【実施例1】
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の監視システムの全体構成例を示す図である。
図1に示す監視システム1は、拠点5に設置される複数の顧客システム10と、監視センタサーバ30と、保守端末400とを有する。監視センタサーバ30は、例えば、遠隔地にある複数の顧客システム20の状態をリモート監視する。顧客システム10は、監視センタサーバ30が監視対象とする顧客のシステムである。なお、ここでは、1つの拠点5や1台の顧客システム10を図示したが、あくまで一例であり、監視対象の台数等を限定するものではない。
【0012】
また、監視センタサーバ30と顧客システム10とは、インターネットなどの社外ネットワーク200を介して接続される。また、監視センタサーバ30と各保守端末400とは、イントラネットなどの社内ネットワーク300を介して接続される。なお、保守端末400は、各顧客システム10等を保守する保守員が使用する端末や監視センタサーバ30で顧客システム20を監視する監視者が使用する端末である。
【0013】
[顧客システムの構成]
図2は、顧客システムの構成を示すブロック図である。例えば、顧客システム10は、コンピュータ装置等の電子機器で構成される。本実施例では、一例として、顧客システム10がプリンタである例で説明する。
【0014】
図2に示すように、プリンタ10は、一例として、クリーニングブラシ11と、現像器12と、感光ドラム13と、トナー14と、TPM(Trusted Platform Module)チップ15と、制御部16とを有する。また、各機能部は、バス19で互いに通信可能に接続される。なお、クリーニングブラシ11、現像器12、感光ドラム13、トナー14は、使用すれば消耗し、定期的に交換が行われる消耗品である。
【0015】
クリーニングブラシ11は、用紙に転写されず感光ドラム上に残ったトナーを除去するブラシである。現像器12は、トナー14を帯電し感光ドラム上に付着する。
【0016】
感光ドラム13は、帯電、露光、現像、転写、クリーニング等の各処理を実行し、前記の現像器12より供給されたトナー14を用紙に転写する。
【0017】
TPMチップ15は、TCG(Trusted Computing Group)技術を採用したチップである。近年、インターネットに接続されるデバイスには、常にセキュリティの脅威に曝され、ウィルス、スパイウェア、その他、悪質なスクリプト、不正アクセス等で、プラットフォームを構成するソフトウェア構造に予期せぬ改変が加えられるリスクがある。TCG技術では、プラットフォームの信頼性を保証することで安全なコンピューティング環境を実現している。尚、プラットフォームとは、例えば、ハードウェア、OS(Operating System)やアプリケーション等である。例えば、ソフトウェアの改竄という脅威に対しては、従来のソフトウェアのみに依存したセキュリティ対策には限界がある。そこで、TCG技術では、プラットフォーム内にTPMチップ15を埋め込み、かかるTPMチップ15を信頼のルートとして、改竄が困難な信頼性の高いコンピューティング環境を構築している。更に、TCG技術では、TPMチップ15を利用して、ハードウェアベースでのデータや証明書の保護、安全な暗号化処理を実現している。
【0018】
TPMチップ15は、耐タンパー性を備えたチップであって、電子機器から取り外しができないように、電子機器の主要な構成部位、例えば、マザーボード等に物理的に搭載されるものである。また、TPMチップ15の機能には、RSA(Rivest Shamir Adleman)の秘密鍵及び公開鍵のペアの生成・保管の機能や、RSA秘密鍵による署名、暗号化や復号の機能がある。また、TPMチップ15の機能には、SHA−1(Secure Hash Algorithm 1)のハッシュ値を演算する機能や、電子機器の環境情報を保持する機能等がある。
【0019】
また、TCG技術では、上位のアプリケーションやライブラリからハードウェア・デバイスであるTPMチップを利用するため、ソフトウェア・スタックとソフトウェアインターフェースとを規定している。ソフトウェア・スタックは、TSS(TCG Software Stack)と呼ばれ、リソースが制限されるTPMチップの機能を保管するソフトウェアモジュールから構成されている。また、電子機器内のCPUのアプリケーションは、TSSの提供するインタフェースを利用して、TPMチップ15の機能にアクセスするものである。
【0020】
また、TPMチップ15は、プリンタなどの電子機器のCPUが起動した時点で、BIOS(Basic Input/Output System)、OSloader、OSカーネルへのブートプロセスでのソフトウェアコードを取得する。TPMチップ15は、取得されたソフトウェアコードをハッシュ化してソフト構成のハッシュ値を得る。そして、TPMチップ15は、そのソフト構成のハッシュ値をTPMチップ15内部のレジスタに登録する。また、TPMチップ15は、電子機器のハードウェア構成の情報を取得し、ハードウェア構成の情報をハッシュ化してハード構成のハッシュ値を得る。そして、TPMチップ15は、そのハード構成のハッシュ値をTPMチップ15内部のレジスタに登録する。つまり、TPMチップ15では、電子機器のソフト構成のハッシュ値及びハード構成のハッシュ値をレジスタ内に登録する。
【0021】
制御部16は、プリンタ10の処理を司る処理部であり、例えば、CPU(Control Processing Unit)などである。この制御部16は、構成情報送信部17と使用情報送信部18とを有する。なお、構成情報送信部17と使用情報送信部18とは、CPU等が実行するプロセスによって実現される処理部などである。
【0022】
構成情報送信部17は、プリンタ10が起動した場合、または、プリンタ10が監視センタサーバ30とはじめて接続された場合に、プリンタ10内の構成情報を収集して、監視センタサーバ30に送信する処理部である。例えば、構成情報送信部17は、バス19を介して各部品にアクセスし、プリンタ10が有する部品の構成情報を収集する。そして、構成情報送信部17は、収集した構成情報をTPMチップ15に出力する。
【0023】
このようにすることで、TPMチップ15は、部品の構成情報をハッシュ化してハッシュ値を得ることができる。また、TPMチップ15は、各部品の構成情報をハッシュ化したハッシュ値から、プリンタ10が有する部品の代表ハッシュ値を算出して構成情報送信部17に応答する。その後、構成情報送信部17は、各部品のハッシュ値および代表ハッシュ値を監視センタサーバ30に送信する。
【0024】
別の手法としては、構成情報送信部17は、TPMチップ15に対して、構成情報の収集を指示する。この指示により、TPMチップ15は、プリンタ10内の部品の構成情報を収集し、ハッシュ化してハッシュ値を得ることができる。
【0025】
また、構成情報送信部17やTPMチップ15は、RFID(Radio Frequency IDentification)を利用することもできる。例えば、各部品には、型番と版数等が埋め込まれたRFIDタグが付加されており、構成情報送信部17やTPMチップ15は、RFIDリーダーの機能を有している。そして、構成情報送信部17やTPMチップ15は、RFIDリーダーを用いて、各部品のRFIDタグから型番と版数等を取得することで、プリンタ10の構成情報を収集することができる。このようにして、TPMチップ15は、型番と版数とから一意なハッシュ値を算出することができる。
【0026】
ここで、プリンタ10が送信する構成情報の一例を説明する。
図3は、プリンタが送信する構成情報の例を示す図である。
図3に示すように、送信される構成情報は、「代表ハッシュ値:8F、制御部:11、感光ドラム:13、クリーニングブラシ:10」を有する。すなわち、プリンタ10から送信される構成情報または使用情報は、代表ハッシュ値、制御部、感光ドラム、クリーニングブラシの順で構成されていることを示す。この順番は、監視対象機器と監視センタサーバ30との間で任意に指定することができる。また、
図3の例では、ハッシュ値「11」が制御部16を示し、ハッシュ値「13」が感光ドラム13を示し、ハッシュ値「10」がクリーニングブラシ11を示す。
【0027】
図2に戻り、使用情報送信部18は、所定のタイミングで、プリンタ10内の各部品の使用情報を収集して、監視センタサーバ30に送信する処理部である。なお、送信するタイミングとしては、定期的であってもよく、保守員等からの指示があった場合でもよく、任意に設定変更することができる。
【0028】
例えば、使用情報送信部18は、上述した構成情報送信部17と同様の手法を用いることで、プリンタ10内の各部品の使用情報を収集して、監視センタサーバ30に送信する。一例を挙げると、RFIDを利用することができる。具体的には、各部品は、型番と版数等の使用情報が埋め込まれたRFIDタグが付加されており、このRFIDタグに回転数などが随時登録される。使用情報送信部18やTPMチップ15は、RFIDリーダーの機能を有している。そして、使用情報送信部18やTPMチップ15は、RFIDリーダーを用いて、各部品のRFIDタグから回転数などの使用情報を取得することで、各部品の使用情報を収集することができる。このようにして、TPMチップ15は、使用情報からハッシュ値を算出することができる。
【0029】
ここで、プリンタ10が送信する使用情報の一例を説明する。
図4は、プリンタが送信する使用情報の例を示す図である。
図4に示すように、送信される使用情報は、「代表ハッシュ値:21、制御部:00、感光ドラム:05、クリーニングブラシ:00」を有する。すなわち、プリンタ10から送信される構成情報または使用情報とは同じ構成である。また、
図4の例では、制御部16の使用情報が「00」、感光ドラム13の使用情報が「05」、クリーニングブラシ11の使用情報が「00」、これらの代表ハッシュ値が「21」であることを示している。
【0030】
[監視センタサーバの構成]
図5は、監視センタサーバの構成を示すブロック図である。
図5に示すように、監視センタサーバ30は、通信部31と、操作部32と、表示部33と、TPMチップ34と、記憶部35と、制御部36とを有する。なお、これらの処理部は、バス50を介して、相互に通信可能に接続される。
【0031】
通信部31は、プリンタ10や保守端末400との通信を制御するインタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースカードなどである。通信部31は、プリンタ10から構成情報や使用情報を受信し、プリンタ10に警告等のメッセージを送信する。
【0032】
操作部32は、監視センタサーバ30への各種操作を受け付ける処理部であり、例えば、マウスやキーボードなどである。表示部33は、制御部36による処理で得られた各種情報を表示する処理部であり、例えば、ディスプレイやタッチパネルなどである。
【0033】
監視センタサーバ30側のTPMチップ34は、プリンタ10側のTPMチップ15でハッシュ値を採取する際のルールをハッシュ化及び署名付与して管理することで、ハッシュ値採取の正当性を担保するものである。しかも、TPMチップ34は、必要に応じて、現時点でのルール及び署名をチェックすることで、ルールの非改竄性を証明する。その結果、TPMチップ15は、TPMチップ34側で非改竄性が証明されたルールを参照しながら運用することでハッシュ値を採取する際のルールに改竄がないことを保証する。しかも、プリンタ10に派遣された監視センタサーバ30内の作業者が勝手に改竄していないことも保証できる。
【0034】
例えば、TPMチップ34は、プリンタ10から送信された、ハッシュ値を含む暗号化された構成情報が通信部31によって受信された場合に、当該構成情報を復号して、制御部36に出力する。また、TPMチップ34は、ハッシュ値を含む暗号化された使用情報が通信部31によって受信された場合に、使用情報を復号して、制御部36に出力する。
【0035】
記憶部35は、制御部36が実行するプログラムや参照するデータを記憶する記憶装置であり、例えば、ハードディスクやメモリなどである。この記憶部35は、構成情報テーブル35a、使用情報テーブル35b、使用情報レベルリスト35c、消耗品リスト35d、更新履歴テーブル35eを記憶する。
【0036】
構成情報テーブル35aは、監視対象の電子機器から受信された、電子機器の構成情報を記憶する。ここで記憶される情報は、
図3と同様なので、詳細な説明は省略する。また、構成情報テーブル35aは、拠点ごと、顧客ごと、電子機器ごとに構成情報を記憶することができる。
【0037】
使用情報テーブル35bは、監視対象の電子機器から受信された、電子機器が有する部品の使用情報を記憶する。ここで記憶される情報は、
図4と同様なので、詳細な説明は省略する。また、使用情報テーブル35bは、拠点ごと、顧客ごと、電子機器ごとに構成情報を記憶することができる。
【0038】
使用情報レベルリスト35cは、部品の使用情報から部品の消耗度を特定する情報を記憶する。
図6は、使用情報レベルリストに記憶される情報の例を示す。ここでは、一例として、回転数から消耗度を特定する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、プリンタ10については他にもトナー量、印刷枚数、受信データ数などを利用することもでき、監視対象の電子機器について任意に変更することができる。
【0039】
図6に示すように、使用情報レベルリスト35cは、「回転数」と「ハッシュ値」とを対応付けて記憶する。ここで記憶される「回転数」は、感光ドラム13の回転数である。「ハッシュ値」は、回転数に対応するハッシュ値である。
図6に示すように、回転数が「0〜1000回転」は、ある一つのコードに置き換えハッシュ値「00」で特定され、回転数が「1001〜2000回転」も同様に、ハッシュ値「01」で特定されることを示している。また、回転数が「2001〜3000回転」も、ある一つのコードに置き換えハッシュ値「02」で特定され、回転数が「3001〜4000回転」も同様に、ハッシュ値「03」で特定されることを示している。以下、同様に回転数が「4001〜5000回転」ではハッシュ値「04」、「5001〜6000回転」ではハッシュ値「05」、「6001〜7000回転」ではハッシュ値「06」で特定されることを示している。
【0040】
消耗品リスト35dは、消耗品として特定された部品の情報を記憶する。具体的には、消耗品リスト35dは、今回使用情報が受信されたことで、交換間近または消耗済みと判定された部品の情報を記憶する。
図7は、消耗品リストに記憶される情報の例を示す図である。
図7に示すように、消耗品リスト35dは、「ハッシュ値」と「消耗品」とを対応付けて記憶する。ここで記憶される「ハッシュ値」は、交換間近または消耗済みとして特定された部品のハッシュ値を示し、「消耗品」は、交換間近または消耗済みとして特定された部品を示す。
図7の場合、使用情報のハッシュ値が「05」であった「感光ドラム」が、今回交換対象として特定されたことを示す。
【0041】
更新履歴テーブル35eは、電子機器の各部品の交換履歴を記憶する。例えば、更新履歴テーブル35eは、顧客ごとに電子機器の各部品の交換履歴を記憶してもよく、拠点ごとでも電子機器ごとでもよい。監視センタサーバ30は、ここで記憶される情報に基づいて、部品ごとの交換周期の平均を算出することができる。また、監視センタサーバ30は、更新履歴テーブル35eが顧客ごとに各部品の交換履歴を記憶することで、顧客ごとに使用状況が異なる場合でも、顧客に適した部品ごとの交換周期の平均を算出することができる。
【0042】
制御部36は、監視センタサーバ30の全体を司る処理部であり、例えばCPUなどである。この制御部36は、構成情報登録部37と使用情報受信部38と特定部39と算出部40と通知部41とを有する。なお、構成情報登録部37と使用情報受信部38と特定部39と算出部40と通知部41とは、CPU等が実行するプロセスによって実現される処理部などである。
【0043】
構成情報登録部37は、監視対象の電子機器から受信した構成情報を構成情報テーブル35aに登録する処理部である。具体的には、構成情報登録部37は、プリンタ10から
図3に示した構成情報を受信すると、受信した構成情報を構成情報テーブル35aに格納する。このとき、構成情報登録部37は、受信したフォーマットで格納するなど、受信した構成情報のどの位置にどの部品の情報が含まれているかを特定できるように格納する。
【0044】
使用情報受信部38は、監視対象の電子機器から受信した部品の使用情報を使用情報テーブル35bに登録する処理部である。具体的には、使用情報受信部38は、プリンタ10から
図4に示した使用情報を受信すると、受信した使用情報を使用情報テーブル35bに格納する。このとき、使用情報受信部38は、受信したフォーマットで格納するなど、受信した使用情報のどの位置にどの部品の情報が含まれているかを特定できるように格納する。
【0045】
特定部39は、使用情報受信部38が登録した各部品の使用情報から、各部品の消耗度に基づいて交換対象の部品を特定する処理部である。具体的には、特定部39は、使用情報テーブル35bに登録された使用情報と、構成情報テーブル35aに登録される構成情報とから、各部品の使用情報を特定する。そして、特定部39は、特定した各部品の使用情報と使用情報レベルリスト35cとから、各部品の消耗度を特定する。その後、特定部39は、特定した各部品の消耗度のうち、最も消耗度が高い部品を交換対象の部品として消耗品リスト35dに格納する。
【0046】
例えば、
図4に示した情報が使用情報として登録され、
図3に示した情報が構成情報として登録されている例で説明する。
図8は、使用情報から部品を特定する例を説明する図である。
図8に示すように、特定部39は、受信した使用情報と構成情報について、ハッシュ値の位置関係から、制御部16の使用情報が「00」、感光ドラム13の使用情報が「05」、クリーニングブラシ11の使用情報が「00」であると特定する。
【0047】
続いて、特定部39は、制御部16について、使用情報レベルリスト35cを参照し、使用情報「00」に対応する回転数が「0〜1000回転」であると特定する。そして、特定部39は、感光ドラム13について、使用情報レベルリスト35cを参照し、使用情報「05」に対応する回転数が「5001〜6000回転」であると特定する。また、特定部39は、クリーニングブラシ11について、使用情報レベルリスト35cを参照し、使用情報「00」に対応する回転数が「0〜1000回転」であると特定する。
【0048】
これらの結果、特定部39は、
図9より寿命前ハッシュ値05の「感光ドラム」を交換対象と特定して、判定時のハッシュ値「05」と「感光ドラム」とを対応付けて、消耗品リスト35dに登録する。
【0049】
なお、
図9は、消耗品の寿命前ハッシュ値を示す図である。
図9に示す寿命前情報テーブルは、保守員等によって記憶部35等に記憶される。
図9に示すように、寿命前情報テーブルは、「消耗品、寿命(回転数)、寿命前ハッシュ値」を対応付けて記憶する。ここで記憶される「消耗品」は、電子機器の部品を示す。また、「寿命(回転数)」は、消耗品が寿命であると判断できる回転数を示し、「寿命前ハッシュ値」は、寿命と判断できる回転数を特定するハッシュ値を示す。
図9の場合、感光ドラムは6300回転で寿命と判断でき、その回転数に対応するハッシュ値が05であることを示す。また、クリーニングブラシは2100回転で寿命と判断でき、その回転数に対応するハッシュ値が01であることを示す。
【0050】
ここで、特定部39は、各部品について交換目安の回転数を記憶しておき、各部品が交換目安の回転数に到達したか否かを判定し、到達した部品を交換対象として消耗品リスト35dに登録してもよい。なお、特定部39は、交換目安の回転数に到達した部品がない場合には、交換対象なしと特定してもよい。
【0051】
算出部40は、特定部39が特定した交換対象の部品と他の各部品とについて、各部品の交換周期と各部品交換に係るコストとから、交換対象の部品と他の各部品と同時期に交換する場合の第1の作業コストを算出する処理部である。また、算出部40は、別々に交換する場合の第2の作業コストを算出する処理部である。
【0052】
具体的には、算出部40は、制御部36の内部メモリや記憶部35に各種コスト情報を記憶する。コスト情報には、顧客ごとに顧客先までの交通費、部品ごとに保守作業員の作業時間、保守作業員の1時間あたりの作業費用、各部品のランニングコスト、部品の交換費用などが含まれる。そして、算出部40は、更新履歴テーブル35eに記憶される情報から、各部品の交換周期の平均値を算出する。その後、算出部40は、これらの情報を用いて、上記第1の作業コストと第2の作業コストとを算出する。
【0053】
ここで、具体例を説明する。
図10は、交換タイミングの算出例を説明する図である。この例では、交換費用が30万円の感光ドラム13が交換対象として特定され、交換費用が10万円のクリーニングブラシ11を同時に交換する場合のコストと、別々に交換する場合のコストを算出する例で説明する。
【0054】
まず、算出部40は、更新履歴テーブル35eを参照し、感光ドラム13の交換周期の平均を300日と算出し、クリーニングブラシ11の交換周期を100日と算出する。次に、算出部40は、保守員の作業費用が「6500円/1時間」、保守員の交通費が「1万円/1回」、各部品のランニングコストが「10万円/100日」を記憶部35等から読み出す。そして、算出部40は、感光ドラム13を交換する日(
図10の黒丸)から、クリーニングブラシ11を次に交換すると予想される日(
図10の黒三角)までの日を「α」日と仮定する。なお、「感光ドラム」を交換する日とは、使用情報を受信した日の場合もあり、算出部40によって使用情報から数日後と推定される場合もある。
【0055】
ここで、算出部40は、同時交換する場合の第1コストを「ランニングコスト+1回分の交通費+作業費」として「1000α+1万円+(6500円×3時間)」と算出する。一方、算出部40は、個別交換する場合の第2コストを「2回分の交通費+作業費」として「2万円+(6500円×4時間)」と算出する。なお、同時交換する場合は、共通する作業があるので、個別に交換作業を行う場合より短くなる。
【0056】
そして、算出部40は、上述した2式より、「α」が16.5以下であると、第1コストの方が安い、すなわち、同時交換の方が効率的であると判定する。その後、算出部40は、当該算出結果を通知部41に通知する。なお、算出部40は、感光ドラム13と他の部品についても、同様に仮定される「α」について算出する。
【0057】
通知部41は、算出部40による算出結果に基づいて、各種メッセージを保守端末400に送信する処理部である。上記例の場合、通知部41は、更新履歴テーブル35eと使用状況等とから、各部品について次に交換する日を予想する。そして、通知部41は、感光ドラムの交換日と、算出部40が算出した他の各部品の「α」とに基づいて、どの部品を同時に交換した方がいいかなどを、保守端末400に送信する。
【0058】
例えば、通知部41は、今回交換対象と特定された「感光ドラム」を交換する日から16.5日以内に、「クリーニングブラシ」の交換日が訪れる場合に、「感光ドラム」と「クリーニングブラシ」とを同時に交換した方がよい旨のメッセージを送信する。
【0059】
[プリンタが実行する処理]
図11は、プリンタが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図11に示すように、プリンタ10の構成情報送信部17は、プリンタ2が起動等されると(S101:肯定)、RFID等を用いて、プリンタ10内の各部品の情報を収集する(S102)。
【0060】
続いて、TPMチップ15は、構成情報送信部17が収集した各部品に対応するハッシュ値を算出し(S103)、各ハッシュ値を用いて代表ハッシュ値を算出する(S104)。そして、構成情報送信部17は、算出された代表ハッシュ値および各部品に対応するハッシュ値を含む構成情報を、監視センタサーバ30に送信する(S105)。
【0061】
その後、使用情報送信部18は、使用情報の送信タイミングに到達すると(S106:肯定)、RFID等を用いて、各部品から使用情報を収集する(S107)。続いて、TPMチップ15は、使用情報送信部18が収集した各部品の使用情報のハッシュ値を算出する(S108)。その後、構成情報送信部17は、算出された各部品の使用情報に対応するハッシュ値を含む使用情報を、監視センタサーバ30に送信する(S109)。
【0062】
なお、構成情報や使用情報には、ハッシュ値以外にも、電子機器を特定する識別子や電子機器の設定地域を特定する識別子、電子機器や部品の製造番号や製造年月日などを含めることができる。
【0063】
[監視センタサーバが実行する処理]
図12は、監視センタサーバが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図12に示すように、監視センタサーバ30の構成情報登録部37は、プリンタ10からハッシュ値を含む構成情報を受信すると(S201:肯定)、受信した構成情報を構成情報テーブル35aに登録する(S202)。
【0064】
その後、使用情報受信部38は、プリンタ10からハッシュ値を含む使用情報を受信すると(S203:肯定)、受信した使用情報を使用情報テーブル35bに登録する(S204)。続いて、特定部39は、構成情報テーブル35aに登録される構成情報と、受信された使用情報とから、各部品の使用情報を特定する(S204)。
【0065】
そして、特定部39は、特定した各部品の使用情報と、使用情報レベルリスト35cとから、各部品の消耗レベルを検出する(S205)。続いて、特定部39は、例えば最も消耗度が高いなどの条件にしたがって、交換対象の部品を特定する(S206)。つまり、特定部39は、次に交換周期を迎える部品を特定する。
【0066】
その後、算出部40は、更新履歴テーブル35eを参照して、プリンタ10の各部品について平均交換周期を算出する(S207)。続いて、算出部40は、S206で特定した交換対象の部品と他の部品とについて、同時に交換した場合のコストと別々に交換した場合のコストとを算出する(S208)。そして、通知部41は、算出された各コストを保守端末400に通知する(S209)。
【0067】
上述したように、実施例1に係る監視センタサーバ30は、現在の使用情報から次に交換する部品を特定し、当該部品と他の部品について、同時に交換する場合のコストと別々に交換する場合のコストを算出することができる。この結果、遠隔監視する電子機器の消耗品をまとめて交換する方が効率的か、個別に交換する方が効率的かを判断することができるので、部品を効率的に交換することができる。
【0068】
また、実施例1に係る監視センタサーバ30は、TPMチップ15でセキュリティが担保された現在の使用情報を受信して、次に交換する部品を特定することができるので、不正な情報による交換部品の特定を回避することができ、セキュリティ性を高く維持できる。
【0069】
また、実施例1に係る監視センタサーバ30は、算出した各コストを保守端末400に送信するので、保守員は、同時交換する部品を簡単に特定することができる。また、保守員は、各コストを顧客に提出することで、保守交換のアドバイス等を行うことができ、サービスの向上を図れる。
【0070】
また、実施例1に係る監視センタサーバ30は、効率的な交換タイミングを算出することができるので、移動に係る燃料費等を抑制することができるとともに、無用な部品交換を抑制でき、環境に易しい保守を行うことができる。