特許第6165535号(P6165535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6165535マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165535
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/896 20060101AFI20170710BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20170710BHJP
   G03F 1/60 20120101ALI20170710BHJP
【FI】
   G01N21/896
   G03F1/84
   G03F1/60
【請求項の数】20
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-150229(P2013-150229)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-59292(P2014-59292A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-185045(P2012-185045)
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勝
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−337504(JP,A)
【文献】 特開昭48−088982(JP,A)
【文献】 特開2005−031689(JP,A)
【文献】 特開2003−172712(JP,A)
【文献】 特開2012−007993(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0007596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G03F 1/60
G03F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する1組の主表面を有する透光性基板を用いてマスクブランク用基板を製造する方法であって、
前記透光性基板の一方の主表面と液体を介在させて光学的に接続された光学部材を介して、他方の主表面の所定位置に向かう方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向で検査光を照射し、前記光学部材の出射予定位置以外から漏出する検査光の有無を検査する検査工程を有し、
前記検査工程は、前記検査光を、前記所定位置で全反射される方向である第1の方向で照射し、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向とは異なる方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向である第2の方向になるように前記光学部材内で反射することにより、前記検査光を前記第2の方向で更に前記所定位置に照射する
ことを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項2】
前記検査光は、レーザー光であることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項3】
前記光学部材は、
前記透光性基板の一方の主表面と液体を介在させて光学的に接続される面であり、かつ前記所定位置へ向けて検査光を照射する検査光照射面と、
前記光学部材の内部において予め設定された方向へ前記検査光を反射する検査光反射部とを備え、
前記光学部材の外部から導入された前記検査光を、前記検査光照射面から前記所定位置へ向けて、前記第1の方向で照射し、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記検査光照射面から前記光学部材の内部へ導入し、前記検査光反射部で、前記検査光照射面から導入された検査光を前記第2の方向へ反射し、前記第2の方向へ反射された検査光を前記検査光照射面から前記所定位置へ向けて照射するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項4】
前記検査光反射部は、前記導入した検査光を反射する第1の反射面と、前記第1の反射面で反射された検査光を反射して前記検査光を第2の方向に変える第2の反射面を有することを特徴とする請求項記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項5】
前記光学部材は、外部において前記検査光照射面と平行な方向へ進む前記検査光を前記光学部材の内部へ導入する検査光導入面と、前記検査光導入面から導入された前記検査光を前記所定位置へ向けて、前記第1の方向に反射する導入光反射部とを備えることを特徴とする請求項3または4に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項6】
前記検査光導入面は、前記検査光照射面と交差する平面であり、
前記導入光反射部は、前記検査光照射面と対向し、かつ前記検査光照射面に対して傾斜する位置に設けられた平面であることを特徴とする請求項5に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項7】
前記光学部材は、前記検査光反射部に加え、少なくとも第2の検査光反射部を備え、
前記第2の方向で前記所定位置に照射した前記検査光について、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向、及び前記第2の方向のいずれとも異なる方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向である第3の方向になるように第2の検査光反射部で反射することにより、前記検査光を前記第3の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする請求項から6のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項8】
前記光学部材は、更に第3の検査光反射部を備え、
前記第3の方向で前記所定位置に照射した前記検査光について、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向、第2の方向及び前記第3の方向のいずれとも異なる方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向である第4の方向になるように第3の検査光反射部で反射することにより、前記検査光を前記第4の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする請求項7に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項9】
前記検査工程で、漏出する光がない透光性基板をマスクブランク用基板として選定する選定工程を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項10】
前記透光性基板における前記他方の主表面は、鏡面に研磨されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法で製造されたマスクブランク用基板の主表面に、パターン形成用薄膜を形成する工程を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項14】
対向する1組の主表面を有する透光性基板に対して検査を行う検査装置であって、
光源部と基板ホルダと光学部材とを備えるものであり、
前記光源部は、検査光を前記光学部材に向かって照射するものであり、
前記基板ホルダは、前記透光性基板を保持するものであり、
前記光学部材は、検査光導入面と検査光照射面と検査光反射部とを備えるものであり、
前記基板ホルダに保持された前記透光性基板の一方の主表面と前記光学部材の検査光照射面とを液体を介在させて光学的に接続させ、前記検査光導入面から光学部材内に導入した前記検査光を、前記透光性基板の他方の主表面における所定位置に対し、前記検査光照射面から前記所定位置で全反射される方向である第1の方向で照射し、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記検査光照射面から前記光学部材に導入し、前記検査光反射部で、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向とは異なる方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向である第2の方向になるように前記光学部材内で反射し、前記検査光を前記第2の方向で更に前記所定位置に照射し、前記光学部材における前記検査光の出射予定位置以外から漏出する検査光の有無を検査する
ことを特徴とする検査装置。
【請求項15】
前記検査光反射部は、前記検査光照射面から導入した検査光を反射する第1の反射面と、前記第1の反射面で反射された検査光を反射して前記検査光を第2の方向に変える第2の反射面を有することを特徴とする請求項14記載の検査装置。
【請求項16】
前記検査光は、レーザー光であることを特徴とする請求項14または15に記載の検査装置。
【請求項17】
前記光学部材は、前記検査光導入面から導入された前記検査光を前記所定位置へ向けて、前記第1の方向に反射する導入光反射部を備えることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載の検査装置。
【請求項18】
前記検査光導入面は、前記検査光照射面と交差する平面であり、
前記導入光反射部は、前記検査光照射面と対向し、かつ前記検査光照射面に対して傾斜する位置に設けられた平面であることを特徴とする請求項17に記載の検査装置。
【請求項19】
前記光学部材は、前記検査光反射部に加え、少なくとも第2の検査光反射部を備え、
前記第2の方向で前記所定位置に照射した前記検査光について、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向、及び前記第2の方向のいずれとも異なる方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向である第3の方向になるように前記第2の検査光反射部で反射することにより、前記検査光を前記第3の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする請求項14から18のいずれかに記載の検査装置。
【請求項20】
前記光学部材は、更に第3の検査光反射部を備え、
前記第3の方向で前記所定位置に照射した前記検査光について、前記所定位置で全反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向、第2の方向及び前記第3の方向のいずれとも異なる方向であり、かつ前記所定位置で全反射される方向である第4の方向になるように前記第3の検査光反射部で反射することにより、前記検査光を前記第4の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする請求項19に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクブランクの製造に用いられる透光性基板は、主表面を研磨する工程等で主表面にキズ等の凹欠陥ができてしまうことがある。また、透光性基板の形状に切り出す前のガラスインゴットの段階で内部に気泡や異物が混入していたり、内部脈理が生じていたりしていることもある。このような欠陥が存在する透光性基板の主表面にパターン形成用の薄膜を形成してマスクブランクを製造し、更にそのマスクブランクの薄膜にドライエッチング等で転写パターンを形成して転写用マスクを作成した場合、その欠陥が存在する部分に薄膜が除去された転写パターンが存在しない部分(白部分)が配置されてしまうと、欠陥に起因する転写不良が生じるおそれがある。このため、所定値以上の大きさの凹欠陥や内部脈理が存在する透光性基板は、排除されることが好ましい。
【0003】
これに対し、従来、例えば特許文献1には、主表面が研磨された後の透光性基板に対し、主表面に存在する凹欠陥や内部に存在する光学的に不均一な部分(気泡、異物、内部脈理等)である内部欠陥の有無を検査する方法について、開示されている。この検査方法は、レーザー光の透光性基板の内部に入射する角度を、その入射したレーザー光が透光性基板の内部を透過して主表面に当たったときに全反射する条件に設定し、透光性基板の内部でレーザー光が主表面や端面で全反射を繰り返すようにしている。そして、そのレーザー光が凹欠陥や内部欠陥が存在している部分に当たり、全反射条件から逸脱してしまうことで、透光性基板から漏れ出てくる光を検出することで、透光性基板の凹欠陥や内部欠陥の有無を検査するものである。また、その漏れ出る光の検出には主表面をCCDによって撮影し、その撮像画像を画像処理することで凹欠陥や内部欠陥を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−242001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の透光性基板の検査方法では、検査光であるレーザー光を、検査対象である透光性基板の内部で、一方の端面側から他方の端面側に向かって、2つの主表面の間で全反射を繰り返しながら進行させておき、そのレーザー光が全反射条件から逸脱して漏れ出た場合に、その透光性基板には欠陥が存在するとしている。この検査方法では、レーザー光は、透光性基板の一方の端面側と他方の端面側で間を往復するが、一方の端面側から他方の端面側に進行するレーザー光が通過する透光性基板内の領域と、他方の端面側から一方の端面側に進行するレーザー光が通過する透光性基板内の領域とを完全一致させることは困難である。このため、透光性基板内の一地点には、ある一方向から進行してきたレーザー光しか照射されない状態になる。このような検査光(レーザー光)の照射条件で透光性基板を検査する場合、検査対象の透光性基板に存在する欠陥(表面欠陥又は内部欠陥)が、検査光の照射方向によっては全反射条件を逸脱しないような特性を有している場合、その欠陥の箇所に検査光が当たっても全反射条件から逸脱せず、検査光が正常に進行してしまって、検査光が漏れ出ないことが生じるおそれがある。この透光性基板の検査の場合、検査光が漏れ出ないと欠陥の存在を認識できず、欠陥の存在する透光性基板をマスクブランク用基板として使用可能と判定することになってしまうという問題があった。
【0006】
また、近年の転写用マスクに形成されるパターンの微細化や、偏光照明等の超解像技術の導入によって、マスクブランク用基板に存在する欠陥の条件が厳しくなっている。例えば、マスクブランク用基板の表面にマスク検査機レベルで50nm相当よりも大きい欠陥が存在しないことが要求され始めている。前述の検査方法では、検査光を透光性基板の主表面間で全反射を繰り返させながら進行させる方式であることから、このような微細なサイズの欠陥を確実に検出することは難しく、問題となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題を解決できるマスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者は、検査対象の透光性基板における主表面の検査位置(検査地点)に対し、その主表面と対向する側の主表面側から検査位置に向かう方向であって、全反射条件を満たす複数の方向(2方向以上)から検査光(レーザー光)を照射する検査方法を採用することで、検査光が当たる方向によって、欠陥を認識できない問題を解決することを検討した。しかし、この検査方法をそのまま行おうとすると、複数の検査光源が必要になってしまう。この問題を解決する方法を鋭意研究した結果、以下の構成の検査方法を発明した。
(a)検査対象の透光性基板における検査位置とする主表面と対向する主表面に対して、特定の機能を有する光学部材を液浸コンタクトすること。
(b)その光学部材は、1つの検査光を導入面から取り込み、液浸コンタクトしている面を介して透光性基板の主表面にある検査位置に対し、その検査位置で検査光が全反射する条件を満たす方向である第1の方向で検査光を照射する構造になっていること。
(c)その光学部材は、検査位置で全反射された検査光を液浸コンタクトしている面から再度導入し、光学部材内部で反射を2回以上させ、その検査光の方向を、第1の方向とは異なる方向であり、主表面の同じ検査位置に向かう方向であり、その検査位置で検査光が全反射する条件を満たす方向である第2の方向に変更するような構造となっていること。
(d)その光学部材は、主表面の検査位置で再度全反射された検査光を液浸コンタクトしている面から導入し、出射予定位置から検査光を出射する構造となっていること。
(e)光学部材が上記のような構成となっていることにより、検査対象の透光性基板における主表面の検査位置に全反射条件を逸脱させるような欠陥が存在しない場合、導入面から光学部材に導入された検査光は必ず、光学部材の出射予定位置から出射される。出射予定位置以外から検査光が漏出した場合は、検査対象の透光性基板のどこかに欠陥が存在することになる(主表面の検査位置以外に欠陥が存在しても、光学部材の出射予定位置以外から検査光が漏出する。)。これにより、透光性基板の欠陥の有無を検査できる。
【0009】
以上のような構成の検査方法を適用することにより、検査対象の透光性基板に存在する欠陥が、特定方向で照射する検査光に対しては全反射条件を逸脱しないような特性を有している場合であっても、確実に欠陥を検出することが可能となる。また、検査光を透光性基板に照射しながら、光学部材を液浸コンタクトした状態のまま平行移動させることが可能であり、透光性基板の主表面の検査位置を移動させながら欠陥の有無を検査させることができるため、マスク検査機レベルで50nm相当以下の欠陥を検出することが可能となる。
【0010】
以上の知見に基づいて本願の発明者が想到した本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)対向する1組の主表面を有する透光性基板を用いてマスクブランク用基板を製造する方法であって、透光性基板の一方の主表面と液体を介在させて光学的に接続された光学部材を介して、他方の主表面の所定位置に向かう方向であり、かつ所定位置で全反射される方向で検査光を照射し、光学部材の出射予定位置以外から漏出する検査光の有無を検査する検査工程を有し、検査工程は、検査光を、所定位置で全反射される方向である第1の方向で照射し、所定位置で全反射された検査光を光学部材に導入し、導入した検査光の方向が、第1の方向とは異なる方向であり、かつ所定位置で全反射される方向である第2の方向になるように光学部材内で反射(または全反射)することにより、検査光を第2の方向で更に所定位置に照射する。
【0011】
このように構成すれば、例えば、検査工程にて、上記(a)〜(e)に示した特徴を有する方法により、透光性基板の欠陥の有無について、高い精度で適切に検査できる。また、これにより、精度の高いマスクブランク用基板を適切に製造できる。
【0012】
(構成2)光学部材は、透光性基板の一方の主表面と液体を介在させて光学的に接続される面であり、かつ所定位置へ向けて検査光を照射する検査光照射面と、光学部材の内部において予め設定された方向へ検査光を反射(または全反射)する検査光反射部とを備え、光学部材の外部から導入された検査光を、検査光照射面から所定位置へ向けて、第1の方向で照射し、所定位置で全反射された検査光を検査光照射面から光学部材の内部へ導入し、検査光反射部で、検査光照射面から導入された検査光を第2の方向へ反射(または全反射)し、第2の方向へ反射(または全反射)された検査光を検査光照射面から所定位置へ向けて照射するものである。このように構成すれば、例えば、透光性基板に所定位置へ向けて、第1の方向及び第2の方向の検査光を適切に照射できる。
【0013】
(構成3)検査光反射部は、導入した検査光を反射(または全反射)する第1の反射面と、第1の反射面で反射(または全反射)された検査光を反射(または全反射)して検査光を第2の方向に変える第2の反射面を有する。このように構成すれば、例えば、透光性基板に所定位置へ向けて、第1の方向及び第2の方向の検査光を適切に照射できる。
【0014】
(構成4)検査光は、レーザー光である。このように構成すれば、検査光の照射方向の制御を高い精度で適切に行うことができる。
【0015】
(構成5)光学部材は、外部において検査光照射面と平行な方向へ進む検査光を光学部材の内部へ導入する検査光導入面と、検査光導入面から導入された検査光を所定位置へ向けて、第1の方向に反射(または全反射)する導入光反射部とを備えるものである。このように構成すれば、例えば、光学部材の検査光の入射角度の調整がより容易になる。また、これにより、基板検査時において、検査光の方向をより高い精度で設定できる。
【0016】
(構成6)検査光導入面は、検査光照射面と交差する平面であり、導入光反射部は、検査光照射面と対向し、かつ検査光照射面に対して傾斜する位置に設けられた平面である。このように構成すれば、例えば、透光性基板の検査位置に対し、第1の方向の検査光を高い精度で適切に照射できる。
【0017】
(構成7)光学部材は、検査光反射部に加え、少なくとも第2の検査光反射部を備え、第2の方向で所定位置に照射した検査光について、所定位置で全反射された検査光を光学部材に導入し、導入した検査光の方向が、第1の方向、及び第2の方法のいずれとも異なる方向であり、かつ所定位置で全反射される方向である第3の方向になるように第2の検査光反射部で反射(または全反射)することにより、検査光を第3の方向で更に所定位置に照射するものである。このように構成することにより、1つの光源部から発生される検査光を、透光性基板の検査位置に対して3つの方向から照射することができ、より高い精度で透光性基板の欠陥を検査することができる。
【0018】
(構成8)光学部材は、更に第3の検査光反射部を備え、第3の方向で所定位置に照射した検査光について、所定位置で全反射された検査光を光学部材に導入し、導入した検査光の方向が、第1の方向、第2の方向及び第3の方法のいずれとも異なる方向であり、かつ所定位置で全反射される方向である第4の方向になるように第3の検査光反射部で反射(または全反射)することにより、検査光を前記第4の方向で更に所定位置に照射するものである。このように構成することにより、1つの光源部から発生される検査光を、透光性基板の検査位置に対して4つの方向から照射することができ、さらに高い精度で透光性基板の欠陥を検査することができる。
【0019】
(構成9)検査工程で、漏出する光がない透光性基板をマスクブランク用基板として選定する選定工程を有する。このように構成すれば、例えば、検査工程で欠陥が検出されなかった透光性基板を適切に選定できる。
【0020】
(構成10)透光性基板における他方の主表面は、鏡面に研磨されている。このように構成すれば、例えば、透光性基板に所定位置において、検査光をより適切に全反射させることができる。
【0021】
(構成11)構成1から10のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法で製造されたマスクブランク用基板の主表面に、パターン形成用薄膜を形成する工程を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。このように構成すれば、例えば、高い精度で製造されたマスクブランク用基板を用いてマスクブランクを製造することにより、精度の高いマスクブランクを適切に製造できる。
【0022】
(構成12)構成11に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクのパターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。このように構成すれば、例えば、高い精度で製造されたマスクブランクを用いて転写用マスクを製造することにより、精度の高い転写用マスクを適切に製造できる。
【0023】
(構成13)構成12に記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。このように構成すれば、例えば、高い精度で製造された転写用マスクを用いて半導体デバイスを製造することにより、半導体ウェハ上に高い精度で回路パターンを形成できる。
【0024】
また、本願の発明者が想到した検査装置に係る発明は、以下の構成を有する。
(構成14)対向する1組の主表面を有する透光性基板に対して検査を行う検査装置であって、光源部と基板ホルダと光学部材とを備えるものであり、光源部は、検査光を前記光学部材に向かって照射するものであり、基板ホルダは、前記透光性基板を保持するものであり、光学部材は、検査光導入面と検査光照射面と検査光反射部とを備えるものであり、基板ホルダに保持された透光性基板の一方の主表面と光学部材の検査光照射面とを液体を介在させて光学的に接続させ、検査光導入面から光学部材内に導入した検査光を、透光性基板の他方の主表面における所定位置に対し、検査光照射面から所定位置で全反射される方向である第1の方向で照射し、所定位置で全反射された検査光を検査光照射面から前光学部材に導入し、検査光反射部で、導入した検査光の方向が、第1の方向とは異なる方向であり、かつ所定位置で全反射される方向である第2の方向になるように光学部材内で反射(または全反射)し、検査光を第2の方向で更に所定位置に照射し、光学部材における検査光の出射予定位置以外から漏出する検査光の有無を検査するものである。このように構成すれば、上記(a)〜(e)に示した特徴を有する検査装置とすることができ、透光性基板の欠陥の有無について、高い精度で適切に検査できる。
【0025】
(構成15)検査光反射部は、検査光照射面から導入した検査光を反射(または全反射)する第1の反射面と、第1の反射面で反射(または全反射)された検査光を反射(または全反射)して検査光を第2の方向に変える第2の反射面を有する。このように構成すれば、例えば、透光性基板に所定位置へ向けて、第1の方向及び第2の方向の検査光を適切に照射できる。
【0026】
(構成16)前記検査光は、レーザー光である。このように構成すれば、検査光の照射方向の制御を高い精度で適切に行うことができる。
【0027】
(構成17)光学部材は、検査光導入面から導入された検査光を所定位置へ向けて、第1の方向に反射(または全反射)する導入光反射部を備える。このように構成すれば、例えば、光学部材の検査光の入射角度の調整がより容易になる。また、これにより、基板検査時において、検査光の方向をより高い精度で設定できる。
【0028】
(構成18)検査光導入面は、検査光照射面と交差する平面であり、導入光反射部は、検査光照射面と対向し、かつ検査光照射面に対して傾斜する位置に設けられた平面である。このように構成すれば、例えば、透光性基板の検査位置に対し、第1の方向の検査光を高い精度で適切に照射できる。
【0029】
(構成19)光学部材は、検査光反射部に加え、少なくとも第2の検査光反射部を備え、第2の方向で所定位置に照射した検査光について、所定位置で全反射された検査光を光学部材に導入し、導入した検査光の方向が、第1の方向、及び第2の方法のいずれとも異なる方向であり、かつ所定位置で全反射される方向である第3の方向になるように第2の検査光反射部で反射(または全反射)することにより、検査光を前記第3の方向で更に所定位置に照射するものである。このように構成することにより、1つの光源部から発生される検査光を、透光性基板の検査位置に対して3つの方向から照射することができ、より高い精度で透光性基板の欠陥を検査することができる。
【0030】
(構成20)光学部材は、更に第3の検査光反射部を備え、第3の方向で所定位置に照射した検査光について、所定位置で全反射された検査光を光学部材に導入し、導入した検査光の方向が、第1の方向、第2の方向及び前記第3の方法のいずれとも異なる方向であり、かつ所定位置で全反射される方向である第4の方向になるように第3の検査光反射部で反射(または全反射)することにより、検査光を前記第4の方向で更に所定位置に照射するものである。このように構成することにより、1つの光源部から発生される検査光を、透光性基板の検査位置に対して4つの方向から照射することができ、さらに高い精度で透光性基板の欠陥を検査することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、例えば、マスクブランク用基板の製造方法において、透光性基板の欠陥の有無について、高い精度で適切に検査できる。また、これにより、精度の高いマスクブランク用基板を適切に製造できる。さらに、透光性基板の欠陥の有無について、高い精度で適切に検査することができる検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板の製造方法において行われる検出工程について説明をする図である。図1(a)は、光学部材102を用いて透光性基板の検査を行う検査装置100の構成の一例を示す。図1(b)は、光学部材102の詳細な構成の一例を示す。図1(c)は、自己診断時における検査光の経路と共に、光学部材102の側断面図を示す。
図2】基板検査時における検査光の照射の様子を示す図である。図2(a)は、一般的なプリズム152を用いて検査光を透光性基板10内に導入する場合の様子の例を示す。図2(b)は、透光性基板10の端面又は面取り面から透光性基板10内へ検査光を導入する場合の例を示す。
図3】透光性基板10を用いて製造されるマスクブランク20及び転写用マスク30の一例を示す図である。図3(a)は、マスクブランク20の構成の一例を示す。図3(b)は、転写用マスク30の構成の一例を示す。
図4】光学部材102の光学設計の概要について説明をする図である。図4(a)は、第1の方向の検査光を照射する方法の一例を示す。図4(b)は、第2の方向の検査光を照射する方法の一例を示す。
図5】自己診断が可能な光学部材102の構成の他の例を示す図である。図5(a)は、面202と面204とが非平行である場合の光学部材102の構成の例を示す図である。図5(b)は、図5(a)に示した光学部材102の斜視図である。図5(c)は、面202に光集中点304が設定される場合の光学部材102の構成の例を示す図である。図5(d)は、図5(c)に示した光学部材102の斜視図である。
図6】基板検査時に第1〜第4の4方向の検査光を検査位置へ照射する場合の光学部材102の構成の例を示す図である。図6(a)は、基板検査時に4方向の検査光を照射する光学部材102の構成の一例を示す斜視図である。図6(b)、(c)、(d)は、検査位置302へ検査光を照射している状態を示す光学部材102の斜視図、下面図、及び側面図である。
図7】基板検査時に第1〜第4の4方向の検査光を検査位置へ照射する場合の光学部材102の構成の例を示す図である。図7(a)、(b)、(c)は、自己診断時の検査光の様子を示す光学部材102の斜視図、下面図、及び側面図である。
図8】基板検査時に6方向の検査光を照射する場合(6方向立体折り返し)の例を示す図である。図8(a)は、検査光を照射する方向の数と、欠陥検出の角度依存との関係の一例を示す図である。図8(b)は、6方向立体折り返しを行う光学部材102の構成の一例を示す斜視図である。
図9】基板検査時に8方向の検査光を照射する光学部材102の構成(8方向立体折り返し)の一例を示す図である。図9(a)は、8方向立体折り返しを行う光学部材102の構成の第1の例を示す図である。図9(b)は、8方向立体折り返しを行う光学部材102の構成の第2の例を示す図である。
図10】基板検査時に12方向の検査光を照射する光学部材102の構成の一例を示す図である。図10(a)、(b)は、基板検査時に検査位置302へ検査光を照射する様子の一例を示す側面図及び斜視図である。図10(c)は、自己診断時の光学部材102の様子の一例を示す斜視図である。図10(d)は、光学部材102の全体の構成の一例を示す斜視図である。
図11図8(b)の光学部材102を分割作成する場合の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板の製造方法において行われる検出工程について説明をする図である。本例において、検査工程は、検査装置100を用いて透光性基板10の検査を行う工程(検出工程)である。また、検査装置100は、光学部材102を用いて透光性基板10の検査を行う。
【0034】
ここで、先ず、本例におけるマスクブランク用基板の製造工程について説明する。本例において、マスクブランク用基板の製造工程は、対向する1組の主表面を有する透光性基板を用いてマスクブランク用基板を製造する方法であり、基板準備工程、検査工程、及び選定工程を少なくとも備える。
【0035】
基板準備工程は、所定形状に加工された透光性基板10を準備する工程である。本例において、基板準備工程は、波長が200nm以下のレーザー光(例えば、露光波長193nmのArFエキシマレーザー等)を露光光として用いる場合のマスクブランク用基板となる透光性基板10を準備する。基板準備工程は、公知の方法と同一又は同様の方法により、透光性基板10を準備する工程であってよい。透光性基板10としては、例えば透光性の合成石英ガラス基板を用いることが好ましい。また、透光性基板10として、反射型マスクブランクの基板として使用される低熱膨張ガラスを用いることもできる。この低熱膨張ガラスとしては、例えば、SiO−TiOガラス等が挙げられる。
【0036】
基板準備工程においては、例えば、先ず、透光性の合成石英ガラスインゴットから、所定形状及び寸法の合成石英ガラス基板を切り出す。切り出される合成石英ガラス基板の形状は、四角形状の上下の主表面と、両主表面と直交して、両主表面の各辺をつなぐ4つの側面とを有する形状である。
【0037】
そして、合成石英ガラス基板の両主表面と、直交する各側面との間に、面取り加工を施し、面取り面を形成する。尚、以下においては、面取り加工後の合成石英ガラス基板において、側面のうち、面取り加工した部分を除いた部分を端面と呼ぶ。
【0038】
そして、更に、例えば、合成石英ガラス基板の両主表面、各端面、及び各面取り面を全て鏡面に研磨する。鏡面研磨により、例えば、合成石英ガラス基板の両主表面の表面粗さRa(算術平均粗さ)を約0.5nm以下とし、各端面及び各面取り面の表面粗さRa(算術平均粗さ)を約2nm以下とする。また、主表面の表面粗さは、自乗平均平方根粗さ(Rq)で0.2nm以下とすることが好ましい。また、基板準備工程において、更に、主表面や端面に対し、精密研磨や超精密研磨を行ってもよい。尚、この鏡面研磨が行われた後における合成石英ガラス基板の寸法は、例えば、約152.1mm×約152.1mm×約6.35mmである。
【0039】
検査工程は、基板準備工程において準備された透光性基板10に対する検査を行う工程である。本例において、検査工程は、透光性基板10の検査位置へ検査光を照射することにより、透光性基板10内における光学的に不均一な領域の有無を検査する。光学的に不均一な領域とは、例えば、主表面に存在する凹欠陥や、内部に存在する光学的に不均一な部分(気泡、異物、内部脈理等)である。また、選定工程は、検出工程において光学的に不均一な領域が検出されなかった透光性基板10を、マスクブランク用基板として選定する。
【0040】
続いて、検査工程について、更に詳しく説明する。図1(a)は、光学部材102を用いて透光性基板の検査を行う検査装置100の構成の一例を示す。本例において、検査装置100は、透光性基板10における所定の検査位置302へ検査光を照射することで検査位置302における欠陥の有無を検査する検査装置であり、光学部材102、基板ホルダ104、光源部106、走査駆動部108、拡大光学系110、撮像部112、及び検査判定部114を備える。
【0041】
光学部材102は、透光性基板10へ照射する検査光の向きを設定する透光性の部材である。本例において、光学部材102は、特殊形状のプリズムであり、光源部106から入射する光の向き(光路)をその内部で変更することにより、矢印404及び矢印408で示すように、複数の方向の検査光を検査位置302へ照射する。尚、光学部材102の光学特性については、後に更に詳しく説明する。
【0042】
基板ホルダ104は、検査対象の透光性基板10を保持する保持部材である。本例において、検査工程時、基板ホルダ104に保持された透光性基板10は、その一方の主表面と、光学部材102の一の面との間に液体50を介した液浸の状態にされる。これにより、透光性基板10の一方の主表面と、光学部材102とは、液体50を介在させて光学的に接続された状態となる。この液体50としては、例えば水(純水)を好適に用いることができる。また、基板ホルダ104は、この液浸の状態を維持したままで検査位置302の走査が可能なように、透光性基板10を保持する。検査対象の透光性基板10の厚さは、全く同一とすることが難しく、基板同士の間で微小な差がある。この微小な差は、液体50の厚みで微調整することができる。
【0043】
光源部106は、検査位置302へ照射する光の光源である。本例において、光源部106は、レーザー光源であり、発生したレーザー光を、光学部材102へ向けて照射する。光源部106としては、例えば、検査装置100により検出しようとする欠陥のサイズに応じた波長のレーザー光を発生する光源を用いることが好ましい。
【0044】
例えば、マスクブランク用基板から製造される転写マスクにおいて、193nmのArFエキシマレーザー等の波長が200nm以下のレーザー光を露光波長として用いる場合、波長488nm(青色)のレーザー等を好適に用いることができる。本例によれば、このような波長を用いることにより、例えば、30nm以下程度のサイズの欠陥を適切に検出できる。また、例えば、波長515nm(緑色)のレーザーや、波長405nmのレーザー等の可視光域の波長のレーザーを用いることも考えられる。また、光源部106は、これらのうちの複数のレーザー光を出力するマルチライン型のレーザー光源であってもよい。このように構成すれば、高い出力のレーザー光を適切に出力できる。レーザー光のビーム径は、例えば0.6mm程度(例えば、0.5〜0.9mm)、ビームの広がり角は1mrad程度(例えば、0.5〜1.5mrad)とすることが好ましい。光源部106は、例えば波長266nm等の深紫外線(DUV)のレーザー光を発生してもよい。また、光源部106が発生するレーザー光の波長は、マスクブランク用基板から製造される転写マスクにおいて用いられる露光波長と同じであってもよい。
【0045】
走査駆動部108は、透光性基板10の主表面と平行な方向において透光性基板10に対して相対的に光学部材102を移動させる駆動部であり、この移動により、透光性基板10の主表面内で検査位置302を走査する。本例において、走査駆動部108は、位置を固定した光学部材102に対して透光性基板10の側を移動させることにより、透光性基板10に対して相対的に光学部材102を移動させる。走査駆動部108は、位置を固定した透光性基板10に対して光学部材102の側を移動させてもよい。
【0046】
拡大光学系110は、透光性基板10における検査位置302近傍の像を拡大する光学系である。本例において、拡大光学系110は、顕微鏡であり、対物レンズの焦点を検査位置302に合わせて保持される。また、拡大光学系110の接眼レンズ側には、撮像部112が取り付けられている。撮像部112は、例えばCCD素子等の撮像素子であり、拡大光学系110により拡大された検査位置302近傍の像を撮像する。なお、撮像部112は、TDIカメラであるとより好ましい。また、撮像部112は、撮像した画像を、検査判定部114へ送る。
【0047】
検査判定部114は、例えば画像処理を行うコンピュータであり、透光性基板10の検査位置302における検査結果を判定する。本例において、検査判定部114は、撮像部112により撮像された画像に基づき、検査光が照射された検査位置302における光の漏出の有無を判断する。そして、光の漏出が検出された場合、検査対象の透光性基板に欠陥が存在すると判定する。尚、光の漏出の検出と、検査位置302における欠陥との関係については、後に、光学部材102の光学特性と合わせて説明する。
【0048】
図1(b)は、光学部材102の詳細な構成の一例を示す図であり、検出工程における基板検査時に検査位置302へ検査光を照射している状態での検査光の経路と共に、光学部材102の側断面図を示す。この側断面図は、透光性基板10の主表面と垂直、かつ、検査光の光路と平行な平面による光学部材102の断面である。
【0049】
本例において、光学部材102は、モノリシックなプリズムであり、例えばガラスで形成されている。また、光学部材102の表面は、断面図において示した面202〜212と、断面図の手前側及び奥側の面とで構成されている。これらの面は、全て平面である。
【0050】
面202は、透光性基板10へ向けて検査光を照射する検査光照射面の一例の面である。本例において、面202は、透光性基板10と対向する面であり、基板検査時において、透光性基板10の一方の主表面と、液体50を介在させて光学的に接続される。これにより、面202は、透光性基板10と液浸コンタクトする液浸コンタクト面として機能する。また、基板検査時において、面202は、光学部材102の内部から透光性基板10へ向けて検査光を出射する出射面になっており、透光性基板10の他方の主表面における所定の検査位置302へ向けて、検査光を照射する。
【0051】
面204は、検査光照射面と平行な面である対向面の一例である。本例において、面204は、面208と共に、検査光反射部122を構成する。また、本例において、面204は、導入した検査光を反射する第1の反射面の一例でもある。面206は、光源部106が発生する検査光を光学部材102の内部へ導入する検査光導入面の一例である。本例において、面206は、面202と交差する平面であり、光学部材102の外部において光源部106が照射する検査光を、光学部材102の内部へ導入する。面208は、光学部材102の内部で検査光を反射する反射平面の一例である。本例において、面208は、面206と対向し、かつ面202及び面204と交差する位置に設けられた面である。また、本例において、面208は、第1の反射面で反射された検査光を反射して検査光を第2の方向へ変える第2の反射面の一例でもある。面210は、面206から導入された検査光を反射する導入光反射部の一例である。本例において、面210は、面202と対向し、かつ面202に対して傾斜する位置に設けられた平面であり、基板検査時において、面206から入射した検査光を面202へ向けて反射する。また、面212は、面210と面204とをつなぐ平面である。
【0052】
このような光学部材102を用いることにより、基板検査時における検査光の経路は、以下の通りになる。先ず、矢印402に示すように、光源部106は、透光性基板10の外部において面202と平行な方向へ進む検査光を発生する。そして、面206は、その検査光を、光学部材102の内部に導入する。また、面210は、面206から導入された検査光を、検査位置302へ向けて、矢印404に示す第1の方向に反射する。この第1の方向は、透光性基板10の他方の主表面における所定位置である検査位置302で検査光が全反射される方向である。
【0053】
尚、本例の基板検査時において、面202は、上記のように、液体を介在させて透光性基板10の一方の主表面と光学的に接続している。そのため、面210により反射された検査光は、面202において全反射されることなく、透光性基板10の検査位置302まで到達する。
【0054】
また、検査位置302において、第1の方向の検査光は、矢印406に示すように全反射される。そして、全反射された検査光は、面202から光学部材102の内部に導入され、面204に到達する。
【0055】
面204は、検査位置302で全反射した後に面202から導入された検査光を、面208へ向けて反射(または全反射)する。また、面208は、面204により反射(または全反射)された検査光を、検査位置302へ向けて、矢印408に示す第2の方向に反射(または全反射)する。この第2の方向は、検査位置302で全反射される方向であり、かつ第1の方向とは異なる方向である。これにより、面204及び面208により構成される検査光反射部122は、光学部材102の内部において予め設定された方向へ検査光を反射(または全反射)する。
【0056】
また、面208により反射(または全反射)された第2の方向の検査光は、面202において全反射されることなく、透光性基板10の検査位置302へ到達する。そして、検査位置302において、第2の方向の検査光は、矢印410に示すように全反射される。また、全反射された検査光は、面202から光学部材102の内部に導入され、その後、面206における出射予定位置から光学部材102の外部に出射する。この出射予定位置は、検査位置302に欠陥がない場合に検査光が出射する位置であり、光学部材102の光学設計により予め設定される。
【0057】
以上のようにして、基板検査時において、光学部材102は、光学部材102の外部から導入された検査光を、面202から検査位置302へ向けて、第1の方向で照射し、検査位置302で全反射された検査光を、面202から光学部材102の内部へ導入する。そして、面202から導入された検査光を、検査光反射部122で、第2の方向へ反射(または全反射)し、第2の方向へ反射(または全反射)された検査光を面202から検査位置302へ向けて照射する。そのため、本例によれば、基板検査時において、複数の光源を用意することなく、透光性基板10の検査位置302に対し、複数の方向の検査光を高い精度で適切に照射できる。
【0058】
ここで、本例の基板検査時に行う透光性基板10の検査について、更に詳しく説明する。本例においては、上記説明のように、透光性基板10における光学部材102から遠い側の主表面上に検査位置302を設定し、検査位置302に対し、光学部材102を介して、第1の方向及び第2の方向の検査光を照射する。そして、検査位置302、及び、透光性基板10内での検査光の経路のいずれにも光学的に不均一な領域がなければ、検査光は、検査位置302で全反射し、光学設計により予め設定された経路で光学部材102の方向へ進む。
【0059】
一方、例えば研磨時の異物混入等によって透光性基板10における検査位置302にキズ等がある場合、その検査位置302においては光学設計通りの全反射がされないこととなる。また、検査光の経路において、ガラスの脈理等に特徴的な、透過率は同じで屈折率だけが違う欠陥が存在する場合、検査光は、屈折率の違うところで本来の軌道(光路)を外れることとなる。そのため、この場合も、検査位置302において光学設計通りの全反射がされないこととなる。そして、検査位置302において光学設計通りの全反射がされない場合、その後、光学部材102の出射予定位置以外から検査光が漏出する。すなわち、透光性基板10において、キズや脈理等の光学的に不均一部分があると、検査光が光学設計上の経路(光路)を外れ、他の方向へ漏れ出すこととなる。そのため、このような光の漏出を検出することにより、透光性基板10における光学的に不均一な領域を適切に検出できる。
【0060】
また、本例においては、走査駆動部108により透光性基板10における検査位置302を順次変更することにより、透光性基板10の主表面の各位置を検査位置302に設定できる。そのため、本例によれば、透光性基板10において検査が必要な領域全体について、光学的に不均一な領域による欠陥を適切に検出できる。また、マスクブランク用基板の製造工程における選定工程では、検出工程において光学的に不均一な領域の影響で漏出する光がなかった透光性基板10を選択することにより、マスクブランク用基板を適切に選定できる。
【0061】
続いて、光学部材102の自己診断機能について説明する。基板検査時における上記のような機能を有する光学部材は、光学部材内の複数の反射面同士の位置関係が設計値通りでなければ、所望の機能を発揮することができなくなるため、非常に高い加工精度が求められる。そのため、実際に製作した光学部材が所望の機能を有しているかどうかを検証することも容易ではなく、より簡便に加工精度を確認できる方法が望まれる。そこで、本願の発明者は、光学部材102について、単独に配置した状態(透光性基板と液浸コンタクトしていない状態)で、検査光(レーザー光)を導入することで、設計図から許容される誤差範囲内の加工精度となっているか否かを検証できる(自己診断可能な)構成とすることを考えた。また、鋭意研究により、自己診断機能を有する光学部材102の構成を見出した。そこで、続いて、光学部材102の自己診断機能について説明する。
【0062】
図1(c)は、自己診断時における検査光の経路と共に、光学部材102の側断面図を示す。本例において、自己診断時における検査光とは、光学部材102の自己診断を行うために光学部材102内に導入するレーザー光のことである。このレーザー光は、例えば、基板検査時に用いる検査光と同じレーザー光である。
【0063】
本例において、光学部材102の自己診断は、光学部材102を大気中に置き、基板検査時と同じ方向の検査光を光学部材102の外部から導入することで行う。この場合、基板検査時と同じ方向である矢印402に示す方向の検査光は、面206から光学部材102の内部に導入され、面210で反射(または全反射)される。そのため、面210は、基板検査時と同じ第1の方向へ検査光を反射(または全反射)する。
【0064】
しかし、透光性基板10との間が液浸状態となっている基板検査時と異なり、自己診断時において、光学部材102は、大気中に置かれている。そのため、面210で反射(または全反射)された検査光は、図中の矢印で示すように、面202の位置306において全反射され、光集中点304に向かう。位置306は、基板検査時に第1の方向の検査光が出射する位置である。光集中点304は、光学部材102の光学設計により面204において予め設定された所定の位置である。また、位置306で全反射された検査光は、光集中点304で反射(または全反射)され、面202の位置308へ向かう。そして、位置308で全反射され、再度、面204へ向かう。
【0065】
ここで、本例において、光学部材102は、基板検査時に検査位置302で全反射された第1の方向の検査光が光学部材102内に導入される位置と、位置308とが一致するように、光学設計されている。より具体的には、例えば、透光性基板10の厚さをD1、透光性基板10の屈折率をn1とし、基板検査時における透光性基板10の一方の主表面と、面202との間の距離をD2、基板検査時に透光性基板10と光学部材102との間に介在する液体50の屈折率をn2とし、光学部材102における面202と面204との間の距離をD3、光学部材102の屈折率をn3、前記検査光照射面の法線方向に対する前記第1の方向の傾斜角をθとした場合、D1×tan[sin−1{(n3/n1)×sinθ}]+D2×tan[sin−1{(n3/n2)×sinθ}]=D3×tanθの関係を満たすように設計されている。
【0066】
そのため、自己診断時に位置308で全反射された後の検査光は、基板検査時に面202から導入された検査光と同じ経路を進む。すなわち、検査光は、面204及び面208により構成される検査光反射部122により第2の方向へ反射(または全反射)され、面202へ向かう。
【0067】
しかし、自己診断時には、光学部材102が大気中に置かれているため、面208により第2の方向へ反射(または全反射)された検査光は、面202の位置310において、再度全反射される。そして、全反射された検査光は、面204へ向かう。この位置310は、基板検査時に第2の方向の検査光が出射する位置である。また、検査光は、面204で反射(または全反射)され、面202の位置312へ向かう。
【0068】
ここで、本例において、光学部材102は、自己診断時に位置310で全反射された検査光が面204における光集中点304へ向かうように光学設計されている。そのため、自己診断時において、第1の方向及び第2の方向の各検査光は、いずれも、光学部材102の内部において、面202で全反射され、かつ、その全反射後の各検査光が光集中点304に集まる。そのため、本例によれば、複数の方向の検査光が光集中点304に集まることを確認することにより、設計図から許容される誤差範囲内で光学部材102が作製されていることを適切に確認できる。また、このような自己診断機能を持たせることにより、高い精度で光学部材102を作成することが可能となる。
【0069】
尚、本例において、光学部材102は、更に、基板検査時に検査位置302で全反射された第2の方向の検査光が光学部材102内に導入される位置と、位置312とが一致するように、光学設計されている。そのため、自己診断時に位置312で全反射された後の検査光は、基板検査時に面202から導入された検査光と同じ経路を進む。
【0070】
また、光学部材102のより具体的な形状については、例えば以下のようにすることができる。例えば、図1(b)、(c)に示した断面形状における各辺の長さについて、L1、L2=25〜35mm程度(但し、L2>L1)とすることができる。また、L3=5〜8mm程度、L4=0.5〜2mm程度、L5=20〜25mm程度とすることができる。また、D3=4〜8mm程度とすることができる。また、各頂点の角度について、a、b=91〜95°程度、c=50〜80程度、d=70〜120°程度、e=90〜130°程度、f=70〜90°程度とすることができる。また、光学部材102の幅(断面図の奥側の面と手前側の面との距離)は、検査光のビーム径よりも大きければよく、例えば、1〜20mm程度とすることができる。
【0071】
透光性基板10の検査時において、光学部材102の内部で検査光を反射する反射面としては、導入光反射部を構成する面210と、検査光反射部122を構成する面204と面208がある。これらの反射面で検査光を反射可能とする簡単な方法としては、その反射面の表面を鏡面状態とし、かつその表面を露出状態とし、反射面で検査光を全反射させる方法がある。この方法を適用する場合、反射面に接する光学部材102の外側の媒体(空気等)の屈折率と、光学部材102を構成する物質の屈折率との間の差を大きくすることが望まれる。この屈折率差が大きくなるほど、反射面で検査光を全反射させることが可能な検査光の反射面に対する入射角度の限界値である臨界角が小さくなるためである。
【0072】
このような反射面が全反射によって検査光を反射させる構成とする場合においては、光学部材102は、検査光の透過率が高く、屈折率がある程度の高さがあり、透過率や屈折率の均一性が高いという条件を満たすのであれば、いずれの材料も適用可能である。合成石英ガラスは、検査光に対する透過率が非常に高く、屈折率も比較的高く、屈折率の均一性も高めることができ、さらにこれらの条件を満たしつつ、コストも比較的低いため、好ましい。また、例えばサファイア、キュービック・ジルコニア、ダイヤモンド等の、より屈折率の高い材料で透光性材料を形成することもできる。この場合、検査光が全反射する臨界角がより小さくなるため、例えば、光学部材102の設計の自由度をより高めることができる。
【0073】
上記の方法以外に反射面で検査光を反射可能とする方法としては、その反射面の表面を鏡面状態とし、かつその表面に誘電体膜等の反射膜をコーティングする方法がある。この場合、全反射させる場合に比べると反射面での検査光の反射率は多少下がる。しかし、反射面で検査光を反射させることが可能な臨界角を考慮する必要が実質的になくなり、光学部材102の光学設計の自由度は大幅に高まるという利点がある。反射面の表面にコーティングする反射膜は、検査光の波長において高い反射率で反射可能な構成であれば、特に制限はされない。反射面の検査光に対する反射率をより高めるという観点では、低屈折率材料(低誘電体)の層と高屈折率材料(高誘電体)の層が交互に積層した構造の多層反射膜を反射膜の表面にコーティングすることが好ましい。
【0074】
このような反射面の表面に反射膜を設けることによって検査光を反射させる構成とする場合においては、光学部材102は、検査光の透過率が高く、透過率の均一性が高いという条件を満たすのであれば、いずれの材料も適用可能である。この構成の場合、光学部材102を構成する材料として、前記に列挙した合成石英ガラス等の材料のほか、ソーダライムガラスやアルミノシリケートガラス等のガラス材料や、検査光に対する透過率が高い樹脂材料も適用可能となる。
【0075】
実際に光学部材102を用いて透光性基板10に検査光を照射する実験をおこなった。ただし、この実験では、検査光に波長266nmのDUV域のレーザー光を用いた。その結果、この実験により、40nm以下のサイズ(直径)の欠陥、更には、30nm以下のサイズ(例えば、28nm程度)の欠陥を検出できることを確認できた。また、透光性基板10の表面の欠陥については、例えば、深さ7nm程度の凹欠陥についても、適切に検出できた。また、この光学部材102を用いて、光学部材102の自己診断を適切に行うこともできた。
【0076】
図2(a)、(b)は、光学部材102を用いる場合と異なる方法で透光性基板10に検査光を照射する場合の例を示す。図2(a)は、一般的なプリズム152を用いて検査光を透光性基板10内に導入する場合の様子の例を示す。この場合、透光性基板10の一方の主表面とプリズム152の一面とを、液体50(水等)を介在させて光学的に接続することにより、検査位置302で全反射される方向の検査光を、プリズム(透光性部材)152を通して透光性基板10内に導入する。また、検査位置302で全反射された検査光を、プリズム152を介して、透光性基板10の外部へ出射させる。
【0077】
このようにした場合も、所定の方向の検査光を透光性基板10の検査位置へ照射できる。また、これにより、透光性基板10の検査を行うこともできる。しかし、一般的なプリズム152を用いる場合、一のレーザー光源からの1回の光照射により検査位置302へ照射される検査光の方向は、一方向のみとなる。そのため、例えば、検査対象の透光性基板に存在する欠陥が、検査光の照射方向によっては全反射条件を逸脱しないような特性を有している場合、欠陥を適切に検出できないおそれがある。
【0078】
図2(b)は、透光性基板10の端面又は面取り面から透光性基板10内へ検査光を導入する場合の例を示す。この場合、透光性基板10の主表面で全反射する方向の検査光を端面又は面取り面から導入すると、検査光は、透光性基板10の内部において、両主表面間で全反射を繰り返しつつ進行する。そのため、検査光の方向及び透光性基板10への導入位置を適切に設定することにより、検査位置302へ検査光を照射できる。
【0079】
しかし、この場合も、検査位置302へ照射される検査光の方向は、一方向のみとなる。そのため、例えば、検査対象の透光性基板に存在する欠陥が、検査光の照射方向によっては全反射条件を逸脱しないような特性を有している場合、欠陥を適切に検出できないおそれがある。
【0080】
このように、図2(a)、(b)のような方法により検査位置302へ検査光を照射する場合、検査位置302へ照射される検査光の方向が一方向のみとなる結果、欠陥を適切に検出できないおそれがある。これに対し、本例の光学部材102を用いる場合、一のレーザー光源からの1回の光照射により、検査位置302へ複数の方向の検査光を照射できる。そのため、本例によれば、より高い精度で欠陥を検出することが可能となる。
【0081】
図3は、透光性基板10を用いて製造されるマスクブランク20及び転写用マスク30の一例を示す。図3(a)は、マスクブランク20の構成の一例を示す。選定工程で合格品となり、マスクブランク用基板として選定された透光性基板10は、その後、マスクブランク20の製造に用いられる。マスクブランク20の製造工程では、マスクブランク用基板として選定された透光性基板10の主表面に、例えば公知の方法により、パターン形成用薄膜12を形成する。このようにすれば、高い精度で選定されたマスクブランク用基板を用いることができる。また、これにより、精度の高いマスクブランク20を適切に製造できる。
【0082】
前記のパターン形成用薄膜12は、単層構造、複数層の積層構造、組成傾斜した構造のいずれの構成でもよい。ここでいうマスクブランクは、パターン形成用薄膜12上に、パターン形成用薄膜12をパターニングする際にエッチングマスクとして使用されるハードマスク膜が形成されている構成も含まれる。また、ここでいうマスクブランクには、パターン形成用薄膜12上やハードマスク膜上に、有機系材料からなるレジスト膜が形成されている構成も含まれる。このように製造されたマスクブランク20は、転写用マスク30の製造に用いられる。
【0083】
図3(b)は、転写用マスク30の構成の一例を示す。転写用マスク30の製造工程では、例えば公知の方法により、マスクブランク20のパターン形成用薄膜12をエッチングによりパターニングして、転写パターンを形成する。このようにすれば、高い精度で製造されたマスクブランク20を用いることで、精度の高い転写用マスク30を適切に製造できる。
【0084】
尚、ここでいうマスクブランク20には、透光性基板10とパターン形成用薄膜12の間に、露光光を反射する多層反射膜(例えば、Si膜とMo膜の交互積層膜)を設けた構成も含まれる。このようなマスクブランクとしては、例えば、露光光にEUV(Extreme UltraViolet)光(波長 13〜14nm等)が適用される反射型のマスクブランクが挙げられる。この反射型のマスクブランクの場合、主表面にキズ等の欠陥が存在する透光性基板の上に多層反射膜を形成していくと、そのキズ等の欠陥を起点に大きさや深さが増幅され、多層反射膜に致命的な位相欠陥が発生するおそれがある。また、反射型のマスクブランクから製造される反射型マスク(転写用マスク)は、露光装置のマスクステージにセットされる際には、多層反射膜やパターン形成用薄膜が形成されている側とは反対側(裏面側)がチャックされる。このため、透光性基板の裏面側の主表面においてもキズ等の欠陥が存在するとチャックの精度が低下するおそれがある。これらのことから、反射型のマスクブランクに用いられる透光性基板においても、キズ等の欠陥を精度よく検出できることは重要である。
【0085】
反射型マスクの製造工程では、前記の反射型のマスクブランクを用い、例えば公知の方法により、パターン形成用薄膜をエッチングによりパターニングして、転写パターンを形成する。このようにすれば、高い精度で製造された反射型のマスクブランク20を用いることで、精度の高い反射型マスク(転写用マスク)を適切に製造できる。
【0086】
また、これらの製造された転写用マスク30は、半導体デバイスの製造に用いられる。半導体デバイスの製造工程においては、例えば公知の方法により、転写用マスク30を用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成する。このようにすれば、高い精度で製造された転写用マスク30を用いることにより、半導体ウェハ上に回路パターンを高い精度で形成できる。また、これにより、動作不良欠陥のない高品質の半導体デバイスを適切に製造できる。
【0087】
尚、上記においては、検査対象となる透光性基板10について、マスクブランク用基板の製造に用いられる透光性基板である場合の説明を行った。しかし、本例の光学部材102を用いた基板検査の方法は、他の用途の透光性基板10の検査にも適用可能である。例えば、検査対象の透光性基板10は、TFTアレイや有機ELの透明電極を表面に形成するガラス基板等であってもよい。
【0088】
続いて、光学部材102の構成の他の例について説明する。先ず、光学部材102の光学設計の概要について説明する。図4は、異なる2つの方向である第1の方向及び第2の方向の検査光を検査位置302へ照射する場合について、光学部材102の光学設計の概要を説明する図である。尚、図4以降の図面において、図1と同じ符号を付した構成は、以下に説明する点を除き、図1の構成と同一又は同様の特徴を有してよい。また、図4(a),(b)において、横方向の座標軸(座標横軸)は、透光性基板10の検査位置302が設定される側の主表面に対して平行な位置関係に設定されたものであり、縦方向の座標軸(座標縦軸)は、その座標横軸に対して垂直な位置関係に設定されたものである。
【0089】
図4(a)は、第1の方向の検査光を照射する方法の一例を示す。本例において、検査位置302への照射する検査光の方向の設定は、光学部材102の内部で検査光を予め設定した方向へ反射(または全反射)することで行うことができる。より具体的には、例えば、矢印402で示す方向の検査光について、面206から導入し、面210で反射(または全反射)することで検査位置302へ照射する場合、面206及び面210の傾きを適宜設定することにより、矢印404に示す検査光の方向(第1の方向)を設定できる。尚、図示した場合において、面206は、透光性基板10の主表面の法線(座標縦軸)に対し、図示の方向へ、角度ai傾いている。また、第1の方向の検査光の入射角度は、td1である。
【0090】
図4(b)は、第2の方向の検査光を照射する方法の一例を示す。第1の方向の検査光は、検査位置302で全反射された後、光学部材102へ向かって進む。そのため、検査光を再度光学部材102内へ導入し、予め設定した方向へ反射(または全反射)することにより、次に検査位置302へ照射する検査光の方向も設定できる。より具体的には、例えば、検査位置302での全反射後、矢印406の方向へ進んで面204へ到達する検査光に対し、面204及び面208により構成される検査光反射部122で反射(または全反射)を行う場合、面204及び面208の傾きを適宜設定することにより、矢印408に示す検査光の方向(第2の方向)を設定できる。尚、図示した場合において、面204は、透光性基板10の主表面(座標横軸)に対し、図示の方向へ、角度a傾いている。また、第2の方向の検査光の入射角度は、td1+delである。
【0091】
このような方針に基づいて光学部材102の光学設計をすることにより、基板検査時に複数の方向の検査光を検査位置302へ照射することが可能となる。また、これにより、透光性基板10の検査を高い精度で行うことが可能となる。
【0092】
尚、単に検査光の方向を設定するという観点で考えた場合、上記方針の光学設計について、例えば複数のプリズムを用いる構成や、プリズムと鏡とを組み合わせた構成等の、複数の光学部材を用いる構成に対して行うことも考えられる。しかし、その場合、複数の光学部材間の精密な位置合わせ等が必要になるため、基板検査時の工数が増加することとなる。また、光学部材間の位置のずれにより、検査の精度が低下するおそれもある。そのため、実用上、本例のように、モノリシックな単独の光学部材102を用いることが好ましい。
【0093】
図5は、自己診断が可能な光学部材102の構成の他の例を示す。図5(a)は、面202と面204とが非平行である場合の光学部材102の構成の例を示す図であり、自己診断時の検査光の経路と共に、光学部材102の側断面図を示す。図5(b)は、図5(a)に示した光学部材102の斜視図である。図から分かるように、面202と面204とが非平行である場合も、各面の傾きや、面間の距離等を適宜調整することにより、自己診断を行うための光集中点304を適切に設定することができる。
【0094】
ここで、図5(a)、(b)に示した場合において、光集中点304は、基板検査時に透光性基板から遠い側の面となる面204に設定されている。しかし、光集中点304は、その他の面に設定することも可能である。
【0095】
図5(c)は、面202に光集中点304が設定される場合の光学部材102の構成の例を示す図であり、自己診断時の検査光の経路と共に、光学部材102の側断面図を示す。図5(d)は、図5(c)に示した光学部材102の斜視図である。図から分かるように、各面の傾きや、面間の距離等を適宜調整することにより、面204以外の面である面202上にも、自己診断を行うための光集中点304を適切に設定することができる。
【0096】
尚、図5(c)、(d)に示した場合においては、光学設計を簡単にするため、面202と面204とが平行な構成とした。しかし、各面の傾きや、面間の距離等を適宜調整すれば、面202と面204とが非平行な場合であっても、面202上に光集中点304を設定可能である。また、面202、面204以外の面上に光集中点304を設定することも考えられる。
【0097】
また、図1図5においては、基板検査時の検査光の照射について、第1の方向及び第2の方向の2つの方向の検査光を照射する場合について説明した。しかし、基板検査時においては、3以上の方向の検査光を照射してもよい。このようにすれば、例えば、検査対象の透光性基板に存在する欠陥が、検査光の照射方向によっては全反射条件を逸脱しないような特性を有している場合であっても、より適切に欠陥を検出できる。そこで、以下、基板検査時に検査位置へ3以上の方向の検査光を照射する場合の例について説明する。
【0098】
3方向以上の多方向の検査光を検査位置へ照射する光学部材102は、例えば、第1方向設定部と、第1〜第m(mは2以上の整数)の検査光反射部を備える。第1方向設定部は、第1の方向の検査光を照射するための構成である。また、第1〜第mの検査光反射部は、その他の方向の検査光を照射するための構成である。
【0099】
そして、この構成により、基板検査時において、光学部材102は、先ず、外部から導入した検査光を第1方向設定部120で反射(または全反射)することにより、第1の方向の検査光を検査位置へ照射する。また、光学部材102は、第k(kは、1以上、m以下の整数)の方向で照射し、検査位置で全反射された検査光を検査光照射面となる平面202から光学部材102の内部へ導入する。そして、第kの検査光反射部で、検査光照射面から導入された検査光を、検査位置で全反射される方向であり、かつ第1から第kのいずれの方向とも異なる方向である第k+1の方向へ反射(または全反射)することで、検査光を、検査光照射面から検査位置へ向けて照射する。また、自己診断時において、光学部材102を大気中に置き、基板検査時と同じ方向の検査光を光学部材102の外部から導入した場合、第1〜第k+1の方向の各検査光は、いずれも、検査光照射面で全反射され、かつ、その全反射後の各検査光が光集中点に集まる構成とする。
【0100】
このように構成すれば、例えば、透光性基板の検査位置へ、より多くの方向の検査光を適切に照射できる。また、これにより、透光性基板の欠陥をより確実に検出できる。更には、光学部材102の自己診断を適切に行うことができる。
【0101】
続いて、3方向以上の多方向の検査光を検査位置へ照射する光学部材102の具体的な構成の例を示す。図6及び図7は、基板検査時に第1〜第4の4方向の検査光を検査位置へ照射する場合の光学部材102の構成(4方向立体折り返し)の例を示す。図6は、光学部材102の形状、及び、基板検査時に検査位置302へ検査光を照射する様子の一例を示す。
【0102】
図6(a)は、基板検査時に4方向の検査光を照射する光学部材102の構成の一例を示す斜視図である。図6(b)、(c)、(d)は、検査位置302へ検査光を照射している状態を示す光学部材102の斜視図、下面図、及び側面図である。尚、この下面図は、基板検査時に透光性基板10の検査位置302側から光学部材102を見た図である。
【0103】
本例において、光学部材102は、第1方向設定部120と、3つの検査光反射部122を備える。第1方向設定部120は、検査光導入面である面206と、導入光反射部である面210からなる部分である。基板検査時において、第1方向設定部120は、光学部材102の内部へ面206から導入される検査光を面210で反射(または全反射)することにより、検査光を第1の方向へ向ける。これにより、基板検査時において、光学部材102は、透光性基板の検査位置302へ、第1の方向の検査光を、面202から照射する。また、第1の方向の検査光は、検査位置302で全反射された後、面202から再度光学部材102内へ導入される。
【0104】
3つの検査光反射部122のそれぞれは、基板検査時に検査位置302へ照射する検査光の方向を設定する部分である。本例において、それぞれの検査光反射部122は、検査位置302で全反射されて光学部材102内に導入された検査光に対し、複数回の反射(または全反射)をすることにより、それぞれの検査光反射部122毎に予め設定されている方向へ検査光の方向を変えて、検査位置302へ向けて反射(または全反射)する。
【0105】
より具体的には、例えば、図6(c)に示したように、検査光の経路に沿って、3つの検査光反射部122のそれぞれを、第1、第2、及び第3の検査光反射部122とした場合、基板検査時において、第1の検査光反射部122は、第1方向設定部120により第1の方向で照射され、検査位置302で全反射されて光学部材102内に導入された検査光を、第2の方向へ反射(または全反射)する。この第2の方向は、検査位置302で全反射される方向であり、かつ第1の方向と異なる方向である。第2の方向の検査光は、面202から検査位置302へ照射され、検査位置302で全反射される。また、その後、面202から再度光学部材102内へ導入される。
【0106】
第2の検査光反射部122は、第2の方向で照射され、検査位置302で全反射されて光学部材102内に導入された検査光を、第3の方向へ反射(または全反射)する。この第3の方向は、検査位置302で全反射される方向であり、かつ第1の方向及び第2の方向のいずれとも異なる方向である。第3の方向の検査光は、面202から検査位置302へ照射され、検査位置302で全反射される。また、その後、面202から再度光学部材102内へ導入される。
【0107】
第3の検査光反射部122は、第3の方向で照射され、検査位置302で全反射されて光学部材102内に導入された検査光を、第4の方向へ反射(または全反射)する。この第4の方向は、検査位置302で全反射される方向であり、かつ第1の方向、第2の方向、及び第3の方向のいずれとも異なる方向である。第4の方向の検査光は、面202から検査位置302へ照射され、検査位置302で全反射される。また、その後、面202から再度光学部材102内へ導入される。
【0108】
以上のようにして、基板検査時において、光学部材102は、透光性基板の検査位置302へ、それぞれ異なる第1〜第4の方向の検査光を照射する。本例によれば、例えば、検査位置302へより多くの方向の検査光を照射することにより、透光性基板の欠陥をより確実に検出できる。
【0109】
また、本例において、光学部材102は、図7に示すように、自己診断の機能も有している。図7(a)、(b)、(c)は、本例における自己診断時の検査光の様子を示す光学部材102の斜視図、下面図、及び側面図である。図7(c)等から分かるように、光学部材を大気中に置き、基板検査時と同じ方向の検査光を光学部材の外部から導入した場合、第1の方向、第2の方向、第3の方向、及び第4の方向の各検査光は、いずれも、検査光照射面である面202で全反射され、かつ、その全反射後の各検査光が、対向面である面204上の1点(光集中点304)に集まる。
【0110】
そのため、本例によれば、自己診断時において、各検査光が光集中点304に集まることを確認することにより、設計図から許容される誤差範囲内で光学部材が作製されていることを適切に確認できる。また、これにより、高い精度で光学部材102を作成することが可能になる。
【0111】
図8図10は、基板検査時に更に多くの方向の検査光を検査位置へ照射する場合の例を示す。図8は、基板検査時に6方向の検査光を照射する場合(6方向立体折り返し)の例を示す。図8(a)は、同じ検査位置に検査光を照射する方向の数と、欠陥検出の角度依存との関係の一例を示す図である。
【0112】
上記においても説明をしたように、検査対象の透光性基板に存在する欠陥には、検査光の照射方向によっては全反射条件を逸脱しないような特性を有しているものもある。そのため、例えば1方向のみから検査光を照射して基板検査を行う場合、図8(a)に示すように、一部の角度において、欠陥を適切に検出できない場合がある。これに対し、例えば、2方向の検査光を照射することにより、欠陥検出の角度依存を大きく低減することができる。また、例えば3方向以上の方向から検査光を照射することにより、全ての角度において、検出精度を大きく向上させることができる。更には、4方向以上の方向から検査光を照射した場合、欠陥検出の角度依存がほとんどなくなると考えられる。
【0113】
図8(b)は、6方向立体折り返しを行う光学部材102の構成の一例を示す斜視図である。この構成において、光学部材102は、第1方向設定部120と、第1〜第5の検査光反射部122を備える。また、基板検査時において、光学部材102は、第1方向設定部120、及び第1〜第5の検査光反射部122により、第1〜第6の方向の検査光を検査位置へ照射する。そのため、このような光学部材102を用いることにより、より高い精度で透光性基板の欠陥を検出できる。また、この場合も、図8(b)の左側に示すように、光学部材102の自己診断を適切に行うことができる。
【0114】
また、より小さな欠陥を、より確実に検出するためには、更に多くの方向の検査光を検査位置へ照射することも考えられる。図9は、基板検査時に8方向の検査光を照射する光学部材102の構成(8方向立体折り返し)の一例を示す。図9(a)は、8方向立体折り返しを行う光学部材102の構成の第1の例を示す図であり、光学部材102の斜視図、自己診断時の様子、及び検査光反射部122のより詳細な構成の一例を示す。
【0115】
図9(a)に示す構成において、光学部材102は、第1方向設定部120と、第1〜第7の検査光反射部122を備える。また、基板検査時において、第1方向設定部120、及び第1〜第7の検査光反射部122により、第1〜第8の方向の検査光を検査位置へ照射する。そのため、このような光学部材102を用いることにより、高い精度で透光性基板の欠陥を検出できる。また、この場合も、図9(a)の中央部に示すように、光学部材102の自己診断を適切に行うことができる。
【0116】
また、図9(a)に示す構成の場合、図中右側に示すように、第1〜第7の検査光反射部122のそれぞれは、2つの反射面422と、この2つの反射面422をつなぐ面424とで構成されている。そして、基板検査時において、それぞれの検査光反射部122は、この2つの反射面422で検査光を反射(または全反射)することにより、検査光を検査位置へ向けて反射(または全反射)する。より具体的には、第1〜第7の検査光反射部122のうち、第qの検査光反射部は、2つの反射面422により2回の反射(または全反射)をすることにより、検査光を、第q+1の方向へ反射(または全反射)する。
【0117】
このように構成すれば、例えば、より多くの反射面で検査光反射部122を構成する場合と比べ、光学部材102における検査光反射部122の加工が容易になる。また、これにより、例えば、高い精度の光学部材をより適切に作成できる。
【0118】
図9(b)は、8方向立体折り返しを行う光学部材102の構成の第2の例を示す図であり、光学部材102の斜視図、自己診断時の様子、及び検査光反射部122のより詳細な構成の一例を示す。図9(b)に示す光学部材102は、図9(a)に示す光学部材102と、検査光反射部122以外は同じ構成を有する。そのため、この場合も、高い精度で透光性基板の欠陥を検出できる。また、図9(b)の中央部に示すように、光学部材102の自己診断を適切に行うことができる。
【0119】
また、図9(b)に示す構成の場合、図中右側に示すように、第1〜第7の検査光反射部122のそれぞれは、3つの反射面422で構成されている。そして、基板検査時において、それぞれの検査光反射部122は、この3つの反射面422で検査光を反射(または全反射)することにより、検査光を検査位置へ向けて反射する。より具体的には、第1〜第7の検査光反射部122のうち、第qの検査光反射部は、3つの反射面422により3回の反射(または全反射)をすることにより、検査光を、第q+1の方向へ反射(または全反射)する。
【0120】
このように構成した場合、例えば2以下の反射面422により検査光の方向を変える場合と比べ、各反射面422への検査光の入射角度を大きくできる。また、その結果、反射面422で検査光が反射する条件を設定しやすくなる。また、これにより、例えば各反射面422で全反射させる場合、全反射の臨界角度がより大きな材料、すなわち、屈折率がより小さい材料で光学部材102を形成することが可能になる。
【0121】
尚、検査光反射部122について、2回の反射(または全反射)で検査光の向きを変える構成や、3回の反射(または全反射)で検査光の向きを変える構成とすることは、当然、8方向立体折り返しを行う場合以外の光学部材102における検査光反射部122にも適用できる。また、例えば図9(a)に示すように、検査光反射部122において2回の反射(または全反射)で検査光の向きを変える場合、3回の反射(または全反射)で検査光の向きを変える場合と比べ、反射面422への検査光の入射角度が小さくなる。そのため、各反射面422で全反射させる場合、全反射の臨界角度がより小さな材料、すなわち、屈折率がより大きい材料で光学部材102を形成することが好ましい。この場合、例えば、サファイア等によって光学部材102で形成することが好ましい。
【0122】
また、3回の反射で検査光の向きを変える場合であっても、ガラスよりもより屈折率の高い材料で光学部材102を形成することにより、例えば、光学部材102の光学設計の自由度を高めることができる。特に、4方向以上の検査光を検査位置に照射する場合には、ガラスよりもより屈折率の高い材料で光学部材102を形成することが好ましい。
【0123】
図10は、基板検査時に12方向の検査光を照射する光学部材102の構成(12方向立体折り返し)の一例を示す。図10(a)、(b)は、基板検査時に検査位置302へ検査光を照射する様子の一例を示す側面図及び斜視図である。図10(c)は、自己診断時の光学部材102の様子の一例を示す斜視図である。図10(d)は、光学部材102の全体の構成の一例を示す斜視図である。
【0124】
図10に示す場合において、光学部材102は、第1方向設定部120と、第1〜第11の検査光反射部122を備え、これらのそれぞれにおいて検査位置302へ向けて検査光を反射することにより、それぞれ異なる第1〜第12の方向の検査光を検査位置302へ照射する。また、自己診断時において、各方向の検査光は、所定の光集中点に集まる。
【0125】
このように構成すれば、例えば、透光性基板の検査位置302へより多くの方向の検査光を適切に照射できる。また、これにより、透光性基板の欠陥をより確実に検出できる。更には、光学部材102の自己診断を適切に行うことができる。
【0126】
尚、前記構成の各光学部材102であるが、検査光照射面である面202の表面は鏡面に研磨されている必要がある。また、光学部材102の内部と透過する検査光を反射面(面210,面204,面208,反射面422,424)で全反射する場合はもちろんであるが、反射面の表面に反射膜をコーティングした構成によって検査光を反射する場合であっても反射面は鏡面に研磨されている必要がある。さらに、検査光導入面206も鏡面に研磨されている必要がある。
【0127】
しかし、光学部材102が凹部を有する複雑な形状であり、各面を鏡面に研磨することは容易ではない。このため、光学部材102を複数の部材に分けて切り出し、それぞれの部材に対して鏡面研磨を行ってから接合して完成させる方法をとることが好ましい。たとえば、図8(b)に図示した光学部材102の場合、図11に示すように、主に検査光照射面と対向面を有する部材102Aと、主に検査光導入部の構成を有する部材102Bと、主に検査光反射部の機能を有する部材102Cに分割して作成するとよい。各部材の接合方法については、オプティカルコンタクトや加熱溶着などが好ましい。
【0128】
一方、上記のマスクブランク用基板の製造方法で行われる検出工程や検査装置100は、透光性基板10の主表面に薄膜12(パターン形成用薄膜等)が設けられたマスクブランク20における薄膜12の欠陥検査にも応用できる。具体的には、まず、検査対象となるマスクブランクは、透光性基板10の対向する2つの主表面のうち、光学部材102と液浸コンタクトする側の主表面が露出した状態(薄膜12等が設けられていない状態)であることが前提となる。そして、透光性基板10の検査の場合と同様、透光性基板10の露出している側の主表面に対して光学部材102を液体50を介して液浸コンタクトされた状態とし、透光性基板の対向するもう一方の主表面であり、薄膜12が設けられている側の主表面の検査位置(所定位置)302に対して、検査光が照射されるように照射条件を設定する。
【0129】
このマスクブランク20の欠陥検査では、透光性基板10の主表面の検査位置302では、薄膜12の方が透光性基板10よりも屈折率が高い材料で形成されているため全反射とはならない。しかし、薄膜12との界面において高反射率で反射されるため、検査光は、透光性基板10の検査の場合と概ね同様の光路をたどる。そして、マスクブランク20の薄膜12にピンホール欠陥等のような周囲に比べて薄膜12の厚さが局所的に薄くなっている箇所や周囲に比べて透過率が大幅に高い箇所が存在しており、そこが検査位置302となった場合、その検査位置302に検査光が照射されると検査光の一部が薄膜12の表面から外に漏れ出てくる。この漏れ出る光の有無やその光の強度を見て、その検査位置302上の薄膜12に問題となる欠陥を識別することができる。
【0130】
このマスクブランク20の欠陥検査の場合においても、透光性基板10の薄膜12との界面となる主表面の検査位置(所定位置)302に複数の方向から検査光が照射されるため、一方向からの検査光の照射では検出が難しい状態の薄膜12の欠陥を容易に検出することが可能となる。このマスクブランク20の欠陥検査を備えたマスクブランクの製造方法としては、例えば、以下の各構成が挙げられる。
【0131】
(構成1B)対向する1組の主表面を有する透光性基板と薄膜とからなるマスクブランクを製造する方法であって、前記透光性基板は、一方の主表面が露出しており、他方の主表面には薄膜が設けられており、前記透光性基板の一方の主表面と液体を介在させて光学的に接続された光学部材を介して、他方の主表面の所定位置に向かう方向であり、かつ前記所定位置で反射される方向で検査光を照射し、前記光学部材の出射予定位置以外から漏出する検査光の有無および光強度を検査する検査工程を有し、前記検査工程は、前記検査光を、前記所定位置で反射される方向である第1の方向で照射し、前記所定位置で反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向とは異なる方向であり、かつ前記所定位置で反射される方向である第2の方向になるように前記光学部材内で反射(または全反射)することにより、前記検査光を前記第2の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする。
【0132】
(構成2B)前記光学部材は、前記透光性基板の一方の主表面と液体を介在させて光学的に接続される面であり、かつ前記所定位置へ向けて検査光を照射する検査光照射面と、前記光学部材の内部において予め設定された方向へ前記検査光を反射(または全反射)する検査光反射部とを備え、前記光学部材の外部から導入された前記検査光を、前記第1の方向で照射し、前記所定位置で反射された前記検査光を前記検査光照射面から前記光学部材の内部へ導入し、前記検査光反射部で、前記検査光照射面から導入された検査光を前記第2の方向へ反射(または全反射)し、前記第2の方向へ反射(または全反射)された検査光を前記検査光照射面から前記所定位置へ向けて照射するものであることを特徴とする。
【0133】
(構成3B)前記検査光反射部は、前記導入した検査光を反射(または全反射)する第1の反射面と、前記第1の反射面で反射(または全反射)された検査光を反射(または全反射)して前記検査光を第2の方向に変える第2の反射面を有することを特徴とする。
【0134】
(構成4B)前記検査光は、レーザー光であることを特徴とする。
【0135】
(構成5B)前記光学部材は、外部において前記検査光照射面と平行な方向へ進む前記検査光を前記光学部材の内部へ導入する検査光導入面と、前記検査光導入面から導入された前記検査光を前記所定位置へ向けて、前記第1の方向に反射(または全反射)する導入光反射部とを備えることを特徴とする。
【0136】
(構成6B)前記検査光導入面は、前記検査光照射面と交差する平面であり、前記導入光反射部は、前記検査光照射面と対向し、かつ前記検査光照射面に対して傾斜する位置に設けられた平面であることを特徴とする。
【0137】
(構成7B)前記光学部材は、検査光反射部に加え、少なくとも第2の検査光反射部を備え、前記第2の方向で前記所定位置に照射した前記検査光について、前記所定位置で反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向、及び前記第2の方法のいずれとも異なる方向であり、かつ前記所定位置で反射される方向である第3の方向になるように第2の検査光反射部で反射(または全反射)することにより、前記検査光を前記第3の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする。
【0138】
(構成8B)前記光学部材は、更に第3の検査光反射部を備え、前記第3の方向で前記所定位置に照射した前記検査光について、前記所定位置で反射された前記検査光を前記光学部材に導入し、前記導入した検査光の方向が、前記第1の方向、第2の方向及び前記第3の方法のいずれとも異なる方向であり、かつ前記所定位置で反射される方向である第4の方向になるように第3の検査光反射部で反射(または全反射)することにより、前記検査光を前記第4の方向で更に前記所定位置に照射することを特徴とする。
【0139】
(構成9B)転写用マスクの製造方法であって、前記の各構成のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
【0140】
(構成10B)半導体デバイスの製造方法であって、前記の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする。
なお、上記のマスクブランクの製造方法に関し、検査工程の具体的な構成や、光学部材102の具体的な構成、マスクブランクの具体的な構成については、前記のマスクブランク用基板の製造方法の場合と同様である。
【0141】
以上、本発明に関して実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、例えば、マスクブランク用基板の製造方法に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0143】
10・・・透光性基板、12・・・パターン形成用薄膜、20・・・マスクブランク、30・・・転写用マスク、50・・・液体、100・・・検査装置、102・・・光学部材、104・・・基板ホルダ、106・・・光源部、108・・・走査駆動部、110・・・拡大光学系、112・・・撮像部、114・・・検査判定部、120・・・第1方向設定部、122・・・検査光反射部、152・・・プリズム、202・・・面、204・・・面、206・・・面、208・・・面、210・・・面、212・・・面、302・・・検査位置、304・・・光集中点、306・・・位置、308・・・位置、310・・・位置、312・・・位置、314・・・位置、402・・・矢印、404・・・矢印、406・・・矢印、408・・・矢印、410・・・矢印、422・・・反射面、424・・・面
図1
図2
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図5
図6
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図11