(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示する実施形態は、改良されたガリウムイオン用の供給源を提供する。種々の実施形態では、改良された供給源が、傍熱陰極(IHC:indirectly heated cathode)イオン源のようなプラズマベースの
イオン源用の、固体ガリウム化合物ターゲットと雰囲気ガス種との新規な組合せを含むことができる。本実施形態は、例えば、ビームライン・イオン注入システムを含むイオン注入システムにおいて用いることができ、こうしたシステムでは、ガリウムイオンをイオン源から抽出して、ターゲットに向けて供給する。特定の実施形態は、傍熱陰極源、あるいは固体ターゲットを用いる他のプラズマベースのイオン源において使用されるターゲット/ガスの組合せに指向している。
【0010】
集束イオンビーム技術では、Gaイオンが用いられてきたが、高電流、高性能のGaイオン源の開発は、上述した理由で遅れていた。高電流用途の一例では、シリコンのようなIV族半導体用のアクセプタ型(p型)ドーパントとして、Gaを用いることができる。しかし、従来の市販のイオン注入システムは、p型ドーパントとして、ガリウムよりもホウ素に焦点を当ててきた。高電流ガリウムイオン源の開発は、市販の半導体ウェハー基板のような大型基板におけるドーパントとしてのガリウムの使用を促進することができる。特に、本実施形態は、固体ガリウムベースのターゲット材料を提供し、このターゲット材料は、イオン注入用のイオンを供給するように構成されたイオン源内にガリウムイオンを生成するために、種々のエッチャントガスと共に使用することができる。
図1に、好適なイオン源100を示し、このイオン源は、ターゲットホルダ102、ターゲット104、及び電極106を含む。一部の実施形態では、
図1に示すように、陰極(カソード)106を、フィラメント108によって加熱される傍熱陰極とすることができる。イオン源100は、反射(リペラー)電極110及び抽出開口112も含む。
【0011】
イオン源100の動作は、従来のIHCイオン源の動作に類似している。例えば、バイアス電源(図示せず)が、陰極106に接続された正端子、及びフィラメント108に接続された負端子を有することができる。このバイアス電源は、フィラメント108が放出する電子を陰極106に向けて加速させて、陰極106の加熱を生じさせる。その代わりに、図示しないフィラメント電源がフィラメント108を加熱することができ、フィラメント108が、陰極106に向けて加速される電子を発生して、加熱を生じさせる。抽出開口112は、抽出電極及び抑制電極(共に図示せず)を含むことができ、現在技術において既知であるように、これらは抽出開口112に位置合わせされている。
【0012】
イオン源100が動作中である際には、フィラメント108がフィラメント電流I
Fによって熱放射温度まで抵抗加熱され、この熱放射温度は、例えば2200℃のオーダーとなり得る。フィラメント108が放出する電子は、フィラメント108と陰極106との間のバイアス電圧V
Bによって加速されて、陰極106に衝突してこれを加熱する。陰極106が放出する電子は、イオン源100のプラズマチャンバに印加することのできるアーク電圧によって加速されて、ガス源114から受けたガス分子をチャンバ116内でイオン化することができ、これによりプラズマ118を形成することができる。反射電圧110は、入射電子の結果として負電荷を増加させ、最終的に、電子をチャンバ116内に押し戻すのに十分な負電荷を有して、追加的なイオン化衝突を生成する。
【0013】
抽出開口112による抽出用のガリウムイオンを生成するために、ターゲット104は、チャンバ116に運ばれ、イオン化され、そして知抽出開口112を通るように加速されるガリウムの供給源を提供することができる。本発明の発明者は、ガリウムイオン源用に用いることのできるガリウム化合物ターゲット/ガス種システムを開発するための、一組の基準、及びこれらの基準の新規な組合せを識別した。IHCイオン源のようなイオン源における固体ターゲットとして有用であり得るガリウム化合物は、1つ以上の所望のパラメータを満足することができる。例えば、ターゲット材料として用いられるガリウム化合物は、高いスパッタリング率を有する。高いスパッタリング率は、イオン源プラズマからのイオンによる衝突を受けた際に、ターゲットの表面からガリウム含有材料がスパッタリングされる(運動量移動プロセスにより出射される)ことを表す。このようにして、比較的多数のガリウムイオンを、イオン源のプラズマ中に、所定のスパッタリングイオン密度で生成することができる。
【0014】
実現することのできる他の要素は、化合物ターゲットのガリウムと他の構成物質との間で、スパッタリング歩留まりの差が大きくない、ということである。多数の既知の化合物ターゲットでは、1つの構成要素が他の構成要素に対して優先的に除去されることにより、スパッタリングがターゲット組成の変化を生じさせる。このプロセスは、除去される材料の組成に不安定なドリフト(ゆらぎ)を生じさせることがあり、そして、ターゲット表面に不所望な変化を生じさせることがある。安定したターゲット組成を維持することが関心事でないイオン源チャンバでは、ターゲットの他の構成要素よりも高い比率のガリウムをターゲットから産出し、これにより、スパッタリングされるターゲットから生成されるイオンが、より大きい比率のガリウムを含むことが望ましいことがある。
【0015】
他の望ましい要素は、ターゲット用に用いるガリウム化合物が高い融点を有することである。より高い融点は、ターゲットの加熱が重要であり得るIHC源のようなイオン源内での使用を促進する。このことは、上述したように、金属ガリウムのような低融点材料の使用を解消する。
【0016】
イオン源内に生成される気体のガリウム含有種は、イオン源の内部に堆積し得る固体の副産物を形成しない。このことは、イオン源内の不所望な表面堆積を回避するために望ましいことがある。考慮することのできる他の要素は、プラズマから供給される1つ以上のイオン種によって、ガリウム化合物材料に化学的エッチングを施すことができる、ということである。
【0017】
図2に、本実施形態による、ガリウム化合物ターゲット104からGaイオンを生成するための好適なプロセスを示す。図に示す実施形態では、プラズマ118が、(正に帯電した)イオン202、並びに中性種204、及び(負に帯電した)電子205を含む。イオンがプラズマシース境界206に到達すると、イオンはシースを越えて加速して、プラズマとターゲットとの間の電位降下と等価なエネルギーでターゲット104に当たることができる。絶縁ターゲットについては、こうしたIHCプラズマ源内の電位降下は、一般に数ボルトから数十ボルトとなり得る。従って、これらのイオン202は、一般に約100eV未満のエネルギーでターゲット104に当たることができる。こうしたイオンエネルギー範囲内では、スパッタ歩留まりは、一般に、大部分の材料について得られる最大スパッタリング歩留まりよりも大幅に低く、この最大スパッタリング歩留まりは、一般に1000V〜10000Vの範囲内のイオンエネルギーで発生し得る。従って、ターゲット上に入射するイオン202毎の、スパッタリングによってターゲット104から除去されるガリウム原子
208の数は、比較的小さい。従って、ターゲット104からガリウムを除去するためには、追加的な供給源を用意することが有用であり得る。
【0018】
一部の実施形態では、ガリウムを除去するための追加的な供給源が、ガリウム化合物ターゲットと反応して揮発性のガリウム種を形成すべく機能するガスエッチャント種の形を採ることができる。換言すれば、揮発性のガリウム種は、ターゲット
104の表面から解離されて、プラズマ118に入ることのできる気体分子を形成するガリウム含有種とすることができる。このガスエッチャント種は、イオン、中性、またはその両方とすることができる。
図2に示すように、例えば、中性種204が、ターゲット104の表面でガリウムイオンと反応して、ガリウム含有ガス種210を形成することができる。一例では、揮発性のガリウム種、即ち、ガリウム含有種210をGaF
2とすることができ、これは、以下に説明するように、ターゲット104の表面におけるガリウムとフッ素含有種との反応によって形成することができる。種々の実施形態では、以下に詳述するように、ガスエッチャント種の供給源を、イオン源チャンバに供給されるガスとすること、及び/または、ガリウム化合物ターゲット自体の構成要素とすることができる。種々のガリウム化合物が、本発明の発明者によって検討され、このことが、高電流ガリウムイオン源用の新規な材料系の発見をもたらし、これについては以下でより詳細に説明する。
【0019】
図3に、シミュレーションによるGaNのスパッタリング歩留まりの例を示し、この例は、2000℃を超える高い融点を示し、従って、IHC源において使用される潜在的候補である。図に示すように、GaNは、1000eVでおよそ1のオーダーの比較的高い平均スパッタリング歩留まりを示し、100eVでも、約0.2の相当量のスパッタリング歩留まりを示している。さらに、相対的なスパッタリング歩留まりは、NとGaとの間でおよそ等しく、このことは、プラズマ・スパッタリング構成においてGaNターゲットが比較的安定し得ることを示している。
【0020】
図4に、シミュレーションによるGaPのスパッタリング歩留まりの例を示し、この例は、比較的高いスパッタリング歩留まりを示し、かつ、ガリウムが優先的にスパッタリングされているが、比較的小さいスパッタリング歩留まりの差に過ぎないことを示している。例えば、GaPは、約1100eVでおよそ1のスパッタリング歩留まりを示している。しかし、GaPは、約900℃で解離することが知られている。これに加えて、GaPは、不所望なリン材料を、GaPをスパッタリングするために使用されるプラズマチャンバ内に堆積させることが観測されている。
【0021】
図5に、シミュレーションによるGaAsのスパッタリング歩留まりの例を示し、この例は、約1238℃の高い融点を示し、従って、これもIHC源において使用される潜在的候補である。GaAsの構成物質の各々のスパッタリング歩留まりも、例えばGaPに比べれば、比較的ロバスト(頑健)である。
【0022】
特に、
図6に、固体GaAsターゲットを含むイオン源から抽出したイオンビームの質量分光分析測定の結果を示す。この現象は、GaAsターゲットを用いたイオン源から抽出したイオンを測定することによって調査した。GaAsターゲットと共に使用したプラズマは、NF
3ガスを含んでいた。質量スペクトル600は複数のピークを含み、これらのピークは、
69Ga
+、
71Ga
+、
69Ga
2+、
71Ga
2+、
69Ga
+75As
2+、及び
75As
3+を含む異なるGa及びAs種を表す。質量スペクトル600より明らかなように、Asの相対的な存在量は、ガリウムよりもずっと大きい。
【0023】
酸化ガリウムベースのターゲットを含む他の材料も調査した。例えば、化合物Ga
2O
3は、1900℃の融点を有し、従って、IHCイオン源のような高温を発生するイオン源雰囲気中での動作に十分適している。特に、
図7は、Ga
2O
3(以下では単に「酸化ガリウム」とも称する)についての、スパッタリング歩留まりのシミュレーション結果の例を示す。酸化ガリウム化合物ターゲット中のガリウムの総スパッタリング率は、ガリウムヒ素、ガリウムリン、及び窒化ガリウムにおけるよりも低いが、酸化ガリウム材料は熱的に安定であり、イオン源内に不所望に堆積し得る固体の副産物を形成しない。
【0024】
種々の実施形態によれば、安定な高電流ガリウムイオン源を作り出すための、ガス種とガリウム化合物ターゲットとの新規な組合せが提示される。プラズマベースのイオン源内での動作については、高いガリウムイオンビーム電流を供給するのに十分なガリウムを発生するために、固体ターゲットがガリウムの高いスパッタリング歩留まりを発生することが望ましいが、ガリウムイオンの高電流を生成するに当たり、他の要因を考慮することもできる。例えば、上述したように、ガリウム原子と反応して揮発性のガリウム含有種を生成するに当たっては、化学エッチャントとして機能する種が有効であり得る。
【0025】
一旦、ガリウム種が、スパッタリングによるか、揮発性のガリウム含有ガス種の形成によるかのいずれかで、ガリウム含有ターゲットの表面を離れると、ガリウム種は、イオン源プラズマ中でイオン化される。プラズマ構成物質の組成次第で、他の気相種に対する相対的なガリウム種のイオン化が促進される。従って、種々の実施形態では、ガリウム化合物ターゲットにおいて、スパッタリングと化学エッチングとの組合せを、ガリウム種の選択的イオン化と共に生じさせる、ガリウム・ターゲットとガス種との組合せを開示する。
【0026】
図8に、BF
3-含有プラズマに晒される固体の酸化ガリウム・ターゲットを含むイオン源から抽出したイオンビームの質量分光分析測定値を提示する。好適な実施形態では、酸化ガリウム・ターゲットをイオン源チャンバ内に配置し、このイオン源チャンバ内にBF
3ガスを導入してプラズマを発生する。酸化ガリウム・ターゲットからガリウム原子をスパッタリングすることのできるイオンを供給することに加えて、BF
3-含有プラズマは、BF
3分子から導出されるエッチャント種を供給する。これらの種は、固体の酸化ガリウムからガリウムをエッチングすべく機能し、これにより、ガリウムイオンの高電流のために十分なガリウムを発生する。
図8の質量スペクトル800は複数のピークを示し、これらのピークは、
69Ga
+、
71Ga
+、
69Ga
2+、
71Ga
2+を含む異なるGa種、並びに種々の酸素含有種及びフッ素含有種を表す。明らかなように、(個別のガリウムイオンピークの合計である)ガリウムイオンビーム電流が、上述した酸素含有種またはフッ素含有種によって生成される非ガリウムイオンビーム電流よりも相対的に大きい。イオンビーム中で測定されるガリウムイオンの生成は、次の様式で生起することができる:一部のGa種を、固体の酸化ガリウム・ターゲットからスパッタリングして、イオン源プラズマ中に取り出す間に、他のGa種を、BF
3ガスから導出した種によって化学的にエッチングして、イオン源プラズマに入る気体のガリウム含有種を形成する。イオン源プラズマ中のガリウム中性種は、プラズマ中にあるエネルギーを有する種との衝突によってイオン化され、そして、抽出系(例えば、抽出開口112)を通して抽出して、ガリウムイオンビームを形成することができる。特に、BF
3は、次のメカニズムにより、ガリウム含有種をプラズマ中に発生することができる。最初のステップでは、BF
3ガス種がプラズマ中で解離し、これにより、フッ素原子(F)ガス種を含む種々の生成物を産出することができる。酸化ガリウム・ターゲットからのガリウム原子のエッチング、及びその後のガリウムイオンの発生は、次の様式で進めることができる:
Ga(s)+2F(g)>GaF2(g) (1)
GaF2(g)+e>GaF(g)+F(g)+e (2)
GaF(g)+e>Ga(g)+F(g)+e (3)
Ga(g)+e>Ga
++e+e (4)
【0027】
放電中のGa及びFの解離後に、解離プロセスから発生した気相(g)の2つのフッ素原子が、反応(1)により固体のターゲット(s)と結合して、不安定な化合物GaF
2を形成し、これが気相に入る。このGaF
2(g)は、反応(2)及び(3)により、容易に解離してGa(g)及びF(g)となる。Ga(g)種は、プラズマ中に存在することができ、その後に、反応(4)により、プラズマ中でエネルギーを有する電子とのイオン化衝突を行って、Ga
+を形成する。
【0028】
このGa
2O
3/BF
3系を用いれば、比較的少量の不所望な酸素イオン電流しか生成されず、より大きな割合のフッ素含有イオンが、BF
3から生成される。従って、Ga
2O
3/BF
3から抽出される「ガリウム」イオンビームは、比較的大量のフッ素含有イオンを混入物質として生成する。
【0029】
他の実施形態では、酸化ガリウム・ターゲットをイオン源チャンバ(例えば116)内に配置し、このイオン源チャンバ内に、NF
3ガスを導入してプラズマを発生する。プラズマイオン源内でNF
3ガスをGa
2O
3と共に使用することは、複数の利点を有する。例えば、NF
3は容易に解離して、フッ素を含む反応生成物となり、これにより、反応(1)〜(4)で示すように、酸化ガリウム・ターゲット中のガリウムと反応して、気相ガリウムを生成する。
【0030】
これに加えて、
図9に示すように、NF
3の使用は、プラズマ中に形成される非ガリウムイオンの相対量を低減する。特に
図9は、NF
3含有プラズマに晒される固体酸化ガリウム・ターゲットを含むイオン源から抽出したイオンビームの質量分光分析測定の結果を提示する。この場合、ガリウムイオンビーム電流は、
図8に示すBF
3/酸化ガリウム系に比べて約2倍に増加する。さらに、非ガリウムイオンによって伝えられる電流の相対量は、比較すれば、より小さくなる。この差は、NF
3プラズマと対照させたBF
3プラズマ中のイオン化特性の差によって説明することができる。表1に例示するように、ガリウムのイオン化エネルギーは5.99eVであり、これは比較的低い値であり、上記の反応(4)によって与えられるように、ガリウム中性種が、プラズマに入ると、エネルギーを有する電子との衝突によって容易にイオン化され得ることを示している。特に断りのない限り、本明細書で用いる「イオン化エネルギー」とは、最初のイオン化エネルギーを称する。BF
3プラズマ中では、BF
3分子が解離して、とりわけ、BF
2、BF、及びBとなることができる。表1に例示するように、これらの解離生成物種の各々が、8〜11eVの範囲内のイオン化エネルギーを有し、このイオン化エネルギーは、ガリウムのイオン化エネルギーよりも幾分高いが、BF
3の一部の解離生成物が、ガリウムイオンを含むプラズマ中でイオン化
されるイオン化エネルギーに十分近い。NF
3プラズマ中では、NF
3分子が容易に解離して、フッ素及び窒素種になる。表1中にさらに示すように、窒素及びフッ素のイオン化
エネルギーは、ガリウムのイオン化電位よりも、それぞれ8eV及び11eVだけ高い。従って、NF
3プラズマ中では、電子エネルギー分布がGa(5.99eVのイオン化
エネルギー)によってクランプ(固定)され、これにより、窒素及びフッ素のような高いイオン化
エネルギーを有する他の種のイオン化を、ずっと生起しにくくする。
【0032】
代案実施形態では、ガリウム化合物ターゲットをエッチングするために供給されるエッチャント種が、ガリウム化合物ターゲット自体から発生する。例えば、ガリウム化合物ターゲットは、ガリウム用のエッチャントの供給源として使用される前駆体物質を含むように製造することができる。種々の例では、トリハロガリウムをターゲット材料として用いることができる。化合物GaCl
3,GaI
3、及びGaBr
3は、すべて250℃以下の融点を有し、このことは、これらの化合物をIHCイオン源内で使用するには魅力のないものにし、IHCイオン源内では、より上昇した目標温度が一般的である。しかし、化合物GaF
3(本明細書では「フッ化ガリウム」とも称する)は、約1000℃と推定される融点を有する。従って、一部の実施形態では、GaF
3ターゲットをIHCイオン源のようなイオン源内で用いて、ガリウムイオンを含むイオンビームを生成する。特に、プラズマ放電は、不活性ガスのようなガスを用いて開始することができる。適切な不活性ガスの例は、He、Ar,Kr、及びXe、及びその混合物を含む。次に、不活性ガスプラズマからのイオンが、GaF
3ターゲットと反応して、GaF
3ターゲットから放出される揮発性のガリウムを発生するガスエッチャント種を生成することができる。例えば、これらの不活性ガスイオンは、GaF
3からの材料をスパッタリングすることができ、フッ素原子を含むフッ素種をイオン源チャンバ内で気相にして発生する。このフッ素種は、その後に、反応(1)〜(3)に示すように、GaF
3ターゲット中のガリウムと反応して、ターゲットのエッチング、及びガリウムを気相にする放出を生じさせることができる。これに加えて、フッ素イオンをプラズマ中に生成することができる。
【0033】
アルゴンのような不活性ガスを用いたイオン源チャンバ内でのプラズマの発生開始後に、イオン化ガスのフッ素種が、自立したプラズマを生成するのに十分になるのと共に、イオン源チャンバ内への不活性ガスの流入を次第に減少及び/または終了させ、ここではプラズマ用のイオンの供給源がGaF
3ターゲットである。GaF
3ターゲットを用いて、NF
3のようなフッ化物ガスなしにガリウムイオンビームを発生することの1つの利点は、ガス供給ラインのようなイオン源ハードウェアに対するフッ化物ガスの腐食効果が解消させることにある。
【0034】
上述したように、ガリウムイオン源は、ビームライン・イオン注入システム内に採用することができる。
図10は、こうしたイオン注入装置のブロック図であり、本発明の実施形態において用いることのできるイオン注入装置の一般的な特徴機能を例示する。システム1000は、イオン源1002を含む。電源1001は、ガリウムイオンを発生するように構成されたイオン源1002に、必要なエネルギーを供給する。発生したガリウムイオンは、一連の電極1004(抽出電極)を通してイオン源から抽出されてビーム1005に整形され、ビーム1005は質量分析磁石1006を通過する。この質量分析器は、特定の磁界で構成され、これにより、所望の質量対電荷比を有するイオンのみが、分析器を通って進むことができる。ガリウムイオンは、減速段1008を通過して補正磁石1010に至る。補正磁石1010は、印加される磁界の強度及び向きに応じてイオン・ビームレット(小ビーム)を偏向させるようにエネルギーを供給されて、支持体(例えばプラテン)上に配置されたワークピースまたは基板を標的として向かうビームを供給する。一部の場合には、第2減速段1012を、補正磁石1010と支持体1014との間に配置することができる。ガリウムイオンは、電子及び基板中の原子核と衝突すると、エネルギーを失って、加速エネルギーに基づく基板内の所望の深さに落ち着く。
【0035】
本発明の実施形態によれば、基板を、ビーム1005のようなビームに対する一組の相対運動を行うように構成された可動ステージに取り付けることができる。このことは、平行移動運動、ねじれ(ツイスト)運動、及び傾斜運動を含むことができる。注入システム1000は、入射ビームに対する基板の傾斜を行う傾斜ステージを含み、この傾斜は、例えば基板の法線に対して約−75度〜+75度である。
【0036】
以上で詳述した実施形態は、IHC源をビームライン注入システム内で使用するガリウムイオンビーム生成に焦点を当てているが、他の実施形態は、RF励起源または他の発生源を用いてプラズマを発生することのできる固体ターゲットのガリウムイオン源に拡張される。さらに、本実施形態のイオン源は、高いガリウムイオン電流を必要とするあらゆる装置またはプロセスにおける使用に展開することができる。
【0037】
これに加えて、本実施形態は、固体ターゲットからガリウムをエッチングするためのエッチャントを提供し、かつ、窒素及びフッ素のようにガリウムよりも高いイオン化エネルギーを有する構成要素を提供するあらゆるガスの使用を含む。
【0038】
本発明は、本明細書に記載された特定実施形態に範囲を限定されるべきものではない。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の他の種々の実施形態及び変形例は、以上の説明及び添付した図面より、通常の当業者にとって明らかである。
【0039】
従って、こうした他の実施形態及び変形例は、本発明の範囲内に入ることを意図している。さらに、本明細書では、本発明を、特定環境における特定目的での特定の実現に関連して説明してきたが、その有用性は、これらの実現に限定されず、本発明は、多数の目的で多数の環境において有益に実現することができることは、通常の当業者の認める所である。従って、以下に記載する特許請求の範囲は、本明細書に記載された本発明の全幅及び精神全体を考慮して解釈すべきものである。