(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165524
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】クランプヘッド
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
B23Q3/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-136966(P2013-136966)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-8602(P2014-8602A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】10 2012 105 759.1
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007204
【氏名又は名称】ロェーム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】オイゲン ハングライター
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シェンク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ミラー
【審査官】
永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第03926480(DE,A1)
【文献】
特開2005−081480(JP,A)
【文献】
特開昭61−214904(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/084882(WO,A1)
【文献】
特開2011−121144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック躯幹体(2)と、
少なくとも2つのコレットジョー(12)からなる分割型コレットチャック(4)と、
チャック躯幹体(2)中に配置され、分割型コレットチャック(4)の駆動のために、締付の位置・姿勢と、締付解除の位置・姿勢との間で位置・姿勢のシフトが可能な締付駆動片(3)と、
前記駆動のために締付駆動片(3)の位置・姿勢をシフトさせる電気的駆動機構(5)とを備えるクランプヘッドにおいて、
締付駆動片(3)が電気的駆動機構(5)に対して軸方向に相対的にシフト可能であり、
締付状態にある分割型コレットチャック(4)についての締付解除を行うために、前記電気的駆動機構(5)とは独立に作動可能な非常開放機構が備えられることを特徴とするクランプヘッド。
【請求項2】
締付駆動片(3)が、非常開放機構により、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へシフト可能であることを特徴とする請求項1に記載のクランプヘッド。
【請求項3】
締付状態にある分割型コレットチャック(4)を開くための非常開放機構が、締付駆動片(3)の位置・姿勢をシフトさせるためのスピンドル伝動機構(16)を備えることを特徴とする請求項2に記載のクランプヘッド。
【請求項4】
スピンドル伝動機構(16)が、スピンドルロッド(17)と、スピンドルナット(18)とからなり、スピンドルナット(18)は、スピンドルロッド(17)により軸方向に位置シフト可能であって、この位置シフトにより締付駆動片(3)に駆動力を印加するものであることを特徴とする請求項3に記載のクランプヘッド。
【請求項5】
スピンドル伝動機構(16)が、チャック軸まわりに回転可能なネジ切りリング(21)と、ネジ切りリング(21)の回転によりチャック軸方向に位置シフトして締付駆動片(3)に駆動力を印加するネジ切り部とからなることを特徴とする請求項3に記載のクランプヘッド。
【請求項6】
前記ネジ切り部は、チャック躯幹体(2)内にて該チャック躯幹体(2)から案内されるスピンドルリング(22)の外周面に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のクランプヘッド。
【請求項7】
スピンドル伝動機構(16)の位置・姿勢をシフトさせるための操作部材(19)が、チャック躯幹体(2)、または、その他の、クランプヘッドの外周をなす部材に備えられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のクランプヘッド。
【請求項8】
操作部材(19)とスピンドル伝動機構(16)との駆動連結のために少なくとも1つのかさ歯車伝動機構(20)が備えられることを特徴とする請求項7に記載のクランプヘッド。
【請求項9】
非常開放機構が、圧力媒体管路(9)と、圧力媒体管路(9)に接続された圧力媒体導入部(8)と、ピストン(26)及びピストン室(10)とからなり、
締付駆動片(3)が、ピストン室(10)中に配置されて、ピストン(26)としての役割を果たし、圧力媒体導入部(8)からの圧力媒体を通じて、ピストン(26)のピストン面(27)に圧力を印加可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のクランプヘッド。
【請求項10】
ピストン面(27)を拡張するためのカラー・フランジ部(6)が締付駆動片(3)に備え付けられていることを特徴とする請求項9に記載のクランプヘッド。
【請求項11】
圧力媒体導入部(8)が、チャック躯幹体(2)に備え付けられていることを特徴とする請求項9または10に記載のクランプヘッド。
【請求項12】
請求項9に記載の少なくとも1つのクランプヘッドと、これらクランプヘッド(1)の数と対応する数のシャンク・ピン(15)を備えるクランプパレット(24)とからなる組み合わせにおいて、圧力媒体導入部(8)がクランプパレット(24)に備え付けられていることを特徴とする組み合わせ。
【請求項13】
少なくとも1つのクランプヘッド(1)における、ピストン室(10)への圧力媒体の供給が、対応するシャンク・ピン(15)を通して行われることを特徴とする請求項12に記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレットチャック、締付駆動片、電気的な駆動機構及びチャック躯幹体を備えるクランプヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
チャック躯幹体中には、電気的な駆動機構によって、締付の位置・姿勢(位置及び姿勢の少なくとも一方)と、締付解除の位置・姿勢との間でシフト可能な締付駆動片が配置されている。この締付駆動片は、分割型コレットチャックを作動させるためのものである。分割型コレットチャックは、少なくとも2つのコレットジョーからなるものであり、典型的には、ジョー部材(爪)としての複数のコレットジョーが、リング状のバネ部材や、コレットジョー同士をつなぎ合わせるゴム部分などによりまとめられたものである。
【0003】
このようなクランプヘッドは、例えば、パレットクランプ装置に用いられている。このパレットクランプ機構には、上記のようなクランプヘッドが、複数備えられる。そして、これらのクランプヘッドは、クランプパレットに備え付けられた複数のシャンク・ピンとの相互作用を行い、このクランプパレットをつかんで保持する。典型的には、クランプパレットの下面に複数のシャンク・ピンが配列され、これに対応して、パレットクランプ装置には、複数のクランプヘッドが配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-269166(ヨーロッパ特許EP2119519B)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このパレットクランプ装置で起こりうる1つの問題は、締付状態にある個々のクランプヘッドにおける電気的な駆動機構が故障または作動不能となった際に、パレットをパレットクランプ機構から取り外せなくなってしまうことである。そのため、このような故障の際には、往々にして、クランプパレットに破壊的な機械加工を施すことで、このクランプパレットを、パレットクランプ機構から取り外せるようにし、不良のクランプヘッドを取り替えるようにする。同様の問題は、クランプパレットのシャンク・ピンに代えて、工具のシャンクがクランプヘッドでもってクランプされる場合にも生じる。この場合にも、電気駆動機構が故障または作動不能となった際、工具をクランプヘッドから取り出せなくなるという問題がある。そのため、このことは、多くの時間を要する保守整備のために、コストを上昇させ、また、場合によっては生産を中断させる。
【0006】
本発明の課題は、クランプヘッドにクランプされた対象を、いかなる作動状態においても、確実に締付解除を行うことができるように、導入部で述べたようなクランプヘッドについて構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によると、導入部で述べたようなクランプヘッドにおいて、クランプされた分割型コレットチャックについて締付解除を行うべく、通常時に締付駆動及び締付解除駆動を行う電気駆動機構とは別個に、これとは独立して作動を行うことができる非常開放機構を備えることにより解決される。
【発明の効果】
【0008】
締付状態にあるクランプヘッドについて締付解除を行うべき場合、従前、この締付解除は、電気的駆動機構が分割型コレットチャックを開いているときにのみ可能であった。従前、この駆動機構が作動不能となった際には、分割型コレットチャックを開くことができなかった。非常開放機構によるならば、分割型コレットチャックを、電気的駆動機構の状態に関わりなく開くことができ、クランプヘッド中に締付保持された状態、例えば、クランプパレットのシャンク・ピン、または、他の工具もしくはそのシャンク・ピンについて、電気的駆動機構が作動不能となった際にも、問題なくクランプヘッドから取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】非常開放機構をなすスピンドルナットを備えたクランプヘッドを示すチャック軸に沿った断面図である。
【
図2】非常開放機構をなすネジ切りリングを備えたクランプヘッドを示す、
図1と同様の断面図である。
【
図3】非常開放機構の作動媒体としての圧力媒体を導入するための圧力媒体導入部を備えるクランプヘッドを締付の位置・姿勢にて示す、
図1と同様の断面図である。
【
図4】非常開放機構の作動媒体としての圧力媒体を導入するための圧力媒体導入部を備えるクランプヘッドを締付解除の位置・姿勢にて示す、
図1と同様の断面図である。
【
図5】非常開放機構の作動媒体としての圧力媒体を導入するための圧力媒体導入部をクランプパレットに備える、クランプパレットとクランプヘッドからなる組み合わせを示す、
図1と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
締付駆動片を、非常開放機構により締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へ位置シフト可能であると好ましいことが知られた。非常開放機構から締付駆動片へと駆動力を印加するということにより、クランプヘッド内部の作動方式を充分に活用することができる。このことにより、締付状態にあるコレットチャックについての、シンプルな方式での締付解除を実現する。当然ながら本発明の枠内において、非常開放機構が、例えばコレットチャックに破壊的に作用し、これによりコレットチャックをクランプされている対象物との係合から外すことも考え得る。
【0011】
また、クランプされているコレットチャックを開くために、非常開放機構が、締付駆動片の位置をシフトさせるためのスピンドル伝動機構を備えるならば好ましいことが知られた。スピンドル伝動機構を用いることにより、特には、高い作動の信頼性を確保することができる。このことは、本発明によるクランプヘッドの機能性にプラスに作用する。また、本発明の枠内において、電気的駆動機構について、機械的に、または手動により位置・姿勢をシフトさせることも想定されている。この目的のためには、電気的駆動機構に、締付駆動片とは逆の側からアクセス可能である。すなわち、工具や手をあてがうことなどが可能である。なお、スピンドル伝動機構は、ボールネジ、ローラーネジ、またはその他の送りネジ(リードスクリュー)機構などによって実現可能である。
【0012】
また、スピンドル伝動機構が、次のようであると特に好ましいことが知られた。すなわち、スピンドルロッドとスピンドルナットとからなり、スピンドルナットは、スピンドルロッドにより軸方向の位置シフトが可能で、この位置シフトにより締付駆動片に駆動力を印加するというのであれば、特に好ましいことが知られた。このことは、非常開放機構の信頼性にプラスに作用する。スピンドルロッドの回転運動により、チャック躯幹体内にてチャック躯幹体から回転不能に案内されるスピンドルナットについての、非常に不具合の起こりにくい軸方向の位置シフトが実現されるからである。この位置シフトにより、締付駆動片が、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと軸方向に位置シフトする。また、スピンドルロッドを配置することにより、締付駆動片に作用する力を目的に合わせて調整することができる。
【0013】
また、スピンドル伝動機構が、次のようであると好ましいことが知られた。すなわち、チャック軸に沿って位置をシフトすることで締付駆動片に駆動力を印加するネジ切り部と、このネジ切り部の位置をシフトさせるべくチャック軸まわりに回転可能なネジ切りリングとからなるのであれば好ましいことが知られた。ネジ切りリングは、本発明の枠内において、チャック躯幹体に案内されるものでありうる。このネジ切りリングが回転すると、ネジ切り部が軸方向へのスピンドル作動を行う。すなわち、軸方向の駆動力を印加する軸方向の動作を行う。この動作の際、締付駆動片を、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へとシフトさせる。ここで、ネジ切り部は、締付駆動片と一体に形成されるものでありうる。また、単に、締付駆動片に駆動力を印加するものでありうる。また、本発明の枠内において、次のことが想定されている。すなわち、ネジ切り部は、チャック躯幹体に案内される少なくとも1つの解除用のピンまたはボルトの外周面に形成されるということが想定されている。
【0014】
また、ネジ切り部が、チャック躯幹体に案内されるスピンドルリングの外周面に形成されていると、きわめて好ましいことが知られた。スピンドルリングは、特には、チャック軸を中心とする筒状であって、チャック躯幹体の内面に沿って伸びており、チャック軸方向に位置シフト可能であって、締付駆動片とともにチャック軸方向に位置シフト可能である。スピンドルリングを用いることは、締付駆動片に対する力伝達にプラスの作用を及ぼす。締付駆動片に対する負荷面積が拡張されるからである。また、チャック躯幹体から直接または間接にスピンドルリングが案内されることにより、次のことが確実に実現される。すなわち、ネジ切りリングが位置・姿勢をシフトする際に、スピンドルリングが回転せず、これにより、軸方向へのスピンドル動作を確実に行う。すなわち、軸方向への駆動のための動作を行う。本発明の枠内において、スピンドルリングが締付駆動片と一体に形成されることも想定されている。このように一体に形成することにより、締付駆動片だけがチャック躯幹体に案内されればよいことになる。
【0015】
また、スピンドル伝動機構の位置・姿勢のシフトのために、操作部材が備えられているなら好ましいことが知られた。この操作部材は、特には、チャック躯幹体に備え付けられる。但し、クランプヘッドの外周面に露出した他の部材に備え付けられてもよい。操作部材が備えられることにより、電気的駆動機構が故障または作動不能となった場合に、スピンドル伝動機構について、手動で外部から位置・姿勢をシフトさせることができる。これにより、締付駆動片を、軸方向に、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へとシフトさせることができる。当然ながら、本発明の枠内において、操作部材は、チャック躯幹体に備え付けられるものでなく、これに代えて、チャック躯幹体に備えられた開口部に差し込む必要があるものということも考えられる。このように差し込むことで、スピンドル伝動機構への作用を行い、これにより、締付駆動片を締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢にするのである。なお、操作部材の操作は通常の仕方で行うことができる。操作は、例えば、特には手動で、または追加の駆動装置によって実現されるのでもよい。駆動装置を用いる実施形態では、適用されるトルクが制限されていてもよい。操作部材は、具体的には、スパナ等の工具や電動ドライバーなどをあてがうボルト頭部またはナット部などにより設けることもできる。
【0016】
さらに利用者の利便性のために、操作部材をスピンドル伝動機構と連結するための少なくとも1つのかさ歯車伝動機構が備えられているなら好ましいことが知られた。かさ歯車伝動機構を利用することで、操作部材に及ぼされる力を非常に高い信頼度でスピンドル伝動機構へと伝達することができる。また、方向転換がなされることで、良好にアクセス可能な位置に操作部材を取り付けることができる。このことは、本発明によるクランプヘッドの利用者の利便性にプラスの影響を及ぼす。さらには、本発明の枠内において、操作部材とスピンドル伝動機構との間の伝動連結が、類似の送りネジや歯車機構の組み合わせ、または、その他の適当な手段を通じて具現されることが想定される。
【0017】
また、次のようであると好ましいことが知られた。圧力媒体管路に接続された圧力媒体導入部が備えられ、これらを通じて、ピストン室に配置されてピストンとして機能する締付駆動片におけるピストン面に、圧力媒体でもって圧力を印加可能であると好ましいことが知られた。この圧力媒体は、例えば、空気、オイルなどでありうる。また、このような圧力媒体を、パレットクランプ装置の一つの集中式の供給管路に供給することで、この集中式の供給管路に接続されている使用中のすべてのクランプヘッドについて、非常開放を同時に行わせるということが確実に実現される。
【0018】
ピストン面を拡張するためのカラー・フランジ部が締付駆動片に備え付けられるならば特に好ましいことが知られた。カラー・フランジ部は、締付駆動片の根元部の外周を囲むカラー部であっても、または、締付駆動片の根元部の下端部に組み合わされるディスク状のフランジ部であってもよく、カラー部とディスク状の部分とからなるものであってもよい。特には、チャック躯幹体の内径に相当するフランジ部を有するものとすることができる。カラー・フランジ部により、ピストン面を拡張することで、いっそう強い力を締付駆動片に作用させることができる。このことは、非常開放機構の非常・締付解除特性にプラスの作用を及ぼす。本発明の枠内において、このようなカラー・フランジ部は、締付駆動片と一体に形成することができ、また、別個の部材として形成することもできる。
【0019】
さらに、圧力媒体導入部がチャック躯幹体に備え付けられるならば好ましいことが知られた。圧力媒体導入部を通じて、圧力媒体の配管などを容易に接続することができ、電気的駆動機構が故障または作動不能となった場合に迅速に利用可能である。当然ながら本発明の枠内において、次のことも考えうる。すなわち、圧力媒体導入部が機械テーブルに備え付けられており、適当な供給管路によって、チャック躯幹体に構成されたピストン室へ圧力媒体を導入できるということも考えうる。
【0020】
チャック躯幹体中における締付駆動片の軸方向の位置について、電気的駆動機構の軸方向位置に対する相対的な位置をシフトさせることができるのであれば、特に好ましいことが知られた。このようであるなら、非常開放機構は、締付駆動片の位置をシフトさせるだけでよく、チャック躯幹体における電気的駆動機構の位置をシフトさせる必要がない。本発明の枠内において、締付駆動片と電気的駆動機構とが互いに固定されるように接続されているということも想定される。このことは、非常開放機構によって、締付駆動片と電気的駆動機構が両方とも軸方向へ位置シフトされることを意味している。
【0021】
本発明の枠内において、少なくとも1つのクランプヘッドと、クランプヘッド数に対応する数、特には同数のシャンク・ピンを備えるクランプパレットとからなる組み合わせにおいて、圧力媒体導入部がクランプパレットに備え付けられているというのも好ましいことが知られた。圧力媒体導入部をクランプパレットに備え付けることで、圧力媒体の供給配管などを容易に接続することができ、このことは、本発明に基づく組み合わせの利用者の利便性にプラスの影響を及ぼす。
【0022】
さらには、少なくとも1つのクランプヘッドにおける、各ピストン室への圧力媒体の供給が、対応するシャンク・ピンを通して実現されているなら特に好ましいことが知られた。このようにして、圧力媒体を、1つの箇所から一括してクランプパレットに導入することができ、シャンク・ピンを通してそれぞれのピストン室へと導かれるようにすることができる。このような圧力媒体の導入により、各クランプヘッドの締付駆動片について、軸方向へ、同時に位置シフトさせることとなる。
【実施例】
【0023】
図1には、本発明によるクランプヘッド1の第1の実施形態を示す。図から見て取れるように、チャック躯幹体2中に締付駆動片3が保持されており、この締付駆動片3が分割型コレットチャック4を作動させる。通常動作中には、電動アクチュエーター5が締付駆動片3を、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと、軸方向にシフトさせる。このシフトを行うためには、締付駆動片3から半径方向に延びるカラー・フランジ部6に形成されたストッパ面28が、電動アクチュエーター5により、対向ストッパー29の側へと中心軸に沿って移動する。これにより、締付駆動片3は、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと軸方向にシフトされる。締付駆動片3に形成された適当な切換・調整用カム面により、このような軸方向シフトの際、分割型コレットチャック4に備えられたクランプジョー12は、半径方向外側へと向かって位置・姿勢のシフトがなされ、これにより、この前にはクランプされていたシャンク・ピン15が解放される。このとき、弾性作用を発揮するように保持された閉じ止め蓋11により、シャンク・ピン15がクランプヘッド1から能動的に突き出される。同時に、閉じ止め蓋11は、締付解除の位置・姿勢にあって、クランプジョー12が半径方向外側へと向かって押圧される状態に保ち、このようにして、きちんと決められた位置・姿勢に保持する。これにより、再度のシャンク・ピン15の差し込みが容易になる。シャンク・ピン15があらためてクランプヘッド1へ挿入されると、これにより、弾性作用を有する閉じ止め蓋11が、電動アクチュエーター5の側へと、軸方向に位置シフトする。電動アクチュエーター5の位置・姿勢のシフトにより、ストッパ面28は、軸方向に、復帰する向きに、すなわち、閉じ止め蓋11の逆側へと、スピンドル作動、すなわち、中心軸に沿った進退動作を行う。締付バネ7が、チャック躯幹体2中に取り付けられて保持され、締付駆動片3のカラー・フランジ部6に作用するのであるが、この締付バネ7により、次のことが確実となっている。すなわち、上記のストッパ面28の位置シフトの際には、カラー・フランジ部6の対向ストッパー29が、常にストッパ面28と接触したままとなっているということが保証される。締付駆動片3の位置を検出するために、カラー・フランジ部6には、その周縁部から軸方向前方へと延びるピンからなる位置指示器13が備え付けられている。この位置指示器13の位置は、チャック躯幹体2に備え付けられる2つの位置センサー14により、検出可能である。
【0024】
クランプ状態にあるときに電動アクチュエーター5が故障したならば、クランプされているシャンク・ピン15をクランプヘッド1から取り出すことができなくなる。そのため、クランプされている対象物に破壊を伴う加工を施さなければならないか、または、手間をかけてクランプヘッド1をばらばらにしなければならない。このような分解は、締付解除機構への作動を可能にし、これにより、シャンク・ピン15をクランプヘッド1から取り出せるようにするものである。このことは、次のことを意味する。すなわち、分割型コレットチャック4のクランプジョー12についての締付解除を可能にするためには、チャック躯幹体2について、分割型コレットチャック4の領域で、例えば切開するか、または同様の方式で、破壊を伴う加工を施す必要があることを意味する。
【0025】
こうした問題を回避すべく、
図1に示すクランプヘッド1には、外部から操作可能な非常開放機構が備えられる。この非常開放機構は、電動モータ5の動作状態に関わりなくクランプヘッド1を、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと切り換えるためのもである。
図1に示す実施例において、この非常開放機構は、ネジ切りロッドとしてのスピンドルロッド17と、スピンドルナット18とからなるスピンドル伝動(送りネジ)機構16として構成されている。ここで、スピンドルナット18は、締付駆動片3から半径方向に延びているカラー・フランジ部6に作用し、これにより、締付駆動片3を、締付バネ7に抗して締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へとシフトさせる。
図1に示すスピンドル伝動機構16は、チャック躯幹体2に備え付けられた操作部材19によって位置・姿勢をシフトさせることができるものである。ここに図示する実施例では、操作部材19の位置・姿勢のシフトは、かさ歯車伝動機構20を介してスピンドルロッド17に伝達されて、スピンドルロッド17を回動させる。上記の目的のために、チャック躯幹体内にて、該チャック躯幹体2から回転不能に軸方向に案内されたスピンドルナット18と、スピンドルロッド17との間の相対回転により、スピンドルナット18は、軸方向に、締付駆動片3の側へと向かって、駆動を行うように移動する。また、締付駆動片3についての、軸方向の電動アクチュエーター5に対する相対位置について、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へとシフトさせる。また、位置センサ14によって締付駆動片3の位置を認識することができ、これにより、例えば光学信号を用いて、電動アクチュエーター5の機能不良について表示することができる。さらには、非常締付解除が成功した後に、非常締付解除プロセスを中断することもできる。
【0026】
図2には、本発明によるクランプヘッド1の別の実施形態を示す。この実施形態において、非常開放機構は、同様にスピンドル伝動機構16により具現されている。このスピンドル伝動機構16は、ネジ切りリング21と、スピンドルリング22とからなる。スピンドルリング22は、チャック躯幹体2内にて、該チャック躯幹体から、回転不能に軸方向に案内されており、螺合部23を介して、ネジ切りリング21に噛み合っている。このネジ切りリング21は、操作部材19により位置・姿勢をシフト可能である。ネジ切りリング21が操作部材19によって回されると、チャック躯幹体2から直接または間接に軸方向に案内されているスピンドルリング22が、駆動を行うように移動する。これに伴い、締付駆動片3を、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へとシフトさせる。図示した実施例において、操作部材19は、1つのスピンドルロッド及びこの上下端の、2つのかさ歯車伝動機構20を通じて、ネジ切りリング21に伝動連結されており、この伝動連結を通じて、スピンドル伝動機構16を駆動することが可能となっている。
【0027】
図3には、本発明によるクランプヘッド1の別の実施形態について、締付の位置・姿勢にて示す。電動アクチュエーター5が故障した場合に備えて、図示した実施例において、チャック躯幹体2に圧力媒体導入部8が備え付けられている。この圧力媒体導入部8は、圧力媒体管路9を通じて、非常開放機構の作動媒体としての役割を果たす圧力媒体を、ピストン室10へと導入することを可能にする。ピストン室10は、チャック躯幹体2と締付駆動片3との間に形成されており、カラー・フランジ部6により拡大されている。すなわち、ここでは締付駆動片3がピストン26として機能し、そのピストン面27がカラー・フランジ部によってさらに拡張されている。
【0028】
図4には、締付解除の位置・姿勢となった場合における、
図3のクランプヘッド1を示す。すなわち、非常開放機構の作動媒体としての圧力媒体が圧力媒体導入部8へと導入されることで締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと切り換えられた後の状態を示す。電動アクチュエーター5が故障した際、チャック躯幹体2に備え付けられた圧力媒体導入部8を通じて圧力媒体がピストン室10へ導入される。締付駆動片3を、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと移行させ、これにより工具のシャンク・ピン15をクランプヘッド1から取り出せるようにするためである。また、圧力媒体は、締付バネ7に抗してピストン面27に作用し、ピストン26として構成されている締付駆動片3の位置を、軸方向に、電動アクチュエーター5に対してシフトさせる。そのため、この場合にも、電動アクチュエーター5に備え付けられたストッパ面28から、締付駆動片3のカラー・フランジ部6に備え付けられた対向ストッパー29が、引き離される。
【0029】
図5には、
図3〜4に示す実施例から次の点のみ異なっているところの、本発明によるクランプヘッド1と、クランプパレット24に備え付けられたシャンク・ピン15との組み合わせについて示す。本実施例では、クランプパレット24に1つの圧力媒体導入部8が備え付けられており、この圧力媒体導入部8を通じて、非常開放機構の作動媒体としての役割を果たす圧力媒体を、チャック躯幹体2中に形成されたピストン室10内へと供給することができる。ここで、シャンク・ピン15中には、圧力媒体のための導路25が、中心軸に沿った貫通孔として備えられている。また、閉じ止め蓋11中、及び締付駆動片3中にも、同様に、圧力媒体をピストン室10へ導入するための、導路25がそれぞれ備えられる。それにより、1つの集中的な圧力媒体導入部8を通じて、クランプパレット24へ圧力媒体を簡単に導入することができる。そして、クランプパレット24中に形成された適当な圧力媒体管路9を通じて、圧力媒体は、個々のクランプヘッド1へと、その圧力媒体導入部8などを通じて導入され、該クランプヘッド1について、締付の位置・姿勢から締付解除の位置・姿勢へと、軸方向にシフトさせる。これにより、非常開放機構は、クランプパレット24における1つの集中的な圧力媒体導入部8を通じて、複数のクランプヘッド1について、同時に非常開放を行わせることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…クランプヘッド; 2…チャック駆幹体; 3…締付駆動片;
4…分割型コレットチャック; 5…電動アクチュエーター;
6…カラー・フランジ部; 7…締付バネ; 8…圧力媒体導入部;
9…圧力媒体管路; 10…ピストン室; 11…閉じ止め蓋;
12…クランプジョー; 13…位置指示器; 14…位置センサー;
15…シャンク・ピン; 16…スピンドル伝動機構;
17…スピンドルロッド; 18…スピンドルナット;
19…操作部材; 20…かさ歯車伝動機構; 21…ネジ切りリング;
22…スピンドルリング; 23…螺合部; 24…クランプパレット;
25…導路; 26…ピストン; 27…ピストン面;
28…ストッパ面; 29…対向ストッパー。