特許第6165466号(P6165466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165466
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】防音構造
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20170710BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20170710BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G10K11/16 110
   G10K11/168
   B60R13/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-37679(P2013-37679)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-164259(P2014-164259A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山極 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 善三
(72)【発明者】
【氏名】杉本 明男
(72)【発明者】
【氏名】向井 良和
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−134180(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/007834(WO,A1)
【文献】 特開2004−062074(JP,A)
【文献】 特開2011−152918(JP,A)
【文献】 特開2004−264372(JP,A)
【文献】 特開2005−099789(JP,A)
【文献】 特開2006−199276(JP,A)
【文献】 特開2007−302243(JP,A)
【文献】 特開2012−013912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
B60R 13/08
G10K 11/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内と、車室外あるいはエンジンルームを仕切る防音構造であって、
パネルと、
前記パネルに対して車室内側に積層された防音材と、
前記パネルと前記防音材との間に設けられ、前記パネルに接合されて前記パネルを補強する補強材と、
前記パネルと前記補強材との間に形成された空気層と、
を備え、
前記防音材は、繊維材、または発泡フォーム材の表面に表皮材を重合した複合材から成り、
前記補強材の材質は金属で、板厚:t(mm)が、0.8≦t≦1.2であり、多数の貫通孔を有することを特徴とする、防音構造。
【請求項2】
請求項1に記載の防音構造において
記補強材に設けられる前記貫通孔の孔径:d(mm)は、0.7t≦d≦1.3tであることを特徴とする、防音構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防音構造において、
前記貫通孔の開口率が1%以下であることを特徴とする、防音構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の防音構造において、
前記貫通孔の開口率が0.3%以下であることを特徴とする、防音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防音構造としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の自動車用フロアカーペットは、マット状素材を押圧成形したものである。
【0003】
また、その他の防音構造としては、例えば特許文献2に記載のものがある。特許文献2に記載の自動車用フロアカーペットは、密度および素材の異なる緩衝材が複数積層したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−2352号広報
【特許文献2】特開平6−247202号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載の防音構造は、防音材の重量によって遮音性が決定される。従って、高い遮音性を得るためには重い防音材を使用しなければならないため、防音構造は総重量が増加する。
また、遮音性を高めるには通気性の低い素材の防音材を使用しなければならない。しかしながら、通気性の低い防音材を使用した場合、防音構造は吸音性が低くなる。これにより、防音構造によって得られる静粛性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、防音構造の総重量の増加を抑制でき、吸音性および遮音性を確保できる防音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、防音構造である。この防音構造は、車室内と、車室外あるいはエンジンルームを仕切る防音構造であって、パネルと、前記パネルに対して車室内側に積層された防音材と、前記パネルと前記防音材との間に設けられ、前記パネルに接合されて前記パネルを補強する補強材と、前記パネルと前記補強材との間に形成された空気層と、を備えている。前記防音材は、繊維材、または発泡フォーム材の表面に表皮材を重合した複合材から成り、前記補強材の材質は金属で、板厚:t(mm)が、0.8≦t≦1.2であり、多数の貫通孔を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、防音構造の総重量の増加を抑制でき、吸音性および遮音性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る防音構造の全体構成を示す斜視図である。
図2】(a)は、図1の防音材3の斜視図である。(b)は、図1のパネル2および補強材4の斜視図である。
図3】1/3オクターブ中心周波数と垂直入射吸音率との関係を示すグラフである。
図4】1/3オクターブ中心周波数と遮音性能との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の防音構造1について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
防音構造1は、図1に示すように、吸音および遮音のためのものである。防音構造1は、例えば自動車に設けられる(自動車以外に設けられてもよい)。防音構造1は、車室内と車室外を仕切る。防音構造1は、例えば、自動車の外部と車室内とを仕切るフロア部に設けられる。また例えば、防音構造1は、エンジンルームと車室内とを仕切るダッシュパネル部等に設けられていても構わない。防音構造1は、パネル2と防音材3と補強材4とを備える。
【0012】
(パネル)
パネル2は、板状部材である。
【0013】
(防音材)
防音材3は、パネル2に対して積層される。防音材3は、パネル2よりも車室内側に配置される。防音材3は、パネル2の車室内側に加えて、車室外側にも配置(パネル2に対して積層)されていても構わない。防音材3は、パネル2に取り付けられる。防音材3とパネル2との間は、隙間が存在しても構わない。防音材3の材質は、繊維材や複合材である。繊維材は、例えば、フェルトやグラスウールなどである。複合材は、例えば、発泡ウレタンフォームのような発泡フォーム材の表面に表皮材(PVCシート、EVAシートやEPDMシートなど)を重合したものである。
【0014】
(補強材)
補強材4は、パネル2を補強するためのものである。補強材4は、パネル2と防音材3との間に配置される。補強材4は、パネル2に接合される。この接合は、例えば溶接などによる。補強材4とパネル2との間には、閉じた又はほぼ閉じた空気層Sが形成される(後述する貫通孔5の部分を除く)。すなわち、補強材4とパネル2との間に隙間が形成されるように、補強材4が配置される。補強材4は、パネル2から防音材3側に突出する。補強材4は、パネル2に対する防音材3側(車室内側)に凸な略U字形状である。なお、補強材4とパネル2との間に空気層Sが形成されていれば、補強材4はどのような形状でも構わない。例えば、補強材4は、パネル2に対する防音材3側(車室内側)に凸な球面形状などであっても構わない。補強材4は、防音材3に取り付けられる(取り付けられていなくても構わない)。補強材4は、防音材3に接触する。補強材4と防音材3との間(全体または一部)には、隙間が存在していても構わない。補強材4の板厚:t(mm)は、0.8≦t≦1.2である。補強材4の材質は、金属である。この金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、または鉄などである。補強材4には、図2(b)に示すように、貫通孔5が設けられる。
【0015】
貫通孔5は、補強材4に多数設けられる。貫通孔5は、補強材4の全面または一部に設けられる。例えば、貫通孔5は、補強材4を構成する面のうち、パネル2と平行な面に設けられる。貫通孔5の孔径:d(mm)は、0.7t≦d≦1.3tである。ここで、孔径とは、孔の直径である。なお、補強材4の厚さ方向から見たときの貫通孔5の形状が円形以外の場合は、同方向から見たときの貫通孔5(円形以外)の面積と等しい円の直径を「孔径」とする。
【0016】
(孔径の差異による吸音性の影響評価)
図3は、比較例の防音構造及び防音構造1それぞれについての吸音率(垂直入射吸音率)を示すグラフである。以下の吸音構造について吸音率を調べた。
[微細孔]:貫通孔5が微細孔(孔径1mm)である防音構造1。
[通常孔]:貫通孔5が通常孔(孔径10mm)である防音構造1。
[孔なし](比較例):貫通孔5が補強材4にない吸音構造(他の構成は防音構造1と同じである)。
ここで、補強材に設ける貫通孔5の開口率は、0.3%である([孔なし]を除く)。
[微細孔]と[孔なし]とを比較すると、約400Hz以上、且つ、1600Hz未満の周波数領域において、[微細孔]の方が[孔なし]より吸音率が大きい。また、[微細孔]と[通常孔]とを比較すると、約630Hz以上、且つ、1600Hz未満の周波数領域において、[微細孔]の方が[通常孔]より吸音率が大きい。また、1600Hz以上の周波数領域においては、[孔なし]、[通常孔]、[微細孔]それぞれの吸音率の間には、吸音率の差がほぼない。
グラフより、貫通孔5の孔径が小さいほど、低周波数帯域(約1600Hz未満)の吸音性が高くなることがわかる。従って、貫通孔5の孔径が小さいほど、吸音性が大きな(例えば垂直入射吸音率が0.3以上の)周波数範囲を広くすることができる。
【0017】
(開口率の差異による遮音性の影響評価)
図4は、貫通孔5の開口率が0.1%の場合を基準とした、様々な開口率の貫通孔5の遮音性能の差異を示すグラフである。比較した開口率は、0.1%、0.3%、0.5%、1%、1.5%および2%である。それぞれの貫通孔5の孔径は、1mmである。グラフに示す遮音性能の値が小さいほど、開口率が0.1%の場合に比べて遮音性能が低いことを表す。
グラフより、開口率が小さいほど遮音性能が高くなることがわかる。
【0018】
(作用・効果1)
本実施形態の防音構造1は、図1に示すように、パネル2と、パネル2に対して積層された防音材3と、パネル2と防音材3との間に設けられパネル2に接合された補強材4と空気層Sとを備える。
【0019】
[構成1]空気層Sは、パネル2と補強材4との間に形成される。図2(b)に示すように、補強材4は、多数の貫通孔5を有する。
【0020】
上記の[構成1]により、吸音性が付与される。よって、従来の構造(パネル2と防音材3とを積層し、かつ、貫通孔5および空気層Sを設けていない構造)に比べて、吸音性を向上させることができる。その結果、防音構造1の遮音性を向上させる事ができる。これにより、防音材3の吸音性および遮音性を低くしても、上記「従来の構造」と同等以上の吸音性および遮音性を確保することができる。従って、吸音性および遮音性を確保しつつ、軽量で薄型の防音材3を採用することができる。その結果、防音構造1の総重量の増加を抑制できる。これにより、防音構造1が自動車に適用された場合は、この自動車の総重量の増加を抑制することができる。
【0021】
(作用・効果2)
[構成2]補強材4の板厚:t(mm)は、0.8≦t≦1.2である。補強材4に設けられる貫通孔5の孔径:d(mm)は、0.7t≦d≦1.3tである。
【0022】
上述したように、貫通孔5の孔径が小さいほど、低周波数帯域の吸音性が高い。従って、孔径の小さい貫通孔5(上記[構成2]の条件を満たす貫通孔5)を設けることにより、孔径の大きい貫通孔5(d>1.3tの貫通孔)と比べて、低周波数帯域の吸音性を高くすることができる。その結果、吸音性が大きな周波数範囲を広くすることができる。
また、孔径の小さい貫通孔5は、孔径の大きい貫通孔5に比べて振動放射音を低減することができる。従って、孔径の小さい貫通孔5を設けることにより、遮音性を向上させることができる。
【0023】
(作用・効果3)
[構成3]貫通孔5の開口率は1%以下である。
ここで、上述したように、貫通孔5の開口率が小さいほど、遮音性が高い。従って、上記[構成3]によって、開口率が大きい場合(1%を超える場合)と比べて遮音性を向上させることができる。
【0024】
(作用・効果4)
[構成4]貫通孔5の開口率は0.3%以下である。
上述したように、貫通孔5の開口率が小さいほど遮音性を高くできる。よって、上記[構成4]により、遮音性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0025】
1:防音構造
2:パネル
3:防音材
4:補強材
5:貫通孔
S:空気層
図1
図2
図3
図4