(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、エネルギー線硬化型インクジェット組成物、ならびにこれを用いた加飾用フィルムの製造方法および加飾成型品の製造方法に関するものである。
以下、本発明のエネルギー線硬化型インクジェット組成物、加飾用フィルムの製造方法および加飾成型品の製造方法について説明する。
【0017】
A.エネルギー線硬化型インクジェット組成物
まず、本発明のエネルギー線硬化型インクジェット組成物について説明する。
本発明のエネルギー線硬化型インクジェット組成物は、エチレン性不飽和二重結合およびアミド基を有する非環状反応性アミド化合物と、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有し、かつ、ポリシロキサン構造を有する多官能ポリシロキサン化合物と、を有し、上記非環状反応性アミド化合物の上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物中の含有量が2質量%〜7質量%の範囲内であり、上記多官能ポリシロキサン化合物の上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物中の含有量が1質量%〜4質量%の範囲内であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物をそれぞれ所定量含むことにより、ブロッキング性、延伸性および吐出性に優れたものとすることができる。
ここで、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物をそれぞれ所定量含むことにより、ブロッキング性等に優れたものとすることができる理由については以下のように推察される。
【0019】
上記非環状反応性アミド化合物は、アミド基を有していることにより硬化型インクに含まれる重合性化合物等のモノマー成分への溶解性が高く、インキ組成の設計がしやすくなる他、印刷するPETフィルムやABSのような樹脂基材に浸透し密着性を向上させることができる。
また、非環状であること、すなわち、環状構造を含まないことにより、立体障害が少なく、ビニル基当量(eq/g)が大きいものとすることが容易であることから、重合反応速度が速く、上記非環状反応性アミド化合物を含む硬化型インクの塗膜は、エネルギー線照射を受けた際に塗膜表面で硬化し易いものとなる。
このため、このような非環状反応性アミド化合物を所定量含むことにより、塗膜表面において効率良く硬化を進行させることができ、硬化後の装飾層表面の粘着性の低いものとすることができる。このためブロッキング性に優れたものとすることができる。
【0020】
また、多官能ポリシロキサン化合物は、疎水性であるポリシロキサン構造を有していることにより、基材表面に対してレベリング効果およびスリップ剤として働き重合性基が重合した際に、ブロッキング性に優れた強固な膜となりうる。また、エチレン性不飽和二重結合が4以上であることにより、装飾層中において網目状に架橋することができる。
このため、このような多官能ポリシロキサン化合物を所定量含むことにより、装飾層内部を適度に架橋させることができ、硬化後に装飾層内部が外部から応力が加わった場合であっても表面に滲み出さないものとすることができる。その結果、硬化後の装飾層をブロッキング性に優れたものとすることが可能となる。
また、多官能ポリシロキサン化合物による内部架橋を、上記非環状反応性アミド化合物による表面硬化と共に進行させてブロッキング性を向上させることにより、硬化後の装飾層を内部が過度に架橋されたものとなることを抑制できる。このため、このような硬化後の装飾層を、加熱により十分に延伸可能なものとすることができる。
さらに、ポリシロキサン構造を有するため、平滑な塗膜を得られるため、装飾層を均一に延伸することができる。また、硬化型インクの粘度が高粘度となることを抑制でき、吐出性に優れたものとすることができる。
【0021】
このようなことから、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物をそれぞれ所定量含むことにより、硬化後の装飾層の延伸性を低下させることなく、ブロッキング性を向上させ、さらに、吐出性に優れたものとすることができるのである。
【0022】
本発明のエネルギー線硬化型インクジェット組成物は、非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物を有するものである。
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0023】
1.非環状反応性アミド化合物
本発明に用いられる非環状反応性アミド化合物は、エチレン性不飽和二重結合およびアミド基を有するものである。また、上記硬化型インク中の含有量が2質量%〜7質量%の範囲内のものである。
ここで、非環状であるとは、アミド基を構成する窒素原子およびカルボニル基の炭素原子間の窒素−炭素結合が環状構造の一部に含まれる構造ではないことをいうものである。
【0024】
ここで、エチレン性不飽和二重結合の数としては、1以上であれば特に限定されるものではないが、1〜4の範囲内であることが好ましく、なかでも、1〜2の範囲内であることが好ましく、特に1であることが好ましい。
上記数であることにより、反応速度の速いものとすることができブロッキング性に優れたものとすることができるからである。また、架橋箇所を少ないものとすることができることにより、延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0025】
上記アミド基の数、すなわち、カルボニル基およびカルボニル基の炭素に結合した窒素原子の数としては、1以上であれば特に限定されるものではないが、1〜4の範囲内であることが好ましく、なかでも、1〜2の範囲内であることが好ましく、特に1であることが好ましい。上記数であることにより、上記非環状反応性アミド化合物を反応速度の速いものとすることができブロッキング性に優れたものとすることができるからである。また、架橋箇所を少ないものとすることができることにより、延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0026】
上記非環状反応性アミド化合物の分子量としては、所望の反応速度とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、70〜300の範囲内であることが好ましく、なかでも70〜200の範囲内であることが好ましく、特に70〜80の範囲内であることが好ましい。上記分子量であることにより、上記非環状反応性アミド化合物を反応速度の速いものとすることができ、ブロッキング性により優れたものとすることができるからである。
【0027】
上記非環状反応性アミド化合物としては、エチレン性不飽和二重結合およびアミド基を含むものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アミド基のカルボニル基の炭素原子がビニル基に結合したN−置換または非置換(メタ)アクリルアミド化合物、アミド基の窒素原子がビニル基に結合したN−ビニルアミド等を挙げることができ、なかでも、N−置換(メタ)アクリルアミド化合物、N−ビニルアミドであることが好ましく、特に、N−ビニルアミドであることが好ましい。N−ビニルアミドは反応速度が特に速く、ブロッキング性により優れたものとすることができるからである。
【0028】
具体的なN−置換(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミドスルフォン酸、ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、なかでも、(メタ)アクリロイルモルホリンであることが好ましい。
また、N−ビニルアミドとしては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N-ビニルイソブチルアミド、N-イソブチル−N−ビニルアセトアミド等を挙げることができ、なかでも、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドであることが好ましく、特に、N−ビニルホルムアミドであることが好ましい。
上記化合物であることにより、ビニル当量がより小さく反応性が高いからである。
本発明においては、これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。
【0029】
非環状反応性アミド化合物の上記硬化型インク中の含有量としては、2質量%〜7質量%の範囲内であれば特に限定されるものではないが、3質量%〜6質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、3質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量であることにより、装飾層表面での硬化が進行し、装飾層内部の硬化が不十分となることを防止し、硬化後の装飾層に対して外部から応力が加わった際に、内部の未硬化物が表面に滲み出しブロッキングの原因となることをより効果的に抑制することができるからである。
なお、含有量は、硬化型インク全体中の質量の割合を示すものである。
【0030】
2.多官能ポリシロキサン化合物
本発明に用いられる多官能ポリシロキサン化合物は、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有し、かつ、ポリシロキサン構造を有するものである。また、上記硬化型インク中の含有量が1質量%〜4質量%の範囲内のものである。
【0031】
ポリシロキサン構造としては、シロキサン結合を主骨格として有するものであり、具体的には、下記式(1)に示されるシロキサン構成単位を1以上有するものを用いることができる。
【0033】
(式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基である。nは2以上の整数)
【0034】
本発明におけるR
1およびR
2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基であれば特に限定されるものではないが、なかでも炭素数1〜5のアルキル基、であることが好ましく、特に、メチル基、であることが好ましい。分子量が大きくなると柔軟性や延伸性が損なわれるからである。
また、上記式(1)に示されるn、すなわち、シロキサン構成単位の繰返し数としては、2以上であれば特に限定されるものではないが、なかでも本発明においては、2〜230であることが好ましく、特に、45〜230であることが好ましい。上記含有量より少ないとスリップ性が得られなくなり、多いと他のモノマーや樹脂との相溶性の悪化が懸念され、また粘性が高くなることから、適正なインクの粘度が保てなくなるからである。
【0035】
上記エチレン性不飽和二重結合の数としては、4以上であれば特に限定されるものではないが、4〜8の範囲内であることが好ましく、なかでも4〜6の範囲内であることが好ましく、特に、4であることが好ましい。上記数が上述の範囲内であることにより、装飾層内部において架橋箇所が多すぎ延伸性が低下することや、架橋箇所が少なすぎることで装飾層に外部から応力が加わった際に装飾層表面に滲み出ることを抑制できるからである。
【0036】
上記エチレン性不飽和二重結合のポリシロキサン構造への結合箇所としては、4個以上の上記エチレン性不飽和二重結合を安定的に結合できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリシロキサン構造の片末端または両末端のケイ素原子や、ポリシロキサン構造の側鎖、すなわち、上記式(1)のR
1およびR
2の少なくともいずれか一方としてエチレン性不飽和二重結合を含むエチレン性不飽和二重結合含有シロキサン構成単位を有するものとすることができる。
本発明においては、なかでも、ポリシロキサン構造の片末端または両末端のケイ素原子であることが好ましく、特に、ポリシロキサン構造の両末端のケイ素原子に結合するものであることが好ましい。反応性に優れたものとすることができるからである。
【0037】
上記エチレン性不飽和二重結合のポリシロキサン構造への結合方法としては、上記エチレン性不飽和二重結合が重合可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記エチレン性不飽和二重結合を構成する炭素原子がポリシロキサン構造のケイ素原子に直接結合したものであっても良いが、スペーサを介して結合するものであることが好ましい。
このようなスペーサとしては、例えば、脂肪族ポリエステル等のポリエステル鎖、ポリエチレンオキサイド鎖やポリプロピレンオキサイド鎖等のポリエーテル鎖、ウレタン構造、アルキレン基等の2価以上の有機基を挙げることができる。
また、エチレン性不飽和二重結合がポリシロキサン構造からアルキレン基、ウレタン構造およびポリエステル鎖を介して結合する等、上記スペーサを組み合わせて用いても良い。
【0038】
多官能ポリシロキサン化合物の分子量としては、所望の吐出性とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、5000〜100000の範囲内であることが好ましく、なかでも10000〜50000の範囲内であることが好ましく、特に10000〜25000の範囲内であることが好ましい。上記分子量が上述の範囲内であることにより、低粘度なものとすることができ、吐出性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記分子量は、重量平均分子量Mwを示すものであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値であり(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として測定したものである。
【0039】
このような多官能ポリシロキサン化合物としては、具体的には、下記式(2)に示すものを用いることができる。
【0041】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3の2価のアルキレン基である。Xはポリウレタンである。Yはポリエステル鎖である。mは0〜3の整数である。)
【0042】
上記Rで示される炭素数1〜3の2価のアルキレン基としては、ジメチルシロキサンのケイ素原子と上記ポリウレタンXと結合可能なものであれば特に限定されるものではない。
上記Xは、ポリウレタンであり、ウレタン結合を1以上有し、上記Rおよび2つのポリエステル鎖Yと結合可能な3価のポリウレタンであれば特に限定されるものではない。
また、上記Yで示されるポリエステル鎖としては、アクリル基およびポリウレタンXと結合な2価のものであれば特に限定されるものではない。
【0043】
また、上記多官能ポリシロキサン化合物としては、市場で入手可能なものとしては、例えば、ビックケミー社製のBYK-UV3570(アクリル基がポリエステル鎖を介してポリジメチルシロキサンの両末端に2個ずつ結合したアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、エチレン性不飽和二重結合数4)、デグサ社製のTEGO−Rad2010(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数5)、TEGO−Rad2011(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数5)、TEGO−Rad2100(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数5)、TEGO−Rad2100(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数5)、TEGO−Rad2600(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数8)、TEGO−Rad2650(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数4)、TEGO−Rad2700(シリコーン変性アクリレート、エチレン性不飽和二重結合数6)等を挙げることができ、なかでもBYK-UV3570、TEGO−Rad2650を好ましく用いることができ、特に、BYK-UV3570を好ましく用いることができる。上記化合物であることにより、ブロッキング抑制効果と延伸性が最も両立できるからである。
【0044】
多官能ポリシロキサン化合物の上記硬化型インク中の含有量としては、1質量%〜4質量%の範囲内であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、1.2質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、エネルギー線照射後に、装飾層内部が外部から応力が加わった場合であっても、表面に滲み出すことを抑制でき、かつ、十分な延伸性を有する程度に装飾層内部を網目状に架橋することができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。また、硬化型インクの粘度が高粘度となることを抑制でき、吐出性により優れたものとすることができるからである。
【0045】
3.その他の成分
本発明の硬化型インクは、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物を有するものであるが、必要に応じて、着色剤および重合開始剤を含むものである。
また、装飾層の物性の調整等を目的として、必要に応じて重合性化合物やレベリング剤などや、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料、可塑剤などの公知の一般的な添加剤を、任意成分として配合してもよい。
【0046】
(1)着色剤
本発明に用いられる着色剤としては、インクに一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、顔料、染料等を用いることができる。
【0047】
上記顔料としては、有機顔料および無機顔料を用いることができる。
【0048】
具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。
【0049】
上記無機顔料の具体例としては、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸バリウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
【0050】
上記顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、硬化型インク中においてメジアン径(D50)が5nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、30nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。メジアン径が上記の上限値以下であれば、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができ、得られる印刷物を高品質のものとすることができるからである。メジアン径が上記の下限値以下の場合には耐光性が低下する場合があるからである。
なお、上記顔料の平均分散粒子径は、インクをエチルジグリコールアセテートで約50倍に希釈した測定試料を用意し、動的散乱光法により測定して得たものである。具体的には、測定温度25℃にてレーザー回折・散乱式粒度分析計 マイクロトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0051】
上記着色剤の含有量としては、所望の画像を形成可能であれば特に限定されるものではなく、適宜調整されるものである。具体的には、着色剤の種類によっても異なるが、硬化型インク中に0.5質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、特に、1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、着色剤の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができるからである。
【0052】
上記着色材として顔料が用いられる場合、上記顔料は、通常、顔料誘導体や顔料分散剤と共に用いられる。顔料の分散性に優れたものとすることができるからである。
このような顔料誘導体としては、例えば、ジアルキルアミノアルキルスルホン酸アミド基を有する顔料誘導体や、ジアルキルアミノアルキル基を有する顔料誘導体などが挙げられる。
上記顔料分散剤としては、例えば、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、分散安定性の点から、カチオン性基またはアニオン性基を含む高分子化合物が好ましい。市場で入手可能な顔料分散剤としては、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、BASF社製のEFKAなどが挙げられる。硬化型インク中の顔料誘導体及び顔料分散剤の含有量はそれぞれ、組成物全体に対して、0.05質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0053】
(2)重合開始剤
本発明に用いられる重合開始剤としては、エネルギー線の照射を受けた際に、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物を重合可能なものである。
【0054】
本発明におけるエネルギー線としては、電子線、紫外線、赤外線などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるものを挙げることができる。
【0055】
上記重合開始剤としては、エネルギー線の照射を受けた際に、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物を重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、エネルギー線の種類等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミノカルボニル系開始剤、ケトン系開始剤等を用いることができる。
本発明においては、なかでも、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤を好ましく用いることができ、特に、アシルホスフィンオキサイド系開始剤およびチオキサントン系開始剤を好ましく用いることができる。これらの化合物、特に、アシルホスフィンオキサイド系開始剤は着色が少なく白色に近いため、インクの色相へあたえる影響が少ないからである。
【0056】
上記アシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、例えば、4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なアシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、BASF社製のDAROCURE TPOなどが挙げられる。
【0057】
α−アミノアルキルフェノン系開始剤としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なα−アミノアルキルフェノン系開始剤としては、BASF社製のIRGACURE 369、IRGACURE 907などが挙げられる。
【0058】
チオキサントン系開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン,2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なチオキサントン系開始剤としては、日本化薬社製のKAYACURE DETX−S、ダブルボンドケミカル社製のChivacure ITXなどが挙げられる。
【0059】
アミノカルボニル系開始剤としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、並びにイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエート等が挙げられる。
ケトン系開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0060】
上記重合開始剤の含有量としては、上記非環状反応性アミド化合物等を所望の重合度で重合できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硬化型インク中に5質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、特に10質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、感度に優れ、また、他の成分を十分に含むことができ、硬化性に優れたものとすることができるからである。
また、重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系開始剤およびチオキサントン系開始剤の両者を組み合わせて用いる場合には、アシルホスフィンオキサイド系開始剤の含有量としては、5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、7質量%〜12室量%の範囲内であることが好ましく、8質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、チオキサントン系開始剤の含有量としては、1質量%〜6質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜4質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜2質量%の範囲内であることが好ましい。アシルホスフィンオキサイド系開始剤の含有量をチオキサントン系開始剤より多くすることにより、硬化型インクの発色性に優れたものとすることができるからである。
【0061】
(3)重合性化合物
本発明に用いられる重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合を1以上有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、エチレン性不飽和二重結合が1つである単官能モノマー、エチレン性不飽和二重結合が2以上である多官能モノマーおよび多官能オリゴマー等を用いることができる。また、本発明においては、これらを組み合わせて用いることができる。
本発明においては、なかでも、エチレン性不飽和二重結合が2以下であるモノマーまたはオリゴマーを含むことが好ましい。密着性に優れた装飾層の形成が可能であり、また、装飾層の延伸性の調整が容易だからである。
【0062】
上記単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリルカルビトール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、バラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシボリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーやN−ビニルピロリドン、5−メチルN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の環状反応性アミド化合物を挙げることができる。
【0063】
また、多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオベンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオベンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールブロバントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0064】
また、上記多官能オリゴマーとしては、例えば、特開2010−70754号公報等に記載のウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等のエチレン性不飽和二重結合を2有する2官能オリゴマーを用いることができる。
【0065】
上記重合性化合物の含有量としては、装飾層を所望の物性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、硬化型インク中に0.5質量%〜8質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5質量%〜6質量%の範囲内であることが好ましく、特に1質量%〜4質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、塗膜を柔らかすぎず、十分な強度を有するものとすることができるからである。また延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0066】
(4)レベリング剤
本発明に用いられるレベリング剤としては、表面張力調整を目的に硬化型インクに一般的に用いられるものを使用することができる。
このようなレベリング剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物が挙げられる。シリコーン系化合物であることにより、硬化型インクの表面張力などの液物性の微調整が容易だからである。また、上記シリコーン系化合物の中でも、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有するシリコーン系化合物が好ましく、なかでも、エチレン性不飽和二重結合の数が4未満であるシリコーン系化合物であることが好ましい。密着性に優れた装飾層の形成が可能であり、また、装飾層の延伸性の調整が容易だからである。
【0067】
上記レベリング剤の含有量としては、所望の粘度とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硬化型インク中に0.01質量%〜0.2質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.01質量%〜0.1質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.01質量%〜0.05質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、基材への濡れ性に優れ、所望の画質を得ることができるからである。また、プリンタヘッドの吐出部を濡れすぎることを抑制し、吐出性に優れたものとすることができるからである。
【0068】
4.エネルギー線硬化型インクジェット組成物
本発明の硬化型インクの粘度としては、インクジェット装置を用いて吐出できるものであれば特に限定されるものではないが、8.0mPa・s〜12.5mPa・sの範囲内であることが好ましく、なかでも9.0mPa・s〜12.5mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、10.5mPa・s〜12.5mPa・sの範囲内であることが好ましい。上記粘度が上述の範囲内であることにより、本発明の硬化型インクを吐出性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記粘度は、40℃での粘度を示すものである。また、測定方法としては、落球式粘度計法を用いて角度30°、直径3mmスチールボールを用いる条件で測定する方法を用いることができ、例えば、アントンパール社製AMVnで測定する方法を用いることができる。
【0069】
本発明の硬化型インクの延伸性としては、所望の加飾を行うことができるものであれば特に限定されるものではないが、200%以上であることが好ましく、なかでも300%以上であることが好ましく、特に、340%以上であることが好ましい。上述の延伸性を有することにより、被加飾部材として三次元立体成型物の加飾を高精度に行うことが可能となるからである。
なお、延伸性に優れるほど三次元立体成型物の加飾が容易になることから特に上限を設けないが、通常、装飾層の強度および色濃度等の観点から、450%以下である。
また、上記硬化型インクの延伸性とは、上記硬化型インクを用いて形成された塗膜を硬化させた、硬化後の装飾層の延伸性をいうものである。
このような延伸性の測定方法としては、上記延伸性を測定可能なものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、サンプル基材として、大きさ50mm×100mm、厚さ5mmのアクリル板(三菱レーヨン アクリライトEX)を用い、このサンプル基材上にバーコーター#6にて硬化型インクを塗布後、UV露光装置(GS YUASA社製 B125D−C10−SM−J)にて300mJ/cm
2(λ=365nm)露光して塗膜を硬化させることにより得られたサンプル基板および厚さ7mmの装飾層からなる試験片を作製し、これを140℃のホットプレートに4分間静置した後、試験片の長手方向の両端を持って、引っ張り速度500〜1000mm/分で引張り、装飾層の割れが生じない最大伸びを測定し、伸び率(延伸後の長さ/延伸前の長さ)×100(%)を計算する方法を用いることができる。
また、このような延伸性については、上記非環状アミド化合物、多官能ポリシロキサン化合物および重合性化合物等の各成分の種類や含有量等により調整することができる。
【0070】
本発明の硬化型インクの調製方法としては、上記各成分を均一に分散または溶解させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、硬化型インクに一般的に用いられる方法を使用することができる。
具体的には、まず、着色材と、非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物の一部と、必要により分散剤とを混合し、この混合物を分散機により分散させ、次いで、混合物に残りの成分を添加し、攪拌機を用いて均一になるまで混合する方法を挙げることができる。
なお、分散機としては、例えば、ディスパ;ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル;サンドミルなどの高速回転ミル;撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミルなどを使用することができる。また、撹拌機としては、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパ、ホモジナイザーなどが挙げられる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いても良い。
【0071】
本発明の硬化型インクの用途としては、インクジェット法を用いた装飾層の形成に用いることができ、なかでも、基材および基材上に形成された装飾層を有し、加熱延伸されることにより被加飾部材表面に積層される加飾用フィルムに用いられることが好ましく、特に、三次元成型用加飾用フィルム用であること、つまり、表面が三次元立体形状である被加飾部材の表面に沿って積層される加飾用フィルムに用いられることが好ましい。
延伸性に優れた装飾層を形成できるとの本発明の硬化型インクの硬化をより効果的に発揮できるからである。
なお、本発明における加飾とは、加飾用フィルムを積層することにより、被加飾部材表面の装飾効果を高めるものであり、具体的には、被加飾部材の表面に、模様、マーク、文字類を形成するものの他に光沢、艶消しを付与するものも含むものである。
また、装飾層は、このような加飾のために基材上に形成されるものであり、模様、マーク、文字類を形成するものの他に光沢、艶消しを付与する層である。
【0072】
B.加飾用フィルムの製造方法
次に、本発明の加飾用フィルムの製造方法について説明する。
本発明の加飾用フィルムの製造方法は、エネルギー線硬化型インクジェット組成物を塗布し、基材上に上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物の塗膜を形成する塗布工程と、上記塗膜にエネルギー線を照射し硬化させることにより、上記塗膜を装飾層とする硬化工程と、を有し、上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物が、エチレン性不飽和二重結合およびアミド基を有する非環状反応性アミド化合物と、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有し、かつ、ポリシロキサン構造を有する多官能ポリシロキサン化合物と、を有し、上記非環状反応性アミド化合物の上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物中の含有量が2質量%〜7質量%の範囲内であり、上記多官能ポリシロキサン化合物の上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物中の含有量が1質量%〜4質量%の範囲内であることを特徴とするものである。
【0073】
このような本発明の加飾用フィルムの製造方法について図を参照して説明する。
図1は、本発明の加飾用フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
図1に示すように、本発明の加飾用フィルムの製造方法は、エネルギー線硬化型インクジェット組成物2aを塗布し(
図1(a))、基材1上に上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物の塗膜2bを形成し(
図1(b))、上記塗膜2bに紫外線を照射し硬化させることにより(
図1(c))、上記塗膜2bを装飾層2cとすることにより加飾用フィルム10を形成するものである(
図1(d))。
また、上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物が、エチレン性不飽和二重結合およびアミド基を有する非環状反応性アミド化合物と、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有し、かつ、ポリシロキサン構造を有する多官能ポリシロキサン化合物と、を有し、上記非環状反応性アミド化合物の上記硬化型インク中の含有量が2質量%〜7質量%の範囲内であり、上記多官能ポリシロキサン化合物の上記硬化型インク中の含有量が1質量%〜4質量%の範囲内であるものである。
なお、
図1(a)〜(b)が塗布工程であり、(c)〜(d)が硬化工程である。
【0074】
本発明によれば、上記非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物をそれぞれ所定量含む硬化型インクを用いることにより、ブロッキング性および延伸性に優れた加飾用フィルムを得ることができる。
【0075】
本発明の加飾用フィルムの製造方法は、上記塗布工程および硬化工程を有するものである。
以下、本発明の加飾用フィルムの製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
【0076】
1.塗布工程
本発明における塗布工程は、エネルギー線硬化型インクジェット組成物を塗布し、基材上に上記エネルギー線硬化型インクジェット組成物の塗膜を形成する工程である。
【0077】
本工程において、上記塗膜を形成する方法としてはインクジェット法を用いる方法であれば特に限定されるものではない。
ここで、インクジェット法としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれのインクジェット法であっても良いが、なかでも、凝集物が発生し難く、吐出安定性に優れる点から、ピエゾ方式のインクジェット法であることが好ましい。
なお、ピエゾ方式のインクジェットヘッド(記録ヘッド)は、圧力発生素子として圧電振動子を用い、圧電振動子の変形により圧力室内を加圧・減圧してインク滴を吐出させるものである。
【0078】
なお、本工程に用いられるエネルギー線硬化型インクジェット組成物は、エチレン性不飽和二重結合およびアミド基を有する非環状反応性アミド化合物と、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有し、かつ、ポリシロキサン構造を有する多官能ポリシロキサン化合物と、を有し、上記非環状反応性アミド化合物の上記硬化型インク中の含有量が2質量%〜7質量%の範囲内であり、上記多官能ポリシロキサン化合物の上記硬化型インク中の含有量が1質量%〜4質量%の範囲内である。
このようなエネルギー線硬化型インクジェット組成物としては、上記「A.エネルギー線硬化型インクジェット組成物」の項に記載のものと同様とすることができるため、ここでの説明を省略する。
【0079】
本工程に用いられる基材としては、上記装飾層を支持し、上記装飾層とともに被加飾部材表面に積層されるものである。
このような基材を構成する材料としては、熱可塑性樹脂を挙げることができる。加熱することで、上記装飾層と共に容易に延伸することができるからである。被加飾部材が三次元立体成型物である場合であっても、被加飾部材表面に容易に積層できるからである。
上記熱可塑性樹脂としては、加熱により所望の延伸性を示すものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができ、なかでもポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂であることが好ましく、特に、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は1種類または2種類以上を混合して用いることができる。
【0080】
上記基材は、単層であっても良く、2層以上が積層した積層体であっても良い。
【0081】
上記基材の厚みは、所望の延伸性を有するものであれば特に限定されるものではなく、本発明の製造方法により製造される加飾用フィルムの種類や用途に応じて異なるものであるが、通常、100μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、なかでも250μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、特に、300μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、加熱前において変形等がなく、取り扱い性に優れたものとすることができ、さらに、被加飾部材への積層や延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0082】
上記基材の引っ張り弾性率としては、所望の延伸性を有するものであれば特に限定されるものではないが、1000MPa〜4000MPa(初期モジュラス)の範囲内であることが好ましく、なかでも、2000MPa〜3000MPaの範囲内であることが好ましい。上記引っ張り弾性率が上述の範囲内であることにより、上記基材に高い剛性を付与できるため、真空成形時における形状の歪を抑制することができるからである。
なお、上記引っ張り弾性率は、JIS K7127に準拠し、試験片としてタイプBを用い、引張速度50m/分の条件で測定した、常温における引張り弾性率である。
【0083】
上記基材は、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記基材上に形成される層との密着性に優れたものとすることができるからである。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材を構成する材料の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また、上記基材上には、プライマー層を形成するなどの処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。
【0084】
本工程により形成される塗膜の厚みとしては、所望の延伸性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、1μm〜20μmの範囲内とすることができ、なかでも1μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に、3μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0085】
2.硬化工程
本発明における硬化工程は、上記塗膜にエネルギー線を照射し硬化させることにより、上記塗膜を装飾層とする工程である。
【0086】
本工程において、上記塗膜にエネルギー線を照射する方法としては、上記塗膜を硬化させることにより、上記塗膜を装飾層とすることができる方法であれば良く、一般的な照射方法を用いることができる。
【0087】
本工程におけるエネルギー線としては、具体的には、電子線、紫外線、赤外線などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるものを挙げることができる。
エネルギー線として電子線を用いる場合、照射線量としては、例えば、5kGy〜300kGyの範囲内(0.5Mrad〜30Mradの範囲内)とすることができ、なかでも10kGy〜50kGyの範囲内(1Mrad〜5Mradの範囲内)であることが好ましい。 電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
エネルギー線として紫外線を用いる場合、照射線量としては、50mJ/cm
2〜10000mJ/cm
2の範囲内であることが好ましい。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等を用いることができる。
【0088】
3.加飾用フィルムの製造方法
本発明の加飾用フィルムの製造方法は、上記塗布工程および硬化工程を有するものであるが、必要に応じて他の工程を有するものであっても良い。
このような他の工程としては、上記基材および装飾層の間に形成されるプライマー層、上記装飾層上に形成される保護層、上記基材の装飾層が形成される側とは反対側の表面上に形成される粘着剤層、粘着剤層に形成される剥離層等の他の層を形成する工程や、上記塗膜に溶媒が含まれる場合に溶媒を乾燥する乾燥工程、上記装飾層を加熱する焼成工程等を挙げることができる。
【0089】
C.加飾成型品の製造方法
次に、本発明の加飾成型品の製造方法について説明する。
本発明の加飾成型品の製造方法は、上述の加飾用フィルムの製造方法を用いて加飾用フィルムを形成する加飾用フィルム形成工程と、上記加飾用フィルムを用いて、被加飾部材表面を加飾し、加飾成型品を形成する加飾工程と、を有することを特徴とするものである。
【0090】
このような本発明の加飾成型品の製造方法を図を参照して説明する。
図2は、本発明の加飾成型品の製造方法の一例を示す工程図である。
図2に例示するように、本発明の加飾成型品の製造方法は、上述の加飾用フィルムの製造方法を用いて加飾用フィルム10を準備し(
図2(a))、上記加飾用フィルム10を加熱しつつ、加飾用フィルム10の基材側および被加飾部材20の間を真空に、加飾用フィルム10の装飾層側を大気圧にすることにより、加飾用フィルム10の装飾層側から圧力を加え、加飾用フィルム10を被加飾部材20表面に延伸成型しながら積層し(
図2(b))、加飾成型品30を形成するものである(
図2(c))。
なお、
図2(a)が加飾用フィルム形成工程であり、
図2(b)〜(c)が加飾工程である。
【0091】
また、
図3は、本発明の加飾成型品の製造方法の他の例を示す工程図である。
図3に例示するように、本発明の加飾成型品の製造方法は、上述の加飾用フィルムの製造方法を用いて加飾用フィルム10を準備し(
図3(a))、射出成型金型内に上述の加飾用フィルムを配し(
図3(b))、金型内を真空吸引することにより、上記加飾用フィルムを金型に密着させ、次いで、キャビティ内に溶融樹脂を射出し(
図3(c))、冷却・固化して、樹脂成形体である被加飾用部材と加飾用フィルムとを積層一体化させる(
図3(d))。次いで、被加飾用部材20と加飾用フィルム10とが一体化した加飾成型品30を形成し、その後、上記加飾成型品30を上記金型から取り出すものである(
図3(e))。
なお、
図3(a)が加飾用フィルム形成工程であり、
図3(b)〜(c)が加飾工程である。
【0092】
本発明によれば、上述の加飾用フィルムの製造方法を用いた加飾用フィルムを使用することにより、装飾層のひび等の不具合が少なく画質等に優れた加飾成型品を得ることができる。
【0093】
本発明の加飾成型品の製造方法は、加飾用フィルム形成工程および加飾工程を有するものである。
以下、本発明の加飾成型品の製造方法に含まれる加飾用フィルム形成工程および加飾工程について詳細に説明する。
【0094】
1.加飾用フィルム形成工程
本発明における加飾用フィルム形成工程は、上述の加飾用フィルムの製造方法を用いて加飾用フィルムを準備する工程である。
本工程における加飾用フィルムの製造方法としては、上記「B.加飾用フィルムの製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0095】
2.加飾工程
本発明における加飾工程は、上記加飾用フィルム成形工程により得られた加飾用フィルムを被加飾部材表面に積層し、加飾成型品を形成する工程である。
【0096】
本工程において、上記加飾用フィルムを被加飾部材表面に積層する方法としては、所望の加飾成型品を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、特開2012−213928号公報や特開2012−41480号公報等に記載の一般的な積層方法を用いることができる。
具体的には、上記加飾用フィルムを、被加飾部材を型にして成型しつつ被加飾部材表面に積層する方法(方法1)や、金型を用いて、上記加飾用フィルムを成型した後、被加飾部材表面に積層する方法(方法2)等を挙げることができる。
既に説明した
図2は方法1の例を示すものである。また、
図3は方法2の例を示すものである。
また、上記方法2において、積層される被加飾部材としては、成型した加飾用フィルムに対して被加飾部材を形成する溶融樹脂を射出する方法であっても良く、成型した加飾フィルムを、予め形成された被加飾部材に対して貼り合わせる方法であっても良い。
【0097】
上記方法1において、上記加飾用フィルムを型となる上記被加飾部材と対向させる方法としては、上記装飾層が上記被加飾部材と対向するように、加飾用フィルムを送り込む方法を用いることができる。
また、上記方法2において、上記加飾用フィルムを金型内に配し、挟み込む方法としては、加飾用フィルムを、可動型と固定型とからなる金属型内に装飾層側を内側にして、つまり、基材が固定型側となるように加飾用フィルムを送り込む方法を用いることができる。
上記加飾用フィルムを送り込む方法としては、枚葉の加飾用フィルムを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の加飾用フィルムの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。
【0098】
本工程における加飾用フィルムの成型方法としては、被加飾部材表面に安定的に積層できるように成型できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、真空成型法、圧空成型法、プレス成型法、溶融樹脂の圧力による成型法等を用いて、加飾用フィルムを延伸する方法を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、上記方法2の場合には、加飾用フィルムを金型に真空吸引して密着するように配することで成型する真空成型法を好ましく用いることができる。
【0099】
本工程においては、上記加飾用フィルムの成型前または成型時、すなわち、上記加飾用フィルムの延伸前または延伸時に、加熱することが好ましい。
上記加飾用フィルムを十分に延伸することができ、ひび等の少ないものとすることができるからである。
上記加熱方法としては、一般的な加熱方法を用いることができ、例えば、赤外線照射装置を用いる方法や、加飾用フィルムを成型する際の型や被加飾部材を加熱されたものとする方法を挙げることができる。
具体的には、上記方法2においては、上記加飾用フィルムを金型内に配する際、金型を加熱する方法や、加飾用フィルムが金型内の形状に沿うように加飾用フィルムの装飾層側から熱盤を用いて加熱し軟化させる方法を用いることができる。
【0100】
本工程における加飾用フィルムの加熱温度としては、所望の延伸性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、130℃〜320℃の範囲内であることが好ましく、なかでも、150℃〜280℃の範囲内であることが好ましく、特に、170℃〜230℃の範囲内であることが好ましい。上記加熱温度が上述の範囲内であることにより、十分に加飾用フィルムを延伸することができるからである。
また、上記方法2において、装飾層側から加熱し金型内の形状に沿うように予備成型する場合の予備加熱温度としては、基材のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましく、通常はガラス転移温度近傍の温度で行う。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲であり、一般に70℃〜130℃程度である。
なお、上記加熱温度は、上記加飾用フィルムに含まれる基材の厚み方向の中心部の温度をいうものである。
【0101】
本工程における被加飾部材としては、加飾されるものであれば特に限定されるものではなく、家電や携帯電話、デジタルカメラ、タブレットPC等の筺体および自動車内装部品等を挙げることができる。
上記被加飾部材の加飾用フィルムが積層される表面の形状としては、上記加飾用フィルムが積層可能なものであれば特に限定されるものではなく、平面状であっても良いが、なかでも本工程においては、三次元立体形状であることが好ましい。本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
【0102】
上記被加飾部材の形成方法としては、所望の形状のものとすることができる方法であれば特に限定されるものではないが、既に説明した
図3に示すように、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して形成する方法を用いることができる。
ここで、溶融樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、溶融樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる方法を用いることができる。
なお、溶融樹脂の加熱温度は、溶融樹脂によるが、一般に180℃〜320℃程度とすることができる。
【0103】
上記被加飾部材を構成する材料としては、所望の形状を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に加飾を要する部材を構成する材料を用いることができる。具体的には、樹脂や金属等を挙げることができる。
上記樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)を用いることができ、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0104】
3.加飾成型品の製造方法
本発明の加飾成型品の製造方法は、加飾用フィルム形成工程および加飾工程を有するものであるが、必要に応じて他の工程を有するものであっても良い。
他の工程としては、例えば、加飾成型品を冷却する冷却工程や、金型から加飾成型品を取出す取出し工程、加飾用フィルムを被加飾成型品に積層した後に、上記加飾用フィルムに含まれる剥離層を剥離する剥離工程等を有するものであっても良い。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0107】
1.硬化型インクの調製
着色剤、重合開始剤、非環状反応性アミド化合物および多官能ポリシロキサン化合物を、下記表1に記載した組成に従い、調製した(実施例1〜4、比較例1〜
10および13〜14)。
なお、表1中の各成分の数値は、各成分の重量部を示すものである。
また、非環状反応性アミド化合物として、N−ビニルホルムアミドを用いた。
多官能ポリシロキサン化合物として、ポリエステル変性ジメチルシロキサン(ビックケミー社製BYK−UV3570)を用いた。
重合開始剤として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1(開始剤1)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(開始剤2)を用いた。
着色材として、ブラックベース(エボニックデグサ社製NEROX5600 12重量部、ビックケミー社製BYK−UV9150 6.9重量部、イソボロニルアクリレート 81.1重量部、D/P=0.08,P=12%)を用いた。
重合性化合物として、イソボロニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、脂肪族ウレタンアクリレート(サートマー社製CN996)を用いた。
レベリング剤として、シリコーンポリエーテルアクリレート(エチレン性不飽和二重結合の数が2つであるシリコーン系化合物)を用いた。
重合禁止剤として、フェノチアジンを用いた。
なお、D/Pは分散剤有効成分重量/顔料重量を示すものであり、P=12%は、顔料の固形分中の含有量を示すものである。
【0108】
2.評価方法
実施例および比較例で調製した硬化型インクについて、ブロッキング性、延伸性および吐出性について評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0109】
(1)ブロッキング性
易接着PETフィルム(コスモシャインA4300 厚さ100μm 東洋紡社製)に、バーコーター#6にてインクを塗布後、UV露光装置(GS YUASA社製 B125D−C10−SM−J)にて300mJ/cm
2(λ=365nm)露光して塗膜を硬化させ、約7μmの装飾層を得た。
これを、50mm×50mmに切断し試験片を作製した。
この塗布面に大きさ50mm×50mmの未処理PETフィルム(E5000 厚さ75μm 東洋紡社製)を重ね永久歪試験機(定荷重式 テスター産業社製)にて荷重1kg/cm
2(25℃ 55%RH)に24時間セットし、未処理PET側に色移りがないか目視で確認した。なお、評価は以下の基準で行った。
◎:色移りなし
○:色移りほぼなし
△:色移りややあり
×:色移りあり
【0110】
(2)延伸性
大きさ50mm×100mm 厚さ5mmのアクリル板(三菱レーヨン アクリライトEX)にバーコーター#6にてインクを塗布後、UV露光装置(GS YUASA社製 B125D−C10−SM−J)にて300mJ/cm
2(λ=365nm)露光して塗膜を硬化させ、約6μmの装飾層を得た。
この試験片を140℃のホットプレートに4分間静置した後、試験片の両端を持って引張り、インク面の割れが生じない最大伸びを測定し、伸び率(延伸後の長さ/延伸前の長さ)×100(%)を計算した。結果、下記表1に示す。また、200%以上または300%以上伸びたか否かについて○および×で評価を行った。
【0111】
(3)吐出性
得られた硬化型インクの粘度を、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)にて測定を行った。このときの温度は40℃、密度は1.05g/cm
2に設定した。
なお、吐出性は主に液粘度の影響を受けるため、液粘度の範囲が10.5mPa・s〜12.5mPa・sの範囲内であるとき良好とした。
【0112】
【表1】
【0113】
(4)まとめ
表1より、実施例では、ブロッキング性に優れ、延伸性が良好(延伸性200%以上可)な装飾層を形成することができることが確認できた。
また、実施例1〜3では、延伸性が更に良好なもの(延伸性300%以上可)とすることができることが確認できた。
さらに、実施例では、粘度が12.5mPa・s以下の低粘度なものとすることができ吐出性も良好であることが確認できた。