配列との間の最適な距離を確実にするために、細胞において生成されたcDNA分子の長さを調べた。β-アクチンmRNAの5'末端から異なる距離に位置するcDNAプライマーを用いて、インサイチュー検出実験を設定した。次にインサイチューで逆転写を行い、得られたcDNA分子を、逆転写されたcDNAの3'末端近傍に標的配列を有するPLP-βe1で検出した。次に、異なるプライマーに関して、細胞当たり形成されたRCPの数を定量化した。試験したプライマーは、プライマー部位の始めから転写物の末端まで測定して、およそ90〜500 nt長の範囲のcDNA分子をもたらすためのものであった(プライマー配列については表3を参照されたい)。主に短い分子が形成されること、およびcDNAプライマー部位はパドロックプローブ標的部位に近接して位置すべきであることが判明した(
図4)。逆転写のためのプライマーを設計する方法に関する詳細を提供するばかりでなく、cDNA合成長が限定されることに関する知識は、RCA反応の遂行にとって実際的関連性を有する。本プロトコールでは、インサイチューの内因性ミトコンドリアDNA分子について最初に記載された標的プライミング戦略(Larsson et al. (2004) Nat. Methods, 1, 227-232,)が用いられた。標的プライミングは、標的分子の近接3'末端からプライマーを作出するために、一本鎖DNAに対してφ29 DNAポリメラーゼの3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を利用する。RCA反応の効率は、ミトコンドリアDNAの突出3'末端の長さが0ヌクレオチドから130ヌクレオチドに増加するにつれて減少することが示された。本方法において非常に短いcDNA分子が生成されたため、標的プライミングRCAアプローチを、標的鎖のさらなる調製なしに、cDNA検出のためのシグナル増幅にも効率的に適用することができる。
【0188】
実施例10:
パドロックプローブの連結のための異なるリガーゼ
これまでにパドロックプローブ連結に用いられてきた主に2種類の酵素が存在する;ATP依存性T4 DNAリガーゼおよびNAD+依存性Ampligase(商標)である。両リガーゼを、パドロックプローブを用いるcDNAのインサイチュー検出について試験し、優れた検出効率が得られた。しかしながら、ヒトおよびマウス細胞において、単一ヌクレオチド分解能を伴う配列を検出するための実験を行う場合に、Ampligaseが、非一致プローブからより低い割合のシグナルを生成することが判明した。T4 DNAリガーゼによる正しいシグナルの割合は、ヒト細胞について87%(ヒトRCP/全RCP)であり、マウス細胞について98%(マウスRCP/全RCP)であった。これはAmpligase(商標)と対照的であり、この酵素は、マウス標的配列についてはT4 DNAリガーゼと比較して変化しなかったものの、ヒト標的配列についてはるかにより高い選択性を有した(98%正しい)。異なるアクチンアイソフォームの転写物は高い割合の類似性を共有し、多くの偽遺伝子が存在するため、これらの予期せぬ陽性シグナルのいくつかは、単純なインシリコ配列解析を行った場合には現れない、パドロックプローブ標的配列と類似した配列から生成されると考えられる。これらの観察に加えて、Ampligase(商標)は、T4 DNAリガーゼよりも、一致した基質に対してより特異的であることが知られている。
【0189】
実施例11:
インサイチュー変異検出のためのアッセイ設計
コドン12および13(G12S、G12R、G12C、G12D、G12A、G12V、およびG13D)およびコドン61(Q61H)におけるKRASの点変異、ならびにEGFRの点変異(G719A、G719C、S768I、およびL858R)、およびTP53の点変異(S127FおよびP190S)について、パドロックプローブを設計した。異なる標的の野生型形態のためのパドロックプローブも同様に設計した。変異特異的パドロックプローブは、遺伝子型に応じて異なる3'末端の最終ヌクレオチドを除いて、同一標的配列を有して設計した。この位置のミスマッチは用いられるDNAリガーゼによって許容されず、そのため点変異のような単一ヌクレオチドの違いは効率的に識別される。さらに、例えば緑色および赤色といった異なる蛍光色素で標識された検出プローブを用いてRCPを相互に識別するために、野生型および変異体パドロックには検出プローブのための2つの異なる部位が存在する。また、細胞型間で比較的一定した発現を有する内部参照として、付加的なフルオロフォアによって検出されるACTB転写物の検出をこれらのアッセイに含めた。試料にわたってACTBシグナルを比較することにより、異なる試料における検出効率の推定が提供された。ACTBデータは本研究の開発段階において有用であったが、変異スコアリングおよび組織分類には不必要であることが判明した。
【0190】
実施例12:
KRAS状態が公知である新鮮凍結結腸組織および肺組織における変異検出
パドロックプローブの選択性は、最初に野生型および変異特異的KRAS細胞株においてインサイチューで試験した。プローブの質を確認した後、本発明者らのインサイチュー遺伝子型同定法を、KRAS状態が公知である10個の新鮮凍結ヒト結腸癌組織および肺癌組織に適用した。この検証段階では、各プローブ対(一方のプローブは特定の変異に対し、もう一方は対応する野生型変種に対する)を、KRAS状態が公知である新鮮凍結組織試料の集合において個々に試験した。野生型プローブは、緑色蛍光RCPを生成するように設計し、変異特異的プローブは赤色蛍光RCPを生成するように設計した。試料は、最も稀な変異であるG12Rを除いたすべてのコドン12および13変異を示した。しかしながら、試験した細胞株のうちの1つにおいて、G12R変異のパドロックプローブ対の性能をやはり特異性について検証した。このようにして、KRAS野生型腫瘍組織を、通常の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)と同様の様式で顕微鏡可視化によって、活性化KRAS変異を保有する腫瘍を有する組織と識別することができた。KRAS変異を有する結腸および肺切片は、パドロックプローブ対中のプローブの両方から生成されるシグナルの混合物を示したのに対して、正常組織は野生型パドロックプローブからのみシグナルを示した。10個の試料を視覚的に調べることにより、組織内および組織間の両方のKRAS発現レベルにおいて、変動が明らかに見られ得る。全体として、KRASのわずかにより高い発現レベルが、結腸と比較して肺において認められた。結果から、ほとんどの症例が、腫瘍細胞領域内で野生型および変異体KRASシグナルの両方を示すことが示され、ヘテロ接合性発現が示唆された。対照的に、1つの肺試料は、腫瘍領域においてほぼ変異体シグナルのみを示し、わずかに存在する野生型シグナルは正常な周囲の間質に属した。これは、KRASホモ接合性変異またはヘテロ接合性消失(LOH)を反映し得た。
【0191】
実施例13:
FFPE組織における変異検出
インサイチューパドロックプローブ技法がFFPE組織に適用できるかどうかを評価するために、これを試験した。この種の組織材料に適用されるプロトコールは、前処理手順を除いて、本質的に新鮮凍結組織と同様であった。それぞれのパドロックプローブ対を適用して、コドン12および13中に公知のKRAS変異を有する14個の結腸直腸FFPE癌組織の集合において、KRAS変異解析を行った。組織はすべて、野生型および変異体パドロックプローブの両方から生成されるシグナルの混合物を示したが、シグナル数(KRASおよびACTBの両方に関する)の変動が組織間で顕著であり、これはおそらくはFFPE試料間で予測される組織の質の差を反映している。さらに、野生型シグナルと変異体シグナルの比率もまた、同じKRAS変異を保有する組織間で異なることが認められ、これはおそらくは腫瘍特異的な特性を反映している。コドン61で最もよく見られる変異(Q61H)についてもプローブを設計し、2つの結腸腫瘍FFPE試料において試験し、これらは変異体としてうまくスコア化された。
【0192】
実施例14:
変異状態が未知である前向き臨床試料におけるKRASのインサイチュー検出
パドロックプローブが選択的であることを最初に検証した後、すべてのプローブを混合して、症例がKRAS陽性であるか否かという最初の診断的質問に答え得る単一反応物にした。これを、KRAS変異特異的パドロックプローブの単一対を用いるインサイチュー変異検出と、KRASコドン12および13変異に関するすべてのプローブを含むパドロックプローブカクテルを用いる多重検出アプローチを比較することによって試験した。組織の可視化検査に基づく結果から、複数のプローブが2コドン標的部位をめぐって競合する場合に、効率も選択性も失われないことが示された。したがって、この解析は、腫瘍が活性化KRAS変異を有するか否かの迅速な答えを提供する。それにもかかわらず、必要であれば、この技法を用いて、連続切片においてすべての変異について個々に単純に試験することにより、正確な配列変化を明らかにする可能性がなお存在する。
【0193】
その後、KRAS変異状態が未知である8個の前向き肺FFPE組織において、多重変異検出が実証された。全肺癌症例のおよそ15〜30%が活性化KRAS変異を有する。パドロックプローブおよびRCAを用いて変異解析を行った後、8症例のうちの3症例が変異していると結論づけられた。この結果を同じ組織におけるパイロシーケンシングと比較し、示唆された遺伝子型がすべての症例について正しいと確認された。
【0194】
細胞学的調製物を含む診断設定において本方法を試験するため、KRAS変異状態が未知である8個の前向き新鮮結腸癌標本から腫瘍捺印を調製した。非固定組織に関するプロトコールを用いて、パドロックプローブおよび標的プライミングRCAを用いる多重KRAS変異検出を調製した。捺印の顕微鏡検査により、2症例はインサイチュー変異アッセイにおいて陽性であることが判明したのに対して、残りの6個の腫瘍捺印は野生型シグナルのみを示した。その後、同じ症例に由来する対応するFFPE腫瘍切片からのDNAを、パイロシーケンシングによりKRAS変異について試験した。パイロシーケンシング結果は、インサイチューアッセイと完全に一致した。
【0195】
実施例15:
組織マイクロアレイにおけるハイスループット変異スクリーニング
組織マイクロアレイ(TMA)を用いて、1枚のスライド上で何百もの患者FFPE腫瘍試料を解析することができ、これは、大きな患者コホートにおいてタンパク質発現(免疫組織化学(IHC)による)および遺伝子コピー数変化(FISHによる)を特徴づけるために用いられてきた。ここでは、25個のFFPE結腸試料(2つ組)を含むTMAを、KRASコドン12および13変異の可能性についてアッセイした。アレイは、すべてKRASについて変異状態が未知である正常結腸粘膜、管状腺腫、鋸歯状腺腫、原発腫瘍、および一致する転移由来の試料からなった。全試料のうち11個が、KRAS陽性であることが判明した‐腺腫2個、鋸歯状腺腫1個、原発腫瘍4個、およびそれらの一致する転移。対応するFFPEブロックにおけるパイロシーケンシングによる変異解析は、インサイチューデータと完全に一致した。
【0196】
実施例16:
腫瘍進行および組織学的不均一性に関連する変異癌遺伝子対立遺伝子の差次的発現
腫瘍にわたる変異癌遺伝子の可変発現は、潜在的に、単一癌病変の異なる領域において標的療法に対する可変反応をもたらし得る。そのため、インサイチューアッセイを用いて、症例を、発現された変異の異なるパターンについてスクリーニングした。コドン61変異を有する1つの結腸癌症例では、正常結腸粘膜から低度および高度異形成ならびに浸潤癌への組織学的進行が、単一スライド上で可視化され得た。腫瘍進行に沿って、変異の発現の明らかな増加が存在した。したがって、EGFR阻害剤に対する耐性のレベルが、異なる新生物区画における該発現レベルに従うかどうかを推測することができる。
【0197】
また、そのうちの8個が陽性であることが判明している9個のFFPE肺組織のセットにおいて、EGFR L858R変異を標的化した。インサイチュー変異アッセイの結果は、DNA配列決定データと完全に一致した。肺試料のうちのいくつかは10年以上前に収集されたにもかかわらず、多数のシグナル、特に変異体シグナルを有して高い検出効率が認められ、これは腫瘍において増幅されたEGFRからの高いmRNA発現を反映し得る。1つの肺試料では、腫瘍増殖パターンに関して大きな組織学的不均一性が認められた。野生型EGFRは正常気管支上皮でのみ発現された。気管支肺胞上皮/鱗状増殖パターンを有する領域において、変異EGFRの発現は低く、野生型対立遺伝子の発現と等しかった。変異対立遺伝子の発現は、絶対数の点で、および野生型対立遺伝子に対して、より低分化の腺領域において増加した。変異体EGFRの発現は、充実性増殖パターンを有する領域においてピークになった。したがって、L858Rの発現レベルがEGFR-TKI療法に対する腫瘍クローンの感受性に影響するのであれば、この個々の腫瘍において、腫瘍の低分化領域は高分化領域よりも良好に反応すると予測される。
【0198】
実施例17:
複数の変異を有する腫瘍における発現パターン
腫瘍内不均一性をさらに研究するために、複数の点変異を有することが公知である腫瘍に対してプローブを設計した。個別化療法とは、患者の個々の特徴に合わせた療法を意味する。次世代配列決定技術の出現は、これから次第に、研究者およびおそらくは間もなく臨床医に、総合して個別化療法の改善された機会を提供し得る個々の腫瘍の変異プロファイルを提供しつつある。腫瘍の一部から調製されたDNAを配列決定することで、その試料中のすべての変異が明らかになるが、それらが腫瘍の異なるサブクローン中に存在する場合には明らかとはならない。本発明者らの技術を用いて遺伝子間腫瘍不均一性を研究できることの概念実証として、EGFR、KRAS、およびTP53の変異の特有の組み合わせを保有するFFPE事例のスクリーニングのために、個別化インサイチュー変異アッセイを設定した。
【0199】
1つの肺癌症例は、活性化EGFR変異G719C、および抗EGFR療法に対する耐性と関連しているEGFR S768I変異に関して陽性であった。いずれの変異変種も、パドロックプローブに基づくインサイチュー技法を用いてうまく検出され、それらの個々の発現パターンが同定された。腫瘍切片にわたって、G719C変異の発現は、S768I変異と比較して高かった。この症例は抗EGFR療法を受けなかった患者を示し、そのため耐性変異の発現増加の選択圧は存在しなかったため、発現された変異対立遺伝子間のこの均衡が予測され得る。
【0200】
別の肺FFPE試料を、腫瘍抑制遺伝子TP53のS127F変異と組み合わせてG719A EGFR変異についてアッセイした。この組織のインサイチュー解析から、TP53の野生型形態のみを発現し、EGFR対立遺伝子のいずれの発現も検出され得なかった間質領域内の細胞が示された。この組織試料のヘマトキシリンおよびエオシン(HE)染色により、野生型TP53を有する細胞集団がリンパ球であることが確認された。TP53 S127F変異陽性の腫瘍領域は、野生型EGFRおよびG719Aパドロックプローブの両方からのシグナルを示したが、野生型TP53パドロックプローブからのシグナルは示さず、TP53 LOHが示唆された。
【0201】
KRAS G12CおよびTP53 P190S変異が報告されているFFPE肺組織試料に対して、パドロックプローブのセットを適用した。野生型および変異体のTP53シグナルが異なる区画(それぞれ間質および腫瘍)に位置した先の症例とは対照的に、この場合、腫瘍区画内において、変異体および野生型TP53転写物がヘテロ接合性様式で発現された。同様に、野生型および変異体KRASシグナルも、野生型KRAS対立遺伝子と比較して変異体の発現がより高い状態で、腫瘍領域にわたって均等に分布していた。この2症例における野生型および変異体対立遺伝子の発現パターンのこの違いは、インサイチュー技法がDNA配列決定の補完物として含まれなかったならば、同定されなかったであろう。さらに、このインサイチューアッセイは単一細胞レベルで情報を明らかにするため、特有の情報(例えば、同一細胞内の2つ以上の変異の発現)を同定し、詳細に研究することができる。同一細胞内の異なる対立遺伝子の共局在は、腫瘍内の細胞内にそれらが共存するという強力な証拠を提供するが、共局在がないことは、特定の細胞系譜においてそれらが共発現されることを証明しない。これらの細胞のいずれにおいても全4つの対立遺伝子は検出されなかったが、染色パターンの最も可能性の高い解釈は、KRAS変異はすべてのTP53変異陽性細胞によって保有されるというものである。
【0202】
実施例11〜17の考察
実施例11〜17は、腫瘍組織切片および細胞学的調製物において点変異を特異的に標的化する多重インサイチューアッセイの確立を記述している。インサイチューでmRNAの逆転写によって合成された転写物を、変異体または野生型特異的パドロックプローブで標的化し、RCAによって検出可能なレベルまで増幅する。その後、得られた野生型および変異産物を異なる色のフルオロフォアで標識する。このパドロックプローブに基づくアッセイは、分子的癌診断のための変異解析を腫瘍組織切片上で直接行うことができることを初めて実証する。多重化インサイチューアッセイを開発し、結腸直腸癌において抗EGFR療法に対する耐性と関連しているKRASコドン12および13における活性化点変異に関する概念実証として検証した。プローブの選択性は、最初は個々に試験した。KRAS変異体と野生型の試料の間には明確な区別があり、遺伝子型は、対応する蛍光シグナルの単純な顕微鏡可視化によって容易に決定された。多重検出に関して、単一の対応するパドロックプローブ対と、すべてのコドン12および13 KRASパドロックプローブのカクテルとの対照比較により、2つのアプローチが効率および特異性の点で類似していることが示された。新鮮凍結組織は高品質のDNAおよびRNAを含み、分子研究のための貴重な基準として役立つため、パドロックプローブ戦略は非固定組織調製物において開発した。しかしながら、新鮮凍結組織における診断の実行は、実質的かつ高価なバイオバンク化の労力を必要とする。別法として、新鮮切断腫瘍表面からの捺印上で非固定腫瘍細胞を使用した。したがって、試料が到着した日にKRAS変異状態を決定することができ、これは本発明者らの日常的なパイロシーケンシングアッセイと一致した。
【0203】
FFPE組織ブロックは、日常的な外科病理学において包括的に用いられ、組織保存記録内に何年もの間保存され得る。しかしながら、ホルマリンによって誘導される生体分子の架橋は、DNAおよびRNAの断片化を生じる。それにもかかわらず、短い長さのパドロックプローブを、二重の認識部位および連結の必要性と組み合わせることで、このアッセイは固定組織病理学標本に理想的なものとなる。ホルマリン固定組織に最適化されたプロトコールを用いて、日常的なFFPE切片におけるインサイチュー検出が達成され、KRAS状態が未知である前向き外科的癌標本がうまく特徴づけられた。このアッセイの有望な見込みは、何百ものFFPE癌試料を、変異の存在についてTMA上で同時にスクリーニングすることができるということである。このようにして、TMAが利用可能な後向き患者コホートにおけるバイオマーカー発見に関して、点変異のハイスループットスクリーニングを、タンパク質発現に関するIHCおよび染色体異常に関するFISH解析と同様に行うことができた。インサイチュープロトコールは、任意の簡便なFISHアッセイのように自動化に適合させて、日常的使用のためにアッセイの実行を容易にすることができる。さらに、必要に応じて、蛍光読み取りを、明視野画像化のための組織化学的染色に変更することもできる。
【0204】
腫瘍不均一性は複雑な概念である。1つの局面は、後天性体細胞変異を有する癌細胞と、遺伝的に正常な間質細胞および炎症細胞の可変的混合物である。第2の局面は、新生物発生前区画と浸潤区画、高悪性度領域と低悪性度領域、浸潤前面と中心腫瘍領域、および可変的分化パターン、例えば、肉腫様、腺様、扁平上皮、または神経内分泌等に関する、腫瘍区画内の形態学的およびおそらく遺伝的変化である。第3の局面は、腫瘍の異なる部分において、変異対立遺伝子の発現が、プロモーターおよびスプライシング変異、エピジェネティックな変化、または遺伝子コピー数異常、例えば、増幅、欠失、およびLOHによって影響され得ることである。これらは、ゲノムレベルで解析することは困難であり得る。記載されるインサイチュー技法によって、腫瘍不均一性のこれらすべての困難な特徴の研究が可能になる。変異および野生型対立遺伝子のヘテロ接合性およびホモ接合性発現が、腫瘍細胞において認識され得、おそらくは、変異体腫瘍および野生型細胞の抽出された混合物の平均値をもたらすPCRに基づく技法では検出されなかったであろう、特定の組織標本に関する基礎的情報の1つの形態を実証する。このアッセイは、結腸癌試料において、腫瘍進行に沿った変異KRASコドン61対立遺伝子の発現増加を示す。肺腺癌の症例においては、活性化EGFR変異の発現が、特有の組織学的構造を有する領域において異なることが実証された。さらに、変異TP53対立遺伝子がそれぞれEGFRおよびKRASの活性化変異と共に可視化され得た2つの肺癌症例によって示されるように、この技法により、複数の異なる変異が腫瘍病変にわたってどのように分布し、関連しているのかの精査が可能になる。したがって、インサイチューでの変異解析は、癌の発生、腫瘍の進行および転移などの過程を精査するのに役立ち得る。将来の研究に関して、興味深い適用は、標的療法に応答した耐性変異の出現の研究である。EGFRの二重変異を有する1つの症例が示され、この場合、新規耐性変異を有する患者において予測され得るように、治療反応と関連する変異の発現と並行して、耐性変異の低発現が見られた。EGFR治療後の経過観察試料の解析により、患者特異的な反応が、2つの変異の発現に関して組織学的レベルで明らかにされ得ると考えられる。
【0205】
本研究でアッセイした79個の患者試料は、この20年間の間の異なる時点で収集され、様々な条件下で処理されたという事実にもかかわらず、それらはすべて、この提示される方法に適した組織材料としての資格があった。さらに、特異的に設計されたパドロックプローブは、全体として14個の異なる点変異のインサイチュー検出のためにうまく適用され、この変異アッセイが頑健性を提供し、これを様々な供給源に由来する組織材料上での他の変異の検出にも容易に適合させることができるという信頼性を与える。結論として、提示されるパドロックプローブおよびRCA技術は、診断的分子病理学およびトランスレーショナル癌研究に関する、複雑な腫瘍組織において組織学-遺伝子型相関関係を研究するための重要なアッセイであると考えられる。
【0206】
実施例18:
Braf変異の検出
BRAFは、異なる種類の腫瘍、主に悪性黒色腫、マイクロサテライトにおけるミスマッチ修復欠損(MSI)を示す散発性結腸直腸腫瘍、低悪性度卵巣漿液性癌、および
甲状腺乳頭癌における体細胞変異を示す。これらの変異の80%は、アミノ酸置換V600Eを引き起こすホットスポットトランスバージョン変異T1799Aに相当する。
【0207】
最もよく見られる変異はV600E変異(置換‐ミスセンス)である。
標的cDNA領域(変異塩基):
BRAFパドロックプローブ標的領域(アーム:15+15 nt)
【0208】
参考文献
以下の参考文献は、それらが、本明細書中に記載されるものを補足する例示的な手順の詳細またはその他の詳細を提供する程度まで、参照により本明細書に明確に組み入れられる。