(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであり、高価の複雑な装備がなくても液体内の溶存水素ガス濃度をリアルタイムで簡単に測定できるようにする水素センサ素子を提供することをその目的とする。
【0007】
また、本発明は、水素センサ、特に水素センサの検知電極が液体に露出されて劣化しないようにする水素センサ素子を提供することを他の目的とする。
【0008】
なお、本発明は、溶存水素ガスの濃度を測定するにおいて、水素以外の他ガスの存在によって測定の正確性が影響を受けることを最小化できる水素センサ素子を提供することをまた他の目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、測定の正確性および再現性を確保することができ、遠距離でも測定結果をユーザが知ることができるようにする水素センサ素子および水素ガス濃度測定方法を提供することをまた他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の一側面による水素センサ素子は、液体内の溶存水素ガス濃度を測定するための水素センサ素子であって、水素ガス濃度を測定するセンサ部、および前記センサ部に結合され、少なくとも一部に開放部が形成されるハウジング胴体および前記開放部に気体および液体密封可能に結合されるガス分離膜を含むハウジングを含み、前記ハウジング胴体およびガス分離膜によって前記ハウジング内部には前記液体および外部空気から隔離された密閉空間が形成され、前記ガス分離膜は前記液体内の溶存水素ガスを前記密閉空間内に透過させることを特徴とする。この時、前記密閉空間内の酸素を外部にポンピングして除去するために、前記ハウジングに結合されるポンピング部をさらに含んでもよい。
【0011】
前記センサ部は、酸素イオン伝導体と水素イオン伝導体のヘテロ接合体、前記水素イオン伝導体の表面に形成される検知電極、前記酸素イオン伝導体の表面に形成される基準電極、および前記基準電極と前記検知電極間の起電力を測定する起電力測定部を含み、前記検知電極は前記密閉空間に露出され、前記基準電極は外部空気と連通するか、または前記基準電極側の酸素分圧を固定させる基準物質で覆われており、前記溶存水素ガス濃度が変化するに伴って前記起電力が変化するものであってもよい。また、前記センサ部は、水素イオン伝導体、前記水素イオン伝導体の表面に形成される検知電極および基準電極、および前記基準電極と前記検知電極間の起電力を測定する起電力測定部を含み、前記検知電極は前記密閉空間に露出され、前記基準電極は前記基準電極側の水素分圧を固定させる基準物質で覆われており、前記溶存水素ガス濃度が変化するに伴って前記起電力が変化するものであってもよい。
【0012】
前記ガス分離膜は金属膜であってもよく、前記金属膜はパラジウム(Pd)を含んでもよく、その厚さは100μm以下であってもよい。
【0013】
また、本発明に一側面による水素センサ素子は前記ガス分離膜を前記ハウジングに結合するための固定キャップをさらに含んでもよく、前記ハウジング内部の密閉空間は充填物で満たされてもよい。
【0014】
なお、本発明に係る水素センサ素子は、前記センサ部をセンシング温度にまで加熱するためのヒータを含んでもよい。
【0015】
密閉空間内の酸素を外部にポンピングするための前記ポンピング部は、酸素イオン伝導体、前記酸素イオン伝導体とスペーサによって所定間隔離隔され、前記離隔された間隔は外部空気と連通するように備えられるヒータ基板、前記酸素イオン伝導体の前記密閉空間側の一面に形成される第1ポンピング電極、前記酸素イオン伝導体の前記外部空気側の一面に形成される第2ポンピング電極、および前記第1ポンピング電極および前記第2ポンピング電極の間に電圧または電流を印加するポンピング電源を含み、前記ポンピング電源によって前記第1ポンピング電極および前記第2ポンピング電極の間に電圧または電流を印加することによって前記密閉空間側の酸素が前記外部空気側にポンピングされるものであってもよい。
【0016】
前記ポンピング部は前記センサ部と一体に形成されたものであってもよく、この時、前記センサ部は、酸素イオン伝導体、前記酸素イオン伝導体とスペーサによって所定間隔離隔され、前記離隔された間隔は外部空気と連通するように備えられるヒータ基板、前記密閉空間側に露出される前記酸素イオン伝導体の少なくとも一部分に接合される水素イオン伝導体、前記水素イオン伝導体の前記密閉空間に露出される表面に形成される検知電極、前記酸素イオン伝導体の前記外部空気側の表面に形成される基準電極、前記基準電極と前記検知電極間の起電力を測定する起電力測定部、前記酸素イオン伝導体の前記水素イオン伝導体と接合されていない前記密閉空間側の表面に形成される第1ポンピング電極、前記酸素イオン伝導体の前記外部空気側の表面に形成される第2ポンピング電極、および前記第1ポンピング電極および前記第2ポンピング電極の間に電圧を印加するポンピング電源を含み、前記溶存水素ガス濃度が変化するに伴って前記起電力が変化し、前記ポンピング電源によって前記第1ポンピング電極および前記第2ポンピング電極の間に電圧または電流を印加することによって前記密閉空間側の酸素が前記外部空気側にポンピングされることを特徴としており、ここで、前記基準電極と前記第2ポンピング電極は1つの電極であってもよい。
【0017】
一方、本発明に係る水素センサ素子は液体が収容された容器の開口部に結合されて前記容器に収容された液体内の溶存水素ガス濃度を測定するためのものであってもよく、この時、前記ガス分離膜は前記開口部を通して前記容器内部と連通して前記液体内の溶存水素ガスを前記密閉空間内に透過させてもよい。この場合、水素センサ素子は前記ガス分離膜と前記開口部との間および前記ハウジング胴体と前記ガス分離膜との間に密封部材が挿入された状態で前記開口部に結合されてもよく、前記センサ部の温度を測定するための温度センサおよび前記液体の流入有無を検知するための液体流入センサのうち少なくとも1つがさらに備えられてもよい。
【0018】
本発明の他の側面による溶存水素測定装置は、容器に収容された液体内の溶存水素ガス濃度を測定するための溶存水素測定装置であって、前記容器の一側に備えられた開口部に結合された水素センサ素子を含み、前記水素センサ素子は水素ガス濃度を測定するセンサ部および前記センサ部に結合されるハウジングを含み、前記ハウジングは少なくとも一部に開放部が形成されるハウジング胴体および前記開放部に気体および液体密封可能に結合されるガス分離膜を含んで内部に前記液体および外部空気から隔離された密閉空間が形成され、前記ガス分離膜は前記開口部を通して前記容器内部と連通して前記液体内の溶存水素ガスを前記密閉空間内に透過させることを特徴とする。この時、前記水素センサ素子は前記開口部に脱着可能に結合されるものであってもよい。
【0019】
また、前記溶存水素測定装置はセンサ部に電気的に連結されて前記センサ部の動作を制御する制御装置をさらに含んでもよく、前記センサ部の温度を測定するための温度センサまたは前記液体の流入有無を検知するための液体流入センサがさらに備えられ、前記制御装置は前記温度センサまたは液体流入センサからそのセンシング結果の伝達を受けるように構成されてもよい。また、前記開口部には開閉バルブが設置され、前記制御装置は前記開閉バルブの動作を制御するように構成されてもよい。
【0020】
前記制御装置は、前記センサ部から測定結果の入力を受ける測定部、前記水素センサ素子の動作を制御する制御部、前記測定された溶存水素ガス濃度を表示する表示部、および前記溶存水素ガス濃度の測定結果を有線または無線で送信する送信部を含んでもよい。ここで、前記水素センサ素子は前記密閉空間内の酸素を外部にポンピングして除去するためのポンピング部をさらに含み、前記ポンピング部は酸素イオン伝導体、前記酸素イオン伝導体の前記密閉空間側面に形成される第1ポンピング電極、および前記酸素イオン伝導体の前記外部側面に形成される第2ポンピング電極を含んでなり、前記制御部は前記ポンピング部の動作を制御するように構成されてもよい。
【0021】
また、前記ポンピング部は、前記第1ポンピング電極および第2ポンピング電極の間の起電力を測定することによって前記密閉空間内の酸素ガス分圧を測定する酸素センサ機能も行い、前記制御部は、前記酸素センサ機能を行うポンピング部から前記密閉空間内の酸素ガス分圧の測定結果の伝達を受けた後、その結果に基づいて前記ポンピング部のポンピング動作を制御するように構成されてもよい。
【0022】
このような構成の本発明の他の側面による溶存水素測定装置を用いて液体内の溶存水素ガス濃度を測定する方法は、前記温度センサを用いて前記センサ部の温度を測定するステップ、前記温度測定結果に基づいて前記センサ部の温度を測定温度になるように制御するステップ、および前記センサ部を用いて前記密閉空間内の水素ガス分圧を測定し、その結果を用いて溶存水素ガス濃度を演算するステップを含むことを特徴とする。この時、前記水素センサ素子は前記密閉空間内の酸素を外部にポンピングして除去するためのポンピング部をさらに含み、前記ポンピング部は酸素イオン伝導体、前記酸素イオン伝導体の前記密閉空間側面に形成される第1ポンピング電極、および前記酸素イオン伝導体の前記外部側面に形成される第2ポンピング電極を含んでなり、前記ポンピング部は前記第1ポンピング電極および第2ポンピング電極の間の起電力を測定することによって前記密閉空間内の酸素ガス分圧を測定する酸素センサ機能も行い、前記酸素センサ機能を行うポンピング部が前記密閉空間内の酸素ガス分圧を測定し、前記測定された酸素ガス分圧が基準値以上であるか否かを判断し、前記判断の結果、基準値以上の場合には、前記密閉空間内の酸素ガスを外部に排出するように前記ポンピング部のポンピング動作を制御し、前記測定された酸素ガス分圧が基準値以下の場合には、前記水素ガス分圧を測定するステップを行うものであってもよい。
【0023】
また、前記測定および演算された溶存水素ガス濃度を有線または無線で送信するステップをさらに含んでもよく、前記水素センサ素子には前記液体の流入有無を検知するための液体流入センサがさらに備えられ、前記液体流入センサからそのセンシング結果の伝達を受けて液体が流入されたと判断される場合にそれを知らせるステップがさらに含まれてもよい。
【0024】
本発明のまた他の側面による水素センサ素子は、液体内の溶存水素ガス濃度を測定するための水素センサ素子であって、少なくとも一部領域が開放された筒形状からなり、前記開放された一部領域に液体は透過することができず水素ガスは透過するガス分離膜が結合されるハウジング、および少なくとも第1電極および第2電極を備えるセンサ部を含み、前記センサ部は、前記第1電極が前記ハウジング内に挿入されるように前記ハウジングに結合され、前記ガス分離膜を通してハウジング内に入ってきて前記第1電極に接する水素ガスの濃度を測定することを特徴とする。
【0025】
本発明のまた他の側面による水素センサ素子は、液体内に少なくとも一部が挿入されて液体内の溶存水素ガス濃度を測定するための水素センサ素子であって、固体電解質の両側に基準電極および検知電極を備えたセンシング部、前記液体からは隔離された状態で前記基準電極に基準ガスを供給するための基準ガス通路、前記センシング部をセンシング温度にまで加熱するためのヒータ部、および前記基準電極と前記検知電極間の起電力を測定する起電力測定部を含み、前記検知電極は液体内の溶存水素ガスに露出され、前記溶存水素ガス濃度が変化するに伴って前記起電力が変化することを特徴とする。ここで、基準電極に基準ガスを供給するための前記基準ガス通路の代わりに、前記基準電極を覆って基準電極側の基準ガス分圧を固定させる基準ガス分圧固定用基準物質を備えるものであってもよい。
【0026】
前記固体電解質は酸素イオン伝導体と水素イオン伝導体のヘテロ接合、または水素イオン伝導体からなり、前記検知電極は水素イオン伝導体の表面に形成されてもよい。
【0027】
また、少なくとも前記検知電極を覆うように形成された保護材をさらに含み、前記保護材は水素ガスが通過できる多孔性物質またはガラスセラミックで形成されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る水素センサ素子によれば、高価の装備がなくても液体内の溶存水素ガス濃度をリアルタイムで簡単に測定できるという効果がある。
【0029】
また、本発明に係る水素センサ素子によれば、水素センサの少なくとも検知電極を液体から隔離させ、溶存水素ガスには露出されるようにするハウジングを備えることによって、水素センサ、特に水素センサの検知電極が液体によって劣化する問題が減少するという効果がある。
【0030】
なお、本発明に係る水素センサ素子によれば、ハウジング内に存在する妨害ガスを外部に排出するポンピング部を備えることによって、溶存水素ガスの濃度を測定するにおいて酸素ガスなど他ガスの影響を最小化できるという効果がある。
【0031】
さらに、本発明に係る水素センサ素子および水素ガス濃度測定方法によれば、測定の正確性および再現性を確保することができ、遠距離でも測定結果をユーザが知ることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明するが、本発明がその実施形態によって限定または制限されるものではない。本発明の様々な実施形態を説明するにおいて、対応する構成要素に対しては同一の名称および同一の参照符号を付けて説明することにする。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態による水素センサ素子100の概略的な断面図である。
図1を参照して説明すれば、本発明の第1実施形態による水素センサ素子100はセンサ部110およびハウジング130を含んで構成され、選択的にポンピング部120をさらに含んで構成されることができる。ここで、センサ部110は周囲の水素ガス濃度を測定するための水素センサに該当する構成であり、ハウジング130はセンサ部110の一端を液体および外部空気から隔離させる密閉空間140を形成するようにするための構成である。水素センサ素子100が液体に挿入される場合にもハウジング130によってセンサ部110は液体から隔離されるが、ハウジング130の液体内に挿入される少なくとも一部分に備えられたガス分離膜132を通して溶存水素ガスが密閉空間140内に透過するため、センサ部110は液体に直接に接触しなくても溶存水素ガス濃度を測定できるようになる。以下、本発明の第1実施形態による水素センサ素子100の各構成をより詳細に説明する。
【0035】
センサ部110は密閉空間140内の水素ガス濃度を測定するための水素センサに該当する構成であり、水素ガスの濃度を測定できる水素センサであれば特に限定されるものではないが、固体電解質水素センサであることが好ましい。本発明の第1実施形態による好ましいセンサ部の構造を
図2の概略的な断面図を参照して説明する。
【0036】
図2に示すように、センサ部110は、酸素イオン伝導体211、酸素イオン伝導体211の一面に接合されている水素イオン伝導体212、酸素イオン伝導体211の他面、すなわち、基準ガス通路250側に形成されている基準電極213、および水素イオン伝導体212の表面に形成されている検知電極214を含むセンシング部210と、センシング部210を所定温度に加熱するためのヒータ部230、そしてセンシング部210とヒータ部230を所定間隔離隔させ、その間に基準ガス通路250を形成するためのスペーサ220を含むことができる。基準電極213と検知電極214はリード線241を介して起電力測定部240に電気的に連結され、起電力の測定によって後述する原理に従って水素ガス濃度が測定されることができる。
【0037】
酸素イオン伝導体211としてはジルコニア(ZrO
2)に色々な物質を添加して作った安定化ジルコニア、例えば、YSZ(Yttria stabilized zirconia)、CSZ(calcium stabilized zirconia)、MSZ(Magnesium stabilized zirconia)のような固体電解質またはGd
2O
3などを添加したCeO
2系化合物などを用いることができ、水素イオン伝導体212としてはABO
3形態のペロブスカイト(perovskite)構造を有する物質のB位に色々な物質を置換した物質、例えば、CaZr
0.9In
0.1O
3−xなどのようなCaZrO
3系、SrZr
0.95Y
0.05O
3−xなどのようなSrZrO
3系、SrCe
0.95Yb
0.05O
3−xなどのようなSrCeO
3系、BaCe
0.9Nd
0.1O
3−xなどのようなBaCeO
3系、BaTiO
3、SrTiO
3、PbTiO
3などのようなTi系化合物を用いることができる。
【0038】
また、基準電極213および検知電極214は白金(Pt)などの貴金属で形成することが好ましい。
【0039】
スペーサ220はセンシング部210とヒータ部230との間に挿入されて基準電極213が基準ガスと連通するように基準ガス通路250を形成するための構成であり、アルミナ(Alumina)で形成されることができる。この時、基準ガスは酸素分圧が実質的に一定に維持されるガスであれば特に限定されるものではないが、外部空気であることが好ましい。
【0040】
ヒータ部230はセンシング部210をセンシング温度にまで加熱するための構成であり、アルミナなどの絶縁物質からなるヒータ基板231にヒータ線232が形成された形態であってもよい。ここで、ヒータ線232は白金(Pt)線であってもよく、図示してはいないが、ヒータ線232に電流を流すための電源部がさらに含まれることができる。また、ヒータ線232が外部に露出されれば電気抵抗が変わって温度再現性が落ちるため、ヒータ線232はヒータ基板231内に内装して外部から遮断されるようにすることが好ましい。
【0041】
図3は
図2のセンサ部110の分解斜視図であって、
図3(a)は下側から見た斜視図であり、
図3(b)は上側から見た斜視図である。
【0042】
図3を参照して説明すれば、酸素イオン伝導体211は長方形の薄板状に形成され、ハウジング130内部の密閉空間140に位置する一側端部の上面には水素イオン伝導体212が接合され、その上面には検知電極214が形成されており、下面には水素イオン伝導体212および検知電極214と対向する位置に基準電極213が形成されている。また、基準電極213と検知電極214から各々リード線241が他側端部に延びて起電力測定部240が連結される1対のセンサ端子244,245が形成される。この時、基準電極213および基準電極213から延びたリード線241は酸素イオン伝導体211の下面に形成されているが、酸素イオン伝導体211に貫通ホールを形成し、伝導性物質を満たすことによって、図示したように基準電極213から延びたリード線241と連結されるセンサ端子244が酸素イオン伝導体211の上面に形成されるようにすることができ、このような構成を適用して起電力測定部240との連結をさらに容易にすることができる。また、図面には酸素イオン伝導体211を1つの板状部材として図示したが、複数の薄板状部材が重なった形態であってもよい。
【0043】
スペーサ220は逆「コ」字形状からなり、センシング部210とヒータ部230との間に一側が開放された基準ガス通路250が形成されるようにする。基準ガス通路250は
図1に示すように水素センサ素子100が液体内に挿入されても外部空気と連通する部分であるため、基準電極213は密閉空間140内の水素ガスからは隔離された状態で基準ガス通路250を通して基準ガス、すなわち、外部空気と接するようになる。
【0044】
ヒータ部230はヒータ上部基板231−1、ヒータ上部基板231−1の下面に形成されたヒータ線232、前記ヒータ線232が外部に露出されないようにヒータ上部基板231−1を覆うヒータ下部基板231−2で構成され、ヒータ線232はヒータ上部基板231−1の下面ではなくヒータ下部基板231−2の上面に形成されてもよい。ヒータ線232はヒータ上部基板231−1またはヒータ下部基板231−2上に白金(Pt)を所定パターンでプリンティングして形成することができ、白金パターンを用いたヒータ構造はガスセンサ分野では周知のものであるので、それに関する詳細な説明は省略する。一方、ヒータ線232に電流を供給する電源の連結容易性のために、ヒータ下部基板231−2に貫通ホールを形成し、伝導性物質を満たすことによって、ヒータ線232と連結される1対のヒータ端子234,235がヒータ下部基板231−2の下面に形成されるようにすることが好ましい。
【0045】
図2および
図3に例示したセンサ部110はセンシング部210、スペーサ220、ヒータ部230を一体に結合時に四角の筒形状を有し、これは、テープキャスティング技術を用いて製造することができる。また、
図2、3ではセンシング部210、スペーサ220、ヒータ部230を別個の構成として説明したが、セラミック押出などの製造技術を用いて各構成が一体に結合されたパッケージング胴体形状のセンサ部110に製造してもよく、この場合にはスペーサ220およびヒータ部230もYSZなどの酸素イオン伝導体物質で形成されるため、ヒータ線232をヒータ部230に内装する時には酸素イオン伝導体と電気的に絶縁状態になるように表面絶縁膜の処理後に内装させることが好ましい。または、別途のヒータ部を備えて基準ガス通路250に挿入設置するか、センサ部110の外部表面に近接設置する構造も用いることができる。
【0046】
図2および
図3に例示したセンサ部110が水素ガス濃度を検知する原理を
図4を用いて説明する。
図4は
図2および
図3のセンサ部110のうちセンシング部210の検知電極214と基準電極213が形成された部分のみを拡大した図であり、図示したように酸素イオン伝導体211と水素イオン伝導体212がヘテロ接合されている固体電気化学式セル(Solid Electro−chemical cell)の構造である。このような構造の固体電気化学式セルにおいて、基準電極213と検知電極214の間で測定される起電力(E)は、基準電極213側の酸素分圧(P
O2)および検知電極214側の水素分圧(P
H2)と次のような関係が成り立つ。
E=Eo+A logP
H2+(A/2) logP
O2−−−−−−−−(1)
【0047】
上記式において、EoとAは温度にのみ依存する定数であるため、結局、基準電極213側の酸素分圧(P
O2)を知れば、起電力(E)の測定によって検知電極214側の水素分圧(P
H2)を決定できることが分かる。
【0048】
この時、基準電極213は液体および密閉空間140内の水素ガスからは隔離されて基準ガス通路250を通して外部空気と連通するようになっているため、基準電極213側の酸素分圧(P
O2)は空気中の酸素分圧である0.21気圧に固定される。よって、式(1)において、起電力(E)を測定すれば、検知電極214側の水素分圧(P
H2)を算出できるようになる。
【0049】
ここで、検知電極214側の水素分圧(P
H2)はガス分離膜132を通過して密閉空間140内に存在する水素ガスの分圧であり、熱力学的な平衡状態では密閉空間140内の水素ガス分圧と液体内の溶存水素ガス濃度が互いに比例関係にあるため、その比例関係式やデータを予め実験的に導き出してデータベース化すれば、密閉空間140内の水素ガス分圧を測定することによって液体内の溶存水素ガス濃度を算出できるようになる。また、密閉空間140内の水素ガス分圧と液体内の溶存水素ガス濃度間の比例関係式は理論的に導き出すこともでき、例えば、Sievert法則によれば、液体に溶けられている水素量は気化した水素分圧の平方根に比例するため、このような法則を用いて水素センサ素子100で測定した水素ガス濃度から液体内の溶存水素ガス濃度を計算することもできる。
【0050】
水素ガス濃度の測定時、センシング部210の温度は約500℃以上であることが好ましいため、ヒータ線232に所定の電流を印加してセンシング部110が該当温度に加熱されるようにした後、起電力測定部240において基準電極213と検知電極214間の起電力を測定することが好ましい。
【0051】
図5は、本発明の第1実施形態による水素センサ素子100において使用できるセンサ部の他の構造を説明するための概略的な断面図である。この時、
図1〜
図4を参照して説明したものと共通する内容については説明を省略するが、このような内容が
図5のセンサ部およびそれを含む水素センサ素子100にも同様に適用できるということを理解しなければならない。
【0052】
図5によれば、本発明の第1実施形態に使用可能な他の構造のセンサ部510は、基準電極213を基準ガス通路に露出して外部空気と直接に接するようにする代わりに、基準電極213を酸素分圧固定用基準物質261で覆い、その上を密封蓋270で密封した構造であるという点で
図2および
図3のセンサ部110とは差がある。
【0053】
酸素分圧固定用基準物質261としてはCu/CuO、Ni/NiO、Ti/TiO
2、Fe/FeO、Cr/Cr
2O
3、Mo/MoOなどの金属と金属酸化物の混合体、またはCu
2O/CuO、FeO/Fe
2O
3などの酸化程度が異なる金属酸化物の混合体を用いることができ、このような酸素分圧固定用基準物質261で基準電極213を覆うと、基準電極213側の酸素分圧を熱力学的に固定させることができる。すなわち、基準電極213側の酸素分圧が外部空気によって決定される代わりに酸素分圧固定用基準物質261によって決定されるようになり、
図4を参照して説明したものと同様に基準電極213と検知電極214間の起電力を測定して式(1)によってオイル内の溶存水素ガス濃度を決定することができる。
【0054】
密封蓋270は外部空気が酸素分圧固定用基準物質261によって基準電極213に影響を及ぼすのを防止するための構成であり、空気の浸透を防止できる緻密なセラミック物質などで形成することができる。密封蓋270は外部空気の影響が微小であれば省略してもよい。
【0055】
図6は、本発明の第1実施形態による水素センサ素子100において使用可能なセンサ部のまた他の構造を説明するための概略的な断面図である。この時、
図1〜
図5を参照して説明したものと共通する内容については説明を省略するが、このような内容が
図6のセンサ部およびそれを含む水素センサ素子100にも同様に適用できるということを理解しなければならない。
【0056】
図6によれば、本発明の第1実施形態に使用可能なまた他の構造のセンサ部610は、センシング部が酸素イオン伝導体と水素イオン伝導体のヘテロ接合によって形成される代わりに水素イオン伝導体のみで形成される。すなわち、水素イオン伝導体212の一側に検知電極214を形成し、他側に基準電極213を形成し、基準電極213を水素分圧固定用基準物質262で覆い、その上を密封蓋270で密封する構造である。
【0057】
水素分圧固定用基準物質262としてはTi/TiH
2、Zr/ZrH
2、Ca/CaH
2、Nd/NdH
2などの金属と金属水和物の混合相を用いることができ、それによって基準電極213側の水素分圧(P
2H2)を熱力学的に固定させることができる。
【0058】
検知電極214はハウジング130によって形成される密閉空間140内の水素ガスと接するため、検知電極214と基準電極213間の起電力(E)を測定すれば、周知の次のネルンスト(Nernst)の式によって密閉空間140内の水素ガス分圧を測定することができ、それより液体内の溶存水素ガス分圧(P
1H2)を算出することができる。
【数1】
【0059】
上記式(2)において、Rは気体定数、Fはファラデー定数、Tは測定温度であって、いずれも定数であり、基準電極213側の水素分圧(P
2H2)も水素分圧固定用基準物質262によって決定される値であるため、測定された起電力(E)値から液体内の溶存水素ガス分圧(P
1H2)を決定できるようになる。
【0060】
以上で例示的に説明したセンサ部110,510,610はセンシング部210、スペーサ220およびヒータ部230によって基準電極213が密閉空間140内の水素ガスから隔離されて基準ガス通路250または基準物質261,262と接する構造として説明したが、本発明の技術思想を実現するために必ずしもこのような構造のセンサ部が用いられなければならないということではなく、様々なセンサ部構造が用いられてもよい。例えば、酸素イオン伝導体または水素イオン伝導体に気体密封可能に連結された別途のハンドル部を備えることもでき、
図7〜
図9を参照してこのような変形例を簡略に説明する。
【0061】
図7は
図2のセンサ部110の変形例であって、酸素イオン伝導体211および水素イオン伝導体212が各々円形または多角形のペレット(pellet)形態に形成されて接合され、各表面に基準電極213および検知電極214が形成される。そして、別途のハンドル部280が提供されて酸素イオン伝導体211に気体密封可能に結合され、ハンドル部280は外部空気と連通した中空のチューブ形状であってもよい。このような構成のセンサ部710に少なくとも検知電極214が密閉空間140内に含まれるようにハウジング130を結合すれば、
図2によるセンサ部110が用いられる場合と同様に、検知電極214は密閉空間140内の水素ガスに接し、基準電極213は溶存水素ガスからは隔離された状態で基準ガス通路250内に位置して外部空気と接するため、上述した原理に従って液体内の溶存水素ガス濃度を測定できるようになる。
図7にヒータ部は図示していないが、ヒータ部は基準ガス通路250など酸素イオン伝導体または水素イオン伝導体に隣接した適当な位置に設置することができる。
【0062】
図8は
図5のセンサ部510の変形例であって、
図7のセンサ部710と比較すると、基準電極213を基準ガス通路に露出して外部空気と直接に接するようにする代わりに、基準電極213を酸素分圧固定用基準物質261で覆い、その上を密封蓋270で密封した構造であるという点で差がある。酸素分圧固定用基準物質261で基準電極213を覆うと、基準電極213側の酸素分圧を熱力学的に固定させることができ、よって、基準電極213と検知電極214間の起電力を測定して液体内の溶存水素ガス濃度を決定することができるという点は
図5のセンサ部510と同様である。
図8にヒータ部は図示していないが、ヒータ部はハンドル部280の内部など酸素イオン伝導体または水素イオン伝導体に隣接した適当な位置に設置することができる。
【0063】
図9は
図6のセンサ部610の変形例であって、円形または多角形ペレット(pellet)形態の水素イオン伝導体212の両側表面に各々基準電極213および検知電極214が形成され、基準電極213を水素分圧固定用基準物質262で覆い、その上を密封蓋270で密封した構造であり、それに別途のハンドル部280が水素イオン伝導体212に気体密封可能に結合される。このような構成の水素センサ素子によれば、基準電極213側の水素分圧が水素分圧固定用基準物質262によって固定されるため、
図6のセンサ部610と同様に、式(2)によって密閉空間140内の水素ガス濃度を測定できるようになる。
図9にヒータ部は図示していないが、ヒータ部はハンドル部280の内部など水素イオン伝導体に隣接した適当な位置に設置することができる。
【0064】
再び
図1に戻り、本発明の第1実施形態によるハウジング130を詳細に説明する。ハウジング130はセンサ部110の一端を液体および外部空気から隔離させる密閉空間140を形成するようにするための構成であり、内部が空いており、両末端の少なくとも一部分が開放されているハウジング胴体131、およびハウジング胴体131の液体に挿入される方向の一端に結合され、液体が密閉空間140内に侵入するのを防止すると同時に液体内の溶存水素ガスを選択的に透過させるガス分離膜132を含んで構成される。ハウジング胴体131は液体および気体が通過できない材質であれば特に限定されず、例えば、ガラス材質であってもよい。ガラスも水素ガスが拡散によって透過できる材質ではあるが、ハウジング胴体はガス分離膜132に比べると非常に厚いため、ハウジング胴体131を介した密閉空間140へのガス透過は実質的に無視可能である。
【0065】
ガス分離膜132はハウジング胴体131の一端の開放された領域に結合されて液体内の溶存水素ガスを密閉空間140内に透過させる構成であり、液体は通過することができず溶存ガス分子は通過できる材質であれば特に限定されるものではないが、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)メンブレインまたはPDMS(Polydimethylsiloxane)メンブレインなどのポリマー材料、多孔性セラミック材料あるいは金属箔などが用いられることができる。
【0066】
特に水素センサ素子100の迅速な反応時間のためには密閉空間140内の水素ガス分圧が早い時間内に平衡状態に達するのが必要であるため、ガス分離膜132は水素の拡散係数が大きく薄厚さの箔形態に作れる材質からなることがが好ましい。すなわち、ガス分離膜132を通した水素の拡散速度が遅い場合、密閉空間140内の水素ガス濃度が液体内の溶存水素ガス濃度と平衡をなすまでに必要となる時間が長くなるため、本発明に係る水素センサ素子100を用いて液体内の溶存水素ガス濃度を正確に測定するためには数十分以上が必要となり、これは液体内の溶存水素ガス濃度をリアルタイムで簡便に測定するという本発明の目的に完全に符合するとは言えない。
【0067】
ガス分離膜132を通した水素の拡散距離(x)は次の式(3)で表される。
x=2(Dt)
1/2 −−−−−−(3)
【0068】
ここで、Dはガス分離膜132内における水素の拡散係数、tは拡散時間である。すなわち、式(3)によれば、拡散係数(D)が大きいほど、拡散時間(t)が長いほど、水素ガスが拡散する距離(x)は長くなることが分かり、密閉空間140内部の水素ガス分圧が液体内の溶存水素ガス濃度と早い時間内に平衡に達することができるように拡散時間(t)を減少させるためには、ガス分離膜132の厚さを減らし、拡散係数(D)の大きい材質でガス分離膜を形成することが好ましいということが分かる。
【0069】
このような原理に基づく場合、厚さを薄くすることの難しいガラスやプラスチックなどの材質よりは、金属箔が本発明のガス分離膜132としてさらに好ましい。金属箔、特にパラジウム(Pd)合金の場合、水素拡散係数が10
−6cm/s
2レベルとして大きい方であり、100μm以下の薄箔形態に製造することができるため、本発明に係る水素センサ素子100に適用するガス分離膜132として好適である。
【0070】
図1にはガス分離膜132がハウジング胴体131の下面に結合されるものとして図示したが、その結合位置は変更されてもよく、例えば、ハウジング胴体131の側面に結合されてもよい。
【0071】
ガス分離膜132をハウジング胴体131に結合する方式としては様々な方式が用いられてもよく、例えば、
図10に示すように、ハウジング胴体131との間にガス分離膜132を置いて結合される固定キャップ135を用いる方式が使用されてもよい。この時、ガス分離膜132が固定される部分にはハウジング胴体131および固定キャップ135全てに開放部136,137が形成されて溶存水素ガスが密閉空間140内部に透過できるように構成され、ハウジング胴体131とガス分離膜132との間、固定キャップ135とガス分離膜132との間にはO−リング(O−ring)などの密封材134が挿入されて、ガス分離膜132を通してのみ水素ガスが通過できるように密封することができる。また、固定キャップ135とパッケージング胴体131には螺旋が形成されてねじ結合されてもよいが、その他に様々な結合方式が使用されてもよい。
【0072】
本発明に係る水素センサ素子100のセンサ部110は基準ガス通路250が外部空気と連通するように、または基準ガス通路250の代わりに基準物質261,262を用いる場合にも起電力測定部240やヒータ用電源との電気的連結のために一部分がハウジング130の外部に引き出されることができ、この時、センサ部110とハウジング胴体131との間にはシール部材133が備えられることによって、ガス分離膜132部分を除いては、ハウジング130全体がガス密封された状態であることが好ましい。この時、シール部材133としてはガラスフリット(Glass frit)を用いることができる。
【0073】
一方、密閉空間140内に水素ガスの他に水素ガス濃度の測定に影響を与える妨害ガスが存在する時に測定の正確性を保障し難い場合がある。特に水素ガスと反応性のあるガス、例えば、酸素ガスが存在する場合、ガス分離膜132を通して密閉空間140内に入ってくる水素ガスと反応して水蒸気を作って水素分圧を下げることによって、液体内の溶存水素ガス濃度を正確に測定するのを妨げる。よって、本発明に係る水素センサ素子100は選択的に密閉空間140内に存在する妨害ガスを外部に排出させるポンピング部120を含むことができる。
【0074】
図11は、密閉空間140内の酸素ガスを外部に排出させるポンピング部120の好ましい構造を説明するための概略的な断面図である。以下、
図11を参照してポンピング部120の構造を説明するが、本発明に係るポンピング部120の構造がこれに限定されるものではない。
【0075】
ポンピング部120は、ポンピングセル310、スペーサ320、ポンピングセルヒーティング部330を含んで構成される。ポンピングセル310は酸素イオン伝導体311の両端に第1ポンピング電極312および第2ポンピング電極313が形成された構造であり、第2ポンピング電極313が正(+)の電極になるように第1、2ポンピング電極312,313の間にポンピング電源340から一定電圧または電流を印加すれば、第1ポンピング電極312側の酸素ガスが酸素イオン伝導体311を通して移動して第2ポンピング電極313側に移動する。
【0076】
この時、ポンピングセル310の円滑な動作のためには所定温度に加熱する必要があり、ポンピングセルヒーティング部330はこのような加熱のための構成である。ポンピングセルヒーティング部330はスペーサ320によってポンピングセル310から所定距離離隔して外部空気と連通する酸素排出空間350を形成するようになっており、ポンピングセルヒーティング部330とスペーサ320は
図2のセンサ部110に備えられたヒーティング部230およびスペーサ220と同様な構成を用いてもよい。
【0077】
図11のポンピング部120は、第1ポンピング電極312が密閉空間140内に位置し、第2ポンピング電極313が酸素排出空間350を通して外部空気と連通するようにハウジング130のハウジング胴体131に結合され、この時、その結合部位にはシール部材133でシーリングされる。このように結合された状態で、第2ポンピング電極313が正(+)の電極になるように第1、2ポンピング電極312,313の間にポンピング電源340から一定電圧または電流を印加すれば、第1ポンピング電極312側、すなわち、密閉空間140内に存在する酸素ガスが酸素排出空間350を通して外部に排出される。この時、密閉空間140内の酸素分圧はネルンストの式によって予測が可能であり、例えば、ポンピングセル310を700℃に加熱した状態で、第1、2ポンピング電極312,313の間に1Vの固定電圧を印加すれば、密閉空間140内の酸素分圧は約2.15×10
−10気圧に落ちる。これは約2ppbに該当する気圧として酸素が事実上ない状態であると言えるため、このようなポンピング部120を備えた本発明に係る水素センサ素子100は酸素ガスの妨害なしに正確な水素ガス濃度を測定できるようになる。水素ガス濃度の正確な測定のためには、密閉空間140内の酸素濃度が約数百〜数千ppmになるようにポンピング部120を作動させることが好ましい。
【0078】
一方、
図11のポンピングセル310は一種の固体電気化学式酸素センサであるため、ポンピング部120は密閉空間140内の酸素ガス濃度を測定する用途として用いられることもできる。すなわち、酸素イオン伝導体311の第1、2ポンピング電極312,313の間にポンピング電源340から電圧または電流を印加する代わりに、別途に備えられた起電力測定部(図示せず)を用いて第1、2ポンピング電極312,313の間の起電力を測定すれば、次の式(4)によって密閉空間140内の酸素ガス分圧(Po
2)を算出することができる。
Po
2=0.21×exp(4FE/RT)−−−(4)
【0079】
式(4)において、Rは気体定数、Fはファラデー定数、Tは測定温度であって、いずれも定数であるため、起電力測定部を用いて測定された第1、2ポンピング電極312,313の間の起電力(E)値から密閉空間140内の酸素ガス分圧を計算することができる。このようなポンピング部120の酸素ガス濃度センシング特性は密閉空間140内の酸素ガス分圧が所定値以下に減少した場合にセンサ部110を用いた水素ガス濃度を測定するようにするのに利用することができ、このような測定方法については
図18を用いて後述する。
【0080】
また、
図1に図示してはいないが、本発明に係る水素ガスセンサ100のハウジング130の内部には充填物が満たされる。このようにハウジング130の内部に充填物が満たされれば、ヒーティング部230,330から発生する高熱がハウジング胴体131やガス分離膜132などの他の構成に伝達されるのが遮断され、センサ部110,510,610,710,810,910およびポンピング部120の温度が一定に維持され、特に密閉空間140内の有効体積が減少して水素センサ素子100の反応時間が短縮されるという効果がある。充填物としてはアルミナなどのセラミックパウダーや金属パウダーを用いることができる。
【0081】
図12および
図13を参照して本発明の第2実施形態による水素センサ素子200を説明する。本発明の第2実施形態による水素センサ素子200はセンサ部とポンピング部が一体に形成されているという点で第1実施形態とは差がある。
【0082】
図12は本発明の第2実施形態による水素センサ素子の概略的な断面図であり、
図12を参照して説明すれば、本発明の第2実施形態による水素センサ素子200はセンサ部400およびハウジング130を含んで構成される。ここで、センサ部400は、周囲の水素ガス濃度を測定するための水素センサ機能、すなわち、第1実施形態のセンサ部110と同一な機能と共に、密閉空間140内の酸素ガスを外部に排出する機能、すなわち、第1実施形態のポンピング部120の機能を同時に行う構成であり、前述したように密閉空間140内の酸素ガス濃度を測定するための酸素センサ機能も行うことができる。
【0083】
また、ハウジング130はセンサ部400の一端を液体および外部空気から隔離させる密閉空間140を形成するようにするための構成であり、ハウジング130によってセンサ部400は液体から隔離されるが、ハウジング130の液体内に挿入される少なくとも一部分に備えられたガス分離膜132を通して溶存水素ガスが密閉空間140内に透過する。それにより、センサ部400は液体に直接に接触しなくても溶存水素ガス濃度を測定できるようになる。センサ部400を除いた他の構成は第1実施形態による水素センサ素子100とその構成が同様であるため、以下では
図13を参照して第2実施形態によるセンサ部400の好ましい構造を詳細に説明する。
【0084】
図13に示すように、センサ部400は、酸素イオン伝導体411、酸素イオン伝導体411の一面に接合されている水素イオン伝導体412、酸素イオン伝導体411の他面、すなわち、基準ガス通路460側に形成されている基準電極413、および水素イオン伝導体412の表面に形成されている検知電極414を含むセンシング部410と、センシング部410を所定温度に加熱するためのヒータ部430、そしてセンシング部410とヒータ部430を所定間隔離隔させ、その間に基準ガス通路460を形成するためのスペーサ420を含むことができる。基準電極413と検知電極414はリード線441を介して起電力測定部440に電気的に連結され、起電力の測定によって水素ガス濃度が測定されることができ、その原理は第1実施形態で説明したものと同様である。
【0085】
スペーサ420はセンシング部410とヒータ部430との間に挿入されて基準電極413が基準ガスと連通するように基準ガス通路460を形成するための構成であり、アルミナ(Alumina)で形成されることができる。この時、基準ガスは外部空気であることが好ましい。
【0086】
ヒータ部430はセンシング部410をセンシング温度にまで加熱するための構成であり、アルミナなどの絶縁物質からなるヒータ基板431にヒータ線432が形成された形態であってもよく、その構成は第1実施形態のヒータ部230と同様である。
【0087】
本発明の第2実施形態によるセンサ部400は、密閉空間140内の酸素ガスを基準ガス通路460を通して外部に排出するポンピング部の機能も共に行うことができるように構成されている。すなわち、酸素イオン伝導体411の水素イオン伝導体412が形成された方向の一面(すなわち、密閉空間に露出される一面)には第1ポンピング電極415が形成され、酸素イオン伝導体411の基準ガス通路460に露出される他面には第2ポンピング電極416が形成され、第1、2ポンピング電極415,416はリード線451によってポンピング電源450に連結されている。この時、第2ポンピング電極416は別途に形成せず、基準電極413を第2ポンピング電極416として用いることもできる。
【0088】
このような構造のセンサ部400は、
図12に示すようにシール部材133によってシーリングされた状態でハウジング130に結合され、この時、水素イオン伝導体412および検知電極414、そして第1ポンピング電極415は密閉空間140内に含まれる。このような構成の水素センサ素子200を
図12のように液体に挿入した状態で、第1、2ポンピング電極415,416の間に第2ポンピング電極416が正(+)になるようにポンピング電源450によって電圧または電流を印加すれば、密閉空間140内に存在する酸素ガスが基準ガス通路460を通して外部に排出される。このような酸素ガスの排出は、密閉空間140内の酸素濃度が約数百〜数千ppmになるまで行うことが好ましい。
【0089】
このようなポンピング動作によって密閉空間140内の酸素ガスを排出させ、密閉空間140内の水素ガス分圧が安定化する程度の時間が経過した後には、起電力測定部440によって基準電極413と検知電極414間の起電力を測定することによって密閉空間140内の水素ガス分圧を測定し、それより液体内の溶存水素ガス濃度を算出する。
【0090】
以上で説明した第2実施形態による水素センサ素子200はセンサ部400にポンピング電極およびポンピング電源を備えることによって別途のポンピング部を備える必要がないため、第1実施形態による水素センサ素子100に比べてその構造が簡単になるという長所がある。また、第1実施形態で説明したものと同様に、第1ポンピング電極415と第2ポンピング電極416間の起電力を測定することによって、式(4)によって密閉空間140内の酸素ガス分圧を測定することができ、その測定値が予め設定された基準値より高い場合、第1、2ポンピング電極415,416の間にポンピング電源450を用いて電圧または電流を印加することによって密閉空間140内の酸素ガスを外部に排出させることができる。
【0091】
本発明に係る水素センサ素子100,200は液体内の溶存水素ガス濃度を測定する広範囲の用途として用いられることができ、特にオイル内の溶存水素ガス濃度を測定してオイルの劣化有無をリアルタイムで簡単に測定するのに有用に用いられることができる。
図14は、本発明に係る水素センサ素子を用いてオイル内の溶存水素ガス濃度を測定した結果グラフである。
図14(a)はオイル内の水素ガス濃度を変化させながら時間に応じた起電力(EMF)値を測定した結果グラフであり、
図14(b)は起電力値を水素ガス濃度の関数で示したグラフである。
【0092】
図14より、オイル内の溶存水素ガス濃度が増加するほど、本発明に係る水素センサ素子で測定される起電力値が増加することが確認された。
【0093】
本発明に係る水素センサ素子100,200は、液体内の溶存水素ガス濃度を測定しようとする時ごとに液体内に挿入して用いてもよいが、液体を収容している容器に設置しておいて用いてもよい。
図15は、本発明の第2実施形態による水素センサ素子200を測定対象である液体が収容された容器に設置した状態を概略的に示す図である。
【0094】
図15を参照して説明すれば、液体が収容された容器510の一側面には開口部520が形成されており、本発明に係る水素センサ素子200はガス分離膜132が開口部520に接するように容器510に設置される。この時、水素センサ素子200は修理や取替えなどの目的で脱着しなければならない場合がありうるため、容器510に脱付着可能に設置されることが好ましく、この場合、液体が開口部520を通して流出されないように開口部520を開閉できる開閉バルブ550が開口部に設置されることが好ましい。水素センサ素子200が開口部に設置された後には液体がガス分離膜132に接するように開閉バルブ550をオープンした後に使用してもよく、ガス分離膜132の劣化を防止するために測定時にのみ開閉バルブ550を手動または自動でオープンしてもよい。
【0095】
図15のように水素センサ素子200を容器510に設置する場合、開口部520と水素センサ素子200の結合部位に外部空気が流入されたり液体が流出されたりするのは好ましくないため、水素センサ素子200と開口部520は気体および液体密封可能に結合された方がよく、
図16はこのような結合方式の一例を示す図である。
図16のように開口部520には段差部521が形成され、ハウジング胴体131とガス分離膜132との間、段差部521とガス分離膜132との間にはO−リング(O−ring)などの密封材134が挿入されることができる。
図16を
図10と比較すると、
図16の結合構造の場合、開口部520が
図10の固定キャップ135の役割をしていると言える。この時、開口部520とハウジング胴体131には螺旋が形成されてねじ結合されることができる。しかし、これは例示的なものに過ぎず、ハウジング胴体131と開口部520の外部に別途の締結部材(図示せず)を備えるなど様々な結合方式が用いられることができる。
【0096】
図15のような水素センサ素子200の設置構造は、水素センサ素子200を液体が収容されている容器に設置しておいた状態で、周期的または非周期的に溶存水素ガス濃度を測定しようとする時に特に有用である。例えば、各種の機械装置のオイル類、例えば、変圧器オイルなどは周期的に劣化有無をチェックすることが好ましく、
図15のような方式で水素センサ素子200を変圧器に設置しておく場合、測定時ごとに水素センサ素子200を変圧器オイルに挿入する必要なく簡便に測定を行うことができるという長所がある。
図15では第2実施形態による水素センサ素子200が設置された場合を例に挙げて説明したが、第1実施形態による水素センサ素子100も同様な方式で使用できることは明らかである。
【0097】
図15には開口部520が容器510の側面に形成されたものとして図示したが、本発明はこれに限定されず、開口部520は容器510の上面または下面に形成されてもよい。開口部520が容器510の上面に形成される場合にはガス分離膜132が液体と直接に接しないが、Sievert法則によれば、液体に溶けられている水素量は気化した水素分圧の平方根に比例するため、ガス分離膜132を透過して入ってきた水素分圧を測定することによって同一の原理によって溶存水素ガス濃度を算出することができる。開口部520が容器510の上部にある場合には、開閉バルブ550を省略できるという長所がある。
【0098】
一方、水素センサ素子200が容器510に設置されている場合、
図15に示すように、水素センサ素子200の動作を全般的に制御するための制御装置600を共に設置することが好ましい。制御装置600は水素センサ素子200のセンサ部400に連結されてセンサ部400の全般的な動作を制御する構成であり、選択的にはセンサ部400付近の温度を測定するための温度センサ530、ガス分離膜132付近の液体の流入有無を検知するための液体流入センサ540を水素センサ素子200にさらに備え、これらセンサ530,540を制御装置600に連結することもできる。また、制御装置600は容器510の開口部520に設置される開閉バルブ550にも連結されて、開閉バルブ550の開閉動作を制御するようにすることもできる。温度センサ530としてはサーミスタ、熱電対、白金抵抗温度センサなどを用いることができる。
【0099】
図17は制御装置600の例示的な機能ブロック図であり、制御装置600は測定部610、制御部620、表示部630および送信部640を含むことができる。測定部610は、センサ部400、温度センサ530、液体流入センサ540などに電気的に連結され、各センサの測定結果の入力を受けて制御部620に提供する構成である。制御部620は測定部610の測定結果に基づいて水素センサ素子200の動作を制御する構成であり、例えば、温度センサ530が測定した温度の伝達を受けた後、センサ部400が予め定められた測定温度に達することができるように水素センサ素子200のヒータ部430を制御するか、第1、2ポンピング電極415,416の間の起電力の測定を通じた密閉空間140内の酸素ガス分圧の測定結果の伝達を受けた後、密閉空間140内の酸素ガスの排出有無または水素濃度の測定開始有無を決定して制御するか、または水素ガス分圧の測定結果の伝達を受けて溶存水素ガス濃度を演算した後に表示部630に表示したり送信部640を介して有無線送信したりするように制御することができる。また、液体流入センサ540が備えられた場合、制御装置600は、測定部610を介して液体流入センサ540のセンシング結果の伝達を受け、液体が密閉空間140内に流入されたと判断される場合、それを表示部630に表示したり、送信部640を用いて有無線送信したりするようにすることができる。また、表示部630の他に別途の警報部(図示せず)を備えて液体が流入されたことを知らせる警報音などを発生するようにすることもでき、この時、制御部620は水素ガスセンサ100,200の動作を中断させることが好ましい。
【0100】
図18は、本発明に係る溶存水素ガス濃度測定方法の例示的なフローチャートである。
図18を参照して説明すれば、本発明に係る溶存水素ガス濃度測定方法は、温度センサ530を用いてセンサ部400の温度を測定するステップ(S10)、測定された温度値に基づいて予め設定された測定温度になるようにヒータ部430を制御するステップ(S20)、密閉空間140内の酸素ガス濃度を測定するステップ(S30)、測定された酸素ガス濃度が設定値、例えば、1000ppm以下であるか否かを判断するステップ(S40)、S40ステップにおける判断の結果、1000ppm以上の場合、酸素ガスをポンピングして密閉空間140内の酸素ガスを外部に排出するステップ(S50)、S40ステップにおける判断の結果、酸素ガス濃度が1000ppm以下の場合、水素ガス濃度を測定するステップ(S60)、および測定された水素ガス濃度を送信部を介して有線または無線で送信するステップ(S70)を含むことができる。
【0101】
このような測定方法によれば、予め設定された測定条件、すなわち、好ましい測定温度および密閉空間内の酸素ガス濃度に達した後に測定が開始されるため、測定の正確性および再現性を確保することができる。勿論、本発明に係る溶存水素ガス濃度を測定するために
図18の全ステップが同一に行われなければならないということではなく、一部のステップが省略または変更されてもよい。
【0102】
本発明に係る溶存水素ガス測定方法は周期的に行われるようにすることができる。すなわち、制御装置600にタイマーが備えられ、測定周期が到来したと判断される場合、
図18のステップが順次行われるようにプログラミングされていてもよい。この場合、測定結果が遠距離にあるユーザに有線または無線で送信されるため、例えば、オイルの劣化有無がより体系的に管理できるという長所がある。
【0103】
以上で説明した実施形態ではガス分離膜を含み且つセンサ部と結合されるハウジングを水素センサ素子の必須構成として説明したが、測定対象である液体、測定目的などによってはハウジングを備えることなくセンサ部が直接液体に接するように使用することもできる。すなわち、本発明の第3実施形態による水素センサ素子は、第1、2実施形態の水素センサ素子からハウジングが省略されていることを特徴とする。このような第3実施形態による水素センサ素子によれば、検知電極がオイルなどの液体に挿入されて液体内の溶存水素ガスと直接に接触するため、ハウジング内部の密閉空間の水素分圧が平衡になるまで待つ必要がないために反応時間が向上するという長所がある。
【0104】
本発明の第4実施形態による水素センサ素子は、第3実施形態と同様に第1、2実施形態においてハウジングを省略し、その代わりに検知電極が液体に直接接触するのを防止するために、少なくとも検知電極を覆う保護材710を備えることを特徴とする。
図2に示された第1実施形態によるセンサ部110の検知電極214を保護材710で覆った第4実施形態による水素センサ素子700を
図19に示す。
【0105】
図19のように検知電極214を覆うように保護材710を形成すれば、ヒータ部230によって加熱されたセンシング部210が外部に熱を奪われるのを防いで少なくともセンシング部230の温度を一定に維持するのに有利であり、検知電極214が液体と直接に接触することによって劣化が促進されるのを防止する付随的な効果も期待することができる。
【0106】
本発明の第4実施形態による水素センサ素子700によって液体内の水素ガス濃度を測定できるようにするためには液体内の水素ガスが検知電極214にまで到達しなければならないため、保護材710は少なくとも水素ガスが通過できる構成であるべきであり、このために多数の気孔が含まれた多孔性構造、例えば、多孔性構造を有した高分子材料、多孔性セラミック、多孔性黒鉛または金属粉末体、または水素ガスに選択的透過性を有するガラスメンブレイン層などで形成することができる。保護材710は液体内に挿入される部分であるために十分な強度を持ってその形態を維持できる物質で形成しなければならず、測定しようとする液体に溶けたり反応してはいけないため、液体の種類に応じて適切な物質を選択して形成しなければならない。
【0107】
図19では本発明の第1実施形態によるセンサ部110に保護材710を形成するものとして説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の第2実施形態によるセンサ部400に保護材710を形成できることは勿論である。この場合には保護材710が検知電極414と第1ポンピング電極415を共に覆うように形成することが好ましい。
【0108】
以上、限定された実施形態および図面を参照して説明したが、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形実施が可能であるということは通常の技術者に明らかである。よって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲の記載およびその均等範囲によって定められなければならない。