(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165508
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
F16B 19/10 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
F16B19/10 B
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-120989(P2013-120989)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238139(P2014-238139A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】坂野 和裕
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥史
【審査官】
鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0116485(US,A1)
【文献】
特開2001−289217(JP,A)
【文献】
特開2008−164085(JP,A)
【文献】
特開2001−271811(JP,A)
【文献】
特開2001−074008(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/126201(WO,A1)
【文献】
特開2005−188718(JP,A)
【文献】
特開2003−130020(JP,A)
【文献】
特開2010−014217(JP,A)
【文献】
特開2013−044391(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0272487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に形成されているクリップ取付座のリブに装着したクリップ本体を相手パネルの取付孔に挿入することで、前記相手パネルに前記被取付部材を着脱可能に取り付けるクリップであって、
クリップ本体は、頭部と、前記頭部から延出して前記リブに装着される挟持部と、前記頭部から連続して前記挟持部と並んで延出して弾性変形して前記相手パネルに係合する係合部と、を備えており、
前記係合部は、外側に向けて屈曲した略く字状の屈曲点を有しており、
前記係合部の略く字の前記屈曲点を境とする反頭部側における外面には、前記相手パネルに係合可能な係合斜面が形成され、
前記係合部の内面のうち、前記係合斜面に対向する領域には、前記係合部が前記相手パネルの前記取付孔を通過するとき、前記リブの表面に接触するように前記リブに向けて突出した弾発体が形成されており、
前記弾発体は、前記リブの表面に接触するとき、前記リブの表面のうちの前記係合孔より先端側の表面に接触するように形成されていることを特徴とするクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関し、詳しくは、相手パネルに被取付部材を着脱可能に取り付けるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センタークラスタ(被取付部材)に形成されているクリップ取付座のリブに装着したクリップ本体を自動車のインストルメントパネル(相手パネル)の取付孔に挿入することで、このインストルメントパネルにセンタークラスタを着脱可能に取り付けることができるクリップが既に知られている。このクリップを詳述すると、そのクリップ本体は、センタークラスタに形成されているリブに形成されている係合孔を介して装着可能な挟持部(例えば、一対の挟持片)と、挟持部の外側に弾性変形可能に形成されている係合部(例えば、一対の係合脚)とから剛性を有する合成樹脂によって一体的に構成されている。ここで、下記特許文献1には、例えば、
図14〜17に示すように、係合部516がインストルメントパネル503の取付孔530を通過するとき、リブ524の表面に接触するように弾発体516d、516dがこの係合部516の内側に形成されているクリップ501が開示されている。これにより、係合部516がインストルメントパネル503の取付孔530を通過するとき、弾発体516d、516dから撓みの反力がリブ524に作用する。そのため、クリップ本体510の取り付け状態(クリップ501によってセンタークラスタ502がインストルメントパネル503に取り付けられている状態)において、クリップ本体510が熱クリープ現象(係合部516がインストルメントパネル503の取付孔530によって押し撓められたままの状態が長時間続くことによって、この係合部516の弾性力が失われてインストルメントパネル503に対する保持力が低下する合成樹脂特有の現象)を起こしているとき、このクリップ本体510に対して抜去荷重が作用しても、弾発体516d、516dからリブ524の表面のうちの基端側の表面524b(係合孔524aより下側の表面)に作用する反力が新たな保持力として発揮されることとなる。したがって、熱クリープ現象によって係合部516の弾性力が失われていても、インストルメントパネル503に対するクリップ本体510の取り付け状態を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−271811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、リブ524の表面における弾発体516dの接触部位は、係合孔524aより基端側の表面524bとなっている(
図18参照)。そのため、センタークラスタ502が射出成形によって成形されている場合、挟持部514の挟持爪514b、514bを係合させる係合孔524aをリブ524に形成するためのスライド型が射出成形の金型とは別に必要となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、熱クリープ現象によって相手パネルに対する保持力が低下しているときでも、クリップ本体に対して抜去荷重が作用したときには、相手パネルに対するクリップ本体の取り付け状態を維持でき、且つ、被取付部材のリブの係合孔を形成するにあたってスライド型を必要としないクリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、被取付部材に形成されているクリップ取付座のリブに装着したクリップ本体を相手パネルの取付孔に挿入することで、相手パネルに被取付部材を着脱可能に取り付けるクリップであって、クリップ本体は、
頭部と、頭部から延出してリブに装着
される挟持部と、
頭部から連続して挟持部
と並んで延出して弾性変形
して相手パネルに係合する係合部と、を備えており、
係合部は、外側に向けて屈曲した略く字状の屈曲点を有しており、係合部の略く字の屈曲点を境とする反頭部側における外面には、相手パネルに係合可能な係合斜面が形成され、係合部の
内面のうち、係合斜面に対向する領域には、係合部が相手パネルの取付孔を通過するとき、リブの表面に接触するように
リブに向けて突出した弾発体が形成されており、弾発体は、リブの表面に接触するとき、リブの表面のうちの係合孔より先端側の表面に接触するように形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、熱クリープ現象によって相手パネルに対する保持力が低下しているときでも、クリップ本体に対して抜去荷重が作用したときには、弾発体がリブの表面に接触するため、相手パネルに対するクリップ本体の取り付け状態を維持できる。このとき、弾発体はリブの表面のうちの係合孔より先端側の表面に接触するため、この係合孔を形成するにあたってスライド型を必要とすることなく被取付部材を成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1に係るクリップをセンタークラスタとインストルメントパネルと共に示した斜視図である。
【
図5】
図4において、抜去荷重がかかった状態を示している。
【
図8】
図7において、抜去荷重がかかった状態を示している。
【
図10】
図9のクリップの使用状態を示す図である。
【
図11】
図10において、抜去荷重がかかった状態を示している。
【
図14】従来技術に係るクリップをセンタークラスタとインストルメントパネルと共に示した斜視図である。
【
図18】
図17において、抜去荷重がかかった状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、
図1〜5を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『被取付部材』の例として、『自動車のセンタークラスタ2』を説明することとする。また、『相手パネル』の例として、『自動車のインストルメントパネル3』を説明することとする。これらのことは、後述する実施例2〜3においても同様である。
【0009】
はじめに、
図1〜3を参照して、実施例1に係るクリップ1とセンタークラスタ2とを個別に説明する。まず、クリップ1から説明する。クリップ1は、主として、湾曲して形成された頭部12と、この頭部12から連続する挟持部14と、この頭部12から連続する係合部16とから剛性を有する合成樹脂によって一体的に構成されている。
【0010】
頭部12は、インストルメントパネル3の取付孔30に対してクリップ本体10を挿入するときの先行案内部となる。そのため、この頭部12は、外周面に丸みを帯びた湾曲形状を成している。
【0011】
挟持部14は、センタークラスタ2のリブ24の板厚と同じか若しくは僅かに狭い間隔をもって対向する一対の挟持片14a、14aから構成されている。この一対の挟持片14a、14aは、既に説明したように、頭部12から連続する格好を成すように形成されている。
【0012】
また、この一対の挟持片14a、14aは、自身14a、14aの間にリブ24を挿入することで、このリブ24に装着可能となっている。この挟持片14aの先端には、後述するセンタークラスタ2のリブ24の係合孔24aの上縁に係合可能な挟持爪14bが形成されている。これにより、挟持部14のリブ24に対する装着を強固にできる。
【0013】
係合部16は、一対の挟持片14a、14aの外側に弾性変形可能に形成されている一対の係合脚16a、16aから構成されている。この一対の係合脚16a、16aも、既に説明したように、頭部12から連続する格好を成すように形成されている。また、この一対の係合脚16a、16aは、クリップ本体10をインストルメントパネル3の取付孔30に挿入することで互いの間隔が狭まる方向に弾性変形可能に形成されている。
【0014】
この係合脚16aの先端側の外面には、後述するインストルメントパネル3の取付孔30の上縁に係合可能な係合斜面16cが形成されている。また、この係合脚16aの内面には、挟持片14aを境に隣り合うように対を成す弾発体16d、16dが形成されている。
【0015】
この弾発体16dは、係合部16(一対の係合脚16a、16a)がインストルメントパネル3の取付孔30を通過するとき、その先端がリブ24の表面に接触するように、上斜めを向いた羽状に形成されている。このときのリブ24の表面における弾発体16dの接触部位は、係合孔24aより先端側(上側)の表面24bとなっている。クリップ1は、このように構成されている。
【0016】
次に、センタークラスタ2を説明する。センタークラスタ2は、インストルメントパネル3を覆うように取り付けられる意匠パネルである。このセンタークラスタ2は、その意匠面を有するセンタークラスタ本体20と、このセンタークラスタ本体20の内面(反意匠面)に形成されたクリップ取付座22とから剛性を有する合成樹脂によって一体的に構成されている。
【0017】
このクリップ取付座22は、係合孔24aを有するリブ24と、このリブ24へのクリップ本体10の挟持部14の装着を案内する一対のガイド26、26とから構成されている。このリブ24の係合孔24aは、既に説明したように、その上縁に一対の挟持片14a、14aの両挟持爪14bを係合可能に形成されている。また、このリブ24の係合孔24aは、従来技術のそれとは異なり、センタークラスタ本体20に対して連通するように形成されている(
図1参照)。
【0018】
そのため、このセンタークラスタ2が射出成形によって成形されていても、従来技術とは異なり、一対の挟持爪14b、14bを係合させる係合孔24aをリブ24に形成するためのスライド型を射出成形の金型とは別に必要としない。また、リブ24の先端面は、このリブ24を一対の挟持片14a、14aの間に円滑に挿入できるように、傾斜面となっている。一方、このガイド26は、張出縁26aを有する略凸字を成すように形成されている。センタークラスタ2は、このように構成されている。
【0019】
続いて、上述したクリップ1を用いて、インストルメントパネル3にセンタークラスタ2を取り付ける手順を説明する。まず、クリップ本体10の一対の挟持片14a、14aの間にセンタークラスタ2のクリップ取付座22のリブ24を相対的に挟み込む。すると、この一対の挟持片14a、14aによってリブ24が両側から挟み込まれた状態となり、これと同時に、両挟持爪14bがリブ24の係合孔24aの上縁に係合する。これにより、クリップ本体10がリブ24に装着される。
【0020】
次に、リブ24に装着されたクリップ本体10を、その頭部12の側からインストルメントパネル3の取付孔30に挿入していく。すると、一対の係合脚16a、16aは、互い16a、16aが弾性によって近づく方向に撓みながら取付孔30を通過していく。やがて、クリップ取付座22の張出縁26aがインストルメントパネル3の表面に接触すると、一対の係合脚16a、16aの両係合斜面16cはインストルメントパネル3の裏面に位置することとなる(
図4参照)。
【0021】
このとき、一対の係合脚16a、16aは、互い16a、16aが内方へ向けて弾性変形しているため、この撓みの反力によって一対の係合脚16a、16aの両係合斜面16cはインストルメントパネル3の取付孔30の上縁に押し付けられている。これにより、クリップ本体10はインストルメントパネル3に取り付けられた状態で保持され、結果として、センタークラスタ2がインストルメントパネル3に取り付けられる。
【0022】
なお、この取り付け状態では、
図4からも明らかなように、各弾発体16dはリブ24に接触していない。そのため、この取り付け状態が長時間経過しても、これら各弾発体16dには熱クリープ現象が生じることがない。ただし、一対の係合脚16a、16aには熱クリープ現象が生じることとなる。
【0023】
最後に、この取り付け状態が長時間経過したときのクリップ1の作用を説明する。このように長時間経過すると、従来技術と同様に、一対の係合脚16a、16aには熱クリープ現象が生じることとなっているため、この一対の係合脚16a、16aの弾性力が失われてインストルメントパネル3に対する保持力が低下する。
【0024】
このとき、このクリップ本体10に対して抜去荷重が作用すると、従来技術と同様に、各弾発体16dからリブ24の表面のうちの先端側の表面24b(係合孔24aより上側の表面)に作用する反力が新たな保持力として発揮されることとなる。したがって、従来技術と同様に、熱クリープ現象によってインストルメントパネル3に対する保持力が低下しているときでも、クリップ本体10に対して抜去荷重が作用したときには、インストルメントパネル3に対するクリップ本体10の取り付け状態を維持できる。
【0025】
(実施例2)
次に、本発明の実施例1を、
図6〜8を用いて説明する。この実施例2のクリップ101は、既に説明した実施例1のクリップ1と比較すると、弾発体16dが、より多く形成された形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例1と同一または均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで重複する説明は省略することとする。このことは、後述する実施例3においても同様である。
【0026】
図6〜8に示すように、係合脚16aの内面には、挟持片14a(
図6〜7において、図示しない)を境に隣り合うように対を成すだけでなく、上下方向にも隣り合うように弾発体16d、16d、16d、16dが形成されている。このように形成されていると、弾発体16dが4個から8個に増加するため、各弾発体16dからリブ24の表面のうちの先端側の表面24bに作用する反力が新たな保持力として発揮されるとき、この反力を高めることができる(
図8参照)。したがって、この新たな保持力も高めることができるため、インストルメントパネル3に対するクリップ本体10の取り付け状態を確実に維持できる。
【0027】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を、
図9〜11を用いて説明する。この実施例3のクリップ201は、既に説明した実施例1のクリップ1と比較すると、弾発体16dが、弓状に形成された形態である。このように形成されていると、弾発体16dの弾性力を高めることができるため、各弾発体16dからリブ24の表面のうちの先端側の表面24bに作用する反力が新たな保持力として発揮されるとき、この反力を高めることができる(
図11参照)。したがって、この新たな保持力も高めることができるため、インストルメントパネル3に対するクリップ本体10の取り付け状態を確実に維持できる。
【0028】
(変形例1)
なお、実施例1のクリップ1において、各弾発体16dが下斜めを向いた羽状に形成されていても構わない。すなわち、
図12に示すクリップ301のように形成されていても構わない。
【0029】
(変形例2)
なお、実施例2のクリップ101において、各弾発体16dが下斜めを向いた羽状に形成されていても構わない。すなわち、
図13に示すクリップ401のように形成されていても構わない。
【0030】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、『被取付部材』の例として、『自動車のセンタークラスタ2』を説明した。また、『相手パネル』の例として、『自動車のインストルメントパネル3』を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『被取付部材』が『各種の内装部材』であっても構わない。また、『相手パネル』が『各種のパネル部材』であっても構わない。
【符号の説明】
【0031】
1 クリップ(実施例1)
2 センタークラスタ(被取付部材)
3 相手パネル(インストルメントパネル)
10 クリップ本体
14 挟持部
16 係合部
16d 弾発体
22 クリップ取付座
24 リブ
24a 係合孔
30 取付孔
101 クリップ(実施例2)
201 クリップ(実施例3)
301 クリップ(変形例1)
301 クリップ(変形例2)