特許第6165269号(P6165269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6165269迫撃砲システム用砲弾を加速させるための火薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165269
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】迫撃砲システム用砲弾を加速させるための火薬
(51)【国際特許分類】
   C06B 25/18 20060101AFI20170710BHJP
   F42B 5/16 20060101ALI20170710BHJP
   C06B 25/34 20060101ALI20170710BHJP
   C06B 31/02 20060101ALI20170710BHJP
   C06B 45/22 20060101ALI20170710BHJP
   C06D 5/00 20060101ALI20170710BHJP
   C06B 23/04 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C06B25/18
   F42B5/16
   C06B25/34
   C06B31/02
   C06B45/22
   C06D5/00 Z
   C06B23/04
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-555513(P2015-555513)
(86)(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公表番号】特表2016-511210(P2016-511210A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】CH2013000017
(87)【国際公開番号】WO2014117280
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】515207558
【氏名又は名称】ニトロヒェミー ヴィミス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Nitrochemie Wimmis AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ シェーデリ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク アンテーネン
(72)【発明者】
【氏名】ベアート フォーゲルザンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンツェント グフェラー
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−308367(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/153655(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0208647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B 21/00− 49/00
C06C 5/00− 15/00
C06D 3/00− 7/00
F42B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
迫撃砲システム用砲弾を加速させるための推進火薬若しくは着火火薬としての火薬であって、当該火薬はニトロセルロースをベースとし、かつニトラミンベースの結晶性エネルギー担体1〜30質量%、及び無機消炎剤を含有し、ここで前記火薬は粒子の形態で存在する、前記火薬において、
前記無機消炎剤が0.1〜10質量%存在し、かつ前記粒子はその表面に0.01〜1質量%の不活性な可塑剤を有することを特徴とする、前記火薬。
【請求項2】
前記ニトラミンベースの結晶性エネルギー担体が、ヘキソゲン(RDX)及びオクトゲン(HMX)を含む群からの化合物少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の火薬。
【請求項3】
前記結晶性エネルギー担体が、5〜25質量%存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の火薬。
【請求項4】
前記無機消炎剤が、硝酸カリウム及び硫酸カリウムを含む群からの化合物少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の火薬。
【請求項5】
前記無機消炎剤が、0.1〜5質量%存在することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の火薬。
【請求項6】
前記不活性な可塑剤が、カンファー、ジアルキルフタレート、及びジアルキルジフェニル尿素を含む群からの化合物少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の火薬。
【請求項7】
前記不活性な可塑剤が、0.01〜0.1質量%存在することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の火薬。
【請求項8】
前記粒子が、円柱形の形状を有し、軸方向に縦の流路を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の火薬。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の推進火薬若しくは着火火薬としての火薬の製造方法において、以下の工程a)〜e):
a)ニトロセルロース、ニトラミンベースの結晶性エネルギー担体1〜30質量%、及び無機消炎剤をベースにして、溶剤含有火薬ペーストを製造する工程、
b)前記溶剤含有火薬ペーストを押出成形して、粒子成形体を製造する工程、
c)溶剤を前記粒子成形体から除去する工程、
d)前記粒子成形体を0.01〜1質量%の不活性な可塑剤によって表面処理する工程、及び
)表面処理した前記粒子成形体を乾燥させる工程、
を有することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項10】
前記溶剤を、前記粒子成形体から、湿潤空気法によって除去することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
表面処理した前記粒子成形体を乾燥させた後、仕上げを行うことを特徴とする、請求項又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迫撃砲システム用砲弾を加速させるための推進火薬若しくは着火火薬としての火薬に関し、当該火薬はニトロセルロースをベースとし、かつニトラミンベースの結晶性エネルギー担体1〜30質量%、及び無機消炎剤を含有し、ここで前記火薬は粒子状の形態で存在し、当該粒子は、当該粒子の表面に任意で、不活性な可塑剤を有するものである。本発明はさらに、このような火薬の製造方法に関する。
【0002】
従来技術
近年、大口径火砲の分野では大きな変動が起こっている。冷戦終結までは、大口径の戦車及び重火器のシステムが、陸上支援部隊の根幹を成していた。これらのシステムは自国領を防衛するために最適化されているが、重量が重いため、その移動性が限られていた。特にこのような武器システムは空輸ができないため、領土への迅速な展開が極めて困難であった。
【0003】
しかしながら1990年初頭の湾岸戦争(第一次イラク戦争)勃発により、それまで通用していた作戦の筋書きは、大きな転換点を迎えた。大口径火砲を短時間で、はるか遠い稼働地点まで輸送しなければならなかったのである。このため湾岸戦争では、迫撃砲システムに関する再発見が目立った。相対的に重量が軽いため、このような大口径火砲は多数の部品として問題なく空輸でき、紛争時には迅速に稼働できる。加えて、高性能電子機器(例えば人工衛星によるナビゲーション若しくは経路案内)の発達により、正確性はかなり改善された。
【0004】
近年の事例から、このような軍事力移動のトレンドはほぼ世界中で支持されていることが分かる。迫撃砲システムへの関心が高いお陰で、需要は増加しており、これに伴い性能の向上も望まれている。電子機器による経路案内と、正確な地点爆轟性能を有する新型迫撃砲弾は、従来の標準型砲弾よりも重量が重い。そのため、重量が比較的重いことによる射程への作用を補償するか、又はそれどころか射程をさらに伸ばすという推進剤の性能向上に対する要望が生まれている。
【0005】
さらにこの20年、軍事的な対立は主に、暑い気候の地域(例えばイラク、又はアフガニスタン)で起こっている。これまで使用されていた推進剤は、高い性能ポテンシャルを得るために普及していたニトログリセリンを含有しており、熱負荷が高い場合が想定されていなかった。重要となる砲内弾道データ(例えば砲口初速とピークガス圧)は、暑い気候の地域で何ヶ月も使用、貯蔵することによって変わることが確認された。砲口初速が低くなると射程が短くなり、これに伴い命中率が低下する。これに対してガス圧は最大50%増加するが、これにより、砲弾射出時における安全面のリスクが大きくなる。気候による熱作用が激しいことによってさらに、推進剤の化学的な安定性は、特に安定剤がすぐに消費されてしまうことによって、低下する。このため総じて、従来のニトログリセリン含有火薬は、暑い貯蔵庫で貯蔵、又は直射日光下の弾薬箱で貯蔵すると、自発的に自触媒作用に移行することがあり、爆発によって周囲の人員を負傷させ、構造物を破壊し得るという安全面のリスクとなる。
【0006】
Nitrochemie社は既に以前から、時流の兆しを認識しており、ニトログリセリン不含の新世代高性能火薬の開発を始めていた。この火薬は暑い気候地域で長期間用いても弾道学的な安定性と化学的な安定性の点で何ら変化を示さなかった。これはすなわち、暑い気候地域において本発明による火薬を使用、及び貯蔵しても、安全面でのリスクは何らないということである。これら新世代の火薬はまず、中口径火砲における高性能用途、例えば縮射砲用の装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS T)、又は非縮射砲用ABM弾(Airburst-Munition)のために特別に開発された。このような武器システムは通常、砲身が比較的長く構成されており、砲弾射出に際してはピークガス圧が通常、3000〜5000barと比較的高い。
【0007】
これとは逆に、迫撃砲システムでは砲身が明らかに短く、砲弾射出時に生じるピークガス圧が低い。すなわち、最大負荷時に1000barであり、負荷がより低ければ、それに応じて低くなる。これはつまり、100bar未満のガス圧であっても、火薬を充分に反応させなければならないということである。この基準は、従来のニトログリセリン不含高性能処方によって達成することはできなかった。そこで、低いピークガス圧と短い砲身を有する迫撃砲システムについて特別な比率が構成されている適切な推進技術のための新たなきっかけに対する必要性が存在していた。このような新規推進剤については、優れた化学的安定性と弾道学的安定性も要求され、ここでこの推進剤は同時に、迫撃砲システムにおいて高性能高効率で反応するという特性を有さなければならない。
【0008】
本発明の説明
本発明の課題は、冒頭で述べた技術分野に属する火薬であって、迫撃砲システム用砲弾を加速させるための推進火薬若しくは着火火薬としての火薬を得ることであり、この火薬は、優れた化学的安定性と弾道学的安定性を有し、高性能高効率で反応可能なものである。
【0009】
この課題は、請求項1に規定された特徴によって解決された。本発明によれば、迫撃砲システム用砲弾を加速させるための推進火薬若しくは着火火薬としての火薬であって、ニトロセルロースをベースとする火薬が提供される。この火薬は、ニトラミンベースの結晶性エネルギー担体を1〜30質量%、そして無機消炎剤を0.1〜10質量%含有する。この火薬は、粒子の形で存在する。これらの粒子は、その粒子表面に、不活性な可塑剤を有することができる。この添加剤は、1質量%以下、すなわち0〜1質量%の範囲で存在する。
【0010】
これらの粒子は好ましくは、その粒子表面に不活性な可塑剤を0.01〜1質量%有する。
【0011】
意外なことに、不活性な可塑剤を比較的少量、火薬の表面で使用することにより、温度が上昇した場合における圧力の依存性を低減させることができる。中口径用の推進火薬については確かに、不活性な可塑剤を大量に用いることによって、圧力推移を平坦に調整可能なことが知られている。この際に2質量%未満では、ほとんど効果が得られない。しかしながらこの関連性は、迫撃砲用の推進火薬には当てはまらないことが判明した。本発明による迫撃砲システム用推進剤の場合、不活性な添加剤の量が比較的少なくても、平坦な圧力推移を調整できる。濃度が上昇すると圧力推移は徐々に急になり、1質量%を明らかに超えて添加すると、圧力は温度上昇とともに著しく上昇する。不活性な可塑剤が1質量%以下という好ましい範囲では、砲口初速の上昇も、温度が上昇するにつれて比較的僅かになるため、総じて推進剤は、ほぼ中性の温度特性が特徴となる。幾つかの用途ではまた、不活性な可塑剤を全く必要としない。
【0012】
本発明による火薬は、平坦な圧力推移にあってエネルギー変換率が高く、これによって砲内弾道性能が高くなる。
【0013】
迫撃砲システムとは一般的に、比較的砲身が短く、比較的急な角度で発砲されるシステムと理解される。迫撃砲には、37mm口径(軽迫撃砲)から240mm口径(超重迫撃砲)がある。ここで最も重要なのは、口径が60〜120mmの重迫撃砲である。本発明が特に対象としているのは、口径が60mm、81mm、及び120mmの迫撃砲、及び/又は口径が60mm、81mm、及び120mmの迫撃砲システムのための推進剤である。
【0014】
本発明による火薬はさらに、迫撃砲用の着火火薬としても使用できる。着火火薬は、迫撃砲弾の軸に収容されており、火工品の初期発火衝撃を強化するため、またこの衝撃をインクリメント(馬蹄型装薬)内の推進火薬に伝えるために必要となる。着火火薬の組成は、推進火薬の組成と同一である。しかしながらこれらは、粒子のサイズと、粒子の形状の点で異なる。
【0015】
推進火薬も着火火薬も、押出成形可能な、溶剤法で製造できるバルク火薬であり、主成分としてニトロセルロースを含有する。ニトロセルロースは百年以上にわたって、シングルベース、ダブルベース、及びトリプルベースの推進火薬を製造するための非常に重要な出発物質である。これはセルロース(木綿リンター、パルプ)の硝化によって得られ、安価で大量に手に入り、様々な物理化学特性が広範に得られる。ニトロセルロースは例えば、窒素含有率、分子量、又は粘性を変えることができ、またこれらの違いに基づき、様々な種類の均質な推進火薬へと加工できる。ニトロセルロースのエネルギー割合は、窒素含分によって調整される。シングルベースの処方では、ニトロセルロースは単独のエネルギー担体である。これはつまり、ニトロセルロースのエネルギー密度が、他の合成結合ポリマーに比して、比較的高いということである。
【0016】
本発明による火薬は、ニトロセルロースをベースとする。これは好ましくは、平均窒素含分が、12.6〜13.25%である。粒子マトリックス内に含まれるさらなる重要成分は、結晶性エネルギー担体、また無機消炎剤である。
【0017】
結晶性エネルギー担体は、火薬のエネルギー含分を向上させ、1〜30質量%の範囲の濃度で使用する。ニトロセルロースを基準としてこのような割合であれば、結晶性エネルギー担体の各結晶間の平均距離が充分に大きくなるため、各結晶はほとんど接触しない。これによって、外部からの衝撃波の機械的な刺激の影響が、爆発物質の結晶から、隣接する結晶へとさらに伝わらなくなる。よって、一次的に作用する衝撃波が倍加されることなく、火薬量全体を介して伝播する。これに対して、結晶性エネルギー担体の質量割合が比較的多い場合、各結晶はランダムに隣接していると考えられ、これによって火薬の殺傷能力が大きく上昇する。
【0018】
無機消炎剤は、0.1〜10質量%の範囲の濃度で使用する。無機消炎剤を添加することにより、燃焼していない気体(例えば水素若しくは一酸化炭素)の反応が砲口領域において抑制されるため、これらの気体は全く、或いはほとんど発火しない。こうして砲口での炎が減少し、これによって射撃手に対する炎の目くらまし作用が減少する一方、さらに射撃手の位置特定が困難になる。
【0019】
ニトラミンベースの結晶性エネルギー担体のうち好ましいのは、ヘキソゲン(RDX)及びオクトゲン(HMX)を含む群からの化合物少なくとも1種である。一般式R−N−NO2(Rは基を表す)の化合物はともに、相対的に小さい基Rを有し、この基Rはニトラミン構造単位と比べて、総分子量の割合が小さいものである。これによってこれら2つの化合物は、比較的エネルギー含分が高くなる。
【0020】
RDXは好ましくは、結晶性エネルギー担体として使用する。これはHMXに比べて、製造時に有利であり、またより安全である。HMXはRDXよりも高価だが、特に利点が無い。その他のニトラミン化合物(例えばNIGUなど)は、RDXに比べて性能が劣る。安定化のためには、公知の作用物質(例えばAkardit II)も使用できる。
【0021】
特に好ましくは、結晶性ニトラミン化合物が、規定の平均粒径を有する。そこで例えば、平均粒径が4〜8マイクロメーター、特に6マイクロメーターのRDXを使用するのが好ましい。結晶性エネルギー担体の粒子サイズが均質であることによって、相対的に一定の化学特性と弾道特性を有する火薬が製造できる。
【0022】
ニトラミン化合物に代えて、例えば一般式R−O−NO2の硝酸エステルも考えられる。ただし硝酸エステルは、ニトラミン化合物に比べて、化学的安定性が低い。また以下の化合物のうち少なくとも1種を、結晶性ニトラミン化合物として使用することができる:ヘキサニトロイソウルチタン(CL-20、CAS No. 14913-74-7)、ニトログアニジン(NIGU、NQ、CAS No. 70-25-7)、N−メチルニトラミン(テトリル、N−メチル−N,2,4,6−テトラニトロベンゾールアミン、CAS No. 479-45-8)、並びにニトロトリアゾロン(NTO、CAS No. 932-64-9)、及びトリアミノトリニトロベンゼン(TATB、CAS No. 3058-38-6)。これらのエネルギー化合物は全て、単独で、又は相互に組み合わせて使用できる。
【0023】
特に好ましくは、結晶性エネルギー担体の割合は、5〜25質量%である。結晶性エネルギー担体を10〜20質量%の割合で含有する火薬が、特に好ましい。質量割合が25質量%未満、特に最大20質量%の場合、エネルギー担体の各結晶は相互に隔たっているため、火薬の殺傷能力が非常に低い水準にある。不活性な可塑剤を用いることにより、結晶性ニトラミン化合物の質量割合が比較的高い場合でも、火薬の殺傷能力をいくらか弱めることができる。これによって容易に、結晶性ニトラミン化合物を高い割合で使用できる。
【0024】
結晶性エネルギー担体としてのその特性に加えて、RDXは一定の安定作用も有し、この作用は既に約1質量%から現れ、その割合を増やしてもほとんど向上しない。
【0025】
無機消炎剤とは、アルカリ金属塩(例えば硝酸カリウム及び硫酸カリウム)の群からの化合物少なくとも1種である。砲口の炎を減少させるのに加えて、これらの化合物はまた燃焼を促進させ、これによって残渣の形成が減少し、これによってエネルギー変換率がさらに向上する。
【0026】
特別な実施態様では、無機の消炎剤が0.1〜5質量%の割合で存在する。
【0027】
火薬粒子の表面に存在していてよい不活性な可塑剤とは、特にカンファー、ジアルキルフタレート(好ましくはジ−(C8〜C12)フタレート、若しくはジ−(C8〜C12)フタレートの水素化誘導体)、及びジアルキルジフェニル尿素(好ましくはジメチルジフェニル尿素、Centralit IIという通称で知られる)を含む群からの化合物少なくとも1種である。不活性な可塑剤はまた、各化合物を複数組み合わせて適用できる。
【0028】
任意で火薬粒子の表面に施与可能な化合物のうち、特に好ましいのはカンファーである。
【0029】
さらに火薬粒子の表面は好ましくは、黒鉛及びエタノールで処理されている。
【0030】
押出成形された火薬粒子は好ましくは、エタノール及び黒鉛で表面処理する。任意で、不活性な可塑剤により表面を処理することができる。不活性な可塑剤は、火薬粒子の表面に近い領域に浸透し、その場所に留まる。すなわち、不活性な可塑剤は局在化し、粒子マトリックス内には分布しない。不活性な可塑剤は、浸透深さが数百マイクロメーター、例えば最大で400マイクロメーター、好ましくは100〜300マイクロメーターである。これはつまり、不活性な可塑剤の少なくとも95質量%が、この深さまでに含有されているということである。
【0031】
塗布された黒鉛は好ましくは、火薬粒子の表面に残存する。
【0032】
表面処理(すなわち、エタノールと黒鉛の塗布)によって、また、不活性な可塑剤を、押出成形された火薬粒子の表面に任意で塗布することによって、火薬粒子の特性が肯定的な影響を受ける。こうして、温度に影響されない挙動、また見かけ密度(すなわち、所定の容器体積内にどの程度の火薬が存在するか)が、特にエタノールと黒鉛を用いた表面処理によって改善される。圧力水準(すなわち、ピークガス圧と砲口速度の比率)は特に、押出成形された火薬粒子の表面に不活性な可塑剤を添加することによって改善されるが、これによって温度係数が悪化することがある。同時に粒子マトリックスは、不活性化合物を必須成分として含有せず、これによって大量のエネルギー化合物を有することができる。これらの物質を組み合わせた表面処理によって、多大な効果が得られる。
【0033】
迫撃砲用火薬の場合特に好ましくは、不活性な可塑剤が粒子表面に0.1質量%以下、すなわち0〜0.1質量%、特に0.01〜0.1質量%、存在する。不活性な可塑剤がちょうどこの量であれば、砲口速度の変化、また高温に移行する際の圧力上昇も、比較的少ない。不活性な可塑剤が明らかにこれより多い場合、温度に影響されない挙動が得られる可能性が減少する。
【0034】
粒子は推進のために好適には、軸方向に縦の流路を有する円柱形の形状を備える。流路の数は任意であり、しばしば1つの粒子が1つの流路、7つ若しくは19の流路を有する。このような弾薬用火薬(有孔火薬とも言われる)はこのため、堆積可能であるか、又は流動性を有し、工業的には薬莢に充填可能である。
【0035】
円柱形粒子の長さ(L)対直径(D)の比の値は通常、L/D=0.25〜5である。円柱形の長さは例えば0.3〜10mmの範囲にあり、直径は0.3〜10mmの範囲にある。
【0036】
本発明を多孔火薬として実施する場合、小さなピッチ円を有する形状、ひいては比較的大きな壁厚を有するものが好ましい。これはつまり、縦の流路はそれぞれ横断面で観察すると、中心部が厚く配置されているということであり、総じて比較的小さなピッチ円を占めるということである。例えば好ましくは、総直径が約3.6mmの7個の孔が空いた火薬における軸方向の流路6つは、直径約2.1mmのピッチサークルを形成する。
【0037】
特に好ましい実施態様において、推進火薬の縦の流路はそれぞれ、孔径が0.1〜0.5mmである。
【0038】
本発明による火薬を着火火薬として用いる場合、その粒径は通常、推進火薬に用いる場合よりも小さい。このような火薬はさらにしばしば、中央に縦の流路を有する円柱形状の形状を備える。このような火薬は例えば、外径が1.3〜1.7mm、長さが1.5〜2.0mm、平均壁厚が0.6〜0.8mmであり、孔径が約0.10mmである。
【0039】
或いは、火薬用材料はストリップの形で存在するか、又は直接、火砲に適した特定の形状に押出成形することができる。火薬はこの形状では、大口径弾薬に特に適している。このような形状に該当するのは通常、幅が長さよりもずっと小さく(例えば少なくとも5倍、又は少なくとも10倍)、厚さが幅よりもずっと小さい(例えば少なくとも5倍又は少なくとも10倍)形状である。厚さが1〜2mmの場合には通常、幅は例えば10mm以上であり、長さは例えば100〜150mmである。
【0040】
またいわゆる「成形体」、すなわち弾薬用の中空円柱形も考えられ、この場合には薬莢がないか、かつ/又は発火点後部に配置された「成形体」に置き換えられている。
【0041】
粒子マトリックスは任意で、それ自体公知のさらなる添加剤を含有することができる。安定性を向上させるためには例えば、炭酸水素ナトリウム(CAS No.144-55-8)、炭酸カルシウム(CAS No.471-34-1)、酸化マグネシウム(CAS No.1309-48-4)、Akardit Il (CAS No.724-18-5)、Centrailt I (CAS No.90-93-7)、Centraiit II (CAS No.611-92-7), 2−ニトロジフェニルアミン(CAS No.836-30-6)、及びジフェニルアミン(CAS No.122-39-4)が添加できる。添加物、例えば石灰、酸化マンガン、酸化マグネシウム(CAS No.1303-48-4)、三酸化モリブデン(CAS No.1313-27-5)、ケイ酸マグネシウム(CAS No.:14807-96-6)、炭酸カルシウム(CAS No.471-34-1)、二酸化チタン(CAS No.13463-67-7)、三酸化タングステン(CAS No.1314-35-8)は、砲身部の保護に役立ち、フタル酸エステル、クエン酸エステル、又はアジピン酸エステルといった化合物は、通常の可塑剤である。
【0042】
さらに粒子成形体(さらに処理すべき粒子自体)は、例えば着火性を改善させるため、また燃焼性を調節するための別の公知の添加剤をさらに、マトリックス中に含有することができる。
【0043】
本発明による火薬を製造するための方法の特徴は、ニトロセルロースと、ニトラミンベースの結晶性エネルギー担体1〜30質量%と、無機消炎剤とをベースとする溶剤含有火薬ペーストを製造することにある。続いて、この溶剤含有火薬ペーストから、押出成形によって、粒子成形体を製造する。粒子成形体から溶剤を除去し、この粒子成形体を任意で、不活性な可塑剤により表面処理する。最後に、任意で表面処理した粒子成形体を乾燥させる。
【0044】
本発明による火薬(火薬結合剤は主にニトロセルロースから成り、さらにニトラミンベースの結晶性エネルギー担体、及び無機の消炎剤を含有するもの)は、既存の作製装置で製造できる。固体の処方成分、例えば溶剤含有混合物を添加することができる。生成する溶剤湿潤混練ペーストは、混練機で混練することができ、その後、プレス機で所望の形状に押出成形できる。押出成形されたストランドは予備乾燥することができ、所望の粒子長に切断できる。続いて、粒子から溶剤を除去することができる。これらの粒子は任意で、不活性な可塑剤によって表面処理し、かつ/又は仕上げにかけることがきる。
【0045】
好ましくは粒子成形体をエタノールと黒鉛で表面処理する、すなわち黒鉛化する。この黒鉛化は、個別の方法工程として行うことができる。しかしながらまた、黒鉛とエタノールを不活性な可塑剤とともに、粒子成形体に塗布することも可能である。
【0046】
特に好ましくは、溶剤を粒子成形体から、湿潤法によって除去する。
【0047】
押出成形により得られる粒子成形体は、無機消炎剤を粒子マトリックス内に含有する。よってこの粒子成形体は、粒子マトリックスから溶剤を除去するために水浴法にかけないのが望ましい。そうしないと、水溶性の無機消炎剤が、粒子マトリックスから流れ落ちてしまうからである。
【0048】
よって製造工程で用いた溶剤は、湿潤法により除去する。この際に溶剤で濡れた粒子成形体に、10〜60時間、20〜70℃の温度の空気流(水蒸気で飽和したもの)を、1時間あたり数百m3の流量で貫流させる。こうして溶剤の割合が1%未満に減少する一方で、水溶性の消炎剤は粒子マトリックスから除去されず、粒子マトリックスに留まる。
【0049】
表面処理された粒子を乾燥させた後に、仕上げを行うのが好ましい。この仕上げとは特に、表面処理された粒子の入念な乾燥と篩い分けであると理解される。
【0050】
以下の詳細な説明、及び特許請求の範囲全体から、さらなる有利な実施態様と、方法の特徴の組み合わせが得られる。
【0051】
本発明の実施方法
粒子成形体製造の間、ニトロセルロースベースの火薬ペーストに、様々な添加剤を添加する。すなわち、これらの添加剤は、マトリックス内に均一に分布している。これらの添加剤の合計量(ただし、結晶性ニトラミン化合物を除く)は、ニトロセルロースに対して0〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。結晶性ニトラミン化合物の合計量は、通常のRDXの場合、ニトロセルロース量の0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%である。結晶性ニトラミン化合物は場合により、マトリックスへの結合を改善させるために、予備処理にかけなければならず、その後、この化合物を火薬ペーストに添加する。
【0052】
火薬ペーストを溶剤と混練した後、型を使って粒子成形体を押出成形する。続いて、水と溶剤を除去し、好ましくは湿潤空気乾燥により除去する。粒子成形体を表面処理にかけ、例えば任意で、不活性な可塑剤、及び好ましくはさらなる添加剤(例えば黒鉛)をエタノールの存在下で施与する(含浸+コーティング)。
【0053】
例1・・・推進火薬1(FM4651/21)
7個の孔を有する火薬を520kg製造するため、RDX20質量%、Akardit II1.2質量%、及び硝酸カリウム3.2質量%、及び窒素含分が13.20質量%のニトロセルロース(合計で100質量%となる量)を70分間、ジエチルエーテル及びエタノールを添加した上で加工して、溶剤で濡れた混練ペーストにする。続いて、型を用いて火薬ペーストを、7個の孔がある5.2mmのストランド状断片にプレスする(すなわち押出成形する)。押出成形されたストランドを、短時間空気で予備乾燥させ、所望の長さに切断し、こうして得られた粒子成形体を、目の細かい篩い上に均一に広げる。その後、この粒子成形体に30時間、水で飽和した空気流を200m3/h、30℃の温度で、続いて30時間、空気流を400m3/h、65℃の温度で貫流させる(湿潤空気による乾燥)。60℃に加熱した粒子成形体60kgを、続いて55℃に加熱した銅製の研磨ドラム内で黒鉛0.05質量%、エタノール1.2リッターを添加し、その後1時間、一定に回転させる。最後に火薬を鋼板に広げ、24時間、60℃で乾燥させる。
【0054】
生成する推進火薬1(FM4651/21と呼ぶ)の物理特性は、以下の通りである:外径3.63mm、長さ3.61mm、平均壁厚0.76mm、孔径0.20mm、熱含量1gあたり4251J、嵩密度1048g/l。化学的安定性:爆発温度172℃、STANAG 4582準拠の熱流束熱量測定で44J/g、又は30.4μW(STANAG 4582による基準は、最大熱発生量が114μW未満)。
【0055】
例2・・・推進火薬2(FM4650/22)
例1による火薬ペーストを、型を用いて7個の孔がある4.8mmのストランド状断片にプレスする(すなわち、押出成形する)。押出成形したストランドを、短時間空気で予備乾燥させ、所望の長さに切断し、こうして得られた粒子成形体を、湿潤空気で乾燥させる(例1と同様)。続いて、粒子成形体60kgを60℃に予熱し、55℃に加熱した銅製の研磨ドラムに移す。この粒子成形体に、黒鉛0.05%、及びエタノール1.2kg中で1質量%のカンファー溶液を加え、1時間常に回転させる。最後に火薬を鋼板に広げ、24時間、60℃で乾燥させる。
【0056】
生成する推進火薬2(FM4650/22と呼ぶ)の物理特性は、以下の通りである:外径3.42mm、長さ3.45mm、平均壁厚0.71mm、孔径0.19mm、熱含量1gあたり4152J、嵩密度1002g/l。化学的安定性:爆発温度172℃、STANAG 4582準拠の熱流束熱量測定で47J/g、又は30.9μW(STANAG 4582による基準は、最大熱発生量が114μW未満)。
【0057】
推進火薬1及び2の比較
カンファー量の変化による、火薬温度が高い場合における圧力上昇の比較
システム:特に砲身の長さと砲口形状の点で、米軍の標準型120mm迫撃砲M120と同等の砲内弾道学特性を有する120mmの砲身。使用する不活性な迫撃砲弾の発射質量は、15.5kgであった。速度の測定はドップラーレーダーで行い、ピークガス圧の測定は、圧電素子により砲口の領域で行った。2種の推進火薬(カンファー被覆無しのものと、カンファー被覆1質量%ありのもの)の温度射撃の結果は、火薬温度21℃と63℃で行い、以下の表1及び2にまとめてある。
表1
【表1】
表2
【表2】
【0058】
表1及び表2の結果から、21℃から63℃へと圧力が移行する際の圧力上昇は、カンファーが0質量%の推進火薬1(FM 4651/21)の場合、カンファーを1質量%有する推進火薬2(FM 4650/22)よりも明らかに低い。この発見は意想外であり、中口径分野における従来の経験とは逆行する(これまでは、カンファーの量を増加させると圧力増加は低下すると考えられていた)。
【0059】
例3・・・推進火薬3(FM4714)
例1による火薬ペーストを、型を用いて7個の孔がある5.1mmのストランド状断片に押出成形する。押出成形したストランドを、短時間空気で予備乾燥させ、所望の長さに切断し、こうして得られた粒子成形体を、湿潤空気で乾燥させる(例1と同様)。続いて、粒子成形体120kgを60℃に予熱し、55℃に加熱した銅製の研磨ドラムに移す。この粒子成形体に、黒鉛0.05%、及びエタノール2.4kg中で0.1質量%のカンファー溶液を加え、1時間常に回転させる。最後に火薬を鋼板に広げ、24時間、60℃で乾燥させる。
【0060】
生成する推進火薬3(FM4714と呼ぶ)の物理特性は、以下の通りである:外径3.58mm、長さ3.59mm、平均壁厚0.75mm、孔径0.20mm、熱含量1gあたり4269J、嵩密度1026g/l。化学的安定性:爆発温度=172℃。STANAG 4582準拠の熱流束熱量測定で50J/g、又は32.6μW(STANAG 4582による基準は、最大熱発生量が114μW未満)。
【0061】
推進火薬3と球状火薬との比較
火薬温度が高い場合の圧力上昇と、砲内弾道的性能について、ニトログリセリンを含有する比較用火薬(St. Marks社の球状粉末GD)との比較
システム:特に砲身の長さと砲口形状の点で、米軍の標準型120mm迫撃砲M120と同等の砲内弾道学特性を有する120mmの砲身。使用する不活性な迫撃砲弾の発射質量は、15.1kgであった。速度の測定はドップラーレーダーで行い、ピークガス圧の測定は、圧電素子により砲口の領域で行った。2種の火薬の温度射撃の結果は、火薬温度21℃と63℃で行い、以下の表3及び4にまとめてある。
表3
【表3】
表4
【表4】
【0062】
表3及び4に示した結果から分かるように、ニトログリセリンを含有する比較用の火薬の場合、63℃へ移行時の圧力上昇は、カンファーを0.1質量%有する推進火薬3(FM4714)よりも明らかに高い。加えて、21℃における比較用火薬の速度は、装填量が28g多いにも拘わらず約25m/秒低く、これによって射程距離が顕著に減少する。
【0063】
例3に記載の火薬の試験により総じて、温度への依存性が低い高性能火薬であることが分かる。さらに、各測定時のばらつきは、その他の火薬よりもかなり少なく、このことは火薬の均質性、引いては性能が一定の火薬であることを意味する。
【0064】
例4・・・着火火薬(FM 4483/21)
例1による火薬ペーストを、型を用いて1個の孔がある2.1mmのストランド状断片にプレスする(すなわち、押出成形する)。押出成形したストランドを、短時間空気で予備乾燥させ、所望の長さに切断し、こうして得られた粒子成形体を、湿潤空気で乾燥させる(例1と同様)。続いて、粒子成形体20kgを60℃に予熱し、55℃に加熱した銅製の研磨ドラムに移す。この粒子成形体に黒鉛0.3質量%、及びエタノール0.3kgを添加し、その後、1時間の間、常に回転させる。最後に火薬を鋼板に広げ、24時間、60℃で乾燥させる。
【0065】
生成する着火火薬1(FM4483/21と呼ぶ)の物理特性は、以下の通りである:外径1.47mm、長さ1.75mm、平均壁厚0.69mm、孔径0.10mm、熱含量1gあたり4393J、嵩密度1001g/l。化学的安定性:爆発温度172℃。STANAG 4582準拠の熱流束熱量測定で46J/g、又は30.2μW(STANAG 4582による基準は、最大熱発生量が114μW未満)。
【0066】
例5・・・着火火薬2(FM4483/22)
例1による火薬ペーストを、型を用いて1個の孔がある2.1mmのストランド状断片にプレスする(すなわち、押出成形する)。押出成形したストランドを、短時間空気で予備乾燥させ、所望の長さに切断し、こうして得られた粒子成形体を、湿潤空気で乾燥させる(例1と同様)。続いて、組成粒子20kgを60℃に予熱し、55℃に加熱した銅製の研磨ドラムに移す。この粒子成形体に黒鉛0.3質量%、カンファー0.5質量%、及びエタノール0.15kgを添加し、その後、1時間の間、常に回転させる。最後に火薬を鋼板に広げ、24時間、60℃で乾燥させる。
【0067】
生成する着火火薬2(FM4483/22と呼ぶ)の物理特性は、以下の通りである:外径1.47mm、長さ1.75mm、平均壁厚0.69mm、孔径0.10mm、熱含量1gあたり4343J、嵩密度995g/l。化学的安定性:爆発温度172℃。STANAG 4582準拠の熱流束熱量測定で52J/g、又は32.4μW(STANAG 4582による基準は、最大熱発生量が114μW未満)。
【0068】
着火火薬1及び2と、球状火薬の比較
着火火薬1及び2のカンファー量を変更することによる、火薬温度が高い場合の圧力上昇の比較と、導入したM48球状火薬との比較
システム:特に砲身の長さと砲口形状の点で、米軍の標準型120mm迫撃砲M120と同等の砲内弾道学特性を有する120mmの砲身。使用する不活性な迫撃砲弾の発射質量は、14.0kgであった。速度の測定はドップラーレーダーで行い、ピークガス圧の測定は、圧電素子により砲口の領域で行った。この試験は4装填、すなわち、M234の標準型インクリメント4つを用いて行う。2種の推進火薬(カンファー被覆0質量%もの(FM 4483/21)と、カンファー被覆0.5質量%のもの(FM 4483/22))の温度射撃の結果は、導入したM48球状火薬と比較して標準的なM1020薬莢内で、火薬温度21℃と63℃で行い、以下の表5、6、及び7にまとめてある。
表5
【表5】
表6
【表6】
表7
【表7】
【0069】
本発明による着火火薬2中にカンファーが0.5質量%存在することにより、21℃にでのピークガス圧が減少する。このことは特定の用途にとって有利となり得る。ただし、カンファーを0.5質量%有する着火火薬2は、カンファーを有さない着火火薬よりも圧力上昇が大きく、所定のシステム要求の用途を最も良好に満たすためには、用途に応じて最適なカンファー量を正確に秤量する必要がある。さらに、導入したM48球状火薬の場合、最高ガス圧が21℃で生じることが分かる。21℃から63℃への圧力上昇は、導入したM48球状火薬の場合、約2300psiであり、本発明による着火火薬1及び2と比較して、明らかに高い。
【0070】
まとめると、ニトラミンベースの結晶性エネルギー担体と、無機消炎剤とを含有し、かつ不活性な可塑剤を表面に僅かな量で有する、本発明によるニトロセルロース含有火薬は、推進火薬又は着火火薬として、迫撃砲システムの砲弾を加速させるために適していることが確認でき、この際に温度依存性は低いため、気候的な条件に左右されること無く使用できる。