(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
実施の形態1について、
図1乃至
図6に基づいて説明する。
【0014】
まず、
図1を参照して本実施の形態に係る警報システムの構成を説明する。
【0015】
防火対象であって火災を監視する区域には、個々に固有の識別子を有し、火災発生時に火災を感知すると前記識別子を含む火災感知信号Dを送出する火災感知手段である複数の火災感知器2が適宜配設される。なお、説明の便宜上、後述する火災受信機1側から、火災感知器2−1、火災感知器2−2と、連続する番号を付して区別し、総称して火災感知器2と称する。
【0016】
火災感知器2が個々に有する固有の識別子は、例えば複数桁の数値で表されるようなアドレスであり、火災発生時に火災を感知した火災感知器2を特定することができるものであれば良い。このような火災感知器2を用いることによって、火災発生時に火災位置を把握することができるようになる。
【0017】
火災感知器2は電路Lsを介して火災受信手段である火災受信機1に接続される。火災感知器2と火災受信機1が構成する自動火災報知設備は、電路Lsが火災感知器2の系統毎に個別の電路で接続するP型システムであっても良いし、電路Lsが火災感知器2の系統に共通の電路で接続して多重伝送するR型システムであっても良い。
【0018】
火災受信機1は、火災発生時、火災感知器2から電路Lsを介して火災感知信号Dを受信し、火災感知信号Dに基づいて火災判断を行い、火災と判断したときに、火災受信機1に備わる表示灯や音響装置等によって火災表示および火災音響警報等を行い、建物内に配設した音響装置等によって警報する、周知の自動火災報知設備の火災受信機である。ただし、本実施の形態における火災受信機1は、火災感知信号Dに含まれる火災感知器2の識別子より火災を感知した火災感知器2を特定し、火災を感知したと特定された火災感知器2が配設された場所から火災位置を特定するものである。すなわち、本実施の形態における火災受信機1は、火災感知信号Dに基づいて火災発生と火災位置とを判断するものである。
【0019】
そして、火災受信機1が火災発生と判断すると、電路Lfを介して、後述する警報装置3へ火災位置情報を含む火災信号Fを送出する。火災信号FがON−OFF式の信号の場合、前記火災位置情報は公知の変調方式によって火災信号Fに重畳させれば良い。また、火災信号Fが多重伝送信号の場合、前記火災位置情報も含むように伝送データのプロトコルを構成すれば良い。
【0020】
また、火災受信機1が火災発生と判断したときは、火災信号F、例えばON−OFF式の火災信号Fを送出するとともに、後述する警報装置3へ電力を供給する。火災受信機1からの警報装置3への電力供給は、電路Lfから送出される火災信号Fによっても良いし、別途専用の電源線(図示せず)を設けて警報装置3へ給電するようにしても良い。
【0021】
警報装置3は、火災受信機1から送出される火災信号Fに基づいて所定周期Tでフラッシュ発光し、聴覚障害者に対しても避難を促すことができる警報を行う。
【0022】
本実施の形態では、複数の警報装置3が避難経路毎にグループ編成され、電路Lfに並列接続され、間隔を空けて配設される。なお、説明の便宜上、それぞれの警報装置3を火災受信機1側から順に、警報装置3−1〜3−n(nは自然数)と連続する番号を付して区別し、総称して警報装置3と称する。そして、避難経路毎にグループ編成された警報装置3−1〜3−nのうち、少なくとも末端の近傍に非常口が存在するように配設される。
【0023】
警報装置3は、個々に固有の識別子、例えば複数桁の数値で表されるようなアドレスを有し、火災位置情報を含む火災信号Fに基づいて、火災位置側から非常口側に向かう順序で、所定の位相差を有して所定周期でフラッシュ発光する。したがって、警報装置3は、避難経路上からは常に複数が視認できるように配設し、非常口に向かう順序が把握できるようにすることが望ましい。
【0024】
火災受信機1は、避難経路毎に編成されたグループ毎に、火災感知器2の識別子とこの火災感知器2に最も近い警報装置3の識別子とを互いに関連付けて記憶した後述する第1のテーブルを有する。そして、火災受信機1が火災発生と判断すると、第1のテーブルを参照して、火災感知信号Dを送出した火災感知器2からの識別子に対応する警報装置3の識別子を読み出し、これを火災位置情報として火災信号Fに含めて送出する。
【0025】
ここで、
図3及び
図4に基づいて、第1のテーブルについて説明する。
【0026】
第1のテーブルは、火災受信機1に設ける図示しない記憶部に登録されるデータテーブルであり、
図4に示すように、避難経路毎にグループ編成された警報装置3について、火災感知器2の識別子と、火災感知器2に最も近い警報装置3の識別子とを対応付けて予め記憶させるとともに、避難経路該の室内に配設された火災感知器2の識別子と警報装置3の識別子とを対応付けて予め記憶させる。
【0027】
ここで説明の便宜の為、
図3に示すような配設例を仮定して、
図4に示した第1のテーブルの設定例を示す。
【0028】
避難経路は、その両末端に非常口E1、E2を有する建物内の廊下を想定し、警報装置3は、非常口E1側から非常口E2側に向かって順に、3−1、3−2、3−3、3−4、3−5と配設し、避難経路末端の警報装置3−1、3−5はそれぞれ非常口E1、E2の近くに配設される。同様に、火災感知器2は、非常口E1側から非常口E2側に向かって順に、例えば2−1、2−2、2−3、2−4、2−5と配設し、それぞれが警報装置3−1、3−2、3−3、3−4、3−5に最も近いものとする。
【0029】
また、避難経路に該当しない部屋が3つ在り、それぞれが避難経路である廊下に面して出入り口を有するものとする。そして、非常口E1側から非常口E2側に向かって、第1室、第2室、第3室が設けられ、それぞれ順に、警報装置3−6、3−7、3−8、火災感知器2−6、2−7、2−8が配設されるものとする。
【0030】
そして、警報装置3−1〜3−8の識別子をそれぞれ順にF001〜F008、火災感知器2−1〜2〜8の識別子をそれぞれ順にD001〜D008とすると、火災感知器2に最も近い避難経路である廊下に沿って、例えばその壁面に配設された警報装置3が定まり、それぞれの識別子同士の対応が
図4の如く定まる。すなわち、火災感知器2の識別子、D001、D002、D003、D004、D005、D006、D007、D008それぞれに対して、避難経路に沿って配設された警報装置3の識別子、F001、F002、F003、F004、F005、F001、F003、F005が定まる。
【0031】
一方、火災感知器2−6〜2−8、警報装置3−6〜3〜8については、避難経路に該当しない前記第1室〜第3室に配設されている。しかしながら、それぞれの部屋の出入り口を閉鎖していると、それぞれの室内から避難経路である廊下に配設された警報装置3―1〜3−5を視認できるとは限らない。このため、同一室内の火災感知器2が作動して火災と判断された場合には該当する部屋の警報装置3を作動させるようにする必要がある。
【0032】
そして、部屋の出入り口を開放した場合、室内の警報装置3と避難経路である廊下に配設された直近の警報装置3とが同時に視認される可能性があり、光過敏性発作を防止するために、これらを同時にフラッシュ発光させるようにする。そこで、第1のテーブルには、火災と連動して該当する警報装置3をフラッシュ発光させるデータとして、避難経路外であって火災室の警報装置3の識別子をも、避難経路毎にグループ編成された警報装置3について火災感知器の識別子と火災感知器に最も近い警報装置の識別子とを対応付けたデータとは別に登録しておく。
【0033】
このようにすることによって、火災室から避難経路の警報装置3を視認できない場合でも、室内の警報装置3によって聴覚障害がある人にも火災の発生を知らせるとともに避難を促し、室内から避難経路に出る際に避難経路に配設された直近の警報装置3と室内の警報装置3とを同時に視認したとしても、これらが同時にフラッシュ発光するので光過敏性発作を防ぐことができる。
【0034】
次に、
図2を参照して本実施の形態に係る警報装置3の構成を説明する。
【0035】
警報装置3は電路Lfを介して火災受信機1からの火災信号Fを受信する受信手段である火災信号受信部31を有し、電路Lfと接続するための接続端子INfを有する。
【0036】
また、警報装置3は、火災受信機1から電力の供給を受けて警報装置3内部の回路に電力を供給する電源部36を有する。
図2において、電源部36は電路Lfを介して受信する火災信号Fより電力の供給を受けるようにしているが、別途専用の電源線を介して受電しても良いことは先に述べた通りである。
【0037】
発光手段としての発光部35には、強烈な閃光を発するストロボ(登録商標)に代表されるエレクトロニック・フラッシュ、あるいは、大光量のLEDランプを用いることができる。なお、発光部35に用いるデバイスはこれらに限定されるものではなく、光で警報するに足る一定以上の光量を発することができ、断続制御できる可視光の光源であれば良い。
【0038】
発光部35は、
図2に示したように制御部34を介して電力の供給を受けても良いし、電源部
36から直接電力の供給を受け(図示せず)、発光部35を発光させるためのトリガ信号を制御部34から受けるようにしても良い。後者の構成は、発光手段にエレクトロニック・フラッシュを用い、これに電源部36から放電開始に至らない高電圧を予め印加しておき、発光手段のエレクトロニック・フラッシュを放電させて発光を開始させるトリガ電極に制御部34からトリガ信号を送出する用途に適している。
【0039】
また、警報装置3は、火災信号Fに基づいて計時を開始し、計時時間tを出力するとともに所定周期Tで初期化される計時手段である計時部32を有する。計時部32は、火災信号受信部31が火災受信機1からの火災信号Fを受信してからの時間tを計時し、計時時間の値を制御部34へ出力する。
【0040】
また、警報装置3は、計時部32が計時を開始してから自機がフラッシュ発光するまでの遅延時間t0を演算して記憶する遅延時間設定手段である遅延時間設定部33を有する。
【0041】
すなわち、遅延時間設定部33は、まず、火災信号Fに含まれる火災位置情報に基づいて自機がフラッシュ発光する発光順序Nを求め、発光順序Nに基づいて遅延時間t0を演算して記憶する。
【0042】
また警報装置3は、遅延時間設定部33に記憶された遅延時間t0を参照して計時時間tと遅延時間t0とを比較し、計時時間tが遅延時間t0に達したときに発光手段35をフラッシュ発光させる制御手段である制御部34を有する。
【0043】
次に、
図1〜6を参照して、本実施の形態に係る警報システムの動作について説明する。
【0044】
本実施の形態に係る警報システムは、火災発生時、避難経路に沿って非常口近傍に配設された末端の警報装置3に向かって、順に警報装置3がフラッシュ発光して避難誘導する警報システムである。すなわち、避難経路毎に編成されたグループにおいて、火災感知信号Dを送出した火災感知器2に最も近い警報装置3を開始点として、避難経路に沿ってその末端に位置する警報装置3に向かって、所定の位相差Δ
tで順に警報装置3がフラッシュ発光するものである。
【0046】
<火災感知器2の動作>
火災発生時、火災感知器2のいずれかが火災を感知する。ここでは説明の簡便のため、火災感知器2−2が火災を感知したものと仮定して説明を行う(
図1、3参照)。
【0047】
火災を感知した火災感知器2−2は、火災感知信号Dを火災受信機1へ送出する。このとき火災感知信号Dには、予め火災感知器2−2に与えられた識別子が情報として含まれる。この火災感知器2−2の識別子は、例えば、“D002”と仮定する。すなわち、火災を感知すると火災感知器2−2は識別子“D002”を含む火災感知信号Dを送出する火災感知手段である。
【0048】
<火災受信機1の動作>
次に、この火災感知信号Dを受信した火災受信機1は、火災感知信号Dに基づいて火災発生と火災位置を判断する(
図1、5、6参照)。
【0049】
例えば、火災受信機1が周知の蓄積機能を有する場合は、この蓄積機能の結果で火災発生と断定する。なお、この火災発生の判断は、火災受信機1の蓄積機能のみに限らず、火災に起因する物理量の大きさや上昇率、複数の火災感知器2が検出した火災に起因する物理量の分布、あるいは、複数の火災感知原理、に基づくような公知の如何なる火災判断機能であっても良く、如何なる手法によって火災発生の判断を行うかは適宜選択される。
【0050】
火災受信機1が火災発生と判断したとき、火災受信機1が受信した火災感知信号Dに含まれる識別子“D002”より、火災感知器2−2が火災を感知したことが判明する。そして、火災受信機1は火災感知器2−2が配設された場所が火災位置であると判断する。
【0051】
なお、火災受信機1は、避難経路毎に編成したグループ毎に、火災感知器2の識別子と、火災感知器2に最も近い警報装置3の識別子とを互いに関連付けて記憶した第1のテーブルを有する。ここで、例えば、
図3、4に示した配設例によると、火災を感知した火災感知器2−2に最も近い警報装置3は、固有の識別子“F002”を有する警報装置3−2である。すなわち、火災感知信号Dに含まれる火災感知器2−2の識別子“D002”と、警報装置3−2の識別子とが、関連付けられて第1のテーブルに記憶されている(
図4参照)。
【0052】
火災受信機1が火災発生と判断すると、第1のテーブルを参照して、火災感知信号Dを送出した火災感知器2−2からの識別子“D002”に対応する警報装置3−2の識別子“F002”を得る。そして、この警報装置3−2の識別子“F002”を火災位置情報とし、この火災位置情報を含む火災信号Fを、電路Lfを介して警報装置3−1〜nへ送出する(
図5、6参照)。
【0053】
<警報装置3の動作>
警報装置3は、火災信号Fを受信する火災信号受信手段としての火災信号受信部31を有する(
図2参照)。
【0054】
また、警報装置3は、火災信号受信部31を介して火災信号Fを受信すると、計時を開始し、計時時間tを後述する制御部34へ出力する計時手段としての計時部32を有する。なお、計時部32は前述の所定周期Tで初期化され、火災信号Fを受信している間は所定周期Tの間で計時を繰り返すように動作させる。すなわち、計時部32は、火災信号Fに基づいて計時を開始し、計時時間tを制御部34へ出力するとともに所定周期Tで初期化される計時手段である。
【0055】
また、警報装置3は、計時部32が計時を開始してから自機がフラッシュ発光するまでの遅延時間t0を演算して記憶する遅延時間設定手段である遅延時間設定部33を有する。
【0056】
遅延時間設定部33は、まず、受信した火災信号Fに含まれる火災位置情報、すなわち識別子より、自機がフラッシュ発光する発光順序Nを求める。
【0057】
例えば、避難経路毎にグループ編成された警報装置3が避難経路に沿って連番の識別子を有するものとすると、火災位置情報としての識別子の番号部分と、自機の識別子の番号部分との差の絶対値を求めることにより、自機がフラッシュ発光すべき発光順序Nを得ることができる。なお、警報装置3の識別子は上記したような連番に限らず、如何なる符号を与えても良い。その場合は、識別子を意味する符号と避難経路に沿った順番との対応が警報装置3で取れるようにしておけば良く、その対応手段は如何なる周知技術、公知技術であっても良く、適宜選択される。
【0058】
ここで、警報装置3−1、3−2、・・・3−n(nは自然数)が避難経路順に配設されているとし、それぞれの識別子が“F001”、“F002”、・・・“Fn”であるとした場合、火災位置情報としての識別子の番号部分とそれぞれの識別子の番号部分との差を求めることにより、フラッシュ発光する発光順番Nは、それぞれ[2]、[1]、・・・[|n−“火災位置情報としての識別子の番号部分”|+1]と求まる。つまり、自機の識別子の番号部分と、火災位置情報としての識別子との差の絶対値に1を加えた値がフラッシュ発光する発光順序Nとなる。
【0059】
すなわち、避難経路の末端に当たる警報装置3−1と警報装置3−n(
図3、4の例においては警報装置3−5)とを非常口の近傍に配設しておけば、警報装置3−2から警報装置3−1へ、また、警報装置3−2から警報装置3−nへ、と非常口に向かって順にフラッシュ発光することとなる。
【0060】
例えば、火災感知器2−2が自己の識別子“D002”を含む火災感知信号Dを送出したとき、火災受信機1が火災判断すると第1のテーブルを参照して対応する識別子“F002”を含む火災信号Fを送出する。これを受けた警報装置3は、前記の如く自機がフラッシュ発光する発光順番Nを求める。この場合、第1番目は警報装置
3−2、第2番目は警報装置
3−1および
3−3、第3番目は警報装置
3−4、第4番目は警報装置
3−5となる。
【0061】
次に、遅延時間設定部33は、発光順序Nに基づいて遅延時間t0を演算して記憶する。
【0062】
遅延時間t0は、避難経路毎に編成されたグループにおいて、自機を含めた複数の警報装置3が自機の発光順序Nで所定の位相差Δtを有してフラッシュ発光するように、例えば、t0=Δt・(N−1)、t0=Δt・N、等と求められる(
図6参照)。
【0063】
換言すれば、遅延時間設定部33は、火災位置情報に基づいて自機がフラッシュ発光する発光順序Nを求め、自機を含めた複数が発光順序Nで所定の位相差Δtを有してフラッシュ発光するように、発光順序Nに基づいて計時部32が計時を開始してから自機がフラッシュ発光するまでの遅延時間t0を演算して記憶する遅延時間設定手段である。
【0064】
そして、警報装置3の制御部34は、遅延時間設定部33に記憶された遅延時間t0を参照して計時時間tと遅延時間t0とを比較し、計時時間tが遅延時間t0に達したときに発光手段35をフラッシュ発光させるように制御する(
図5、6参照)。
【0065】
以上のように、火災発生時、避難経路毎に編成されたグループにおいて、火災感知信号Dを送出した火災感知器2(
図3、4の例では火災感知器2−2)に最も近い警報装置3(
図3、4の例では警報装置3−2)を開始点として、避難経路に沿ってその末端に位置する警報装置3(
図3、4の例では警報装置3−1および3−5)に向かって、所定の位相差Δtで警報装置3が順にフラッシュ発光する。すなわち、避難経路に沿って非常口近傍に配設された末端の警報装置3に向かって、警報装置3が順にフラッシュ発光して避難誘導する。
【0066】
なお、火災発生時、前記グループの警報装置に近辺に火災が位置しない場合、例えば他の地区や階で火災が発生した場合は、前記グループにおいて、非常口から最も遠い警報装置3(
図3、7の例では警報装置3−3)を開始点として、避難経路に沿ってその末端に位置する警報装置3(
図3、7の例では警報装置3−1および3−5)に向かって、順にフラッシュ発光させれば良い。例えば、火災受信機
1に、避難経路毎に編成されたグループ毎に、非常口から最も遠い警報装置3の識別子を予め記憶した第2のテーブルを備えるようにする。そして、火災受信機1が火災発生と判断すると、第2のテーブルを参照して、非常口から最も遠い警報装置3の識別子を読み出し、これを火災位置情報として火災信号Fに含めて送出する。
【0067】
このように構成することによって、火災発生時、避難経路毎に編成されたグループにおいて、非常口から最も遠い警報装置3(
図3、7の例では警報装置3−3)を開始点として、避難経路に沿ってその末端に位置する警報装置3(
図3、7の例では警報装置3−1および3−5)に向かって、警報装置3が所定の位相差Δtで順にフラッシュ発光する。
【0068】
なお、第1のテーブルに代えて第2のテーブルを設けた場合、火災信号Fを受信した前記グループ全てにおいて、非常口から最も遠い警報装置3を開始点として、避難経路に沿って順にフラッシュ発光するようになる。しかしながら、避難経路の途中で火災が発生していた場合は、その避難を妨げることになりかねない。したがって、火災位置が属する避難経路のグループにおいては、実施の形態1に記載した避難誘導を行うことが望ましい。すなわち、火災受信機1は第1のテーブルに加えて第2のテーブルを有するように構成することが望ましい。そして、火災発生時、火災位置が属する前記グループについては、第1のテーブルを参照して火災感知信号Dを送出した火災感知器2に最も近い警報装置3をフラッシュ発光の開始点とする。また、火災位置が属さない前記グループについては、第2のテーブルを参照して非常口から最も遠い警報装置3をフラッシュ発光の開始点とする。このように、避難経路毎に編成されたグループ毎に、それぞれ避難経路に沿ってその末端に位置する警報装置3に向かって、所定の位相差Δtで順に警報装置3がフラッシュ発光するようにすると良い。換言すると、火災受信機1は、火災発生と判断すると、火災位置が属さない避難経路のグループについて第2のテーブルを参照して、非常口から最も遠い警報装置3の識別子を火災位置情報として送出する。そして、火災位置が属さない前記グループにおいて、非常口から最も遠い前記警報装置3を開始点として、避難経路に沿ってその末端に位置する警報装置3に向かって、所定の位相差Δtで順に警報装置3がフラッシュ発光する。なお、第2のテーブルを参照してフラッシュ発光の開始点を決定する避難経路のグループは、出火階においては火災位置が属さない避難経路のグループ、出火階の直上階、出火階以外の全ての階、の少なくとも一つとすると良く、建築物の構造や避難経路に応じて適宜設定される。
【0069】
ところで、火災位置によっては、出火階よりも上層の階において避難経路の制約を受ける場合があり得る。例えば、出火位置に近い階段やエレベーターシャフト等は、火災の熱によって生じた上昇気流に乗って煙が流入して煙突と化し、避難が困難となる可能性がある。そこで、出火階よりも上層の階では、出火位置によって避難困難となる経路を避けて、避難経路とその方向を選択するようにしても良い。すなわち、避難経路毎に編成したグループ毎に避難困難となる非常口から遠ざかるように制御する。そして、このようなフラッシュ発光開始点となるように、火災を感知した火災感知器2の識別子と関連付けて、フラッシュ発光の開始点となる警報装置3の識別子を予め記憶した第3のテーブルを火災受信機1に設けても良い。
【0070】
[実施の形態2]
実施の形態2について、
図1、8に基づいて構成を説明する。なお、実施の形態1と同じ構成には同一の符号を付して、説明を省略する。また、
図1における符号は、
図8に基づいて読み替えるものとする。
【0071】
本実施の形態の構成が、実施の形態1と異なる点は、第1に、実施の形態1の警報装置3に、火災信号Fに含まれる同期信号の受信手段として同期信号受信部38を更に設けて警報装置30としたことである。また、第2に、火災受信機1が所定周期Tの整数倍に相当する時間毎に、火災信号Fに含まれる同期信号を警報装置30に送出するようにしたことである。また、第3に、警報装置30の同期信号受信部が火災信号Fに含まれる同期信号を受信したとき、計時部37を初期化するようにしたことである。
【0072】
すなわち、本実施の形態では、警報装置30の計時部37を火災受信機1からの同期信号によって同期運転するようにする。
【0073】
このようにする理由は、それぞれの警報装置30が有する計時部37の精度を維持することにある。つまり、計時部37を長い時間動作させていると、計時部37自体の精度により、警報装置30それぞれに共通なはずの所定周期Tが次第にずれてしまい、一斉に同じ動作をしていた計時部37の計時結果がずれてしまう“脱調”が発生する虞がある。
【0074】
これを防ぐには、第1に計時部37の精度を高めることである。例えば水晶発振子等を用い、高精度の発振に基づいて計時部37を動作させれば良い。
【0075】
しかしながら、警報装置30それぞれの計時部37を完全に同期させることはできず、更に長時間の運転を続ければ脱調を招く。しかも、このような方法は高価なデバイスを用いるのでコスト上昇を招く。そこで、本実施の形態では、計時部37の精度を必要最小限に抑えて安価に実現できるようにし、脱調を防ぐために周期的な同期を行う制御としたものであり、計時部37の精度に応じて周期的に同期するようにした。
【0076】
すなわち、火災受信機1は、所定周期Tの整数倍に相当する時間毎に、警報装置30に同期信号を送出し、これを受信した警報装置30は計時部37を初期化するようにした。
【0077】
このように同期信号を所定周期Tの整数倍に相当する時間毎に警報装置30へ送出することにより、初期化する際のフラッシュ発光のタイミングのずれを最小限に抑えることができる。なお、前記整数倍に相当する時間をどの程度とするかは、計時部37の精度によって適宜決定される。
【0078】
なお、火災受信機1は、同期信号を含む火災信号Fを送出するものとして説明したが、これに限るものではなく、図示しない専用線を介して火災信号Fとは別に送出するようにし、警報装置30は前記専用線を接続する図示しない端子を介して同期信号を受信するようにしても良い。
【0079】
また、火災受信機1と警報装置30との間の信号授受は、多重伝送、例えばポーリングによって行うようにしても良く、前記同期信号を含むように多重伝送を行っても良い。
【0080】
また、上記の如く多重伝送を行う場合、周期的に伝送される信号を警報装置30で計数するなどして、多重伝送、例えばポーリングに基づいて、警報装置30が前記同期信号をその内部で生成するようにしても良い。
【0081】
また、実施の形態1に記載した計時部37は、警報装置3内で個々に計時する手段に代えて、上記のような多重伝送、例えばポーリングに基づく信号を計数する手段に代えても良い。このようにすると、警報装置3は火災受信機1からの多重伝送の信号に同期して動作し、これを計数する計時部37も同期して動作するので、実施の形態2に記載したような同期信号は不要となる。
【0082】
また、火災受信機1に接続された図示しない中継装置を介して警報装置3、30を無線信号で制御するようにしても良い。すなわち、
(1)火災受信機1からの火災信号Fを受信した前記中継器が火災信号Fを無線信号として送信する。
(2)警報装置3または30の火災信号受信部31を、前記無線信号を受信する無線信号受信部に代える。
(3)さらに電源部を内部の電池電源、別の外部電源、若しくは、別の外部電源によって充電される内部の二次電池電源とする。
(4)前記無線信号としての火災信号Fによって警報装置3または30をフラッシュ発光させるように制御する。
【0083】
というように構成し、動作させても良い。
【0084】
また、前記無線信号Fに重畳された同期信号によって警報装置3または30を初期化するように制御しても良い。