(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165298
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】光電センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20170710BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
G01J1/02 P
G01N21/64 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-133161(P2016-133161)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2017-21017(P2017-21017A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】10 2015 111 379.1
(32)【優先日】2015年7月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】インゴルフ ヘルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト メレティク
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ベルクバッハ
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ラング
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター レウケル
【審査官】
塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−098617(JP,A)
【文献】
特表2007−520071(JP,A)
【文献】
特開2012−220424(JP,A)
【文献】
特開平07−254732(JP,A)
【文献】
特開平06−163988(JP,A)
【文献】
特開平08−247841(JP,A)
【文献】
特表2009−510762(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0211400(US,A1)
【文献】
特表2007−524073(JP,A)
【文献】
実開昭56−165587(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02
G01N 21/64
H01S 5/00
G01V 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(23)又はその特性を認識するための光電センサ(11)であって、対象領域(17)へ発射光線を送出する発光器(13、13’、13”)と、受光光線を受光するための受光器(19)と、該受光器(19)により受光した受光光線に基づいて前記対象領域(17)内に存在する又は該領域内へ突出する物体(23)を検出する及び/又はそのような物体の特性を調べるように構成された評価ユニット(21)を含む光電センサにおいて、
前記発光器(13、13’、13”)が、第1の発光層(31)と第2の発光層(32)を有するモノリシックな半導体素子(26)を含み、前記第1の発光層(31)は赤色光を発するように構成され、前記第2の発光層(32)は赤外光を発するように構成され、該第2の発光層(32)は中心の発光面(39、39’)を画定し、前記第1の発光層は前記中心の発光面(39、39’)を囲む外側の発光面(40)を画定していることを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記第1の発光層(31)が600nmから780nmまでの波長領域内でほぼ単色の光を発するように構成され、及び/又は、
前記第2の発光層(32)が780nmを超えて2000nmまでの波長領域内でほぼ単色の光を発するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
前記第1の発光層(31)と前記第2の発光層(32)が、前記モノリシックな半導体素子(26)の共通の基板(30)上に積層された状態、好ましくは直接接した状態で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電センサ。
【請求項4】
前記基板(30)に近い下側の発光層(32)が前記基板(30)から遠い上側の発光層(31)よりも狭いバンドギャップを有すること、及び/又は、前記第2の発光層(32)が前記基板(30)に近い下側の発光層であることを特徴とする請求項3に記載の光電センサ。
【請求項5】
前記基板(30)と該基板(30)に近い下側の発光層(32)との間に少なくとも1つの鏡面層が配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光電センサ。
【請求項6】
前記基板(30)から遠い上側の発光層(31)が前記基板(30)に近い下側の発光層(32)の一部のみを被覆しており、該下側の発光層(32)の非被覆領域に、前記基板(30)に近い下側の発光層(32)への接触のための少なくとも1つの中間接触部(37)が配置されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の光電センサ。
【請求項7】
前記第1の発光層(31)と前記第2の発光層(32)が空間的に横方向に互いに離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電センサ。
【請求項8】
前記中心の発光面(39、39’)が円形又は楕円形であること、及び/又は、前記外側の発光面(40)が閉じた円環状又は分割された円環状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光電センサ。
【請求項9】
前記第1の発光層(31)と前記第2の発光層(32)が前記モノリシックな半導体素子(26)の共通の基板(30)上に同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光電センサ。
【請求項10】
前記発光器(13)に対して、前記第1の発光層(31)と前記第2の発光層(32)を個別に操作するために構成された制御装置(27)が割り当てられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光電センサ。
【請求項11】
前記制御装置(27)が、前記第1の発光層(31)を光電センサ(11)の駆動中に一時的にのみ活性化するように構成されており、
好ましくは、前記制御装置(27)が、光電センサ(11)が調整モードにある場合、及び/又は、光電センサ(11)のスイッチング基準が満たされた場合、及び/又は、光電センサ(11)が所定のスイッチング状態にある場合にのみ、前記第1の発光層(31)を活性化するように構成されていること
を特徴とする請求項10に記載の光電センサ。
【請求項12】
前記モノリシックな半導体素子(26)が前記発光器(13)の唯一の光源であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光電センサ。
【請求項13】
前記発光器(13)が色補正用発光光学系(20)を含んでいること、特に該色補正用発光光学系(20)が前記第1の発光層(31)から発せられる赤色光と前記第2の発光層(32)から発せられる赤外光に対して少なくともほぼ等しい焦点距離を有していることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の光電センサ。
【請求項14】
前記発光器(13)が色収差補正レンズとして構成されており、
好ましくは、該色収差補正レンズが、屈折式光学構造体と回折式光学構造体の組み合わせを含むもの、及び/又は、樹脂で作成されたものであることを特徴とする請求項13に記載の光電センサ。
【請求項15】
光電センサ(11)が光学的なセンサ、例えば互光センサ、三角測量器、ルミネッセンスセンサ又はコントラストスキャナとして構成されていること、又は
光電センサ(11)が一方向型の光遮断機又は反射型の光遮断機として構成されていること、又は
光電センサ(11)が色センサとして構成されていること
を特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の光電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体又はその特性を認識するための光電センサであって、対象領域へ発射光線を送出する発光器と、受光光線を受光するための受光器と、該受光器により受光した受光光線に基づいて対象領域内に存在する又は該領域内へ突出する物体を検出する及び/又はそのような物体の特性を調べるように構成された評価ユニットを含む光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサは、該センサの視野内に存在する物体を非接触で検出するために様々な方法で用いられる。例えば、光センサは、該センサの基準平面から物体表面までの距離を調べるために役立つ。また、光遮断機又は光格子を用いれば、例えば防護領域への人の進入を認識することができる。光電センサの別の利用分野として、例えば色の認識や物体側のマーク又は符号の識別のような、物体の特定の特性を調べることが挙げられる。
【0003】
通常、光電センサの発光器は、比較的狭いスペクトル線幅を有する発光ダイオード又は半導体レーザを含む。赤外光を発する発光器を用いれば、一般に、それを含むセンサにおいて長い射程距離と高い感度が得られる。また、例えば公共の領域における通行管理のような特定の用途では、測定光線が目に見えないことが望ましい。一方、測定光線が目に見えなければ、取り付けの枠内でのセンサの位置調整が難しくなる。原理的には、この問題は、可視光を発する第二の発光器を設け、導光体や光ファイバ等を用いてその光を測定光の光路内に結合することにより解決できる。しかし、これにはかなり費用がかかり、それだけ価格が高くなる。加えて、追加の発光器や必須の光学素子が相当な設置スペースを必要とする。更に、それらの光学素子が最大出力密度や結像の鮮明度を低下させてしまう。
【0004】
異なる波長領域でそれぞれ狭いスペクトル線幅の光を発するセンサが特許文献1〜4に開示されている。
【0005】
複数の異なる発光領域を有する発光ダイオードが特許文献5〜7に開示されている。
【0006】
特許文献8に、観察光の結像誤差を悪化させることなく試験光に対する結像誤差を補正するために回折格子を用いた顕微鏡用対物レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 2014/0307252A1
【特許文献2】DE 20 2009 012 589 U1
【特許文献3】EP 0 329 083 A2
【特許文献4】DE 689 06 874 T2
【特許文献5】DE 10 2004 004 765 A1
【特許文献6】WO 99/57788 A2
【特許文献7】US 2008/0211400 A1
【特許文献8】DE 102 45 558 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、位置調整が容易であり、高い感度を有し、必要な設置スペースが小さく、安価に製造できる光電センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は請求項1に記載の特徴を有する光電センサにより解決される。
【0010】
本発明では、発光器が第1の発光層と第2の発光層を有するモノリシックな半導体素子を含み、その第1の発光層は赤色光を発するように構成され、第2の発光層は赤外光を発するように構成されている。2つの発光層は、好ましくはエピタキシャル成長させた半導体結晶層として、基板上に並べて及び/又は上下に設けることができる。該2つの発光層のエピタキシャル成長を別々の工程で行い、そうして別々に成長させた2つの発光層を後続の接続工程(例えばウェーハボンディング工程)によりモノリシックな素子に結合してもよい。
【0011】
即ち、モノリシックな半導体素子(以下、単に「チップ」と呼ぶ)が、赤色光と赤外光の両方を発することができる発光器として用意される。赤色光と赤外光が同一のチップから、つまりいわば同一の光源から発せられるため、発光器が必要とする設置スペースは非常にわずかである。しかも、赤色光線と赤外光線を合流させるためのビームスプリッタ等の素子が不要である。これは次のような理由から特に有利である。まず、導光用の光学系は比較的広いスペースを必要とする上、とりわけ達成可能な最大出力密度を吸収によって低下させてしまう。また、結像の質(例えば最小のスポットサイズ)がビームスプリッタ等の光学部品により低下してしまう。2つの発光領域を同一の半導体素子上に層として形成することにより、これらの問題を回避することができる。
【0012】
前記モノリシックな素子のエッジ長は最大でも1mmであることが好ましい。このようにすれば、基本的に発光器を単一の発光ダイオードのように利用することができる。
【0013】
必要であれば、前記赤色光を発する層に加えて、赤色光を発する別の層を少なくとも1つ設けてもよい。同様に、前記赤外光を発する層に加えて、赤外光を発する別の層を少なくとも1つ設けてもよい。加えて、使用条件によっては、赤色光を発する層と赤外光を発する層の他に、赤色光及び赤外光から離れた波長領域(例えば緑色領域)で発光する別の層を少なくとも1つ設けることが望ましい場合もあり得る。
【0014】
本発明では、第2の発光層が中心の発光面を画定し、第1の発光層が前記中心の発光面を囲む外側の発光面を画定するようにする。一般的には赤外の検出光線を中心光線とするのが好都合である。ただし、特定の用途では、第1の発光層を中心の発光面とし、第2の発光層を外側の発光面とする構成の方が有利な場合もあり得る。
【0015】
本発明の一実施形態では、第1の発光層が600nmから780nmまでの波長領域内でほぼ単色の光を発するように構成され、及び/又は、第2の発光層が780nmを超えて2000nmまでの波長領域内でほぼ単色の光を発するように構成される。特に、各発光層そのものは従来の発光ダイオードの発光層と同様の形態にすることができる。
【0016】
本発明の一形態では、第1の発光層と第2の発光層が、モノリシックな半導体素子の共通の基板上に積層された状態、好ましくは直接接した状態で設けられる。積層配置にすることにより、光電センサにおいて測定に用いられる検出光(赤外)とセンサの調整等に用いられるパイロット光(赤)の同軸配置を、そのためにビームスプリッタ等の素子を必要とすることなく設計することができる。
【0017】
基板に近い下側の発光層が基板から遠い上側の発光層よりも狭いバンドギャップを有すること、及び/又は、第2の発光層が基板に近い下側の発光層であることが好ましい。なお、ここでは、半導体素子の向きに関わらず、基板と別の発光層との間にある発光層を下側の発光層と呼ぶ。従って他方の発光層が上側の発光層ということになる。下側の発光層から発せられた光は少なくとも一定の領域で上側の発光層を貫通しなければならず、それゆえそこで吸収される可能性がある。赤色発光層を赤外発光層の上に配置することにより、そのような吸収による損失を十分に回避できる。バンドギャップとは一般に半導体の価電子帯と伝導帯の間のエネルギー差と解される。発光ダイオードの場合、発せられた光子のエネルギーがまさにバンドギャップに相当する。それゆえ、下側の発光層が上側の発光層よりも狭いバンドギャップを有していれば、下側の発光層から発せられた光子が上側の発光層を貫通する際に吸収されることがない。
【0018】
本発明の特別な形態では、基板から遠い上側の発光層が基板に近い下側の発光層の一部を被覆しており、該下側の発光層の非被覆領域に、基板に近い下側の発光層への接触のための少なくとも1つの中間接触部が配置されている。ここで「中間接触部」とは、半導体素子の外側の層ではない層に接続するための接触部のことをいう。中間接触部により第1の発光層と第2の発光層の選択的な操作が可能になる。つまり、赤色発光層と赤外発光層を個別に操作することができる。中間接触部は発光面の全体に比べて小さくできるため、個別の操作が可能でありながらも赤色光と赤外光の両方でほぼ同じ大きさの光スポットを得ることができる。
【0019】
基板の方向へ発せられる光を反射して利用するために、基板と該基板に近い下側の発光層との間に少なくとも1つの鏡面層を配置してもよい。
【0020】
本発明の代替的な実施形態では、第1の発光層と第2の発光層が空間的に横方向に互いに離れている。この形態では、両方の発光層を基板上に直接、例えばエピタキシャル層として設けることができる。これらの層には個別操作のために別々に接触部を設けることができる。
【0021】
好ましくは、第1の発光層と第2の発光層をモノリシックな半導体素子の共通の基板上に同心円状に配置する。これにより、赤色光線の位置に基づいて赤外光線の位置を比較的正確に認識できることが保証される。
【0022】
中心の発光面が円形又は楕円形であるように、及び/又は、外側の発光面が閉じた円環状又は分割された円環状であるようにしてもよい。特に外側の発光面は、ユーザにより直接的に調整の補助として利用される「標的リング」の形にすることができる。
【0023】
発光器に対して、第1の発光層と第2の発光層を個別に操作するために構成された制御装置を割り当てることができる。この制御装置は適宜の電気配線及び各層に接続された接触部を通じて各発光層に接続することができる。2つの発光層が別々に操作可能であることにより、センサの柔軟性が高まる。
【0024】
制御装置は、第1の発光層を光電センサの駆動中に一時的にのみ活性化するように構成することができる。ここで、発光層を「活性化する」とは、連続発光のための励起という意味でスイッチを入れること、並びに点滅又は閃光状態への切り替えという両方の意味に解すべきものである。特定の用途では、目に見える赤色光を定常的に射出しないことが望ましい。
【0025】
制御装置は特に、光電センサが調整モードにある場合、及び/又は、光電センサのスイッチング基準が満たされた場合、及び/又は、光電センサが所定のスイッチング状態にある場合にのみ、第1の発光層を活性化するように構成することができる。「調整モード」とは、実際の使用状況におけるセンサの位置合わせ又は調整のために設けられる、光電センサの特別な駆動状態のことである。この駆動状態における赤色光線は、ユーザに測定光線の位置を示すパイロット光線となる。「スイッチング基準」とは、例えば光センサのスイッチング閾値のことである。赤色光により認識可能となるスイッチング状態に基づいて、ユーザは、センサのスイッチが入っているか切れているかを知ることができる。例えば、センサのスイッチが入ったときに赤色発光層を一回だけ短く発光させればよい。そうすれば、スイッチを入れる動作が成功したことがユーザに分かる。
【0026】
また制御装置は、通常の駆動に障害が生じているときに第1の発光層を活性化するように構成することもできる。この場合、赤色光は、任意の障害、エラー又は危険に対してユーザの注意を喚起するための警告信号として用いられる。
【0027】
モノリシックな半導体素子が発光器の唯一の光源であるようにすると有利である。これにより製造コスト、重量及び設置スペースを低減することができる。
【0028】
発光器は色補正用発光光学系を含んでいてもよく、特に該色補正用発光光学系は第1の発光層から発せられる赤色光と第2の発光層から発せられる赤外光に対して少なくともほぼ等しい焦点距離を有するものとする。これにより、両方の波長に対してほぼ同じ質の光線を形成することができる。
【0029】
発光器は色収差補正レンズ(アクロマートレンズ)として、最も簡単には、例えば2重レンズ型対物鏡として構成することができる。
【0030】
本発明の特に安価な形態では、前記色収差補正レンズが、屈折式光学構造体と回折式光学構造体の組み合わせを含むもの、及び/又は、樹脂で作成されたものである。例えば、該色収差補正レンズは、回折式の補償表面を有する樹脂レンズを含むもの、特にそのような樹脂レンズのみから成るものとすることができる。
【0031】
光電センサは、例えば光学的なセンサ、例えば互光センサ、三角測量器、ルミネッセンスセンサ又はコントラストスキャナとして構成することができる。「光学的なセンサ」とは特に、物体からの反射光に基づいて該物体の存在及び場合によってはその距離を測定する光センサのことである。
【0032】
あるいは、本発明に係る光電センサを一方向型の光遮断機又は反射型の光遮断機として構成することができる。
【0033】
また、本発明に係る光電センサを色センサとして構成することもできる。
【0034】
本発明の更なる発展形態は従属請求項、明細書及びに図面にも提示されている。
【0035】
以下、本発明の模範的な例を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光電センサの発光器の概略図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る光電センサの発光器を示す図。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る光電センサの発光器を示す図。
【
図6】
図4に示した発光器であって、中心の発光層のアスペクト比が
図5とは異なるものを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に概略的にのみ描かれた光電センサ11(ここでは光センサとして構成されている)は、発射光線15を対象領域17へ送出するように構成された発光器13を含んでいる。対象領域17にある物体23が発射光線15を直反射又は拡散反射し、その反射光が受光光線18として光電センサ11の受光器19に達する。受光器19にはフォトダイオード又はダイオード列やCCDアレイのような空間分解型検出器が利用できる。発光器13と受光器19にはそれぞれビーム形成用光学系20が配置されているが、これはセンサのあらゆる用途に必須のものではない。
【0038】
電子的な評価ユニット21が受光器19に接続されており、該受光器19により受光された受光光線18に基づいて、公知の方法で物体23の検出及び/又は該物体23の特性(例えば色)の調査を行うことができる。発光器13と受光器19は
図1に示したように共通のセンサケーシング24内に統合することができる。ただし、基本的には発光器13と受光器19を別々の部品内に収納してもよい。例えば一方向型の光遮断機を用意すべき場合がこれに当たる。
【0039】
発光器13は電子的な制御装置27と接続されており、該装置により選択的に作動させることができる。
【0040】
図2に簡略化して示したように、発光器13は、基板30、第1の発光層31及び第2の発光層32を有するモノリシックな半導体素子26を含んでいる。2つの発光層31、32は基板30上にエピタキシャル成長で設けられた半導体層であり、それぞれほぼ単色の光を発するように構成されている。基板30に近い、
図2では下側の発光層32は赤外光を発するように構成されている一方、基板30から遠い、
図2では上側の発光層31は赤色光を発するように構成されている。従って、上側発光層31は下側発光層32よりも広いバンドギャップを有しているため、下側発光層32から発せられる光子は上側発光層31を貫通する際に吸収されない。両方の発光層31、32は、基本的に公知の方法で、電気的接触部35を通じて電子的な制御装置27(
図1)と接続されている。アースとしては、例えば基板30が公知の方法で利用される。なお、説明のため、発光器13に相当する回路記号を
図2の左側に示している。
【0041】
図2に示した本発明の実施形態では、2つの発光層31、32が基板30上に直接接した状態で積層されている。もっとも、基本的には2つの発光層31、32の間に一又は複数の追加の発光層が挟まれていてもよい。なお、
図2には示していないが、光量を大きくするために基板30と下側発光層32の間に鏡面層を配置してもよい。
【0042】
図3に示した本発明の別の実施形態に従って形成された発光器13’は、基本的には先に
図2を参照して説明した発光器13と同様に構成されているが、共通の電気的接触部35の代わりに、2つの層31、32にそれぞれ割り当てられた2つの接触部36、37を有している。このうち下側発光層32に割り当てられた接触部37は中間接触部として構成されている。つまり、本形態では上側発光層31が下側発光層32の一部のみを被覆しおり、中間接触部として構成された接触部37は非被覆領域において下側発光層32上に配置されている。接触部が分かれているため、
図3に示した実施形態では2つの発光層31、32を個別に制御することができる。
【0043】
図2及び3に示した発光器13、13’では、発光層31、32により中心発光面と外側発光面がそれぞれ画定されている。それゆえ、
図2及び3では下側発光層32が上側発光層31よりも大きく描かれている。
【0044】
図4は本発明に係る光電センサ11のための別の実施形態の発光器13”を示している。この実施形態では、2つの発光層31、32が同じ様に別個の接触部36、37を通じて制御装置27(
図1)と接続され、個別に制御可能である。ただし、本形態の2つの発光層31、32は積層配置ではなく、空間的に横方向に互いに離れて配置されている。つまり、第1の発光層31と第2の発光層32は両方とも基板30上に直接設けられている。ただし、必要であれば、本形態でも基板30と各発光層31、32の間に鏡面層など他の層を設けることができる。
図4に示した実施形態では赤色光線と赤外光線を正確に同軸で射出することはできない。それでも、第1の発光層31と第2の発光層32を基板30上で同心円状に配置することで、赤色光と赤外光がほぼ同軸に放射されるようにすることが好ましい。
【0045】
例えば、第2の発光層32が
図5及び6に示したように中心発光面39を画定する一方、第1の発光層31が該中心発光面39を囲む外側発光面40を画定するようにすることができる。
図5に示した実施形態では中心発光面39が円形で、外側発光面40が分割された円環状である。一方、
図6に示した実施形態では中心発光層39’が楕円形である。中心発光層39’を楕円形にすることにより、細長い受光素子上でより高いエネルギー密度を達成し、それにより、例えば光センサとして構成された光電センサ11の射程距離を長くすることができる。外側の赤色発光面40については、
図5に示した実施形態のように分割された円形にすれば十分である。なぜなら、赤色発光面40は本来の検出プロセスにとって重要ではないからである。むしろ、赤色光線は単に「標的リング」として光学センサ11の位置合わせに補助的に利用することが好ましい。なお、図示しない別の実施例として、狙いを定めるという意味での位置合わせを非常に簡単にするため、第1の発光層31を例えば十字形にしてもよい。
【0046】
先に述べたように、
図3に示した発光器13’と
図4〜6に示した発光器13”のいずれも、駆動状態に応じて、赤色光のみ、赤外光のみ、又は赤色光と赤外光の両方を同時に射出するように駆動することができる。多くの用途では、赤色光を一時的にのみ発生させることが有利である。そのために、例えば光電センサ11が調整モードにある場合にのみ第1の発光層31を活性化するようにすることができる。例えばセンサ11がユーザによるボタンの押下により調整モードに切り替わるようにすることができる。調整の終了後、ユーザが、例えば同様にボタンの押下によりセンサ11を通常の駆動状態に切り替えると、第2の発光層32だけが活性化し、それにより赤外光のみが発せられる。
【0047】
別の実施形態では、光電センサ11のスイッチを入れる際、該光電センサ11の駆動の用意ができたことをユーザに知らせるために、短い赤色光パルスが発せられる。また、センサ11のスイッチング閾値に達したらすぐに赤色光の消灯のために第1の発光層31を不活性化するようにしてもよい。これにより調節プロセスをより簡素化できる。また、障害の発生や危険な状況の検出の際に第1の発光層31を活性化することで、赤色光線を警告信号として利用してもよい。そのために、例えばパルス駆動部を設けて光を点滅させてもよい。
【0048】
先に述べた具体的な駆動モードを実装するため、評価ユニット21及び制御装置27に接続された上位の制御ユニットを本発明に係る光学センサ11に含めてもよい(ただし、
図1にはこれを図示していない)。
【0049】
発光器13に対して、第1の発光層31から発せられる赤色光と第2の発光層32から発せられる赤外光に対して同じ焦点距離を有する色収差補正レンズをビーム形成用光学系20として割り当てることが好ましい。色収差補正レンズは回折式の補償平面を有する樹脂レンズとして構成することができる。
【0050】
一般に本発明の光学センサ11は光学的なセンサ、例えば互光センサ(Wechsellichttaster; WT)、ルミネッセンスセンサ(Lumineszenztaster; LT)、三角測量器(好ましくはバックグラウンド抑制(Hintergrundausblendung; HGA)付きのもの)、あるいはコントラストスキャナ(Kontrasttaster; KT)として構成することができる。また、本発明に係る光学センサ11を光遮断機、光格子又は色センサ(Farbsensor; CS)として構成することもできる。
【0051】
発光器13、13’、13”が、同一のチップ上に設けられた2つのエピタキシャル層を光源として有していることにより、赤外領域における測定と、目に見える赤色領域における調整を、そのために別々の発光ダイオードやビーム合成用光学系を用意することなく実行することができる。このように本発明によれば、非常に高い信頼性及び感度で物体を認識でき、センサの調整が容易であり、同時に製造コスト、重量及び設置スペースを低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
11…光学センサ
13、13’、13”…発光器
15…発射光線
17…対象領域
18…受光光線
19…受光器
20…ビーム形成用光学系
21…評価ユニット
23…物体
24…センサケーシング
26…半導体素子
27…制御装置
30…基板
31…第1の発光層
32…第2の発光層
35…共通の電気的接触部
36…個別の電気的接触部
37…個別の電気的接触部
39、39’…中心発光面
40…外側発光面