(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.
細胞培養器材
本発明の細胞培養器材は、
(A)支持体;及び
(B)含フッ素化合物を含有する表面層
を含有する細胞培養器材であって、
前記表面層(B)が、前記支持体(A)の表面の少なくとも一部に、直接又は一以上の他の層を介して配置されており、
前記表面層(B)の表面の37℃における水中接触角が、80°以上である、細胞培養器材である。
【0010】
本発明における二層間の境界においては、両者の組成が臨界的に変化していてもよいし、傾斜的に変化していてもよい。
【0011】
本発明の細胞培養器材は、含フッ素化合物を含有し、37℃における水中接触角が、80°以上である表面層を有していることにより、足場依存性細胞が接着しにくい。この特性を利用して、各種用途に用いることができる。特に限定されないが、例えば、足場依存性細胞を浮遊培養(三次元培養)させるための細胞培養器材、及び足場非依存性細胞を選択的に培養するための細胞培養器材等が挙げられる。
【0012】
特に限定されないが、浮遊培養(三次元培養)の目的としては、例えば、ES細胞の胚葉体(EB)形成及びスフェロイド形成等のほか、有用物質の生産及び薬剤スクリーニング等が挙げられる。
【0013】
特に限定されないが、足場非依存性細胞の例としては、がん細胞及び血球系細胞等が挙げられる。
【0014】
また、これらの細胞培養器材は、上に挙げたものの他、例えば、細胞医薬品の製造、ティッシュエンジニアリング、幹細胞の分化及び細胞培養実験、タンパク製剤及び/又は細胞製剤の保存バッグ等の幅広い目的に使用できる。
【0015】
なお、本発明の細胞培養器材には、37℃未満で温度応答性を示すもの、より具体的には37℃未満における水中接触角が、37℃における水中接触角より小さくなるものは含まれない。
【0016】
(A)
支持体
支持体は、細胞培養器材の使用目的等によって適宜選択することができ、特に限定されない。支持体の素材は樹脂、ガラス、セラミック及び金属等から選択される。具体的には、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、EVA(Ethylene−vinyl acetate)、シクロオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン及びステンレス等が挙げられる。
【0017】
支持体の形状は、通常用いられるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ディッシュ、プレート及びバッグ等が挙げられる。支持体の表面形状は平滑状でも凹凸状でもよく、また、平滑状の領域と凹凸状の領域を備えていてもよい。プレートのウェル形状は平底でも丸底でもよいし、ウェル径も特に限定されず、例えば、34mm(6ウェル)、9mm(96ウェル)等であってもよい。また、マイクロメートルオーダーの空間、例えば幅200μm、深さ100μmのような空間、に仕切られたマイクロ空間プレートであってもよい。
【0018】
支持体は、少なくともその表面が、放射線照射により重合開始点を形成し得る材料を含むものであれば、表面グラフト重合によって、表面層(B)を表面に形成することができる点で好ましい。この場合、支持体は、重合開始点を形成し得る材料を表面にのみ含んでいてもよいし、全体がそのような材料を含むものであってもよい。
【0019】
重合開始点を形成し得る材料として、樹脂類が挙げられ、具体的には、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリウレタン、ウレタンアクリレート及びポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、共役結合を持つ天然ゴム、共役結合を持つ合成ゴム及びシリコーンゴム等が挙げられる。材料はこれらを2種以上含むブレンドポリマー又はポリマーアロイであってもよい。
【0020】
支持体は、本発明の効果を妨げない限り必要に応じて、表面処理がされていてもよいし、表面にさらに他の層を有していてもよい。
【0021】
(B)
表面層
表面層(B)は、含フッ素化合物を含有し、37℃における水中接触角が、80°以上である。このような特性を有する表面を有していることにより、本発明の細胞培養器材は、十分に足場依存性細胞の接着を抑制できる。この点で、表面層(B)は、表面の37℃における水中接触角が、80°以上であれば好ましく、90°以上であればより好ましい。なお、水中接触角は、通常120°以下である。
【0022】
表面層(B)は、前記支持体(A)の表面の少なくとも一部に、直接又は一以上の他の層を介して配置されている。特に限定されず、例えば、表面層(B)は、前記支持体(A)の表面の少なくとも50%の面積に、直接又は一以上の他の層を介して配置されていてもよいし、前記支持体(A)の表面の少なくとも90%の面積に、直接又は一以上の他の層を介して配置されていてもよい。
【0023】
本発明において水中接触角は、具体的には以下のようにして測定する。
【0024】
測定サンプルを水中に固定し、37℃に温度調節されているホットプレート上に30分間放置して、平衡状態とする。三態系逆針を備えるシリンジを用いて気泡(約10μL)を数滴、測定サンプル表面に付着させ、その気泡の接触角をDropMaster701(協和界面科学製)又はその同等品を用いて水中接触角を測定する。
【0025】
表面層(B)は、含フッ素化合物を用いて表面改質された層であってもよい。この場合、表面層(B)とは、支持体の、あるいは支持体と表面層(B)との間にその他の層が介在する場合はその最表層の、表面改質がなされている表面部分を指す。
【0026】
上記表面改質において使用する含フッ素化合物としては、フッ素ガス、含フッ素ガス及び含フッ素ポリマーからなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素化合物等が挙げられる。含フッ素ガスとしては、特に限定されないが、テトラフルオロメタン(CF
4)、ヘキサフルオロエタン(C
2F
6)、パーフルオロエチレン(C
3F
6)、ヘキサフルオロプロペンオキシド(C
3OF
6)、及びパーフルオロプロパン(C
3F
8)等を用い、プラズマ処理することにより高分子基材の表面にフッ素基の導入を行うことができる。プラズマ処理の条件としては、高分子基材やガス状のフッ素含有化合物の種類等に応じて適宜設定することができる。通常、ガス状のフッ素含有化合物の存在下でいわゆる低温プラズマ処理を行う。
【0027】
表面層(B)は、上記の表面改質されたものとは別の態様として、含フッ素化合物を含有する層であってもよい。すなわち、この場合、表面層(B)は、改質された下層の一部ではなく、下層とは元来別の層である。
【0028】
このように、下層とは元来別の層として表面層(B)を設ける態様において用いられる含フッ素化合物として、特に限定されないが、例えば、アクリル酸系化合物、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、オレフィン系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、ビニルピロリドン系化合物、ビニルエーテル系化合物及びピロール系化合物等において、少なくとも一つの水素原子がフッ素原子に置換されたものが挙げられる。
【0029】
上記においてアクリル酸系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0030】
上記においてアクリレート系化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0031】
上記においてアクリルアミド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、オクチルアクリルアミド、ステアリルアクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
アクリレート系化合物又はアクリルアミド系化合物として、例えば、カルボキシル基に対して直接又は2価の有機基を介してエステル結合又はアミド結合したフルオロアルキル基を有し、α位に置換基を有することのある、アクリル酸エステル(以下、「フルオロアルキル基含有アクリル酸エステル」と略記することがある。)又はアクリルアミド(以下、「フルオロアルキル基含有アクリルアミド」と略記することがある。)等が挙げられる。
【0033】
フルオロアルキル基含有アクリル酸エステル又はフルオロアルキル基含有アクリルアミドの好ましい具体例としては、下記一般式(1):
CH
2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX
1X
2基(但し、X
1及びX
2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基又は置換若しくは非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−又は−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、
−CH
2CH
2N(R
1)SO
2−基(但し、R
1は炭素数1〜4のアルキル基である。
)、−CH
2CH(OZ
1)CH
2−基(但し、Z
1は水素原子又はアセチル基である。
)、−(CH
2)
m−SO
2−(CH
2)
n−基、−(CH
2)
m−S−(CH
2)
n−基(mは1〜10であり、かつnは0〜10である。)又は−(CH
2)
m−COO−基(mは1〜10である。)であり;
Rfは、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。]で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドを例示できる。
【0034】
上記一般式(1)において、Rfで示されるフルオロアルキル基は、少なくとも一個の水素原子がフッ素原子で置換された、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基であり、全ての水素原子がフッ素原子で置換された、ヘテロ原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基も包含するものである。また、Rfで示される、ヘテロ原子を有しているフルオロアルキル基の例としては、パーフルオロポリエーテル基等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドにおいては、Rfが炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基であることが好ましく、特に、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。近年、EPA(米国環境保護庁)により、炭素数が8以上のフルオロアルキル基を有する化合物は、環境、生体中で分解して蓄積するおそれがある環境負荷が高い化合物であることが指摘されているが、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドにおいてRfが炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である場合には、この様な環境問題が指摘されていないためである。
【0036】
上記式(1)において、Rf基の例として、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2H、−CF
2CF
2CF
3、−CF
2CFHCF
3、−CF(CF
3)
2、−CF
2CF
2CF
2CF
3、−CF
2CF(CF
3)
2、−C(CF
3)
3、−(CF
2)
4CF
3、−(CF
2)
2CF(CF
3)
2、−CF
2C(CF
3)
3、−CF(CF
3)CF
2CF
2CF
3、−(CF
2)
5CF
3、−(CF
2)
3CF(CF
3)
2等が挙げられる。
【0037】
さらに、含フッ素化合物は、非テロマーであることが好ましく、この点で、Rf基としては、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、又はヘテロ原子によって介在された二以上の炭素数1〜3のフルオロアルキル基が好ましい。具体例としては、C
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)-、(CF
3)
2NC
nF
2n-(n=1〜6)等が挙げられる。
【0038】
上記した一般式(1)で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドの具体例は、次の通りである。
【0039】
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−C
6H
4−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2N(−CH
3)SO
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2N(−C
2H
5)SO
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−CH
2CH(−OH)CH
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−CH
2CH(−OCOCH
3)CH
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−C
6H
4−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2N(−CH
3)SO
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2N(−C
2H
5)SO
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−CH
2CH(−OH)CH
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−CH
2CH(−OCOCH
3)CH
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH
2)
3−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜6、好ましくは、1〜3のフルオロアルキル基である。]
C
3F
7OCF(CF
3)CF
2O-CF(CF
3)CH
2-MAc
C
3F
7OCF(CF
3)CF
2O-CF(CF
3)CH
2-Ac
(CF
3)
2CH-Ac
C
2F
5CH
2-MAc
C
2F
5CH
2-Ac
[上記式中において、Acはアクリレート、MAcはメタクリレートを、それぞれ示す。]
上記したフルオロアルキル基含有アクリル酸エステル又はアクリルアミドは、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0040】
オレフィン系化合物としては、特に限定されず、例えば、アルケン及びアルキルビニルエーテル等が挙げられる。アルケンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。アルケンは、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン等が挙げられる。アルキルビニルエーテルとしては、特に限定されず、例えば、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3、のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル等が挙げられる。アルキルビニルエーテルは、パーフルオロアルキルビニルエーテルであってもよい。パーフルオロアルキルビニルエーテルの具体例としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
上記したオレフィン系化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0042】
上記においてスチレン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、アルキルスチレン等が挙げられる。上記したスチレン系化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0043】
上記においてアクリロニトリル系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。上記したアクリロニトリル系化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0044】
上記においてビニルピロリドン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビニルピロリドンが挙げられる。上記したビニルピロリドン系化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0045】
上記においてビニルエーテル系化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルが挙げられる。上記したビニルエーテル系化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0046】
上記においてピロール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ピロールが挙げられる。上記したピロール系化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0047】
下層とは元来別の層として表面層(B)を設ける態様において用いられる含フッ素化合物としては、例えば、含フッ素ポリマー等も挙げられる。この場合、表面層(B)は、含フッ素ポリマーに加えてさらにそれとは異なる含フッ素化合物を含んでいてもよい。
【0048】
含フッ素ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、オレフィン系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、ビニルピロリドン系化合物、ビニルエーテル系化合物及びピロール系化合物等において、少なくとも一つの水素原子がフッ素原子に置換されたものに基づく構成単位を有するもの等が挙げられる。また、表面層(B)は、一種又は二種以上の含フッ素ポリマーを含有していてもよい。これらの構成単位の基礎となる各種化合物については、表面層(B)に含まれうる含フッ素化合物として前述したものを用いることができる。
【0049】
上記において、含フッ素ポリマーは、フルオロ(メタ)アクリレート系ポリマー、フルオロ(メタ)アクリルアミド系ポリマー又はオレフィン系含フッ素ポリマーであれば好ましい。さらに、これらのポリマーは、軟化点が30℃以上であればより好ましい。
【0050】
足場依存性細胞の接着を抑制する効果の点で、含フッ素ポリマーとして使用するフルオロ(メタ)アクリレート系ポリマー、フルオロ(メタ)アクリルアミド系ポリマー又はオレフィン系含フッ素ポリマーは、軟化点がより高いほど好ましい傾向を示す。この点で上記軟化点の数値範囲は、40℃以上、50℃以上、60℃以上及び70℃以上、の順に好ましい。
【0051】
フルオロ(メタ)アクリレート系ポリマー及びフルオロ(メタ)アクリルアミド系ポリマーとは、それぞれ、少なくともフルオロ(メタ)アクリレート及びフルオロ(メタ)アクリルアミドに基づく構成単位を含有するポリマーである。特に理論に束縛されないが、軟化点が30℃以上の上記ポリマーは、37℃の水中でRf基(疎水性)とカルボニル基(親水性)の再配向が起こりにくいため、疎水性を維持しやすいと考えられる。この場合、フルオロ(メタ)アクリレート系ポリマー及びフルオロ(メタ)アクリルアミド系ポリマーの好ましい具体例としては、前記フルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル及び/又はフルオロアルキル基含有(メタ)アクリルアミドに基づく構成単位を有するもの等が挙げられる。
【0052】
例えば、前記フルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル及び/又はフルオロアルキル基含有(メタ)アクリルアミドに基づく構成単位を有するものであっても、Rfがパーフルオロポリエーテル基であるものは、軟化点30℃未満となる。
【0053】
オレフィン系含フッ素ポリマーとは、重合オレフィンモノマーに基づく構成単位と、さらに少なくとも1種のその他のコモノマーに基づく構成単位とを含んでいてもよい、含フッ素ポリマーを意味する。上記において、オレフィン系含フッ素ポリマーは、好ましくは、ポリマーの重量を基準として過半数量に相当する重合オレフィンモノマーに基づく構成単位を含む。
【0054】
上記において、フッ素原子は、重合オレフィンモノマーに基づく構成単位にのみ含まれていてもよいし、その他のコモノマーに基づく構成単位にのみ含まれていてもよいし、それらの両方に含まれていてもよい。少なくともいずれかの構成単位が、水素原子が全てフッ素原子で置換されているものであってもよいし、両方の構成単位が、水素原子が全てフッ素原子で置換されているものであってもよい。上記において、その他の構成単位が、水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよいし、水素原子がフッ素原子で全く置換されていなくてもよい。
【0055】
上記において、重合オレフィンモノマーとしては、特に限定されず、例えば、アルケン及びアルキルビニルエーテル等が挙げられる。アルケンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。アルケンは、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン等が挙げられる。アルキルビニルエーテルとしては、特に限定されず、例えば、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3、のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル等が挙げられる。アルキルビニルエーテルは、パーフルオロアルキルビニルエーテルであってもよい。パーフルオロアルキルビニルエーテルの具体例としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0056】
特に限定されないが、オレフィン系含フッ素ポリマーの具体例として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン―エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びフッ化ビニリデン―テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
表面層(B)は、非フッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。特に限定されず、アクリルアミド系化合物、オレフィン系化合物及びスチレン系化合物等が挙げられる。これらのうち単独種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
アクリルアミド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド及びメチロールメタクリルアミド等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記においてスチレン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン及びアルキルスチレン等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
表面層(B)は、シリコーン化合物を含有するものであってもよく、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン及びシリコーンマクロモノマーの重合体等が挙げられる。
【0061】
表面層(B)は、エポキシ基、イソシアネート基、スクシンイミド基、アミノ基、カルボキシル基又は水酸基等の化学結合可能な官能基を有していてもよい。本発明の化学結合は、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合、分子間力を指す。
【0062】
本発明において、ポリマーの軟化点は、結晶性ポリマーの場合は融点を、非晶性ポリマーの場合はガラス転移温度をそれぞれ意味する。これらはそれぞれ以下のようにして測定する。ポリマー軟化点は、示差走査熱量測定法により測定した融点(Tm)またはガラス転移点(Tg)とする。10mgのポリマー粉末を示差走査熱量計(DSC)により、温度範囲−50〜150℃、昇温速度10℃/minの条件で測定したときの2ndサイクル目のサーモグラムより、結晶性ポリマーの場合は融解ピークの頂点から融点を、非晶性ポリマーの場合は補外ガラス転移終了温度(JIS K7121−1987)を読み取る。
【0063】
表面層(B)は、下地となる表面に物理的吸着により配置されていてもよいし、化学結合を介して結合していてもよい。表面層(B)は、細胞の接着を抑制できる効果を長期間に渡り維持することができるという点で、下地となる表面に化学結合を介して結合していれば好ましい。
【0064】
特に限定されないが、例えば、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理及びコロナ処理等を行うことにより、化学結合を介して表面層(B)が下地となる表面に固定されていてもよい。
【0065】
表面層(B)の厚みは、0.2μm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは5μm以上である。厚みが0.2μm以上であれば、十分な細胞接着抑制能を発揮しやすくなる。
【0066】
(C)
他の層
他の層としては、特に限定されないが、例えば、支持体補強層、プライマー層及び放射線改質補助層等が挙げられる。
【0067】
支持体補強層は、支持体を力学的又は化学的に補強する層である。具体的には、支持体の力学的強度が低い場合や、表面層形成の際に使用される溶剤及び/又はモノマー等の影響で支持体に化学的腐蝕が起こる場合等に使用される。例えば、膜厚10μmのポリエチレンフィルムの上に膜厚250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを積層することにより力学的強度を改善できる。また、ポリスチレン基材上にFEPフィルムを貼り付けることにより、溶剤及び/又はモノマーに対する化学的腐蝕を防止できる。
【0068】
プライマー層は、支持体(A)と表面層(B)との密着性を改善するための層であり、特に限定されないが、例えば、上述のポリスチレン基材上にFEPフィルムを貼り付けるための両面テープ等が挙げられる。
【0069】
放射線改質補助層は、ポリスチレンのように放射線を照射したときにラジカルが発生し難い素材を支持体(A)とする場合に使用される。例えば、ポリスチレン製器材の表面に放射線改質補助層としてポリエチレンフィルムを貼り付けることにより、放射線を照射したときに多量のラジカルが発生して、容易にグラフト重合することが可能となる。
【0070】
2.
細胞培養器材の製造方法
特に限定されないが、本発明の細胞培養器材は、下地となる面に、処理表面の37℃における水中接触角を80°以上にし得る表面処理剤を適用することによって、得ることができる。
【0071】
以下に、含フッ素化合物を含有する表面処理剤を用いる場合を例にとって具体的な方法を説明する。なお、含フッ素化合物とは異なる化合物を含有する表面処理剤を用いる場合も、以下の例を参考にして、必要に応じて適宜条件を変更することにより同様に行うことができる。
【0072】
溶媒キャスト法、浸漬法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、刷毛塗り法などの塗布方法により、上記表面処理剤を下地となる面に適用することができる。例えば、溶媒キャスト法においては、上記含フッ素化合物等の成分を溶剤に溶解させた溶液を、下地となる面に均一に塗布後、溶剤を蒸発させることにより、下地となる面上に膜を形成させる。各種塗布方法で、上記含フッ素化合物等を溶液とするために使用される溶剤は、特に限定されないが、例えば、常圧下において沸点120℃以下、特に50〜110℃のものが好ましい。具体例として、分子中にフッ素原子を有し、フッ素含有重合体の溶解性が良好な溶剤であれば、炭化フッ素化合物、アルコール、エーテル等のいずれであってもよく、また、脂肪族及び芳香族のいずれであってもよい。例えば、パーフルオロ脂肪族炭化水素、ポリフルオロ芳香族炭化水素、ポリフルオロ脂肪族炭化水素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)及びアルキルパーフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0073】
パーフルオロ脂肪族炭化水素は、特に限定されないが、好ましくは炭素数5〜12である。特に限定されないが、具体例として、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン及びパーフルオロジヒドロプロパノール(ペンタフルオロプロパノール)等が挙げられる。
【0074】
ポリフルオロ芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン及びヘキサフルオロ−m−キシレン等が挙げられる。
【0075】
ポリフルオロ脂肪族炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、C
6F
13CH
2CH
3[例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC−6000]、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン[例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H]等が挙げられる。
【0076】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、特に限定されないが、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられる。
【0077】
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、特に限定されないが、好ましくは炭素数2〜5である。具体例としては、特に限定されないが、HCFC−225[ジクロロペンタフルオロプロパン:アサヒクリン(登録商標)AK225]、HCFC141b(ジクロロフルオロエタン)、CFC316(2,2,3,3−テトラクロロヘキサフルオロブタン,)及びC
5H
2F
10(例えば、デュポン社製のバートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
【0078】
ヒドロフルオロエーテル(HFE)としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C
3F
7OCH
3)[例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7000]及びCF
3CH
2OCF
2CHF
2[例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE−3000]等が挙げられる。
【0079】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、特に限定されないが、例えば、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン[例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のバートレル(登録商標)サイオン]等が挙げられる。
【0080】
アルキルパーフルオロアルキルエーテルにおいて、パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状のいずれであってよい。具体例としては、特に限定されないが、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)[例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7100]、パーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)[例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7200]及びパーフルオロヘキシルメチルエーテル(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)[例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7300]等が挙げられる。
【0081】
上記含フッ素化合物等を溶液とするために使用される溶剤としては、他にも、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤等を用いることができる。
【0082】
上記含フッ素化合物を溶解させる溶剤として、一種の溶剤のみを用いてもよいし、二種以上の溶剤を混合して用いてもよい。溶剤には、さらに必要に応じて添加剤を添加して用いてもよい。
【0083】
表面層(B)に使用される含フッ素化合物等が、エポキシ基、イソシアネート基、スクシンイミド基、アミノ基、カルボキシル基又は水酸基等の化学結合可能な官能基を有する場合は、容器表面のアミノ基、カルボキシル基又は水酸基等(予め、プラズマ処理、コロナ処理などの手法で導入しておく)と化学反応させるために、含フッ素化合物等の溶液を容器表面に塗布して化学結合させた後、溶剤を蒸発させて被覆層を形成した後に、未反応の重合体を洗浄除去する方法によっても細胞培養容器を得ることができる。
【0084】
また、本発明では、以下の方法によっても、フッ素化合物等を下地の面に化学結合により固定してもよい。
(1)上記含フッ素化合物等の成分を溶剤に溶解させる工程;及び
(2)上記(1)で得られた溶液を下地となる表面に適用し、さらに必要に応じてこれらを重合させる工程
を含む方法により、本発明の器材を得ることができる。
【0085】
工程(1)において、上記含フッ素化合物を溶解させる溶剤は、各種塗布方法と同じである。
【0086】
重合工程(2)においては、溶剤中に溶解させた上記含フッ素化合物で下地の面を被覆してから重合を行って表面上でポリマーを形成してもよいし、予め重合を行ってポリマーを形成しておいてから、得られたポリマーで下地の面を被覆してもよい。
【0087】
重合の方法としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合であってもよく、さらに具体的には、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理及び有機重合反応等が挙げられる。
【0088】
予め形成しておいたポリマーで器材の表面を被覆する方法は、特に限定されず、塗布及び混練等の単なる物理的吸着により行ってもよいし、さらに電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理及びコロナ処理等を行うことにより、化学結合を介してポリマーを下地の面に固定してもよい。
【0089】
3.
表面処理剤
本発明の表面処理剤は、本発明の細胞培養器材を製造するために用いられる、前記表面層(B)を形成しうる組成物である。
【0090】
本発明の表面処理剤は、すなわち、処理表面の37℃における水中接触角を80°以上にし得る、表面処理剤である。本発明の表面処理剤は、処理表面の37℃における水中接触角を、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上にし得る、表面処理剤である。
【0091】
本発明の表面処理剤は、37℃における水中接触角が、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下の表面に対して適用される、表面処理剤である。
【0092】
適用対象としては、特に限定されないが、例えば、足場依存性細胞を浮遊培養(三次元培養)させるための細胞培養器材、及び足場非依存性細胞を選択的に培養するための細胞培養器材等が挙げられる。
【0093】
特に限定されないが、浮遊培養(三次元培養)の目的としては、例えば、ES細胞の胚葉体(EB)形成及びスフェロイド形成等のほか、有用物質の生産及び薬剤スクリーニング等が挙げられる。
【0094】
特に限定されないが、足場非依存性細胞の例としては、がん細胞及び血球系細胞等が挙げられる。
【0095】
また、これらの細胞培養器材は、上に挙げたものの他、例えば、細胞医薬品の製造、ティッシュエンジニアリング、幹細胞の分化及び細胞培養実験、並びにタンパク製剤及び/又は細胞製剤の保存バッグ等の幅広い目的に使用できる。
【0096】
本発明の表面処理剤は、有効成分として、特に限定されないが、例えば、上記含フッ素化合物等を含む。
【0097】
本発明の表面処理剤は、有効成分を溶解させる溶剤を含む。例えば、上記含フッ素化合物を有効成分として含む場合、それを溶解させる溶剤としては、特に限定されないが、上記「2.細胞培養器材の製造方法」で説明したものを使用してもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0099】
1.
溶液重合による(メタ)アクリレートポリマーの調製方法
表1に示す(メタ)アクリレートポリマーを調製した。
【0100】
【表1】
【0101】
重合溶剤は、含フッ素(メタ)アクリレートの場合はHCFC−225を、非含フッ素(メタ)アクリレートの場合はイソオクタンを用いた。モノマー濃度は20重量%とし、重合開始剤として1mol%(対モノマー)のアゾビスイソブチルニトリルを使用し、50℃で12時間重合した。得られたポリマー溶液を貧溶剤中に滴下して析出、単離及び乾燥することにより、ポリマーを精製した。
【0102】
2.細胞培養ディッシュの表面処理法
上記1.で得られたポリマーを用いて表面処理を行った。
【0103】
2.1 キャスト膜
溶剤として、含フッ素(メタ)アクリレートポリマーの場合はHCFC−225、非含フッ素(メタ)アクリレートポリマーの場合はイソオクタンを用いて調製した1重量%溶液 0.5mLを用いて、ペトリディッシュ(直径3.5cm)[米国コーニングインターナショナル社(旧ベクトン・ディキンソン・ラブウェア社)製Falcon1008]に、溶媒キャスト法により製膜した。
【0104】
2.2 放射線改質膜
(1)モノマーのグラフト重合
ペトリディッシュ(直径3.5cm)に窒素置換した10重量%モノマー溶液を適量注入した後、窒素雰囲気下のパックに梱包した。次に線量100kGyで電子線またはガンマ線を照射することにより、PS器材表面にグラフト重合した。モノマーの良溶剤で洗浄後、乾燥することにより放射線改質膜を調製した。
【0105】
(2)キャスト膜の架橋
上記キャスト膜に電子線またはガンマ線を照射し、ポリマーをPS器材に架橋させた後、モノマーの良溶剤で洗浄、乾燥することにより放射線改質膜を調製した。
【0106】
2.3 フッ素樹脂フィルム
TPP社製平底6 well plate(#92006)(直径3.4cm)のwell内に両面テープを貼り、その上からFEPフィルム(膜厚50μm)を張り付けたものを作製した。
【0107】
2.4 ポリエチレン(PE)フィルム
2.3と同じwell内に両面テープを貼り、その上からPEフィルム(膜厚100μm)を張り付けたものを作製した。
【0108】
2.5 CF4ガスでプラズマ処理したPEフィルム
2.3と同じwell内に両面テープを貼り、その上からCF4ガスで真空低温プラズマ処理したPEフィルム(膜厚100μm)を張り付けたものを作製した。
【0109】
3.ポリマー軟化点の測定
ポリマー軟化点は、示差走査熱量測定法により測定した融点(Tm)またはガラス転移点(Tg)とした。10mgのポリマー粉末をDSC822e(米国Mettler Toledo社製)により、温度範囲−50〜150℃、昇温速度10℃/minの条件で測定したときの2ndサイクル目のサーモグラムより、結晶性ポリマーの場合は融解ピークの頂点から融点を、非晶性ポリマーの場合は補外ガラス転移終了温度(JIS K7121−1987)を読み取った。
【0110】
4.接触角(空気中、水中)
接触角は、細胞培養ディッシュの底面を切り出し、協和界面科学(株)製Drop Master 701で測定し、5回測定の平均値を採用した。
【0111】
4.1 空気中接触角
25℃の大気中で、水またはn−ヘキサデカン(以下、HDと略す)2μlを滴下し、滴下後1秒後の接触角を測定した。
【0112】
4.2 水中接触角
ガラス製セル(60×60×40mm、厚み2mm)に水を満たし、切り出した細胞培養ディッシュの底面を処理面を下向きにして完全に水に浸るよう固定した。次に、37℃で30分間加熱した後、水中に固定した処理面にマイクロシリンジを用いて気泡10μlを付着させて、気泡の接触角を測定した。水中接触角は、「180―(気泡の接触角)」から算出した。
【0113】
5.細胞接着試験
C3H/10T1/2clone 8(CL8)細胞(マウス胚由来の間葉系幹細胞様の培養細胞)を用いて、細胞接着試験を行った。これに先立ち、細胞接着試験を行うサンプルとして、各ウェル底面をそれぞれ各種ポリマーで表面処理した6ウェルプレート(TPP社)を用意した。
【0114】
(1)培養条件
培地:10%FBS(fetal bovine serum)含有DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)−high glucose (ナカライテスク) 2ml
(2)評価用の細胞調製方法
一旦、細胞培養用ディッシュ(Falcon3001)で本細胞を培養後、細胞を剥離させて集めてから細胞数を数え、1×10
6cells/mlになるように培地を用いて細胞懸濁液を用意した。
【0115】
あらかじめ各ウェルに2mlの培地を満たした6ウェルプレートに、該細胞懸濁液を100μlづつ播種した。
【0116】
細胞の観察には、顕微鏡「ニコンTE300」(倍率40〜100培)及びカメラ「ライカMC120HD」を用いた。
【0117】
(3)判定基準
三日間培養した後に顕微鏡観察し、以下の基準で判定した。
【0118】
A:完全に非接着
B:視野あたり1個以上、5個未満の細胞の伸展が観察される
C:視野あたり5個以上、10個未満の細胞の伸展が観察される
D:視野あたり10個以上、20個未満の細胞の伸展が観察される
E:視野あたり20個以上の細胞の伸展が観察される
×:培養用シャーレ(TPP社製6ウェルプレート)と同等の結果
結果を表2に示す。37℃における水中接触角が、80°以上である表面は、細胞が接着しにくいことが判った。さらに、37℃における水中接触角が80°以上であって、かつ軟化点が30℃以上の場合には、細胞がより接着しにくくなることが判った。
【0119】
【表2】