(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、ごみ焼却用のボイラは、不具合発見のための定期的なボイラチューブの肉厚測定を必要としている。一般的なボイラチューブの肉厚測定方法としては、水浸UT法等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボイラチューブを切断することなくボイラチューブの肉厚を測定する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、肉厚測定を行う超音波プローブ(センサ)を案内するガイド管を用いている。ガイド管は、管寄せに形成された検査孔から管寄せ内に導入された後、その先端がボイラチューブに導入される。
【0004】
その後、検査孔側からガイド管内にセンサケーブル(フレキシブル管)に接続された超音波プローブを導入し、超音波プローブを前進させる。これによって、超音波プローブはガイド管内に沿って前進した後、ガイド管に案内されるようにしてボイラチューブ内に導入される。
【0005】
また、特許文献2には、センサケーブルとボイラチューブとの摩擦を低減するために、センサケーブルに多点支持ローラ(支持装置)を取り付ける手法が記載されている。この多点支持ローラは、センサケーブルが挿通される複数の中空のユニバーサルジョイントと、各々のユニバーサルジョイントの外周に取り付けられている複数のローラと、を有している。各々のローラは、管の内面に接し、管軸方向に転がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2に記載の多点支持ローラでは、ユニバーサルジョイントの内部を通るセンサケーブルは、ユニバーサルジョイントの長さの分だけ曲がらない状態となる。よって、センサケーブルの曲げ性が悪くなり(曲げ半径が大きくなり)、検査対象であるボイラチューブの曲げ半径が小さい場合、途中で引っ掛かってセンサを挿入できなくなる虞がある。
【0008】
この発明は、剛体の管(ボイラチューブ)の内部に管の軸線方向に沿うように挿入されるフレキシブル管(センサケーブル)を支持する支持装置において、フレキシブル管の曲げ半径を小さくすることができるフレキシブル管の支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、フレキシブル管の支持装置は、剛体の管の内部に前記管の軸線方向に沿うように挿入されるフレキシブル管の外周に取り付けられる支持具本体と、前記支持具本体と前記管との間で前記管の周方向に間隔をあけて設けられるとともに、前記支持具本体に回転自在に取り付けられて前記管の内面に接触する複数のローラと、を有し、前記支持具本体は、前記フレキシブル管の外径より大径の貫通孔が形成された第一本体部と、前記貫通孔と前記フレキシブル管との間の径方向の隙間に挿入される楔部を含む第二本体部と、を有する。
【0010】
このような構成によれば、楔部が隙間に挿入されて楔部がフレキシブル管の外周面に押し付けられることによって、支持具本体をフレキシブル管に固定することができる。また、このような構造とすることによって、ローラが取り付けられる支持具本体の軸線方向の寸法を小さくすることができ、フレキシブル管の曲げ半径を小さくすることができる。
【0011】
上記フレキシブル管の支持装置において、前記支持具本体の前記軸線方向の寸法は、前記ローラの外径より小さくてよい。
【0012】
このような構成によれば、支持具本体がフレキシブル管に接触し、摩擦抵抗となるのを防止することができる。また、フレキシブル管において、支持具本体により拘束される長さを短くすることができる。
【0013】
上記フレキシブル管の支持装置において、前記貫通孔は、前記軸線方向一方側に向かって漸次拡径するテーパ形状をなし、前記楔部は、前記軸線方向一方側に向かって漸次拡径するテーパ形状をなす外周面と、前記フレキシブル管の外径よりも僅かに大きい内径を有する内周面と、を有してよい。
【0014】
このような構成によれば、楔部をより容易に貫通孔とフレキシブル管との間の隙間に挿入することができる。
【0015】
上記フレキシブル管の支持装置において、前記第一本体部は、周方向に隣り合う前記ローラ同士の間に配置されて、前記ローラの回転軸の端部が軸線方向から挿入される溝が形成された軸受部を有し、前記第二本体部は、前記軸受部に挿入された前記回転軸を軸線方向から保持する保持部を有してよい。
【0016】
このような構成によれば、より簡素な構造でローラを保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、楔部が隙間に挿入されて楔部がフレキシブル管の外周面に押し付けられることによって、支持具本体をフレキシブル管に固定することができる。また、このような構造とすることによって、ローラが取り付けられる支持具本体の軸線方向の寸法を小さくすることができ、フレキシブル管の曲げ半径を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のフレキシブル管の支持装置5を有する管肉厚測定装置1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る管肉厚測定装置1は、ボイラ50におけるボイラチューブ52の肉厚を測定する際に用いられる。管肉厚測定装置1は、例えば、超音波プローブ等のセンサを用いてボイラチューブ52の肉厚を測定する。
【0020】
ボイラ50は、管寄せ51と複数のボイラチューブ52とを備えている。ボイラチューブ52は水蒸気の流路となる複数の剛体の管であり、管寄せ51の延在方向に沿って配列されて一端が管寄せ51に接続されている。各々のボイラチューブ52は管寄せ51と連通しており、それぞれ管寄せ51に対して直交するように延在している。
【0021】
管寄せ51には、点検用の孔である検査孔53が管寄せ51の延在方向に離間して複数開口している。検査孔53とボイラチューブ52とは互いにねじれの位置関係となるように配置されている。
ボイラチューブ52は、直線状に延在する部分と、直線状に延在する部分同士を接続する屈曲部52aとを有している。ボイラチューブ52の内径は、例えば、68mmである。
センサプローブ2は、検査孔53及び管寄せ51を介してボイラチューブ52に導入される。
【0022】
次に、検査対象であるボイラチューブ52の肉厚を測定する管肉厚測定装置1について説明する。
管肉厚測定装置1は、データ収集機器31と、データ収集機器31が収集したデータを解析するデータ解析装置32と、データ収集機器31と接続されたケーブル巻取装置33と、ケーブル巻取装置33から排出されるフレキシブル管であるケーブル30と、ケーブル30の先端に取り付けられたセンサであるセンサプローブ2と、ケーブル30の外周に取り付けられている支持装置5と、センサプローブ2の案内装置であるガイド管34とを有している。
【0023】
データ収集機器31は、センサプローブ2によって測定されたボイラチューブ52の肉厚データがケーブル30を介して入力される機器である。即ち、データ収集機器31は、ボイラチューブ52の肉厚データを収集する役割を有している。
データ解析装置32はデータ収集機器31が収集したボイラチューブ52の肉厚データを解析するために使用されるコンピュータである。
【0024】
ケーブル30は、剛体のボイラチューブ52の内部にボイラチューブ52の軸線方向Daに沿うように挿入される。ケーブル30は例えば金属やビニール等からなる長尺状のフレキシブル管であって、全長にわたって屈曲可能とされている。ケーブル30の外径は、例えば、12mmである。ケーブル30は、センタープローブ2とデータ収集機器31とを接続するデータ信号配線や、センサ本体部3を水圧で管肉厚測定時に回転させるための水供給ホースを内包している。
センサプローブ2は、ケーブル30の先端部に設けられており、超音波を発することによってボイラチューブ52の肉厚データを測定する。センサプローブ2は、円筒形状のセンサ本体部3と、センサ本体部3をボイラチューブ52内の中心位置に保持する調芯機構4とを、有している。なお、調芯機構は、拡縮可能であってもよい。
【0025】
ケーブル巻取装置33は、ケーブル30の後端に接続されており、ボイラチューブ52内に挿入されたケーブル30を巻き取るために使用される。
【0026】
ガイド管34は、ケーブル30及びセンサプローブ2がボイラチューブ52へ導入されるのを案内する管であって、ボイラチューブ52の肉厚の測定に先立って管寄せ51内に配置される。ガイド管34は、互いにねじれの位置関係となる検査孔53とボイラチューブ52とを接続するように配置される。
【0027】
ガイド管34は、蛇腹状をなすフレキシブルホースから構成されている。これによってガイド管34は、伸縮自在かつ屈曲自在とされる。ガイド管34は、ガイド管34が屈曲した際には外力が作用しない限り屈曲状態を保持することができるようになっている。
ガイド管34は、検査孔53内から管寄せ51内に挿入され、管寄せ51内にて屈曲しながら延在し、その先端がボイラチューブ52に接続される。
【0028】
支持装置5は、ケーブル30とボイラチューブ52との摩擦を低減するようにケーブル30を支持する装置である。
図2に示すように、支持装置5は、ケーブル30がボイラチューブ52の径方向の中心位置に位置するようにケーブル30を支持する。
支持装置5は、ケーブル30のセンサプローブ2側の端部近傍に、所定間隔(例えば、50mm)をあけて複数が取り付けられている。
【0029】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の支持装置5は、ケーブル30の外周に取り付けられる支持具本体6と、支持具本体6に取り付けられた複数のローラ7と、を備えている。支持具本体6は、ケーブル30に、ケーブル30の延在方向に移動不能に固定されている。
複数のローラ7は、支持具本体6とボイラチューブ52との間でボイラチューブ52の周方向に間隔をあけて設けられている。ローラ7は、支持具本体6に回転自在に取り付けられている円柱形状の部材である。ローラ7の回転軸9は、ケーブル30の軸線Aと直交する方向に延在しており、ローラ7は軸線方向Daに転がる。
【0030】
ローラ7は、円柱形状のローラ本体8と、ローラ本体8の軸線と同軸をなす回転軸9とを有している。
ローラ本体8の外周面8aは、端部(回転軸9の延在方向の端部)に向かうにしたがって漸次縮径するようにローラ本体8の軸線を含む断面形状が円弧状をなしている。ローラ本体8の外周面8aの断面形状は、ボイラチューブ52の内周面に沿うか、ボイラチューブ52の内周面の半径よりも小さな曲率半径となるように形成されている。
各々のローラ本体8の少なくとも一部は、ボイラチューブ52の内周面に接触している。
【0031】
支持具本体6は、ケーブル30の外径より大径の貫通孔14(
図4及び
図5参照)が形成された第一本体部11と、貫通孔14とケーブル30との間の径方向の隙間(
図9参照)に挿入される楔部21(
図7参照)を有する第二本体部12と、を有している。支持具本体6は、第一本体部11の貫通孔14に第二本体部12の楔部21を挿入した後、第一本体部11に第二本体部12をネジ留めすることによって組み立てられる。
【0032】
図4及び
図5に示すように、第一本体部11は、貫通孔14が形成された筒部13と、筒部13から軸線Aを中心とした径方向外側に突出する複数の軸受部15と、を有している。軸受部15には、ローラ7の回転軸9(
図3参照)を軸線方向他方側Da2から支持するとともに、回転軸9の径方向及び周方向の移動を拘束する、溝16が形成されている。
【0033】
軸受部15は、軸線方向一方側Da1を向く平坦面である第一平坦面15aを有している。溝16は、第一平坦面15aに軸線方向他方側Da2に凹となるように形成されている。周方向に隣り合う軸受部15に形成されている一対の溝16が協働して、回転軸9を支持する。これにより、ローラ7が周方向に隣り合う軸受部15の間に配置される。
【0034】
第一本体部11の筒部13の軸線方向一方側Da1を向く面には、複数のネジ孔17が形成されている。ネジ孔17は軸線方向一方側Da1を向く面から軸線方向他方側Da2に向かって形成されている。
【0035】
貫通孔14の内周面は、軸線方向一方側Da1に向かって漸次拡径するテーパ形状をなしている。換言すれば、貫通孔14の内径は、軸線方向一方側Da1に向かって漸次拡径している。貫通孔14の内周面のテーパ角度は、例えば、1/10〜1/20である。
貫通孔14の軸線方向他方側Da2に端部には、面取りである遊び部18が形成されている。遊び部18の形状は、C面取りであってもR面取りであってもよい。
【0036】
図6及び
図7に示すように、第二本体部12は、環状のリング部20と、リング部20の内周側端部より軸線方向他方側Da2に突出する円筒形状の楔部21と、リング部20から軸線Aを中心とする径方向外側に突出する複数の保持部22と、を有している。
保持部22は、第一本体部11の軸受部15の第一平坦面15aと面接触する平坦面である第二平坦面22aを有している。第二平坦面22aは軸線方向他方側Da2を向く面である。
リング部20には、第一本体部11の筒部13のネジ孔17に対応する複数の孔23が形成されている。孔23は、使用するネジ25に対応した形状となっている。本実施形態は、ネジ25(
図8参照)として、皿ネジを使用するため、孔23には皿ザグリ加工が施されている。
【0037】
楔部21は、軸線方向一方側Da1に向かって漸次拡径するテーパ形状をなす外周面21aと、ケーブル30(
図2参照)の外径よりも僅かに大きい内径を有する内周面21bと、を有している。換言すれば、楔部21の外周面21aの外径は軸線方向一方側Da1に向かうにしたがって漸次拡径している。外周面のテーパ角度は、第一本体部11の筒部13の貫通孔14の内周面のテーパ角度と同じである。
【0038】
図9に示すように、楔部21の外周面21aと保持部22の第二平坦面22aとの間の交差部には、周方向の全周にわたってスリット24が形成されている。スリット24は、外周面21aと第二平坦面22aとの間の交差部から径方向内側に向かうに従って軸線方向一方側Da1に傾斜するように形成されている溝である。
【0039】
図2に示すように、支持具本体6(第一本体部11、第二本体部12)は、軸線方向Daの寸法Lがローラ7の直径Dよりも小さくなるように形成されている。例えば、ローラ7の直径は、14mm、支持部本体の軸線方向Daの厚みは、L=13mmである。
【0040】
次に、支持装置5の組み立て方法について説明する。
図8は、支持装置5の分解図である。
支持装置5の組み立て方法は、第一本体部11の貫通孔14にケーブル30を挿入するケーブル挿入工程と、第一本体部11の溝16にローラ7の回転軸9を挿入するローラ回転軸挿入工程と、第一本体部11の貫通孔14とケーブル30の外周面30aとの間に、第二本体部12の楔部21を打ち込む楔部打ち込み工程と、第一本体部11と第二本体部12とをネジ25を用いて固定するネジ留め工程と、を有している。
【0041】
図9に示すように、楔部打ち込み工程では、貫通孔14の内周面とケーブル30の外周面30aとの間の隙間Gに、楔部21が挿入される。これにより、楔部21の内周面21bとケーブル30の外周面30aとが面接触するとともに、楔部21がケーブル30の外周面に押し付けられる。
ネジ留め工程では、第二本体部12の第二平坦面22aと第一本体部11の第一平坦面15aとが面接触するように接近する。これにより、楔部21がより貫通孔14とケーブル30との間の隙間Gに食い込む。楔部21が隙間Gに食い込むことによって、支持装置5(支持具本体6)が軸線方向Daに移動不能となる。
また、第二本体部12の第二平坦面22aが第一本体部11の溝16が形成されている第一平坦面15aを覆うことによって、ローラ7が回転自在に取り付けられる。
【0042】
上記実施形態によれば、楔部21が貫通孔14とケーブル30との間の隙間Gに挿入されて楔部21がケーブル30の外周面30aに押し付けられることによって、支持具本体6をケーブル30に固定することができる。また、このような構造とすることによって、ローラ7が取り付けられる支持具本体6の軸線方向Daの寸法L(
図2参照)を小さくすることができ、ケーブル30の曲げ半径を小さくすることができる。
【0043】
また、支持具本体6の軸線方向Daの寸法をローラ7の外径より小さくしたことによって、支持具本体6がボイラチューブ52に接触し、摩擦抵抗となるのを防止することができる。
また、ケーブル30において、支持具本体6により拘束される長さを短くすることができる。これにより、
図10に示すように、ケーブル30の曲げ半径を小さくすることができる。
図10に示した例は、直径12mmのケーブル30に、互いの間隔Sが50mmとなるように、支持装置5を取り付けた例である。参考までに、ケーブル30の最小曲率半径Rは38.4mmとなる。
【0044】
また、テーパ形状の貫通孔14に、この形状に対応する形状の楔部21を打ち込む構成としたことによって、楔部21をより容易に貫通孔14とケーブル30との間の隙間Gに挿入することができる。
また、第一本体部11の軸受部15の溝16にローラ7の回転軸9を挿入し、第二本体部12の保持部22で回転軸9を保持する構造としたことによって、より簡素な構造でローラ7を保持することができる。
【0045】
また、支持具本体6の第一本体部11に遊び部18が形成されていることによって、より支持具本体6により拘束されるケーブル30の長さが短くなって、ケーブル30をより曲げやすくすることができる。
また、第二本体部12の楔部21と保持部22との間にスリット24が形成されていることによって、楔部21が曲げやすくなる。これにより、楔部21を隙間Gに食い込みやすくすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、各々の支持装置5に取り付けられるローラ7の数を6個としたが、これに限ることはない。ローラ7の数は3つ以上であればよい。
また、上記実施形態では、楔部21を周方向に連続した形状としたが、これに限ることはなく、楔部21を周方向に間隔をあけて複数設けてもよい。
【解決手段】剛体の管の内部に管の軸線方向に沿うように挿入されるフレキシブル管の外周に取り付けられる支持具本体6と、支持具本体6と管との間で管の周方向に間隔をあけて設けられるとともに、支持具本体6に回転自在に取り付けられて管の内面に接触する複数のローラ7と、を有し、支持具本体6は、フレキシブル管の外径より大径の貫通孔14が形成された第一本体部11と、貫通孔14とフレキシブル管との間の径方向の隙間に挿入される楔部21を含む第二本体部12と、を有するフレキシブル管の支持装置5を提供する。