(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165291
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブ
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
E01F15/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-78021(P2016-78021)
(22)【出願日】2016年4月8日
(62)【分割の表示】特願2012-246552(P2012-246552)の分割
【原出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2016-145519(P2016-145519A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌克
(72)【発明者】
【氏名】松藤 弘
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−037731(JP,U)
【文献】
特開2001−131917(JP,A)
【文献】
特開2011−177725(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3080963(JP,U)
【文献】
実公昭56−017644(JP,Y2)
【文献】
特開2007−002613(JP,A)
【文献】
特開2001−040912(JP,A)
【文献】
特開2005−061018(JP,A)
【文献】
実開昭59−113506(JP,U)
【文献】
実開昭53−019663(JP,U)
【文献】
国際公開第98/042918(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01F 13/00−15/14
E01F 9/00−11/00
E01D 1/00−24/00
E04H 17/00−17/26
E04G 21/32
B66B 21/00−21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護柵のビームパイプ同士を連結するために、前記ビームパイプの端部内に、前記ビームパイプと隙間をあけて挿入され、前記ビームパイプにボルトとナットとにより固定される、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブにおいて、
インナースリーブ本体と、弾性力により前記ビームパイプを前記インナースリーブ本体に押し付ける押圧手段を備え、前記押圧手段は、前記インナースリーブ本体の一部を切り欠き、前記インナースリーブ本体の外方に折り曲げることにより形成された押圧片からなり、前記押圧片が折り曲げられる部分にスリットが形成されていることを特徴とする、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブ。
【請求項2】
前記押圧片は、前記インナースリーブ本体に形成された、前記ボルトのボルト孔から前記インナースリーブ本体の周方向に所定角度だけ離れた位置に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブ。
【請求項3】
前記所定角度は、45°であることを特徴とする、請求項2に記載の、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブ。
【請求項4】
前記押圧片は、前記インナースリーブ本体の上面に形成され、前記弾性力は、前記ビームパイプの自重の半分より大きな荷重に相当する大きさであることを特徴とする、請求項1に記載の、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブ、特に、防護柵のビームパイプをインナースリーブ本体にガタツキなく固定することが可能な、防護柵のビームパイプ用インナースリーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防護柵の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図9は、防護柵を示す平面図、
図10は、防護柵を示す正面図、
図11は、
図9の部分拡大図、
図12は、
図10の部分拡大図、
図13は、
図12のA−A線断面図、
図14は、インナースリーブを示す平面図、
図15は、インナースリーブを示す正面図である。
【0004】
図9から
図15において、11は、支柱、12は、支柱11間に固定されたビームパイプ、13は、ビームパイプ12の端部内に挿入され、ビームパイプ12同士を連結するインナースリーブ、14は、支柱11にインナースリーブ13を固定するブラケットである。
【0005】
図14および
図15に示すように、インナースリーブ13の両端部には、ビームパイプ12を固定するボルト19のボルト孔13aが形成され、インナースリーブ13の軸線方向中央部には、ブラケット14を固定するボルト17のボルト孔13bが形成されている。ボルト孔13aは、ビームパイプ12のインナースリーブ13への固定位置を若干調整可能にするために長孔に形成されている。
【0006】
図11から
図13に示すように、ブラケット14は、支柱11にボルト15とナット16とにより固定され、インナースリーブ13は、ブラケット14にボルト17とナット18とにより固定され、インナースリーブ13は、ビームパイプ12にボルト19とナット20とにより固定されている。ボルト19は、ビームパイプ12の端部に形成されたボルト孔12aとインナースリーブ13に形成されたボルト孔13a(
図14参照)とに挿通され、ナット20により固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防護柵は、上述したように構成されているが、以下のような問題があった。
【0008】
インナースリーブ13は、ビームパイプ12内に挿入されるので、インナースリーブ13の外径は、ビームパイプ12の内径寸法より小さく形成される必要がある。しかしながら、ビームパイプ12は、ある程度の製造誤差を有しており、設計上の内径寸法よりも大きくなったり、小さくなったりしていた。従って、インナースリ
ーブ13の外径を設計どおりに製作していても、ビームパイプ12の内径寸法が製品誤差により、小さくなった場合は、インナースリーブ13が、ビームパイプ12内に挿入出来ないといった現象が生じてしまうことがあった。よって、
図16(A)に示すように、インナースリーブ13とビームパイプ12との間に、ある程度、隙間(S)が生じるようなインナースリーブ13の外径寸法とする必要があった。この隙間(S)をなくすことはできず、製品誤差等によってある程度の幅で増減していた。
【0009】
また、上述したように、ビームパイプ12とインナースリーブ13とは、ビームパイプ12に形成されたボルト孔12aとインナースリーブ13に形成されたボルト孔13aとに挿通されるボルト19と、ナット20とにより固定されるが、ビームパイプ12とインナースリーブ13とがボルト19とナット20とにより直接締め付けられているわけではない。
【0010】
この結果、ビームパイプ12とインナースリーブ13との隙間(S)による上下方向の若干移動やインナースリーブ13に形成されたボルト孔13aが長孔に形成されているため、ビームパイプ12が左右に若干移動することが原因となり、
図16(B)に示すように、ビームパイプ12を、例えば、歩行者が手で上下方向に揺らすと、インナースリーブ13に対してビームパイプ12に隙間(S)分だけガタツキが生じる。ビームパイプ12にガタツキが生じると、ビームパイプ12が支柱11に強固に固定されていないのではないかといった不安感を歩行者に与えるおそれがある。
【0011】
また、ビームパイプ12が繰り返し揺らされると、ボルト19に緩みが生じ、最悪の場合、ナット20がボルト19から脱落し、ビームパイプ12とインナースリーブ13とが拘束力を失うおそれがある。
【0012】
この問題は、
図16(C)に示すように、ボルト19を、ビームパイプ12を変形させてインナースリーブ13を挟み付けるまで強固に締め付ければ解消されるが、全てのボルト19を一本一本、強固に締め付けることは、時間と手間がかかるので、作業者に大きな負担となっていた。
【0013】
しかも、変形したビームパイプ12は、基の状態に戻りにくいので、防護柵の補修時等の際に、ビームパイプ12からインナースリーブ13を取り外すことが困難であり、また、再度、ビームパイプ12の端部内にインナースリーブ13を挿入することも困難となる。
【0014】
従って、この発明の目的は、ビームパイプとインナースリーブとを固定するボルトを強固に締め付けることなく、ビームパイプをインナースリーブ本体にガタツキなく固定することが可能な、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明は、防護柵のビームパイプ同士を連結するために、前記ビームパイプの端部内に
、前記ビームパイプと隙間をあけて挿入され、前記ビームパイプにボルトとナットとにより固定される、防護柵のビームパイプ連結用インナースリーブにおいて、 インナースリーブ本体と、弾性力により前記ビームパイプを前記インナースリーブ本体に押し付ける押圧手段を備え、前記押圧手段は、前記インナースリーブ本体の一部を切り欠き、前記インナースリーブ本体の外方に折り曲げることにより形成された押圧片からなり、前記押圧片が折り曲げられる部分にスリットが形成されていることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記押圧片は、前記インナースリーブ本体に形成された、前記ボルトのボルト孔から前記インナースリーブ本体の周方向に所定角度だけ離れた位置に形成されていることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記所定角度は、45°であることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の発明において、前記押圧片は、前記インナースリーブ本体の上面に形成され、前記弾性力は、前記ビームパイプの自重の半分より大きな荷重に相当する大きさであることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、インナースリーブ本体に、弾性力によりビームパイプをインナースリーブ本体に押し付ける押圧手段を設けることによって、ビームパイプとインナースリーブとを固定するボルトを強固に締め付けることなく、ビームパイプをインナースリーブ本体にガタツキなく固定することが可能となる。
【0021】
さらに、インナースリーブ本体
の上面に設けられた押圧手段の弾性力を
、ビームパイプの自重
の半分以上とすれば、たとえ、
ビームパイプが重力方向と逆方向に取付けられても、押圧を維持することができるため、この発明の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明のインナースリーブを示す斜視図である。
【
図2】この発明のインナースリーブを示す平面図である。
【
図3】この発明のインナースリーブを示す正面図である。
【
図4】この発明のインナースリーブを示す背面図である。
【
図5】この発明のインナースリーブを示す左側面図である。
【
図6】この発明のインナースリーブを示す右側面図である。
【
図7】この発明のインナースリーブを示す底面図である。
【
図8】押圧片の形成位置が異なる、この発明のインナースリーブを示す断面図である。
【
図16】ビームパイプとインナースリーブとの関係を示す図であり、(A)は、ビームパイプとインナースリーブとの間に隙間が形成された状態を示す断面図、(B)は、ビームパイプにガタツキが生じる状態を示す断面図、(C)は、ボルトを締め付けて、ビームパイプが変形した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明のインナースリーブの一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、この発明のインナースリーブを示す斜視図、
図2は、この発明のインナースリーブを示す平面図、
図3は、この発明のインナースリーブを示す正面図、
図4は、この発明のインナースリーブを示す背面図、
図5は、この発明のインナースリーブを示す左側面図、
図6は、この発明のインナースリーブを示す右側面図、
図7は、この発明のインナースリーブを示す底面図である。
【0025】
図1から
図7において、1は、この発明のインナースリーブであり、インナースリーブ本体2と押圧手段としての押圧片3とからなっている。12は、ビームパイプであり、インナースリーブ1により互いに連結される(
図8、
図11から
図13参照)。インナースリーブ本体2の両端部には、ビームパイプ12を固定するボルト19(
図11から
図13参照)のボルト孔2aが形成されている。ボルト孔2aは、ビームパイプ12のインナースリーブ1への固定位置を若干調整可能にするために長孔に形成されている。インナースリーブ2の軸線方向中央部には、ブラケット14(
図11から
図13参照)を固定するボルト17(
図11から
図13参照)のボルト孔2bが形成されている。
【0026】
押圧片3は、インナースリーブ本体2の一部を切り欠き、インナースリーブ本体2の外方に折り曲げることにより形成されている。
【0027】
なお、インナースリーブ本体2が、鉄、鋼、アルミ、ステンレス等にて製作されれば、靭性に優れるため押圧片3による押圧効果が大きい。ただし、インナースリーブ本体2の材質は、これを指定するのではなく、所定の靭性を有している材料であれば、合成樹脂等であってもよい。
【0028】
このようにして形成されている押圧片3の弾性力は、インナースリーブ本体2の肉厚により決まるが、肉厚が厚く、弾性力が大きすぎることを考慮して、押圧片3が折り曲げられる表面部分にスリット3aが形成されている。押圧片3の弾性力は、スリット3aの深さを変えることによって適正に調整することができる。押圧片3の外側端部が折り曲げ部分となるように、インナースリーブ本体2を切り欠けば、ビームパイプ12を挿入しやすい。
【0029】
押圧片3をインナースリーブ本体2のボルト孔2aの近傍に形成すると、インナースリーブ本体2に断面欠損が生じるおそれがある場合には、押圧片3を、ボルト孔2aからインナースリーブ本体の周方向に所定角度(θ)だけ離れた位置に形成すれば良い。例えば、
図8に示すように、押圧片3を、ボルト孔2aに対して45°離れた位置に形成すれば、すなわち、所定角度(θ)を45°とすれば、断面欠損の問題は生じない。
【0030】
この発明のインナースリーブ1によれば、支柱11にボルト15により固定されたブラケット14にボルト17(
図11から
図13参照)によりビームパイプ12を固定し、ビームパイプ12の端部内にインナースリーブ本体2を挿入し、ボルト19をビームパイプ12に形成されたボルト孔12aとインナースリーブ本体2に形成されたボルト孔2aとに挿通し、ナット20(
図11から
図13参照)により固定すれば、インナースリーブ1によってビームパイプ12同士を連結することができる。
【0031】
インナースリーブ本体2をビームパイプ12の端部内に挿入すると、押圧片3は、その弾性力に抗して引っ込み、元に戻る弾性力によってビームパイプ12の内周面に当接する。この結果、ビームパイプ412、インナースリーブ本体2に押し付けられるので、例えば、歩行者が手でビームパイプ12を揺すってもビームパイプ12にガタツキが生じるおそれはない。
【0032】
以上、説明したように、この発明によれば、インナースリーブ本体2に、弾性力によりビームパイプ12をインナースリーブ本体2に押し付ける押圧手段としての押圧片3を設けることによって、ビームパイプ12とインナースリーブ本体2とを固定するボルト19をビームパイプ12を変形するまで強固に締め付けることなく、ビームパイプ12をインナースリーブ本体2にガタツキなく固定することが可能となる。この結果、ビームパイプ12が支柱に強固に固定されていないのではないかといった不安感を歩行者に与えるおそれはなくなる。
【0033】
また、この発明によれば、ビームパイプ12が変形するおそれがないので、防護柵の補修時等の際に、再度、ビームパイプ12の端部内にインナースリーブ本体2を挿入することが困難となるおそれはない。
【符号の説明】
【0034】
1:インナースリーブ
2:インナースリーブ本体
2a:ボルト孔
2b:ボルト孔
3:押圧片
3a:スリット
11:支柱
12:ビームパイプ
12a:ボルト孔
13:インナースリーブ
13a:ボルト孔
13b:ボルト孔
14:ブラケット
15:ボルト
16:ナット
17:ボルト
18:ナット
19:ボルト
20:ナット