(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水素製造装置において、前記液体状の光源は、液体に分散された発光生物、液体に分散された蓄光材、および、化学発光溶液のうちのいずれか一つを含むことを特徴とする水素製造装置。
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の水素製造装置において、前記水素発生槽は、外部から前記液体状の光源を前記光源槽に取り込む流入口と、前記光源槽の前記液体状の光源を流出する流出口と、内部で発生した水素を外部に取り出す水素取り出し口とを有することを特徴とする水素製造装置。
請求項10に記載の水素製造装置において、前記液体状の光源は、液体に分散された発光生物であり、前記調整槽は、前記発光生物を培養する培養槽を含むことを特徴とする水素製造装置。
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の水素製造装置において、前記光触媒は、水素生成用光触媒と酸素生成用光触媒の2種類を含むことを特徴とする水素製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態の水素製造装置について具体的に説明する。
【0012】
本発明の水素製造装置は、
図1に示すように、水素発生槽10と、水素発生槽10の内部空間を隔てることにより、光触媒20と水40を収容する光触媒槽1、および、液体状の光源30を収容する光源槽2に分離する分離部5とを有する。分離部5は、液体状の光源30の発する光を透過する材料で構成されている。液体状の光源30の発した光は、分離部5を透過して光触媒槽1に入射し、光を照射された光触媒は、水を分解して水素を発生する。
【0013】
分離部5の少なくとも一方の面には、
図2(a)〜(c)に一例を示すように凹凸形状が形成されている。凹凸51の径は、液体状の光源30が発する光の波長よりも大きい。
【0014】
このように、本発明では、分離部5の表面の凹凸51が、液体状の光源30から各方向に放射される光の反射を防ぐため、液体状の光源から照射された光は、高効率で分離部5を透過できる。これにより、水素発生槽10の光触媒20の表面に光損失を抑制して光を照射することができ、水素の発生効率を向上させることができる。
【0015】
上記凹凸51の形状は、分離部5の少なくとも一方の面に隙間なく形成されていることが望ましい。凹凸51を分離部5の少なくとも片面に隙間なく設けることにより、分離部5の主平面に平行な平面を低減することができる。これにより、液体状の光源30から分離部5にランダムな角度で入射する光が、分離部5の表面で全反射される割合を低減でき、分離部5を透過する率を高めることができる。凹凸51の形状は、例えば、
図2(a),(b)のように分離部の主平面に傾斜した面のみからなる場合にはさらに好ましい。
【0016】
分離部5は、
図3に示すように、液体状の光源30を流す流路を構成していることが望ましい。これにより、液体状の光源30は、分離部5の形成する流路を流れることができるため、発光寿命の短い液体光源30を用いる場合であっても、光触媒20に常に光を照射することができ、水素の発生効率を高めることができる。
【0017】
液体状の光源30は、液体に分散された発光生物、液体に分散された蓄光材、および、化学発光溶液のうちのいずれか一つを含むものを用いることができる。発光生物は、発光バクテリアおよび発光プランクトンのうち少なくとも一方を含むものを用いることができる。
【0018】
光触媒20は、水素発生槽の光触媒槽1の内壁に配置することができる。
図3のように、光触媒20は、光触媒槽1の内壁に固定された、凹凸が形成された被着体160に坦持された構成にすることができる。また、光触媒槽1の内壁に凹凸を形成して、光触媒の表面積を大きくすることもできる。光触媒槽1の内壁の凹凸は、ひだ状の凹凸、例えば動物の腸の凹凸を模したひだ状の凹凸にすることにより、表面積を特に大きくすることができる。光触媒は、水素生成用光触媒と酸素生成用光触媒の2種類を含んでいてもよい。
【0019】
また、光触媒20として、
図1のように、粒子状のものを用い、水40に分散することも可能である。
【0020】
水素発生槽10は、
図3のように、外部から液体状の光源30を光源槽2に取り込む流入口50aと、光源槽2の液体状の光源30を流出する流出口50bと、内部で発生した水素を外部に取り出す水素取り出し口とを有する構成にすることが可能である。
【0021】
また、水素製造装置は、
図4のように、液体状の光源30を発光可能な状態に調整して、水素発生槽10の流入口50aに流入させる調整槽111をさらに有する構成にすることができる。液体状の光源30が、液体に分散された発光生物である場合、調整槽111は、発光生物を培養する培養槽102を含むことも可能である。
【0022】
液体状の光源30の中には、刺激を受けて発光するものもあるため、光源槽2内に、液体状の光源30に化学的、物理的または電気的な刺激を与えて発光させる刺激発生部を配置してもよい。具体的には、液体状の光源30を撹拌する撹拌装置、液体状の光源を加熱する加熱装置、または、電気刺激を与える電圧印加装置等を刺激発生部として配置することができる。
【0023】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態の水素製造装置の一例を
図3を用いてさらに具体的に説明する。
【0024】
図3の水素製造装置は、水素発生槽10の内部に、分離部5を配置することにより、光源槽2として、液体状の光源(以下、液体光源と称す)30を流す流路50を設けている。分離部5として板状のものを用い、板状の分離部5で囲まれた、断面形状が矩形の流路50を形成することも可能であるし、管状の分離部5を用い、断面が円形の流路50を形成することもできる。
【0025】
分離部5は、液体光源30が発する光に対して透明な材料であって、液体光源30および水40の流れに耐久性がある材料で構成されている。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネートおよびPET等の光透過性の高い樹脂や、ガラス、サファイア、石英およびダイヤモンド等の無機材料を用いることができる。
【0026】
分離部5の表面は、凹凸加工が施されている。凹凸51の形状は、
図2(a)〜(c)のように、断面形状が半円状、V字状、矩形のものの他、U字状、波状のもの、大きな凹凸の表面にさらに細かい凹凸を形成したもの等どのような形状であってもよいが、できるだけ分離部5の主平面に平行な面を低減する形状であることが望ましい。これにより、液体状の光源30から分離部5にランダムな角度で入射する光が、分離部5の表面で全反射される割合を低減でき、分離部5を透過する率を高めることができる。よって、凹凸51は、分離部5の少なくとも一方の面に隙間なく形成されていることが望ましく、凹凸51の形状は、例えば、
図2(a),(b)のように分離部の主平面に傾斜した面のみからなる場合にはさらに好ましい。
【0027】
凹凸51の径(ピッチ)は、液体光源30の光の波長以上で1mm以下であることが好ましく、10μm以下である場合には、より好ましい。このような大きさに設定することにより、液体光源30として発光生物を用いる場合に、発光生物が、凹凸51の間に引っかかるのを防ぐことができる。なお、凹凸は、分離部5の光触媒槽1および光源槽2側の両面に形成してもよい。
【0028】
流路50を構成する分離部5の外側には、光触媒槽1が形成されている。
図3の例では、光触媒槽1として、分解すべき水40が流れる流路60を形成している。光触媒槽1の内壁には、凹凸構造の被着体160が配置され、被着体160の表面は光触媒20の層で覆われている。被着体160は、人体の小腸の内壁を模したひだ状の凹凸構造になっており、ひだ状の凹凸構造でないものに比べ100〜1000倍に表面積が大きい。流路50は、被着体160の間を縫うように蛇行している。
【0029】
本実施形態の水素発生装置の動作について説明する。流路50の流入口50aから液体光源30を供給し、流出口50bから排出しながら、分解すべき水を流路60の流入口60aから供給し、流出口60bから排出する。液体光源30は、蛇行した流路50を流れながら、複雑な形状をした被着体160の表面に接近して、透明な分離部5を通して光触媒20に光を照射する。
【0030】
このとき、本実施形態では、分離部5の少なくとも片面に凹凸を形成しているため、液体光源30が四方八方に発した光は、分離部5の表面で全反射されにくく、分離部5を透過して低損失で光触媒20に到達することができる。
【0031】
液体光源30により光が照射された光触媒20表面では、光触媒の作用により水が分解され水素と酸素が生成される。生成される水素の量は、有効な光触媒20の表面積に比例するため、本発明では凹凸がない場合と比較して100〜1000倍の水素を生成することが可能となる。発生した水素と酸素は、主に流出口60bから収集され、水素と酸素とを分離して、水素を取得する。
図4に示すように、水素と酸素を分離する水素/酸素分離フィルタ105を配置することも可能である。
【0032】
本実施形態では、分離部5に凹凸51を設けたことにより、液体光源の発した光を高効率で光触媒槽1に入射させることができるため、光触媒20に到達する光量が大きい。よって、本発明では、強い光で、大面積の光触媒20に光触媒作用を発揮できることができるため、高効率に水素を発生することができる。
【0033】
光源槽2内には、液体状の光源に化学的、物理的または電気的な刺激を与えて発光させる刺激発生部を配置してもよい。具体的には、液体状の光源を撹拌する撹拌装置、液体状の光源を加熱する加熱装置、または、電気刺激を与える電圧印加装置等を刺激発生部として配置することができる。
【0034】
また、水素発生槽10内の被着材160の形状は、
図3の形状に限らず、網目状や筒状のものを用いることも可能である。
【0035】
<<液体光源30>>
液状光源としては、光出力のために電力を必要としないものを用い、例えば、発光生物を液体に混合(分散)したもの、粉末状の蓄光材料を液体に混合(分散)したもの、および、化学発光溶液のうちいずれかを用いることができる。液体光源30は、光触媒20に光触媒作用を生じさせる波長の光を出射するものを用いる。光触媒20の作用に必要な波長は、光触媒の材料に依存するが、一般的に、波長が短いほど効率が高くなるため、液体光源の発光波長は、可視光以下、より好ましくは500nm以下に発光ピークをもつことが望ましい。
【0036】
また、光触媒20は、その種類により光触媒作用を発揮するのに必要な光の強度がきまっているので、液体光源は、光触媒により水を分解するのに必要な強度の光を出射できるように、蓄光材料、発光生物や化学発光溶液の種類、濃度および量等を調整する。
【0037】
なお、一般に、光の強度と光触媒の反応により生成される水素の量の関係は、光の強度が弱い範囲では比例関係にあるが、光の強度が高くなると、光触媒の反応により生成される水素の量は、光の強度の(1/2)乗に比例する。そのため、ある程度以上光の強度が強くなると、光の強度を上げるよりも、光触媒の表面積を上げることが有効となる。水素生成量は、光触媒の表面積に比例する。本発明は、液体光源を利用することにより、光源の強度を高める(制御できる)とともに、光触媒の表面積を拡大できる点で固定された光源を用いる場合ものより優れている。
【0038】
<発光生物>
液体光源30として、発光生物を液体に混合したものを用いる場合、発光生物としては、発光バクテリアや発光プランクトンを用いることができる。発光バクテリアの径は1〜2μm、発光プランクトンの径は40μmから1mmと小さいため、いずれも液体に混合して液体光源30とした場合に、流動性に優れた液体になる。また、室温で適度な栄養があれば簡単に培養できるため、取り扱いが容易である。人体への毒性も低いため利用しやすいというメリットもある。
【0039】
具体的には、発光バクテリアは、発光波長475nmの青色に発光するPhotobacterium属のPhotobacterium phosphoreumや、発光波長535nmの黄色に発光するVibrio属のVibrio fischeri Y-1など強い発光や波長を示す公知の発光バクテリア(約19種類)等のうちの1種以上を用いることができる。また、これらの公知の発光バクテリアに加え、新規の発光バクテリアや遺伝子組み換えを行った発光バクテリアを用いることも可能である。例えば、バクテリアの中に存在するタンパク質(photobacterium phosphoreumではルマジンタンパク質(Lump)、Vibrio fischeri Y-1ではYFPタンパク質)を遺伝子組み換え等で組み換えたものを用いることができる。
【0040】
具体的な発光プランクトンの例としては、動物性ではヤコウチュウ、植物性ではウズオビムシを用いることができる。ヤコウチュウは,直径1mmほどの桃の形をした透明な単細胞生物である。
【0041】
発光プランクトンを用いる場合、液体光源30における発光プランクトンの濃度(密度)を大きくすることで発光強度を高めることができるため、生成される水素量が増加する。一方、発光バクテリアは、バクテリアの密度がある程度以上でなければ発光しないという特性があるため、濃度(密度)を5重量%以上に設定することが望ましい。ただし、濃度が高くなりすぎると、液体光源30の粘度が増し、流動性が低下するため、濃度は90重量%以下であることが望ましい。
【0042】
また、発光強度は、濃度(密度)以外にも、液体光源30の塩分濃度、酸素濃度、温度、撹拌など化学、物理的・電気的刺激などに依存し、これらの刺激により発光強度を高めることができるため、発光生物に刺激を与えることも可能である。
【0043】
発光バクテリアやプランクトンを混合(分散)する溶媒(液体)は、発光バクテリアやプランクトンに応じて選択する。例えば、発光バクテリアやプランクトンが海洋性の場合は溶媒として食塩水を、淡水性の場合は水を用いる。食塩水を用いて発光バクテリアを培養する場合には、塩分濃度を一般的な海水の濃度である3〜5%に設定することが好ましいが、液体光源30として利用する場合には、塩分濃度により発光強度が変化するため、必要な発光強度が得られる塩分濃度に設定する。
【0044】
<蓄光材>
蓄光材としては、一例としては、硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl
2O
4系)のものを用いることができる。これらの平均粒子径としては、0.1〜30μmのものを用いることができる。この場合、残光時間は、約30分から2時間程度である。
【0045】
具体例としては、蓄光材として硫化物蛍光体を用いることが可能である。具体的には、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等のうちの1種類以上を用いることができる。
【0046】
蓄光材として、MAl
2O
4もしくはMAl
xO
yで表される化合物(ただし、Mは、Ca、Sr、Baからなる群から選択されたもの)を用いることもできる。必要に応じて、この化合物に元素をドープすることも可能である。具体的には、SrAl
2O
4:Eu,Dy(発光波長520nm)、Sr
4Al
14O
25:Eu,Dy(発光波長490nm)、CaAl
2O
4:Eu,Nd(発光波長440nm)のうちの1種類以上を用いることができる。
【0047】
これらの蓄光材を粒径0.1μm〜数mmの粒子状にし、溶媒に混合することにより、液体光源30が得られる。蓄光材には、あらかじめ十分に光照射を行って蓄光させてから用いる。
【0048】
液体光源とするために、蓄光材を分散させる溶媒は、水やオイルなど流動性があるものであればよく、特に限定されるものではない。また、光触媒と粉末状の蓄光材料の付着を防止するために、表面活性剤などの添加剤を加えてもよい。
【0049】
<化学発光溶液>
化学発光溶液を用いる場合は、それ自体が液体である場合には、別途溶媒に混合しなくてもよい。また、以下の物質を溶媒に混合(分散)したもの、または、溶媒に溶解したものを化学発光溶液として用いることも可能である。例えば、緑色発光蛍光物質9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン (C
6H
5:C)
2C
14H
8、橙色発光蛍光物質ルブレン(5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン) C
42H
28、青色発光蛍光物質ペリレン C
20H
22、ルミノール、ロフィン、ルシゲニン、および、シュウ酸エステルのうちの1以上を用いることができる。上記物質を混合(分散)させる溶媒としては、水やオイルなど流動性があるものであればよい。また、溶解する溶媒として、上記物質が溶解する溶媒を選択して用いる。例えば、塩基性の水溶液を用いることができる。
【0050】
<<光触媒>>
光触媒の種類は、水を水素と酸素に分解できるものであればいずれでもよい。
ただし、液体光源に発光生物を用いる場合、波長が紫外域まで短くなると発光生物の生存が困難になる場合が多いこと、発光生物の発光波長が400〜700nm程度のものが多いことを考慮し、可視光によって光触媒作用を生じるものが望ましい。その場合、2段階励起機構をもつ可視光応答の人工光合成型の光触媒が望ましい。2段階光励起(Z-スキーム)型水分解システムは、水の分解が水素生成系と酸素生成系に2分され、その間が電子伝達体であるヨウ素酸・ヨウ化物(IO
3−/I
−)やFeイオンのような可逆的なイオン対によって連結された形となっている。これより、各系に必要な光のエネルギーが小さくなるため、エネルギーの小さな長波長の可視光も利用することが可能となる。
【0051】
具体的には、Ptナノ粒子をそれぞれ保持したZrO
2/TaON(水素生成用光触媒)とWO
3(酸素生成用触媒)を、光触媒20として用いることができる。また、別の水素生成用光触媒と酸素生成用光触媒の組み合わせの例を以下に示す。(「水素生成用光触媒」−「酸素生成用光触媒」で記す。) Pt/SrTiO
3:Cr−Ta/WO
3、Pt/TaON−WO
3、Pt/StTiO
3:Rh−BiVO
4、Pt/StTiO
3:Rh−WO
3、Ru/StTiO
3:Rh−BiVO
4、Ru/StTiO
3:Rh−WO
3、Cr−Rh/GaN:ZnO、および、BaTaO
2N−WO
3のうちのいずれか、もしくは、2以上を光触媒20として用いることができる。
【0052】
光触媒20を被着体160上に配置する方法としては、粒子状にした光触媒20を樹脂や無機物等のバインダーに混ぜ、被着体160の表面に塗布や滴下した後、固化させる方法や、EB蒸着やスパッタ等の気相成長法により被着体の表面に成膜する方法を用いることができる。
図1のように、光触媒20を粒子として水40中に分散させて用いることも可能である。
【0053】
<<分離部5の凹凸形成方法>>
分離部5の表面に凹凸を形成する方法について説明する。ここでは、一例として、分離部5として、主平面がC面のサファイア基板を用い、凹凸51を形成する。
【0054】
まず、
図5(a)のように、サファイア基板70のC面上にレジストパターン71を、公知のフォトリソグラフィーの手法等を用いて形成する。レジストパターン71は、
図5(d),(e)に上面形状の一例を示すように、複数の開口部72が形成されている。開口部72の配置は、ランダムであっても周期的であってもよい。開口部72の形状は、円又は多角形とすることができる。開口部72の寸法は、凹凸加工後の凹凸の径(ピッチ)が、液体光源30の光の波長以上であって、サファイア基板70の表面の平面ができるだけ小さくなる寸法であることが好ましい。例えば、開口部72の形状が円の場合は、φ3μm、ピッチ4.5μm程度が好ましい。なお、レジストパターン71は、
図5(b)の工程で、反応性イオンエッチング処理時の保護マスクとして用いられるが、レジスト材に限らず、金属等のハードマスクを用いることも可能である。
【0055】
次に、
図5(b)のように、サファイア基板70の上面に、反応性イオンエッチング(RIE)を施し、開口部72内のサファイア基板70のエッチングし、凹部73を形成する。エッチングガスには、例えば、BCl
3、Cl
2、Ar等を用いることができる。このとき、エッチング条件によって、凹部73の形状を変えることができる。例えば、凹部の側壁をサファイア基板のa軸に対して15〜60度の傾斜面74にすることができる。また、隣接する開口部72の距離(ピッチ)の狭いレジスト71を用いた場合には、サファイア基板の上面が傾斜面74のみで形成され、平面(C面)の領域がない、連続した波状の凹凸51を形成することも可能である。
【0056】
具体的には、エッチングガスとして、BCl
3とArの混合ガスを用い、流量比1:1でチャンバー内に供給し、真空度が0.6Paとなる様に圧力を調整し、RF条件を、Ant power 450W、Bias power 550Wとし、エッチング時間を600secとしてRIEを行った場合、深さ約1μm、側壁の傾斜角が、a軸に対して約30度の凹部73を形成することができる。
【0057】
最後に、
図5(c)のように、レジストパターン71を除去する。除去する方法としては、市販のレジスト剥離液を用いることができる。さらに、わずかなレジスト残渣が凹凸加工部に付着している場合には、硫酸と過酸化水素水混合液で完全に除去することが好ましい。
【0058】
上記
図5(a)〜(c)の工程をサファイア基板のもう一方の面に施すことにより、サファイア基板両面に凹凸加工を施すこともできる。
【0059】
なお、ここでは、分離部5として、サファイア基板をRIEにより凹凸加工したが、本発明は、この方法に限られるものではない。他のエッチング方法(ウエットエッチングやドライエッチング等)や、サンドブラストや、レーザー加工等の他の加工方法を用いて所望の凹凸加工を施すことが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の水素製造装置は、
図4のように、水素発生槽10の他に、液体状の光源を発光可能な状態に調整して流入口に流入させる調整槽111をさらに有する構成にすることが可能である。例えば、調整槽111は、制御槽101を含む。制御槽101は、液体状の光源30が発光生物を利用した光源である場合、液体状の光源の温度または塩分濃度を調整する調整部、液体状の光源に酸素を供給する酸素供給部、および、液体状の光源に化学的、物理的または電気的な刺激を与えて発光させる刺激発生部の少なくとも一つを備えることが可能である。また、液体状の光源が蓄光材を用いた液体である場合には、制御槽101は、水素発生槽に供給する前に、液体光源に光を照射し、蓄光させる光照射部を備える構成とする。また、化学発光溶液の場合には、液体状の光源に化学的、物理的または電気的な刺激を与えて、化学発光を開始させる刺激発生部を制御装置に配置することができる。
【0061】
液体状の光源が、液体に分散された発光生物である場合には、調整槽111は、発光生物を培養する培養槽102を含む構成であることが望ましい。これにより、発光生物を培養できるため、外部から発光生物を供給する量を低減またはゼロにできる。
【0062】
また、水素発生槽10の流出口から流出した液体状の光源30を、調整槽111に戻す循環機構をさらに有することも好ましい。水素発生槽10で発光しなくなった液体状の光源30を調整槽111に戻して再び発光するように調整することにより、光源30を再利用することができる。循環機構は、水素発生槽の流路内の液体状の光源が発光しない状態になった場合を検出した場合、または、流路に流入してから所定の時間が経過した場合には発光がほぼ終了したと判断し、調整槽に戻すように構成することができる。
【0063】
上述の培養槽102には、排水を微生物分解する微生物分解槽を連結することができる。微生物分解槽は、微生物分解により生成された有機物およびガスの少なくとも一方を培養槽102に供給する。これにより、培養槽に培養に必要な養分を供給できる。