(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「疎水性の/疎水性」および用語「撥油性の/撥油性」は、例えば、水およびヘキサデカン(または炭化水素、シリコーン油など)の接触角が、それぞれ約90°以上である表面の濡れ挙動を指す。例えば、疎水性/撥油性の表面では、約10〜15μLの水/ヘキサデカン液滴は球状になり、平衡接触角は、約90°以上でああってよい。
【0010】
本明細書で使用する場合、用語「超疎水性/超疎水性の表面」および用語「超撥油性の/超撥油性」は、それぞれ、もっと限定した種類の疎水性および撥油性をもつ表面濡れ性を指す。例えば、超疎水性/超撥油性の表面は、水/ヘキサデカンの接触角が約120°以上であってよい。
【0011】
用語「高疎水性/高疎水性の表面」および「高撥油性の/高撥油性」は、それぞれ、さらにもっと限定した種類の疎水性および撥油性をもつ表面濡れ性を指す。例えば、高疎水性/高撥油性の表面は、水/ヘキサデカンの接触角が約150°以上であり、約10〜15μLの水/ヘキサデカンの液滴は、水平面から数度傾いた表面を自由に転がるだろう。高疎水性/高撥油性の表面上にある水/ヘキサデカン液滴の滑り角は、約10°以下であろう。高疎水性/高撥油性の傾いた表面では、後退する表面の接触角は高く、液滴のうち、坂の上側にある部分の界面が固体表面に張り付く傾向は小さいため、表面にある液滴が滑り落ちないようにする抵抗力に重力が打ち勝つだろう。高疎水性/高撥油性の表面は、前進接触角と後退接触角のヒステリシスが非常に小さいと記述することができる(例えば、40°以下)。なお、液滴が大きくなると、もっと重力の影響を受け、滑りやすくなり、一方、液滴が小さいと、静止した状態または所定の位置にとどまる傾向が大きい可能性がある。
【0012】
本明細書で使用する場合、用語「表面エネルギーが低い」および用語「表面エネルギーがきわめて低い」は、分子が表面に接着する能力を指す。表面エネルギーが低いほど、分子は表面に付着しにくくなるだろう。例えば、表面エネルギーが低いとは、値が約20mN/m
2以下であることを特徴とし、表面エネルギーがきわめて低いとは、値が約10mN/m
2以下であることを特徴とする。
【0013】
固定部材または定着器部材は、1つ以上の機能性層が形成された基板を備えていてもよい。1つ以上の機能性層は、疎水性および/または撥油性、超疎水性および/または超撥油性、または高疎水性および/または高撥油性である表面濡れ性を有する表面コーティングまたは上部層を備えている。支持材料(例えば、紙シート)の上にある融合したトナー画像からのトナー剥離性が良好であり、この性質を維持し、さらに、紙をはがしやすくするために、このような固定部材を、高速高品質の電子写真印刷のための油を用いない定着部材として用いてもよい。
【0014】
種々の実施形態では、固定部材は、例えば、1つ以上の機能性層が形成された基板を備えていてもよい。基板は、例えば、
図1および2に示されるように、特定の構造に依存して、非導電性または導電性の適切な材料を用い、例えば、円柱(例えば、円筒管)、円柱状のドラム、ベルトまたは膜のような種々の形状で作成されてもよい。
【0015】
特定的には、
図1は、本教示による円柱状基板110を備える例示的な固定部材または定着部材100を示し、
図2は、本教示によるベルト基板210を備える、別の例示的な固定部材または定着部材200を示す。
図1に示されている固定部材または定着部材100および
図2に示されている固定部材または定着部材200は、一般化された概略をあらわしており、他の層/基板を加えてもよく、存在する層/基板を除去するか、または変えてもよいことは、当業者には容易に明らかになるはずである。
【0016】
図1において、例示的な固定部材100は、1つ以上の機能性層120(中間層とも呼ばれる)と外側層130とが形成された円柱状基板110を備える定着器ローラーであってもよい。種々の実施形態では、円柱状基板110は、円筒管の形(例えば、内部に加熱ランプを備える中空構造を有するもの、または中身が詰まった円筒状のシャフト)をしていてもよい。
図2において、例示的な固定部材200は、1つ以上の機能性層(例えば、220)と外側表面230とが形成されたベルト基板210を備えていてもよい。ベルト基板210および円柱状基板110は、当業者には知られているように、剛性および構造保全性を維持するために、例えば、ポリマー材料(例えば、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフタルアミド、ポリアミド−イミド、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド、フルオロポリイミドまたはフルオロポリウレタン)、金属材料(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)から作られていてもよい。
【0017】
(基板層)
図1および
図2の基板層110、210は、例えば、開示されている定着器部材向けにベルト、平板および/または円柱形のドラムの形態であってもよい。定着部材の基板は、高い強度と、定着温度で分解しないという物理特性を与え得る限り、制限はない。具体的には、基板は、金属(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)または耐熱性樹脂のプラスチックから作ることができる。耐熱性樹脂の例としては、ポリイミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフタルアミド、ポリエステル、サーモトロピック液晶ポリマーのような液晶材料などが挙げられる。基板の厚みは、定着ベルトを繰り返し回転させることが可能な剛性および柔軟性を両方とも達成することができるような範囲内にあり、例えば、約10μm〜約200μm、または約30μm〜約100μmである。
【0018】
(機能性層)
機能性層120および220の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製)、106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製)、JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Coating(リッチモンド、バージニア)から入手可能))、液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAl
2O
3のような無機粒子と混合してもよい。
【0019】
また、機能性層120および220の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー、例えば、VITON A(登録商標)で商業的に知られているもの、(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られているような、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー、(3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー、例えば、VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)で商業的に知られているもののような種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、種々の名称で商業的に知られており、例えば、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON ETP(登録商標)とともに、上に列挙したものがある。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0020】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0021】
ローラー構造の場合、機能性層の厚みは、約0.5mm〜約10mm、または約1mm〜約8mm、または約2mm〜約7mmであってもよい。ベルト構造の場合、機能性層は、約25μm〜約2mm、または約40μm〜約1.5mm、または約50μm〜約1mmであってもよい。
【0022】
(接着層)
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層(プライマー層と呼ばれることもある)が、剥離層130、230、中間層120、220、基板110、210の間に配置されていてもよい。適切な接着剤の例としては、アミノシランのようなシラン類(例えば、Dow Corning製のHV Primer 10)、チタネート、ジルコネート、アルミネートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、接着剤は、約0.001%溶液〜約10%溶液の形態で基板にワイピングによってのせられてもよい。場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層が、剥離層または外側表面と機能性層と基板との間に配置されてもよい。接着層は、約2nm〜約10,000nm、または約2nm〜約1000nm、または約2nm〜約5000nmの厚みで基板または剥離層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0023】
(剥離層)
トップコートマトリックス中でエアロゲル粒子を含むフルオロプラスチックコーティングを使用し、定着器部材において光沢度が低い画像を得てきた。米国特許出願第13/053,418号は、このような剥離層を記載する。しかし、粉末フルオロプラスチック/エアロゲル混合物の処理は、依然として困難である。粉末コーティングは、定着器コーティングにとって望ましい処理方法であるが、フルオロプラスチックおよびエアロゲル粉末は、粉末コーティングプロセス中に分離する傾向があり、不完全な硬化および非均質な剥離層を生じる。粉末コーティングが硬化したトップコートの結合を促進しつつ、均質な粉末混合物を発見することが望ましい。
【0024】
フルオロプラスチックおよびエアロゲル粉末は、2種類の類似しない粉末であり、コーティングされ、一緒に硬化され、光沢度の低い印刷物を調製するのに適した定着トップコートを作成しなければならない。要素の粉末(負)に対する反対の電荷(正)の摩擦耐電粉末の付加によって、粉末との間に会合が生成し、粉末コーティングプロセス中に均質な混合物を生じる。正の摩擦耐電粉末とフルオロプラスチック粉末およびエアロゲル粒子とを混合すると、硬化して光沢度が低い融合用途のための粘着性コーティングを与えつつ、濡れ性が高まる。
【0025】
剥離層130または230の例示的な実施形態としては、エアロゲル粒子および正の摩擦帯電粒子が分散したフルオロプラスチックが挙げられる。フルオロプラスチックの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、キュアサイトモノマーのテトラポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。フルオロプラスチックは、化学薬品および熱に安定であり、表面エネルギーが低い。フルオロプラスチックは、融点が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃である。
【0026】
定着器部材200の場合、外側表面層または剥離層230の厚みは、約10ミクロン〜約100ミクロン、または約20ミクロン〜約80ミクロン、または約30ミクロン〜約50ミクロンであってもよい。
【0027】
添加剤およびさらなる導電性フィラーまたは非導電性フィラーが、中間層の基材層110および210、中間層120および220、剥離層130および230中に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)を、コーティング組成物に用いてもよく、その後に形成される表面層に用いてもよい。本明細書で用いられる導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなどのようなカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンがドープされた酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムがドープされた三酸化スズなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。特定のポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、有機スルホン酸塩、リン酸エステル、脂肪酸エステル、アンモニウム塩またはホスホニウム塩、およびこれらの混合物を、導電性フィラーとして用いてもよい。種々の実施形態では、当業者に知られている他の添加剤を入れ、開示されているコンポジット材料を作成することもできる。
【0028】
図3A〜4Bおよび
図4A〜4Bは、本発明の教示による定着プロセスのための例示的な定着構造を示す。
図3A〜3Bに示されている定着構造300A〜B、および
図4A〜4Bに示されている定着構造400A〜Bが、一般化された模式的な図を示しており、他の部材/層/基材/構造を追加してもよく、または、すでに存在している部材/層/基材/構造を取り除くか、または変えてもよいことが当業者には容易に明らかになるはずである。本明細書では電子写真式プリンターを記載しているが、開示されている装置および方法を他の印刷技術に応用してもよい。例としては、オフセット印刷およびインクジェット機および固体転写固定機が挙げられる。
【0029】
図3A〜3Bは、本教示による、
図1に示される定着器ローラーを用いた定着構造300A〜Bを示す。構造300A〜Bは、定着器ローラー100(すなわち、
図1の100)を備えていてもよく、この部材は、加圧機構335(例えば、
図3Aの加圧ローラーまたは
図3Bの加圧ベルト)とともに、画像支持材料315のための定着器用ニップを形成する。種々の実施形態では、加圧機構335を、加熱ランプ337と組み合わせて用い、トナー粒子を画像支持材料315の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造300A〜Bは、
図3Aおよび
図3Bに示されているように、1つ以上の外部熱ロール350を、例えば、クリーニングウェブ360とともに備えていてもよい。
【0030】
図4A〜4Bは、本教示による、
図2に示される定着器ベルトを用いた定着構造400A〜Bを示す。構造400A〜Bは、定着器ベルト200(すなわち、
図2の200)を備えていてもよく、このベルトは、加圧機構435(例えば、
図4Aの加圧ローラーまたは
図4Bの加圧ベルト)とともに、媒体基材415のための定着器用ニップを形成する。種々の実施形態では、加圧機構435を、加熱ランプと組み合わせて用い、トナー粒子を媒体基材415の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造400A〜Bは、定着器ベルト200を動かし、媒体基材415の上でトナー粒子を融合させ、画像を作成するような機械システム445を備えていてもよい。機械システム445は、1つ以上のローラー445a〜cを備えていてもよく、必要な場合には、これらを加熱ローラーとして用いてもよい。
【0031】
図5は、ベルト、シート、膜などの形態であってもよい、転写固定部材7の一実施形態の図を示す。転写固定部材7は、上述の定着器ベルト200と似た構成である。現像した画像12が中間転写体1の上にあり、ローラー4および8を介して転写固定部材7と接触し、転写固定部材7に転写される。ローラー4および/またはローラー8は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。転写固定部材7は、矢印13の方向に進む。複写基材9がローラー10と11との間を進むにつれて、現像した画像が複写基材9に転写され、融合する。ローラー10および/または11は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。
【0032】
高疎水性を含む表面特性を高めるコンポジット表面コーティングを記載する。すでに列挙したフルオロプラスチック(例えば、PFA Teflon、PTFE Teflon、FEPなど)は、定着器トップコートとして優れた特性を示すが、このようなトップコートの疎水性を高め、脆弱性を下げることが望ましいだろう。
【0033】
エアロゲル/フルオロプラスチックコンポジットコーティングは、非常に低い表面エネルギーを可能にする高疎水性表面を作り出す。エアロゲルをフルオロプラスチックコーティングに添加すると、弾性率が高まり、表面エネルギーを高める(例えば、カーボンブラックまたは他の硬質フィラー粒子を加えた場合であろう)ことなく、材料の特性を変える機会を得ることができる。
【0034】
フルオロプラスチック粒子およびシリカエアロゲルを定着器ロールの融合トップコート層として用い、光沢度が低い印刷物を得た。印刷物の光沢度を変えるための光沢が低い定着部材(ロールまたはベルト)の使用は、迅速な変更時間を可能にし、また、得られ得る光沢度の範囲を広げることによって、光沢度の低いトナーと比べて利点がある。光沢度の低い印刷物を得るために使用されるフルオロプラスチック/エアロゲル定着器コーティングは、溶媒分散物からのスプレーコーティング、および上部層への溶融硬化によって示された。しかし、スプレーコーティングプロセスによって、粒子の沈澱に起因して、サンプル間の変動が大きくなる。定着器部材のコーティングを製造するのに望ましい処理方法は、粉末コーティングである。
【0035】
粉末コーティングは、自由に流動する乾燥粉末を表面に塗布した後、硬化させることを含むコーティングプロセスである。粉末は、静電的に帯電し、次いで、接地された要素に向かい、コーティング層を生成する。熱を加えると、粉末が溶融し、流動して硬化したコーティングを生成するだろう。PFAおよびエアロゲルのような2種類の粉末の粉末コーティング混合物は、これらの粉末の密度および流動挙動が類似しないため、困難であり、不均質な粉末混合物を生じ、コーティングされる要素の上のエアロゲル濃度が変わってしまう。
【0036】
混合したフルオロプラスチック/エアロゲルコーティングを硬化するのは、フルオロプラスチックを溶融したときに類似しない粒子間の濡れ性が不十分であり、硬化する表面の粘着性が不足するため、さらなる問題がある。粉末コーティングされたフルオロプラスチック粒子およびエアロゲル粒子の硬化したトップコートは、粉末コーティング中にエアロゲルの消失が起こり(表面に多く存在するはずである)、フルオロプラスチックとエアロゲル粒子との間の濡れ性が悪く、大きな空隙および内包物を生じた。表面官能基を付加した粒子を洗浄する工程のようなその他の処理工程は、濡れ性および硬化性を高めるが、この工程は、粉末コーティング中の粒子間の会合をほとんど、またはまったく促進しない。さらに、コーティングを製造するその他の行程を組み込むことを避けることが望ましい。本明細書には、粉末コーティング中に均質な粉末混合物を得ることができ、硬化したトップコートの粘着性を促進するような材料系が開示される。
【0037】
フルオロプラスチック(例えばPFA)とエアロゲル(例えばシリカエアロゲル)の粉末混合物に正の摩擦帯電粒子を加えると、粉末コーティング処理が可能になる。フルオロプラスチックは、エアロゲル粒子と同様に、部分的に負の電荷をもっている。ミクロン未満の大きさの正に耐電した摩擦帯電粒子は、PFAおよびシリカエアロゲル粒子いずれとも会合し、粒子間の会合要素として作用し、2成分混合物を1種類の粉末として挙動させることができる。
図6は、コンポジット粉末混合物中で会合粒子として作用する正の摩擦帯電粒子を描写したものである。
図6において、大きい方の円はフルオロプラスチック粒子およびエアロゲル粒子をあらわす。小さい方の円は摩擦帯電粒子をあらわし、フルオロプラスチック粒子およびエアロゲル粒子の外側表面に引き寄せられる。
【0038】
粉末コーティングプロセス中の粉末会合の結果、均質な混合物が生成し、混合中に低密度エアロゲル粒子が消失することなく、コーティング中に望ましいエアロゲル比を維持する。また、粉末間の会合によって、溶融したフルオロプラスチック粒子およびエアロゲル粒子の濡れ性が増し、光沢の低い融合用途に使用するのに適した空隙のない粘着性コーティングが得られる。
【0039】
適切な摩擦帯電剤は、ヒュームドアルミナである。ヒュームドアルミナは、表面積が約30m
2/g〜約400m
2/g、または約50m
2/g〜約300m
2/g、または約100m
2/g〜約200m
2/gであってもよい。
【0040】
粉末コーティング中の正の摩擦帯電した粒子の量は、粉末の固形分全体の約0.1重量%〜約5重量%、または約0.2重量%〜約3.0重量%、または約0.5重量%〜約1.5重量%の範囲である。正の摩擦帯電粒子の粒径は、約5nm〜約1ミクロン、または約10nm〜約500nm、または約20nm〜約100nmである。
【0041】
適切な正の摩擦帯電粒子は、シリカ、ジルコニア、ゲルマニア、または他の正の金属酸化物材料から作られてもよい。金属酸化物の摩擦帯電粒子は、ヒュームド金属酸化物、沈降金属酸化物またはゲルから作られてもよい。
【0042】
使用する正の摩擦帯電粒子を、疎水性剤で処理し、粒子を疎水性にしてもよい。使用する疎水性剤としては、有機シラン、有機シロキサン、ポリ有機シロキサン、有機シラザン、またはポリ有機シラザンを挙げることができる。
【0043】
使用する正の摩擦帯電粒子を表面剤で処理し、摩擦帯電挙動を高めてもよい。
【0044】
エアロゲルは、一般的な用語では、孔の流体を除去し、孔の流体を空気と交換することによって固相になるまで乾燥させたゲルと記述されるだろう。本明細書で使用する場合、「エアロゲル」は、一般的に、密度がきわめて低いセラミック固体、典型的には、ゲルから作られる材料を指す。したがって、用語「エアロゲル」は、乾燥中にゲルがほとんど縮まず、空隙率および関連する特性が保持された、乾燥させたゲルを示すために用いられる。これとは対照的に、「ヒドロゲル」は、孔の流体が水系流体である濡れたゲルを記述するために用いられる。用語「孔の流体」は、孔要素を作成している間に孔構造内に入った流体を記述する。乾燥させると(例えば、超臨界乾燥)、かなりの量の空気を含むエアロゲル粒子が形成され、密度が低い固体が得られ、表面積が大きくなる。種々の実施形態では、エアロゲルは、質量密度が小さく、比表面積が大きく、空隙率が非常に大きいことを特徴とする低密度微孔性材料である。特に、エアロゲルは、互いに接続した小さな大量の孔を含む固有の構造を特徴とする。溶媒を除去した後、重合した材料を不活性雰囲気中で熱分解させ、エアロゲルを作成する。
【0045】
任意の適切なエアロゲル要素を使用してもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、例えば、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されてもよい。特定の実施形態では、セラミックエアロゲルを適切に用いることができる。これらのエアロゲルは、典型的には、シリカで構成されているが、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア)または炭素で構成されていてもよく、場合により、金属のような他の元素がドープされていてもよい。ある種の実施形態では、エアロゲル要素は、ポリマーエアロゲル、コロイド状エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されるエアロゲルを含んでいてもよい。
【0046】
実施形態のエアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.9%であってもよく、このとき、エアロゲルは、99.9%の空の空間を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.0%、または50%〜約98%である。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素の孔は、直径が約2nm〜約500nm、または約10nm〜約400nm、または約20nm〜約100nmであってもよい。具体的な実施形態では、エアロゲル要素は、空隙率が50%より多くてもよく、直径が、100nm未満、さらには約20nm未満であってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、球状、ほぼ球状、円柱型、棒状、ビーズ状、立方体、平板状などの形状を有する粒子の形態であってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、平均体積粒径が約1μm〜約100μm、または約3μm〜約50μm、または約5μm〜約20μmのエアロゲル粒子、粉末、または分散物を含む。エアロゲル要素は、ポリマー材料内に、十分に分散した1個の粒子として、または1個の粒子または2個以上の粒子の凝集体の概観をしたエアロゲル粒子を含んでいてもよい。
【0048】
一般的に、特定の実施形態で使用されるエアロゲルの種類、空隙率、孔の大きさ、量は、得られる組成物の望ましい特性およびポリマーの特性およびエアロゲルが組み込まれる溶液の特性に基づいて選択されてもよい。例えば、プレポリマー(例えば、処理粘度が比較的低い、例えば、10センチストークス未満の低分子量ポリウレタンモノマー)が一実施形態で使用するために選択される場合、高い空隙率(例えば、80%より大きい)および高い比表面積(例えば、約500m
2/gmより大きい)の粒径が比較的小さい(例えば、約100nm未満)エアロゲルを比較的高い濃度で(例えば、約2重量%より大きく、約20重量%まで)を中程度のエネルギーから高エネルギーでの混合技術を用いることによって、例えば、温度、高いせん断および/またはブレンドを制御することによってプレポリマーに混合する。疎水性型のエアロゲルを使用し、プレポリマーを架橋し、硬化/後硬化し、ポリマーおよびエアロゲルフィラーの非常に長いマトリックスを生成する場合、得られたコンポジットは、フィラーを加えずに同様に調製されたサンプルと比較して、改良された疎水性を示し、硬度が高まるだろう。疎水性の向上は、液相プロセス中で相互作用するポリマーおよびエアロゲルから誘導されてもよく、それによって、ポリマーの分子鎖の一部がエアロゲルの孔に入り込み、エアロゲルの孔ではない領域は、そうでなければ水分子が入り込み、占有するような分子間の空間のいくつかまたは全部を占めるように機能する。
【0049】
さらに、いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、表面積が約400m
2/g〜約1200m
2/g、例えば、約500m
2/g〜約1200m
2/g、または約700m
2/g〜約900m
2/gであってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、電気抵抗率が約1.0×10
−4Ω−cmより大きく、例えば、約0.01Ω−cm〜約1.0×10
16Ω−cm、約1Ω−cm〜約1.0×10
8Ω−cm、または約50Ω−cm〜約750,000Ω−cmの範囲であってもよい。種々の実施形態で使用する異なる種類のエアロゲルも、電気抵抗率が導電性(約0.01Ω−cm〜約1.00Ω−cm)から絶縁性(約10
16Ω−cmより大きい)まで広がっていてもよい。実施形態の導電性エアロゲル、例えば、炭素エアロゲルを他の導電性フィラーと合わせ、それ以外の方法では得ることが困難な物理特性、機械特性、電気特性の組み合わせを得てもよい。
【0050】
無機エアロゲル(例えば、シリカエアロゲル)は、一般的に、金属酸化物のゾル−ゲル重縮合によって作られ、高度に架橋した透明なヒドロゲルを生成する。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、無機エアロゲルを作成する。
【0051】
有機エアロゲルは、一般的に、レゾルシノールおよびホルムアルデヒドのゾル−ゲル重縮合によって作られる。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、有機エアロゲルを作成する。
【0052】
炭素エアロゲルは、一般的に、不活性雰囲気下で有機エアロゲルを熱分解することによって作られる。炭素エアロゲルは、共有結合したナノメートルサイズの粒子から構成され、この粒子は、三次元網目構造に整列している。炭素エアロゲルは、高い表面積をもつ炭素粉末とは異なり、酸素の自由表面を有し、これを化学的に修飾し、ポリマーマトリックスとの相溶性を高めることができる。それに加えて、炭素エアロゲルは、一般的に導電性であり、電気抵抗率が約0.005Ω−cm〜約1.00Ω−cmである。具体的な実施形態では、コンポジットは、1種類以上の炭素エアロゲルおよび/または1種類以上の炭素エアロゲルと1種類以上の無機エアロゲルおよび/または有機エアロゲルを含んでいてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態で含まれてもよい炭素エアロゲルは、ポリマーおよびコロイドという2つの形態的な種類を示し、別個の特徴を有する。炭素エアロゲルの形態的な種類は、エアロゲル調製の詳細によって変わるが、両者とも、分子クラスターの動的凝集から生じる。すなわち、ナノ孔、20Å(オングストローム)未満であってもよく、互いにより合わさったナノ結晶性黒鉛リボンで構成される炭素エアロゲルの一次粒子がクラスターを形成して二次粒子(つまりメソ孔)を生成し、この二次粒子は、約20Å〜約500Åであってもよい。これらのメソ孔は、鎖を形成して多孔性炭素エアロゲルマトリックスを生成してもよい。炭素エアロゲルマトリックスは、いくつかの実施形態では、例えば、適切な溶融ブレンド技術または溶媒混合技術によって、ポリマーマトリックスに分散していてもよい。
【0054】
エアロゲル粒子は、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、アミノシランおよびメタクリルシランからなる群から選択される表面官能基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、表面処置材料は、エアロゲルに対して反応性であり、修飾された表面相互作用をもたらす官能基を含む。また、表面処置は、組成物表面に対し、非接着性の相互作用を可能にするのにも役立つ。
【0055】
例えば、一実施形態では、エアロゲル要素は、平均粒径が5〜15ミクロン、空隙率が90%以上、バルク密度が40〜100kg/m
3、表面積が600〜800m
2/gのシリカシリケートであってもよい。もちろん、所望な場合、1種類以上の性質がこれらの範囲からはずれた材料を使用することができる。
【0056】
エアロゲル要素の特性に依存して、エアロゲル要素をそのまま使用してもよく、または、エアロゲルを化学的に修飾してもよい。例えば、エアロゲル表面の化学物質を種々の用途のために修飾してもよく、例えば、親水性または疎水性の特性を有するように、エアロゲル表面をエアロゲルの分子構造の上または中にある化学置換基によって修飾してもよい。例えば、化学修飾は、エアロゲル要素の疎水性を改良するのに望ましいことがある。このような化学処理が望ましい場合、当該技術分野でよく知られている任意の従来からある化学処理を使用することができる。例えば、このようなエアロゲル粉末の化学処理は、表面のヒドロキシル基を有機基または部分的にフッ素化した有機基と置き換えることなどを含んでいてもよい。
【0057】
ある具体的で非限定的な例は、すでに化学的に処理された市販の粉末、粒径が約5〜15ミクロンのDow Corning VM−2270エアロゲル微粒子である。
【0058】
いくつかの実施形態では、表面コーティングは、フルオロプラスチック要素に分散または結合した少なくとも1つの上述のエアロゲルを少なくとも含んでいてもよい。具体的な実施形態では、エアロゲルは、フルオロプラスチック要素の均一に分散および/または結合するが、いくつかの実施形態では、特定の目的を達成するために、不均一な分散物または結合を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、エアロゲルは、表面層、基材層、異なる単一層の一部などのエアロゲル濃度が高くなるように、フルオロプラスチック要素に不均一に分散または結合していてもよい。
【0059】
望ましい結果を得るために、任意の適切な量のエアロゲルをフルオロプラスチック要素に組み込んでもよい。例えば、コーティング層は、表面コーティングの合計重量の約0.1重量%〜約10重量%のエアロゲル、または約0.2重量%〜約5重量%のエアロゲル、または約0.5重量%〜約2重量%のエアロゲルから作られてもよい。エアロゲル粒子の粒径は、約1μm〜約100μm、または約3μm〜約50μm、または約5μm〜約20μmである。
【0060】
表面コーティングは、表面自由エネルギーが、コンポジットで使用されるフルオロプラスチック基材層の表面エネルギーより低い。このことは、フルオロプラスチックに依存する。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子が分散したフルオロプラスチックは、表面エネルギーが20mN/m
2未満の表面層を生成する。いくつかの実施形態では、表面自由エネルギーは、超疎水性表面では10mN/m
2未満、または10mN/m
2〜2mN/m
2、または10mN/m
2〜5mN/m
2、または10mN/m
2〜7mN/m
2である。
【0061】
TeflonおよびPFAのようなフルオロプラスチックは、一般的に粉末から処理され、次いで、約300℃〜約380℃の溶融温度まで上げ、粘着性コーティングを作成する。エアロゲルとフルオロプラスチック粒子を合わせ、溶融温度まで上げたら、エアロゲル粒子が包まれた、融合したフルオロ樹脂マトリックスが生成する。剥離層には、フルオロプラスチックマトリックス全体に分散したエアロゲルフィラー粒子が、剥離層の固形分全体の0.1重量%〜10重量%の比率で組み込まれている。いくつかの実施形態では、エアロゲルの量は、剥離層の合計重量の約0.2重量%〜約5重量%、または約0.5重量%〜約2重量%であった。
【0062】
フルオロプラスチックとエアロゲルの組成物を基材の上に粉末コーティングし、表面層を作成する。粉末コーティング中、粉末組成物を静電的にスプレーコーティングし、静電的に流動床によってコーティングし、静電磁気ブラシによってコーティングし、または、任意の適切な既知の様式で基材に流動床によってコーティングしてもよい。
【実施例】
【0063】
シリカエアロゲル粒子とペルフルオロアルコキシ(PFA)ポリマー粒子の粉末混合物を、Cabot製の正の摩擦帯電粉末である異なる量のSpectrAl(商標)100(95m
2/g ヒュームドアルミナ)およびSpectrAl(商標)51(55m
2/g フュームドアルミナ)と合わせた。
【表1】
【0064】
表1のすべてのサンプルをResodyn(登録商標)Acoustic Mixerを加速度60g、強度100%、共鳴周波数61.2Hzに設定して2分間混合した。
【0065】
各サンプル中の粉末を混合した後に圧縮した。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、アルミナ粒子が、PFA粒子およびエアロゲル粒子両方の表面に存在することを示していた(
図7)。アルミナは、エアロゲル粒子表面にきわめて接着しやすかった。粒子間の会合は、SEM分析中に示されており、粉末混合物の部分的な積み重なりおよびクラスター化として観察された。
【0066】
その後、表1の粉末混合物をOlympia定着器ロールに粉末コーティングした。区画にわけた覆いを用い、2種類の異なるサンプルをそれぞれのロールにコーティングした。330℃で20分間硬化させた後の膜厚は、35ミクロンであり、それぞれの材料について、ロールの光沢を中心部で記録し、厚み方向のSEMのために膜を切断した。
【0067】
初期の光沢の結果は、アルミナを加えたときの光沢の増加と、もっとアルミナを加えるにつれて光沢が減少していくのを示している(表2)。すべての場合において、アルミナを添加すると、コントロールから得られた値から光沢が増加する。SEMの結果から、コントロールサンプルが、非常に光沢が低いことの原因になる非粘着性層を含むことが確認された。比較として、サンプル1、2および3は、表面にあるエアロゲル粒子に起因する表面の質感を維持しつつ、膜の粘着性の向上を示す。このことは、汚染の問題がないマット印刷にとって望ましい状態である。SpectrAl粉末を導入すると、硬化後に改良された膜粘着性を生じ、もっと高い光沢値で反射した。アルミナ粉末の組み込み量がもっと多くなると、表面は荒くなり、平坦ではなくなり、このことは、均一なコーティング表面に必要とされる最適なアルミナ保持量を示している。
【表2】
【0068】
本明細書に記載する開示内容は、粉末コーティングに適した約0.01重量%〜約5重量%で加えられたフルオロプラスチック粉末、エアロゲルフィラー、正の摩擦帯電粒子を含む粉末系を示す。さらに、正の摩擦帯電粉末を加えると、類似しない粉末を会合させることができる。これにより、粉末コーティングおよび均質な剥離層が可能になる。正の摩擦帯電粉末を加えると、一緒に硬化させて粘着性剥離層を形成しつつ、類似しない粉末の表面を濡らすことができる。フルオロプラスチック粉末、シリカエアロゲルフィラーおよび正の摩擦帯電粉末の硬化した剥離層は、光沢が低い融合用途に適している。正の摩擦帯電粉末は、アルミナ粉末であってもよい。