(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165554
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】通信機器用ラックの工事用防護シート
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
H02B3/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-172936(P2013-172936)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-42103(P2015-42103A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】大島 恭一郎
(72)【発明者】
【氏名】笠井 俊謙
(72)【発明者】
【氏名】内田 登紀子
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−267474(JP,A)
【文献】
特開2010−199254(JP,A)
【文献】
実開昭49−040000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 3/00
H05K 5/00 − 5/06
E04G 21/24 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機器が多段に配列されたラックの左右幅と略同じ左右幅を有する縦長の矩形の絶縁シートの上下左右辺縁に帯状片が設けられ、
当該左右の帯状片は赤色とし、上下の帯状片には少なくとも1個の鳩目穴が設けられ、
また、左右の帯状片には多数の鳩目穴が長手方向に間隔を空けて設けられ、
更に左右の帯状片の前記各鳩目穴以外の箇所に、長手方向に間隔を空けて、相互に着脱自在な面ファスナーが多数設けられて成る防護シートを1枚又は複数枚用意したことを特徴とする、通信機器用ラックの工事用防護シート。
【請求項2】
前記左右の帯状片の多数の鳩目穴は一定間隔で設けられ、また、多数の面ファスナーは一定間隔で設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の通信機器用ラックの工事用防護シート。
【請求項3】
通信機器が多段に配設されたラックの上下左右幅と略同じ上下左右幅を有する縦長の、絶縁材から成る矩形枠を設け、
当該矩形枠の左右の側枠は赤色とし、上下の側枠には少なくとも1個の鳩目穴が設けられ、
また、左右の側枠には多数の鳩目穴が長手方向に間隔を空けて設けられ、
更に左右の側枠の前記各鳩目穴以外の箇所に、長手方向に間隔を空けて面ファスナーが多数設けられ、
これらの左右の側枠の面ファスナーに着脱自在な面ファスナーが裏面の左右端縁に設けられた複数の絶縁シート片を設け、
これらの複数の絶縁シート片を前記ラックの1段の上下幅を残して当該矩形枠の枠内を被うように面ファスナーで着脱自在に貼り付けられたことを特徴とする、通信機器用ラックの工事用防護シート。
【請求項4】
前記各絶縁シート片の表面の左右端縁は縦帯状の赤色帯となっていることを特徴とする、請求項3に記載の通信機器用ラックの工事用防護シート。
【請求項5】
前記複数の絶縁シート片は、上下幅が大、中、小と異なる3枚の絶縁シート片としたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の通信機器用ラックの工事用防護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の通信機器が多段に配設されているラックの、特定の機器の改修工事やそれに伴う接続作業等において、作業箇所対象外の機器や配線を被う防護シートであって、当該防護シートの長さを自由にかつ容易に変えられる防護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の通信機器が多段に設置されているラックの、特定の機器の改修工事やそれに伴う接続替え作業等において、作業対象外となる機器や配線に誤って作業者が作業着手しないようにするために被う、合成樹脂製の防護シートが使用されている。
【0003】
この防護シートは周囲に設けた鳩目穴にワイヤー又はフックを通して、ラックの前面に吊り下げ、不要な機器や配線を被って作業箇所の誤認のないようにしている。しかしながら、前記ラックの多段の通信機器の内、改修作業や取替作業を行う工事対象機器の配設は、下方の段に設置されている場合や、上方の段に設置されている場合等、種々の場合があり、ラックの作業箇所に応じて防護シートの長さを個々に調整しなければならない。
【0004】
そのため、防護シートは上下幅の異なる3種類のシートを用意し、遮断箇所に合った防護シートを選んで、作業区域外の上下の段の通信機器等を防護シートで被っていた。この場合、防護シートを3種類用意しなければならず、さらに、現場で適宜のものを選ばなければならず、作業対象箇所にて直ちに作業着手できず、作業効率が悪かった。
【0005】
そこで、特許文献1に示すような防護シートが開発された。これは、通信機器が上下多段に配列された汎用型装置の筐体の前面に吊り下げられ、各段の通信機器の一部を被う防護シートをであって、当該防護シートの一端部を巻いてロール状とし、これをケース本体に収容し、防護シートを引出し可能に巻き取る機構を設け、前記ケース本体を筐体に吊り下げるものである。
【0006】
これにより、通信機器を被う箇所の上下の長さに応じてケース本体から防護シートを引き出して使用でき、工事箇所以外の筐体の各段の通信機器等を容易に被うことができる。しかも、1種類の防護シート装置を用意すればよく、複数種の長さの防護シートを用意する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−267474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものは、ロール状に巻いた防護シートを収容する筒状のケース本体を用意し、また、前記防護シートを引出し可能に巻き取る機構を具備しなければならず、費用もかさむ。また、一端がロール状に巻かれた防護シートを収容するケース本体が重たいため、ラック上への取付け、取り外し等にも手間がかかる。
【0009】
そこで、この発明はこの様な従来の課題を解決し、通信機器が上下多段に配設されたラックの、作業箇所以外の段の上下の長さに応じて、極めて容易に被う箇所の長さを調整でき、かつ、低コストな、通信機器用ラックの工事用防護シートを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、通信機器が多段に配設されたラックの左右幅と略同じ左右幅を有する縦長の矩形の絶縁シートの上下左右端縁に帯状片が設けられ、当該左右の帯状片は赤色とし、上下の帯状片には少なくとも1個の鳩目穴が設けられ、また、左右の帯状片には多数の鳩目穴が長手方向に間隔を空けて設けられ、更に左右の帯状片の前記各鳩目穴以外の箇所に、長手方向に間隔を空けて、相互に着脱自在な面ファスナーが多数設けられて成る防護シートを1枚又は複数枚用意した、通信機器用ラックの工事用防護シートとした。
【0011】
請求項2の発明は、前記左右の帯状片の多数の鳩目穴は一定間隔で設けられ、また、多数の面ファスナーは一定間隔で設けられている、請求項1に記載の通信機器用ラックの工事用防護シートとした。
【0012】
請求項3の発明は、通信機器が多段に配設されたラックの上下左右幅と略同じ幅を有する縦長の、絶縁材から成る矩形枠を設け、当該矩形枠の左右の側枠は赤色とし、上下の側枠には少なくとも1個の鳩目穴が設けられ、また、左右の側枠には多数の鳩目穴が長手方向に間隔を空けて設けられ、更に左右の側枠の前記各鳩目穴以外の箇所に、長手方向に間隔を空けて面ファスナーが多数設けられ、これらの左右の側枠の面ファスナーに着脱自在な面ファスナーが裏面の左右端縁に設けられた複数の絶縁シート片を設け、これらの複数の絶縁シート片を前記ラックの1段の上下幅を残して当該矩形枠の枠内を被うように面ファスナーで着脱自在に貼り付けられた、通信機器用ラックの工事用防護シートとした。
【0013】
請求項4の発明は、前記各絶縁シート片の表面の左右端縁は縦帯状の赤色帯となっている、請求項3に記載の通信機器用ラックの工事用防護シートとした。
【0014】
請求項5の発明は、前記複数の絶縁シート片は、上下幅が大、中、小と異なる3枚の絶縁シート片とした、請求項3又は4に記載の通信機器用ラックの工事用防護シートとした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び2の各発明によれば、通信機器が多段に配設されたラックの、通信機器や配線箇所の作業にあたり、この発明の防護シートで工事の対象となっていない段の通信機器等を被う。それには、当該防護シートを用意し、当該防護シートの上端の複数の鳩目穴にワイヤー又はフックを通し、これらのワイヤー又はフックの一端を前記ラックの適宜の場所に係止し、ラックの前面に当該防護シートを垂らす。また、工事の対象となっている通信機器等が載置された段に防護シートがかからないように当該防護シートの下端部を折り返して、折り返したシートの両側の面ファスナーを折り返していないシートの両側の面ファスナーに止める。
【0016】
また、工事作業箇所の対象となっている通信機器の載置された段より下に工事対象となっていない通信機器の段があれば他の防護シートの上端部の両側の鳩目穴にワイヤー又はフックを通してラックの適宜箇所に係止する。そして当該防護シートの下端部が前記ラックの下端部より長く、邪魔な場合、当該下端部を折り返して面ファスナー相互を接続させるか、または、当該防護シートの下端部をロール状に巻き付け、この状態で上方に位置する鳩目穴に通した紐又はロープ等で縛り付ける。
【0017】
これにより、工事作業対象の通信機器等を有するラックの段は遮蔽されず、作業箇所以外の段のみ遮蔽されることで、作業箇所が明確となり、作業者による作業箇所の誤認がなくなり安全に工事を行うことが出来る。従って、工事対象の通信機器がどの段の場合でも、当該防護シートの上下幅を容易に調整できるため、工事作業対象以外の通信機器等を当該防護シートで被うことが出来る。
【0018】
また、同一の大きさの防護シートを数枚用意すればよく、製造コストを低減にすることが出来る。また、当該防護シートの上下の長さを調整するのに、各防護シートの下端部を折り返して面ファスナー相互で容易に固定できる。また、場合によっては各防護シートの下端部を巻き付けて、その上方にある鳩目穴に通した紐又はロープ等で、締め付け、固定することができる。
【0019】
また、請求項3及び4の発明では、1個の矩形枠に対して、複数の矩形の絶縁シート片を用意すれば、工事をする通信機器等が設置された段を残し、他の作業箇所以外の段の通信機器等を前記矩形の絶縁シート片で被うことが出来る。従って、作業対象外の不要な段の通信機器を容易に覆うことが出来安全に工事をすることが出来る。
【0020】
また、請求項5の発明によれば、当該複数の絶縁シート片を3枚とし、これらの3枚は夫々上下幅が、大、中、小と異なるものを用意すれば、工事対象の通信機器の段に応じて、大中小の絶縁シート片の上下の並びを変えれば、対象外の段の通信機器等を容易に被うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施の形態例1の防護シートで不要な段の通信機器を被った状態を示す正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の防護シートの正面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の防護シートの一部拡大正面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の防護シートの下端部を折り返した状態の斜視図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の防護シートの下端部をロール状に巻き付けた状態の斜視図である。
【
図6】この発明の実施の形態例2の防護シートの分解正面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例2の防護シートで不要な段の通信機器被った状態の正面図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1の防護シートAについて
図1〜5に基づいて説明する。
【0023】
図2に示すように、通信機器が多段に配設されたラックB(
図1参照)の左右幅と略同じ左右幅を有する縦長の矩形の絶縁シート1の上下左右端縁に帯状片2、3が設けられ、これらの上下左右の帯状片2、3は夫々赤色とし、上下の帯状片2の中央部に少なくとも1個の鳩目穴4が設けられている。また、前記絶縁シート1は、この実施の形態例1ではメッシュ状のシートで構成され、上下左右の帯状片2,3は合成樹脂製である。
【0024】
また、前記左右の帯状片3には、鳩目穴4が長手方向に一定間隔を空けて多数設けられ、更に左右の帯状片3の前記各鳩目穴4以外の箇所に、長手方向に間隔を空けて、相互に着脱自在な面ファスナー5が多数具備されている。これらの面ファスナー5は、それ自体が雄雌を有し、相互に着脱自在となっている。
【0025】
従って、
図4に示すように、当該防護シートAの下端部を折り返して、左右の帯状片3、3の面ファスナー5を相互に重ねて押し付ければ貼り合わさり、防護シートAは折りたたまれた状態で保持される。
【0026】
また、
図5に示すように、当該防護シートAの下端部をロール状に巻き、この上の鳩目穴4に紐又はロープ6を通し、この紐又はロープ6をロールの外周に巻いて結わけば、当該防護シートAはその状態を保持される。
【0027】
通信機器が多段に配設されたラックBの、通信機器や配線の工事作業にあたり、この発明の防護シートAで工事の対象となっていない段の通信機器等を被う。そこで、
図1に示すように、当該防護シートAを用意し、当該防護シートAの上端の3個の鳩目穴4にワイヤー又はフック7を通し、これらのワイヤー又はフック7の一端を前記ラックBの適宜の場所に係止し、ラックBの前面に当該防護シートを垂らす。
【0028】
そして、工事の対象となっている通信機器等が載置された段に防護シートAがかからないように当該防護シートAの下端部を折り返して、折り返したシートの両側の面ファスナー5を折り返していないシートの両側の面ファスナー5に止める。これにより、当該防護シートAは固定される。
【0029】
また、工事の対象となっている通信機器の載置された段より下に工事対象となっていない通信機器の段があれば他の防護シートAを用意し、当該防護シートAの上端部の両側の鳩目穴4にワイヤー又はフック7を通してラックBの適宜箇所に係止する。そして当該防護シートAの下端部が前記ラックBの下端部より長く、邪魔な場合、当該下端部を折り返して面ファスナー5相互を接続させるか、または、当該防護シートAの下端部をロール状に巻き付け、この状態でその上方の鳩目穴4に通した紐又はロープ6等でロールの外周に巻き付けて縛り付ける。
【0030】
これにより、工事対象の通信機器等を有するラックBの段は遮蔽されず、作業対象外の不要な段のみ遮蔽され、作業安全に工事を行うことが出来る。従って、工事対象の通信機器がどの段の場合でも、当該防護シートAの上下幅を容易に調整できるため、工事対象以外の通信機器等を当該防護シートAで被うことが出来る。
【0031】
なお、上記実施の形態例1の絶縁シート1はメッシュ状のものであるが、これに限らず適宜の絶縁シートであればよい。また、帯状片2及び3は合成樹脂製であるが、絶縁材であれば、他の素材でも良い。
【0032】
(実施の形態例2)
次にこの発明の実施の形態例2を
図6及び7に基づいて説明する。
【0033】
実施の形態例2の防護シートCは、通信機器が多段に配設されたラックBの上下左右幅と略同じ上下左右幅を有する縦長の、絶縁材から成る矩形枠11と数枚の絶縁シート片12とから構成される。
【0034】
前記矩形枠11の少なくとも左右の側枠11aは赤色とし、上下の側枠11bには少なくとも1個の鳩目穴13が設けられ、また、左右の側枠11aには多数の鳩目穴13が長手方向に間隔を空けて設けられ、更に左右の側枠11aの前記各鳩目穴13以外の箇所に、長手方向に間隔を空けて面ファスナー14が多数設けられている。
【0035】
また、前記各絶縁シート片12は、前記左右の側枠11aの面ファスナー14に着脱自在な面ファスナー15が裏面の左右端縁に設けられている。そして、これらの数枚の絶縁シート片12を前記ラックBの1段の上下幅を残して当該矩形枠11の枠内を被うように前記面ファスナー14と15で着脱自在に貼り付けられている。
【0036】
この実施の形態例2の防護シートCを用いて、通信機器が多段に配設されたラックBの、通信機器や配線の工事作業にあたり、工事の対象となっていない段の通信機器等を被う。
【0037】
これには、
図7に示すように、当該防護シートCを用意し、矩形枠11の上端の3個の鳩目穴13にワイヤー又はフック16を通し、これらのワイヤー又はフック16の一端を前記ラックBの適宜の場所に係止し、ラックBの前面に当該防護シートを垂らす。また、矩形枠11の下部の左右の側枠11aの鳩目穴13にもワイヤー又はフック16を通し、これらのワイヤー又はフック16の一端を前記ラックBの適宜の場所に係止する。
【0038】
これにより、矩形枠11はラックBの前面に固定される。そして、工事対象の通信機器や配線がある段を残して、他の段の通信機器等を数枚の絶縁シート片12で、左右の面ファスナー14と15を重ねて貼り付け、
図7に示すように、被う。従って、工事対象の通信機器等を有するラックBの段は遮蔽されず、不要な段のみ防護シートCに遮蔽され、安全に工事を行うことが出来る。
【0039】
また、前記絶縁シート片12を3枚用意し、これらの3枚は夫々上下幅が、大、中、小と異なるものを用意すれば、工事対象の通信機器の段に応じて、大中小の絶縁シート片の上下の並びを変えれば、対象外の段の通信機器等を容易に被うことが出来る。
【符号の説明】
【0040】
A 防護シート B ラック
C 防護シート
1 絶縁シート 2 帯状片
3 帯状片 4 鳩目穴
5 面ファスナー 6 紐又はロープ
7 ワイヤー又はフック 11 矩形枠
11a 左右の側枠 11b 上下の側枠
12 絶縁シート 13 鳩目穴
14 面ファスナー 15 面ファスナー
16 ワイヤー又はフック